JP2014009354A - シリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤、それを用いたシリコンインゴット固定方法およびシリコンウエハの製造方法 - Google Patents

シリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤、それを用いたシリコンインゴット固定方法およびシリコンウエハの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】シリコンインゴットを加工用保持具に短時間で固定することが可能な接着剤を提供する。
【解決手段】シリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤は、比透磁率が200以上である磁性体フィラーと、熱硬化性樹脂とを含み、シリコンインゴットを、シリコンインゴットの欠損を防ぐための加工用保持具に接着するために使用される。磁性体フィラーは、ニッケル、コバルト、およびソフトフェライトからなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。磁性体フィラーと熱硬化性樹脂との質量比は、例えば、25/75〜55/45である。
【選択図】なし

Description

本発明は、シリコンインゴットをウエハ加工する際の欠損を防ぐための加工用保持具にシリコンインゴットを固定するために使用されるシリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤、それを用いたシリコンインゴットの固定方法およびシリコンウエハの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、シリコンインゴットを固定するための接着剤の改良に関する。
近年、石油代替エネルギーとして太陽光発電が注目されている。太陽光発電では、大量のシリコンウエハが使用されるが、シリコンウエハの製造コストは未だ高い。シリコンウエハの製造コストを低減するために、シリコンインゴットからシリコンウエハを効率良く生産することが求められている。
シリコンウエハは、シリコンインゴットをスライス加工することにより製造される。シリコンウエハは、特許文献1に示されるように、シリコンインゴットの接着(固定)工程、スライス工程、粗洗浄および剥離工程、ウエハ分離工程、洗浄工程、および検査工程などの複数の工程を経ることにより製造される(特許文献1)。
特開2010−80829号公報
シリコンウエハの製造過程を、図4〜図6を参照しながら、以下に説明する。図4は、シリコンインゴットの固定状態を説明するための概略斜視図であり、図5は、図4のV−V平面における概略断面図である。図6は、図4のVI−VI平面において、シリコンインゴットをスライスした後の状態を示す概略断面図である。
シリコンインゴットの接着工程では、シリコンインゴット1と、シリコンインゴット1の加工終端部の欠損を防ぐための保護材である加工用保持具2とを、二液硬化性の接着剤8を用いて接着する。シリコンインゴット1を接着した加工用保持具2は、さらに、接着剤(図示せず)を介して、ベースプレート9と接着される。シリコンインゴット1は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンの塊状体であり、円柱や角柱の形状を有する。加工用保持具2としては、ビーム材が挙げられ、ビーム材は、通常、ガラス板である。ベースプレート9は、シリコンインゴット1を薄いウエハに加工するための装置であるワイヤーソーに取り付けるための治工具である。
スライス工程では、加工用保持具2とベースプレート9が接着されたシリコンインゴット1をワイヤーソーにて、シリコンインゴット1の下方から垂直上向き方向に加工する。スライス加工では、図6に示すように、接着剤8および加工用保持具2のシリコンウエハ7側の一部まで加工され、加工部20が形成される。スライス加工後、千数百枚にウエハ化されたシリコンウエハ7は、加工用保持具2にその端部が接着されている。
スライス工程では、加工液中にダイヤモンドなどの砥粒を分散させて加工する遊離砥粒方式が主流である。しかし、加工時間を短縮するため、ワイヤー自体にダイヤモンド砥粒をメッキで固着させて加工を行う固定砥粒方式の採用が検討されている。固定砥粒方式を採用した際のスライス加工時間は約2時間であり、遊離砥粒方式の約1/3に短縮が可能である。
スライスされた千数百枚のシリコンウエハ7は、加工用保持具2に接着された状態で洗浄され、さらに、温水や乳酸等の薬剤での処理により、一括して加工用保持具2から剥離される(粗洗浄および剥離工程)。剥離により重なり合ったシリコンウエハは、一枚ずつに分離され(ウエハ分離工程)、さらに洗浄工程および検査工程に供される。
スライス工程では、上述のように、スライス加工に要する時間を短縮可能な方法が検討されている。しかし、シリコンウエハは、複数の工程を経て製造されるため、製造コストを低減するには、スライス工程だけでなく、他の工程に要する時間を短縮する必要がある。
