JP2013215329A - ガットおよびこれを張設したラケット - Google Patents

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Abstract

【課題】ラケットの表裏で異なる特性を持たせているため、ショットの打ち分けを容易にすることができるガットおよびラケットを提供する。
【解決手段】各種ラケットの打球面に張設されるガットであって、長さ方向に垂直な断面において、その重心を通る長軸Lに対向するX面とY面が非対称形に形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、テニス、バトミントンおよびスカッシュなどのラケットに張設されるガットおよびこれを張設したラケットに関するものである。さらに詳しくは、ラケットの表裏で異なる特性を持たせることのできるガットおよびこれを張設したラケットに関するものである。
従来、テニス、バトミントンおよびスカッシュなどのラケット用ガットとしては、モノフィラメントまたはマルチフィラメントを芯糸として、その周りに皮糸としてのモノフィラメントを編組または巻き付けたもの、モノフィラメントをそのまま使用したもの、モノフィラメントの表面にコーティングのみ施したもの等が一般的に使用されている。
これら従来のガットは丸断面が主体であり、一部には楕円や長方形等の異形断面とすることで、反発性やスピン性等を向上させた提案もあるが、いずれもラケット表裏での特性は同じものであった。
ラケットの特性を表裏で異ならせる技術としては、ラケット打球面が2重に張設され、その両面のガット張力が異なるラケット(例えば、特許文献1参照)が提案されているが、このラケットは目標とする効果が得られているとはいえるものの、ラケット打球面が2重に張設されているために高コストとなるばかりか、ラケットを振った際の空気抵抗が大きくなってしまうという問題があった。
特開平7−289667号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点を解決すべく検討した結果達成されたものである。
したがって、本発明の目的は、ラケットの表裏で異なる特性を持たせることのできるガットおよびこれを張設したラケットを提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明のガットは、各種ラケットの打球面に張設されるガットであって、長さ方向に垂直な断面において、その重心を通る長軸に対向するX面とY面が非対称形に形成されていることを特徴とする。
なお、本発明のガットにおいては、前記ガット断面の長径(A)と短径(B)の比(A/B)から求めた扁平率が1.2〜2.5であることが好ましい要件として挙げられる。
また、本発明のラケットは、前記のガットを張設してなるラケットであって、その一方の打球面にはガットのX面が存在し、他方の打球面にはガットのY面が存在するよう選択的に張設されていることを特徴とする。
本発明によれば、ガット断面の重心を通る長軸に対向するX面とY面が非対称形に形成されているガットを、ラケットの一方の打球面にはガットのX面が存在し、他方の打球面にはガットのY面が存在するよう選択的に張設することにより、ラケットの表裏で異なる特性を持つガットおよびこれを張設したラケットを得ることができる。
(a)〜(c)は本発明のガットを長さ方向に垂直切断した際に現れる断面図の数例である。 本発明のガットをラケットに張設した際の一例を示す模式図である。
以下、図面を参照しつつ本発明をさらに詳細に説明する。
図1は本発明のガットの代表例を長さ方向に対して垂直に切断した断面図であり、1はガット、Pはガット断面の重心、Lは重心を通る長軸、Aは長径、Bは短径を示す。
図1に示すとおり、本発明のガットは、各種ラケット打球面に張設されるガット1であって、長さ方向に垂直な断面において、その重心Pを通る長軸Lに対向するX面とY面が非対称形に形成されていることを特徴とする。
ここで、前記ガット1の断面形状については、重心Pを通る長軸Lに対向するX面とY面が非対称形に形成されていれば特に限定は無く、半円、三角形、星型あるいはそれらの組合せ等を例示することができるが、その中でも図1(a)に示す半円に長方形を組み合わせた形状、図1(b)に示す半円三連結形状に長方形を組み合わせた形状、図1(c)に示す略三角形が好ましい例として挙げられ、さらには半円に長方形を組み合わせた形状がより好ましい。
また、本発明のガット1においては、中空部を有すること、芯鞘複合や海島型等の複合構造とすることも可能である。
このような形状とした本発明のガット1をラケットに張設する際には、図2に示すように、一方の打球面にはガットのX面が存在し、他方の打球面にはガットのY面が存在するよう選択的に張設することにより、ラケットの表裏で異なる特性を持たせることができる。
