JP5929085B2 - 発泡延伸容器及びその製造方法 - Google Patents
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このようなマイクロセルラー技術による発泡を利用した発泡延伸プラスチック容器は、例えば本出願人により提案されている(特許文献1〜4)。
コールドパリソン法は、プラスチックの射出成形により容器用プリフォームを成形し、このプリフォームを一旦冷却し、この後にブロー成形などの延伸成形工程にプリフォームを移して延伸成形を行うことにより容器を製造するというものであり、射出成形によるプリフォームの成形工程と延伸成形によるプリフォームから容器への成形工程とが完全に分離独立しているため、各々の成形工程で最適な条件を設定でき、各成形工程を最高速度に設定できるなど、高速生産や量産の観点から極めて有利であり、さらに、プリフォームをストックでき、最終製品である容器を生産する場所を、プリフォームを生産する場所に依存せず、ユーザーの事情に応じて決定できるなどの利点もあり、特に飲料用のPETボトルなどは、その殆んどがコールドパリソン法によって生産されている。
一方、ホットパリソン法は、プラスチックの射出成形により成形された容器用プリフォームを冷却せず、延伸可能な温度に保持したまま、延伸成形工程に移行して延伸成形を行うことにより容器を製造するという方法である。即ち、この方法はプリフォームの成形に引き続いて連続的に延伸成形が行われるため、延伸成形に際して、成形直後のプリフォームが有する熱を利用することができ、熱エネルギーの有効利用の点で極めて有利であり、また設備費が安価であるという利点も有しており、プリフォームの加熱が難しいために、コールドパリソン法では適用が困難な厚肉容器の製造に有利である。ただし、この方法は、プリフォームの成形にほぼ連動して延伸成形が行われるため、延伸成形条件がプリフォームの成形条件(例えば成形速度)に依存するため、量産性や生産速度の点ではコールドパリソン法に劣るため、多品種小ロット製品(例えば調味液や洗剤などの容器)に適用されている。
即ち、コールドパリソン法では、成形されたプリフォームを一旦冷却した後に延伸成形を行うため、プリフォームの成形工程と延伸成形工程との間に加熱による発泡工程を設けることができ、加熱条件を調整することにより、発泡の程度をコントロールすることができるが、ホットパリソン法では、プリフォームの成形に引き続いて延伸成形が行われるため、プリフォームの成形工程と延伸成形工程との間に独立した発泡工程を設けることができず、発泡をコントロールすることが極めて困難であるという問題があるためである。
例えば、発泡容器では、嵌め込みや螺子係合などによりキャップが固定される容器口部での発泡を抑制することが要求される。発泡による寸法変化、表面平滑性の低下や強度低下は、キャップによる密封性を低下せしめ、さらにはキャップと容器口部との係合を困難とするからである。
実際、特許文献5には、ホットパリソン法による発泡延伸プラスチック容器についての提案がなされているものの、容器口部の発泡抑制に関しては全く教示されておらず、従って、この発泡容器は極めて実用性に乏しい。
本発明の他の目的は、上記の発泡延伸成形容器の製造に使用される容器用発泡プリフォーム及びその製造方法を提供することにある。
前記成形部は、発泡セルを有する発泡領域となっており、前記口部は、発泡セルが存在しない非発泡領域となっていると共に、
前記発泡領域では、前記発泡セルが容器壁の内面側に偏在しており、
前記発泡領域において、器壁の外面側には、発泡セルが存在しない非発泡層が形成されており、器壁中心部から器壁内面の表層部にまで発泡セルが分布しており、器壁中心部に位置する発泡セルが最も大きな径を有していると共に、
(a)器壁中心部と器壁内面の表層部との中間部分に、最も小径の発泡セルが層状に分布していること、
或いは、
(b)器壁内面の表層部には、最も小径の発泡セルが最も高密度で層状に分布していること、
を特徴とする容器用発泡プリフォームが提供される。
(1)前記発泡領域において、器壁の厚みが2.5mm以上であり、該発泡領域に形成されている非発泡層の厚みが、該発泡領域での器壁の厚みの10乃至35%の範囲にあること、
が好ましい。
前記発泡領域では、前記発泡セルが容器壁の内面側に偏在していると共に、