特許文献1では、熱硬化性の二液性接着剤を用いて、シリコンインゴットと加工用保持具とを接着させている。しかし、接着剤は、大きな塊状のシリコンインゴットと加工用保持具とに挟まれた薄膜状であるため、効率よく加熱することができず、硬化の完了までに約8時間もの長時間を要し、生産性が低い。
硬化時間を短縮するため、接着剤を、シリコンインゴットおよび加工用保持具ごと加熱する方法が試みられている。しかし、シリコンインゴットの熱容量が非常に大きいため、加熱と放冷に数時間を要し、生産性を向上するのが困難である。そのため、接着工程の短時間化が強く望まれている。
本発明の目的は、シリコンインゴットを加工用保持具(ビーム材など)に短時間で固定することが可能な接着剤を提供することである。
本発明の一局面は、比透磁率が200以上である磁性体フィラーと、熱硬化性樹脂とを含み、シリコンインゴットを、シリコンインゴットの欠損を防ぐための加工用保持具に接着するために使用される、シリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤に関する。
本発明の他の一局面は、シリコンインゴットと、加工用保持具との間に、上記のシリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤を配する工程、および、磁場を印加して、磁性体フィラーを誘導加熱し、シリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤を硬化させることにより、シリコンインゴットを加工用保持具に接着する工程、を含むシリコンインゴットの固定方法に関する。
本発明のさらに他の一局面は、シリコンインゴットと、加工用保持具との間に、上記のシリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤を配する工程、磁場を印加して、磁性体フィラーを誘導加熱し、シリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤を硬化させることにより、シリコンインゴットを加工用保持具に接着する工程、加工用保持具に接着されたシリコンインゴットを、ワイヤーソーでウエハにスライスする工程、および、スライスされたウエハを、加工用保持具から剥離し、一枚ずつに分離する工程を含む、シリコンウエハの製造方法に関する。
本発明によれば、シリコンインゴットを加工用保持具に固定するための接着剤を、選択的または局所的に加熱することができるため、接着剤に含まれる熱硬化性樹脂を効率よく硬化させることができる。これにより、シリコンインゴットを加工用保持具に短時間で固定することができる。そのため、結果として、シリコンウエハの生産性を向上できる。
図1は、熱硬化性接着剤の密着強度の測定方法を説明するための概略断面図である。 図2は、シリコンインゴットを、加工用保持具に付着させる手順を説明するための概略断面図である。 図3は、シリコンインゴットの固定方法を説明するための概略断面図である。 図4は、シリコンインゴットの固定状態を説明するための概略斜視図である。 図5は、図4のV−V平面における概略断面図である。 図6は、図4のVI−VI平面において、シリコンインゴットをスライスした後の状態を示す概略断面図である。
本発明の熱硬化性接着剤は、比透磁率が200以上である磁性体フィラーと、熱硬化性樹脂とを含み、シリコンインゴットを、シリコンインゴットの欠損を防ぐための加工用保持具に接着するために使用される、シリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤である。
熱硬化性接着剤が、比透磁率200以上の磁性体フィラーを含むため、磁場の印加により、効率よく誘導発熱させることができる。磁性体フィラーは、通常、熱硬化性接着剤中に分散されているため、磁場の印加により発生した熱は、周囲の熱硬化性樹脂に速やかに伝播し、熱硬化性樹脂の熱硬化反応を効率よく進行させることができる。また、シリコンインゴットおよび加工用保持具を不必要に加熱する必要もない。
つまり、熱硬化性接着剤を、選択的または局所的に加熱することができる。従って、熱硬化性接着剤に含まれる熱硬化性樹脂を効率よく硬化させることができるので、シリコンインゴットを加工用保持具に短時間で固定することが可能となり、シリコンウエハの生産性を大きく向上できる。
(磁性体フィラー)
磁性体フィラーとしては、比透磁率が200以上のものが使用できる。このような磁性体フィラーとしては、例えば、コバルト、ニッケル、軟鉄、鉄、硅素鋼、純鉄、パーマロイやスーパーマロイなどの鉄−ニッケル合金、ソフトフェライトなどのフェライト(鉄酸化物)などが例示できる。ソフトフェライトとしては、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライトなどのスピネルフェライトなどが例示できる。これらの磁性体フィラーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
磁性体フィラーの比透磁率が高いほど、印加する磁場が小さくても、効率よく誘導加熱を行うことができるが、比透磁率が、200以上であれば、実用上十分である。磁性体フィラーの比透磁率は、好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上である。また、比透磁率の上限は特に制限されず、例えば、150万以下、好ましくは100万以下または10万以下である。
