JP2013239437A - リベット型接点及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】接点材料とベース材料とを組み合わせたリベット型接点について、接点材料の剥離・脱落が発生せず耐久寿命に優れたものを提供する。
【解決手段】本発明は、頭部と前記頭部より幅狭の足部よりなるリベット型接点において、前記頭部は、少なくとも上面がAg系接点材料よりなる接点層からなり、前記頭部の残部及び前記足部がCu又はCu合金よりなるベース材料からなり、前記接点材料と前記ベース材料との接合界面に、Ag合金からなるバリア層を備えることを特徴とするリベット型接点である。ここで、バリア層を構成するAg合金は、AgにSn、In、Cu、Ni、Fe、Co、W、Mo、Zn、Cd、Te、Biの1種又は2種以上の卑金属元素を0.03〜20質量%添加してなるAg合金が好適に使用される。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、頭部と前記頭部より幅狭の足部よりなるリベット型接点において、前記頭部は、少なくとも上面がAg系接点材料よりなる接点層からなり、前記頭部の残部及び前記足部がCu又はCu合金よりなるベース材料からなり、前記接点材料と前記ベース材料との接合界面に、Ag合金からなるバリア層を備えることを特徴とするリベット型接点である。ここで、バリア層を構成するAg合金は、AgにSn、In、Cu、Ni、Fe、Co、W、Mo、Zn、Cd、Te、Biの1種又は2種以上の卑金属元素を0.03〜20質量%添加してなるAg合金が好適に使用される。
【選択図】図1
Description
本発明は、リベット型接点に関する。特に、Ag合金等の接点材料の使用量を低減することができると共に、高容量負荷を受ける使用環境下におい耐久寿命が良好なリベット型接点に関する。
電気回路を機械的に開閉する電気接点は、家電製品、OA機器、自動車用電装品等から重電機器まで幅広い分野の電気機器の各種スイッチ、リレーの構成部品として使用されている。かかる開閉型の電気接点の形態としては、直接バネ材等の支持材に接合するチップ形状のものもあるが、一般的にはリベット形状の接点が用いられることが多い。このリベット型接点は、電気接点として作用する頭部と、頭部より幅狭の足部とからなる。足部はリベット型接点を支持材に固定させる際、カシメ変形される。
そして、電気接点は、確実な機械的開閉を維持することができること、即ち、接触時には接点に流れる電流・信号を支障なく伝え、切り離した際には支障なく開離できることが要求される。更に、安定した接触抵抗を有することも要求される。その一方で、開閉接点の表面においては、放電による材料の溶融、蒸発、消耗等が生じ、これらにより電気接点の接触機能が阻害され、ときには接点同士が溶着し、これらが電気製品等の性能低下や機能停止を引き起こす要因となる。そのため、かかる過酷な負荷のもとでも上述の基本機能を果たすことができるよう構成材料についての研究も多くなされている。その中で現在、接点材料として好適であるとされているのは、Ag系の接点材料であり、特に、Agマトリックスに、SnO2、In2O3、CuO等の各種金属酸化物を分散させた酸化物分散型のAg合金(Ag−SnO2系合金、Ag−SnO2−In2O3系合金、Ag−ZnO系合金等)が適用されることが多い。
従来のリベット型接点は、全体を接点材料で構成することが多かったが、近年では接点材料であるAg合金等が高価であることを考慮して、部材コスト低減のため接点材料の適用箇所を一部とし、他の部分をCuやCu合金等の比較的低コストの材料(ベース材料)で構成した2層リベット型接点の使用が一般的となっている。
このようなAg合金とCu系材料とを組み合わせた2層リベット型接点の構成としては、例えば、頭部の上面部分を接点材料で構成し、頭部の下面と足部をCu等のベース材料にしたもの(図7(a)、特許文献1参照)や、頭部全体を接点材料とし足部をベース材料にしたもの等(図7(b)、特許文献2参照)が知られている。