前記発泡領域において、容器壁の外面側には、発泡セルが存在しない非発泡層が形成されており、容器壁中心部から容器壁内面の表層部にまで発泡セルが分布しており、容器壁中心部に位置する発泡セルが最も大きな長さを有していると共に、
(A)容器壁中心部と容器壁内面の表層部との中間部分に、最も長さの短い発泡セルが層状に分布していること、
或いは、
(B)容器壁内面の表層部には、最も長さの短い発泡セルが最も高密度で層状に分布していること、
を特徴とする発泡延伸容器が提供される。
(2)前記発泡領域において、容器壁の厚みが0.3mm以上であり、該発泡領域に形成されている非発泡層の厚みが、該発泡領域での容器壁の厚みの10乃至35%の範囲にあること、
が好ましい。
前記金型キャビティを形成する金型として、前記口部に対応する部分が前記成形部に対応する部分に比して冷却能力が高く設定されている金型を使用し、
前記樹脂溶融物の前記金型キャビティ内への射出充填は、前記金型キャビティ内を高圧に保持し且つ発泡が生じないように保圧をかけながら行われ、
前記口部は、前記保圧を解除した後にも発泡が生じないように前記金型によって強冷却され、
前記成形部は、保圧を解除した後の段階で器壁中心部から発泡が生じるが、該成形部の外表面及び内表面では前記金型が開放された段階では発泡が生じないように、該金型によって弱冷却され、
前記金型から取り出された前記成形部について、その内面側から選択的に加熱を行うことにより、器壁中心部からの発泡と共に、該成形部の内面側からも発泡を進行せしめることを特徴とする容器用発泡プリフォームの製造方法が提供される。
例えば、容器口部に発泡セルが存在していないため、発泡による寸法変化、強度低下或いは表面平滑性の低下など、キャップとの係合性やキャップによるシール性などの特性低下を有効に回避することができ、その実用性を確保することができる。従来提案されているホットパリソン法による発泡延伸容器の製造法では、容器口部での発泡を避けることができず、その実用性が阻害されていたが、本発明によって、容器口部での発泡を避けることができ、その実用性を確保できたことは、本発明の大きな利点である。
ホットパリソン法を利用して発泡容器を製造する場合、プリフォームから容器に延伸成形される間に、成形されたプリフォームが有している熱によって発泡が行われる。このため、最も温度の高い容器壁中心部から発泡セルが形成され、基本的には、内面側及び外面側の何れにも偏らず、容器壁の中心から内面側及び外面側に均等に分布することとなる。しかしながら、本発明の容器では、発泡セルが容器壁の内面側に偏在しているのであり、このことは、プリフォームから容器に延伸成形される間に、容器壁の内面側に相当する部分からも積極的に加熱されて発泡が進行していることを意味しているものである。
しかるに、本発明においては、容器壁の内面側に相当する部分からプリフォームを加熱して発泡を行っているため、発泡セルの数が増大することとなり、内面側からの加熱条件を選択することによって、内面側から形成される発泡セルの大きさや密度を調整することができ、これにより、遮光性のさらなる向上を実現することができる。
本発明の容器用発泡プリフォーム及び発泡延伸容器は、不活性ガスが含浸されている樹脂溶融物を用いてのホットパリソン法により成形されるものであり、図1に示されているように、射出成形による容器用プリフォームを成形するプリフォーム成形工程、成形された容器用プリフォームの成形部(特に器壁中心部)を延伸可能な温度に保持したまま発泡させる発泡工程(この工程で容器用発泡プリフォームが得られる)、得られた発泡プリフォームの成形部を延伸可能な温度に保持したままの状態で延伸成形を行う延伸成形工程とからなるものである。
一般に、装置の規模などによっても異なるが、プリフォーム成形工程の終了時(プリフォームを成形型からの取り出し時)から延伸成形終了時(プリフォームの成形部の延伸成形型への接触時)までの時間は、大まかにいって、10〜30秒程度である。
