JP2013240799A - 三次元積層造型用の鋳物砂 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋳物砂で作った鋳型の常温から1000℃まで加熱した際の線熱膨張量を0.9%以下とし、かつ硬化剤を混練した鋳物砂のスランプ試験におけるスランプの直径(D)とスランプコーンの直径(d)との比(D/d)を、1.65以上とする。
【選択図】なし
Description
また、近年、鋳造の難しい製品として、複雑な鋳型、すなわち砂型を必要とする製品が増えてきている。そこで、鋳造後に、鋳型砂を除去しやすく製造しやすく、また強度が高く、変形が少ない等の特徴を持つ有機性バインダーによる砂型(鋳型)の利用が盛んに行われている。
他方、大型ディーゼルエンジン用のシリンダヘッドなどの素材としては、自動車用などの小型のものと比較して高強度が要求されるので、高融点で鋳造の難しい鋳鉄が採用されている。
ここに、熱硬化性タイプの三次元積層造型は、使用する樹脂が耐熱性に優れることから、低温で鋳込むアルミニウム合金から、高温で鋳込む鋳鉄や鋳鋼まで多くの材質に対して適用することが可能である。そのため、鋳鉄などの高融点金属には、従来から熱硬化性タイプが用いられてきた。
これに対して、2液混合の自硬性タイプによる三次元積層造型は、大型のプリンタヘッドを用いることで、大きな造型物を素早く造型することが可能であるため、大きな製品に対しても適用することができ、製造コストや生産性の点からも有利な造型方法である。さらに、樹脂の印刷のみで十分な強度が得られるため、造型後に熱処理を行う必要がないという利点もある。
ところが、従来の方法に従い、天然硅砂を用いると、図1に示すようなベーニング欠陥と呼ばれるバリ状の欠陥が発生しやすいことが新たに明らかとなった。特に、上記バリ状の欠陥が、複雑に形成された溝などの内部に発生すると、追加工によっても除去することができないため問題が大きい。
その結果、現在の三次元積層造型では、主に、ケイ砂により鋳造用の砂型を作製しているが、ケイ砂は、570℃付近で構造相転移を起こして体積が膨張するため、鋳型に微細な割れが発生し、その割れに溶湯が侵入してしまうことが判明した。
なお、前記した熱硬化性タイプは、鋳物砂に対して、予め樹脂をコーティングするため、流動性の問題がないことも合わせて確認された。また、上記自硬性タイプの砂型には、天然砂に硬化剤を加えて混練した砂を用いるのが一般的である。
本発明は、上記の知見に基づき、完成されたものである。
1.樹脂を硬化させるための触媒として、硬化剤を混練した三次元積層造型用の鋳物砂において、
上記鋳物砂を用いて作製した鋳型の、常温から1000℃まで加熱した際の線熱膨張量が0.9%以下であって、
かつ上記鋳物砂のスランプ試験におけるスランプの直径(D)とスランプコーンの直径(d)との比(D/d)が、1.65以上
である三次元積層造型用の鋳物砂。
本発明は、三次元積層造型(RP造型)法の中でも、硬化剤を混ぜて樹脂を印刷する2液混合の自硬性タイプに適用される技術である。
すなわち、本発明では、樹脂を硬化させるための触媒として、硬化剤を混練した三次元積層造型用の鋳物砂を用いるが、その物性として必須の要件は、以下の線熱膨張量と粉末流動性の2つである。
本発明に従う鋳型(砂型)は、常温から1000℃まで加熱した際の線熱膨張量を0.9%以下とする。0.9%を超えると、当該鋳型で鋳造を行った場合、鋳型にマイクロクラックなどが発生してベーニング欠陥の起点となってしまうからである。
なお、線熱膨張量の下限に特別の限定はなく、0%でも良いが、工業的には、0.8%程度である。
本発明における鋳物砂の粉末流動性は、スランプ試験におけるスランプの直径(D)とスランプコーンの直径(d)との比(D/d)で表すことができる。
