JP5808841B2 - ポリエチレン系樹脂押出発泡シートの製造方法 - Google Patents

ポリエチレン系樹脂押出発泡シートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明はポリエチレン系樹脂押出発泡シートの製造方法に関する。
ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートは、緩衝材や包装材、包装容器等の各分野に広く使用されてきており、その代表的なものとして、低密度ポリエチレン系樹脂押出発泡シートがある。低密度ポリエチレン系樹脂押出発泡シートは、包装用シートや緩衝用シートとして使用されているが、低密度ポリエチレン系樹脂自体の特性から、剛性に欠け、耐たわみ性が弱い発泡シートであり、取り扱いに難点があるものであった。低密度ポリエチレン系樹脂押出発泡シートと同程度の緩衝性を有し、剛性の点で低密度ポリエチレン系樹脂押出発泡シートより優れる発泡シートとしては、ポリプロピレン系樹脂押出発泡シートが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂押出発泡シートは耐寒衝撃性に劣るという難点がある。また、低密度ポリエチレン系樹脂押出発泡シートやポリプロピレン系樹脂押出発泡シートに比べ剛性があり、耐寒衝撃性や耐熱性等に優れるものとしては、高密度ポリエチレン系樹脂押出発泡シートが挙げられる。しかし、高密度ポリエチレン系樹脂は、溶融粘度に対して溶融張力が低く、また、樹脂の結晶化度が高いことから、僅かな温度変化によって樹脂の溶融張力が大きく変化する性質があり、このため、高発泡倍率を有し、熱成形に適した発泡シートを得ることは困難であった。
一方、高密度ポリエンチレン系樹脂を用いて押出発泡により発泡シートを製造する方法が種々提案されている。例えば、ポリエチレン系樹脂を改質して発泡に適するようにする方法や高密度ポリエチレン系樹脂と低密度ポリエチレン系樹脂とを混合する方法等がある。特許文献1には、高密度ポリエチレンを過酸化物及び抗酸化剤で処理して改質し、発泡に適した溶融粘度と溶融張力に制御して押出発泡シートを製造する方法が記載されている。特許文献2には、190℃におけるダイスエルが1.50以上の高密度ポリエチレン系樹脂、または高密度ポリエチレン系樹脂60〜95重量%と密度0.915g/cm〜0.930g/cmの低密度ポリエチレン系樹脂5〜40重量%との混合樹脂で、190℃におけるダイスエル(JIS K7199)が1.55以上である樹脂を押出発泡して発泡シートとすることが記載されている。特許文献3には、密度930g/L以下のポリエチレン10重量%〜50重量%と密度930g/Lを越え970g/L以下のポリエチレン50重量%〜90重量%との混合物を押出発泡して見かけ密度70g/L〜350g/Lの発泡シートとすることが記載されている。
また、発泡性や発泡体の物性等を改良したポリエチレン系樹脂が、特許文献4や特許文献5に提案されている。特許文献4には、高密度ポリエチレンに特定数の長鎖分岐を導入し、溶融張力を高めたポリエチレン系樹脂を用いることにより、良好な発泡成形体が得られることが開示されている。特許文献5には、160℃における溶融張力が80mN以上の無架橋の高密度ポリエチレン系樹脂を用い、発泡剤として炭酸ガスを使用し、押出時の樹脂温度を樹脂の融点より−9℃〜−7℃の範囲として押出し、断熱性が高く、耐熱性、低温脆性およびリサイクル性を備えた高密度ポリエチレン系樹脂発泡体が開示されている。
特表2001−505605号公報 特開2005−290329号公報 特開2004−43813号公報 特開2006−96910号公報 特開2008−222818号公報
しかし、特許文献1に記載の発泡体は、高密度ポリエチレンを過酸化物及び抗酸化剤で処理し架橋した発泡体であり、その発泡倍率は倍率が3倍程度のものであり、高発泡倍率の発泡シートは得られていない。また、得られた発泡シートには過酸化物が残留しており包装用シートとして用いた場合、被包装物を汚染したりするおそれがあり、特に食品と接触するような用途に用いることは衛生面等の点から問題がある。また架橋物であることからリサイクル使用する上でも問題があった。また、特許文献2に記載の発泡体においても、高発泡倍率の発泡シートは得られていなかった。特許文献3に記載の発泡シートにおいては、見かけ密度が98g/L程度の発泡シートであるものの、緩衝性を有し、しかも剛性を求められるような用途、例えば、青果物等の果菜容器としては、課題を残すものであった。また、その発泡シートは熱成形性の点において、必ずしも十分満足できるものではないことがあった。特許文献4,5に記載の発泡体においては、ポリエチレン系樹脂の溶融張力が高いために、発泡性は良好であるものの、得られた発泡体は剛性や脆性、熱成形性に劣るものであった。
発泡シートを果菜用成形容器のような包装用途として使用する場合、特に被包装物が傷つき易い青果物等のものの場合には、被包装物を衝撃から保護するために、優れた緩衝性を有するとともに、形状を保持する剛性を有することが要求される。
本発明は、高密度ポリエチレン系樹脂を主成分とする樹脂からなる高発泡倍率の発泡シートであって、低温における耐衝撃性に優れると共に緩衝性を有し、形状保持性や剛性(耐撓み性)があり、熱成形性が良好である押出発泡シートを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記記載の物性を有するポリエチレン系樹脂押出発泡シートについて種々の点から多角的に検討を重ね、上記本発明の目的を達成するためには、発泡性の良好な特定のポリエチレン系樹脂を用い、さらに、このポリエチレン系樹脂に特定のポリエチレン系樹脂を配合した樹脂を基材樹脂とすることによって、熱成形性と剛性を向上させることができることを見出し、本発明を為すに至った。
尚、本明細書において「ポリエチレン系樹脂押出発泡シート」を単に「発泡シート」ということがある。また本発明の特定の高密度ポリエチレン系樹脂を主成分とする樹脂を単に「高密度ポリエチレン系樹脂」、また本発明で用いられる特定の高密度ポリエチレン系樹脂と他のポリエチレン系樹脂との混合樹脂を、「ポリエチレン系樹脂(I)」または単に「ポリエチレン系樹脂」といい、またこれらを総称して「ポリエチレン系樹脂」または「樹脂」ということがある。