従来の2層構成のリベット型接点は、部材コストと接点機能との両立の観点では満足できるものである。そして、その耐久性も概ねの用途においては十分なものである。
しかしながら、上記のように開閉接点の用途は多岐に渡っており、低負荷のものから、定格電流数十〜数百Aの高負荷の開閉、遮断を行うものもある。そして、本発明者等によれば、従来の2層構成のリベット型接点は、かかる高負荷の用途においては、使用に伴いAg合金からなる接点材料部分がベース材料から剥離するという問題がある。このような接点材料の剥離が一方の接点(固定接点)に生じると、そのベース材料に他方の接点(可動接点)が接触・短絡して機器の故障の要因となり得る。
以上のような2層構造のリベット型接点における問題は、異種材料を組み合わせて構成したことにより生じるものであり、接点全体をAg合金で構成すれば生じない問題であるが、部材コストを考慮すれば合理的な構成である。従って、かかる合理的構成を維持しつつその耐久性に配慮することが求められる。そこで本発明は、リベット型接点について、上記のような接点材料の剥離・脱落が発生せず耐久寿命に優れるものを提供する。
本発明者等は、上記課題を解決するため、まず、従来の2層構造のリベット型接点で生じる接点材料の剥離の要因について検討した。その結果、高容量の開閉接点特有の環境における酸素の挙動に着目した。
接点同士の接触の際には、接点表面はその電気容量に応じたアーク熱・ジュール熱の負荷を受けるが、高容量の接点表面の場合、その温度は相当高温なものとなる。このとき、外部雰囲気(空気)中の酸素が接点材料に浸入することとなる。ここで、接点材料の主要構成金属であるAgは、酸素を容易に拡散させることができる金属であるため、浸入した酸素は接点材料中に拡散し、やがて接点材料とベース材料との接合界面に達することとなる。そして、接合界面に到達した酸素は、ベース材料を構成するCuと結合・酸化してCu酸化物を形成する。このCu酸化物は、接点材料(Ag)との結合力が弱いため、剥離を生じさせることとなる。
また、酸素の影響としては、外部雰囲気から侵入するものの他、接点材料自体に含有されているものの影響も考えられる。これは、接点材料としてAg酸化物合金を適用する場合、分散する酸化物の酸素が、高温下で酸化物より解離し、接点材料中で拡散して接合界面に到達し酸化物を形成するというものである。
本発明者等は、上記検討から、接点材料の剥離を抑制するためには、接点材料とベース材料との接合界面における酸化物形成を抑制することが有効であると考えた。もっとも、酸化物形成の要因が、外部雰囲気からの酸素によるものなのか、接点材料中の酸化物からの酸素によるものなのかは一義的なものではない。そして、接点の外部雰囲気を変更することは不可能であり、また、接点材料中の酸化物はAg酸化物合金における主要な構成であり、Ag酸化物合金を適用する場合において酸化物量を制限することは現実的ではない。
そこで本発明者等は、接合界面における酸化物の形成抑制の手段として、接合界面への酸素の拡散を阻止するバリア層を設定することとし、更に、その構成材料としてAg合金を適用することが好ましいとして本発明に想到した。
即ち、本発明は、頭部と、前記頭部より幅狭の足部よりなるリベット型接点において、前記頭部は、少なくとも上面がAg系接点材料よりなる接点材料層からなり、前記頭部の残部及び前記足部がCu又はCu合金よりなるベース材料からなり、前記接点材料層と前記ベース材料との接合界面に、Ag合金からなるバリア層を備えることを特徴とするリベット型接点である。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、少なくとも上面がAg系接点材料よりなる接点層からなる頭部と、頭部の残りの部分及び足部がCu又はCu合金よりなるベース材料で構成される2層構造を有するリベット型接点について、接点層とベース材料との接合界面にAg合金からなるバリア層を形成し3層構造とすることに特徴がある。
