JP2004068217A - ポリエステル系複合モノフィラメントおよびラケット用ガット - Google Patents
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Abstract
【課題】特にラケット用ガットとしての特性を備えたポリエステル系複合モノフィラメント、および合成樹脂製ガットが有する優れた耐久性を維持しつつ、天然ガットの優れた打球性とガット張設後の面圧保持性を併せ持つラケット用ガットを提供する。
【解決手段】芯部または島部ポリマーをポリプロピレンテレフタレートから構成し、鞘部または海部ポリマーをポリエチレンテレフタレートから構成したことを特徴とするポリエステル系複合モノフィラメント。
【選択図】 なし
【解決手段】芯部または島部ポリマーをポリプロピレンテレフタレートから構成し、鞘部または海部ポリマーをポリエチレンテレフタレートから構成したことを特徴とするポリエステル系複合モノフィラメント。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い引張強度と耐摩耗性を維持しつつ、従来にない高い伸長弾性回復率を有し、特にラケット用ガットとしての特性を備えたポリエステル系複合モノフィラメント、および合成樹脂製ガットが有する優れた耐久性を維持しつつ、天然ガットの優れた打球性とガット張設後の面圧保持性を併せ持つラケット用ガットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
テニス、バトミントンおよびスカッシュなどのスポーツラケット用ガットとして、古くから羊腸、鯨筋に代表される動物繊維からなる天然ガットが用いられてきた。
【0003】
しかるに、従来使用されてていた天然ガットは、反発性、制球性および耐衝撃性などのに優れている反面、耐水性に劣ることから使用寿命が短く、しかも高価であるため、近年では、耐久性、量産性および経済性などが優れた合成樹脂製ガットが広く用いられている。
【0004】
この合成樹脂製ガットとしては、ポリアミド製ガットやポリエステル製ガットなどが代表的であるが、これらは耐久性については良好であるものの、打球性やガット張設後の面圧保持性が天然ガットに比べて劣る点が問題視されていた。
【0005】
かかる合成樹脂製ガットの問題点を解決するための検討が従来から種々行われており、ポリエステル製ガットの従来技術としては、例えば(A)極限粘度が0.6以上のポリエステルモノフィラメントからなり、偏平率と曲げ硬さを規定したラケット用ガット(特開2000−185118号公報)、(B)ポリ(1,3プロピレンテレフタレート)モノフィラメントからなるラケット用ガット(特開平5−262862号公報)、および(C)ポリトリメチテンテレフタレートマルチフィタメントからなるガット(特許第3194431号公報)などが既に提案されている。
【0006】
しかしながら、上記(A)のポリエステル製ガットは、制球性、反発性、耐衝撃性などについてはある程度の改良効果が認められるものの、ポリエステルモノフィラメントの弱点である伸長弾性回復率の低さに起因して、張設後の面圧保持性などの点では必ずしも十分であるといえるものではなかった。
【0007】
また、上記(B)のポリエステル製ガットは、ポリエステル系モノフィラメントの中でも伸長弾性回復率の点で優れているポリ(1,3プロピレンテレフタレート)モノフィラメントからなるガットではあるものの、引張強度が高々2.7cN/dtex程度であることから、強度面で必ずしも実用的とは言い難いものであった。
【0008】
さらに、上記(C)のポリエステル製ガットは、上記(B)と同様に、伸長弾性回復率の点で優れているポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメントからなるガットではあるものの、そのポリマーの特性と単糸繊度が小さいことに起因して、ラケットに張設した後のガットの摩耗性が悪く、耐久性の面では必ずしも満足するとは言い難いものであった。
【0009】
一方、ポリエステル系複合繊維の従来技術としては、例えば(D)シースをポリエチレンテレフタレート、コアをポリプロピレンテレフタレートとした複合ポリエステル繊維(特開平11−158731号公報)、(E)鞘部をスルホン酸塩化合物を0.55モル%共重合させたポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、芯部をポリプロピレンテレフタレートとしたカチオン染料可染鞘芯複合ポリエステル繊維(特開平11−302924号公報)、および(F)鞘部をポリプロピレンテレフタレート、芯部をポリエチレンテレフタレートとした芯・鞘複合モノフィラメントからなるスクリーン紗(特開2001−30646号公報)などが既に提案されている。