すなわち、本発明では、図4に示すような、スランプ試験と呼ばれる鋳物砂の流動性を測定する試験で、スランプの直径(D)を求める。スランプの直径(D)とは、スランプコーン1と呼ばれるカップに、砂2を詰め、定板3からスランプコーンを引き上げたときの砂2の広がりのことを言う。
そして、鋳物砂の流動性は、スランプコーンを垂直に引き上げたときのスランプフロー、すなわち鋳物砂の広がりの直径(D)を測定し、そのスランプの直径(D)を用いて、スランプコーンの直径との比(D/d)を求めることにより評価することができる。
なお、上記比(D/d)の上限に特別の限定はないが、工業的に製造可能なのは、2.0程度である。
本発明で用いる、樹脂を硬化させるための触媒の作用を有する硬化剤としては、従来公知の硬化剤、すなわち常温においてフラン樹脂等の有機性樹脂を硬化させるものであれば、そのいずれもが好適に用いることができる。例えば、キシレンスルホン酸やトルエンスルホン酸を主成分とするものが取扱いの点で優れているため、好ましい。
〔第2成分〕
上記した第2成分は、天然硅砂よりも線熱膨張量が小さい天然または人工の砂が好ましく、その混練比率は、鋳物砂の質量に対して、40〜95質量%の範囲とすることが好ましい。というのは、上記線熱膨張量を有する天然または人工の砂を、上記の範囲で混練するのが、鋳物砂を用いて作製した鋳型の常温から1000℃まで加熱した際の線熱膨張量を、0.9%以下に調整しやすいからである。
なお、天然の砂はジルコン砂が挙げられる。また、本発明における第2成分は、ある一つの酸化物からなる人工砂のように単一物である必要はなく、例えば、天然または人工の砂の混合物でも、以下の人工砂を複数混合したとしても、前記線熱膨張量および前記比(D/d)の値をそれぞれ満足すれば問題はない。
本発明では、上記した第2成分として、焼結法、溶融法もしくは火炎溶融法で作製された人工砂であって、新砂、その回収砂およびその再生砂のうちから選んだ少なくとも1種を用いることができる。特に、焼結法で作製された人工砂であって、天然硅砂の平均粒径の0.5〜2倍の平均粒径で、具体的には80〜200μm程度のものが取扱いの点で好ましい。
なお、本発明においては、人工砂の真球度は特に限定されず、公知品で良い。また、本発明において上記平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計を用いて測定した値を使用した。
本発明において、天然硅砂は、平均粒径:80〜250μmの範囲のものが好ましい。
本発明では、上記した天然硅砂に対して、前記第2成分および硬化剤を混練するのが好ましいが、その混練の際に使用する設備は、従来公知の装置で良い。例えば、セメントやモルタル等を混練するような種々の混練装置を用いることができる。また、混練条件は、当該混練装置を用いる際の常法に従えば良い。
本発明は、三次元積層造型(RP造型)法を用いるものであるが、上型用の砂型を製造する場合、上型の形状を3DCAD設計して得られたデータに基づき、機械加工を用いずに、材料を一層ずつ積層しながら上型用砂型を直接形成することができる。好ましくは、印刷造型法を用いる。すなわち、RP砂型造型装置(例えば、Prometal RCT S−print(商標)、販売元:株式会社EX ONE)を用いて、まず、図3に記載したようなリコーターを有するブレード機構により、鋳物砂の薄層を、平らな表面上に均一に拡げる。そののち、この薄層における所望の領域に対して、上記した3DCADデータに基づきインクジェットノズルヘッドを走査させて、有機樹脂であるバインダー(結合剤)を印刷する。その際の一層厚さは、200〜500μmの範囲とすることが好ましい。より好ましくは200〜300μmの範囲である。かかる操作により、より複雑な形状の砂型を形成することができるからである。