そこで、本発明の特徴であるバリア層について説明する。本発明におけるAg合金からなるバリア層は、Ag合金の添加元素(Ag以外の構成元素)が優先的に酸素と結合し酸化物となることで、接合界面への酸素の到達を阻止しCu酸化物の生成を防止するものである。このバリア層を構成するAg合金は、接点材料(Ag系接点材料)及びベース材料(Cu)の双方に対して十分な接合力を有する。また、導電性・靭性も良好であることから、接点としての電気的特性を損なうことなく接合界面での酸化物生成を防止できる。
この点、バリア層の構成材料としては、Ag合金ではなく酸素が拡散し難い材料を適用し、接合界面への酸素の移動そのものを無効化するものも考えられる。しかし、酸素拡散が全く生じない金属材料は種類が限られ、また、導電性・靭性に優れる上に接点材料及びベース材料の双方に対して十分な接合力を有するものは少ない。これに対し、本発明のような酸素を消費するAg合金からなるバリア層は、使用過程で酸化物を析出させることで接点材料に近いAg酸化物合金に変化する。これは、使用過程においてバリア層の耐摩耗性、耐溶着性が向上することを意味し、接点材料が磨耗したときのバックアップとして作用することができるというメリットもある。
そして、バリア層となるAg合金は、AgにSn、In、Cu、Ni、Fe、Co、W、Mo、Zn、Cd、Te、Biの1種又は2種以上の卑金属元素を0.03〜20質量%添加してなるAg合金が好ましい。これらの卑金属の添加量が0.03%未満では、酸素を接合界面への到達を許すこととなる。また、20質量%を超えると、ベース材料との接合強度が不安定になる。尚、複数の添加元素がある場合は、それらの総量である。また、バリア層を構成するAg合金は、不可避不純物を含むことがある。
ここで、バリア層を構成する「Ag合金」とは、Agと添加元素(卑金属)とが固溶した状態にある固溶合金と、固溶しきれなかった添加元素が一部析出した状態にある複合型の合金の双方を含む意義である。いずれの形態においても、添加元素が酸化することでバリア層としての機能が発揮される。
バリア層を構成するAg合金の具体例としては、Agに0.5〜20質量%のCuを添加してなるAg合金(Ag−Cu合金)が挙げられる。更に、Ag−Cu合金に0.03〜1.0質量%のNiを添加してなるAg合金も適用できる。
また、バリア層を構成するAg合金としては、AgにSn、In、Zn、Cdの少なくともいずれかを0.5〜20質量%添加してなるAg合金も適用される。例えば、Agに1.0〜10質量%のSn及び0.5〜10質量%のInを添加してなるAg合金(Ag−Sn−In合金)が好適である。そして、Ag−Sn−In合金に、Ni、Teの少なくともいずれかを合計で0.01〜1.0質量%添加したAg合金、及び、Ag−Sn−In合金に、Fe、Co、Zn、Cu、Bi、Cdの少なくともいずれかを合計で0.01〜1.0質量%添加したAg合金も適用できる。
更に、AgにNi、Fe、Co、W、Moの少なくともいずれかを合計で0.03〜20質量%添加したAg合金も有用であると考えている。これらの添加元素はAgに対する固溶限が比較的低いため、一部の添加元素が単独で析出する複合型のAg合金となる。このとき、Niを添加元素とする場合には、Ni添加量の下限を0.03質量%とするのが好ましい。また、Fe、Co、W、Moを添加元素とする場合には、それらの合計添加量の下限を0.05質量%とするのが好ましい。
そして、バリア層の厚さは、0.03mm〜0.3mmとするのが好ましい。0.03mm未満では、バリア層の酸素を捕捉作用が不足して接合界面の酸化物形成を十分抑制できない。バリア層の厚さの上限については、特に制限はないが、接点の寸法を考慮し0.3mm程度とするのが好ましい。
以上説明したバリア層を備える本発明のリベット型接点は、他の構成においては、従来の2層構造のリベット型接点と基本的に同様である。
