JP2013243992A - フィリング - Google Patents

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義和 藤原
Kazuyuki Inoue
和幸 井上
Kosaku Ishimaru
宏策 石丸
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Abstract

【課題】長期保管後においても動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持できるフィリングを提供する。
【解決手段】水中油型乳化液状調味料及び動物性蛋白質具材を含有し、全蛋白質含有量が2〜20%であるフィリングにおいて、乳酸0.5〜2.5%を含有し、果糖、蔗糖、ぶどう糖から選ばれる少なくとも1種以上を合計で0.1〜5%含有し、かつ、pHが5.0〜6.8であることを特徴とするフィリング。
【選択図】なし

Description

本発明は、ツナやカニ等の動物性蛋白質具材を多く配合しているにも拘わらず、特定の酸材及び糖類を含有し、かつ、特定のpHに調整することで、数カ月の長期保管後においても動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持できるフィリングに関する。
フィリングは、パンに挟んだり、野菜、フライ、ハンバーグ等にトッピングして用いる調味料である。また、フィリングのベースに、マヨネーズ、マヨネーズ類又は乳化ドレッシング等の水中油型乳化液状調味料を使用すると、適度なコク味が付与される。さらに、様々な風味のフィリングのうち、ツナやカニ等の動物性蛋白質具材特有の風味を特徴としたフィリングが大変人気を博している。
ツナやカニ等の動物性蛋白質具材特有の風味は、ペプチドやアミノ酸等の蛋白質と、ケトンやアルデヒド等の芳香成分のバランスにより成り立っていると言われている。そして、動物性蛋白質具材特有の風味は、長期保管中の科学変化により複合的なバランスが崩れ易く、経時的に消失し易い。
ツナやカニ等の動物性蛋白質具材の風味を特徴としたフィリングは、例えば、特開平07−250653号公報(特許文献1)に、ツナ肉と卵白を混合後に加熱成型した成形ツナ肉と水中油型乳化食品とを和えたフィリングが記載されている。前記フィリングは、ツナ肉らしい食感が得られるものである。しかしながら、長期保管後においても動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持できるものではなかった。
特開平07−250653号公報
そこで、本発明は、長期保管後においても動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持できるフィリングを提供するものである。
本発明者が、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、水中油型乳化液状調味料及び動物性蛋白質具材を含有し、全蛋白質含有量が2〜20%であるフィリングにおいて、該フィリングに、従来品と比して多量の乳酸と、甘味として感じ難い少量の糖とを含有し、特定のpHに調整することで、意外にも長期保管後においてツナやカニ等の動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持できるフィリングが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
水中油型乳化液状調味料及び動物性蛋白質具材を含有し、全蛋白質含有量が2〜20%であるフィリングにおいて、乳酸0.5〜2.5%を含有し、果糖、蔗糖、ぶどう糖から選ばれる少なくとも1種以上を合計で0.1〜5%含有し、かつ、pHが5.0〜6.8であるフィリング、
である。
本発明によれば、長期保管後において動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持できるフィリングを提供することができる。これにより、フィリングを配合した加工食品市場、特にパン市場の更なる拡大が期待できる。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
