JP2013248797A - 高密度ポリエチレン樹脂製容器及びその成形方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、従来から使用されているブローグレードのHDPE樹脂単独で、優れた表面光沢性を有する、また高い剛性を有するブロー成形容器を提供することを技術的課題とするものである。
【解決手段】 HDPE樹脂製のブロー成形容器の成形方法において、キャビティ面を鏡面仕上げした金型を使用し、金型温度Tmoldを下記式(1)に示されるように、使用するHDPE樹脂の結晶化開始温度Tciと結晶化終了温度Tceに挟まれる範囲とする。
Tce≦Tmold≦Tci ・・・(1)
上記(1)式中、Tciは示差走査熱量計による10℃/分の降温結晶化測定の結晶化に伴う発熱曲線の立ち上がり点、Tceは収束点から求めた温度である。
【選択図】図1
【解決手段】 HDPE樹脂製のブロー成形容器の成形方法において、キャビティ面を鏡面仕上げした金型を使用し、金型温度Tmoldを下記式(1)に示されるように、使用するHDPE樹脂の結晶化開始温度Tciと結晶化終了温度Tceに挟まれる範囲とする。
Tce≦Tmold≦Tci ・・・(1)
上記(1)式中、Tciは示差走査熱量計による10℃/分の降温結晶化測定の結晶化に伴う発熱曲線の立ち上がり点、Tceは収束点から求めた温度である。
【選択図】図1
Description
本発明は、表面光沢性に優れ剛性が高いブロー成形による高密度ポリエチレン樹脂製容器及びその成形方法に関する。
ブロー成形用に材料設計された、ブローグレードの高密度ポリエチレン(以下、HDPEと略記する。)樹脂は、ブロー成形性が良好である、剛性が高い、また化学的に安定であり耐薬品性に優れている、さらに材料コストが低い等の長所を有し、例えばシャンプー用等のブロー成形容器の樹脂材料として、広い分野で従来から使用されている。
一方、HDPE樹脂製のブロー成形による容器は、同じくポリオレフィン系の樹脂であるポリプロピレン(PP)樹脂等の容器に比較して、一般的に表面光沢に乏しく、パッケージングにより商品の装飾性を付与すると云う点では難点がある。
一方、HDPE樹脂製のブロー成形による容器は、同じくポリオレフィン系の樹脂であるポリプロピレン(PP)樹脂等の容器に比較して、一般的に表面光沢に乏しく、パッケージングにより商品の装飾性を付与すると云う点では難点がある。
ここで、HDPE樹脂は低密度ポリエチレン樹脂やPP樹脂等の汎用樹脂に比較して結晶化速度が速く、このためブロー成形で鏡面仕上げした金型を使用すると、金型への密着性が乏しく、成形品表面にヒケが発生し易く、またエアー溜りが発生するため、均一な光沢を得ることが難しい。従って、ブロー成形でHDPE樹脂を使用する際には、キャビティ面をブラスト仕上げした金型を使用することが一般的であり、このことがHDPE樹脂製のブロー成形容器で、表面光沢を十分大きくすることができない主たる原因である。
さらに、ブロー成形には射出成形に比較して分子量が高く、また分子量分布が広いHDPE樹脂を使用するため、押出成形するパリソンの表面には所謂、肌荒れによる微細な凹凸が形成しやすく、この点からも高い表面光沢を得ることが難くなる。
さらに、ブロー成形には射出成形に比較して分子量が高く、また分子量分布が広いHDPE樹脂を使用するため、押出成形するパリソンの表面には所謂、肌荒れによる微細な凹凸が形成しやすく、この点からも高い表面光沢を得ることが難くなる。
特許文献1には、上記のようなHDPE樹脂製のブロー成形容器の表面光沢の問題を解消するため、HDPE樹脂製の基体層の外側にエチレン−プロピレンランダム共重合体等の比較的結晶化速度の遅いポリオレフィン系樹脂を積層する等の手段が記載されている。