頭部の上面を形成する接点材料層は、Ag系接点材料からなり、具体的には、純AgやAg合金(Ag−Ni合金、Ag−Cu合金等)である。Ag合金としては、酸化物分散型のAg酸化物合金(Ag−SnO2系合金、Ag−SnO2−In2O3系合金、Ag−ZnO系合金等)も適用できる。尚、本発明は、接点材料としてAg酸化物合金を適用した場合において特に有用である。上述の通り、接点材料中の酸化物から酸素が拡散するおそれがあるからである。また、接点材料に接合され、主に足部を形成するベース材料は、Cu、Cu合金(Cu−Ni合金、Cu−Sn合金)が適用できる。
尚、接点材料は、頭部の上面に接合されていれば良い。接点材料の好ましい厚さは、接点の負荷(定格電流等)によって調整することができ、低負荷のものについては0.1mm以上あれば良いが、ブレーカー等の高負荷(定格電流50A以上)のものについては1〜2mm程度必要となる。本発明の具体的な態様としては、頭部の上面部分のみを接点材料としたもの(図1(a))の他、頭部全体を接点材料とし足部をベース材料で形成しても良い(図1(b))。
また、図2のように、足部をベース材料で形成しつつ、足部形状として足部より大径の鍔部を形成する一方、頭部を接点材料で形成し、鍔部の下端面が頭部の下端面に対して略フラットになるように、足部を頭部に埋接した形状としても良い。このとき鍔部の最端部と足部起点との間の長さ(l)が、頭部の最端部と足部起点との間の長さ(L)に対してl<L(好ましくは0.4L≦l≦0.6L)としたものが好ましい。
更に、バリア層の厚さは均一であることが好ましいが、形状については完全な平面である必要はない。即ち、図1(a)のように略平坦な接合界面に沿ってバリア層が形成されていても良いが、図3のように接合界面が円弧形状となりこれに沿ってバリア層が形成されていても良い。更に、接合界面が波打った状態であっても良い。
本発明に係るリベット型接点を製造するためには、耐久性を確保するために、接点材料、バリア層となるAg合金、ベース材料のそれぞれが強固に接合された状態で、頭部と足部を有するリベット型接点に成形加工する必要がある。ここで、本発明に係るリベット型接点の製造方法としては、接点材料からなる第1ビレットと、Ag合金からなる第2ビレットと、ベース材料からなる第3ビレットと、を突き合わせて圧接して複合材を製造し、凹状の空間を有する接合パンチと、筒状の空間を有する接合ダイスとを組み合わせてリベット形状の空間を形成し、前記複合材を、前記接合ダイスの下部から前記接合パンチの空間に圧入し、前記接合パンチ内の空間に第1ビレットを充填し、頭部の少なくとも表層を構成する接点材料層を形成すると共に、接合パンチ内の残余の空間に第2ビレット及び第3ビレットを充填して、頭部の残部とバリア層と足部を形成させるものとする。
本発明に係るリベット型接点の製造方法では、まず、接点材料からなる第1ビレットと、Ag合金からなる第2ビレットと、ベース材料からなる第3ビレットとを圧接して複合材とする。この複合材の製造工程は、本発明に係るリベット型接点を製造するために必須の工程である。第1ビレットと第2ビレットとを強固に接合することで、頭部の形成工程の際、接合面を第1ビレットの変形に追従させて第2ビレット及び第3ビレットも変形させることができる。この圧接時の荷重は、0.8〜3.0ton・fの強力な加工力で加工するのが好ましい。
製造した複合材を、接合パンチと接合ダイスとの組合せにより形成される型に圧入することで、リベット型接点とすることができる。この成形工程では、接合パンチの空間に圧入された第1ビレットが接合パンチの壁面により変形しつつ頭部形状となり、複合材の各接合面がこの変形に追従して頭部の残部とバリア層及び足部が形成される。このときリベット型接点の形態は、第1ビレットの体積と接合パンチ内の空間容積との関係で調整することができ、第1ビレットの体積と接合パンチ内の空間容積より小さい場合、図1(a)のような接点材料の層とバリア層とベース材料の3層からなる頭部が形成される。また、第1ビレットの体積が接合パンチ内の空間容積以上であれば、接合パンチ内の残余の空間が無いので頭部全体が接点材料で形成される(図1(b))。この複合材の圧入における荷重は、第1ビレットを変形・加工できる荷重であれば良く、第1ビレットの接点材料の種類に応じて調整できる。