本発明において、容器の製造に用いる原料樹脂としては、不活性ガスの含浸が可能である限り特に制限されず、それ自体公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体などのオレフィン系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル系共重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらの共重合ポリエステル等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリフエニレンオキサイド樹脂;ポリ乳酸など生分解性樹脂;などを単独で或いは2種以上をブレンドして用いることができる。特に、この成形体を容器の成形に用いる場合には、オレフィン系樹脂やポリエステル樹脂が好適であり、中でもポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)は、容器用の樹脂としては最適であり、本発明の発泡延伸容器にも最も好適に使用される。
もちろん、リサイクル適性を気にしなければ、着色剤やバリア等の機能性付与を目的とした添加剤の配合も可能である。
上記の樹脂の溶融物に含浸させる不活性ガスは、発泡剤として機能するものであり、一般に、窒素ガスや炭酸ガスなどが使用される。
本発明において、上記のようにしてガスが含浸した樹脂溶融物は、射出成形によって高圧に保持された金型内に射出充填される。この射出プロセスを説明するための図2を参照して、全体として1で示す射出金型は、冷却保持されているシェル金型3とコア金型5とを有しており、これら金型3,5によりキャビティ7が形成され、キャビティ7には、射出成形機(図示せず)に連なる射出ノズル9から樹脂溶融物が射出充填されるようになっている。また、キャビティ7には、ガス口10が連通している。
また、口部51は、延伸されない部分であり、キャップと螺子係合する螺子部51aと、搬送等に利用するサポートリング51b(成形される容器のタイプによってはサポートリング51bが無いものもある)とを有している。従って、このようなプリフォーム50をブロー成形して得られる容器60は、プリフォーム50の口部に対応する口部61、プリフォームの成形部52に対応する胴部63及び底部65を有しており、口部61は、プリフォーム50の口部51と同様、螺子部61a及びサポートリング61bを有している。
このような形状から理解されるように、プリフォーム50(及び容器60)の口部51(容器60の口部61)での発泡は避けなければならない。発泡による寸法安定性の低下、強度低下、表面平滑性等の低下は、キャップとの係合不良やシール性の低下をもたらすからである。キャップとの係合不良やシール性の低下を避けるためには、螺子部51a(容器61の61a)の発泡はとくに避けるべきである。
また、成形部52は、その器壁中心部が延伸成形可能な温度に保持されていることが必要であるが、外表面部分及び内表面部分の温度を延伸成形可能な温度以上に維持することは必ずしも必要ではない。例えば、外表面部分は、後述する延伸成形工程にプリフォームが導入されるまでの間に、中心部からの伝熱により延伸成形可能な温度に昇温し得るのであれば、延伸成形可能な温度よりも低温領域まで冷却されていてもよい。また、内表面部分は、キャビティ7からプリフォームを取り出した後に選択的に加熱されて発泡が行われるため、少なくともキャビティ7内での発泡が抑制される程度の温度であればよい。この点ついては後述する。
軽量化率=[(M0−M1)/M0]×100
式中、
M0は、不活性ガスを含浸させずにヒケ等の成形不良がないように条件設定して
射出することにより得られたプリフォームの重量を示し、
M1は、不活性ガスを含浸させて得られたガス含浸プリフォームの重量を示す、
で表される。即ち、保圧圧力を大きくするほど軽量化率は低下し、また、保圧時間を長くするほど、軽量化率は低くなるので、これを利用して、軽量化率が0%となるように保圧条件を設定することができる。
上記のようにしてキャビティ7内にガスが含浸した樹脂溶融物を射出充填することによりプリフォーム50が賦形され、該プリフォーム50が所定の温度まで冷却された後、保圧が解除され、次いでシェル金型3(口部金型3aと成形部金型3b)及びコア金型5を開放し、キャビティ7内から該プリフォーム50を取り出すが、ホットパリソン法では、このプリフォーム50の成形部52の温度が延伸成形可能な温度に維持されているうちに、これを延伸成形工程に導入する。即ち、コールドパリソン法では、直ちにプリフォーム50を延伸成形工程に導入するわけではないため、十分に金型冷却された後にキャビティ7内からプリフォーム50が取り出されるが、ホットパリソン法では、成形部52の器壁中心部が少なくとも延伸成形可能な温度(ガラス転移温度以上である)に維持されていなければならないのであり、これが、ホットパリソン法とコールドパリソン法の大きな違いである。