本発明は、水中油型乳化液状調味料及び動物性蛋白質具材を含有し、全蛋白質含有量が2〜20%であるフィリングにおいて、乳酸0.5〜2.5%を含有し、果糖、蔗糖、ぶどう糖から選ばれる少なくとも1種以上を合計で0.1〜5%含有し、かつ、pHが5.0〜6.8であるフィリングである。
本発明のフィリングとは、水中油型乳化液状調味料をベースに、ツナやカニ等の動物性蛋白質具材を配合したものである。食品用途は、特に限定されないが、サンドイッチ、ハンバーガー等のパンの間に挟んだり、パンの中に充填したり、パンの上にトッピングして用いてもよいし、野菜、フライ、ハンバーグ等の食品のトッピング材として用いてもよい。
水中油型乳化液状調味料とは、水相中に食用油脂が油滴として略均一に分散して水中油型の乳化状態となっている液状調味料である。例えば、清水に澱粉、ガム類、卵黄、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化材を混合した後、ミキサー等で攪拌しながら、油脂を注加して粗乳化し、次にせん断力の強い処理機等で均質化した調味料である。
動物性蛋白質具材の原料は、例えば、牛、豚、羊、鶏、馬等の畜肉、マグロ、カニ、カツオ、イワシ、ブリ、サバ、サンマ、ヒラメ、カレイ、タコ、イカ、ホタテ、アサリ等の魚介類、鶏卵、家鴨卵、鶉卵、イクラ等の卵類、大豆、インゲン等の豆類等が挙げられる。動物性蛋白質具材の大きさは、特に限定されないが、食べ易い大きさに切断しても良いし、可食部分をそのまま用いてもよい。
本発明は、前述した動物性蛋白質具材を配合したフィリングにおいて、長期保管中に経時的に動物性蛋白質具材特有の風味が消失してしまう課題に対し、その課題を解決したフィリングを提供するものである。
本発明のフィリングは、フィリング全体に対して0.5%以上の大量の乳酸を含有することを1つの特徴とする。一般的にツナやカニ等のフィリングを調製する場合、ツナやカニ等のボイル処理品に食塩やグルタミン酸ナトリウム等の調味料を混合して調製し、前記調味料の1つとしてチーズやヨーグルトを配合することがある。チーズやヨーグルトの乳酸含有量は0.1〜0.4%であることから、本発明のフィリングが0.5%以上の大量の乳酸を含有していることは1つの技術的特徴となっている。
本発明のフィリングは、0.5〜2.5%の乳酸と、後述する特定の糖配合と、特定のpHとを組合せて用いることで、以下のメカニズムに基づき動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持しているものと推定している。
一般的な現象として、マグロやカニ等の動物を屠殺すると、屠殺直後から一定期間の間、動物の体内細胞に含まれる酵素が0.1〜0.3%の乳酸を生成する。そして、生成した乳酸が、動物の食肉部位に含まれる蛋白質及び微量の糖質と科学反応を起こし、自己消化(autolysis)と呼ばれる現象が起こる。例えば、生ハムの熟成工程などはこの現象を応用したものである。本発明のフィリングは、動物性蛋白質具材に対し、0.5〜2.5%の乳酸と、果糖、蔗糖、ぶどう糖から選ばれる少なくとも1種以上を合計で0.1〜5%含有せしめ、かつ、pH5.0〜6.8の条件に保管することで、前記自己消化現象を意図的に誘発させることを試みた結果、数カ月の長期保管後においても動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持できるフィリングが得られたものであると推定される。
本発明のフィリングの乳酸含有量は、0.5〜2.5%であり、0.6〜2%が好ましく、0.8〜1.5%がより好ましい。乳酸含有量が前記範囲より少ないと、たとえ後述のように、特定少量の糖類を含有し、特定のpHに調整したとしても、保管中の風味増強が進まず、動物性蛋白質特有の風味が得られない場合がある。乳酸含有量が前記範囲より多いと、動物性蛋白質特有の風味増強効果が得られないか、乳酸の風味が立ち、動物性蛋白質具材特有の風味を損ねてしまう場合がある。
本発明のフィリングは、pH5.0〜6.8であり、5.2〜6.8が好ましく、5.5〜6.8がより好ましい。例えば、市販のマヨネーズにツナの水煮や茹卵等の動物性蛋白質具材特有を配合しただけのフィリングは、ほとんどがpH6.8以上のものであるが、有機酸等を適宜配合しpHを前記範囲となるように調整することで、動物性蛋白質具材特有の経時的な風味劣化を抑制することができる。pHが前記範囲より低いと、動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持できない場合がある。