本発明のガット1を構成する合成樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系エラストマー、オレフィン系ゴムとポリプロピレンまたはエチレンなどのポリオレフィンとのブレンドなどのポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、フッ素ゴム系エラストマー、ポリエーテルエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、エチレンテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂などが挙げられるが、中でもポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂が好ましく使用される。
本発明に使用されるポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂は、必要に応じて、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、ジルコニウム酸などの各種無機粒子や架橋高分子粒子などの粒子類のほか、従来公知の抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、イオン交換剤、着色防止剤、耐光剤、包接化合物、各種着色剤、ワックス類、シリコーンオイル、各種界面活性剤類、フッ素樹脂類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類及びポリスチレン類などが添加されたものであってもよい。
次に、本発明のガット1は、ガット断面の長径(A)と短径(B)の比(A/B)から求めた扁平率が1.2〜2.5の範囲にあることが好ましく、さらには1.2〜2.0の範囲にあることがより好ましい。
これは、扁平率が上記の範囲を下まわると、ガット1をラケットに張設する際に、一方の打球面にはガットのX面が存在し、他方の打球面にはガットのY面が存在するよう選択的に張設するのが困難になりやすく、逆に、扁平率が上記の範囲を上まわると、ガット1の強度を出しにくくなるばかりか、ラケットを振った際の空気抵抗が大きくなりやすくなるため好ましくないからである。
なお、本発明のガット1の断面における長径は、バドミントン用、スカッシュ用、テニス用等の用途に応じて適宜変更すれば良く、0.05〜2.0mmの範囲を例示できる。
本発明のガット1に使用されるモノフィラメントの製造方法については何ら特殊な方法を使用する必要はなく、口金の形状を本発明に使用されるガットの断面形状に合わせる以外は、公知の溶融紡糸方法を採用することができ、例えば、ポリエステル樹脂をエクストルーダー型紡糸機に供給し、溶融混練後、ギヤポンプにより計量押出された押出ポリマーを、10〜80℃の冷却浴で冷却した後、前記口金を通して押し出し、冷却槽で冷却固化したモノフィラメントの未延伸糸を80〜120℃で3.0〜4.5倍に延伸し、さらに150〜300℃でトータル延伸倍率4.5〜7.0倍に延伸した後、150〜200℃でリラックス処理することにより、本発明のガットに使用されるモノフィラメントを得ることができる。
なお、本発明においては、ガット1を芯糸とし、この芯糸の外周に巻糸を巻回したり、表面コーティングを施したりすることも可能である。さらに、必要に応じて、染色、印字、油剤付与などの加工が行われてもよい。
本発明のラケットは、前述の本発明のガット1を、図2に示すように一方の打球面にはガットのX面が存在し、他方の打球面にはガットのY面が存在するよう選択的に張設されることが好ましい。前述の様にガット断面を選択的に張設することにより、ラケットの表裏で異なる特性を持たせたラケットを提供することができる。
また、本発明のラケットは、ラケットに張設されたガットの捩れによる反転部分が30箇所以下であることが好ましい。
これは、ガットの捩れによる反転部分が上記の範囲を上まわると、ラケット表裏での特性を異ならせることが困難になりやすいため好ましくないからである。
かくして得られる本発明のラケットは、ラケットの表裏で異なる特性を持ち、ショットの打ち分けを容易にすることができるため、その実用性は極めて高いものである。
以下、実施例を基に本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、明細書本文および実施例に用いた各種特性値は以下の方法に従って測定したものである。
[ガット断面重心および長径・短径]
ガットを長さ方向に対し垂直方向に切り出した断面観察サンプルを、KEYENCE製デジタルマイクロスコープVHX−100Fを用いて測定した。
[モニター試験]