しかし、特許文献1に記載がある、表面光沢を得るために結晶化速度の遅いポリオレフィン系樹脂等、他の樹脂を積層する構成では積層パリソンを成形する必要があり、またHDPE樹脂が本来有するブロー成形性が損なわれるので生産性が低下し、製造及び材料コストが上昇すると云う問題がある。
そこで本発明は、従来から使用されているブローグレードのHDPE樹脂単独で、優れた表面光沢性を有する、また高い剛性を有するブロー成形容器を提供することを技術的課題とするものである。
本発明は、HDPE樹脂製ブロー成形容器とその成形方法に関するもので、
まず、上記技術課題を解決するための、本発明の主たる成形方法は、HDPE樹脂製のブロー成形容器の成形方法において、
キャビティ面を鏡面仕上げした金型を使用し、
金型温度Tmoldを下記式(1)に示されるように、使用するHDPE樹脂の結晶化開始温度Tciと結晶化終了温度Tceに挟まれる範囲とする、と云うものである。
Tce≦Tmold≦Tci ・・・(1)
上記(1)式中、Tciは示差走査熱量計(以下、DSCと略記する。)による10℃/分の降温結晶化測定の結晶化に伴う発熱曲線の立上がり点、Tceはこの発熱曲線の収束点から求めた温度である。
まず、上記技術課題を解決するための、本発明の主たる成形方法は、HDPE樹脂製のブロー成形容器の成形方法において、
キャビティ面を鏡面仕上げした金型を使用し、
金型温度Tmoldを下記式(1)に示されるように、使用するHDPE樹脂の結晶化開始温度Tciと結晶化終了温度Tceに挟まれる範囲とする、と云うものである。
Tce≦Tmold≦Tci ・・・(1)
上記(1)式中、Tciは示差走査熱量計(以下、DSCと略記する。)による10℃/分の降温結晶化測定の結晶化に伴う発熱曲線の立上がり点、Tceはこの発熱曲線の収束点から求めた温度である。
HDPE樹脂のブロー成形では、一般的に、キャビティ面をブラスト仕上げした金型を使用し、金型温度を15〜40℃として実施されるが、本願発明者らは、ブロー成形条件を検討するなかで金型温度をHDPE樹脂の降温結晶化温度である120℃近傍と云う比較的高温に設定することにより、キャビティ面を鏡面仕上げした金型でもキャビティ面への密着性を保持することができことを見出した。
上記成形方法はこの検討結果に基づくものであり、
金型温度を上記式(1)の範囲とすることにより、キャビティ面を鏡面仕上げした金型でも、エアブローにより膨張形成された成形品の外表面のキャビティ面への密着性を十分に保持することができ、
従来から使用されているブローグレードのHDPE樹脂単独で、均一で高い表面光沢性を有した容器を提供することが可能となった。
上記成形方法はこの検討結果に基づくものであり、
金型温度を上記式(1)の範囲とすることにより、キャビティ面を鏡面仕上げした金型でも、エアブローにより膨張形成された成形品の外表面のキャビティ面への密着性を十分に保持することができ、
従来から使用されているブローグレードのHDPE樹脂単独で、均一で高い表面光沢性を有した容器を提供することが可能となった。
また、金型温度を上記式(1)の範囲とすることにより、金型温度を15〜40℃とする従来の成形方法に比較して、結晶化度を大きくし、高剛性の壜体を提供することも可能となった。
ここで、金型温度TmoldがTce未満の温度になると、成形品の外表面のキャビティ面への密着性が不十分となり、密着している領域と、密着が不十分な領域で、表面光沢が不均一に成り光沢斑が出現してしまう。
また、Tciを超える温度になると成形品を金型から取出す際に変形すると云う問題、また成形収縮が大きくなってしまうと云う問題が生じる。