本発明のフィリングは、科学反応を起こし易い小糖のうち、果糖、蔗糖、ぶどう糖から選ばれる少なくとも1種以上の糖を合計量で0.1〜5%含有する。前記糖は、pH5.0〜6.8において、動物性蛋白質具材及び乳酸との相互作用により、長期保管中に経時的に薄らいでしまう動物性蛋白質具材特有の風味に厚みを持たせることができる。前記糖の合計含有量は、0.5〜5%が好ましく、1〜5%がより好ましい。糖の合計含有量が前記範囲より少ないと、たとえ前述のように、特定多量の乳酸を含有し、特定のpHに調整したとしても、保管中の風味増強が進まず、動物性蛋白質特有の風味が得られない場合がある。糖の合計含有量が前記範囲より多いと、動物性蛋白質特有の風味増強効果が得られないか、糖の甘味が強くなり過ぎ、動物性蛋白質具材特有の風味を損ねてしまう場合がある。また、前記糖の組合せは、果糖及びぶどう糖を含有することが好ましい。また、果糖、蔗糖、ぶどう糖から選ばれる少なくとも1種以上の糖と、スクラロース又はステビアから選ばれる少なくとも1種以上の高甘味度甘味料とを含有することが好ましい。
果糖、蔗糖、ぶどう糖の測定方法は、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」(平成11年4月26日衛新第13号)に開示されている、高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)に基づいて行う。
さらに、本発明のフィリングは、酢酸特有の酸味を立たせずに動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持することができるため、酢酸及び乳酸を含有することが好ましい。酢酸と乳酸の質量比は、1:0.1〜1:5が好ましく、1:0.2〜1:2.5がより好ましい。乳酸が前記範囲より少ないと、酢酸特有の酸味が立ち、動物性蛋白質具材特有の風味を損ねてしまう場合がある。前記範囲より多いと、乳酸特有の酸味が立ち、動物性蛋白質具材特有の風味を損ねてしまう場合がある。
さらに、本発明のフィリングは、酢酸、乳酸に加えてクエン酸を含有することで本発明の風味増強保持効果に優れ好ましい。酢酸の含有量と乳酸及びクエン酸の合計含有量の質量比は、1:0.1〜1:5が好ましく、1:0.2〜1:2.5がより好ましい。乳酸及びクエン酸が前記範囲より少ないと、酢酸特有の酸味が立ち、動物性蛋白質具材特有の風味を損ねてしまう場合がある。前記範囲より多いと、乳酸又はクエン酸特有の酸味が立ち、動物性蛋白質具材特有の風味を損ねてしまう場合がある。
有機酸の測定方法は、「栄養表示のための成分分析のポイント」(財団法人日本食品分析センター編、2007年10月20日発行)に開示されている、高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)に基づいて行う。具体的には、例えば、水溶液中で有機酸又は有機酸塩の状態で存在している有機酸を、過塩素酸で抽出し、有機酸類の紫外部吸収を利用して高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)で分別定量する。なお、本発明のフィリングに用いる酸材は、乳酸、酢酸、クエン酸以外に特に限定されないが、例えば、リンゴ酸等の有機酸、燐酸、塩酸等の無機酸、レモン果汁、リンゴ果汁、オレンジ果汁、乳酸発酵乳等を用いることができる。
さらに、本発明のフィリングは、2〜20%含有する蛋白質の一部として、ナイシンペプチドを含有することが好ましい。ナイシンペプチドは、Lactococcus lactis等の乳酸菌が生産する34個のアミノ酸からなるペプチドである。後述の試験例で示すが、ツナやカニ等の動物性蛋白質具材特有を配合した特定のフィリングにおいて、各種ペプチドの添加効果を検証したところ、その他のペプチドにはない優れた効果がナイシンペプチドでのみ得られる。
本発明に用いるナイシンペプチドの含有量は、2〜20ppmであり、好ましくは4〜20ppmである。ナイシンペプチドの含有量が前記範囲より少ないと、長期保管後における動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持できない場合がある。20ppmより多く含有すると、僅かにナイシンペプチド特有の風味を感じるようになり、動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持する効果を損ねてしまう。
