JP2017131946A - 中子、冷し金、積層造形用材料及び鋳型の製造方法 - Google Patents

中子、冷し金、積層造形用材料及び鋳型の製造方法 Download PDF

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幸二郎 藤山
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Abstract

【課題】粉末固着積層法で形成され、大型の鋳物に適用可能かつ、高精度な鋳物を鋳造可能な中子、冷し金、積層造形用材料及び鋳型の製造方法の提供。【解決手段】一例として、冷し金101が、2つの断面半円状の冷し金部材111及び冷し金部材112で構成される個別の部材が中子下型に設けられた配置孔に埋め込まれる構造の冷し金109、及び冷し金110の2つのドーナツ状のもので構成され、それぞれが中子上型または中子下型に埋め込まれているような、隣接する部材と嵌合可能な部分型を組み合わせた中子本体と、該中子本体の溶湯と接触する位置に設けられ、高熱伝導性の積層造形用材料で形成された冷し金とを備える中子、冷し金、積層造形用材料及び鋳型の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、中子、冷し金、積層造形用材料及び鋳型の製造方法に関する。詳しくは、大型の鋳物に適用可能かつ、高精度な鋳物を鋳造可能な中子、冷し金、積層造形用材料及び鋳型の製造方法に係るものである。
古くから金属材料を用いて大量生産を行う際に、鋳型を用いる鋳造による加工がなされてきた。鋳造は、鋳型の使用法、鋳型の種類、骨材の固定法等により複数の方法が存在する。
近年、三次元造形機の普及に伴い、この機器を用いた鋳型製造手法が注目されている。本手法では、鋳型砂と鋳型砂を結着させる粘結剤を混合した鋳型材料に、インクジェットヘッドで結合剤溶液をかけて一層ずつ積層、硬化させるものであり、粉末固着積層法と称されている。
粉末固着積層法では、鋳物の原型となる木型や金型を製造することなく、直接的に鋳型が製造できる点から、鋳物の製造期間の短縮化やコスト削減が期待できる。また、多種の形状の鋳物を少量生産する用途にも適している。
また、粉末固着積層法での鋳型の製造では、従来の木型を用いた鋳型の製造に比して、寸法精度の高い鋳型を形成することが可能である。また、木型等を鋳型から取り出す際に必要となる抜き勾配を形成する必要がなく、鋳型材料を低減することができるものとなっている。
ここで、粉末固着積層法でも従来の鋳造と同様に、鋳型の原料として骨材となる鋳物砂と粘結剤が使用される。粘結剤は鋳物砂同士を結着させ、水分や熱により硬化する性質を有するものである。鋳物砂及び粘結剤は、鋳物材料の注湯時にも安定的に鋳物の形状を形成しうる耐熱性を有する必要がある。
しかし、粉末固着積層法に使用される鋳型材料は、市販のものを含めて種類が限定されているのが現状で、鋳物の金属材料の融点温度に鋳型材料が対応できず欠陥が生じることがある。そこで、例えば、特許文献1では、融点が1,000℃を超える高融点金属でも注湯可能な造形用材料が提案されている。
このように粉末固着積層法による鋳型の製造では、鋳型材料の改良により、注湯可能な金属の種類の多様化や、鋳物の品質を向上させようとする試みがなされている。
また、従来、一般的な鋳造工程において、鋳物の厚肉部位で、溶湯の冷却速度が不均一になり、鋳造金属内部に気泡が残るひけ巣が発生することが知られている。鋳物の内側では凝固が遅れるため、ガス放出と凝固収縮が同時に起こり、内部に大きなくぼみが形成され、凝固欠陥が生じる。
このような冷却速度の不均一性を解消し、凝固欠陥を抑止するために、溶湯の冷却速度を高める冷し金が用いられる。冷し金は熱伝導率の大きな金属棒であり、鋳物表面に当ててひけ巣が生じやすい場所の外側から内部の熱を急速に奪うものとなっている。
ここで、上述した冷し金については、汎用性の問題から円柱状またはブロック型の形状のものが採用されているケースが多い。そのため鋳物表面の対象位置の形状と合致せず、冷却効果が不充分となることがある。
また、冷し金を鋳物の形状にある程度合致するように形成することも可能であるが、少量多品種の製品の形状に合わせた冷し金を製造することは現実的に対応が難しかった。また、立体的に複雑な形状で厚肉部位を有する鋳物に関しては、適切な冷却効果が得られる冷し金を製造することが困難であった。
こうしたなか、冷し金自体を粉末固着積層法により製造し、鋳物の表面形状に対して三次元的に合致させることを試みた冷し金が提案されている。例えば、特許文献2に記載の冷し金が存在する。
ここで、特許文献2には、鋳物の表面形状に三次元的に合致する形状の接触部を有する冷し金が記載されている。この冷し金は、所望の形状データを元に粉末固着積層法にて形成される。また、冷し金は鋳鉄鋳物で製造されるものとなっている。
特開2010−110802号公報 特開2014−018835号公報
しかしながら、粉末固着積層法での鋳型の製造では、製造可能な造形物の大きさについて問題を有しており、鋳型の大きさは、使用する三次元造形機の最大造形サイズに依存するものとなっている。即ち、汎用性の高い機種では一般的に長さ20cm程度の造形物が一度の積層造形において製造可能なサイズの限界となっている。
そのため、長さ1m超の大型の鋳型については、一回の積層造形で製造することができなかった。また、約1m四方の造形物を高精度に製造可能な機種は装置が非常に高額であり、製造現場で容易に導入できるものとはなっていない。
また、大型の鋳型を形成した際の形状安定性や鋳型の強度が不充分になるリスクが存在する。また、大型の鋳型で製造する鋳物の鋳肌面の平滑性等、鋳物の品質においても精度を担保する必要がある。
更に、従来の鋳型では、単一の熱伝導性の鋳物砂を使用することが多く、かつ、上述したように冷し金の形状が画一的であった。そのため、鋳物に粥状凝固やこれに起因するひけ巣等の欠陥が生じやすいものとなっている。
また、特許文献2に記載されたように、粉末固着積層法により、冷し金を所望の形状に形成することができても、形状のみの対応では冷却効率が不充分となる場合がある。即ち、冷却効率を充分に高めるためには、冷し金の配置位置や、熱伝導性が高く粉末固着積層法に適した構成材料の検討の点で改良の余地があった。
更に、従来の鋳物砂の原料の中にはクロマイトサンドのような熱伝導性に優れる原料もあるが、安全性の問題があった。クロマイトサンドは鋳造工程で水溶性の六価クロムを生成するが、発がん性の疑いがあり、また強い酸化作用を示すことから、環境や人体に影響があり使用が難しくなっている現状が存在する。
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、大型の鋳物に適用可能かつ、高精度な鋳物を鋳造可能な中子、冷し金、積層造形用材料及び鋳型の製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の中子は、隣接する部材と嵌合可能な部分型を組み合わせた中子本体と、該中子本体の溶湯と接触する位置に設けられ、高熱伝導性の積層造形用材料で形成された冷し金とを備える。
ここで、隣接する部材と嵌合可能な部分型を組み合わせた中子本体によって、中子を2以上の部材で構成するものとなる。即ち、中子を配置する鋳型が大型化した際に、中子自体も安定した形状で大型化することができる。
また、中子本体の溶湯と接触する位置に設けられ、高熱伝導性の積層造形用材料で形成された冷し金によって、中子の配置位置、即ち、鋳型の内部での溶湯を効率よく冷却することが可能となる。
また、冷し金の熱伝導率が0.46W/mk以上である場合には、溶湯を効率よく冷却することが可能となる。
また、中子本体は、中子本体の外周面から内側に向けて溶湯が流れ込む湯道が形成され、冷し金が、湯道の少なくとも一部を構成して溶湯と接触する位置に設けられた場合には、鋳物のうち、中子本体で挟まれた領域で形成される部分を冷却することが可能となる。なお、ここでいう「冷し金が湯道の少なくとも一部を構成して」とは、湯道が形成された領域、即ち、湯道の形状を形作る箇所の一部が中子本体ではなく冷し金で構成されたものであることを意味する。