天然硅砂と人工砂と硬化剤とを、混練ミキサーを用いて混練して鋳物砂とし、図3に示したリコーターを有するブレード機構を用いて、鋳物砂の薄層を平らな表面上に均一に拡げ、この薄層の所望の領域に対して、所定の3DCADデータに基づきインクジェットノズルヘッドを走査させて、有機樹脂であるバインダー(結合剤)を印刷した。なお、その際の一層厚さは、200〜400μmとした。
人工砂:溶融法により作製されたムライトとシリカの混合組成砂、平均粒径:130μm、真球度:0.98。
なお、上記真球度は、〔粒子の投影面積と同じ面積を持つ真円の周長(mm)〕/〔粒子の投影面の周長(mm)〕の式により求めた値である。また、式中にある2つの周長については、当該粒子の拡大(接写)写真を撮影し、次いでその写真を画像解析装置にかけることによって求めることができる。なお、任意の10個程度の粒子において計算を行い、その平均値を当該粒子の真球度とした。
天然硅砂:平均粒径:140μm
硬化剤:トルエンスルホン酸を主成分とし、5質量%程度の硫酸を含む
人工砂の混練比率が、鋳物砂の質量に対して、60質量%
硬化剤の混練比率が、鋳物砂の質量に対して、0.3質量%
鋳型の、常温から1000℃まで加熱した際の線熱膨張量:0.8%
スランプの直径(D)とスランプコーンの直径(d)との比(D/d):1.8
なお、本実施例では、開口部の直径(d)が85mm、底面部の直径が58mm、高さが140mmであるスランプコーンを用いた。
一層の厚さ:300μm
有機樹脂:フルフリルアルコール
鋳造
鋳物の材質(規格):FCD500
形状:ディーゼルエンジン用シリンダヘッド
なお、上記天然硅砂と人工砂と硬化剤は、上記発明例と同じ物性のものを使用した。
比較例1は、
鋳型の、常温から1000℃まで加熱した際の線熱膨張量:1.5%
スランプの直径(D)とスランプコーンの直径(d)との比(D/d):2.0
となり、
また、比較例2は、
鋳型の、常温から1000℃まで加熱した際の線熱膨張量:0.2%
スランプの直径(D)とスランプコーンの直径(d)との比(D/d):1.5
の各物性が得られた。
2 砂
3 定板
1.樹脂を硬化させるための触媒として硬化剤を混練した、2液混合の自硬性タイプの三次元積層造型用の鋳物砂において、
上記鋳物砂を用いて作製した鋳型の、常温から1000℃まで加熱した際の線熱膨張量が0.9%以下であって、
かつ上記鋳物砂のスランプ試験におけるスランプの直径(D)とスランプコーンの直径(d)との比(D/d)が、1.65以上
である三次元積層造型用の鋳物砂。
Claims (6)
- 樹脂を硬化させるための触媒として、硬化剤を混練した三次元積層造型用の鋳物砂において、
上記鋳物砂を用いて作製した鋳型の、常温から1000℃まで加熱した際の線熱膨張量が0.9%以下であって、
かつ上記鋳物砂のスランプ試験におけるスランプの直径(D)とスランプコーンの直径(d)との比(D/d)が、1.65以上
である三次元積層造型用の鋳物砂。 - 前記鋳物砂が、天然硅砂に対し、第2成分と前記硬化剤とを混練した鋳物砂であって、該第2成分が、天然硅砂よりも線熱膨張量が小さい天然または人工の砂である請求項1に記載の三次元積層造型用の鋳物砂。
- 前記第2成分が、焼結法、溶融法もしくは火炎溶融法のいずれかにより作製された人工砂であって、新砂、その回収砂およびその再生砂のうちから選んだ少なくとも1種である請求項1または2に記載の三次元積層造型用の鋳物砂。
- 前記第2成分の混練比率が、鋳物砂の質量に対して、40〜95質量%である請求項2または3に記載の三次元積層造型用の鋳物砂。
- 前記硬化剤の混練比率が、鋳物砂の質量に対して、0.1〜1.0質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の三次元積層造型用の鋳物砂。
- 前記人工砂の平均粒径が、前記天然硅砂の平均粒径の0.5〜2倍である請求項3〜5のいずれかに記載の三次元積層造型用の鋳物砂。
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