本発明は、特定の物性を有する高密度ポリエチレン系樹脂と、低密度のポリエチレン系樹脂とを特定の配合割合で混合したポリエチレン系樹脂を基材樹脂として使用して得られた、特定の物性を有する発泡シートの製造方法であり、見かけ密度が低くても、剛性や形状保持性を有し、熱成形性が良好なポリエチレン系樹脂押出発泡シートの製造方法に関する。
すなわち、本発明は、
[1]ポリエチレン系樹脂を基材樹脂として、該基材樹脂及び発泡剤を溶融混練して得られる発泡性樹脂溶融物を押出発泡するポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法であって、
前記基材樹脂となるポリエチレン系樹脂が、下記(a)、(b)を満足する密度0.94g/cmを超えるポリエチレン系樹脂(A)95〜60重量%と、密度0.91g/cm以上0.94g/cm以下であり且つ190℃、せん断速度13sec −1 での溶融粘度が1000〜10000Pa・sであるポリエチレン系樹脂(B)5〜40重量%(ただし、樹脂(A)+樹脂(B)=100重量%である)とからなることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法、
(a)ポリエチレン系樹脂(A)の結晶化温度+15℃、せん断速度13sec−1での溶融粘度が2000〜10000Pa・s
(b)ポリエチレン系樹脂(A)の結晶化温度+15℃での溶融張力が20cN以上
[2]前記ポリエチレン系樹脂(B)の引張破断伸びが700〜1500%であることを特徴とする上記[1]に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡シートの製造方法、
]前記ポリエチレン系樹脂発泡シートの融解熱量が145〜175J/gであることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡シートの製造方法、
]前記ポリエチレン系樹脂発泡シートの見かけ密度が0.02〜0.1g/cmであり、前記ポリエチレン系樹脂発泡シートのシート厚みが1〜10mmであることを特徴とする上記[1]から[]のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂押出発泡シートの製造方法、を要旨とする。
上記[1]に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡シートの製造方法によれば、見かけ密度が0.02〜0.1g/cmの、見かけ密度の低い発泡シートで、剛性と緩衝性とを兼ね備えると共に、優れた熱成形性を有する発泡シートを製造することができ、緩衝材、包装材料、梱包用材料として、また熱成形による包装容器、例えば収納部が深い包装容器、特に傷つきやすい青果物の包装用トレーなどに好適に使用できる発泡シートを製造することができる。また、上記[1]に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡シートの製造方法によれば、密度0.94g/cmを超える、特定の物性を有するポリエチレン系樹脂(A)と、密度0.91g/cm以上0.94g/cm以下のポリエチレン系樹脂(B)とからなる特定のポリエチレン系樹脂(I)を基材樹脂とし、前記樹脂(A)が前記要件(a)、(b)を満足することにより、軽量で、剛性と緩衝性を兼ね備え、熱成形性に優れた発泡シートが得られる。尚、以下、ポリエチレン系樹脂(A)を「樹脂(A)」、ポリエチレン系樹脂(B)を「樹脂(B)」ということがある。
発泡シートの結晶化温度(結晶化ピーク)を示す熱流束示差走査熱量測定により得られるDSC曲線である。 発泡シートの融解熱量(融解ピーク)を示す熱流束示差走査熱量測定により得られるDSC曲線である。 発泡シートの結晶化開始から結晶化終了までの全結晶化熱量の80%の熱量に達するまでの時間を説明するDSC曲線である。
本発明の発泡シートの製造方法では、見かけ密度が0.02〜0.1g/cm、シート厚みが1〜10mm、結晶化温度が110〜120℃、独立気泡率が30%以上であって、(イ)発泡シートの結晶化温度+15℃での溶融張力が20cN以上、および(ロ)発泡シートの熱流束示差走査熱量測定における融解熱量が145〜175J/gを満足する発泡シートを得ることができ、見かけ密度が低くても、剛性や形状保持性を有し、且つ緩衝性を有するとともに、特に優れた熱成形性を有する発泡シートを得ることができる。特に前記(ロ)の融解熱量は熱成形性に寄与することから、熱成形性に優れた発泡シートを得ることができるともいえる。
また、本発明の製造方法で得られる発泡シートを構成するポリエチレン系樹脂(I)が上記の(イ)(ロ)の要件を満足することにより、前記した本発明の目的とする緩衝性、形状保持性や剛性を有し、特に熱成形性に優れた発泡シートとなり、脆くなく、剛性を有し、且つ緩衝性を有する発泡成形品が得られる。
本発明により得られる発泡シートにおいて、前記要件(イ)は、該発泡シートの結晶化温度+15℃での溶融張力が、20cN以上であることを要することを示す。前記溶融張力が低すぎる場合には、熱成形性が劣り良好な発泡成形品が得られない。前記溶融張力は、25cN以上であることが好ましい。また、発泡シートが前記(イ)を満足するように押出発泡された場合には、発泡シートを形成する樹脂の発泡温度での張力が押出発泡に適した張力に維持され、見かけ密度の低い発泡シートであっても、気泡壁が維持されて、独立気泡率が30%以上の発泡シートを得ることができる。一方、溶融張力の上限は、熱成形性の観点から、100cN以下が好ましく、より好ましくは80cN以下、更に好ましくは60cN以下である。
ここで、前記結晶化温度は、JIS K7121(1987)に基づき熱流束示差走査熱量測定により得られるDSC曲線から求めることができる。具体的には、発泡シートから切り出した試料を2〜4mg採取し、熱流束示差走査熱量計を用いて、加熱速度10℃/分で、23℃から200℃まで加熱し、この温度に10分間保った後、10℃/分の冷却速度で30℃まで冷却することにより測定することができる。このとき冷却時に得られたDSC曲線において、結晶化ピークの頂点の温度を結晶化温度とした。尚、結晶化による発熱ピークが2つ以上現れる場合には、最も面積の大きな結晶化ピークの頂点温度を結晶化温度(CP)とした。図1に本発明を用いて得られる発泡シートの一例の結晶化温度を示すDSC曲線を示した。