以上の複合材の製造及び圧入による成形加工は、常温で行うことができる。そして、頭部と鍔部を形成したリベット型接点については、頭部適宜にプレス加工性を成型しても良い。この成型工程は、頭部の形状・寸法について厳密な規制が必要なときに有用である。
以上説明したように本発明に係るリベット型接点は、Ag系の接点材料とCu等のベース材料とを組み合わせた2層構造のものを改良するものであり、バリア層の設定により接点材料の剥離・脱落が抑制されており、耐久寿命に優れている。
以下、本発明の好適な実施例を説明する。
[第1実施形態]
実施例1:接点材料としてAg酸化物合金を、ベース材料としてCuを適用し、バリア層としてAg−Cu合金を適用してリベット型接点を製造した。図4は、本実施形態に係るリベット型接点の製造工程を説明するものである。まず、Ag酸化物合金(Ag−SnO2−In2O3合金:商品名SIE−29B)のワイヤーから第1ビレット(寸法:φ2.2mm、0.79mm)を切り出し、Ag−Cu合金(Ag−10%Cu)のワイヤーから第2ビレット(寸法:φ2.2mm、0.14mm)を切り出し、Cuのワイヤーから第3ビレット(寸法:φ2.2mm、2.1mm)を切り出した。
[第1実施形態]
実施例1:接点材料としてAg酸化物合金を、ベース材料としてCuを適用し、バリア層としてAg−Cu合金を適用してリベット型接点を製造した。図4は、本実施形態に係るリベット型接点の製造工程を説明するものである。まず、Ag酸化物合金(Ag−SnO2−In2O3合金:商品名SIE−29B)のワイヤーから第1ビレット(寸法:φ2.2mm、0.79mm)を切り出し、Ag−Cu合金(Ag−10%Cu)のワイヤーから第2ビレット(寸法:φ2.2mm、0.14mm)を切り出し、Cuのワイヤーから第3ビレット(寸法:φ2.2mm、2.1mm)を切り出した。
そして、図4(A)のように、第1ビレット、第2ビレット、第3ビレットを重ねて接合ダイスに挿入し、両者を圧接して複合材とした。接合ダイスは、超硬製のφ2.45mmの孔径を有する。そして、この接合のための荷重は、2.2ton・fとした。尚、本実施形態では、第1〜第3ビレットを接合ダイスに挿入して接合を行ったが、これは、そのまま成型加工を行うことができるという利便性の他、横方向について適度な拘束を与えて複合材が過度に変形しないようにするためである。尚、各ビレットを挿入するダイスの孔径は、ビレットの直径に対し0.05〜0.25mm大きいものを適用するのが好ましい。
次に、図4(B)のように、接合ダイスの上に接合パンチをセットして複合材をリベット形状に加工した。接合パンチは、超硬製であり側面が湾曲した円盤形状の空間(寸法:上面φ2.4mm、下面φ2.8mm、高さ1.1mm)を有する。この工程では、接合ダイス下方から複合材を接合パンチの空間に一気に圧入して、第1ビレット部分を頭部の上面とし、第3ビレットを頭部下部及び足部となるようにし、第2ビレットがバリア層を形成するように変形させた。
金型によるリベット型接点作成後、図4(C)のように、接合パンチを移動させて、頭部の上面を臼型成形金型でプレスして成型した。以上により製造したリベット型接点の寸法は、頭部がφ3.2mm厚さ0.8mm、足部がφ2.45mm長さ1.2mmである。そして、頭部の接点層の厚さは0.45mmであり、バリア層の厚さは0.07μmであった。
比較例1:ここでは、実施例1と同様に、接点材料としてAg酸化物合金(Ag−SnO2−In2O3合金)を、ベース材料としてCuを適用しつつ、バリア層のない従来のリベット型接点を製造した。実施例1の製造工程において、第2ビレット(Ag−Cu合金)を使用せずに、同様の工程にて第1ビレットと第2ビレットとを接合し、実施例1と同様にして成形加工した。接点層の厚さは実施例1と同様とした。