このために、本発明においては、前述したように、口部51を冷却する部分の金型として冷却能の大きなものを使用し、口部51を強冷却するわけである。
また、発泡開始温度に達しても、実際に気泡が多数生成し成長するまでにはある程度の時間を要する。ホットパリソン法による延伸成形において、キャビティからプリフォームを取り出して延伸成形するまでの時間が例えば10〜30秒程度の場合、実質の発泡開始温度は、ガラス転移温度(Tg)よりも15乃至25℃程度高い温度となる。
尚、延伸成形可能な温度は、前述した発泡可能な温度と同様、樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度であり、一般に、ガラス転移温度(Tg)よりも5乃至15℃程度高く且つ樹脂の融点未満の温度範囲である。
尚、この場合、中心部の温度やガス溶解量によっては、保圧を解除した時点で発泡が開始することもある。
しかるに、本発明においては、このような中心部からの発泡と同時に、プリフォーム51の内面側から加熱を行い、プリフォーム51の内面を発泡開始温度以上とすることにより、プリフォーム51の内面側からも発泡を進行させることが必要であり、これにより、発泡セルが容器壁中心から内面側に偏在する発泡構造を発現させることができる。
即ち、発泡によって球形に近い形状の発泡セルAが形成されるが、図4から理解されるように、プリフォーム51の内面側から加熱を行った場合、成形部52の内面側から外面側に向かっての相対的な温度分布は、中心部O及び内面が高温部となり、中心部Oと内面との間の部分が中温部となり、外面が最も低温となる。即ち、このような温度分布にしたがって、中心部O及び内面側に存在する発泡セルAの径は大きく、中心部Oと内面との間の部分や中心部Oから外面側に形成される発泡セルAの径は、小さくなり、さらに、外面側には、発泡セルAが存在していない層が形成される。
例えば、図4において、内面から中心部Oよりもやや外面側までの領域が、発泡セルAが存在している発泡層X1となっており、少なくとも中心部Oから内面の全体にわたって発泡セルAが分布しており、その外面側が発泡セルが存在していない非発泡層Yとなっている。
即ち、成形部52の中心部の温度が発泡開始温度に近い温度であれば、この中心部Oの温度は、キャビティ7からプリフォーム50を取り出してから短時間で発泡開始温度よりも低い温度に降下して発泡が停止し(或いは中心部Oから発泡開始温度以上に昇温する領域が狭くなる)、従って、発泡層X1の厚みは薄く、非発泡層Yの厚みは厚くなる。
また、成形部52の外面の温度が低温であるほど、外面近傍の温度が発泡開始温度以上に上昇し難くなり、この結果、外面側に厚い非発泡層Yが形成されることとなる。
一般に、この非発泡層Yの厚みは、成形部52の肉厚dの10乃至35%程度の範囲であることが、発泡による外観特性の低下等を有効に回避しつつ、発泡による利点が最大限に活かされた発泡延伸容器を得る上で好適である。
尚、中心部Oの発泡セルA1とは、図4に示されている中心線Oに重なって存在している発泡セルを意味する。
このような発泡構造を有する発泡プリフォーム50では、発泡セルAが多く形成され、しかも発泡セルA同士の重なりも多いため、遮光性に優れた発泡延伸容器の製造に極めて有利である。
例えば、図4に比して内面加熱の程度をマイルドに設定し、加熱温度を低くする(例えばガラス転移点Tgに近い温度に加熱する)ことにより、図5に示すように、内面表層部に微細な発泡セルA4を多く、且つ高密度で形成することができる。このような場合にも、中心部O及び内面表層部からの伝熱によって発泡セルが形成されていくため、中心部Oに最も大径の発泡セルA1が分布し、少なくとも中心部Oから内面表層部の全体にわたって発泡セルAが形成されると共に、内面表層部側にはかなり多数の小さな発泡セルA4が分布することとなる。このような発泡構造のプリフォームから得られる発泡延伸容器では、特に短い長さの発泡セルが内面側に極めて多数形成され、遮光性が一層向上したものとなる。
