JP4223524B2 - ラケット用ストリング及びその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、バドミントン用ストリングでは、芯糸としてのマルチフィラメントに皮糸としてのモノフィラメントを編組したストリングが一般的に使用されている。
実開平5−81280号公報には、合成樹脂製の偏平糸の幅Lが少なくとも二本以上の偏平モノフィラメントが連結した構造をもち、その厚みDが0.05〜0.20mm、さらに連結部の厚みAが0.02mm以上でかつ厚みの差D−Aが0.03mm以上であることを特徴とする屋外人工芝生用パイル糸が開示されている。
いずれの場合にも繊維(樹脂)の使用量が減少するので、ストリングの強力も減少して、それにともない耐久性が低下することは避けられない。特に、強力への寄与が大きい芯糸を細くすると強力低下が大きくなる。
(1) 芯糸の周囲に皮糸が編組されているラケット用ストリングであって、
前記皮糸として用いられるフィラメントが、断面形状が、2〜6個の略円形及び/又は略楕円形が線状に連結した異形断面形状であり、前記断面形状において、各略円形及び/又は略楕円形の中心を結ぶ軸線に対して垂直方向の厚みのうちの最大値をD(mm)、略円形及び/又は略楕円形の連結部における前記軸線に対して垂直方向の厚みのうちの最小値をd(mm)、前記軸線方向のフィラメントの長さをL(mm)とした場合に、下記式:
D=0.02〜0.08(mm)
d≧0.01(mm)
d/D=0.2〜0.7
L=0.06〜0.4(mm)
を満足するフィラメントである、ラケット用ストリング。
まず、本発明のラケットストリングに用いる皮糸用モノフィラメントについて説明する。
前記フィラメントは、断面(フィラメントの長手方向に対する垂直断面)形状が2〜6個の略円形(真円を含む)及び/又は略楕円形(楕円形を含む)が線状に連結した異形断面形状であり、前記断面形状において、各略円形及び/又は略楕円形の中心を結ぶ軸線に対して垂直方向の厚みのうちの最大値をD(mm)とし、略円形及び/又は略楕円形の連結部における前記軸線に対して垂直方向の厚みのうちの最小値をd(mm)とし、前記軸線方向のフィラメントの長さをL(mm)とした場合に、下記式を満足するラケットストリング用フィラメントである。
D=0.02〜0.08(mm)
d≧0.01(mm)
d/D=0.2〜0.7
L=0.06〜0.4(mm)
円が連結した断面形状を有しているため、このモノフィラメントはいわゆる偏平糸であり、その表面には凹凸が存在する。
同じ大きさと形とを有する略円形のみが連結していてもよく、多少大きさや形の異なる略円形同士が連結していてもよい。また、略円形と略楕円形とが連結していてもよい。
また、前記フィラメントの太さをデジテックス(dtex)で表すと、約7〜200dtexであることが好ましい。
これらの中で、特にポリアミド系樹脂が好ましい。
また、フィラメントの樹脂の分子量は高いものが、強力が高く且つ熱処理時の強力変化も小さくできるので好ましい。具体的には、樹脂の相対粘度(ηr)は3.0以上が好ましい。
紡糸の条件については使用する樹脂の一般的な押出し条件を適用することができる。樹脂の種類にもよるが、通常、温度は、200〜290℃である。
図4(a)に示される口金(4)の孔(5)の形状は、同じ大きさの4つの円形の孔5a、5b、5c、5dが所定の厚み(円形の中心を結ぶ軸線に対して垂直方向の長さ)及び長さ(前記軸線方向の長さ)を有する連通孔5e、5f、5gを介して線状に繋がった形状である。図4(a)の口金(4)を用いて、通常のフィラメント紡糸機でフィラメントを製造する場合、用いるフィラメントの材料に応じて紡糸条件を適宜設定することによって、図1に示すフィラメント(1)(円形が重なるタイプ)や、図示していない円形が重ならないタイプのフィラメントを得ることができる。
