JP2013257574A - 光走査装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】半導体レーザ素子1と、半導体レーザ素子1から放射される光束を後続の光学系にカップリングするカップリングレンズ2と、カップリングされた光束を光偏向器5に導く入射光学系と、光偏向器5により偏向された光束を被走査面8へ導き結像させる走査光学系とを有する光走査装置において、上記走査光学系は、単一あるいは複数の樹脂レンズ6と、樹脂レンズ6の複屈折を補正する単一の異方性素子65と、単一の偏光分離素子60とを有する。
【選択図】図11
Description
近年は、複数の色画像を重ね合わせる多色画像形成装置が広く開発されている。特に、多色画像形成装置を実現する形態として、複数の走査光学系が、各色に対応する複数の感光体に光スポットを形成するタンデム方式が多く用いられている。
そこで、複数の走査光学系を内蔵した単一の光走査装置という形態も古くから提案されている。各色に対応した複数の光束が単一の光偏向器に入射し、それぞれの走査光学系により各感光体に結像させられるものが一般的である。
但し、この方式は、各色に対応した光学素子が光偏向器の周りに密集してしまい、光走査装置の小型化に限界を与える。
その他従来技術では、空間変調素子等の動的能動素子を用いて走査光学系を集約する方法や、互いに波長の異なる光源を用いてダイクロイックミラーで分割する方法等が考えられている。しかしながら、能動素子を用いる場合にはその駆動回路が必要になり、ダイクロイックミラーを用いる場合は1つの光走査装置に異種の光源が搭載されることになるので、走査光学系の光学素子数が低減されたとしても、その代償としてさらに高価な素子を増やす必要に迫られる。
従って受動素子である偏光分離素子を用いる方式(偏光分離方式)が好適であると考えられる。
特許文献2には、樹脂レンズ、偏光分離素子、樹脂レンズという配置順序で構成した走査光学系が開示されている。
特許文献3には、能動素子により偏光制御を行う点が開示されている。
特許文献4〜6には、偏光分離素子を用いずに、液晶能動素子により走査光の偏向方向を制御する点が開示されている。
特許文献7には、走査レンズ2枚と偏光分離素子を備えた走査光学系が開示されている。
分離される光束はそれぞれの被走査面上に画像情報を書き込むために互いに異なる時系列信号で発光される。偏光分離特性が充分でないと、他の被走査面に書き込むはずの画像情報が混入してしまうことになる。
多色画像形成装置で例を挙げれば、シアンで現像されるはずの情報がマゼンタ用の被走査面に書き込まれ、画像上では色間のクロストークとして観測される。
偏光分離特性の主な劣化要因として、走査レンズが樹脂である場合の複屈折がある。低複屈折率の樹脂材料は広く研究されているが、走査レンズの形状、成形条件、生産効率を考慮するとそれらの適用は課題のハードルが高い。
複屈折現象を避けるために走査光学系をすべてガラスレンズで構成する方法も容易に考えられるが、近年の高画質化に対応するためにはレンズ枚数増加とガラスレンズ加工の樹脂射出成形に対する非効率性が課題になる。
ここで、「主軸方向」は異方性媒質の屈折率楕円体の長軸方向をいう。
請求項3記載の発明は、請求項3に記載の光走査装置において、上記異方性素子の主軸方向が、その位置に入射する走査光が通過する上記樹脂レンズ上の位置の上記樹脂レンズの主軸方向と略一致する場合、上記樹脂レンズのもつ位相差と上記異方性素子のもつ位相差との和が2πm、直交する場合、上記樹脂レンズのもつ位相差と上記異方性素子のもつ位相差との差がπ(2m+1)(mは整数)であることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項4に記載の光走査装置において、上記異方性素子は高分子硬化型液晶から成ることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項5に記載の光走査装置において、上記異方性素子の両表面には電極が設けてあることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項6に記載の光走査装置において、上記異方性素子の両表面に設けられた電極は、主走査方向に隔てられた分域から成ることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項1〜7の任意の1に記載の光走査装置において、上記樹脂レンズは単一であることを特徴とする。