本発明においては、キャビティ7から取り出されたプリフォーム50は、その成形部52の温度が延伸成形可能な温度に保持されているうちに、ブロー成形等の延伸成形に付され、これにより、図3に示されているように、プリフォーム50に対応して、螺子部61aとサポートリング61bとを有している口部61と、胴部63及び底部65とを有する発泡延伸容器60が得られる。
即ち、かかる容器においては、胴部63及び底部65がプリフォーム50の成形部52に相当しており、この部分が、前述した発泡セルAが存在している発泡領域となっており、一方、口部61は、発泡セルAが全く存在しない非発泡領域となっている。
図6から理解されるように、延伸によって、前述した発泡セルAは延伸方向に引き伸ばされ、偏平状の発泡セルBとなり、このような偏平状発泡セルBによって、発泡層X2が形成されている。
また、容器の外面側には、プリフォーム50に対応して、発泡セルBが存在していない非発泡層Zが形成される。
例えば、軸方向(高さ方向)及び周方向の二軸方向に延伸されるブロー成形では、通常、この方向での延伸倍率が2乃至4倍程度となるように延伸され、軸方向のみについて一軸方向に延伸が行われるプラグアシスト成形などでは、この方向での延伸が最大延伸方向となり、上記と同様の延伸倍率で延伸を行って、上記のような大きさの偏平状発泡セルB1が形成されるようにするのがよい。
さらに上記のような厚肉容器において、非発泡層Zの厚みは、該容器壁の胴部63の厚みの10乃至35%、特に15乃至25%の範囲にあることが好ましい。このような非発泡層Zの厚み調整により、発泡による不利益を有効に回避しながら、遮光性の向上、軽量化及びリサイクル性など、発泡による利点を最大限に活用することができる。この厚みが薄いと、容器壁の全体に偏平状の発泡セルBが分布している状態になり、強度やガスバリア性が損なわれ、また外観特性が損なわれることもあるからである。
図7においては、図5の内面表層部Qに相当する領域Pが表層部に形成されており、微細な長さの発泡セルB2が高密度で形成されている。このような領域Pが発泡領域に形成されている発泡延伸容器では、その遮光性はさらに高められており、例えば、可視光に対しての光線透過率が15%以下とさらに低減されている。
かかる容器は、調味料、シャンプーなどの洗剤に加え、化粧品などの高級感を要求される分野での容器として極めて有用である。勿論、飲料等の分野でも使用できることはいうまでもない。
射出成形金型から取り出されたプリフォームは、プリフォーム温度を調整させるために10から30秒程度のアニール過程を経て、500mlのボトルへ延伸ブロー成形される。このとき、縦横の延伸倍率はそれぞれ約3倍である。
ブロー成形直前のプリフォームを抜き取り、水冷して発泡を停止させた。その後、口部および胴部(中央部)の発泡状態を、目視あるいは電子顕微鏡による断面観察により確認した。延伸ブロー成形後のボトルについては、胴部中央付近を切り出し、最大延伸方向断面の発泡セルの様子を電子顕微鏡で観察した。
(2)遮光性能評価:
得られたボトルの胴部中央付近を切り出し、分光光度計((株)島津製作所UV−3100PC)を用い、積分球式測定法により、波長500nmにおける全光線透過率を測定した。
発泡射出成形機のホッパからPET樹脂を投入して加熱溶融させながら、加熱筒の途中から樹脂量に対して0.13wt%の窒素ガス発泡剤を供給し、500mlボトル用のプリフォーム(31g、全長110mm、胴部最大肉厚約4.2mm)を成形した。この際、充填開始に先立ち金型内を5MPaの高圧エアで満たし(いわゆるカウンタープレッシャー法)、充填完了とほぼ同時に脱圧した。
金型冷却水温度は、口部を15℃、胴部を25℃に設定した。充填保圧は、圧力50MPa、時間20秒(この内、充填時間は約3秒)とし、保圧完了後の金型内での冷却時間は1秒とした。
射出成形後、金型から取り出した直後からプリフォーム胴部で発泡が開始する様子が観察できた。そのプリフォームを室温で10秒間保持し、プリフォーム表面温度を接触式温度計でピーク温度を測定するとともに、水冷して発泡を停止し断面観察を行った。
ボトル成形する場合には、射出成形金型から取出したプリフォームをただちに延伸ブロー成形機に搬送し、再加熱を行った。再加熱は、内面側の加熱については高温に加熱した鉄芯をプリフォーム内部に挿入してプリフォーム胴部内表面に対して10秒間の加熱を行った。外面側については、赤外線ヒータを用い、外層側に発泡セルが生じず、かつ延伸可能な温度を維持できるよう保温程度の弱い加熱を行った。再加熱に続いて、延伸ブロー成形によりボトル形状の容器を成形した。