硬式テニス競技歴10年の競技者3名、及び、競技暦8年の競技者2名により2時間の実打試験をおこなった。評価項目は1.スピン性、2.制球性、3.スイング性、の3項目で実施した。比較例1記載の通常丸断面糸を用いたストリングを使用した際の評価を3点とする下記5段階評価を各人が行い、その平均をモニター試験結果とした。
5:非常に良い、4:良い、3:普通、2:悪い、1:非常に悪い。
[耐久性]
ガットが張設されたラケットのフェースに、時速100Km、打ち出し間隔15回/分、打ち出し距離50cm、かつ打ち出し角度40°の条件でテニスボールを衝突させ、ガットが切断するまでの打ち出し回数で耐久性を評価した。なお実施例においてはラケット表裏の平均値で求めた。
[捩れによる反転箇所]
ガットをラケットに張設したのち、目視で反転箇所の個数を確認した。
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(PET)原料として三井化学製J055を用い、1軸型エクストルーダー溶融押出機に連続供給して290℃で溶融混練した後、断面形状が図1(a)となるよう異形複合口金孔から押し出した。
その後紡出された溶融物は70℃の湯浴中で冷却固化されて未延伸糸となり、この未延伸糸を引き続きトータル5.1倍に延伸し、さらに熱セットを施して、長径1.40mm、短径1.02mmのPETモノフィラメントを得た。
得られたPETモノフィラメントを単線でラケット用ガットとして用い、その性能を評価した。
[実施例2]
断面形状が図1(b)となる口金を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で長径1.42mm、短径0.97mmのPETモノフィラメントを作製し、得られたモノフィラメントをラケット用ガットとして用い、その性能を評価した。
[実施例3]
断面形状が図1(c)となる口金を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で長径1.52mm、短径0.96mmのPETモノフィラメントを作製し、得られたモノフィラメントをラケット用ガットとして用い、その性能を評価した。
[比較例1]
断面形状が円形となる口金を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で直径1.30mmのPETモノフィラメントを作製し、得られたモノフィラメントをラケット用ガットとして用い、その性能を評価した。
[比較例2]
断面形状が扁平となる口金を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で長径1.42mm、短径0.92mmのPETモノフィラメントを作製し、得られたモノフィラメントをラケット用ガットとして用い、その性能を評価した。
実施例および比較例で得られたガットおよびラケット張設後のガット評価結果を表1に記載する。
Figure 2013215329
表1の結果から分かるように、本発明のガット(実施例1〜3)はラケット表裏での特性が異なり、X面では丸断面のガットと同等の制球性を持ち、Y面では高いスピン性能を持つという特性を兼ね備えたものであることから、実際にラケット用ガットとして使用した場合には、ラケット表裏を使い分けることにより、ショットの打ち分けが容易にできるため、極めて実用性の高いものであった。
これに対して、本発明の条件を満たさないガット(比較例1〜2)は、表裏での特性が全く同じであるガットしか得ることができない。例えば丸断面のガット(比較例1)は、制球性は優れるもののスピン性に劣り、扁平断面のガット(比較例2)は、スピン性は優れるものの制球性に劣るものであった。
本発明のガットおよびこれを張設したラケットは、ラケットの表裏で異なる特性を持たせており、ショットの打ち分けを容易にすることができるため、テニス、バドミントン、スカッシュ等のラケット用ガットとして好適に利用することができる。
1:ガット
P:ガット断面の重心
L:重心を通る長軸
A:長径
B:短径

Claims (3)

  1. 各種ラケットの打球面に張設されるガットであって、長さ方向に垂直な断面において、その重心を通る長軸に対向するX面とY面が非対称形に形成されていることを特徴とするガット。
  2. 前記ガット断面の長径(A)と短径(B)の比(A/B)から求めた扁平率が1.2〜2.5であることを特徴とする請求項1に記載のガット。
  3. 請求項1または2に記載のガットを張設してなるラケットであって、その一方の打球面にはガットのX面が存在し、他方の打球面にはガットのY面が存在するよう選択的に張設されていることを特徴とするラケット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7231300B1 (ja) * 2022-11-30 2023-03-01 迪夫 村田 非対称ストリング

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