請求項10記載の発明は、請求項1〜9の任意の1に記載の光走査装置において、さらに導光素子を有し、該導光素子は主走査方向に関して垂直な断面において、台形であることを特徴とする。
請求項11記載の発明は、請求項1〜10の任意の1に記載の光走査装置において、上記光偏向器の回転中心から上記偏光分離素子を隔てる距離は、複数の筒状被走査面の軸間距離よりも大きいことを特徴とする。
請求項12記載の発明は、請求項1〜11の任意の1に記載の光走査装置において、上記入射光学系は、回折光学素子を含むことを特徴とする。
請求項13記載の発明は、複数の感光性の像担持体に対して光走査装置による光走査を行って各色に対応する潜像を形成し、該潜像を現像手段で可視化してカラー画像を得る画像形成装置において、上記光走査装置として、請求項1〜12の任意の1に記載の光走査装置を用いたことを特徴とする。
まず、具体的な構成を説明する前に、本発明の概念及び原理等を説明する。
本発明は、走査光学系において、樹脂レンズ、異方性素子、偏光分離素子(偏光光束分割素子)の順に配置することで、偏光光束分割素子に入射する光束の偏光状態の乱れを補正し、偏光光束分割素子の偏光分離特性を向上するものである。
一般的な偏光分離素子は、入射する光束を直交する直線偏光として分割する機能を持つ。本明細書において、偏光分離特性は「互いに直交する2つの直線偏光La,Lbが偏光分離素子に入射したとき、それらが互いに混成することなく各偏光方向に応じてLa’、Lb’として分離される」特性のよさを表す。
光束La,Lb,La’,Lb’の光量をA,B,A’,B’と定義すると、理想的な偏光分離特性である場合A∝A’、B∝B’が成り立ち、A’、B’はそれぞれB,Aに関与しないことになる。
図1に、偏光分離素子の機能模式図を示す。上記直線偏光La,Lbに対応した偏光方向をPa,Pbとする。図1においてPaとPbは直交しており、Paは図中z軸、Pbは図中y軸と平行であるとする。理想的な偏光分離特性をもった偏光分離素子60は、図1に示すように直交する偏光方向に応じて光路を分離する。
ここで、La,Lbが樹脂レンズのような複屈折性をもつ材質6cを透過した場合を考えてみる(図2)。複屈折性をもつ、とは「方向により光束が感受する屈折率が異なる」ことを表している。
現実の光走査装置では、生産効率の高さと複雑面形状が実現しやすいことから、樹脂製の走査レンズが多く用いられているが、樹脂製の光学素子は一般に複屈折性を持ち、光学的異方性媒質のように振舞う。
一般的な樹脂材料の成形過程においてある領域内で樹脂内高分子が配向を揃えて凝固することにより、光学素子内部に部分的な光学異方性をもった状態になる。この素子に直線偏光が入射すると、直交する断面内での位相差が生じるため(異方性媒質の基本的特性)、偏光方向の回転が生じる。
複屈折性を持った樹脂レンズ6cに直交した2つの直線偏光La,Lb(偏光方向Pa,Pb)が入射すると、偏光方向が回転する。複屈折性によって、射出光は回転した直線偏光あるいは楕円偏光Peとなる。いずれの場合においても、La,Lbの直交性は崩れることになる。
このような偏光状態で偏光分離素子60に入射すると、偏光分離素子の射出光量A’,B’はA’∝(A+kB),B’∝(B+kA)(kは比例係数)となり、射出光に他方の光量が混入する。本明細書ではこの現象を「光量クロストーク」と呼び、偏光分離特性の劣化を表す。
しかしながら、薄く、厚み偏差の少ない単一樹脂レンズのみで被走査面上の収差補正をするのは困難であり、近年の高画質化に追随できない虞がある。樹脂レンズの枚数を増やせば複屈折性の影響が累積し、結局偏光分離特性を劣化させてしまう。
そこで本発明では、樹脂レンズを透過させたのち、異方性素子で複屈折の影響を補正してから偏光分離を行うこととした。この形態は樹脂レンズの複屈折の影響を異方性素子によって偏光分離特性を確保できるので、樹脂レンズを要求される光学性能に合わせて自由に設計することができる。
従来、多色画像形成装置に適用する光走査装置は、空間的に分離された複数の走査光学系を単一の光走査装置にまとめ込んでいた(図3)。