再加熱後のプリフォーム外観を図8−aに示す。この外観写真にから明らかのように、口部には発泡セルがまったく見られず、胴部には発泡セルが形成されていた。胴部発泡部の断面写真を図9−aに示す。外層にはプリフォーム厚みに対しておよそ25%の非発泡層があり、中心部および内層には発泡セルが形成されていた。中心部(全体厚みの約50%)の発泡セルは平均セル径が84μmであり、外面および内面に向かって小径になっていた。また、内層(全体厚みの約25%)には平均セル径が45μmの発泡セルが高密度で分布していた。この内層側の発泡セルは、後に記載する比較例1との比較から、射出成形後の内面側の再加熱により発泡が進行したものと考えられる。
また、得られたボトルは、外面に存在する厚い非発泡層の存在により、表面平滑で光沢感のある良好な外観を有していた。胴部の全光線透過率は11.3%であり、高い遮光性能を有していた。
実施例1のプリフォームの再加熱に関して、内面加熱の鉄芯温度を実施例1より高くし、かつ加熱温度を5秒に変更した以外は、実施例1と同様にしてプリフォームおよびボトルを成形した。
再加熱後のプリフォームは、実施例1と同様に口部が非発泡で、胴部が発泡していた。胴部については、外層に厚い非発泡層が形成され、中心部においては中心に大きな発泡セルがあり内外面に向かって発泡セルが小さくなっており、おおよそ実施例1と同様な状態であったが、内層部の発泡構造が実施例1とは異なっていた。すなわち、図4の模式図のごとく、実施例1と比べると内表面付近に比較的大きな発泡セルが形成されており、中心部と内表面の中間部分にもっとも小さな発泡セルが形成されていた。
このような発泡構造となった理由は、実施例1と比べて内面加熱の鉄芯温度が高かったために内表面の発泡セルが大きく成長したことと、再加熱時間が短かったために中心部と内表面の中間部分の温度がさほど高くならなかったことから発泡セルがあまり成長しなかったためと考える。
ボトルにおける発泡構造は、前述のプリフォームの発泡構造を延伸方向に伸ばしたような構造となっていた。また、ボトル胴部の全光線透過率は17%であり、高い遮光性能を有していた。
プリフォームを射出成形した後の再加熱をしなかった以外は実施例1と同様にしてボトルを成形した。プリフォームにおいて口部は非発泡であり、またプリフォーム温度は延伸成形に適した温度を有していた。また、図9−bに示すプリフォーム胴部の断面写真から明らかのとおり、外層に厚い非発泡層が形成され、中心部には大きな発泡セルが形成され内外表面に向かって小さな発泡セルとなっている点は、実施例1と同様であったが、内層には発泡セルが見られず、外層と同様な厚い非発泡層となっていた。
ボトル胴部の全光線透過率は28%であり、実施例に比べて遮光性能が劣っていた。
実施例1と同じ射出成形機を用い、プリフォーム成形金型を25g(全長約100mm、胴部最大肉厚約3.2mm)用に変更して500ml用プリフォームを成形した。このとき金型冷却水温度を口部10℃、胴部50℃とし、充填保圧を圧力20MPa、保圧時間を6秒、金型内冷却時間を0秒として、プリフォームを成形した。なお、充填保圧圧力20MPaは、発泡剤を含まない非発泡プリフォームを成形する時の標準的な圧力範囲であり、格別低い圧力ではない。
プリフォームを金型から取出した後、直ちに延伸成形機に搬送して、ボトルを成形した。
延伸成形直前に取出したプリフォームを水冷して発泡を停止した状態の外観写真を図8−bに示す。この写真からわかるように、プリフォームの胴部のみならず口部に発泡セルが形成されていた。得られたボトルにおいても当然口部が発泡しており、口部の外観が悪いのみならず、密封性や寸法安定性が懸念された。
3:シェル金型
(3a:口部金型、3b:成形部金型)
5:コア金型
7:キャビティ
9:射出ノズル
10:ガス口
50:プリフォーム
52:成形部
60:発泡延伸容器
63:胴部
65:底部
A:球形状発泡セル
B:偏平状発泡セル
X1、X2:発泡層
Y,Z:非発泡層
Claims (9)
- 口部と該口部に連なる成形部とを有する樹脂一体成形品からなり、
前記成形部は、発泡セルを有する発泡領域となっており、前記口部は、発泡セルが存在しない非発泡領域となっていると共に、
前記発泡領域では、前記発泡セルが容器壁の内面側に偏在しており、