図4(b)に示される口金(6)の孔(7)の形状は、同じ大きさの4つの円形の孔7a、7b、7c、7dが直線状に並んだ形状(いわゆる4ホール口金)である。図4(b)の口金(6)を用いて、紡糸条件を適宜設定し紡出後融着させることによって、図1に示すフィラメント(1)(円形が重なるタイプ)を得ることができる。
紡糸機のノズル(口金)から押し出された溶融樹脂は、水等の液体中で冷却固化された後、常法通り延伸、熱処理され、巻き取られてフィラメントとなる。冷却及び延伸条件は、樹脂種類により適正な条件を選定する。樹脂の種類にもよるが、冷却温度は通常10〜70℃であり、延伸温度はガラス転移点以上融点以下である。延伸処理において、通常湿熱及び/又は乾熱中で3〜8倍程度まで延伸される。さらに必要に応じ定長又は弛緩熱処理を行い巻き取る。
フィラメントの好ましい強度は4.5CN/dtex〜10CN/dtex、伸度は25%〜40%程度である。
本発明のラケット用ストリングは、芯糸に、皮糸として上記異形断面形状を有するフィラメントが編組されたものである。
編組は、公知の編組機(例えば、16打ち)を用いて行うとよい。
すなわち、皮糸としてのフィラメントの融点は、芯糸素材の融点と同等か低融点であるのが好ましい。好ましい融点差は0〜70℃、さらに好ましい融点差は0〜50℃である。
さらに本発明のストリングには、必要に応じ、染色、印字、油剤付与等ラケット用ストリングの製造に必要な加工を行うことができる。
本発明のストリングの製造方法は、芯糸の周囲に皮糸として上記異形断面を有するフィラメントを編組する工程(A)を含む方法である。芯糸の融点M(℃)と皮糸としてのフィラメントの融点m(℃)との関係は、M≧mであることが好ましい。さらに、M−m=0〜70(℃)であることが好ましく、M−m=0〜50(℃)であることがより好ましい。さらに、工程(A)で得られたストリングを融点m±10℃で熱処理し、皮糸として編組されているフィラメントをフィラメント同士の接触部において融着させ、皮糸として編組されているフィラメントと芯糸とをフィラメントと芯糸との接触部において融着させる工程(B)を含む方法である。
バトミントンのストリングで一般的な16打ち組みタイプの製紐機を用いる場合、組み糸には、上記異形断面を有するフィラメントを一本ずつ供給するようにするのが合理的である。
芯糸として下記に示す芯糸Aを用い、皮糸として下記に示すフィラメントIを用いてラケット用ストリングの製造を行った。
この際の樹脂加工は、共重合ナイロン(東レ(株)製、CM8000、融点128℃)の10wt%メタノール溶液を芯糸にコーティングすることにより行った。
芯糸Aの周囲に、皮糸としてフィラメントIを、16打ち製紐機を用いて編組し、製紐後のストリングを得た。
次に、製紐後のストリングに、製紐後の加工として熱処理を行った。熱処理として200℃の温度雰囲気中で非接触加熱を行い、10m/分の速度で20秒処理して巻き取り、熱処理加工後のストリングを得た。巻き取り側速度は10.1m/分、延伸倍率は1.01倍であった。
芯糸として下記に示す芯糸Bを用い、皮糸として実施例1と同じフィラメントIを用いてラケット用ストリングの製造を行った。
この際の樹脂加工は、上記芯糸Aの樹脂加工法と同じ方法で行った。すなわち、共重合ナイロン(東レ(株)製、CM8000、融点128℃)の10wt%メタノール溶液を芯糸にコーティングすることにより行った。
芯糸として下記に示す芯糸Cを用い、皮糸として実施例1と同じフィラメントIを用いてラケット用ストリングの製造を行った。
この際の樹脂加工は、上記芯糸Aの樹脂加工法と同じ方法で行った。すなわち、共重合ナイロン(東レ(株)製、CM8000、融点128℃)の10wt%メタノール溶液を芯糸にコーティングすることにより行った。
芯糸として実施例1と同じ芯糸Aを用い、皮糸として下記に示すフィラメントIIを用いてラケット用ストリングの製造を行った。
芯糸として実施例2と同じ芯糸Bを用い、皮糸として比較例1と同じフィラメントIIを用いてラケット用ストリングの製造を行った。
芯糸として実施例3と同じ芯糸Cを用い、皮糸として比較例1と同じフィラメントIIを用いてラケット用ストリングの製造を行った。