図3において、符号5は光偏向器を、6は樹脂レンズを、7は導光素子としてのミラーを、8は被走査面を示している。
しかしながら、本発明により偏光分離特性(光量クロストーク)に関する課題が解消された光走査装置であれば、各被走査面に対応した画像情報を偏光方向で分離された光束に割り当てることができるようになる。
即ちそれは空間的分離の必要がなくなり、図4に示すように、複数の被走査面を走査する光学系を集約できることを意味している。光学系の集約は、光走査装置の薄型化に大きな効果をもたらす。
図4において、符号60は偏光分離素子を、65は異方性素子を示している。
本発明は、偏光分離素子に入射する光束の偏光状態を乱すことなく、且つ収差も良好に補正しながら光走査装置の薄型化を実現するものである。
電磁界の横波である光が、ある媒質内に入射しその媒質内の電磁界が振動方向に関して異なる挙動を示すとき、その媒質は「光学異方性を持つ」と言う。対して、どの振動方向であっても挙動が変わらない媒質の性質を等方性と呼ぶ。等方性媒質の屈折率はどの方向に関しても定数である。
異方性媒質の屈折率は3×3行列のテンソルとして記述でき、x,y,zの3軸に関する電界ベクトル[Ex,Ey,Ez]と行列積算をすることで媒質中の電界[Dx,Dy,Dz]を知ることができる。
この現象を複屈折と呼ぶ。複屈折現象から、媒質が異方性を有することを知ることができる。異常光と常光の位相差により射出光束の偏光状態は直線、円、楕円になる。
また、異方性媒質は2×2のジョーンズ行列として記述でき、ジョーンズベクトルをかけることで異方性媒質透過後の偏光状態を計算することができる。ジョーンズ行列Jは以下の数式2で与えられる。
今、ある光路を例にとり(h)の表記をなくすと、J2・J1は以下数式5のように書ける。
W2W1を書き下すと数式6のようになる。
もう1つの補正条件として、樹脂レンズの主軸に対して異方性素子の主軸を直交させるというものがある。このとき数式5は数式7のように書き直される。
異方性素子の主軸及び位相差分布を設定するために必要な樹脂製走査レンズの複屈折測定方法と、主軸及び位相差分布の実際の設定方法に関しては後述する。
異方性素子は結晶、液晶、サブ波長構造から成るものがよく知られているが、特に液晶から成る異方性素子は主軸や位相差を容易に制御できるため本発明の異方性素子として好適な材料である。
液晶は液体の有する流動性と、固体・結晶の持つ異方性を兼ね備える物質を指す。液晶性を示す物質の分子(以下液晶分子)は棒状或いは円盤状であり、ある条件においてその配向を分子間で揃える相を持つ。その相においては分子の双極子モーメントが揃い、分子集団で巨視的な誘電異方性を呈する。誘電異方性は即ち光(電磁波)の振動電界と相互作用するため、その振る舞いは光学異方性として観察される。
今、簡単のため液晶をネマティック液晶として考える。ネマティック液晶は、棒状の液晶分子がその配向を揃えており、各液晶分子の位置関係はランダムといった液晶分子の相状態を指す。棒状分子の長軸方向に沿った屈折率ne、短軸方向をnoととらえることで、ネマティック液晶素子は1軸性異方性媒質として取り扱うことができる。
ガラス基板には、ポリイミド等の高分子を塗布したのち、上記配向方向に柔らかい布などでこするラビングと呼ばれる処理が為されている。
ラビングの方向設定により配向方向を選択することが現実的に可能である。
更に、図16に示すように、ガラス基板にITO等の透明電極を蒸着し、電界が印加できるようにした系を考える。電界を厚み方向に印加すると、液晶分子は厚み方向に向けて再配向を始める。但し、基板近傍の液晶分子はアンカリングと呼ばれる現象により基板と平行な配向が保持されている。厚み方向と液晶分子長軸との為す角jは電界強度Eで制御することができる。
この状態の素子を透過した光束は、厚み方向に主軸方向を分布させた異方性媒質の作用を受ける。液晶分子の配向が電界強度Eに依存しているとすると、ある部分を透過する光束が受ける位相差|ne−no|D/λはΔn(E)D/λと書くことができる。
以上より、液晶から成る異方性素子は、基板のラビング方向で主軸を、液晶の素子内配向を電界等で制御することで位相差を設定することができることがわかる。
本発明の液晶から成る異方性素子の位相差と主軸は、樹脂製走査レンズの複屈折測定結果を基に設定されるのが好ましい。