前記発泡領域において、器壁の外面側には、発泡セルが存在しない非発泡層が形成されており、器壁中心部から器壁内面の表層部にまで発泡セルが分布しており、器壁中心部に位置する発泡セルが最も大きな径を有していると共に、器壁中心部と器壁内面の表層部との中間部分に、最も小径の発泡セルが層状に分布していることを特徴とする容器用発泡プリフォーム。 - 口部と該口部に連なる成形部とを有する樹脂一体成形品からなり、
前記成形部は、発泡セルを有する発泡領域となっており、前記口部は、発泡セルが存在しない非発泡領域となっていると共に、
前記発泡領域では、前記発泡セルが容器壁の内面側に偏在しており、
前記発泡領域において、器壁の外面側には、発泡セルが存在しない非発泡層が形成されており、器壁中心部から器壁内面の表層部にまで発泡セルが分布しており、器壁中心部に位置する発泡セルが最も大きな径を有していると共に、器壁内面の表層部には、最も小径の発泡セルが最も高密度で層状に分布していることを特徴とする容器用発泡プリフォーム。 - 前記発泡領域において、器壁の厚みが2.5mm以上であり、該発泡領域に形成されている非発泡層の厚みが、該発泡領域での器壁の厚みの10乃至35%の範囲にある請求項1または2に記載の容器用発泡プリフォーム。
- 延伸方向に引き伸ばされた形状の発泡セルが分布している発泡領域が胴部及び底部に形成されており、口部が発泡セルが存在しない非発泡領域となっている発泡延伸容器において、
前記発泡領域では、前記発泡セルが容器壁の内面側に偏在していると共に、
前記発泡領域において、容器壁の外面側には、発泡セルが存在しない非発泡層が形成されており、容器壁中心部から容器壁内面の表層部にまで発泡セルが分布しており、容器壁中心部に位置する発泡セルが最も大きな長さを有していると共に、容器壁中心部と容器壁内面の表層部との中間部分に、最も長さの短い発泡セルが層状に分布していることを特徴とする発泡延伸容器。 - 延伸方向に引き伸ばされた形状の発泡セルが分布している発泡領域が胴部及び底部に形成されており、口部が発泡セルが存在しない非発泡領域となっている発泡延伸容器において、
前記発泡領域では、前記発泡セルが容器壁の内面側に偏在していると共に、
前記発泡領域において、容器壁の外面側には、発泡セルが存在しない非発泡層が形成されており、容器壁中心部から容器壁内面の表層部にまで発泡セルが分布しており、容器壁中心部に位置する発泡セルが最も大きな長さを有していると共に、容器壁内面の表層部には、最も長さの短い発泡セルが最も高密度で層状に分布していることを特徴とする発泡延伸容器。 - 前記発泡領域において、容器壁の厚みが0.3mm以上であり、該発泡領域に形成されている非発泡層の厚みが、該発泡領域での容器壁の厚みの10乃至35%の範囲にある請求項4または5に記載の発泡延伸容器。
- 前記可視光領域において、可視光に対する光線透過率が20%以下である請求項4〜6の何れかに記載の発泡延伸容器。
- 不活性ガスが含浸されている樹脂溶融物を、金型キャビティ内に射出充填することにより口部と口部に連なる成形部とを有する形状の容器用発泡プリフォームを製造する方法において、
前記金型キャビティを形成する金型として、前記口部に対応する部分が前記成形部に対応する部分に比して冷却能力が高く設定されている金型を使用し、
前記樹脂溶融物の前記金型キャビティ内への射出充填は、前記金型キャビティ内を高圧に保持し且つ発泡が生じないように保圧をかけながら行われ、
前記口部は、前記保圧を解除した後にも発泡が生じないように前記金型によって強冷却され、
前記成形部は、保圧を解除した後の段階で器壁中心部から発泡が生じるが、該成形部の外表面及び内表面では前記金型が開放された段階では発泡が生じないように、該金型によって弱冷却され、
前記金型から取り出された前記成形部について、その内面側から選択的に加熱を行うことにより、器壁中心部からの発泡と共に、該成形部の内面側からも発泡を進行せしめることを特徴とする容器用発泡プリフォームの製造方法。 - 請求項8に記載の製造方法により得られた容器用発泡プリフォームを、該成形部の器壁中心部の温度が延伸成形可能な温度範囲に維持されているうちに、延伸成形工程に搬送し、該プリフォームの成形部を延伸成形することを特徴とする発泡延伸プラスチック容器の製造方法。
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