磁性体フィラーは、酸化などにより構成成分がイオンなどの形態でシリコンウエハ上に残る場合がある。そのため、上記の磁性体フィラーのうち、このような現象が起こりにくい、ニッケル、コバルト、ソフトフェライトなどが好ましい。これらのうち、ソフトフェライトは、比透磁率が高いので、少量の使用でも、熱硬化性接着剤を効果的に硬化することができる点から有利である。また、ニッケルは、比透磁率が約600と比較的高い上、安価であり、シリコンウエハの品質にも影響を与えにくい点から好ましい。
磁性体フィラーは、繊維状であってもよく、粒状であってもよい。分散性の点からは、粒状であるのが好ましい。
磁性体フィラーの粒径は、磁性体フィラーの比透磁率や印加する磁場の大きさなどに応じて、適宜選択できる。熱硬化性接着剤を絶縁性の状態に保ち易くするため、熱硬化性樹脂に対する磁性体フィラーの質量比に加え、磁性体フィラーの粒径を調整してもよい。
磁性体フィラーの平均粒径は、例えば、1〜100μm、好ましくは5〜80μm、さらに好ましくは10〜50μmである。平均粒径がこのような範囲である場合、熱硬化性樹脂の絶縁性を保ち易くなるとともに、磁性体フィラーの表面積を適度の範囲にすることができる。これにより、熱硬化性接着剤の粘度を適度な範囲に制御し易くなる。また、熱硬化性接着剤の層の表面を均一にし易く、密着強度を高め易い。
なお、高い接着性を確保するとともに、チッピングを抑制して、シリコンウエハの品質を維持する観点から、磁性体フィラーの粒径は、シリコンインゴットと加工用保持具との間に配される熱硬化性接着剤の層の厚み以下であるのが好ましい。磁性体フィラーの最大粒径は、シリコンインゴットと加工用保持具との間の熱硬化性接着剤の層の厚みに対して、具体的には、100%以下、好ましくは80%以下、さらに好ましくは50%以下である。例えば、熱硬化性接着剤の層の厚みが、130μmである場合、磁性体フィラーの最大粒径は、例えば、100μm以下、好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下であってもよい。
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂は、特に制限されず、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型などのビスフェノール型エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂など)、フェノール樹脂(ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂など)、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂の主材を含む。これらの熱硬化性樹脂は、一種を単独で用いてもよく、同種または異種の二種以上を組み合わせて使用できる。
これらの熱硬化性樹脂のうち、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂と、他の熱硬化性樹脂とを組み合わせてもよい。また、複数のエポキシ樹脂を組み合わせてもよい。このような組み合わせとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、ノボラック型エポキシ樹脂との組み合わせ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との組み合わせなどが例示できる。
シリコンウエハの製造過程では、粗洗浄工程などの液体を使用する工程があるため、熱硬化性接着剤の硬化物に含まれる未硬化の熱硬化性樹脂が液体に溶け出して、シリコンウエハに付着する場合がある。このような熱硬化性樹脂の溶出を避けるため、熱硬化性樹脂(主材)の重量平均分子量は、300以上であるのが好ましい。
熱硬化性樹脂は、樹脂の骨格に架橋性基などの硬化性基が導入されたものであってもよい。また、熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂の主材に加え、さらに硬化剤、硬化促進剤などを含んでもよい。
硬化剤および硬化促進剤は、それぞれ、熱硬化性樹脂の主材の種類に応じて、公知のものから適宜選択できる。硬化剤としては、例えば、酸無水物、脂肪族または芳香族アミン、イミダゾールまたはその置換体(アルキル置換体など)、ポリメルカプタン化合物などが例示できる。硬化促進剤としては、ジシアンジアミドなどが例示できる。
熱硬化性樹脂は、加熱により硬化性を発揮する硬化剤および/または硬化促進剤を含む一液性の樹脂や組成物として使用してもよく、硬化剤および/または硬化促進剤と混合して用いる二液性の組成物として使用してもよい。硬化剤や硬化促進剤は、必要に応じて、硬化反応に関与する官能基が保護基により保護された状態で使用してもよく、マイクロカプセルに封入された状態で使用してもよい。
二液性の組成物では、一液性の場合と比べて、熱硬化性樹脂と硬化剤とを混合した直後から硬化が進行し易いため、均一な熱硬化性接着剤の塗膜が得られにくい場合がある。そのため、熱硬化性樹脂は、一液性の樹脂または組成物として使用するのが好ましい。つまり、本発明の熱硬化性接着剤は、一液性の接着剤であるのが好ましい。