参考例:接点材料としてAg酸化物合金(Ag−SnO2−In2O3合金)を、ベース材料としてCuを適用しつつ、バリア層として、純Agを適用してリベット型接点を製造した。実施例1の製造工程において、第2ビレットを純Agのワイヤーから切り出して複合材を接合し、成形加工した。
以上製造した、実施例1、比較例1、参考例のリベット型接点について、高温雰囲気における接点材料の剥離の有無を確認するための加熱試験を行った。この加熱試験は、各接点を600℃、700℃、750℃に3時間加熱し、その後、リベット型接点の頭部を横方向圧縮し、頭部の径が1/2になるまで圧縮したときの接合界面の剥離の有無を観察した。この加熱試験の結果を表1に示す。
表1から、Ag−Cu合金をバリア層として備える実施例1は600〜750℃の加熱及び圧縮を受けても接合界面に剥離は見られなかった。これに対して、バリア層のない比較例1は、600℃の加熱の段階で接合界面に剥離が生じた。また、参考例として純Agをバリア層とした参考例をみると、600℃の加熱までは剥離は生じないが、700℃以上の加熱により剥離が生じた。
図5は、各接点の加熱試験後の接合界面の観察結果である。比較例1では、600℃の加熱で明確な剥離が生じている。また、参考例については、600℃加熱では剥離は見られなかったが、ベース材料(Cu)とバリア層(Ag)との界面において酸化物(酸化Cu)の析出(黒色の部分)が見られる。そして、加熱温度が700℃以上となった段階で酸化物の量は増加し、剥離が生じている。これらに対して、実施例1では700℃の加熱までは明瞭な変化が見られず、750℃加熱において、接点材料とバリア層との界面にわずかに酸化Cuが生じた。但し、バリア層とベース材料との間には酸化物の生成は観察されず剥離も生じない。接点材料とバリア層との間の酸化物は、バリア層であるAg−Cu合金のCuが酸素を捕捉したことにより生成したものと考えられる。以上の結果から、酸素のベース材料への到達阻止が、Ag合金からなるバリア層により達成できることが確認できる。
次に、各リベット型接点についてその耐久性を評価した。耐久性評価はリベット型接点をヒンジ型交流汎用リレーに固定接点として取付け、通電負荷の状態で開閉動作を繰返し、故障発生までの耐久寿命開閉回数を測定した。耐久評価試験における試験条件は以下の通りである。
・試験電圧:AC250V
・試験電流:10A
・負荷:抵抗負荷
・開閉頻度:1秒ON/1秒OFF
・試験電圧:AC250V
・試験電流:10A
・負荷:抵抗負荷
・開閉頻度:1秒ON/1秒OFF
上記耐久試験は複数のリレー試験機で行い、各リレーで故障した耐久寿命開閉回数をワイブル確立紙上にプロットした。この結果を図6に示す。図6から、各リベット型接点の特性寿命は、実施例1で約26万回であり、比較例1は約22万回であり、参考例は約24万回である。よって、本実施形態のリベット型接点は耐久寿命に優れるものであることが確認できた。
[第2実施形態]
ここでは、接点材料の種類、及び、バリア層となるAg合金の種類、厚さを変更しつつその効果を確認した。基本的な製造工程は実施例1と同様とし、各種のAg合金から厚さ(長さ)を調整しつつ第2ビレットを切り出し加工に供した。そして、製造したリベット型接点について、第1実施形態と同様に加熱試験を行った。加熱温度は750℃とした。この評価結果を表2に示す。
ここでは、接点材料の種類、及び、バリア層となるAg合金の種類、厚さを変更しつつその効果を確認した。基本的な製造工程は実施例1と同様とし、各種のAg合金から厚さ(長さ)を調整しつつ第2ビレットを切り出し加工に供した。そして、製造したリベット型接点について、第1実施形態と同様に加熱試験を行った。加熱温度は750℃とした。この評価結果を表2に示す。
各種のバリア層にて加熱・圧縮試験を行ったが、表2からわかるようにいずれも接合界面剥離は見られなかった。また、接点材料を変更しても効果は変わらなかった。