【0010】
しかしながら、上記(D)の複合繊維は、偏心シーズコア型とすることによりサイドバイドサイド型の層間分離を改良したポリエステル製捲縮性短繊維、また上記(E)の複合繊維は、染色性を改良したポリエステル製繊維を指向するものであって、いずれも単糸直径の細いマルチフィラメントに関するものであり、ラケット用ガットとして使用する太直径のポリエステル製複合モノフィラメントについては何ら言及するものではない。
【0011】
また、上記(F)の複合繊維は、製織中のスカムの発生を抑制したスクリーン紗として使用するものであり、これをラケット用ガットとして使用することについては何ら言及するものではない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0013】
したがって、本発明の目的は、高い引張強度と耐摩耗性を維持しつつ、従来にない高い伸長弾性回復率を有し、特にラケット用ガットとしての特性を備えたポリエステル系複合モノフィラメント、および合成樹脂製ガットが有する優れた耐久性を維持しつつ、天然ガットの優れた打球性とガット張設後の面圧保持性を併せ持つラケット用ガットを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントは、芯部と鞘部の少なくとも2層構造からなり、芯部と鞘部の少なくとも2層構造からなり、芯部ポリマーをプロピレンテレフタレート単位を85重量%以上含有するポリプロピレンテレフタレートまたはポリプロピレンテレフタレート共重合体から構成し、鞘部ポリマーをエチレンテレフタレート単位を85重量%以上含有するポリエチレンテフタレートまたはポリエチレンテレフタレート共重合体から構成したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントのもうひとつの形態は、島の数が2個以上の海島構造からなり、島部ポリマーをプロピレンテレフタレート単位を85重量%以上含有するポリプロピレンテレフタレートまたはポリプロピレンテレフタレート共重合体から構成し、海部ポリマーをエチレンテレフタレート単位を85重量%以上含有するポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレート共重合体から構成したことを特徴とする。
【0016】
なお、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントにおいては、
直径が0.1〜1.5mmの範囲にあること、および
芯部:鞘部の重量比または島部:海部の重量比が10:90〜60:40の範囲にあり、かつ引張強度が3cN/dtex以上であること、特に芯部:鞘部の重量比または島部:海部の重量比が20:80〜35:65の範囲にあり、かつ引張強度が3.5cN/dtex以上であること
が、いずれも好ましい条件であり、これらの条件を満たすことによって一層優れた効果の取得を期待することができる。
【0017】
また、本発明のラケット用ガットは、上記のポリエステル系複合モノフィラメントを用いたことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0019】
本発明でいうポリエステル系複合モノフィラメントとは、芯部と鞘部の少なくとも2層構造からなる複合モノフィラメントである。複合形態は2層構造を有する芯鞘型複合モノフィラメントを基本とするが、3層以上の多層構造を有する芯鞘型複合モノフィラメントを除外するものではない。
【0020】
本発明のもうひとつの形態のポリエステル系複合モノフィラメントは、島の数が2個以上の海島構造からなる複合モノフィラメントである。島の数は具体的には3島、13島、19島などがあるが、2個以上であれば任意に選択することができる。海部の中の島部の配置は必ずしも限定されるものではないが、一般的には回転対称に配置されたものである。
【0021】
また、芯部および鞘部、また島部および海部の形状については、必ずしも円形断面だけに限定されるものではなく、三角断面、四角断面および多葉断面などの任意の形状をとることができる。
【0022】