熱硬化性接着剤において、磁性体フィラーと熱硬化性樹脂との質量比は、例えば、60/40以下、好ましくは55/45以下、さらに好ましくは53/47以下または50/50以下である。また、磁性体フィラーと熱硬化性樹脂との質量比は、例えば、5/95以上である。磁性体フィラーの含有量が比較的少ない場合でも、磁性体フィラーとして、比透磁率が高いものを用いたり、粒径や印加する磁場の大きさなどを調節したりすることにより、磁性体フィラーを有効に誘導加熱することが可能である。磁性体フィラーと熱硬化性樹脂との質量比は、好ましくは20/80以上または25/75以上、さらに好ましくは27/73以上または30/70以上である。上記の熱硬化性樹脂に対する磁性体フィラーの質量比の上限値と下限値とは、適宜選択して組み合わせることができる。
磁性体フィラーの比透磁率やサイズ、熱硬化性樹脂の種類や物性などにもよるが、磁性体フィラーと熱硬化性樹脂との質量比が、上記のような範囲では、接着性を確保し易い。また、熱硬化性接着剤の粘度を適度な範囲に維持し易く、高い塗布性が得られる。そのため、均一な熱硬化性接着剤の層を形成し易くなるので、接着性を高め難くなる。また、シリコンウエハの製造過程で、加工用保持具に固定したシリコンインゴットを、ワイヤーソーなどのスライサーでスライスする際に、スライサーに付着したダイヤモンドなどの砥粒が必要以上に摩耗したり、脱落したりするのを抑制できる。
本発明の熱硬化性接着剤は、500KPaの押圧下で、熱硬化性接着剤の層の面方向における抵抗を測定したときに、絶縁性であるのが好ましい。磁性体フィラーの含有量が多くなりすぎると、シリコンインゴットと加工用保持具との間に熱硬化性接着剤を配したときに、層状の熱硬化性接着剤の多くの部分で、磁性体フィラー粒子同士が接触した状態が形成され、導電性を帯びる。シリコンインゴットをウエハにスライスする際には、熱硬化性接着剤の層および加工用保持具の一部も一緒にスライスされる。そのため、熱硬化性接着剤が導電性を帯びるほど多くの磁性体フィラーを含んでいると、磁性体フィラーの硬度にもよるが、スライサーの砥粒が磁性体フィラーに当たる確率が非常に高くなり、これにより、砥粒が摩耗するため、ウエハの生産性、コストや品質に影響する場合がある。
なお、大きな面積に対して均一に塗布したり、垂れ落ちるのを防止したり、熱硬化性接着剤の層に気泡が必要以上に混入するのを抑制したりする観点から、25℃における熱硬化性接着剤の粘度は、例えば、2〜40Pa・s、好ましくは4〜30Pa・s、さらに好ましくは4.5〜25Pa・sまたは5〜20Pa・sである。
なお、熱硬化性接着剤を、シリコンインゴットと加工用保持具との間に配したときに、周囲から溢れ出した熱硬化性接着剤が垂れ落ちると、シリコンインゴットの壁面に付着してしまうため、取り除く作業が必要となり、生産性が低下する場合ある。また、熱硬化性接着剤の層に気泡が必要以上に混入すると、シリコンインゴットをスライスする際に、チッピングなどの原因となり、シリコンウエハの品質が低下する場合がある。
熱硬化性接着剤の粘度は、磁性体フィラーの平均粒径および/または熱硬化性樹脂に対する質量比を調節することにより調節することができる。また、熱硬化性接着剤に含まれる反応性希釈剤および/または無機フィラーの含有量を調整することにより制御してもよい。
熱硬化性接着剤は、さらに、反応性希釈剤、カーボンブラック、磁性体フィラー以外の無機フィラーなどを含んでもよい。このような無機フィラーとしては、シリカ、タルク、およびマイカなどが例示でき、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。無機フィラーは絶縁性であるのが好ましい。
本発明の熱硬化性接着剤は、磁場の印加により、極めて短時間内に熱硬化性樹脂を、硬化温度以上の温度に加熱することができるため、極めて短時間で、インゴットを加工用保持具に固定することができる。
熱硬化性接着剤は、例えば、厚み100μmの層を形成して、硬化させる条件で、磁場を印加したとき、1〜60分間で、層の最高到達温度が熱硬化性樹脂の硬化温度以上となるという特徴を有してもよい。
そのため、熱硬化性接着剤の硬化に要する時間(例えば、上記の最高到達温度)を、例えば、60分以下、好ましくは30分以下、さらに好ましくは25分以下または20分以下にまで短縮することができる。熱硬化性接着剤の硬化に要する時間の下限は、特に制限されないが、例えば、1分以上または5分以上である。
本発明では、磁場の印加により、熱硬化性接着剤を極めて短時間で硬化して、シリコンインゴットと加工用保持具とを接着可能である。加工用保持具に固定されたシリコンインゴットを、ウエハにスライスする場合、シリコンインゴットは、図5に示す場合と同様に、加工用保持具に接着した状態で加工用保持具の鉛直下方に位置する。そのため、シリコンインゴットは、スライスされる際に、自重により加工用保持具から落下しないような密着強度で加工用保持具に接着している必要がある。