また、冷し金が中子本体の内側かつ湯道の端部に、湯道を挟んで対向して位置して設けられた場合には、中子本体で挟まれた領域で形成される鋳物をより一層効率よく冷却することが可能となる。また、鋳物の外周面や主型のキャビティ面に冷し金を配置しても冷却が難しかった部分の冷却が可能となる。例えば、鋳物の内部構造に部分的な隔壁を有する形状に対して、効率よく欠陥を抑止することができる。
また、冷し金が、少なくとも粒径が100μmの炭化ケイ素を含む場合には、より一層充分に溶湯を効率よく冷却することが可能となる。
また、上記の目的を達成するために、本発明の冷し金は、隣接する部材と嵌合可能な部分型を組み合わせた中子の溶湯と接触する位置に設けられ、高熱伝導性の積層造形用材料で形成されたものとなっている。
ここで、冷し金が、中子の溶湯と接触する位置に設けられ、高熱伝導性の積層造形用材料で形成されたことによって、中子の配置位置、即ち、鋳型の内部での溶湯を効率よく冷却することが可能となる。
また、冷し金が少なくとも粒径が100μmの炭化ケイ素を含む場合には、より一層充分に溶湯を効率よく冷却することが可能となる。
また、上記の目的を達成するために、本発明の冷し金は、隣接する部材と嵌合可能な部分型を組み合わせた鋳型の表面形状に三次元的に合致する接触部を有すると共に、少なくとも粒径が100μmの炭化ケイ素を含んで構成されている。
ここで、冷し金が、鋳型の表面形状に三次元的に合致する接触部を有することによって、溶湯を効率よく冷却することが可能となる。なお、ここでいう「鋳型の表面形状」とは、鋳型の外周面の形状や、溶湯と接触するキャビティ面の形状を含むものである。
また、冷し金が、少なくとも粒径が100μmの炭化ケイ素を含むことによって、充分に溶湯を効率よく冷却することが可能となる。
また、上記の目的を達成するために、本発明の積層造形用材料は、少なくとも粒径が100μmの炭化ケイ素と、アルミナセメントとを含むものとなっている。
ここで、積層造形用材料が少なくとも粒径が100μmの炭化ケイ素を含むことによって、積層造形用材料の熱伝導性を良好なものにすることができる。
また、積層造形用材料が、炭化ケイ素とアルミナセメントとを含むことによって、炭化ケイ素を主な鋳物砂として、アルミナセメントで炭化ケイ素を結着させることが可能となる。
また、上記の目的を達成するために、本発明の鋳型の製造方法は、隣接する部材と嵌合可能な部分型を組み合わせた中子本体と、該中子本体の外周面から内側に向けて形成された湯道の少なくとも一部を構成して溶湯と接触し、かつ、高熱伝導性の積層造形用材料で形成された冷し金とを組み合わせて中子を形成する工程と、隣接する部材と嵌合可能な部分型を組み合わせて主型を形成すると共に、該主型の内側に前記中子を配置する工程を備える。
ここで、隣接する部材と嵌合可能な部分型を組み合わせた中子本体によって、中子を2以上の部材で構成するものとなる。即ち、中子を配置する鋳型が大型化しても中子自体も安定した形状で大型化することができる。
また、中子本体の外周面から内側に向けて形成された湯道の少なくとも一部を構成して溶湯と接触し、かつ、高熱伝導性の積層造形用材料で形成された冷し金によって、鋳物のうち、中子本体で挟まれた領域で形成される部分を冷却することが可能となる。
本発明の内容としては、以下に記載するような課題を解決するための手段も検討される。
上記の目的を達成するために、本発明の鋳型は、隣接する部材と嵌合可能な嵌合部を有し、粉末固着積層法による積層造形により形成された部分型を組み合わせて形成されている。
ここで、鋳型が、粉末固着積層法による積層造形により形成された部分型を組み合わせて形成されたことによって、大型の鋳型とすることができる。即ち、複数の部分型を用いて、1つの大型の鋳型の形状とすることが可能となる。なお、ここでいう部分型とは、従来の鋳造で使用される上型や下型、中子をさらに分割したものを意味するものである。また、大型の鋳型とは、三次元造型機で製造可能な最大造形サイズにもよるが、一度の積層造形処理で鋳型全体の形状が製造しえないものを意味する。
また、隣接する部材と嵌合可能な嵌合部を有する部分型によって、部分型同士の組み合わせ作業を容易にすることができる。また、部分型同士を組み合わせた構造体を安定化させることができる。
また、部分型が、鋳物が形成される領域を含む鋳物用部分型と、湯口及び湯道が形成された領域を含む湯道用部分型とを組み合わせて形成された場合には、各々の用途に合わせた形状に加工しやすいものとなる。例えば、湯道用の部分型であれば、溶湯が流れる領域以外の部分は不要であるため、必要最低限の形状に加工し、鋳型材料を低減させた部分型への加工がしやすいものとなる。
また、嵌合部が隣接する部分型同士の接合領域に形成された互いに嵌合可能な凹凸部である場合には、部分型同士を組み合わせた構造物をより一層安定化させることが可能となる。例えば、接合する面の凹凸を組み合わせる組継ぎや、部分型の一部に凹部と凸部を設けて組み合わせるほぞ継ぎ等の形状で嵌合させることができる。
また、嵌合部が、隣接する部分型同士の接合領域に形成された凹部と、凹部と嵌合して隣接する部材同士を連結する連結部材とを有する場合には、部分型同士を組み合わせた構造物をより一層安定化させることが可能となる。例えば、隣接する部分型の接合する面に凹部を設け、その凹部に嵌る別部材の雇い実を連結部材として嵌合させることができる。
また、部分型の溶湯と接触しない領域に、隣接する部材同士が所定の間隔を有して配置された柱状部材と、隣接する柱状部材同士を連結する桟部材とが形成された場合には、部分型の形状の安定性を担保しながら、部分型の形成に必要な鋳型材料を低減させることができる。また、部分型の溶湯と接触しない領域の側から風を当てる等して強制冷却させて凝固を促進でき、凝固欠陥を低減させることができる。
また、部分型の溶湯が流れ込むキャビティ部の少なくとも一部に部分型を貫通して形成され、その内部に部分型を形成する未結着の鋳物砂が収容されたベント部を備える場合には、鋳造時に鋳型から発生したガスのガス抜きが良好となり、鋳物へのガス欠陥が生じにくいものとすることができる。即ち、貫孔した領域からガスを逃がしつつ、鋳物砂で溶湯漏れを抑えることが可能となる。ここでいう未決着の鋳物砂とは、粉末固着積層法の積層時において、粘結剤による硬化を開始させる結合剤をかけない鋳物砂を意味し、未硬化の状態で貫通した領域に配置されるものとなる。
また、部分型の少なくとも一部と連結された中子を備える場合には、鋳型に生じる鋳ばりを低減させることができる。即ち、従来は中子と、主型となる上型または下型との間に鋳ばりが形成されるが、部分型と中子が連結しているため、鋳ばりを減らすことができる。
また、部分型が、第1の粒子と、第1の粒子の粒径の1.5〜2倍の粒径を有する第2の粒子で構成される骨材を含む積層造形用材料で形成された場合には、鋳型材料の混在状態での粒子間の隙間や表面の凹凸が減り、より一層、鋳型の表面の平滑性を高めることができる。また、積層時の鋳型材料の密度が高くなり、より一層、鋳型の強度を高めることができる。なお、ここでいう粒子の粒径は平均粒径を意味し、粒子製造時のばらつきを含むものである。また、強度とは、抗折試験で測定する抗折強度を意味し、試験内容の詳細については後述する。
一方、第1の粒子の粒径の1.5倍未満の粒径を有する第2の粒子である場合には、第2の粒子が第1の粒子に近づくこととなる。この結果、混在状態の密度が下がり、抗折強度の向上が不充分となる。また、粒径が小さくなるため、積層時に粒子の抜けが生じやすくなり、鋳型の表面の平滑性を高めにくいものとなる。また、第1の粒子の粒径の2倍を超える粒径を有する第2の粒子である場合には、第2の粒子の粒子間の隙間が生じやすくなり、混在状態の密度が下がり、抗折強度の向上が不充分となる。また、第2の粒子間の表面の凹凸が生じやすくなり、鋳型の表面の平滑性を高めにくいものとなる。
また、第1の粒子の全量基準での重量比率に対する第2の粒子の全量基準での重量比率の比が1.5〜3.0の範囲内である場合には、より一層、鋳型の抗折強度を向上させることができる。
ここで、第1の粒子の全量基準での重量比率に対する第2の粒子の全量基準での重量比率の比が1.5未満である場合には、鋳型の表面の平滑性が担保しづらいものとなる。また、第1の粒子の全量基準での含有量の重量比率に対する第2の粒子の全量基準での重量比率の比が3.0を超える場合には、鋳型の抗折強度が不充分なものとなる。
また、粘結剤が全量基準での重量比率が33%である場合には、より一層、鋳型の抗折強度を向上させることができる。また、より一層、鋳肌面の平滑性を高めることができる。