また、Tciを超える温度になると成形品を金型から取出す際に変形すると云う問題、また成形収縮が大きくなってしまうと云う問題が生じる。
なお、ブロー成形の場合、成形品の外表面側は金型のキャビティ面に接触するが、内表面側はエアブローの空気に接触しており、エアブローに冷却した空気を使用する、さらには空気を循環させる、所謂、エアーサーキュレーション技術を使用する等により、成形品全体としての冷却効率を上げることができ、
本発明の成形方法のように金型温度を高く設定しても、金型保持時間を含めた成形時間を大きく延長する必要はなく、生産性を一定のレベルで保持することができる。
本発明の成形方法のように金型温度を高く設定しても、金型保持時間を含めた成形時間を大きく延長する必要はなく、生産性を一定のレベルで保持することができる。
本発明の他の成形方法は、上記主たる成形方法において、
金型温度Tmoldを下記式(2)に示されるように使用する高密度ポリエチレン樹脂の結晶化開始温度Tciと結晶化温度Tcpに挟まれる範囲とする、と云うものである。
Tcp≦Tmold≦Tci ・・・(2)
上記(2)式中、Tcpは示差走査熱量計による10℃/分の降温結晶化測定の結晶化に伴う発熱曲線のピーク位置の温度である。
金型温度Tmoldを下記式(2)に示されるように使用する高密度ポリエチレン樹脂の結晶化開始温度Tciと結晶化温度Tcpに挟まれる範囲とする、と云うものである。
Tcp≦Tmold≦Tci ・・・(2)
上記(2)式中、Tcpは示差走査熱量計による10℃/分の降温結晶化測定の結晶化に伴う発熱曲線のピーク位置の温度である。
金型温度を、上記式(2)の範囲とすることにより、より均一で、且つ高い表面光沢を得ることができ、また結晶化度をより高くして高い剛性の容器を得ることができる。
次に、本発明のHDPE樹脂製ブロー成形容器の構成は、上記した本発明の成形方法により成形された容器において、胴部の周壁の外周面のJIS Z8741による光沢度が80%以上である、と云うものである。
鏡面仕上げした金型を用いても、従来のように金型温度を15〜40度℃としてブロー成形した場合には光沢度は10%以下であるが、
上記構成のHDPE樹脂製のブロー成形容器は、キャビティ面を鏡面仕上げした金型を使用し、金型温度(Tmold) を前述した式(1)、あるいは式(2)の範囲とすることにより、光沢度が80%以上と云う、従来のHDPE樹脂製のブロー成形容器にない、PP樹脂製のブロー成形容器にも相当する高い表面光沢度の容器を提供することができる。
上記構成のHDPE樹脂製のブロー成形容器は、キャビティ面を鏡面仕上げした金型を使用し、金型温度(Tmold) を前述した式(1)、あるいは式(2)の範囲とすることにより、光沢度が80%以上と云う、従来のHDPE樹脂製のブロー成形容器にない、PP樹脂製のブロー成形容器にも相当する高い表面光沢度の容器を提供することができる。
本発明のHDPE樹脂製ブロー成形容器の他の構成は、上記した本発明の成形方法により成形された容器において、
胴部の周壁の外表面側層における結晶化度Xm(%)が下記式(3)に示される範囲である、と云うものである。
Xm(%)≧0.95Xr(%) ・・・(3)
式(3)中、結晶化度XmはDSCによる10℃/分の昇温融解測定の結晶の融解に伴う吸熱曲線から算出される融解エンタルピー△Hmm(J/g)とポリエチレン(以下、PEと略記する。)の完全結晶の融解エンタルピー△Hmp(293(J/g)とする。)から次式(4)によって算出される結晶化度であり、
Xm(%)=(△Hmm/△Hmp)*100 ・・・(4)