一方、加工用保持具に固定されたシリコンインゴットをウエハにスライスした後は、シリコンウエハを、加工用保持具から剥離させる。このとき、シリコンウエハの品質を損なわないように、シリコンウエハと硬化した熱硬化性接着剤の層との界面で剥離させる必要がある。シリコンウエハの剥離は、温水に浸漬する方法などにより加熱したり、酸(乳酸など)などの薬液に浸漬したりすることにより行うことができる。そのため、加熱下や薬液との接触により、密着強度を低減することができるのが好ましい。
以上の点から、硬化した熱硬化性接着剤とシリコンインゴットとの間の密着強度は、常温(例えば、25℃)で、例えば、490N/cm2以上、好ましくは500N/cm2以上である。上限は特に制限されないが、常温での密着強度が大きすぎると、剥離する際の密着強度が大きくなり過ぎる場合がある。
また、剥離する際の(つまり、加熱下や薬液で処理するときの)、硬化した熱硬化性接着剤とシリコンインゴットとの間の密着強度は、例えば、98N/cm2以下、好ましくは90N/cm2以下である。
図1は、熱硬化性接着剤の密着強度の測定方法を説明するための概略断面図である。
密着強度測定用のサンプルは、図1に示すように、シリコンインゴットの板状のサンプル1aの一方の表面に、シリコングリス4を介して、ワッシャ5を貼り付け、ワッシャ5の中央の孔に熱硬化性接着剤3を流して硬化させることにより作製する。
熱硬化性接着剤3の硬化は、ホットプレートまたは恒温槽により、硬化温度(60〜100℃)で、反応率が90%以上になるまで保持することにより行う。ここで、反応率は、未硬化物の発熱量に対する硬化物の発熱量の割合(%)である。未硬化物および硬化物の発熱量は、示差走査熱量測定(DSC)で測定可能である。
硬化後、熱硬化性接着剤3の硬化物の温度が室温になるまで放冷する。得られたサンプルにおいて、ワッシャ5を持ち上げて、熱硬化性接着剤3を、シリコンインゴットのサンプル1aから剥離させる。そして、この剥離に要したシェア強度を、ボンドテスターで測定する。測定したシェア強度を、ワッシャ5の中央の孔の面積で除することにより、単位面積当たりの強度を求め、密着強度(N/cm2)とする。なお、ボンドテスターとしては、例えば、RESCA社製のPTR−1101などが使用できる。
(シリコンインゴットの固定方法)
本発明では、上記の熱硬化性接着剤を用いて、シリコンインゴットを、加工用保持具に固定する。具体的には、シリコンインゴットの固定方法は、シリコンインゴットと、加工用保持具との間に、熱硬化性接着剤を配する工程(a)、および磁場を印加して、磁性体フィラーを誘導加熱し、熱硬化性接着剤を硬化させることにより、シリコンインゴットを加工用保持具に接着する工程(b)を含む。
図2は、シリコンインゴットを、加工用保持具(ビーム材)に付着させる手順を説明するための概略断面図であり、図3は、シリコンインゴットの固定方法を説明するための概略断面図である。図2に示すように、ビーム材2の一方の表面に、熱硬化性接着剤3を均一に塗布して熱硬化性接着剤の層を形成し、この層の表面に、シリコンインゴット1を載置する。そして、図3に示すように、ビーム材2のシリコンインゴット1との接着面とは反対側に、誘導コイル6を設置し、熱硬化性接着剤3の層に向けて磁場を印加する。
熱硬化性接着剤3の層に磁場が印加されると、熱硬化性接着剤3中に含まれる磁性体フィラーを、磁束が貫通して電磁誘導が起こり、ジュール熱が発生する。発生したジュール熱より、磁性体フィラーの周囲に存在する熱硬化性樹脂が加熱される。熱硬化性樹脂の硬化温度以上になるまで加熱が進むと、熱硬化性樹脂の硬化反応が進行して、熱硬化性接着剤3の層全体が硬化することにより、この層を介して、シリコンインゴット1が、ビーム材2に接着され、固定される。
誘導加熱に使用される磁場の大きさは、磁性体フィラーの比透磁率および熱硬化性接着剤中の含有量、熱硬化性接着剤の層の厚み、誘導コイルと熱硬化性接着剤の層との距離などに応じて、適宜調整できる。誘導加熱に使用される周波数は、例えば、100〜500Hz、好ましくは150〜400Hzである。
誘導加熱による熱硬化性接着剤の加熱温度(または硬化温度)は、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜設定できるが、シリコンウエハの製造過程における後続の工程において、洗浄液などの水を含む溶液等に浸漬する際に多量の水が蒸発するのを避ける観点から、100℃以下であるのが好ましい。加熱温度は、好ましくは65〜100℃、さらに好ましくは70〜90℃である。
熱硬化性接着剤の硬化物のTgは、例えば、30〜100℃、好ましくは40〜80℃、さらに好ましくは50〜70℃である。硬化物のTgを調節することにより、加熱により、シリコンウエハを加工用保持具から剥離する場合の温度を調節することができる。
誘導コイルの形状およびサイズは、熱硬化性接着剤の層全体に効率よく磁場を印加できるように、熱硬化性接着剤の層の形状およびサイズ、つまり、加工用保持具の形状およびサイズに合わせるのが好ましい。
熱硬化性接着剤は、加工用保持具とシリコンインゴットとの間に配される限り、加工用保持具およびシリコンインゴットのいずれの表面に塗布してもよい。
シリコンインゴットをスライスする際には、シリコンインゴットだけでなく、熱硬化性接着剤の層および加工用保持具の一部までスライスされる。熱硬化性接着剤は、シリコンよりもヤング率が低い。そのため、シリコンインゴットをスライスする際には、シリコンインゴット中よりも、熱硬化性接着剤の層中の方が、ワイヤーソーのワイヤーの振動が大きくなる。