本発明に係る中子は、大型の鋳物に適用可能かつ、高精度な鋳物を鋳造可能なものとなっている。
また、本発明に係る冷し金は、大型の鋳物に適用可能かつ、高精度な鋳物を鋳造可能なものとなっている。
また、本発明に係る積層造形用材料は、大型の鋳物に適用可能かつ、高精度な鋳物を鋳造可能なものとなっている。
更に、本発明に係る鋳型の製造方法は、大型の鋳物に適用可能かつ、高精度な鋳物を鋳造可能な方法となっている。
本発明を適用した冷し金の一例を示す概略斜視図である。 鋳造後の鋳物で構成される玉型弁の構造を示す概略断面図である。 本発明を適用した中子の一例を示す概略斜視図である。 図3に示した中子の内部構造を示す概略断面図である。 主型及び中子の構造を示す概略図である。 鋳型から製造する玉形弁用弁箱及び鋳造方案に基づく製品部分と湯口及び上がりを示す概略図である。 主型に中子を配置した状態の詳細構造の概略図(a)及び中子のほぞ継ぎを示す概略図(b)である。 鋳型の支持構造を示す斜視図(a)、正面図(b)及び側面図(c)である。 支持構造を設けない鋳型の概略図(a)及び支持構造を設けた鋳型の概略図(b)である。 鋳型のベント部を示す概略図及びその部分拡大図である。 上型及び下型と中子を一体化させていない鋳型を示す概略図(a)、上型と中子が一体化した鋳型を示す概略図(b)及び下型と中子が一体化した鋳型を示す概略図(c)である。 実施例1〜6及び比較例1の板状試験片に対して行った抗折強度試験の結果を示す図である。 実施例4の試験片における鋳型の表面状態を示す写真(a)及び、比較例1の試験片における鋳型の表面状態を示す写真(b)である。 実施例7〜11の板状試験片に対して行った抗折強度試験の結果を示す図である。 凝固試験の結果を示す図である。 実施例17〜21及び比較例2の板状試験片に対して行った抗折強度試験の結果を示す図である。 実施例19の試験片における鋳型の表面状態を示す写真(a)及び、比較例2の試験片における鋳型の表面状態を示す写真(b)である。 実施例23、24及び比較例3、4における熱伝導率を示すグラフである。
以下、本発明の更なる実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した冷し金の一例を示す概略斜視図である。図2は、鋳造後の鋳物で構成される玉型弁の構造を示す概略断面図である。図3は、本発明を適用した中子の一例を示す概略斜視図である。図4は、図3に示した中子の内部構造を示す概略断面図である。
以下、本発明を適用した冷し金の一例である冷し金101及び冷し金101を用いた中子と鋳型について説明する。
図1では、本発明を適用した中子及び冷し金を用いて鋳造される玉形弁を形成する鋳物102と冷し金101の位置関係を示している。なお、玉型弁は、本発明を適用した中子及び冷し金を用いて鋳造する鋳物の一例である。
鋳物102で構成された玉形弁106は、内部に弁体105が押し付けられ、流体の流路107の開閉を制御する弁座103が設けられている。この弁座103は隔壁104を介して鋳物102の外周面108と連結されている(図2参照)。
冷し金101は、後述する中子115に設けた配置孔に埋め込まれ、中子を構成する中子上型または中子下型と一体化した構造となっている。図1では鋳物と冷し金との位置関係を明確にするため、中子を除いた鋳物102と冷し金101の全体形状のみ示している。
図1に示すように、冷し金101は、2つのドーナツ状の冷し金109及び冷し金110で構成されている。冷し金109及び冷し金110は、それぞれが中子上型または中子下型に埋め込まれている。即ち、中子下型に冷し金109が埋め込まれている場合には、それと対になる中子上型に冷し金110が埋め込まれて一体化した構造となる。なお、冷し金109及び冷し金110の形状は同一のものである。
更に、冷し金109は2つの断面半円状の冷し金部材111及び冷し金部材112で構成されている。冷し金部材111と、冷し金部材112は個別の部材であり、それぞれが中子下型に設けられた配置孔に埋め込まれる構造となっている。
同様に、冷し金110も2つの断面半円状の冷し金部材113及び冷し金部材114で構成されている。冷し金部材113と、冷し金部材114は個別の部材であり、それぞれが中子上型に設けられた配置孔に埋め込まれる。
図1に示すように、ドーナツ状の冷し金109及び冷し金110は、鋳物102の隔壁104の端部、即ち、弁座103とその近傍を両側から挟むように配置されている。隔壁104と弁座103の部分は鋳物102の鋳造時に厚肉となる部分であり、かつ、中子で挟まれた領域となる部分である。
図3で中子115と、中子115を構成する上部中子116及び下部中子117を示している。この中子115が図示しない主型の内側に配置され、鋳物102が鋳造される。また、中子115は外周面から内側に向けて湯道118が形成されている。また、2つの湯道118同士の間は中実な領域119となっている。
即ち、上部中子116及び下部中子117を、対向する型合わせ面で型合わせした状態では型合わせ面の中央部分が中実な領域119となる。つまり、型合わせ面同士がぴったり接触する箇所となる。また、型合わせ面の一部は面同士が完全には接触せず、面同士の間に隙間が形成され、湯道118となる。
図4に中子115の断面形状を示す。2つの湯道118、中実な領域119及び冷し金1の位置関係は図4に示すようになる。湯道118の内側の端部が冷し金1(冷し金112及び冷し金114)で形成されている。湯道118の中子115の内側の端部では湯道118の一部を冷し金112及び冷し金114が構成し、湯道118に流れてくる湯と接触するものとなる。
図4においては、湯道118の端部に冷し金112及び冷し金114が位置したものとなっているが、この図に示す中子と反対側を構成する中子には、同様に湯道118が形成され、その端部に冷し金111及び冷し金113が位置する構造となっている。
ここで、必ずしも、本発明を適用した中子及び冷し金を用いて鋳造される鋳物が玉形弁106に限定されるものではない。粉末固着積層法にて主型を造形するため、適宜、所望の形状の鋳物を製造することが可能である。
なお、上述したように、玉形弁106は、鋳物の内側に隔壁104や弁座103が形成され、同部分は中子で挟まれた領域として湯が流れてきて形成され、鋳物の厚肉部分となる。このような鋳物の内側に厚肉部分が形成される鋳物に対して、本発明を適用した冷し金は効率良く冷却するため、良好な鋳物を形成することができる。即ち、本発明を適用した中子及び冷し金を用いて鋳造される鋳物としては、内部に厚肉部位が形成される形状のものが好適な対象となる。同様の観点から、鋳造される鋳物がアングル弁であってもよい。
また、必ずしも、冷し金101が、2つのドーナツ状の冷し金109及び冷し金110で構成される必要はない。また、必ずしも、冷し金109及び冷し金110が2つの断面半円状の部材で構成される必要はない。冷し金の形状は、中子の形状や主型の形状に合わせて適宜設定することができる。但し、上述した冷し金101においては、冷し金の構造の安定性が向上し、また、4つの部位を中子に設けた配置孔に組み込みやすくなる点から、冷し金101が、2つのドーナツ状の冷し金109及び冷し金110で構成されることが好ましい。また、冷し金109及び冷し金110が2つの断面半円状の部材で構成されることが好ましい。
上述した冷し金101は、粉末固着積層法により製造されており、中子とその配置孔に合致する形状となるように形成されている。粉末固着積層法により製造することで、所望の形状やサイズの冷し金101を製造可能となっている。
また、冷し金101の積層造形用材料は、骨材(鋳物砂)となる炭化ケイ素と、粘結剤となるアルミナセメントとで構成されている。
炭化ケイ素(SiC)は、純度99%以上の炭化ケイ素(SiC)からなり、その粒径は平均粒径が100μmの粒子で構成されている。また、炭化ケイ素の熱伝導率は、0.52W/mkとなっている。
また、アルミナセメントは、アルミナセメントの全量基準での重量比率で72.5%の酸化アルミニウム(Al)及び25.8%の酸化カルシウム(CaO)を含む粉状前駆体である。また、アルミナセメントは、平均粒径が4.5μmの粒子で構成され、1,730℃以上の耐熱性を有している。
アルミナセメントは、積層造形時にインクジェットのプリントヘッドから結合剤溶液を吹き付けられることで、混合させた炭化ケイ素を結着させて硬化させる。結合剤溶液は、1%以下の2−ピロリドンを含む水溶液が用いられる。