また、式(3)のXrは、DSC中で使用するHDPE樹脂を190℃で融解して次に室温まで10℃/分で降温結晶化した試料についての、DSCによる10℃/分の昇温融解測定の結晶の融解に伴う吸熱曲線から算出される融解エンタルピー△Hmp(J/g)と前記PEの完全結晶の融解エンタルピー△Hmpから次式(5)によって算出される結晶化度である。
Xr(%)=(△Hmr/△Hmp)*100 ・・・(5)
なお、上記構成で、外表面側層の結晶化度Xmは、容器の胴部の周壁の壁厚の外側半分の結晶化度の平均値とする。
胴部の周壁の外表面側層における結晶化度Xm(%)が下記式(3)に示される範囲である、と云うものである。
Xm(%)≧0.95Xr(%) ・・・(3)
式(3)中、結晶化度XmはDSCによる10℃/分の昇温融解測定の結晶の融解に伴う吸熱曲線から算出される融解エンタルピー△Hmm(J/g)とポリエチレン(以下、PEと略記する。)の完全結晶の融解エンタルピー△Hmp(293(J/g)とする。)から次式(4)によって算出される結晶化度であり、
Xm(%)=(△Hmm/△Hmp)*100 ・・・(4)
また、式(3)のXrは、DSC中で使用するHDPE樹脂を190℃で融解して次に室温まで10℃/分で降温結晶化した試料についての、DSCによる10℃/分の昇温融解測定の結晶の融解に伴う吸熱曲線から算出される融解エンタルピー△Hmp(J/g)と前記PEの完全結晶の融解エンタルピー△Hmpから次式(5)によって算出される結晶化度である。
Xr(%)=(△Hmr/△Hmp)*100 ・・・(5)
なお、上記構成で、外表面側層の結晶化度Xmは、容器の胴部の周壁の壁厚の外側半分の結晶化度の平均値とする。
ここで、上記式(3)は成形品の外表面側の結晶化度Xmが、使用するHDPE樹脂の、成形履歴のない、謂わば、このHDPE樹脂の本来の結晶化度に相当する結晶化度Xrに対してどの程度であるかを評価するためのものである。
従来のように金型温度を15〜40℃としてブロー成形した場合には、胴部の周壁の外表面側層は金型により急冷されるため、その結晶化度は一般的に0.90Xr(%)以下の値となるが、
上記構成のHDPE樹脂製のブロー成形容器は、キャビティ面を鏡面仕上げした金型を使用し、金型温度(Tmold) を前述した式(1)、あるいは式(2)の範囲とすることにより、従来の容器に比較して結晶化度Xmを0.95Xr以上とすることができ、同じHDPE樹脂使用しながら高い剛性を有する容器を提供することができ、周壁の薄肉化による軽量化が可能となる。
従来のように金型温度を15〜40℃としてブロー成形した場合には、胴部の周壁の外表面側層は金型により急冷されるため、その結晶化度は一般的に0.90Xr(%)以下の値となるが、
上記構成のHDPE樹脂製のブロー成形容器は、キャビティ面を鏡面仕上げした金型を使用し、金型温度(Tmold) を前述した式(1)、あるいは式(2)の範囲とすることにより、従来の容器に比較して結晶化度Xmを0.95Xr以上とすることができ、同じHDPE樹脂使用しながら高い剛性を有する容器を提供することができ、周壁の薄肉化による軽量化が可能となる。
本発明のHDPE樹脂製ブロー成形容器のさらに他の構成は、
胴部の周壁の外周面のJIS Z8741による光沢度が80%以上であり、胴部の周壁の外表面側層の次式(6)によって算出される結晶化度Xmが65%以上である、と云うものである。Xm(%)=(△Hmm/△Hmp)*100 ・・・(6)
式(6)中、△Hmm(J/g)はDSCによる10℃/分の昇温融解測定の結晶の融解に伴う吸熱曲線から算出される融解エンタルピーであり、△HmpはPEの完全結晶の融解エンタルピー(293(J/g)とする。)である。
胴部の周壁の外周面のJIS Z8741による光沢度が80%以上であり、胴部の周壁の外表面側層の次式(6)によって算出される結晶化度Xmが65%以上である、と云うものである。Xm(%)=(△Hmm/△Hmp)*100 ・・・(6)