ナイシンペプチドの測定方法は、財団法人日本食品化学研究振興財団が開示している液体クロマトグラフ質量分析法(LC/MS法)に基づいて行う。
さらに、本発明において、水中油型乳化液状調味料を分離しにくくする方法は、特に限定されないが、例えば、水中油型乳化液状調味料の水相に対し、大量の1〜5%の澱粉を配合する方法が好ましく、1〜2%がより好ましい。水相に大量の澱粉を配合することで、より食用油脂を乳化液状調味料中に安定して分散させやすく、長期保管後の風味増強保持効果が得られやすい。
本発明のフィリングに用いる澱粉の種類は、特に限定されないが、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、これらの澱粉をアルファ化、架橋等の処理を施した化工澱粉、並びに湿熱処理澱粉等の澱粉が挙げられる。
本発明のフィリングに用いる蛋白質を含有する原料は、動物性蛋白質具材以外に、例えば、水中油型乳化液状調味料由来の卵黄等があり、その合計量が、2〜20%となっている。蛋白質の含有量は、ツナやカニ等の動物性蛋白質具材特有の風味を活かしたフィリングが得られることから、4〜20%が好ましく、6〜20%がより好ましい。
蛋白質の測定方法は、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」(平成11年4月26日衛新第13号)に開示されている、一般にケルダール法と呼ばれる窒素の定量方法に基づいて行う。本発明における蛋白質とは、高分子化合物に加え、アミノ酸、ペプチド等を含む。
本発明のフィリングに用いる食用油脂は、食用であればいずれのものでも良い。例えば、菜種油、大豆油、パーム油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、魚油、牛脂、豚脂、鶏脂、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂等を用いることができる。好ましくは、菜種油、大豆油又はパーム油を含有し、より好ましくは大豆油又はパーム油を含有する。
本発明のフィリングに用いる酸性水中油型乳化食品の粘度は、30〜10000Pa・sが好ましく、60〜5000Pa・sがより好ましい。酸性水中油型乳化食品の粘度が前記範囲より低いと、動物性蛋白質具材からの離水を引き金に、フィリング全体から離水が生じるようになり、経時的に風味を損ねてしまう。また、低粘度の酸性水中油型乳化食品に澱粉や増粘材を加え、前記範囲の高粘度に調整したとしても、経時的にフィリング全体から離水が生じるようになり、風味を損ねてしまう場合がある。本発明のフィリングに用いる酸性水中油型乳化食品の粘度が前記範囲より高いと、動物性蛋白質具材等の他の食材と十分に混合できない場合がある。また、なお、上記粘度は、BH型粘度計を用い、ローターNo.6を用い、品温20℃のサンプルを回転数2rpmで測定し、2回転後の粘度計示度から換算した値である。
本発明のフィリングは、前述した原料以外に、本発明の効果を損わない範囲で適宜選択し配合することができる。具体的には、例えば、醤油、みりん、食塩、味噌、ケチャップ、ソース、ブイヨン、豆板醤、コチュジャン等の調味料、麦芽糖、オリゴ糖、トレハロース等の糖類、アセスルファムカリウム等の高甘味度甘味料、玉葱、人参、胡瓜、レタス、セロリ、キャベツ、コーン、ブロッコリー、カリフラワー、トマト、アスパラガス、ネギ、舞茸、シメジ、あさつき、水菜、大根、ほうれん草等の野菜、パセリ、バジル、大蒜、ごま、とうがらし、胡椒等の香辛料、アスコルビン酸、ビタミンEの酸化防止剤、色素、香料等を配合することができる。
本発明のフィリングは、長期保管流通を目的としていることから、必要に応じて殺菌のために60〜100℃の加熱処理を施しても良い。しかしながら、加熱処理を施すことで水中油型乳化液状調味料が分離を生じると、フィリングの物性も変化し、動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持できない場合がある。