複屈折の測定方法は、エリプソメータ、セナルモン法、光ヘテロダイン法、CCDによるリターデーション測定等、様々なものが知られている。いずれも最終的に走査レンズのもつ位相差分布と主軸の分布を得ることができるので、本発明の異方性素子を適切に設定することができる。
樹脂製走査レンズは、射出成形による形状精度のばらつきを押さえるべく、一般にその成形条件は厳密に管理されている。そのため、樹脂製走査レンズの複屈折分布のばらつきも同時に抑制されている。従って、樹脂製走査レンズを大量生産する際は、代表サンプルの複屈折を反映した異方性素子でも本発明の効果を得ることができる。
ここでは、この距離を図5に示すように、Lpbsとする。光偏向器の回転中心から偏光分離素子の入射面の距離でも良いが、偏光分離素子はプリズム型やプレート型等様々な形態が存在するため、ここでは光偏向器の回転中心から「光束の分離点」の距離としている。
本発明が適用され、上下段に分離されていた走査光学系が集約された対向走査光学系を想定し、光偏向器から被走査面に到達する4つの光路長が同じくなるように設定する場合を考える。
「対向走査光学系」は、光偏向器の回転軸を中心として両側にそれぞれ光束が走査される光学系である。本明細書においては4つの被走査面を走査する走査光学系が単一の光偏向器を共有している形態となる。
樹脂レンズ、異方性素子及び導光素子は省略している。光路が折り返されている部分には導光素子が設けられている。導光素子による光路の折返しは、簡単のため90°で統一している。被走査面への入射角はレイアウトの利便性に関する議論に直接関係しないため0度としている。
本発明によれば、Lpbs>Pがレイアウト設計自由度の向上に好適である。
[Lpbs<P]
図5に示されているように、光路長を均一にするためにはLlの光路を伸長する必要がある。被走査面8の間隔Pと、被走査面8への入射角を保つことを条件にすると、図6のように内側の光路を折り曲げることになり、光走査装置の厚みHが大きくなってしまう。
[Lpbs=P]
図7に示すように、Lh=Llが成立しているため光路長を揃える必要がない。但し、この条件が成立するときは走査光学系の光路長がPによって決まってしまうので特に設計自由度の向上はない。またLpbsの中に樹脂レンズ、異方性素子を配置することになるためPによっては収差補正に関して不利になる虞がある。
[Lpbs>P]
図8に示されているように、光路長を均一にするためにはLhの光路を伸長する必要がある。被走査面8の間隔Pと、被走査面8への入射角を保つことを条件にしても、図9に示すように、外側へ光路長をせり出させることで対応できる。光走査装置の厚さHに着目すれば、Lpbs>Pの条件下においては「光走査装置を厚くすることなくレイアウトが可能」であることがわかる。
感光性の像担持体としては種々のものの使用が可能である。例えば、像担持体として銀塩フィルムを用いることができる。この場合、光走査による書込みで潜像が形成されるが、この潜像は通常の銀塩写真プロセスによる処理で可視化することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
感光性の像担持体としてはまた光走査の際にビームスポットの熱エネルギにより発色する発色媒体(ポジの印画紙)を用いることもでき、この場合には、光走査により直接に可視画像を形成できる。
感光性の像担持体としてはまた光導電性の感光体を用いることができる。光導電性の感光体としては、例えばセレン感光体や有機光半導体等ドラム状で繰り返し使用されるものを用いることができる。
光導電性の感光体を像担持体として用いる場合には、感光体の均一帯電と、光走査装置による光走査により静電潜像が形成される。静電潜像は現像によりトナー画像として可視化される。トナー画像は、感光体が酸化亜鉛紙のようにシート状のものである場合は感光体上に直接的に定着され、感光体が繰り返し使用可能なものである場合には、転写紙やOHPシート(オーバヘッドプロジェクタ用のプラスチックシート)等のシート状記録媒体に転写・定着される。
このような画像形成装置は、光プリンタや光プロッタ、デジタル複写装置等として実施できる。
また、この発明の画像形成装置は、上記感光体を複数個、シート状記録媒体の搬送路に沿って配置し、複数の光走査装置を用いて感光体ごとに静電潜像を形成し、これらを可視化して得られるトナー画像を同一のシート状記録媒体に転写・定着して合成的にカラー画像や多色画像を得るタンデム式の画像形成装置として実施することができる。