冷し金101の積層造形用材料は、積層造形用材料の全量基準で、炭化ケイ素が65%、アルミナセメントが35%配合されたものとなっている。
ここで、冷し金101の積層造形用材料には、粘結剤の硬化速度を速めるための補助剤として、炭酸リチウム(LiCO)を含めることもできる。例えば、炭化ケイ素やアルミナセメントの配合量を減らし、1〜5%程度の酸化リチウムを添加する構成であってもよい。
また、必ずしも、冷し金101の積層造形用材料の骨材が平均粒径100μmの炭化ケイ素(SiC)に限定される必要はない。例えば、平均粒径100μmの炭化ケイ素(SiC)と平均粒径50μmの炭化ケイ素(SiC)を1:1の割合で混合した骨材も使用しうる。この骨材では、骨材の全量基準で、炭化ケイ素の混合物65%とアルミナセメント35%の混合物とすると0.46W/mkの熱伝導率を有する冷し金が形成できる。
一般的に熱伝導率が良好な鋳物材料として使用されていたクロマイトサンドの熱伝導率が0.45〜0.58W/mkと言われているため、上述した炭化ケイ素を骨材とした積層造形用材料を用いることでクロマイトサンドと同程度の熱伝導率を有する積層造形用材料とすることができる。
また、冷し金101の積層造形用材料の骨材としては、熱伝導率の良好な黒鉛の使用も考えられる。
中子115は一般的に用いられる鋳物砂を用いて構成することができる。即ち、珪砂、オリビン砂、クロマイトサンド、ジルコンサンド、セラミック系の人工砂等を使用して製造することができる。これらの鋳物砂は粘結剤に含まれる水分が少なく、鋳込み時のガスの発生を低減し、ガス欠陥が生じにくいものとすることができる。
また、中子115は上述したように、上部中子116及び下部中子117の2つの部材を組み合わせて形成する。
ここで、中子115は必ずしも2つの部材で構成される必要はなく、例えば、粉末固着積層法により、3以上の部材を形成してこれらを組み合わせて製造する方法も考えられる。但し、中子の構造上、主型の内部に中子を配置した際の中子全体を支持する構造が少ないため(例えば、中子の両端部のみを支持する)強度が不充分となることから、中子115は2つの部材で構成されることが好ましい。
また、中子115の製造には、中子115の形状に合わせた中子形成用の中子用主型を粉末固着積層法により形成することができる。この中子用主型は、粉末固着積層法で製造した複数の部分型を組み合わせて製造するものが採用しうる。
また、中子115の製造には、中子のための専用形状に形成した、従来から用いられる木型や金型を用いるものであってもよい。
上述した実施の形態では、中子115に設けた配置孔に冷し金101を埋め込んだ構造としたが、本発明の内容はこれに限定されるものではない。例えば、中子の外周面の一部に冷し金を配置して形成する態様が考えられる。この場合、中子の外周面は溶湯に接触する部分となるため、冷し金を配置した所望の領域を効率よく冷却することが可能となる。また、粉末固着積層法により冷し金を形成するため、複雑な形状であっても、配置位置に合致する形状とすることができる。また、熱伝導率の良好な積層造形材料により冷し金を形成するため、厚肉部位の冷却効率を高めることができる。
また、更に別の実施の形態として、主型の表面形状の一部を冷し金で形成することも可能である。例えば、主型の溶湯と接触するキャビティ面や、湯道と接触する部分に合致する形状の冷し金を用いる態様が考えられる。更に、主型の湯と接触しない外周面の形状と合致するような冷し金の形状を採用することもできる。これらの場合にも、粉末固着積層法により冷し金を形成するため、複雑な形状であっても、配置位置に合致する形状とすることができる。また、熱伝導率の良好な積層造形材料により冷し金を形成するため、厚肉部位の冷却効率を高めることができる。
続いて、主型の構造及び製造方法について以下で説明する。
図5は、主型及び中子の構造を示す概略図である。図6は,鋳型から製造する玉形弁用弁箱及び鋳造方案に基づく製品部分と湯口及び上がりを示す概略図である。図7は、主型に中子を配置した状態の詳細構造の概略図(a)及び中子のほぞ継ぎを示す概略図(b)である。
以下、本発明を適用した鋳型の一例である積層造形鋳型1について説明する。
図5に示すように、積層造形鋳型1は、主型2と、中子3を備えている。積層造形鋳型1は、図6の左側に示す形状の玉形弁用弁箱4を鋳造する際の鋳型である。また、主型2は長さ(図5の符号L)が800mmの鋳型となっている。
なお、以下で示す中子3は、上述した中子115と全体形状は同一であり、主型2に対して同様に配置されるものとなっている。中子3と中子115の違いは、中子115が上部中子116と下部中子117の2つの部材で形成されているのに対して、中子3は、上部中子12、中間中子13及び下部中子14の3つの部材を組み合わせて形成されている点にある。
主型2は、内部に玉形弁用弁箱4(上述した玉型弁106の弁箱に相当)の外形と同一の形状の空間を有し、複数の部分主型5を組み合わせて形成されている。主型2は高さ方向において、湯口及び湯道が形成された湯道側の領域部分6、製品側の上部領域部分7及び製品側の下部領域部分8に分割された構造となっている。符号9及び符号10は主型2の高さ方向の分割位置を示している。
また、主型2の幅方向に隣接する部分主型5同士の間は組継ぎ11で組み合わされている。組継ぎ11の部分の溶湯が流れない領域は、図示しないボルトナットやクランプ等の部材で固定されている。詳細な分割構造は後述する。
図5に示すように、中子3は、上部中子12、中間中子13及び下部中子14の部材を組み合わせて形成されている。中子3は、主型2の内部空間に収容され、玉形弁用弁箱4の空洞を形成する。また、上部中子12と中間中子13、及び中間中子13と下部中子14の間はほぞ継ぎで組み合わされ、ボルトナットやクランプ等の部材で固定されている。ほぞ継ぎの詳細な構造は後述する。
主型2及び中子3は、肉抜きした形状となっており、鋳造に用いられない部分は削られ、形状を担保するために必要な鋳型材料のみが使用されている。
主型2及び中子3を用いて鋳造を行うと、図6の左側に示す形状の玉形弁用弁箱4を製造することができる。また、図6の右側には、鋳造時の玉形弁用弁箱となる製品部分15と、湯口50及び上がり16の形成位置を示している。
ここで、必ずしも、主型2の長さが800mmに限定されるものではなく、造形対象物も玉形弁用弁箱である必要はない。製造したい対象物の大きさと、それに必要となる複数の部分主型を形成することで、例えば、長さ1000mm以上の主型を形成することも可能である。
また、主型2が分割される位置は特に限定されるものではなく、適宜、部材の組み合わせや取扱いが容易な形状へと、適宜設計変更を行うことが可能である。但し、主型2を、湯口及び湯道が形成された湯道側の領域部分6、製品側の上部領域部分7及び製品側の下部領域部分8に分割された構造とすることで、各々の用途に合わせた形状に加工しやすいものとなる。
即ち、主型2では、湯道側の領域と製品側の領域とで分割可能な構造とすることが好ましい。例えば、湯道側の領域は製品側の領域に比べて、鋳型材料が必要な領域が少なくなっており、湯道側の領域の形状のみを形成した方が、主型の形成効率を高めることができる。
また、必ずしも、隣接する部分主型や中子部材が組継ぎやほぞ継ぎで組み合わされる構造とされる必要はない。但し、組み合わせた構造体が安定した構造となる点から、隣接する部分主型や中子部材が組継ぎやほぞ継ぎで組み合わされる構造とされることが好ましい。また、同様の観点から、接合する領域の両方に凹部を設け、組み合わせた凹部に嵌合する雇い実部材を使用して組み合わせる構造も採用しうる。
図7(a)には、主型2及び中子3のより詳細な分割構造を示している。主型2は複数の部分主型5によって形成されている。また、中子3は前述したように、上部中子12、中間中子13及び下部中子14の3つの部材で形成されている。
各々の部分主型5は、長さ20mm程度の一般的な造形対応サイズの造形物を製造可能な三次元造形機で製造されるものとなっている。
個々の部分主型5を更に細かく見ると、符号17及び符号18が上がり部、符号19が湯口部、符号20及び符号21が中間主型、符号22及び符号23が下部主型となっている。また上がり部17及び上がり部18は、図6の右側の図で示した上がり16を形成する部分となる。