バドミントン上級プレーヤー3名で、実施例及び比較例で得られたストリングから得られた上述の各バドミントンラケットを用いて試打評価した。比較例3の細ゲージストリングを用いたものはテスト中、早期にストリングが切断し、耐久性不足であった。
芯糸として下記に示す芯糸Dを用い、皮糸として下記に示すフィラメントIIIを用いてラケット用ストリングの製造を行った。
芯糸Dの周囲に、皮糸としてフィラメントIIIを、実施例1と同じ16打ち製紐機を用いて編組し、製紐後のストリングを得た。
次に、製紐後のストリングに、製紐後の加工として熱処理を行った。熱処理として190℃の温度雰囲気中で非接触加熱を行い、10m/分の速度で20秒処理して巻き取り、熱処理加工後のストリングを得た。巻き取り側速度は10.1m/分、延伸倍率は1.01倍であった。
芯糸として下記に示す芯糸Eを用い、皮糸として実施例4と同じフィラメントIIIを用いてラケット用ストリングの製造を行った。
芯糸Eの周囲に、皮糸としてフィラメントIIIの17本を巻き付けて、製紐後のストリングを得た。
工程Aと連続して、製紐後の加工として熱処理を行った。熱処理として190℃の温度雰囲気中で非接触加熱を行い、30秒処理し融着させた。その後ポリウレタン15wt%溶液で表面樹脂加工し、熱処理・樹脂加工後のストリングを得た。
2:フィラメント
3:フィラメント
4:口金
5:孔
5a:円形の孔
5b:円形の孔
5c:円形の孔
5d:円形の孔
5e:連通孔
5f:連通孔
5g:連通孔
6:口金
7:孔
7a:円形の孔
7b:円形の孔
7c:円形の孔
7d:円形の孔
Claims (10)
- 芯糸の周囲に皮糸が編組されているラケット用ストリングであって、
前記皮糸として用いられるフィラメントが、断面形状が、2〜6個の略円形及び/又は略楕円形が線状に連結した異形断面形状であり、前記断面形状において、各略円形及び/又は略楕円形の中心を結ぶ軸線に対して垂直方向の厚みのうちの最大値をD(mm)、略円形及び/又は略楕円形の連結部における前記軸線に対して垂直方向の厚みのうちの最小値をd(mm)、前記軸線方向のフィラメントの長さをL(mm)とした場合に、下記式:
D=0.02〜0.08(mm)
d≧0.01(mm)
d/D=0.2〜0.7
L=0.06〜0.4(mm)
を満足するフィラメントである、ラケット用ストリング。 - 前記皮糸として用いられるフィラメントの強度が、4.5CN/dtex〜10CN/dtexである、請求項1に記載のラケット用ストリング。
- 前記皮糸として編組されているフィラメントがフィラメント同士の接触部において融着しており、且つ、前記皮糸として編組されているフィラメントと芯糸とがフィラメントと芯糸との接触部において融着している、請求項1又は2に記載のラケット用ストリング。
- 芯糸の融点M(℃)と皮糸としてのフィラメントの融点m(℃)との関係がM≧mである、請求項1〜3のうちのいずれかに記載のラケット用ストリング。
- 芯糸と皮糸とが共にポリアミド系樹脂からなる、請求項1〜4のうちのいずれかに記載のラケット用ストリング。
- 表面がさらに樹脂層で被覆されている、請求項1〜5のうちのいずれかに記載のラケット用ストリング。
- 芯糸の周囲に、皮糸を編組する工程(A)を含む、請求項1に記載のラケット用ストリングの製造方法。
- 芯糸の融点M(℃)と皮糸としてのフィラメントの融点m(℃)との関係がM≧mである、請求項7に記載のラケット用ストリングの製造方法。
- 工程(A)で得られたストリングを融点m±10℃で熱処理し、前記皮糸として編組されているフィラメントをフィラメント同士の接触部において融着させ、前記皮糸として編組されているフィラメントと芯糸とをフィラメントと芯糸との接触部において融着させる工程(B)を含む、請求項8に記載のラケット用ストリングの製造方法。
- 請求項7〜9のうちのいずれかに記載の方法で製造されたラケット用ストリング。
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