本発明のポリエステル系複合モノフィラメントにおいて、鞘部または海部に用いられるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)は、実質的にテレフタル酸とエチレングリコールとを縮重合して得られるものであるが、酸成分の一部、およびグリコール成分の一部を、当業界で良く知られる様々なジカルボン酸とグリコールで置き換えたPET共重合体であってもよい。ここで、上記酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸およびスルホン酸金属塩置換イソフタル酸などが挙げられる。また、上記グリコール成分としては、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノール、1,4シクロヘキサンジオールおよびポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0023】
本発明のポリエステル系複合モノフィラメントにおいて、芯部または島部に用いられるポリプロピレングリコール(以下、PPTと略称する)は、実質的にテレフタル酸とプロピレングリコールを縮重合して得られるものであるが、酸成分の一部、およびグリコール成分の一部を、当業界で良く知られる様々なジカルボン酸とグリコールで置き換えたPPT共重合体であってもよく、これら他成分の具体例としては、上記PETで示した酸成分および上記PETで示したグリコール成分からプロピレングリコールを外してエチレングリコールを加えたグリコール成分などを挙げることができる。
【0024】
PETおよびPPTの極限粘度は、0.6以上あればよいが、PETの場合は0.7以上、またPPTの場合は0.8以上あることが、高い強靱性の複合モノフィラメントおよびガットが得られることから好ましい。この点からは極限粘度は高ければ高いほど好適であるが、1.5を越えると紡糸が困難となるため好ましくない。
【0025】
ここで、本発明でいう極限粘度とは、オルソクロロフェノール溶液中25℃で測定した粘度から求めた極限粘度であり、〔η〕で表される値である。
【0026】
なお、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントを構成する各ポリマーには、少量の酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、窒化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、ジルコニウム酸、などの各種無機粒子や架橋高分子粒子、各種金属粒子などの粒子類のほか、従来公知の抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、イオン交換剤、着色防止剤、耐光剤、難燃剤、各種着色剤、耐電防止剤、ワックス類、シリコーンオイル、各種界面活性剤、各種強化繊維類、および各種可塑剤などが添加されていてもよい。
【0027】
このように、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントは、芯部ポリマーまたは島部ポリマーをPPTから構成し、鞘部ポリマーまたは海部ポリマーをPETから構成することが重要な要件である。
【0028】
つまり,PPTポリマーは、伸長弾性回復率に極めて優れた特性を有しているが、PPT単独からなるモノフィラメントでは引張強度が高々2cN/dtexであり、例えばガット用に用いられるモノフィラメントには少なくとも3cN/dtex以上(ガットの強力としては600N以上)の引張強度が要求されることからあまり実用的ではない。
【0029】
また、PET単独からなるモノフィラメントでは、引張強度には優れるが、伸長弾性回復率が低いため、これを用いたラケット用ガットは、耐久性に優れる反面、面圧保持性が劣り、本発明が目的とする特性を十分満足することができない。
【0030】
さらに、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントとは逆に、芯部ポリマーまたは島部ポリマーをPETから構成し、鞘部ポリマーまたは海部ポリマーをPPTから構成した複合モノフィラメント、つまり少なくとも糸表面の一部にPPTが露出している複合モノフィラメントでは、高温延伸行程で糸の表面に毛羽が発生して剥離を引き起こし、さらにガットとして用いた場合に本発明が目的とする面圧保持性や耐久性を十分満足することができない。
【0031】
これに対し、芯部ポリマーまたは島部ポリマーをPPTから構成し、鞘部ポリマーまたは海部ポリマーをPETから構成した本発明のポリエステル系複合モノフィラメントは、これをラケット用ガットとして適用した場合に、優れた耐久性を維持しつつ、天然ガットの優れた打球性とガット張設後の面圧保持性を併せ持つという理想的な性能を発揮することができる。
【0032】