発泡シートの結晶化温度+15℃での溶融張力は、例えば、以下のようにして、東洋精機製作所製メルトテンションテスターII型によって測定することが出来る。具体的には、オリフィス孔径2.095mm、長さ8mmのオリフィス及び径9.55mmのシリンダーを有するメルトテンションテスターを用い、シリンダー内に投入された樹脂の温度を事前に前述の熱流束示差走査熱量計を用いた測定によって得られた樹脂の結晶化温度+15℃に制御して、4分間静置した後に、上記シリンダー内の溶融樹脂を速度10mm/分の条件でピストンにより押し込みシリンダー下端に設置された上記オリフィスから紐状に押し出した。この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛けた後、1.3×10−2m/s程度の加速度で15.7m/sまで引き取り速度を増加させて、溶融張力を測定した。尚、15.7m/sまで到達せず、紐状物が切断するときは切断時点の引き取り速度での計測値とした。張力検出用プーリーと連結する検出器により検出される紐状物の溶融張力を経時的に計測し、縦軸に溶融張力(cN)を、横軸に時間(秒)をとったチャートに示すと、振幅をもったグラフが得られる。次に振幅の安定した部分の振幅の中央値(X)をとる。本発明ではこの値(X)を溶融張力とする。尚、測定に際し、まれに発生する特異的な振幅は無視するものとする。発泡シートから溶融張力測定用試料を調整する場合には、発泡シートを真空オーブンにて加熱し脱泡したものを試料とし、その際の真空オーブンでの脱泡条件は、発泡シートを構成しているポリエチレン系樹脂の融点以上の温度、かつ減圧下の状態とすることにより測定することができる。なお、結晶化温度+15℃の条件は、押出発泡や加熱成形の温度が、結晶化温度+15℃に近い温度条件で行なわれることに対応させたものであり、特に、熱成形性に重要な条件として見出したものである。
本発明により得られる発泡シートにおいて、前記要件(ロ)は、発泡シートの熱流束示差走査熱量測定における融解熱量は140〜175J/gであることを要することを示す。前記発泡シートの融解熱量が小さすぎる場合には、熱成形時に発泡シートが融解してしまい、シート形状を保持することができず、発泡成形品を得ることができない。一方、前記融解熱量が大きすぎる場合には、加熱成形時に可塑化が急激に進みすぎて、気泡が破泡し、成形が困難となり、発泡成形品が得られないか、成形品の緩衝性などの物性が低下したものとなる。上記融解熱量は、樹脂(A)と樹脂(B)の配合割合とも関連しており、上述した特定範囲内の配合割合で、上記要件(イ)、(ロ)を満足する範囲内で適宜調整することができる。上記融解熱量は、145〜170J/gであることが好ましい。
発泡シートの融解熱量の測定は、JIS K7122(1987)に基づき熱流束示差走査熱量測定により得られるDSC曲線から求められる。
具体的には、発泡シートから切り出した試料2〜10mgを窒素雰囲気下で熱流束示差走査熱量計により23℃から200℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、その温度(200℃)に10分間保った後、30℃まで10℃/分の冷却速度で冷却し、再度200℃まで10℃/分の昇温速度で加熱したときのDSC曲線を得る。図2に示すように、このDSC曲線上の融解開始温度に相当する点αを60℃とし、融解終了温度(T)に相当する点をβとし、点αと点βとを結ぶ直線を引き、DSC曲線と線分α−βとによって囲まれる部分の面積を融解熱量とした。尚、融解終了温度(T)は融解ピークの高温側におけるDSC曲線と点αと点βとを結ぶ直線(ベースライン)との交点の温度をいう。融解ピークが複数存在する場合には、全ての融解ピークの熱量の和を融解熱量とする。
本発明により得られる発泡シートは、さらに要件(ハ)、発泡シートの、熱流束示差走査熱量測定によって10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで加熱後、10℃/分の降温速度で200℃から30℃まで冷却した際に、結晶化開始から結晶化終了までの全結晶化熱量の80%の熱量に達するまでの時間(以下、80%結晶化時間という)が、90〜200秒、を満足することが好ましい。
上記発泡シートの80%結晶化時間が上記範囲内であれば、加熱成形時の樹脂の結晶化の進行が加熱成形条件に深く関連することを意味しており、シートが加熱されて可塑化し、成形が可能である時間を十分にとることができ、良好な発泡成型品が得られる。なお、80%結晶化時間の下限は、好ましくは100秒、より好ましくは105秒である。一方、80%結晶化時間の上限は、結晶化時間が長くなると賦形時に樹脂が固化し難くなり、破泡しやすくなることから、発泡シートの緩衝性が低下するという観点から、好ましくは160秒、より好ましくは150秒である。尚、上記、結晶化開始から結晶化終了までの全結晶化熱量の80%の熱量に達するまでの時間という条件は、押出発泡時や加熱成形時に、気泡の形状を維持する際や、加熱成形時に樹脂が可塑化して賦形される際には、樹脂の結晶化が80%まで進んでいることが重要であり、さらに熱成形性が良好な発泡シートは80%結晶化時間が特定の範囲となることを見出したものである。また、80%結晶化時間は、押出発泡時における樹脂の結晶化や気泡膜の形成にも関連している。上記範囲内であれば、十分な発泡が行われる前に樹脂の結晶化が進んでしまうことはなく、また樹脂の結晶化が遅くなって気泡膜の形成が不十分となり発泡剤が逸散しやすくなることもないため、良好な発泡シートを得ることができる。