式(6)中、△Hmm(J/g)はDSCによる10℃/分の昇温融解測定の結晶の融解に伴う吸熱曲線から算出される融解エンタルピーであり、△HmpはPEの完全結晶の融解エンタルピー(293(J/g)とする。)である。
上記構成のHDPE樹脂製のブロー成形容器は、前述した本発明の成形方法により実現できるものであり、従来のブローグレードのHDPE樹脂単独のブロー成形容器では実現できなかった、均一で且つ高い表面光沢と、外表面側での高い結晶化度を有する容器を提供するものである。
本発明はHDPE樹脂製のブロー成形容器及びその成形方法であり、
キャビティ面を鏡面仕上げした金型を使用し、金型温度(Tmold)を、使用するHDPE樹脂のDSCで測定した、結晶化開始温度Tciと結晶化終了温度Tceに挟まれる範囲とすることにより、
特に外表面側に結晶化速度の遅いポリオレフィン系樹脂等を積層することなく、従来から使用されているブローグレードのHDPE樹脂単独で、均一で高い光沢の容器を提供することができ、
また、外表面側層の結晶化度を大きくして高い剛性を有する容器を提供することができ、周壁の薄肉化による軽量化ができる。
キャビティ面を鏡面仕上げした金型を使用し、金型温度(Tmold)を、使用するHDPE樹脂のDSCで測定した、結晶化開始温度Tciと結晶化終了温度Tceに挟まれる範囲とすることにより、
特に外表面側に結晶化速度の遅いポリオレフィン系樹脂等を積層することなく、従来から使用されているブローグレードのHDPE樹脂単独で、均一で高い光沢の容器を提供することができ、
また、外表面側層の結晶化度を大きくして高い剛性を有する容器を提供することができ、周壁の薄肉化による軽量化ができる。
以下、本発明の実施の形態を実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1は、HDPE樹脂製のブロー成形容器の一実施例を示すものである。この容器1は楕円筒状の胴部2を有する壜体で、高さが200mm、容量が400mlであり、胴部2の平均肉厚は0.4mmである。
使用したHDPE樹脂は三井化学(株)社製のブローグレードであるHZ6700Bで、カタログ上の密度は0.962g/cm3、メルトインデックスは0.36g/10分である。
図1は、HDPE樹脂製のブロー成形容器の一実施例を示すものである。この容器1は楕円筒状の胴部2を有する壜体で、高さが200mm、容量が400mlであり、胴部2の平均肉厚は0.4mmである。
使用したHDPE樹脂は三井化学(株)社製のブローグレードであるHZ6700Bで、カタログ上の密度は0.962g/cm3、メルトインデックスは0.36g/10分である。
図2はDSCによるHDPE樹脂の降温結晶化の概略説明図であり、HDPE樹脂を190℃の温度で溶融し、その後室温まで降温速度10℃/分で冷却した場合の結晶化に伴う発熱曲線が示されており、横軸は温度(℃)、縦軸は熱量(mW)である。
ここで、図中、ベースラインBLと発熱曲線の立上り部Bを高温側へ外挿した直線Lbの交点を発熱曲線の立上り点である結晶化開始温度Tci、発熱曲線のピーク位置を結晶化温度Tcp、またベースラインBLと発熱曲線の下降部Aを低温側へ外挿した直線Laの交点を発熱曲線の収束点である結晶化終了温度Tceとする。
そして本実施例に使用したHDPE樹脂では、Tciは120℃、Tcpは118℃、Tceは116℃であった。
ここで、図中、ベースラインBLと発熱曲線の立上り部Bを高温側へ外挿した直線Lbの交点を発熱曲線の立上り点である結晶化開始温度Tci、発熱曲線のピーク位置を結晶化温度Tcp、またベースラインBLと発熱曲線の下降部Aを低温側へ外挿した直線Laの交点を発熱曲線の収束点である結晶化終了温度Tceとする。