本発明のポリエステル系複合モノフィラメントの直径は、0.1〜1.5mmの範囲にあることが望ましい。直径が0.1mm以下のマルチフィラメントやモノフィラメントでは摩耗性が弱く、また、直径が1.5mm以上の太直径ではガットとして用いた場合は打球性が悪くなるからである。
【0033】
次に、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントにおける芯部:鞘部の重量比または島部:海部の重量比は、10:90〜60:40の範囲、より好ましくは20:80〜35:65の範囲にあることが望ましく、その場合にはPPTの優れた伸長弾性回復率を維持しつつ、引張強度が3cN/dtex以上、より好ましくは3.5cN/dtex以上のポリエステル系複合モノフィラメントを得ることができる。
【0034】
本発明のポリエステル系複合モノフィラメントは、以下に説明する方法により効率的に製造することができる。
【0035】
まず、上記ポリエステル系複合モノフィラメントを溶融紡糸するに際しては、複合用紡糸機を用いる通常の条件を採用することができ、ポリマー温度200〜350℃、押出圧力1〜50MPa、口金孔径0.1〜5mm、紡糸速度0.3〜100m/分などの条件を適宜選択することができる。
【0036】
次に、複合用紡糸機のダイ内で芯鞘または海島構造に複合化され口金から紡出されたモノフィラメントは、短い気体ゾーンを通過した後、冷却浴内で冷却されるが、ここでの冷却温度は、冷却浴内でのモノフィラメントの蛇行防止や、得られるモノフィラメントの真円性の面から、50℃以上90℃以下とすることがが好ましい。
【0037】
ここで使用する冷却媒体としては、ポリマーに不活性な液体、通常は水、ポリエチレングリコールおよびグリセリンなどが挙げられる。
【0038】
冷却固化された複合モノフィラメントは、引き続き1段目の延伸行程に送られるが、延伸および熱固定の雰囲気(浴)としては、温水、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびシリコーンオイルなどの加熱した熱媒体浴、乾熱気体浴および水蒸気浴などが用いられる。
【0039】
本発明が目的とする高強度で伸長弾性回復率の高いポリエステル系複合モノフィラメントを得る延伸条件としては、1段目の延伸を、比較的低温・低倍率の条件、すなわち60〜120℃、特に85〜95℃の温水浴中で、2.0〜3.5倍、特に2.5〜3.2倍の条件とし、また2段目以降の延伸を、260℃以下、特に180〜250℃の乾熱気体浴中で、全延伸倍率が4.0〜8.5倍、特に5.0〜7.8倍となるような条件とすることが好ましく採用される。
【0040】
また、1段乃至多段延伸後には、必要に応じて延伸歪みを除去することなどを目的として、適度な定長および/または弛緩熱処理を行うこともできる。
【0041】
このようにして得られる本発明のポリエステル系複合モノフィラメントは、高い引張強度と耐摩耗性を維持しつつ、従来にない高い伸長弾性回復率を有することから、各種産業資材用途、水産資材用途、特に釣糸および楽器弦などを代表とするスポーツレジャー用途などに広く使用することができるが、中でもこれをテニス、バトミントンおよびスカッシュなどのスポーツラケット用ガットとして用いた場合には、優れた耐久性を維持しつつ、天然ガットの優れた打球性とガット張設後の面圧保持性を併せ持つという理想的な性能を発現する。
【0042】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、実施例における複合モノフィラメントの評価およびその複合モノフィラメントを用いたラケット用ガットの評価は以下の方法に準じて行った。
【0043】
[引張強力、引張強度]
JISL1013の規定に準じて測定した。
【0044】
[10%伸長弾性回復率]
引張試験機を用い、試長200mm(チャックの掴み間隔)、引張速度50mm/分、チャート速度250mm/分条件で、まず10%伸長させそのまま1分間停止する。次に、同じ速度で除重、2分間放置した後、再び同じ速度で一定伸びまで引き伸ばす。記録した応力−歪み曲線から残留伸び(L)を測定し、下記式で算出した。
10%伸長弾性回復率=(10−L)/10×100(%)
数値が大きいほど伸長弾性回復性に優れている。
【0045】
[ガット特性の評価]
A.面圧保持性
フェース面積115平方インチのテニスラケットに60ポンドのテンションで張設し、面圧測定器(スイス製RaTest)を用いて張設直後と張設後1週間後の面圧を測定し、張設直後の面圧に対する保持率で評価した。数値が大きいほど面圧保持性に優れている。
B.耐久性