図30に、光走査装置100を含む画像形成装置の要部概略図を示す。各色の画像情報が書き込まれる感光体1K,1M,1C,1Yと、光走査装置100を隔てた空間には、各色に対して現像・帯電・感光体クリーニング等、トナーや廃棄トナーの貯蔵を行う作像ユニット2K,2M,2C,2Yが収納されるのが一般的である。
実際の画像形成装置は図30の構成に加えて、紙に画像を定着させる機構、紙を搬送する機構等があるが、図30に示された機構が画像形成の心臓部であり、画像形成装置の大きさを決定する因子となる。
本発明の最終目的としている光走査装置の薄型化が実現されれば、レーザプリンタや複合機といった画像形成装置の内部において、画像形成装置自体のサイズはそのままで作像ユニット2K,2M,2C,2Yに許される空間が広くなる。
作像ユニット2K,2M,2C,2Yには先述のとおりトナーの貯蔵機能も設けられているため、トナー貯蔵部分を大きくすることができれば、ユーザによるトナーの補給回数を少なくすることができる。また、回動によって露光・現像・クリーニングといった作用を繰返し受ける感光体1K,1M,1C,1Yも、サイズを大きくすることができるようになり、耐久性の向上も見込むことができる。
このように、光走査装置の薄型化によって、本発明の画像形成装置を搭載したレーザプリンタ等のユーザは頻繁なメンテナンスや頻繁な補給トナー調達に煩わされなくなるという「使いやすさの向上」を実現することができる。
本発明は、光走査装置の部品点数を低減すると同時に高品質な光走査装置を実現するものである。そのため光走査装置の生産に関わる材料使用量を削減でき、資源採掘量・プラスチックゴミ排出量に関して環境負荷の低減につながるものである。
まず、第1の実施形態を説明する。
図11は本実施形態に係る光走査装置の要部を示す斜視図である。すなわち、光源1〜被走査面8の要部を抜粋して示している。各部分の詳細は以下で別図にて説明する。
[入射光学系]
光源1は、p型、n型半導体材料のから成る一般的な端面発光素子が金属等でパッケージングされた半導体レーザである。図12に、半導体レーザ1の内部に設けられた発光部を示す。一般的にはp型、n型半導体材料を接合したダブルヘテロ接合101が用いられる。
接合101に電流が注入されると、接合101に設けられた活性層からレーザ光が射出される。一般的に、このような構造から射出されるレーザ光は、活性層に平行な方向に偏光していることが知られている。
光源1は、各被走査面8に対応して設けられている。ここでは例として、2つの被走査面8に対応した2光源の入射光学系を挙げている。
次に線像形成レンズ4により光偏向器5に主走査方向に長い線像として導かれる。
線像形成レンズ4の一例を図10に示す。入射面にシリンドリカル面、射出面に直線状の回折面を設けている回折レンズである。線像形成レンズ4は、回折面の強い負分散特性により、光走査装置の温度変動時、光源波長の変動を利用して被走査面上でのピントずれを補正する。
本発明の前提を踏まえた走査光学系は、樹脂レンズが光路中で光偏向器に寄った構成になる。従って副走査断面内で拡大系となる傾向が強く、公差に弱くなるため、温度補正手段として回折光学素子を用いるのが好適である。
図13に光路合成の1形態を示す。合成素子21は、反射面を設けた三角柱プリズム210と、λ/2波長板212、偏光分離面211より成る。合成素子21に求められる機能は、「複数の光束を互いに直交する直線偏光とし、同一の光路上に射出する」ことである。
三角柱プリズム210は一方の光路を他方へ近づけ、λ/2波長板212は、入射する光束の偏光方向を90°回転させ、他方の偏光と直交する形態を実現する。また、偏光分離面211はS偏光を透過し、それと直交するP偏光は反射するという特性をもち、一般に誘電体多層膜やワイヤグリッド等で実現される面である。
図12に示されているように一様な直線偏光を射出する半導体レーザ1の取り付け姿勢を規定することで、図13のように紙面垂直方向と平行な直線偏光を実現できる。
一方、図中下段の光束(S偏光)はλ/2波長板212によりS偏光に変換され、偏光分離面211を透過する。従って偏光分離面211には変換されたP偏光とS偏光が入射し、同一光路上にS偏光、P偏光の光束が射出されることになる。偏光分離素子により異なる光源から発せられた光束を偏光分離するために、光偏向器前で互いに直交する偏光状態である必要がある。