また、図7(b)には、中子3の詳細な構造を示している。上部中子12は下部に凸部42が、中間中子13の上部に凹部43がそれぞれ形成されている。また、中間中子の下部に凹部(図示せず)が、下部中子14の上部に凸部44がそれぞれ形成されている。
対向する各凹凸部が中子3のほぞ継ぎ部分であり、この部分で組み合わされることで、中子3は安定した構造体となる。
このように1つの主型を細分化することで、高精度かつ大型の鋳型を形成することが可能となっている。また、個々の部材は、積層造形装置用に所望の形状の三次元データを入力して形成される。
本発明を適用した鋳型では、以下、図8〜図11で説明するような構造を採用しうる。
図8には、鋳型のキャビティ部の反対側の領域を肉抜きし、柱状部材による支持構造を設けた鋳型を示している。
図8に示す鋳型24は、溶湯が流れ込むキャビティ部25の反対側の領域に、支持構造26を形成している。支持構造26は、一定間隔を有して略平行に配置された柱部27と、隣接する柱部27同士を連結した桟部材28で構成されている。
また、柱部27及び桟部材28が交わる部分は、各々の部材より体積の大きな球状部29が形成され、交点を補強する構造となっている。なお、鋳型24をキャビティ部25の反対側の領域から見た正面図を図8(b)、側面から見た図を図8(c)に示している。
図9(a)には、支持構造26を設けない鋳型30を、図9(b)には前述した支持構造26を有する鋳型24を示している。鋳型24は鋳型30に比べ、キャビティ部の反対側の領域を肉抜きすることで、鋳型を形成する鋳型材料を大きく低減させることができるものとなっている。
また、鋳型24は、支持構造26を有することで鋳型の強度を担保しうるものとなっている。また、鋳型24は肉抜きされたことで、キャビティ部の反対側の領域からキャビティ部25に風を当てる等して、鋳物材料を注湯後に強制冷却させることができる。この結果、凝固が促進され、冷却速度に起因する凝固欠陥の発生を低減させることができる。
本発明を適用した鋳型においては、鋳型24のような支持構造26を有する部分型(第2の部分型)と、支持構造26を有しない部分型(第1の部分型)を組み合わせて、1つの鋳型を構築することが可能である。
また、複数の部分型で構築される大型の鋳型において、例えば、鋳型の全体の中でも、溶湯が流れ込むキャビティ部の背面にあたるガス抜きが必要な箇所や、キャビティ部の背面にあたる気体の対流や放射による冷却が必要な箇所に、上述した鋳型24のような支持構造26を有する部分型を配置することが考えられる。また、鋳型の中で、強度が求められる箇所には、支持構造26を有しない部分型を配置する。
このような構造の鋳型とすることで、ガス抜きや冷却を効率良く行う必要がある箇所は強度を保ちながら、その効率を高めることができる。また、強度が必要な箇所には支持構造のない部分型を配置することで、鋳型全体の強度を担保しやすいものとなる。即ち、支持構造を有する部分型と、支持構造のない部分型の両方を組み合わせて、両者を適切な位置に配置した鋳型を形成することができるものとなる。
図10には、鋳型のキャビティ部にガス抜き用のベント部を設けた構造を示している。
図10に示す鋳型31はキャビティ部32に複数のベント部33を有している。ベント部33は、図10の拡大図部分に示すように、直径が5mm程の貫通孔34が多数集合して形成されたものである。
貫通孔34は鋳型31をキャビティ部からその背面側に向けて貫通している。また、貫通孔34の内部には、鋳型31の鋳型材料となる鋳物砂(図示せず)が収容されている。鋳物砂は、鋳型31の積層造形時に硬化を開始させる結合剤が吹きかけられていないものである。
鋳物砂は未結着の状態であるため、貫通孔34の内部に収容されても一定の通気性を保ち、鋳造時に鋳型から生じるガスを逃がすことができる。この結果、鋳物にガス欠陥が生じにくいものとなる。
また、鋳物砂が収容されたことで、貫通孔34を介して溶湯が外部への漏れを抑えることができる。このように鋳型にベント部33を設けることで、鋳造時のガス抜きを促進させることができる構造となっている。
ここで、必ずしも、貫通孔34の直径が5mm程に設定される必要はなく、鋳型材料の種類や鋳型の形状により適宜選択しうる。但し、貫通孔の直径をあまりに大きくすると溶湯漏れが生じることとなるため、未結着の鋳物砂が容易に抜け落ちてしまわない程度の大きさが選択されることが好ましい。
図11では、中子を主型の一部と連結させ、一体化させた構造について説明する。
図11(a)は、中子35が主型を構成する上型36または下型37のいずれとも連結されていない構造を示している。ここで、図11(b)では、中子及び上型が連結して一体化した主型38と、主型38と対になる下型39を示している。
図11(a)に示す鋳型では、中子35及び上型36の間に隙間が存在し、鋳ばりが隙間の部分に生じてしまう。一方、図11(b)に示す主型38では、中子と上型が一体化されたことで間に隙間が生じず、鋳ばりの発生を低減させることができる構造となっている。
また、図11(c)には、中子及び下型が連結して一体化した主型40と、主型40と対になる上型41を示している。主型40も主型38と同様に、中子と下型の間に隙間が生じず、鋳ばりの発生を低減させることができる構造となっている。
続いて、積層造形鋳型1の製造に用いる鋳型材料の一例について説明する。なお、以下で説明する鋳型材料はあくまで一例であり、本発明を適用した鋳型の材料がこれに限定されるものではない。
積層造形鋳型1の鋳型材料は、骨材(鋳物砂)となる第1のアルミナサンド及び第2のアルミナサンドと、粘結剤となるアルミナセメントとを備えている。
第1のアルミナサンド及び第2のアルミナサンド2は、純度99%以上の酸化アルミニウム(Al)からなる白色誘電アルミナであり、いずれも1,500℃以上の耐熱性を有している。また、第1のアルミナサンドは、中心粒径が45〜53μmの粒子で構成されている。また、第2のアルミナサンドは、中心粒径が75〜106μmの粒子で構成されている。
また、アルミナセメントは、アルミナセメントの全量基準での重量比率で72.5%の酸化アルミニウム(Al)及び25.8%の酸化カルシウム(CaO)を含む粉状前駆体である。また、アルミナセメントは、平均粒径が4.5μmの粒子で構成され、1,730℃以上の耐熱性を有している。
アルミナセメントは、積層造形時にインクジェットのプリントヘッドから結合剤溶液を吹き付けられることで、混合させた第1のアルミナサンド及び第2のアルミナサンドを結着させて硬化させる。結合剤溶液は、1%以下の2−ピロリドンを含む水溶液が用いられる。
また、鋳型材料には、粘結剤の硬化速度を速めるための補助剤として、炭酸リチウム(LiCO)を備えている。
鋳型材料は、全量基準での重量比率が、第1のアルミナサンド:44%、第2のアルミナサンド:22%、アルミナセメント:33%、炭酸リチウム:1%を含む組成を有している。
ここで、第2のアルミナサンドの全量基準での重量比率に対する第1のアルミナサンドの全量基準での重量比率の比が2.0となっているが、必ずしもこの数値になる必要はない。但し、鋳型の抗折強度の向上と、鋳型の表面の平滑性を高める点から、重量比率の比は、1.5〜3.0の範囲となるのが好ましく、更に、2.0となることがより一層好ましい。
また、必ずしも、アルミナセメントの全量基準での重量比率が33%となる必要はない。但し、鋳型の抗折強度の向上と、鋳型の表面の平滑性を高める点から、アルミナセメントの全量基準での重量比率が33%に設定されることが好ましい。
また、鋳型材料には、粘結剤の硬化速度を速めるための補助剤として、炭酸リチウム(LiCO)を入れることが好ましい。また、炭酸リチウムの添加量を増やすことで、硬化が始まる始発時間が短くなり、硬化速度も速くなるが、他の成分の配合量も考慮して、炭酸リチウムの配合量を適宜選択することが好ましい。また、炭酸リチウムの配合により鋳型の抗折強度が向上する。
続いて、積層造形鋳型1の製造に用いる鋳型材料の更に別の例について説明する。なお、以下で説明する鋳型材料はあくまで一例であり、本発明を適用した鋳型の材料がこれに限定されるものではない。
積層造形鋳型1の鋳型材料は、骨材(鋳物砂)となる第1のアルミナサンド及び第2のアルミナサンドと、粘結剤となるアルミナセメントとを備えている。
第1のアルミナサンド及び第2のアルミナサンド2は、純度99%以上の酸化アルミニウム(Al)からなる白色誘電アルミナであり、いずれも1,500℃以上の耐熱性を有している。また、第1のアルミナサンドは、中心粒径が20〜25μmの粒子で構成されている。また、第2のアルミナサンドは、中心粒径が45〜53μmの粒子で構成されている。