本発明に係るリベット型接点は、使用過程における接点材料の剥離・脱落が防止されている。本発明は、接点材料の使用量を低減して部材コストを抑制するという従来の2層リベット型接点本来の特徴に、耐久寿命の改善が付加されている。本発明に係るリベット型接点は、家電、産業機器その他一般用途向けリレー又はスイッチや、住宅配線、産業機器配線遮断器及び電磁開閉器に有用である。
Claims (16)
- 頭部と、前記頭部より幅狭の足部よりなるリベット型接点において、
前記頭部は、少なくとも上面がAg系接点材料よりなる接点材料層からなり、
前記頭部の残部及び前記足部がCu又はCu合金よりなるベース材料からなり、
前記接点材料層と前記ベース材料との接合界面に、Ag合金からなるバリア層を備えることを特徴とするリベット型接点。 - バリア層を構成するAg合金は、AgにSn、In、Cu、Ni、Fe、Co、W、Mo、Zn、Cd、Te、Biの1種又は2種以上の卑金属元素を0.03〜20質量%添加してなるAg合金である請求項1記載のリベット型接点。
- バリア層を構成するAg合金は、Agに0.5〜20質量%のCuを添加してなるAg合金である請求項1又は請求項2記載のリベット型接点。
- バリア層を構成するAg合金は、更に、0.03〜1.0質量%のNiを添加してなるAg合金である請求項3記載のリベット型接点。
- バリア層を構成するAg合金は、AgにSn、In、Zn、Cdの少なくともいずれかを0.5〜20質量%を添加してなるAg合金である請求項1又は請求項2記載のリベット型接点。
- バリア層を構成するAg合金は、Agに1.0〜10質量%のSn及び0.5〜10質量%のInを添加してなるAg合金である請求項5記載のリベット型接点。
- バリア層を構成するAg合金は、更に、Ni、Teの少なくともいずれかを合計で0.01〜1.0質量%添加してなるAg合金である請求項6記載のリベット型接点。
- バリア層を構成するAg合金は、更に、Fe、Co、Zn、Cu、Bi、Cdの少なくともいずれかを合計で0.01〜1.0質量%添加してなるAg合金である請求項6記載のリベット型接点。
- バリア層を構成するAg合金は、AgにNi、Fe、Co、W、Moの少なくともいずれかを合計で0.03〜20質量%添加してなるAg合金である請求項1又は請求項2記載のリベット型接点。
- バリア層を構成するAg合金のNiの添加量は、0.03〜20質量%である請求項9記載のリベット型接点。
- バリア層を構成するAg合金のFe、Co、W、Moの合計添加量は、0.05〜20質量%である請求項9記載のリベット型接点。
- バリア層の厚さは、0.03mm〜0.3mmである請求項1〜請求項11のいずれかに記載のリベット型接点。
- Ag系接点材料は、純Ag、Ag合金、Ag酸化物合金である請求項1〜請求項12のいずれかに記載のリベット型接点。
- 請求項1〜請求項13記載のリベット型接点の製造方法であって、
接点材料からなる第1ビレットと、Ag合金からなる第2ビレットと、ベース材料からなる第3ビレットと、を突き合わせて圧接して複合材を製造し、
凹状の空間を有する接合パンチと、筒状の空間を有する接合ダイスとを組み合わせてリベット形状の空間を形成し、
前記複合材を、前記接合ダイスの下部から前記接合パンチの空間に圧入し、
前記接合パンチ内の空間に第1ビレットを充填し、頭部の少なくとも表層を構成する接点材料層を形成すると共に、接合パンチ内の残余の空間に第2ビレット及び第3ビレットを充填して、頭部の残部とバリア層と足部を形成させるリベット型接点の製造方法。 - 第1ビレット、第2ビレット、第3ビレットを圧接して複合材とする工程は、0.8〜3.0ton・fの荷重による圧接である請求項14記載のリベット型接点の製造方法。
- 頭部及び足部を形成後、頭部の上面をプレス加工して成型する工程を含む請求項14又は請求項15記載のリベット型接点の製造方法。
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