本実施形態で述べた光路合成の形態は一例であり、先述の合成素子21に求められる機能を実現できるのであれば、λ/2波長板212の取り付く位置等が異なった形態でも構わない。
本実施形態における光路合成の形態では、双方の光路長に合成素子21の中で差が生じることがわかる。従って、双方を結像させるためカップリングレンズ2は光路差に応じて調整取り付けされることが望ましく、必然的に双方のカップリングレンズ2の位置は異なる。
図11において、光偏向器5は6面のポリゴンミラーである。面数は本発明の本質とは関係がなく、光走査装置の設計要件に対応させてよい。光偏向器5に入射した2つの光束は、一方が光偏向器5の回転軸と平行な方向に偏光し、他方がそれに垂直な偏光となっている。
光偏向器5により反射された2つの光束は、樹脂レンズ6を透過し、異方性素子65で偏光方向の乱れを補正されたのち偏光分離素子60に入射する。樹脂レンズ6、異方性素子65、偏光分離素子60の順番で配置することにより、樹脂レンズの複屈折の影響を異方性素子にて補正し、偏光分離素子で良好に光束を分割することが可能になる。
異方性素子の形態は後述する。
走査レンズ6は像面上での書込幅及び光路長に応じて設計された単一のレンズであり、ZEONEX等で代表される透明光学樹脂の射出成形で得られたものである。
これにより、部品数を低減できるとともに、光走査装置を薄型化する際にレイアウトが容易になる。
走査レンズ6の複屈折は成形条件や肉厚偏差等で様々に異なるが、ここでは例として、図17のような主軸分布θ(y)と位相差分布Γ(y)を考える。
主軸θは図14におけるyz平面上に定義される角度である。分布がどのようなものであっても、本発明によって補正することができる。図17は、光束の入射方向に走査レンズを見た視点で描かれている。これらの分布は先述した複屈折測定方法で実際に得ることができる。
偏光分離素子60は、図27に示すように、ガラスから成る長尺の三角柱を、誘電体多層膜面60aを接合面として接合したものである。誘電体多層膜は、光源の波長に応じて適切な偏光分離を行えるよう設計されている。
図4に、副走査断面における光走査装置の1形態を示している。図4では、被走査面8に対して、副走査断面内で垂直に入射しているが、画像形成装置の設計に応じて角度がついていてもよい。偏光分離素子60により分離された光束は、ミラーである導光素子7により被走査面8へ導かれる。
導光素子7は長尺のミラーであり、上段の光束や光走査装置の壁面と干渉しないように切り欠きがなされている。導光素子のテーパは、近接して通過する光束のケラレ防止とともに、ユニットハウジングとの干渉を避けるためにも用いられる。テーパを持つ導光素子は公知であるが、本発明の前提を踏まえた光走査装置に組み込むことで、光束のケラレだけでなく光走査装置を囲う筐体(ハウジング)の薄型にも有効となる。
偏光分離素子60を用いていることにより、光走査装置100には主走査平面二段分の厚みしかなく(図4)、従来にない薄型化を実現している。
異方性素子65は、2枚のガラス基板65sに液晶材料を挟み込んだ素子である。液晶を用いた異方性素子は、配向方向を電界等で制御しやすく、また配向状態の空間的分布を容易に実現しやすい。液晶分子の配向方向は主走査方向によって変化している。
それぞれのガラス基板の液晶を挟む面にはポリイミド等の高分子が塗布されており、走査レンズ6の主軸分布θ(y)に対応した方向にラビング処理が為されている。
図18、19に示すように、液晶材料内の液晶分子はラビング方向に沿って配向している。樹脂レンズの複屈折性は、樹脂レンズ長手方向に分布する傾向がある。樹脂レンズ内の主軸も分布するため、異方性素子の主軸もそれに追随させて分布をもたせるのが好適である。
光束は光偏向器によって、光偏向器から放射する方向に走査されるので、走査レンズ主軸分布、ラビング方向、液晶分子65mの配向方向は図20のように対応させられており、ラビング方向及び液晶分子配向方向は走査レンズ6の主軸分布が長手方向に拡大された分布を為している。
ガラス基板65sにはITO(酸化インジウムスズ)等に代表される透明電極65eが蒸着してある。電極は異方性素子65s長手方向に関してエリア分割され、各エリアに異なる電界が印加できるようになっている。主走査方向に対して分布をもつ電界を印加することができるようになり、位相差の主走査方向分布を補正できる。