ここに、80%結晶化時間は、図3に示されるDSC曲線から以下により測定される。具体的には、発泡シートから切り出した試料2〜4mgを、前述の熱流束示差走査熱量測定(DSC)により23℃から200℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、10℃/分の降温速度で200℃から30℃まで冷却したときに得られるDSC曲線(図3)において、図3で結晶化開始温度に相当する点をγ、結晶化終了温度に相当する点をδとし、点γと点δとを結ぶ直線を引き、DSC曲線と線分γ−δとによって囲まれる部分の面積が結晶化熱量に相当する。これを全結晶化熱量とする。尚、上記結晶化終了温度において、結晶化が徐々に続き、結晶化の低温側のベースラインが決定し難い場合には、δは40℃とする。結晶化開始温度γは、結晶化ピークの高温側におけるDSC曲線と、点γと点δとを結ぶ直線(ベースライン)との交点の温度をいう。なお、ピークが複数存在する場合には、全てのピークの熱量の和を全結晶化熱量とする。得られたDSC曲線と、線分γ−δとによって囲まれる部分について、点γより低温側に発生した結晶化熱量を高温側から積算し、積算された熱量が全結晶化熱量の80%に達した温度を、全結晶化熱量の80%の熱量に達する温度(ε)とした。得られたDSC曲線において、前記結晶化開始温度と全結晶化熱量の80%の熱量に達する温度との差と、降温速度(10℃/分)とから、結晶化開始温度から結晶化終了温度までの全結晶化熱量の80%の熱量に達するまでの時間(80%結晶化時間)を算出することができる。
本発明により得られる発泡シートは、該発泡シートの見かけ密度が、0.02〜0.1g/cmである。ここに、発泡シートの見かけ密度が低すぎる場合には、発泡シートの剛性や、発泡成形品としたときの形状保持性が不十分となる。一方、見かけ密度が高すぎる場合には、緩衝性が不十分となる。特に、該発泡シートは、見かけ密度が比較的低いものでありながら、熱成形性が良好な発泡シートである。発泡シートの見かけ密度は、好ましくは0.02〜0.07g/cmである。特に熱成形して包装容器とする場合には見かけ密度は0.025〜0.06g/cmであることが好ましい。
該発泡シートは、所望に応じて、発泡シートの片面又は両面に非発泡の樹脂層を形成することができる。この樹脂層は、例えば発泡性樹脂溶融物とともに樹脂層を形成する樹脂溶融物を共押出することにより形成することができる。また、発泡シートに別途樹脂フィルムを積層しても設けることができる。
発泡シートの見かけ密度は、発泡シートから所定の大きさの試料を切り出し、発泡シートの厚みと、発泡シートの坪量とを測定することにより算出される。発泡シートの坪量は25mm×25mm×発泡シート厚み(mm)の試験片を切り出し、試験片の重量(g)を測定しその値を1600倍して1m当たりの重量に換算した値(g/m)を用いる。上記により求めた発泡シートの坪量(g/m)を発泡シートの厚み(mm)で除した値を単位換算(g/cm)して、見かけ密度が求められる。
本発明の製造方法で得られる発泡シートの厚みは、1〜10mmである。発泡シートの厚みが薄すぎる場合には、剛性や形状保持性が得られない。一方、発泡シートの厚みが厚すぎる場合には、被包装物の形状に対するフィッティングが悪く、緩衝性が不足する。また、金型に対する賦形性が低下するため、熱成形性が悪化するおそれがある。発泡シートの厚みは、好ましくは1〜8mmである。特に熱成形して包装容器や果菜容器とする場合には、発泡シートの厚みは2〜6mmであることが好ましい。
本発明の製造方法で得られる発泡シートの結晶化温度は110〜120℃である。前記結晶化温度が低すぎる場合には、発泡シートの剛性が不足し、形状保持性(耐撓み性)が悪くなる。一方、前記発泡シートの結晶化温度が高すぎる場合には、熱成形時に発泡シートが変形したり、亀裂が生じ、良好な発泡成形品が得られない。なお、発泡シートの結晶化温度は、前述のJIS 7121(1987)に基づき、熱流束示差走査熱量測定により得られるDSC曲線から求めることができる。
本発明の製造方法で得られる発泡シートの独立気泡率は30%以上である。独立気泡率が低過ぎる場合には、熱成形時にセル形状を維持することが難しく、加熱成形が困難となるおそれがあり、又、成形後の成形品の厚みが薄くなって容器の剛性が低くなるおそれがある。かかる観点から、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上である。一方、独立気泡率は高いほど好ましいが、その上限は、概ね98%である。
発泡シートの独立気泡率S(%)は、ASTM D2856−70、手順Cに準拠し、東芝ベックマン株式会社製の空気比較式重量計930型を使用して測定される発泡シートの実容積(独立気泡の容積と樹脂部分の容積との和)Vx(cm)から、下記式により算出される値である。
Figure 0005808841
上記式中、Va、W、ρは以下の通りである。
Va:測定に供した発泡シートの見かけ容積(cm
W:試験片における発泡シートの重量(g)
ρ:発泡シートを構成する樹脂の密度(g/cm
尚、発泡シートを構成する樹脂の密度は、発泡シートを加熱プレスにより気泡を脱泡させてから冷却する操作を行い、得られた試料から求めることができる。またVaは、発泡シートに凹凸などがあることを考慮し、の発泡シートを既知量の水を入れたメスシリンダー内にて水没させて、計測された増加分の体積とした。試験片は、空気比較式重量計に付属の試料カップに非圧縮状態で収納しなければならないので、縦、横がそれぞれ25mmで試験片の見かけ容積が15〜16cmとなるような最小限の枚数を使用する。
本発明の製造方法で得られる発泡シートの引張破断伸びは、30%〜150%であることが好ましい。上記範囲内であれば、加熱成形時の発泡シートの伸びが良好であり、金型の形状にあわせた賦形を行なうことができ、成形時に発泡シートに発生する裂けをさらに防止することができる。上記観点から、好ましくは50〜140%、更には55〜130%であることが好ましい。
前記引張破断伸びの測定方法は、JIS K7127(1989年)に準拠した1mm厚みの2号型試験片のサンプルを用い、JIS K7127(1989年)の引張破壊伸びの測定方法に準拠して測定される。この場合、前記サンプルを23℃、湿度50%の条件下、24時間放置後、試験速度500mm/minで引張試験を行い、試験片が破断した時のつかみ具間距離の増加量を、標線間距離25mmで除した値を算出する。上記測定を5回行い、得られた引張破断伸びの相加平均値を採用することとする。
本発明の製造方法で得られる発泡シートの気泡径は、押出方向および幅方向の平均気泡径が0.5〜2.0mmのものであり、特に押出方向において平均気泡径が0.5〜2.0mm、幅方向において平均気泡径が0.5〜2.0mmであり、押出方向および幅方向の平均気泡径比(押出方向平均気泡径/幅方向平均気泡径)が0.5〜2.0であることが好ましい。上記範囲内である場合には、外観に優れ、独立気泡率が低下して緩衝性に欠けることなく、また熱成形時にセル壁が厚く融解しすぎることがなく、熱成形性が向上することから好ましい。また平均気泡径比が上記範囲内の場合、成形品収縮率の異方性が小さくなることから好ましい。平均気泡経比の好ましい範囲は0.7〜1.5である。