以上を踏まえ、本発明のフィリングの製造方法は、常法に基づき行えばよい。具体的には、例えば、攪拌羽付きの釜の中に、清水、ツナやカニ等の動物性蛋白質具材特有、水中油型乳化液状調味料、乳酸0.5〜2.5%、果糖、蔗糖、ぶどう糖から選ばれる少なくとも1種以上に加え、食塩、グルタミン酸ナトリウム等を投入後、原料を混合し、本発明のフィリングを調製する。また、予め、得られるフィリングが、全蛋白質2〜20%、pH5.0〜6.8となるように原料の配合量を調整する。以上のようにして得られた本発明のフィリングは、必要に応じて、加熱を施したり、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン等からなるパウチや蓋付容器等に充填することで、より長期保存が可能となる。
本発明のフィリングの加熱処理方法は、加熱殺菌の効果を損なわない範囲で適宜調整することができ、袋等に充填密封し湯浴中に浸漬する方法や、袋等に充填密封する前に、ニーダーのジャケット加熱する方法、その他蒸煮、通電加熱、マイクロ波加熱等が挙げられる。
以下に本発明のフィリングを実施例及び試験例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
〔実施例1〕
攪拌羽付きの釜の中に、清水5.48%、ツナ水煮(蛋白質濃度16%)50%、水中油型乳化液状調味料40%(清水48%、酢酸0.5%、α化澱粉1%、リゾレシチン0.5%、大豆油50%を撹拌混合後、乳化して調製)(粘度500Pa・s、水相中の澱粉配合量2%)、乳酸0.8%、酢酸ナトリウム0.7%(酢酸0.5%含有)、蔗糖2.5%、食塩0.5%及びクエン酸0.02%を投入後、全原料を混合したものを、500g容のポリプロピレン袋に500g充填密封後、80℃で加熱処理を行い、本発明のフィリングを調製した。得られた本発明のフィリングは、長期保管後において動物性蛋白質具材特有の風味を非常に強く増強保持できていた。なお、本発明のフィリングは、蛋白質8%、pH6.5であった。
〔試験例1〕
本発明の風味増強保持効果に対する乳酸の含有量による影響を調べるため、乳酸の含有量を調整する以外は実施例1に準じて6種類のフィリングを調製した。得られたフィリングは、冷蔵保管1ヵ月後に下記の基準に沿って官能評価を行った。また、乳酸を含有していないフィリングを対照品とした。
<官能評価基準>
○:動物性蛋白質具材特有の風味が、対照品に比べて非常に強い。
△:動物性蛋白質具材特有の風味が、対照品に比べて強い。
×:対照品に比べ、有意な差を感じられない。
表1の結果より、フィリング全体に対し乳酸を0.5〜2.5%含有させることで、動物性蛋白質具材特有の風味が対照品に比べて強かった(No.2-5)。特に、試験例No.3及び4の結果より、フィリング全体に対し乳酸を0.6〜2%含有することが好ましく、0.8〜1.5%がより好ましかった。
〔試験例2〕
本発明の風味増強保持効果に対するpHの影響を調べるため、pH以外は実施例1に準じて5種類のフィリングを調製した。得られたフィリングは、試験例1と同様の基準で官能評価を行った。
表2の結果、pH5.0〜6.8のフィリングは、長期保管後において動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持する効果がみられた(No.8〜11)。特に、試験例No.9〜11の結果より、フィリングのpHを5.2〜6.8とすることが好ましく、5.5〜6.8がより好ましかった。
〔試験例3〕
本発明の風味増強保持効果に対する糖質の種類と含有量による影響を調べるため、糖質以外は実施例1に準じて9種類のフィリングを調製した。得られたフィリングは、試験例1と同様の基準で官能評価を行った。
表3の結果、果糖、蔗糖、ぶどう糖のうち少なくとも1種以上を合計で0.1〜5%含有したフィリングは、長期保管後において動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持する効果がみられた(No.12,13,14,18,19)。特に、実施例1、試験例No.12、13、14及び19の結果より、フィリング全体に対し果糖、蔗糖、ぶどう糖のうち少なくとも1種以上を合計で0.5〜5%含有することが好ましく、1〜5%含有することがより好ましかった。また、表には示していないが、果糖及びぶどう糖を各1%含有した場合、No.12と比較して、風味増強保持効果が高く、更に好ましいものであった(No.21)。
〔試験例No.22〕