立ち上り角jは、図16に示すように、光束進行方向に沿って見た場合の|ne−no|の値を変化させるので、図21に示すように、適切に電界を印加することでΓ(y)をキャンセルするような位相差を付与することができる。
実際の印加電圧は、光走査装置に異方性素子65を組み込み、光量などでモニタリングしながら偏光分離特性が最良となるように設定すればよい。本実施例での位相差分布の場合は、図22に示すような電界を印加すればよい。偏光分離特性が最良となっているとき、異方性素子は数式6においてΓ2+Γ1=2πm (mは整数)が略成立している。
これにより、主走査方向(長手方向)に分布する樹脂レンズの複屈折を補正することができる。
この処理のあとで電極65eにつながる配線を取り外せば、異方性素子65は走査レンズ6の複屈折を最適に補償する「受動素子」として取り扱うことができる。
高分子硬化型液晶を用いることで、上記異方性素子の液晶配向状態を固定することができる。従って異方性素子作製時に何らかの方法(電界印加など)で配向を制御したのち受動素子として取り扱うことができるようになり、光走査装置の構成が単純になる。
異方性素子65の主軸分布及び位相差分布は、走査レンズ6の複屈折測定と同様の方法で確かめることができる。
以上のような異方性素子65によって良好な偏光分離が実現される。副走査方向と平行な偏光は図23に示すように他の被走査面へ向かう光路68uに混入することなく正規の光路68lへ反射される。またそれに直交する偏光は図24に示すように68lに混入することなく光路68uへ透過していく。
図25に示すように、異方性素子65のガラス基板65sのラビング方向を、第1の実施形態1のそれと直交するようにした例である。この例でも適切な印加電界を設定することで、走査レンズ6の複屈折を補償することができる。
偏光分離特性が最良となっているとき、数式7においてΓ1−Γ2=(2m+1)π (mは整数)が成立している。
走査レンズ6の成形条件や形状によっては、主軸分布及び位相差分布の程度が小さく、一様と見なすことができることがある。
例えば主軸分布が一様であった場合、異方性素子65のラビング方向は図19や図20のように長手方向に沿った偏差を持たせる必要がなくなり、yz平面内の一方向にのみラビングすればよいことになる。
このような異方性素子65はラビング処理工程が簡単になり生産効率が高い。
また、位相差分布が一様であった場合、電極は図21に示したようなエリア分割をする必要がなく、ガラス基板65sに対して一様に蒸着された透明電極でよい。このような異方性素子65は透明電極蒸着時に複雑な形状のマスクが不要となって生産効率が上がるほか、印加電圧が1つの値でよいことから位相差補償の管理も簡便になる。
図28に示すように、第1の実施形態〜第3の実施形態の任意の1について、偏光分離素子60を樹脂製の長尺平行平板601で置換した例である。入射面601aには、ナノサイズの金属細線が規則的に張り巡らされたワイヤグリッド面である。ワイヤグリッドのパターンは、必要な偏光分離特性に合わせて設計されている。
図29に示すように、第1の実施形態〜第3の実施形態の任意の1について、偏光分離素子60を樹脂製長尺ハーフミラープリズム602で置換した例である。ハーフミラーで分割された光束は互いに直交する関係の偏光子602aにて偏光選択される。
図26に示すように、第1の実施形態〜第5の実施形態の任意の1について、異方性素子65と偏光分離素子60を接合した例である。
図30に画像形成装置の実施の1形態を示す。この画像形成装置はレーザプリンタである。レーザプリンタは感光性の像担持体1K,1M,1C,1Yとして円筒状に形成された光導電性の感光体を有している。像担持体1K,1M,1C,1Yの周囲には、帯電手段としての帯電ローラ3K,3M,3C,3Y、現像装置4K,4M,4C,4Y、クリーニング装置5K,5M,5C,5Y、転写ローラ6K,6M,6C,6Yが配備されている。帯電手段としては「コロナチャージャ」を用いることもできる。
レーザ光により光走査を行う光走査装置100が設けられ、帯電ローラ3K,3M,3C,3Yと現像装置4K,4M,4C,4Yとの間で光走査による露光を行うようになっている。