発泡シートの気泡径は以下のようにして測定される。発泡シートの押出方向に対する垂直断面、すなわち押出方向と直交する幅方向と厚さ方向で定まる面を幅方向100mmごとに少なくとも3箇所顕微鏡で投影し、それぞれの断面写真について発泡シートの厚さtを測定する。次に、各断面写真の厚さ方向に直線を引き、直線と交わる発泡シートにおける全ての気泡の数nをカウントする。上記のtとnから各断面の写真について発泡シートの気泡径(t/n)を算出する。この平均値を厚み方向の平均気泡径とする。また、同じく発泡シートの押出方向に対する垂直断面を幅方向100mmごとに、少なくとも3箇所顕微鏡で投影し、それぞれの断面写真について幅方向に長さ20mmの直線を引き、直線と交わる全ての気泡の数nwをカウントする。引いた直線の長さLwから気泡径(Lw/nw)を算出する。この平均値を幅方向の平均気泡径とする。発泡シートの押出方向と平行な断面、すなわち押出方向と平行する流れ方向と厚さ方向で定まる面を押出方向100mmごとに少なくとも3箇所顕微鏡で投影し、それぞれの断面写真について発泡シートの流れ方向に、長さ20mmの直線を引き、直線と交わる全ての気泡の数nmをカウントする。引いた直線の長さLmから気泡径(Lm/nm)を算出する。この平均値を流れ方向の平均気泡径とする。
本発明は、前記の要件(a)、(b)を満たす密度0.94g/cmを超えるポリエチレン系樹脂(A)と、密度0.91g/cm以上0.94g/cm以下のポリエチレン系樹脂(B)とを、所定の配合割合で混合したポリエチレン系樹脂(I)を基材樹脂として、押出機中で発泡剤と基材樹脂とを溶融混練して発泡性樹脂溶融物を形成し、該発泡性樹脂溶融物を押出機に備えられた環状ダイから押出発泡することにより発泡シートを製造する方法である。
本発明の製造方法では、ポリエチレン系樹脂(A)95重量%〜60重量%と、ポリエチレン系樹脂(B)5重量%〜40重量%(ただし、樹脂(A)+樹脂(B)=100重量%)との混合物からなるポリエチレン系樹脂(I)を基材樹脂とするものである。
ポリエチレン系樹脂(B)は、特に発泡シートの熱成形性を向上させ、脆性をより改善する作用を有するものである。また、樹脂(B)を上記範囲で樹脂(A)と混合してポリエチレン系樹脂(I)とすることによって、熱成形に適した融解熱量を有する、熱成形性に優れる発泡シートを得ることができる。ポリエチレン系樹脂(B)の配合量が少なすぎる場合には、発泡シートの融解熱量が高すぎ、加熱による可塑化が急激に起こる為に、熱成形性が低下するおそれがある。なお、ポリエチレン系樹脂(A)のみを用いて見かけ密度の低い発泡シートを得ようとした場合、ポリエチレン系樹脂(A)が発泡性には優れているため、発泡シートを得ることはできるものの、熱成形性に劣る発泡シートとなり、成形時に亀裂などが生じ易くなるおそれがある一方、ポリエチレン系樹脂(B)の配合量が多すぎる場合には、発泡シート製造時にポリエチレン系樹脂(I)が軟化しすぎて、発泡シートの独立気泡率が低下するおそれがある。また、発泡シートの融解熱量が低くなりすぎ、加熱成形時に、樹脂が軟化しやすくなり、熱成形性に劣る発泡シートとなるおそれがある。したがって、ポリエチレン系樹脂(B)の配合量は、5重量%〜35重量%が好ましく、より好ましくは5重量%〜25重量%、さらには5〜20重量%であることが好ましい。
従来は、見かけ密度が低いポリエチレン系樹脂発泡シートを得るためには、発泡性を向上させるために、樹脂(B)に相当するポリエチレン系樹脂を多量に配合する必要があった。一方、樹脂(B)を多量に配合すると、発泡シートの融解熱量は低くなり、耐熱性が低下することから、熱成形性の良好な発泡シートを得ることは困難であった。したがって、見かけ密度が低く、熱成形性が良好な発泡シートを得ることは困難であった。本発明においては、下記要件(a)、(b)を満足するポリエチレン系樹脂(A)を主成分とすることにより、特に高発泡倍率の発泡シートであっても、熱成形性が良好な発泡シートを得ることができる。
前記ポリエチレン系樹脂(I)の密度は、0.935g/cm以上であることが好ましい。上記範囲内であれば、剛性や保持性に優れる発泡シートを得ることができる。また、熱成形性の観点から、本発明におけるポリエチレン系樹脂(I)の密度の上限は0.97g/cm以下であることが好ましい。
本発明のポリエチレン系樹脂(A)における(a)、(b)の要件に示す物性は、(a)前記ポリエチレン系樹脂(A)の結晶化温度+15℃、せん断速度13sec−1での溶融粘度が2000〜10000Pa・s、(b)前記ポリエチレン系樹脂(A)の結晶化温度+15℃での溶融張力が20cN以上である。
一般にポリエチレン系樹脂は結晶化度が高く、僅かな温度変化により樹脂の溶融張力が大きく変化するため、押出発泡に適した温度範囲が狭い。特に、上記のポリエチレン系樹脂(I)においては、温度変化により樹脂の溶融張力の変化が顕著であり、溶融粘度と比較して、溶融張力が低い傾向がある。前記(a)、(b)の要件は、上記のポリエチレン系樹脂(I)を押出発泡する際に、押出発泡温度での発泡に適した樹脂粘度と溶融張力を維持し、安定した押出発泡を行うのに重要な要件であり、発泡に伴う気泡形成、気泡内から発泡剤の散逸、均一な気泡径の形成等に深く関与し、上記要件を満足することにより、見かけ密度が低く、熱成形性が良好な発泡シートを得ることができる。
前記(a)について、ポリエチレン系樹脂(A)の結晶化温度+15℃、せん断速度13sec−1での溶融粘度は、2000〜10000Pa・sであることが好ましい。前記溶融粘度の範囲内であれば、押出機中で発泡剤を基材樹脂と溶融混練し、ダイリップより発泡性樹脂溶融物を放出する際に、前記発泡性樹脂溶融物から発泡剤が分離、逸散することがなく、実際に発泡が起きる温度で気泡が膨張する為に、見かけ密度の低く、独立気泡率の高い発泡シートを得ることが可能となる。尚、ポリエチレン系樹脂(A)の結晶化温度+15℃の測定温度は、押出発泡温度に近い温度条件における溶融粘度を現している。前記溶融粘度は、好ましくは2200〜7000Pa・s、さらには、2500〜5000Pa・sであることが好ましい。