フェース面積115平方インチのテニスラケットに60ポンドのテンションで張設し、テニスボールを時速100Kmで、打ち出し間隔15回/分、打ち出し距離50cm、打ち出し角度40度で打撃し、ガットが切断するまでの打ち出し回数で評価した。数値が大きいほど耐久性に優れている。
【0046】
[実施例1]
芯部ポリマーをポリプロピレンテレフタレート(シェルジャパン製コルテラ、ブライトタイプ、〔η〕=1.23)とし、鞘部ポリマーをポリエチレンテレフタレート(三井化学製J−055、〔η〕=1.40)として、かつ芯/鞘重量比率が30/70となるように、エクストルーダー型複合紡糸機で290℃で溶融し、孔径4.5mmの口金を通して紡糸し、さらに70℃の温水浴中で冷却した。
【0047】
次に、この未延伸糸を93℃の温水延伸浴中で3.0倍に一段目延伸し、さらに200℃乾熱浴中で1.85倍に二段目延伸(全延伸倍率5.55倍)することにより複合モノフィラメントを得た。
【0048】
引き続いて、250℃の乾熱浴中に処理倍率0.95倍で通過させて熱処理を施すことにより、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表1に示す。
【0049】
[実施例2]
芯部ポリマーと鞘部ポリマーの芯/鞘重量比率を50/50としたこと以外は実施例1と同様にして、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表1に示す。
【0050】
[比較例1]
実施例1で用いたポリプロピレンテレフタレート単独をエクストルーダー型紡糸機で260℃で溶融し、孔径4.5mmの口金を通して紡糸し、さらに56℃の温水中で冷却した。
【0051】
次に、この未延伸糸を65℃の温水延伸浴中で3.5倍に一段目延伸し、さらに130℃の乾熱浴中で1.29倍に二段目延伸(全延伸倍率4.5倍)してモノフィラメントを得た。
【0052】
引き続いて、130℃の乾熱浴中に0.90倍で通過させて熱処理を施すことにより、直径1.25mmのモノフィラメントを得た。
【0053】
得られたモノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表1に示す。
【0054】
[比較例2]
実施例1で用いたポリエチレンテレフタレート単独としたこと以外は実施例1と同様にして、直径1.25mmのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表1に示す。
【0055】
[比較例3]
実施例1において、芯部ポリマーと鞘部ポリマーを逆に入れ替えたこと以外は実施例1と同様にして、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表1に示す。
【0056】
[比較例4]
実施例2において、芯部ポリマーと鞘部ポリマーを逆に入れ替えたこと以外は実施例2と同様にして、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
[実施例3]
島部ポリマーをポリプロピレンテレフタレート(シェルジャパン製コルテラ、ブライトタイプ、〔η〕=1.23)とし、海部ポリマーをポリエチレンテレフタレート(三井化学製J−055、ブライトタイプ、〔η〕=1.40)として、かつ島部(島の数が3)/海部の重量比率が30/70となるように、エクストルーダー型複合紡糸機で290℃で溶融し、孔径4.5mmの口金を通して紡糸し、さらに70℃の温水浴中で冷却した。
【0059】
次に、この未延伸糸を93℃の温水延伸浴中で3.0倍に一段目延伸し、さらに200℃乾熱浴中で1.85倍に二段目延伸(全延伸倍率5.55倍)して複合モノフィラメントを得た。
【0060】
引き続いて、250℃の乾熱浴中に0.95倍で通過させて熱処理を行うことにより、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。
【0061】
得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表2に示す。
【0062】
[実施例4]
実施例3において、島部ポリマー/海部ポリマーの重量比率を50/50に変更してこと以外は実施例3と同様にして、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。
【0063】
得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表2に示す。
【0064】
[比較例5]
実施例3において、島部ポリマーと海部ポリマーを逆に入れ替えたこと以外は実施例3と同様にして、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。