図30において、符号110は定着装置、符号120は紙搬送路、符号130は中間転写ベルトを示している。
画像形成を行うときは、光導電性の感光体である像担持体1K,1M,1C,1Yが反時計回りに等速回転され、その表面が帯電ローラ3K,3M,3C,3Yにより均一帯電され、光走査装置100のレーザ光の光書込による露光を受けて静電潜像が形成される。形成された静電潜像は所謂「ネガ潜像」であって画像部が露光されている。
トナー画像が転写された後の像担持体1K,1M,1C,1Yの表面は、クリーニング装置5K,5M,5C,5Yによりクリーニングされ、残留トナーや紙粉等が除去される。
2 カップリングレンズ
5 光偏向器
6 樹脂レンズ
8 被走査面
60 偏光分離素子
65 異方性素子
100 光走査装置
Claims (13)
- 半導体レーザ素子と、
上記半導体レーザ素子から放射される光束を後続の光学系にカップリングするカップリングレンズと、
上記カップリングされた光束を光偏向器に導く入射光学系と、
上記光偏向器により偏向された光束を被走査面へ導き結像させる走査光学系と、を有する光走査装置において、
上記走査光学系は、単一あるいは複数の樹脂レンズと、異方性素子と、偏光分離素子とを有し、
上記異方性素子において、光束が入射する面に射影した主軸方向は主走査方向に沿って変化していることを特徴とする光走査装置。 - 請求項1に記載の光走査装置において、
上記走査光学系は、光束の進行方向にともない樹脂レンズ、異方性素子、偏光分離素子の順で配置されていることを特徴とする光走査装置。 - 請求項2に記載の光走査装置において、
上記異方性素子の主軸方向が、その位置に入射する走査光が通過する上記樹脂レンズ上の位置の上記樹脂レンズの主軸方向と略一致する場合、上記樹脂レンズのもつ位相差と上記異方性素子のもつ位相差との和が2πm、直交する場合、上記樹脂レンズのもつ位相差と上記異方性素子のもつ位相差との差がπ(2m+1)(mは整数)であることを特徴とする光走査装置。 - 請求項3に記載の光走査装置において、
上記異方性素子には液晶が用いられていることを特徴とする光走査装置。 - 請求項4に記載の光走査装置において、
上記異方性素子は高分子硬化型液晶から成ることを特徴とする光走査装置。 - 請求項5に記載の光走査装置において、
上記異方性素子の両表面には電極が設けてあることを特徴とする光走査装置。 - 請求項6に記載の光走査装置において、
上記異方性素子の両表面に設けられた電極は、主走査方向に隔てられた分域から成ることを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜7の任意の1に記載の光走査装置において、
上記樹脂レンズは単一であることを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜8の任意の1に記載の光走査装置において、
上記入射光学系は、複数の光束を、それぞれ直交する偏光として上記走査光学系へ導くよう設定されていることを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜9の任意の1に記載の光走査装置において、
さらに導光素子を有し、該導光素子は主走査方向に関して垂直な断面において、台形であることを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜10の任意の1に記載の光走査装置において、
上記光偏向器の回転中心から上記偏光分離素子を隔てる距離は、複数の筒状被走査面の軸間距離よりも大きいことを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜11の任意の1に記載の光走査装置において、
上記入射光学系は、回折光学素子を含むことを特徴とする光走査装置。 - 複数の感光性の像担持体に対して光走査装置による光走査を行って各色に対応する潜像を形成し、該潜像を現像手段で可視化してカラー画像を得る画像形成装置において、
上記光走査装置として、請求項1〜12の任意の1に記載の光走査装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
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