そして本実施例に使用したHDPE樹脂では、Tciは120℃、Tcpは118℃、Tceは116℃であった。
上記実施例の容器1は、キャビティ面を鏡面仕上げした金型を使用し、金型温度Tmoldを上記結晶化開示温度Tciに相当する120℃に設定しブロー成形したものであり、その外周面は、ヒケや空気溜りの発生は勿論のこと、光沢斑がなく、均一で、且つ高い表面光沢を有するものであった。
次に、上記実施例の容器1との比較のため、金型温度を40℃とし、実施例の容器1と同形状の容器を、同じHDPE樹脂(HZ6700B)を使用して比較例の容器をブロー成形し、実施例と比較例の容器の胴部の周壁について、光沢度、光沢度の均一性、結晶化度Xmについて、下記条件で測定、算出そして評価した。
a.光沢度(%)の測定
JIS Z8741に準拠し、角度60度で測定した。
b.光沢度の均一性の評価
目視にて、空気溜りの発生や光沢斑を観察する。
c.結晶化度Xmの測定、算出
・胴部の周壁の外表面側層、すなわち壁厚の外側半分から測定試料をサンプリングする。
・上記測定試料についてDSCで、その融解エンタルピー△Hmmを測定し、次式によって結晶化度Xm(%)を算出する。
Xm(%)=(△Hmm/△Hmp)*100
上記の式中、△HmpはPEの完全結晶のエンタルピー(293J/gとする。)である。
・融解エンタルピー△Hmmの測定方法
図3はDSCによる融解エンタルピーの測定の概略説明図であるが、この図3に示されるように30℃から10℃/分の等速で昇温し、図中に示される結晶の融解に伴う吸熱曲線とベースラインBLで囲まれる面積(図中ハッチングで示した部分の面積)から融解エンタルピー△Hmm(J/g)を算出する。
a.光沢度(%)の測定
JIS Z8741に準拠し、角度60度で測定した。
b.光沢度の均一性の評価
目視にて、空気溜りの発生や光沢斑を観察する。
c.結晶化度Xmの測定、算出
・胴部の周壁の外表面側層、すなわち壁厚の外側半分から測定試料をサンプリングする。
・上記測定試料についてDSCで、その融解エンタルピー△Hmmを測定し、次式によって結晶化度Xm(%)を算出する。
Xm(%)=(△Hmm/△Hmp)*100
上記の式中、△HmpはPEの完全結晶のエンタルピー(293J/gとする。)である。
・融解エンタルピー△Hmmの測定方法
図3はDSCによる融解エンタルピーの測定の概略説明図であるが、この図3に示されるように30℃から10℃/分の等速で昇温し、図中に示される結晶の融解に伴う吸熱曲線とベースラインBLで囲まれる面積(図中ハッチングで示した部分の面積)から融解エンタルピー△Hmm(J/g)を算出する。
また、上記c.に記載した成形品の結晶化度Xmと比較するため、使用するHDPE樹脂の成形履歴のない、謂わば、このHDPE樹脂の本来の結晶化度に相当する結晶化度Xrを次の手順で測定、算出しXm/Xrを算出した。
・融解エンタルピー△Hmrの測定
DSC中で、使用するHDPE樹脂を190℃で溶解し、次に室温まで10℃/分で降温結晶化した試料について、DSCによる10℃/分の昇温融解測定の結晶の融解に伴う吸熱曲線から、上記△Hmmと同様に△Hmrを算出する。
・下記の式により結晶化度Xr(%)を算出する。
Xr(%)=(△Hmr/△Hmp)*100
本実施例で使用したHDPE樹脂では、△Hmrは205J/gでXrは70%であった。
・融解エンタルピー△Hmrの測定
DSC中で、使用するHDPE樹脂を190℃で溶解し、次に室温まで10℃/分で降温結晶化した試料について、DSCによる10℃/分の昇温融解測定の結晶の融解に伴う吸熱曲線から、上記△Hmmと同様に△Hmrを算出する。