また、アルミナセメントは、アルミナセメントの全量基準での重量比率で72.5%の酸化アルミニウム(Al)及び25.8%の酸化カルシウム(CaO)を含む粉状前駆体である。また、アルミナセメントは、平均粒径が4.5μmの粒子で構成され、1,730℃以上の耐熱性を有している。
アルミナセメントは、積層造形時にインクジェットのプリントヘッドから結合剤溶液を吹き付けられることで、混合させた第1のアルミナサンド及び第2のアルミナサンドを結着させて硬化させる。結合剤溶液は、1%以下の2−ピロリドンを含む水溶液が用いられる。
また、鋳型材料には、粘結剤の硬化速度を速めるための補助剤として、炭酸リチウム(LiCO)を備えている。
鋳型材料は、全量基準での重量比率が、骨材が66%、アルミナセメント:33%、炭酸リチウム:1%を含む組成を有している。また、骨材の量基準で、第1のアルミナサンド:35%、第2のアルミナサンド:65%を含む組成を有している。
ここで、第2のアルミナサンドの骨材の量基準での重量比率に対する第1のアルミナサンドの骨材の量基準での重量比率の比が1.68となっているが、必ずしもこの数値になる必要はない。但し、鋳型の抗折強度の向上と、鋳型の表面の平滑性を高める点から、骨材の量基準での重量比率の比は、1.50〜2.33の範囲となるのが好ましく、更に、1.68となることがより一層好ましい。
また、骨材を構成する鋳物砂が第1のアルミナサンド及び第2のアルミナサンドのみで構成されているが、骨材の構成がこれに限定されるものではない。第1のアルミナサンド及び第2のアルミナサンドが骨材の主な成分となり、かつ、両アルミナサンドの中心粒径で挟まれた範囲の中心粒径を有する砂を第3の成分として配合することも可能である。例えば、第3の鋳物砂の成分を骨材の量基準で数%含有させてもよい。
また、必ずしも、アルミナセメントの全量基準での重量比率が33%となる必要はない。但し、鋳型の抗折強度の向上と、鋳型の表面の平滑性を高める点から、アルミナセメントの全量基準での重量比率が33%に設定されることが好ましい。
また、鋳型材料には、粘結剤の硬化速度を速めるための補助剤として、炭酸リチウム(LiCO)を入れることが好ましい。また、炭酸リチウムの添加量を増やすことで、硬化が始まる始発時間が短くなり、硬化速度も速くなるが、他の成分の配合量も考慮して、炭酸リチウムの配合量を適宜選択することが好ましい。また、炭酸リチウムの配合により鋳型の抗折強度が向上する。
ここで、少なくとも、粒径が20〜25μmの範囲内である酸化アルミニウムで構成された第1の粒子と、粒径が45〜53μmの範囲内である酸化アルミニウムで構成された第2の粒子とを含んで構成された骨材によって、充分に鋳型の抗折強度を向上させることができる。また、充分に鋳肌面の平滑性を高めることができる。なお、ここでいう第1の粒子の「20〜25μm」の粒径と、第2の粒子の「45〜53μm」の粒径は、「JIS Z 2601-1993鋳物砂の試験法の中の鋳物砂の粒度試験方法(付属書2)(参考資料1)」に基づいてふるいわけした鋳物砂の粒度を根拠に規定したものである。また、粒度試験方法に用いたふるいは、「JIS Z 8801(試験用ふるい)(参考資料2)」で規定されているものを使用している。
より詳細には、第2の粒子は、JIS Z 8801のふるいの網目のうち、53μmと45μmを重ねて使用し、53μmのふるいを通過して45μmのふるいに残ったものである。また、第1の粒子は、JIS Z 8801のふるいの網目のうち、25μmと20μmを重ねて使用し、25μmのふるいを通過して20μmのふるいに残ったものである。また、ふるい分け機械としては、JIS Z 2601-1993鋳物砂の試験法の中の鋳物砂の粒度試験方法(付属書2)に記載のロータップ形ふるい機を用い、同ふるい機にふるいを設置して試験を行っている。なお、鋳物砂の粒径を上記のように決定することは、鋳造分野において極一般的に行われているものである。この点は、鋳物砂の粒径の規定について、鋳造の分野の資料として一般的に利用されている一般財団法人素形材センター出版の「鋳造技術シリーズ平成14年3月発行 鋳型の生産技術(第2版)」の第536頁〜第538頁の「1.1.2 粒度試験方法」(http://www.sokeizai.or.jp/japanese/publish/shuppan.html)(参考資料3)及び中小企業事業団が作成した「鋳型及び鋳型材料に関する試験方法」の「鋳物砂の粒度試験方法(第1頁)」(https://unit.aist.go.jp/cpiad/ci/techno_kw/mono-kyohon_pdf/technote023.pdf)(参考資料4)に、JIS Z 2601-1993(付属書2)及びJIS Z 8801を採用する点が記載されていることからも明らかである。
なお、参考までに、上述した「JIS Z 2601-1993鋳物砂の試験法の中の鋳物砂の粒度試験方法(付属書2)の写し」を参考資料1として、JIS Z 8801に規定された「JIS標準ふるい表(抜粋)」を参考資料2として、「鋳造技術シリーズ 平成14年3月発行 鋳型の生産技術(第2版)の第536頁〜第538頁」を参考資料3として、及び「鋳型及び鋳型材料に関する試験方法(第1頁)」を参考資料4として掲載する。なお、上述した、粒径が45〜53μmの範囲内である酸化アルミニウムで構成された第1の粒子と、粒径が75〜106μmの範囲内である酸化アルミニウムで構成された第2の粒子についても同様に粒径が規定されたものである。また、上述した冷し金101の積層造形用材料である平均粒径100μmの炭化ケイ素は、JIS試験用ふるい規格の106μmのふるい及び上記の内容に準じて作成した100μmのふるいを用いて、同100μmのふるいに残ったものである。更に、後述する実施例の冷し金の積層造形用材料である平均粒径50μmの炭化ケイ素は、JIS試験用ふるい規格の53μmのふるい及び上記の内容に準じて作成した50μmのふるいを用いて、同50μmのふるいに残ったものである。
ここで、必ずしも、本発明を適用した鋳型の鋳物砂が上述のアルミナサンドに限定される必要はない。例えば、従来から一般的に使用されている珪砂、オリビン砂、クロマイトサンド、ジルコンサンド、セラミック系の人工砂等を使用することもできる。
また、必ずしも、本発明を適用した鋳型を構成する部分型が同じ鋳物砂で形成される必要はなく、部分型ごとに鋳物砂の種類を異ならせることもできる。例えば、ある部分型は上述したアルミナサンドで形成し、それと組み合わせる別の部分型はオリビン砂で形成したものとすることができる。なお、この場合は、部分型を積層造形にて形成する際の鋳物砂材料を適宜変更することで作製が可能となる。
また、本発明を適用した鋳型では、各部分型を構成する鋳物砂の粒径を異ならせることもできる。例えば、ある部分型は粒径が大きな鋳物砂を主な成分として構成され、別の部分型は粒径が小さな鋳物砂を主な成分として構成されるようにしてもよい。
また、本発明を適用した鋳型では、各部分型を構成する鋳物砂に含有される粘結剤または添加剤の含有量を異ならせることもできる。例えば、2つの部分型が同じ種類の鋳物砂を主な成分として構成されるが、一方には添加剤である炭酸リチウムを1%配合し、他方には炭酸リチウムを5%配合するといったように、添加剤の含有量を変えることもできる。同様に、部分型によって粘結剤の含有量を変えることも可能である。
以下、積層造形鋳型1の製造から玉形弁用弁箱4の製造までの流れを説明する。
(3DCADデータの準備)
まず、製造する玉形弁用弁箱4の形状の3DCADデータを作製した。3DCADデータの作製では、鋳物の鋳造方案に基づき、鋳込みの系統等を反映させた積層造形鋳型1の3DCADデータを作製した。
また、使用する積層造形装置(三次元造形機)の造形エリア寸法に合わせて、積層造形鋳型1の3DCADデータを分割し、部分主型5及び各中子構成部材の形状に対応するデータを作製した。ここでは、組継ぎやほぞ継ぎの形状も反映される。
(鋳型材料の準備)
前述した鋳型材料を調整した。骨材となる第1のアルミナサンド及び第2のアルミナサンドと、アルミナセメント及び炭酸リチウムを混合させ、鋳型材料とした。
(積層造形処理)