ポリエチレン系樹脂(A)の結晶化温度+15℃、せん断速度13sec−1での溶融粘度は、例えば、東洋精機製作所製キャピログラフ1D等によって測定することができる。尚、ポリエチレン系樹脂(A)の結晶化温度は、前述のJIS K7121(1987)に基づく熱流束示差走査熱量測定により得られるDSC曲線から求めることができる。具体的には、オリフィス孔径2.095mm、長さ8mmのオリフィス及び径9.55mmのシリンダーを有するキャピログラフ1Dを用い、シリンダー内に投入された樹脂の温度を、事前に前述の熱流束示差走査熱量計を用いた測定によって得られた結晶化温度+15℃の温度に制御し、4分間静置した後に、上記シリンダー内の溶融樹脂を速度10mm/分の条件でピストンにより押し込み、シリンダー下端に設置された上記オリフィスから紐状に押し出した。このときピストンにかかる荷重から粘度を算出することができる。尚、せん断速度13sec−1の条件は、後述の溶融張力の測定条件に対応させたものである。
前記(b)について、ポリエチレン系樹脂(A)の結晶化温度+15℃における溶融張力は、20cN以上であることが好ましい。この溶融張力が上記範囲内であれば、押出発泡時に、発泡温度で発泡に適した張力を維持することができ、気泡の形成が為され、発泡シートを得ることが可能となる。また、得られた発泡シートは独立気泡率が高いものとなるため、熱成形性が良好な発泡シートとなる。前記溶融張力は、25cN以上であることがより好ましい。一方、溶融張力が高すぎると、発泡剤と樹脂との混練が不十分となると共に押出機に過剰な負荷がかかり押出発泡が不可能になるという観点から、前記溶融張力の上限は、好ましくは100cN以下、より好ましくは80cN以下、更に60cN以下であることが好ましい。尚、ポリエチレン系樹脂(A)の結晶化温度+15℃の測定温度条件は、押出発泡温度に近い温度条件における溶融張力を現すために決定したものである。また、上記溶融張力の測定については、前述の発泡シートにおける測定方法と同様にして測定することができる。
前記ポリエチレン系樹脂(A)は、前記ポリエチレン系樹脂(A)を熱流速示差走査熱量測定により10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで加熱した後、10℃/分の降温速度で200℃から30℃まで冷却したときの、結晶化開始から結晶化終了までの全結晶化熱量の80%の熱量に達するまでの時間(80%結晶化時間)が90〜200秒であることを満足することが好ましい。80%結晶化時間が上記範囲内であれば、熱成形性が良好な発泡シートが得られる。また、押出発泡時においても、十分に発泡が行われた後に結晶が進行し、気泡を形成させることができる。これらの点を考慮し、ポリエチレン系樹脂(A)の80%結晶化時間は、100〜160秒であることが好ましく、さらには105〜150秒であることが好ましい。尚、上記、結晶化開始から結晶化終了までの全結晶化熱量の80%の熱量に達するまでの時間は、押出発泡時や加熱成形時に、気泡の形状を維持するのに十分な強度を得るために必要な、樹脂の凝固のし易さに相当するものである。
本発明において原料樹脂として使用されるポリエチレン系樹脂(A)は、前記の要件を満足し、密度0.94g/cmを超えるポリエチレン系樹脂が好ましく用いられる。また、密度の上限は0.97g/cmであることが好ましい。このようなポリエチレン系樹脂(A)は、例えば、市販の東ソー株式会社製ポリエチレン(グレード名:08S55A)を挙げることができる。
本発明において、ポリエチレン系樹脂(A)としては、前記市販のポリエチレン単独であっても、他のポリエチレン系樹脂との混合樹脂であっても、前記の要件を満たすものであれば良い。上記ポリエチレン系樹脂(A)はエチレン単独重合体、またはエチレン単位が50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のエチレン共重合体、又はそれらの2種以上の混合物が使用可能である。
本発明の目的が達成されることを条件として、前記の要件を満足するポリエチレン系樹脂(A)に対し、他の重合体を少量混合して使用することもできる。他の重合体としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレンのうち、前記ポリエチレン系樹脂(A)やポリエチレン系樹脂(B)以外の樹脂、又は、エチレン−ポリプロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等を混合することが可能である。
また本発明において、前記他の重合体として、ポリエチレン系樹脂からなる発泡シートまたは発泡成形品等を脱泡、粉砕した後再ペレット化した再生樹脂を使用することもできる。
本発明においては、ポリエチレン系樹脂(A)を使用することにより、従来、高密度ポリエチレン系樹脂では得ることが殆ど不可能であった、独立気泡率が30%以上であり、見かけ密度が0.02〜0.1g/cmという発泡シートを得ることが可能となる。特に、結晶化温度+15℃という発泡温度に近い温度における溶融粘度、溶融張力が特定範囲にある樹脂を用いることで、発泡性樹脂溶融物からの発泡剤の逸散がなく、また気泡形状が維持されて気泡の成長が良好となることにより達成される。
本発明において、前記ポリエチレン系樹脂(A)と混合されるポリエチレン系樹脂(B)は、密度0.91g/cm以上0.94g/cm以下のポリエチレン系樹脂である。ポリエチレン系樹脂(B)の密度が低すぎる場合には、良好な熱成形性を有する発泡シートを得ることができないおそれがある。一方、密度が高過ぎる場合には、従来の問題点である発泡時の溶融物性が急激に変化するため、押出発泡に影響を与えるおそれがある。前記ポリエチレン系樹脂(B)の密度は、好ましくは0.91g/cm以上、0.925g/cm未満であることが好ましい。
本発明の目的が達成されることを条件として上記ポリエチレン系樹脂(B)には、他の重合体を少量混合して使用することもできる。他の重合体としては、前記樹脂(A)、樹脂(B)以外のポリエチレン、その他エチレン−ポリプロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等を混合することが可能である。