シリコンインゴットと加工用保持具との間に配された熱硬化性接着剤の層の厚みが、ワイヤー径よりも大きくなると、熱硬化性接着剤の層をワイヤーがスライスしながら進む際に、振動が特に大きくなる。本発明者らは、この大きな振動が、シリコンウエハの端面にダメージを与えて、シリコンウエハの品質を損なう場合があること、熱硬化性接着剤の層の厚みをワイヤー径以下にすると、振動が軽減され、シリコンウエハの品質の劣化を抑制できることを見出した。熱硬化性接着剤の層の厚みは、ワイヤー径よりも小さくするのが好ましい。
シリコンインゴットのスライスに使用されるワイヤーソーの一般的なワイヤー径は、130μmである。そのため、熱硬化性接着剤の層の厚みを130μm以下にするのが好ましく、130μmより小さくするのがさらに好ましい。熱硬化性接着剤の層の厚みは、例えば、50〜120μmまたは60〜100μmであってもよい。
シリコンインゴットとしては、太陽電池用途や半導体用途において使用される任意の材質、形状およびサイズのものが使用できる。シリコンインゴットを構成するシリコンは、単結晶シリコンであってもよく、多結晶シリコンであってもよい。
加工用保持具の形状およびサイズは、シリコンインゴットの形状およびサイズに応じて、適宜選択できる。
加工用保持具を形成する材料としては、公知のものが使用でき、例えば、ガラス、カーボンなどの他、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ベークライトなどのフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂などが例示できる。加工用保持具は、これらの材料のうち一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて含有してもよい。
(シリコンウエハの製造方法)
シリコンウエハの製造方法は、前記固定方法における工程(a)および工程(b)に加え、さらに、加工用保持具に接着されたシリコンインゴットを、ウエハにスライスする工程(c)、および、スライスされたウエハを、加工用保持具から剥離し、一枚ずつに分離する工程(d)を含む。工程(a)および工程(b)については、固定方法と同様である。
スライス工程(c)では、ワイヤーソーなどのスライサーで、シリコンインゴットをスライスする。スライス工程には、従来の手法が採用でき、図6と同様にして、スライサーでシリコンインゴットの下方から垂直上方にシリコンインゴットをウエハにスライスする。このとき、シリコンインゴットと加工用保持具との間に配された熱硬化性接着剤の層と、加工用保持具の下部も、シリコンインゴットとともにスライスされる。
ワイヤーソーとしては、遊離砥粒方式および固定砥粒方式のいずれも使用できる。いずれの方式のワイヤーソーについても、ワイヤー径は、例えば、100〜180μm、好ましくは120〜140μmであり、130μm前後である場合が多い。また、ワイヤーの材質は、鉄または鉄合金などである。
遊離砥粒方式では、ダイヤモンド、アルミナ、炭化ケイ素などの砥粒を含む公知の切削液を供給しながら、スライスを行う。
スライス工程に要する時間を短縮する観点からは、固定砥粒方式のワイヤーソーを用いるのが有利である。
固定砥粒方式のワイヤーソーでは、ダイヤモンドや炭化ケイ素などの砥粒が、ワイヤーに、メッキ(ニッケルメッキ、銅−クロムメッキなど)により固着されている。固定砥粒方式では、公知のクーラントなどを供給することにより、シリコンの温度を制御したり、シリコンくずを除去したりしてもよい。
なお、ウエハの厚みは、用途に応じて、適宜設定できる。
スライスされたウエハは、工程(d)において、加工用保持具から剥離され、一枚ずつに分離されるが、工程(d)に先だって、公知の洗浄工程(粗洗浄工程)に供してもよい。洗浄工程では、スライス工程(c)などで使用された切削液やクーラントなどを除去したり、シリコンくずを除去したりする。
洗浄後、スライスされたウエハを乾燥してもよい。
工程(d)は、スライスされたウエハを、加工用保持具から剥離する工程を有する。剥離は、熱硬化性接着剤の層と、シリコンウエハとの界面で行うような手段が採用できる。例えば、加熱により、熱硬化性接着剤をゴム化することにより、ウエハを剥離させてもよい。また、酸(乳酸など)や有機溶剤などの薬液に浸漬させ、熱硬化性接着剤を溶解または変性させることにより、ウエハを剥離させてもよい。
本発明の熱硬化性接着剤を用いることにより、剥離する際の硬化した熱硬化性接着剤とシリコンウエハとの密着強度を低くすることができる。そのため、シリコンウエハと熱硬化性接着剤の層との界面で剥離させることができるので、シリコンウエハが損傷したりすることもなく、品質の低下を抑制できる。
加熱は、例えば、周辺雰囲気の温度を高めることにより行ってもよく、温水などに浸漬することにより行ってもよい。加熱温度は、熱硬化性接着剤の硬化温度よりも低く、例えば、40〜80℃、好ましくは45〜70℃である。
工程(d)では、スライスされたウエハを、加工用保持具から剥離した後、さらに、ウエハを一枚ずつに分離する。
分離されたウエハは、さらに、洗浄工程に供してもよい。洗浄工程では、例えば、アルカリ水溶液などにより、シリコンウエハの表面の不活性な層などをエッチングする。