各部材の形状に対応する3DCADデータを積層造形装置で使用可能なデータ形式に変換し、積層造形装置用ソフトに入力した。また、造形に必要な各種材料やプリントヘッドを装置に補充し、取り付けを行った。
積層造形装置は、次の性能の装置を使用した。造形枠寸法:508mm×381mm×229mm、高さ方向造形速度:5〜15mm/hr、最小積層ピッチ:0.1mm。各種造形材料から所望の形状を有する砂型が積層造形され、造形終了後に、余分な鋳型材料を除去し、造形物を装置から取り出した。
(注湯準備)
分割して造形した各砂型を連結して組み合わせて、主型2及び中子3を形成した。組継ぎやほぞ継ぎの部分を組み合わせ、ボルトやクランプ等で固定した。主型2の内部に中子3をセットして積層造形鋳型1とした。積層造形鋳型1に塗布剤を塗布し、200℃の温度で乾燥させた。
(注湯)
上記の工程で製造した積層造形鋳型1に溶湯を注湯し、鋳込みを行った。自然冷却または一部強制冷却により凝固させ、鋳型をばらし、ばり取り、仕上げを経て、図6の左側に示す玉形弁用弁箱4を製造した。
以上までで説明した本発明を適用した鋳型の一例である積層造形用鋳型は、主型や中子を更に分割した部材を積層造形処理で製造することから、大型の鋳型を製造可能なものとなっている。また、鋳型を直接製造することが可能であり、鋳物製造にかかる製造期間を大幅に短縮することができる。
また、積層造形用鋳型は、主型や中子を分割した各部材は充分な抗折強度を有するものとなっている。また、鋳型材料を低減しても形状を維持し得る支持構造や連結構造を有するものとなっている。
更に、冷却時の凝固欠陥やガス欠陥等の鋳物の品質に影響する欠陥が生じにくく、高精度な鋳物となっている。また、鋳肌面の平滑性にも優れた鋳物となっている。
また、本発明を適用した冷し金は、中子の溶湯と接触する部分に設けることで溶湯を効率よく冷却可能なものとなっている。特に、中子の内側に湯道を形成する構造では、中子で挟まれた部分で形成される鋳物の厚肉部位を効率よく冷却し、凝固欠陥を抑止できるものとなっている。
以上説明したように、本発明を適用した中子は大型の鋳物に適用可能かつ、高精度な鋳物を鋳造可能なものとなっている。
また、本発明を適用した冷し金は大型の鋳物に適用可能かつ、高精度な鋳物を鋳造可能なものとなっている。
また、本発明を適用した積層造形用材料は大型の鋳物に適用可能かつ、高精度な鋳物を鋳造可能なものとなっている。
更に、本発明を適用した鋳型の製造方法は大型の鋳物に適用可能かつ、高精度な鋳物を鋳造可能な方法となっている。
以下、本発明の鋳型材料に関する実施例を説明する。
[第1の実施例]
(1)試験片の化学成分
まず、前述した鋳型材料のうち、骨材となる第1のアルミナサンド(中心粒径が45〜53μmの範囲内)及び第2のアルミナサンド(中心粒径が75〜106μm)について、骨材の全量基準で第1のアルミナサンドと第2のアルミナサンドが表1に示す配合割合となるように鋳型材料成分を調整して、実施例1〜6及び比較例1とした。また、実施例1〜6及び比較例1の鋳型材料には、鋳型材料の全量基準で33%のアルミナセメントと、1%の炭酸リチウムが配合されている。実施例1〜6及び比較例1は、積層造形装置を用いて10mm(W)×20mm(t)×75mmのサイズの板状試験片とした。なお、以下の表1の第1段目及び第2段目の数値は、鋳型材料粉末のうち骨材の全量を基準にした重量比率(%)を示したものである。また、表2には、アルミナセメントの化学成分を示している。
(2)抗折強度試験及び鋳型の平滑性
図12は、実施例1〜6及び比較例1の板状試験片に対して行った抗折強度試験の結果を示す図である。図12では、縦軸は抗折強度(MPa)、横軸は骨材を全量基準とした第1のアルミナサンドの重量比率(%)を示している。
上記の組成で調整した各試験片について抗折強度を調べるために抗折強度試験を行った。鋳物砂強度試験機にて、試験片を支点間距離50mm(L)で支持し、試験片の中央に荷重を加え、試験片が破壊された際の破壊荷重(P)を求めた。本試験における抗折強度(MPa)は、試験片の破壊荷重を用いて、以下の式(1)で算出した。
抗折強度(MPa)=1.5×LP/100Wt・・・式(1)
L:支点間距離(50mm)、P:破壊荷重(kgf)、W:試験片の幅(10mm)、t:試験片の厚み(20mm)
また、各試験片の表面の荒れの程度を目視で観察して、鋳型の表面の平滑性を確認した。
実施例1〜6はいずれも抗折強度が1.4MPa以上の数値であった。特に、実施例2〜4では抗折強度が1.7MPa以上の数値であり、実施例4では2.0MPaの高い数値を示した。また、鋳型の表面の平滑性は、実施例3〜6で良好であった。また、実施例1〜2では、比較例1の表面の荒れた平滑性に比べてやや改善が見られた。
なお、参考として、実施例4の試験片における鋳型の表面状態を示す写真を図13(a)及び、比較例1の試験片における鋳型の表面状態を示す写真を図13(b)に示す。
鋳型材料における粘結剤の配合量と、鋳型の抗折強度及び鋳型の表面の平滑性の関係性ついて試験を行った。
(3)試験片の化学成分
前述した鋳型材料のうち、粘結剤となるアルミナセメントが鋳型材料の全量基準で表3に示す配合割合となるように鋳型材料成分を調整して、実施例7〜11とした。また、実施例7〜11の鋳型材料には、骨材の全量基準で第1のアルミナサンド及び第2のアルミナサンドがそれぞれ50%となるように配合されている。また、鋳型材料の全量基準で1%の炭酸リチウムが配合されている。実施例7〜11は、積層造形装置を用いて10mm(W)×20mm(t)×70mmのサイズの板状試験片とした。なお、以下の表3の数値は、鋳型材料粉末のうち骨材の全量を基準にした重量比率(%)を示したものである。また、ここで使用したアルミナセメントは表2に示す化学成分を有するものである。
(4)抗折強度試験及び鋳型の平滑性
抗折強度試験及び鋳型の平滑性の確認は、前述した(2)と同様の手法で試験を行った。なお、抗折強度試験は各実施例について2つの試験片を作製して試験を行った。
図14は、実施例7〜11の板状試験片に対して行った抗折強度試験の結果を示す図である。図14では、縦軸は抗折強度(MPa)、横軸は鋳型材料を全量基準としたアルミナセメントの重量比率(%)を示している。
実施例7〜11はいずれも抗折強度が1.0MPa以上の数値であった。また、鋳型の表面の平滑性は、実施例7及び実施例8で良好であった。
続いて、鋳型材料における炭酸リチウムの配合量と、鋳型材料の硬化速度の関係性について試験を行った。
(5)試料の化学成分
炭酸リチウムは粘結剤による硬化速度を促進させる補助剤である。ここでは試料として、炭酸リチウムが試料の全量基準で表4に示す配合割合となるように試料成分を調整して、実施例12〜16とした。また、実施例12〜16の試料には、第2のアルミナサンドが292.5g、アルミナセメントが157.5g、結合剤溶液が67.5g配合されている。なお、以下の表4の数値は、試料の全量を基準にした重量比率(%)を示したものである。
(6)試料の凝固試験
図15は、実施例12〜16の試料に対して行った凝固試験の結果を示す図である。図15では、縦軸は凝固試験機におけるスラリー底面と始発針の先端との距離(mm)、横軸は測定開始からの経過時間(min)を示している。
上記の組成で調整した各試料について鋳型材料の凝固時間を調べるためにJIS R5201−1977「セメントの物理試験法」に記載の凝結試験に準じて試験を行った。第2のアルミナサンド及びアルミナセメントに炭酸リチウム(1%〜10%)を添加撹拌し、結合剤溶液を入れて1分間混練後、凝固試験機(ビカー針装置)を用いて、試料スラリーと始発針の先端の距離を測定した。測定は、試料スラリー底面と始発針の先端の距離が3回40mmになる時間まで1分毎に測定を行った。なお、図11では、符号45は実施例12、符号46は実施例13、符号47は実施例14、符号48は実施例15、及び符号49は実施例16を示している。
実施例12〜16では、炭酸リチウムの配合量の増加に伴い、鋳型材料の硬化速度の増加が確認された。また、炭酸リチウムの配合量の増加に伴い、硬化が始まるまでの始発時間が短くなった。
[第2の実施例]
(7)試験片の化学成分