前記ポリエチレン系樹脂(B)の190℃、せん断速度13sec−1での溶融粘度は、1000〜10000Pa・sであることが好ましく、前記範囲内であれば、前記ポリエチレン系樹脂(A)との混練性が良好となり、高発泡倍率の発泡シートを得ることができる。前記溶融粘度は、好ましくは2200〜7000Pa・s、さらには、2500〜5000Pa・sであることが好ましい。なお、溶融粘度の測定方法は、ポリエチレン系樹脂(A)の溶融粘度の測定方法と同様である。
さらに、ポリエチレン系樹脂(B)の結晶化温度は、ポリエチレン系樹脂(A)の融点よりも低いことが、発泡シートの熱成形性を向上する観点からは好ましい。前記結晶化温度は90〜115℃であることが好ましい。
ポリエチレン系樹脂(B)の引張破断伸びは、700%〜1500%であることが好ましい。上記範囲内であれば、発泡シートの加熱成形性が良好となり、例えば、より深型の成形品を得ることが可能となる。上記観点から、好ましくは800%〜1450%、更に好ましくは850%〜1300%である。前記引張破断伸びの測定方法は、前述のJIS K7127(1989年)に準拠した1mm厚みの2号型試験片のサンプルを用い、JIS K7127(1989年)の引張破壊伸びの測定方法に準拠して測定される。
ポリエチレン系樹脂(B)の80%結晶化時間は、180秒以下であることが好ましい。上記範囲内のポリエチレン系樹脂(B)を使用することにより、発泡シートの80%結晶化時間が長くなりすぎることなく、熱成形性が良好な発泡シートとなる。また、ポリエチレン系樹脂(B)の80%結晶化時間が長すぎる場合には、発泡シートの加熱成形時においても、発泡シートを構成する樹脂の結晶化に時間がかかり、賦形時に樹脂が固化し難くなり、気泡が破泡しやすくなることから、発泡シートの緩衝性が低下するなど、熱成形性が低下するおそれがある。以上の観点から、ポリエチレン系樹脂(B)の80%結晶化時間の上限は、170秒以下であることが好ましく、160秒以下であることが更に好ましい。なお、下限は、概ね80秒以上であることが好ましく、より好ましくは100秒以上、更には100秒以上であることが好ましい。
本発明で使用される物理発泡剤は、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩素化炭化水素、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等のフッ化炭化水素、沸点が押出温度以下の各種のアルコール類、エーテル類、二酸化炭素、窒素、水素等が挙げられる。これらのうち、特にイソブタンが好ましい。これらの発泡剤は2種以上を混合して使用することができる。発泡剤の使用量は所望する発泡倍率により適宜の量が使用されるが、通常、本発明の見かけ密度の発泡シートを得るためには、原料樹脂1kg当たり0.5〜5モル程度である。
本発明の押出発泡シートを製造するに際しては、シリカ、タルク、クエン酸ソーダ、重曹等の気泡調整剤が使用されるが、これら気泡調整剤は、通常ポリエチレン系樹脂(I)100重量部に対して0.1〜3.0重量部程度が用いられる。その他に、所望に応じて種々の添加剤を用いることができる。例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、難燃剤、流動性向上剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、着色剤、抗菌剤、防黴剤、無機充填材等が挙げられる。
以下に本発明の実施例を比較例とともに記載する。尚、本発明は、実施例の記載に限定されるものでない。本実施例、比較例で使用した原材料等を下記に記載する。表において「CP」は結晶化温度を示す。
Figure 0005808841
尚、樹脂(A)単独で発泡シートを製造した場合、樹脂A1、A3は溶融張力が比較的高く、発泡性が良好であるため発泡シートを得ることはできるものの、熱成形性には劣るものとなり、発泡シート成形品を得ることが困難であった。また、樹脂A2では見かけ密度の低い発泡シートを得ることができなかった。
Figure 0005808841
実施例および比較例において、押出機は、直径65mm〜直径90mmのタンデム押出機を使用し、発泡シートを得るために直径48mmの環状ダイ及び直径208mmの筒状冷却器を用いた。
実施例1
ポリエチレン系樹脂(A)として表1の樹脂A1が90重量%、ポリエチレン系樹脂(B)として表2の樹脂B1が10重量%とからなるポリエチレン系樹脂(I)と、該樹脂(I)100重量部に対して気泡調整剤マスターバッチを0.1重量部配合して直径65mmの押出機の原料投入口に供給し、加熱混練し、約200℃の溶融樹脂混合物とした。該溶融樹脂混合物100重量部に対し発泡剤としてイソブタンを11重量部圧入し、混練し発泡性樹脂溶融物を得た。その後発泡性樹脂溶融物の樹脂温度を127℃に調整して環状ダイへ供給し、表3に示すシート厚みとなるよう引取速度を制御して、筒状発泡体を得た。該筒状発泡体を筒状冷却器に沿わせて引き取りながら切開いて、目的の発泡シートを得た。得られた発泡シートの物性を表3に示す。
実施例2
ポリエチレン系樹脂(A)として表1の樹脂A1が80重量%と、ポリエチレン系樹脂(B)として表2の樹脂B1が20重量%とからなるポリエチレン系樹脂(I)を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡シートを得た。
実施例3
ポリエチレン系樹脂(A)として表1の樹脂A1が85重量%と、ポリエチレン樹脂(B)として表2の樹脂B2が15重量%とからなるポリエチレン系樹脂(I)を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡シートを得た。
実施例4
ポリエチレン系樹脂(A)として表1の樹脂A1が85重量%と、ポリエチレン系樹脂(B)として表2の樹脂B3が15重量%との混合物からなるポリエチレン系樹脂(I)を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡シートを得た。
実施例5
ポリエチレン系樹脂(A)として表1の樹脂A1が70重量%、ポリエチレン系樹脂(B)として表2の樹脂B4が30重量%の混合物からなるポリエチレン系樹脂(I)を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡シートを得た。
実施例6