このようにして製造されるシリコンウエハは、太陽電池用途や半導体用途において有用である。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜3
(1)熱硬化性接着剤の調製
熱硬化性樹脂と、磁性体フィラーとしてのニッケル粉末とを、表1に示す質量比で、プラネタリーミキサーを用いて、30分間混合することにより、熱硬化性接着剤を調製した。
熱硬化性樹脂の主材としては、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との質量比1:1の混合物)を用い、これにポリメルカプタン系マイクロカプセル型の硬化剤が添加された一液性混合物(味の素(株)製、XBM−3300)の形態の熱硬化性樹脂を使用した。表1に示す質量比は、熱硬化性樹脂と、磁性体フィラーとの質量比を示す。
(2)ビーム材に対するシリコンインゴットの固定
上記(1)で得られた熱硬化性接着剤を用いて、図2および図3に示すように、加工用保持具としてのビーム材にシリコンインゴットを固定した。固定は、具体的には、下記の手順で行った。
ビーム材2としての板状のベークライト(サイズ:400mm×110mm×20mm)の一方の表面に、20gの熱硬化性接着剤3を万遍なく、パテで塗布し、その上に、角柱状のシリコンインゴット1(サイズ:125mm×125mm×400mm)をマウントした。
ビーム材2のシリコンインゴット1がマウントした側とは反対側で、ビーム材2の表面からの距離が10mmの位置に、縦400mm×横110mmの誘導コイル6を設置し、ビーム材2を介して、ビーム材2とシリコンインゴット1との間の熱硬化性接着剤3の層に磁場を印加した。なお、誘導コイル6を含む誘導加熱ユニットとしては、Ameritherm社製、EASYHEATを用い、使用周波数を150〜400Hzに設定した。
磁場の印加により、熱硬化性接着剤3の層に含まれる磁性体フィラーが発熱し、その結果、熱硬化性接着剤が硬化することにより、シリコンインゴット1を、ビーム材2に接着させた。
熱硬化性接着剤の層の硬化後の厚みは、いずれの実施例においても、70μmであった。
(3)評価
熱硬化性接着剤、またはビーム材に固定されたシリコンインゴットを用いて、下記の評価を行った。
(a)粘度
コーン型の回転式粘度計(E型粘度計)を使用し、25℃、100rpmで測定を行った。
(b)硬化性
上記工程(2)において、シリコンインゴット1とビーム材2との間の熱硬化性接着剤の層を、誘導コイルにより誘導加熱する際に、熱硬化性接着剤の層の温度を、熱電対(KEYENCE社製、NR−250)で測定し、到達した最高温度を記録した。
また、磁場の印加開始から、最高温度に到達するまでに要した時間を測定した。
(c)密着強度
既述の方法により、硬化した熱硬化性接着剤を、シリコンインゴットの板状のサンプルから剥離させる際に要したシェア強度を測定し、熱硬化性接着剤の単位面積当たりの強度(密着強度)を求めた。
なお、シェア強度は、熱硬化性接着剤をシリコンインゴットの板状サンプルから剥離させる際の熱硬化性接着剤の温度が、25℃および60℃の条件で測定した。シェア強度を測定する際の温度調節は、ホットプレートの温度を制御することにより行った。
比較例1
熱硬化性接着剤に代えて、二液性の接着剤を用いた。二液性の接着剤は、磁性体フィラーを添加することなく、エポキシ樹脂と、硬化剤としてのアミン系硬化剤とを混合することにより調製した。混合後、得られた接着剤を、速やかにビーム材2に塗布し、接着剤の層を、これを挟持するシリコンインゴットおよびビーム材とともに、室温(25℃)まで放置する以外は、実施例1と同様にして、シリコンインゴットとビーム材とを接着させた。
比較例2
実施例1で用いた熱硬化性樹脂を、磁性体フィラーを添加することなく、そのまま接着剤として用いた。この接着剤を用いる以外は、比較例1と同様にして、シリコンインゴットとビーム材とを接着させた。
比較例1および2についても、実施例1と同様の評価を行った。
表1に熱硬化性樹脂と磁性体フィラーとの質量比とともに、上記の評価結果を示す。
Figure 2014009354
表1の結果から明らかなように、従来からシリコンインゴットの固定に使用されている二液硬化性の接着剤を用いた比較例1では、接着剤を加熱するには、シリコンインゴットおよび加工用保持具も加熱する必要があり、接着剤が硬化するまでに、8時間も要した。また、シリコンインゴットは熱容量が大きいため、一度加熱されると、放冷するまでにも極めて長時間を要する。そのため、従来のシリコンインゴット固定用の接着剤を用いた場合には、シリコンウエハの生産性が大きく損なわれる。磁性体フィラーを含まない一液硬化性の接着剤を用いた比較例2でも、比較例1と類似の結果が得られた。
これに対し、実施例では、熱硬化性接着剤が、磁性体フィラーを含むため、熱硬化性接着剤の層を選択的に加熱することができ、シリコンインゴットと加工用保持具とを極めて短時間内に接着させることができた。また、実施例の熱硬化性接着剤は、いずれも、適度な粘度を有しており、塗布性が良好で、均一に塗布することができた。