・下記の式により結晶化度Xr(%)を算出する。
Xr(%)=(△Hmr/△Hmp)*100
本実施例で使用したHDPE樹脂では、△Hmrは205J/gでXrは70%であった。
そして、実施例と比較例の容器の上記測定、算出、評価結果は次のようであった。
[実施例の容器]
・光沢度(%);87%
・光沢度の均一性;ヒケ、空気溜り、斑はなく均一で良好
・外表面側層の融解エンタルピー△Hmm;202J/g
・外表面側層の結晶化度Xm;69%
・Xm/Xr;0.99
[比較例の容器]
・光沢度(%);7%
・光沢度の均一性;ヒケ、空気溜りが多数みられ不良
・外表面側層の融解エンタルピー△Hmm;181J/g
・外表面側層の結晶化度Xm;62(%)
・Xm/Xr;0.88
[実施例の容器]
・光沢度(%);87%
・光沢度の均一性;ヒケ、空気溜り、斑はなく均一で良好
・外表面側層の融解エンタルピー△Hmm;202J/g
・外表面側層の結晶化度Xm;69%
・Xm/Xr;0.99
[比較例の容器]
・光沢度(%);7%
・光沢度の均一性;ヒケ、空気溜りが多数みられ不良
・外表面側層の融解エンタルピー△Hmm;181J/g
・外表面側層の結晶化度Xm;62(%)
・Xm/Xr;0.88
上記結果から、本実施例の容器により、金型温度40℃と、従来から一般的に実施されている成形条件による比較例の容器に対して、金型温度を降温結晶化の温度領域まで高くすることにより、表面の光沢度を均一に、且つ80%以上と云う、従来のHDPE樹脂製のブロー成形容器にはない、PP樹脂製のブロー成形容器にも相当する高い光沢度の容器を提供することができることが確認された。
また、外表面側層の結晶化度Xmを、当該HDPE樹脂の本来の結晶化度に匹敵する結晶化度Xrとほぼ同様なレベルまで高めることができ、比較例の容器に対して略10%の軽量化が見込まれることも判明した。
また、外表面側層の結晶化度Xmを、当該HDPE樹脂の本来の結晶化度に匹敵する結晶化度Xrとほぼ同様なレベルまで高めることができ、比較例の容器に対して略10%の軽量化が見込まれることも判明した。
なお、さらに細かく金型温度を変えた検討では次のようなことが判明している。
1)100℃までの温度では、表面光沢は7〜12%程度である。
2)結晶化終了温度Tce(116℃)の直下の115℃では光沢度は80%以上であるが表面光沢が不均一になる。
3) 結晶化開始温度Tci(120℃)を超えると、離型する際に容器が変形する。
4)結晶化終了温度Tce〜結晶化開始温度Tciの温度範囲では、表面光沢が均一で、且つその光沢度は80%以上の高いレベルであるが、その中でも温度が高いほど光沢度が大きくなり、また結晶化度Xmが大きくなる傾向にある。
1)100℃までの温度では、表面光沢は7〜12%程度である。
2)結晶化終了温度Tce(116℃)の直下の115℃では光沢度は80%以上であるが表面光沢が不均一になる。
3) 結晶化開始温度Tci(120℃)を超えると、離型する際に容器が変形する。
4)結晶化終了温度Tce〜結晶化開始温度Tciの温度範囲では、表面光沢が均一で、且つその光沢度は80%以上の高いレベルであるが、その中でも温度が高いほど光沢度が大きくなり、また結晶化度Xmが大きくなる傾向にある。
以上、本発明の構成とその作用効果を実施例に沿って説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
ブロー成形に使用するHDPE樹脂は今回使用した樹脂に限定されるものではなく、ブロー成形可能なHDPE樹脂の範疇で、各種の密度、メルトインデックス等の溶融特性を有するものを使用することができる。