ポリエチレン系樹脂(A)として表1の樹脂A1が70重量%と、ポリエチレン系樹脂(B)として表2の樹脂B5が30重量%とからなるポリエチレン系樹脂(I)とし、樹脂温度を128℃に調整した以外は、実施例1と同様にして発泡シートを得た。
実施例7
ポリエチレン系樹脂(A)として表1の樹脂A1が70重量%と、ポリエチレン系樹脂(B)として表2の樹脂B5が30重量%との混合物からなるポリエチレン系樹脂(I)100重量部に対し、発泡剤としてイソブタンを7.5重量部圧入し、樹脂温度を128℃に調整した以外は、実施例6と同様にして発泡シートを得た。
実施例8
ポリエチレン系樹脂(A)として表1の樹脂A1が70重量%と、ポリエチレン系樹脂(B)として表2の樹脂B5が30重量%との混合物からなるポリエチレン系樹脂(I)100重量部に対し、発泡剤としてイソブタンを13重量部圧入し、樹脂温度を126℃に調整した以外は、実施例6と同様にして発泡シートを得た。
比較例1
ポリエチレン系樹脂(A)として表1の樹脂A2が70重量%と、ポリエチレン系樹脂(B)として表2の樹脂B2が30重量%とからなる混合樹脂を使用し、樹脂温度を132℃に調整して環状ダイへ供給した以外は実施例1と同様の条件としたが、成形に供することができる発泡シートを得ることは困難であった。
比較例2
ポリエチレン系樹脂(A)として表1の樹脂A1が70重量%、ポリエチレン系樹脂(B)として表2の樹脂B1が30重量%とからなる混合樹脂を使用し、樹脂温度を126℃に調整して環状ダイへ供給した以外は実施例1と同様にして発泡シートを得た。発泡性は良好であり、低密度の発泡シートを得ることは可能であったが、発泡シートの溶融熱量が少なく、熱成形性に劣るものであった。
比較例3
ポリエチレン系樹脂(A)として表1の樹脂A1が70重量%と、ポリエチレン系樹脂(B)として表2の樹脂B6が30重量%とからなる混合樹脂を使用し、樹脂温度を133℃に調整して環状ダイへ供給した以外は、実施例1と同様にして発泡シートを得た。しかし、発泡シートの融解熱量が大きすぎ、熱成形性の劣るものであった。
比較例4
ポリエチレン系樹脂(A)として表1の樹脂A1が50重量%と、ポリエチレン系樹脂(B)として表2の樹脂B1が50重量%とからなる混合樹脂を使用し、樹脂温度を126℃に調整して環状ダイへ供給した以外は、実施例1と同様にした。発泡直後にセルから発泡剤が抜けシワが多く、また養生による回復も見られず、独立気泡率の低い、外観が悪い発泡シートであり、成形することができなかった。
[熱成形性の評価]
前述の実施例1〜6、比較例1〜4の発泡シートについて熱成形性評価を行ない、その結果を表4に示した。
浅野研究所製 品番 FKS−0631−10の成形機を用いて、プラグアシスト法により熱成形を行った。該成形機は、発泡シートを加熱させる加熱ゾーンと、成形を行う成形ゾーンとからなり、加熱ゾーンには発泡シートの上下に加熱ヒーターが設けられている。発泡シートを600mm角の開口部を有する枠に固定して、シート表面温度を135℃になるようヒーター出力を調整しつつ、該発泡シートの加熱を、加熱時間10〜25秒の間で行った。その後、成形ゾーンに加熱された発泡シートを送り、開口部が直径75mmの円形、深さ35mm、底部直径50mm、絞り比0.52の形状を長さ方向に3個、幅方向に3個の計9個有し、長さ方向及び幅方向のピッチ間隔がそれぞれ73mmの金型により、深型の容器を成形した。得られた成形品について、亀裂やセル融解がなく、金型形状に賦形された、良好な成形品が得られる成形可能時間(成形可能である最長加熱時間と最短加熱時間との差)により、以下のように熱成形性を評価した。
成形可能時間が6秒以上 ・・・・◎
成形可能時間が1秒以上6秒未満・・・○
成形可能時間が1秒未満 ・・・・×
Figure 0005808841
Figure 0005808841
本発明の製造方法によれば、高密度ポリエチレン系樹脂を主成分とする樹脂からなる発泡シートとして、見かけ密度が低くても、剛性を有すると共に緩衝性、熱成形性が良好であるものを得ることができ、物理特性に優れた成形品、緩衝材、包装材料等とすることの可能な発泡シートを提供することができる。
α 融解開始温度に相当する点
β 融解終了温度(T)に相当する点
γ 結晶化開始温度に相当する点
δ 結晶化終了温度に相当する点

Claims (4)

  1. ポリエチレン系樹脂を基材樹脂として、該基材樹脂及び発泡剤を溶融混練して得られる発泡性樹脂溶融物を押出発泡するポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法であって、
    前記基材樹脂となるポリエチレン系樹脂が、下記(a)、(b)を満足する密度0.94g/cmを超えるポリエチレン系樹脂(A)95〜60重量%と、密度0.91g/cm以上0.94g/cm以下であり且つ190℃、せん断速度13sec −1 での溶融粘度が1000〜10000Pa・sであるポリエチレン系樹脂(B)5〜40重量%(ただし、樹脂(A)+樹脂(B)=100重量%である)とからなることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
    (a)ポリエチレン系樹脂(A)の結晶化温度+15℃、せん断速度13sec−1での溶融粘度が2000〜10000Pa・s
    (b)ポリエチレン系樹脂(A)の結晶化温度+15℃での溶融張力が20cN以上
  2. 前記ポリエチレン系樹脂(B)の引張破断伸びが700〜1500%であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡シートの製造方法。
  3. 前記ポリエチレン系樹脂発泡シートの融解熱量が145〜175J/gであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡シートの製造方法。
  4. 前記ポリエチレン系樹脂発泡シートの見かけ密度が0.02〜0.1g/cm であり、前記ポリエチレン系樹脂発泡シートのシート厚みが1〜10mmであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂押出発泡シートの製造方法。
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