さらに、実施例では、常温において、高い密着強度が得られるとともに、硬化した熱硬化性接着剤を、60℃に加熱した場合には、密着強度が低くなった。そのため、シリコンインゴットをウエハにスライスした後、加工用保持具から剥離させる際に、シリコンと、熱硬化性接着剤の層との界面において、剥離させることができ、シリコンウエハの品質を損なうことがない。
なお、実施例1〜3では、磁性体フィラーとして、安価なニッケル粉末を用いたが、コバルトやソフトフェライトなどを用いた場合にも、同様または類似の結果が得られる。なお、磁性体フィラーの種類が異なる場合には、比透磁率に応じて、磁性体フィラーの平均粒径、分散度および/または熱硬化性樹脂に対する質量比を調節することにより、実施例1〜3と同様の結果を得ることができる。
本発明の熱硬化性接着剤は、誘導加熱により、熱硬化性接着剤を選択的または局所的に加熱することができるため、極めて短時間でシリコンインゴットを加工用保持具に接着することができる。これにより、シリコンウエハの生産性を大きく向上できるため、太陽電池や半導体用途におけるシリコンウエハの製造に使用するのに極めて有用である。
1 シリコンインゴット
2 加工用保持具(ビーム材)
3 熱硬化性接着剤
4 シリコングリス
5 ワッシャ
6 誘導コイル
7 シリコンウエハ
8 従来の接着剤
9 ベースプレート

Claims (12)

  1. 比透磁率が200以上である磁性体フィラーと、
    熱硬化性樹脂とを含み、
    シリコンインゴットを、加工用保持具に接着するために使用される、シリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤。
  2. 前記磁性体フィラーの平均粒径が5〜80μmである、請求項1に記載のシリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤。
  3. 前記磁性体フィラーが、ニッケル、コバルト、およびソフトフェライトからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1または2に記載のシリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤。
  4. 前記磁性体フィラーと前記熱硬化性樹脂との質量比が、25/75〜55/45であり、
    絶縁性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤。
  5. 粘度が4〜30Pa・sである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤。
  6. 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、およびウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤。
  7. 前記熱硬化性樹脂の重量平均分子量が300以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤。
  8. シリコンインゴットと、加工用保持具との間に、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤を配する工程、および
    磁場を印加して、前記磁性体フィラーを誘導加熱し、前記シリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤を硬化させることにより、前記シリコンインゴットを前記加工用保持具に接着する工程、を含むシリコンインゴットの固定方法。
  9. 前記磁性体フィラーの誘導加熱により、前記シリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤を65〜100℃の温度で加熱して硬化させる、請求項8に記載のシリコンインゴットの固定方法。
  10. シリコンインゴットと、加工用保持具との間に、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤を配する工程、
    磁場を印加して、前記磁性体フィラーを誘導加熱し、前記シリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤を硬化させることにより、前記シリコンインゴットを前記加工用保持具に接着する工程、
    前記加工用保持具に接着された前記シリコンインゴットを、ワイヤーソーでウエハにスライスする工程、および
    前記スライスされたウエハを、前記加工用保持具から剥離し、一枚ずつに分離する工程を含む、シリコンウエハの製造方法。
  11. 前記シリコンインゴットと前記加工用保持具との間に配された前記シリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤の層の厚みが、前記ワイヤーソーのワイヤー径以下である、請求項10記載のシリコンウエハの製造方法。
  12. 前記磁性体フィラーの粒径が、前記シリコンインゴット固定用熱硬化性接着剤の層の厚み以下である、請求項10または11に記載のシリコンウエハの製造方法。
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