また、容器の形状も図1に示した壜体に限定されることなく様々な形状、容量の容器とすることができる。
ブロー成形に使用するHDPE樹脂は今回使用した樹脂に限定されるものではなく、ブロー成形可能なHDPE樹脂の範疇で、各種の密度、メルトインデックス等の溶融特性を有するものを使用することができる。
また、容器の形状も図1に示した壜体に限定されることなく様々な形状、容量の容器とすることができる。
以上説明したように本発明の成形方法によるブロー成形容器は、ブローグレードのHDPE樹脂単独で、均一で、且つ高い表面光沢の容器を提供することができると共に、高い結晶化度により軽量化が可能なものであり、幅広い利用展開が期待される。
1 ;容器
2 ;胴部
2 ;胴部
Claims (5)
- 高密度ポリエチレン樹脂製のブロー成形容器の成形方法であり、キャビティ面を鏡面仕上げした金型を使用し、金型温度Tmoldを下記式(1)に示されるように、前記高密度ポリエチレン樹脂の結晶化開始温度Tciと結晶化終了温度Tceに挟まれる範囲とすることを特徴とする成形方法。
Tce≦Tmold≦Tci ・・・(1)
上記(1)式中、Tciは示差走査熱量計による10℃/分の降温結晶化測定の結晶化に伴う発熱曲線の立上り点、Tceは前記発熱曲線の収束点から求めた温度である。 - 金型温度Tmoldを下記式(2)に示されるように高密度ポリエチレン樹脂の結晶化開始温度Tciと結晶化温度Tcpに挟まれる範囲とした請求項1記載の成形方法。
Tcp≦Tmold≦Tci ・・・(2)
上記(2)式中、Tcpは示差走査熱量計による10℃/分の降温結晶化測定の結晶化に伴う発熱曲線のピーク位置の温度である。 - 請求項1または2記載の成形方法により成形された容器であり、胴部の周壁の外周面のJIS Z8741による光沢度が80%以上であることを特徴とする高密度ポリエチレン樹脂製ブロー成形容器。
- 請求項1または2記載の成形方法により成形された容器であり、胴部の周壁の外表面側層における結晶化度Xm(%)が下記式(3)に示される範囲であることを特徴とする高密度ポリエチレン樹脂製ブロー成形容器。
Xm(%)≧0.95Xr(%) ・・・(3)
式(3)中、結晶化度Xmは示差走査熱計による10℃/分の昇温融解測定の
結晶の融解に伴う吸熱曲線から算出される融解エンタルピー△Hmm(J/g)とポリエチレンの完全結晶の融解エンタルピー△Hmp(293J/gとする。)から次式(4)によって算出される結晶化度であり、
Xm(%)=(△Hmm/△Hmp)*100 ・・・(4)
また、式(3)中、Xrは示差走査熱量計で、使用するHDPE樹脂を190℃で融解して次に室温まで10℃/分で降温結晶化した試料についての、示差走査熱量計による10℃/分の昇温融解測定の結晶の融解に伴う吸熱曲線から算出される融解エンタルピー△Hmp(J/g)と前記ポリエチレンの完全結晶の融解エンタルピー△Hmpから次式(5)によって算出される結晶化度である。
Xr(%)=(△Hmr/△Hmp)*100 ・・・(5) - 胴部の周壁の外周面のJIS Z8741による光沢度が80%以上であり、胴部の周壁の外表面側層の次式(6)によって算出される結晶化度Xmが65%以上であることを特徴とする高密度ポリエチレン樹脂製のブロー成形容器。
Xm(%)=(△Hmm/△Hmp)*100 ・・・(6)
式(6)中、△Hmm(J/g)は示差走査熱計による10℃/分の昇温融解測定の結晶の融解に伴う吸熱曲線から算出される融解エンタルピーであり、△Hmpはポリエチレンの完全結晶の融解エンタルピー(293J/gとする。)である。
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