酢酸と乳酸の質量比が1:0.2となるように用いて、フィリングのpHが6.5となるように調製した以外は、試験例No.3に準じて本発明のフィリングを調製した。得られたフィリングは、試験例No.3のフィリングと同様に、動物性蛋白質具材特有の風味増強保持効果に優れていた。
〔試験例No.23〕
酢酸と乳酸の質量比が1:2.5となるように用いて、フィリングのpHが6.5となるように調製した以外は、試験例No.3に準じて本発明のフィリングを調製した。得られたフィリングは、試験例No.3のフィリングと同様に、動物性蛋白質具材特有の風味増強保持効果に優れていた。
〔試験例No.24〕
清水0.002%をスクラロース0.002%に置換えた以外は、試験例No.13に準じて本発明のフィリングを調製した。得られたフィリングは、動物性蛋白質具材特有の風味増強保持効果に優れていた。
〔試験例No.25〕
清水0.003%をステビア0.003%に置換えた以外は、試験例No.13に準じて本発明のフィリングを調製した。得られたフィリングは、動物性蛋白質具材特有の風味増強保持効果に優れていた。
〔試験例4〕
本発明の効果に対するペプチドの種類による影響を調べるため、下記表4の4種類のペプチドをそれぞれ10ppmずつ配合する以外は試験例No.2に準じて、4種類のフィリングを調製した。得られたフィリングは、試験例1と同様の基準で官能評価を行った。
表4の結果、試験例No.26のナイシンペプチドを含有したフィリングは、試験例No.27〜29と比較して、動物性蛋白質具材特有の風味を増強保持する効果がより強くみられ好ましかった。
〔試験例No.30〕
大豆油をパーム油に置換えた以外は、試験例No.3に準じて本発明のフィリングを調製した。得られたフィリングは、試験例No.3のフィリングと同様に動物性蛋白質具材特有の風味増強保持効果に優れていた。
〔試験例No.31〕
水中油型乳化液状調味料(粘度500Pa・s)を水中油型乳化液状調味料(粘度5Pa・s)に置換えた以外は、試験例No.3に準じて本発明のフィリングを調製した。得られたフィリングは、動物性蛋白質具材特有の風味増強保持効果に優れていた。また、試験例No.3及び31の風味保持増強効果を比較した場合、試験例No.3の方がより優れていた。
〔試験例No.32〕
ツナ水煮(蛋白質濃度16%)50%を、ツナ水煮(蛋白質濃度16%)20%及び水中油型乳化液状調味料30%に変更した以外は、試験例No.3に準じて本発明のフィリングを調製した。得られたフィリングは、本発明の動物性蛋白質具材特有の風味増強保持効果に優れていた。なお、得られた本発明のフィリングの蛋白質含有量は3%であった。
〔試験例No.33〕
ツナ水煮(蛋白質濃度16%)50%を、カニ肉むき身(蛋白質濃度12%)50%に変更した以外は、実施例1に準じて本発明のフィリングを調製した。得られたフィリングは、本発明の動物性蛋白質具材特有の風味増強保持効果に優れていた。
〔試験例No.34〕
ツナ水煮(蛋白質濃度16%)50%を、ダイスカットした鶏卵の茹卵(蛋白質濃度33%)50%に変更した以外は、実施例1に準じて本発明のフィリングを調製した。得られたフィリングは、本発明の動物性蛋白質具材特有の風味増強保持効果に優れていた。なお、得られた本発明のフィリングの蛋白質含有量は17%であった。

Claims (8)

  1. 水中油型乳化液状調味料及び動物性蛋白質具材を含有し、全蛋白質含有量が2〜20%であるフィリングにおいて、乳酸0.5〜2.5%を含有し、果糖、蔗糖、ぶどう糖から選ばれる少なくとも1種以上を合計で0.1〜5%含有し、かつ、pHが5.0〜6.8であることを特徴とするフィリング。
  2. 更に酢酸を含有する請求項1記載のフィリング。
  3. 酢酸と乳酸の質量比が、1:0.1〜1:5である請求項2記載のフィリング。
  4. 更にクエン酸を含有する請求項2記載のフィリング。
  5. 酢酸の含有量と乳酸及びクエン酸の合計含有量の質量比が、1:0.1〜1:5である請求項4記載のフィリング。
  6. ナイシンペプチドを含有する請求項1記載のフィリング。
  7. 水中油型乳化液状調味料の水相に対し1〜5%の澱粉を含有する請求項1記載のフィリング。
  8. ツナ、カニ、タマゴのいずれか1種以上を含有する請求項1記載のフィリング。
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