まず、前述した鋳型材料のうち、骨材となる第1のアルミナサンド及び第2のアルミナサンドについて、骨材の全量基準で第1のアルミナサンド(中心粒径が20〜25μmの範囲内)と第2のアルミナサンド(中心粒径が45〜53μmの範囲内)が表5に示す配合割合となるように鋳型材料成分を調整して、実施例17〜21及び比較例2とした。また、実施例17〜21及び比較例2の鋳型材料には、鋳型材料の全量基準で33%のアルミナセメントと、1%の炭酸リチウムが配合されている。実施例17〜21及び比較例2は、積層造形装置を用いて10mm(W)×20mm(t)×75mmのサイズの板状試験片とした。なお、以下の表5の第1段目及び第2段目の数値は、鋳型材料粉末のうち骨材の全量を基準にした重量比率(%)を示したものである。
(8)抗折強度試験及び鋳型の平滑性
図16は、実施例17〜5及び比較例2の板状試験片に対して行った抗折強度試験の結果を示す図である。図16では、縦軸は抗折強度(MPa)、横軸は骨材を全量基準とした第1のアルミナサンドの重量比率(%)を示している。
上記の組成で調整した各試験片について抗折強度を調べるために抗折強度試験を行った。鋳物砂強度試験機にて、試験片を支点間距離50mm(L)で支持し、試験片の中央に荷重を加え、試験片が破壊された際の破壊荷重(P)を求めた。本試験における抗折強度(MPa)は、試験片の破壊荷重を用いて、以下の式(1)で算出した。
抗折強度(MPa)=1.5×LP/100Wt・・・式(1)
L:支点間距離(50mm)、P:破壊荷重(kgf)、W:試験片の幅(10mm)、t:試験片の厚み(20mm)
また、各試験片の表面の荒れの程度を目視で観察して、鋳型の表面の平滑性を確認した。
実施例17〜21はいずれも抗折強度が1.6MPa以上の数値であった。特に、実施例18〜20では抗折強度が1.75MPa以上の数値であり、実施例19では1.9MPaの高い数値を示した。また、鋳型の表面の平滑性は、実施例17〜20で良好であった。また、実施例17及び21では、比較例2の表面の荒れた平滑性に比べてやや改善が見られた。
なお、参考として、実施例19の試験片における鋳型の表面状態を示す写真を図17(a)及び、比較例2の試験片における鋳型の表面状態を示す写真を図17(b)に示す。
鋳型材料における粘結剤の配合量と鋳型の表面の平滑性の関係性ついて試験を行った。
(9)試験片の化学成分
前述した鋳型材料のうち、粘結剤となるアルミナセメントが鋳型材料の全量基準で33%となるように鋳型材料成分を調整して、実施例22とした。また、実施例22の鋳型材料には、骨材の全量基準で第1のアルミナサンド及び第2のアルミナサンドがそれぞれ50%となるように配合されている。また、鋳型材料の全量基準で1%の炭酸リチウムが配合されている。実施例22は、積層造形装置を用いて10mm(W)×20mm(t)×70mmのサイズの板状試験片とした。なお、ここで使用したアルミナセメントは表2に示す化学成分を有するものである。
(10)鋳型の平滑性
鋳型の平滑性の確認は、前述した(8)と同様の手法で試験を行った。
実施例22の鋳型の表面の平滑性は良好であった。
[第3の実施例]
(11)試験片の化学成分
冷し金を構成する積層造形用材料として、骨材となる炭化ケイ素について、粒径の異なる2種類(平均粒径100μmと、平均粒径50μm)を用いて熱伝導率の確認を行った。骨材の全量基準で、平均粒径50μmの炭化ケイ素を32.5%と、平均粒径100μmの炭化ケイ素を32.5%とを混合したものを実施例23、平均粒径100μmの炭化ケイ素を65%としたものを実施例24とした。また、上述した第1のアルミナサンド(中心粒径が20〜25μmの範囲内)を32.5%と、第2のアルミナサンド(中心粒径が45〜53μmの範囲内)の混合物(1:1)を32.5%とを混合したものを比較例3、平均粒径50μmの炭化ケイ素を65%とを混合したものを比較例4とした。なお、実施例23、24及び比較例3、4には、いずれも骨材の全量基準で35%のアルミナセメントが配合されている。実施例23、24及び比較例3、4は、積層造形装置を用いて10mm(W)×20mm(t)×75mmのサイズの板状試験片とした。表6に実施例23、24及び比較例3、4の材料成分の配合割合を示す。なお、以下の表6の数値は、材料成分のうち骨材の全量を基準にした重量比率(%)を示したものである。
(12)熱伝導率の測定
上述した実施例23、24及び比較例3、4の板状試験片について、迅速熱伝導計(京都電子工業株式会社製)を用いて熱伝導率の測定を行った。図18に熱伝導率の測定の結果を示す。
図18に示すように、実施例23は0.46W/mk、また、実施例24は0.52W/mkの良好な熱伝導率を有する結果を示した。比較例3及び比較例4は、いずれも実施例23及び実施例24よりも低い熱伝導率を有するものであった。なお、図18は、比較例3のグラフ(符号120)、比較例4のグラフ(符号121)、実施例23のグラフ(符号122)及び実施例24のグラフ(符号123)で示している。
1 積層造形鋳型
2 主型
3 中子
4 玉形弁用弁箱
5 部分主型
6 湯道側の領域部分
7 製品側の上部領域部分
8 製品側の下部領域部分
9 主型の高さ方向の分割位置
10 主型の高さ方向の分割位置
11 組継ぎ
12 上部中子
13 中間中子
14 下部中子
15 製品部分
16 上がり
17 上がり部
18 上がり部
19 湯口部
20 中間主型
21 中間主型
22 下部主型
23 下部主型
24 鋳型
25 キャビティ部
26 支持構造
27 柱部
28 桟部材
29 球状部
30 鋳型
31 鋳型
32 キャビティ部
33 ベント部
34 貫通孔
35 中子
36 上型
37 下型
38 主型
39 下型
40 主型
41 上型
42 凸部
43 凹部
44 凸部
45 実施例12に対応する凝固試験の結果
46 実施例13に対応する凝固試験の結果
47 実施例14に対応する凝固試験の結果
48 実施例15に対応する凝固試験の結果
49 実施例16に対応する凝固試験の結果
50 湯口
101 冷し金
102 鋳物
103 弁座
104 隔壁
105 弁体
106 玉形弁
107 流路
108 鋳物の外周面
109 ドーナツ状の冷し金
110 ドーナツ状の冷し金
111 冷し金部材
112 冷し金部材
113 冷し金部材
114 冷し金部材
115 中子
116 上部中子
117 下部中子
118 湯道
119 中実な領域
120 比較例3のグラフ
121 比較例4のグラフ
122 実施例23のグラフ
123 実施例24のグラフ

Claims (10)

  1. 隣接する部材と嵌合可能な部分型を組み合わせた中子本体と、
    該中子本体の溶湯と接触する位置に設けられ、高熱伝導性の積層造形用材料で形成された冷し金とを備える
    中子。
  2. 前記冷し金は熱伝導率が0.46W/mk以上である
    請求項1に記載の中子。
  3. 前記中子本体は該中子本体の外周面から内側に向けて溶湯が流れ込む湯道が形成され、
    前記冷し金は前記湯道の少なくとも一部を構成して溶湯と接触する位置に設けられた
    請求項1または請求項2に記載の中子。
  4. 前記冷し金は前記中子本体の内側かつ前記湯道の端部に、同湯道を挟んで対向して位置して設けられた
    請求項3に記載の中子。
  5. 前記冷し金は少なくとも粒径が100μmの炭化ケイ素を含む
    請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の中子。
  6. 隣接する部材と嵌合可能な部分型を組み合わせた中子の溶湯と接触する位置に設けられ、高熱伝導性の積層造形用材料で形成された
    冷し金。
  7. 前記冷し金は少なくとも粒径が100μmの炭化ケイ素を含む
    請求項6に記載の冷し金。
  8. 隣接する部材と嵌合可能な部分型を組み合わせた鋳型の表面形状に三次元的に合致する接触部を有すると共に、少なくとも粒径が100μmの炭化ケイ素を含む
    冷し金。
  9. 少なくとも粒径が100μmの炭化ケイ素と、アルミナセメントとを含む
    積層造形用材料。
  10. 隣接する部材と嵌合可能な部分型を組み合わせた中子本体と、該中子本体の外周面から内側に向けて形成された湯道の少なくとも一部を構成して溶湯と接触し、かつ、高熱伝導性の積層造形用材料で形成された冷し金とを組み合わせて中子を形成する工程と、
    隣接する部材と嵌合可能な部分型を組み合わせて主型を形成すると共に、該主型の内側に前記中子を配置する工程を備える
    鋳型の製造方法。
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