【0065】
得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表2示す。
【0066】
[比較例6]
実施例4において、島部ポリマーと海部ポリマーを逆に入れ替えたこと以外は実施例4と同様にして、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。
【0067】
得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表1および表2の結果から明らかなように、本発明のポリエステル系複合モノフィラメント(実施例1〜4)は、いずれも高い引張強度を維持しながら、従来にない高い伸長弾性回復率を有する。そして本発明のポリエステル系複合モノフィラメントを用いたラケット用ガットは、耐久性に優れ、かつラケットに張設後の面圧保持性に優れることから弛みが少ないというラケット用ガットとしての理想的な性能を発揮する。
【0070】
一方、PPT単独のモノフィラメント(比較例1)は、伸長弾性回復率には優れるが、強度が低いため、これを用いたラケット用ガットは、面圧保持性には優れるが耐久性が劣り、ガット用モノフィラメントとしては実用的ではない。
【0071】
また、PET単独のモノフィラメント(比較例2)は、引張強度には優れるが、伸長弾性回復率が低いため、これを用いたラケット用ガットは、耐久性には優れるが面圧保持性が劣り、本発明の目的を満足するものではない。
【0072】
さらに、本発明の芯部ポリマーと鞘部ポリマーまたは島部ポリマーと海部ポリマーを逆に入れ替えたポリエステル系複合モノフィラメント(比較例3、4、5、6)は、表面に毛羽が発生し、モノフィラメントの物性およびガットの特性が本発明の目的とする効果を満たすものではなかった。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントは、高い引張強度と耐摩耗性を維持しつつ、従来にない高い伸長弾性回復率を有することから、各種産業資材用途、水産資材用途、特に釣糸および楽器弦などを代表とするスポーツレジャー用途などに広く使用することができ、なかでもテニス、バトミントンおよびスカッシュなどのスポーツラケット用ガットとして最適な性能を有している。
【0074】
また、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントからなるラケット用ガットは、優れた耐久性を維持しつつ、天然ガットの優れた打球性とガット張設後の面圧保持性を併せ持つという理想的な性能を発現する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い引張強度と耐摩耗性を維持しつつ、従来にない高い伸長弾性回復率を有し、特にラケット用ガットとしての特性を備えたポリエステル系複合モノフィラメント、および合成樹脂製ガットが有する優れた耐久性を維持しつつ、天然ガットの優れた打球性とガット張設後の面圧保持性を併せ持つラケット用ガットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
テニス、バトミントンおよびスカッシュなどのスポーツラケット用ガットとして、古くから羊腸、鯨筋に代表される動物繊維からなる天然ガットが用いられてきた。
【0003】
しかるに、従来使用されてていた天然ガットは、反発性、制球性および耐衝撃性などのに優れている反面、耐水性に劣ることから使用寿命が短く、しかも高価であるため、近年では、耐久性、量産性および経済性などが優れた合成樹脂製ガットが広く用いられている。
【0004】
この合成樹脂製ガットとしては、ポリアミド製ガットやポリエステル製ガットなどが代表的であるが、これらは耐久性については良好であるものの、打球性やガット張設後の面圧保持性が天然ガットに比べて劣る点が問題視されていた。
【0005】
かかる合成樹脂製ガットの問題点を解決するための検討が従来から種々行われており、ポリエステル製ガットの従来技術としては、例えば(A)極限粘度が0.6以上のポリエステルモノフィラメントからなり、偏平率と曲げ硬さを規定したラケット用ガット(特開2000−185118号公報)、(B)ポリ(1,3プロピレンテレフタレート)モノフィラメントからなるラケット用ガット(特開平5−262862号公報)、および(C)ポリトリメチテンテレフタレートマルチフィタメントからなるガット(特許第3194431号公報)などが既に提案されている。
【0006】
しかしながら、上記(A)のポリエステル製ガットは、制球性、反発性、耐衝撃性などについてはある程度の改良効果が認められるものの、ポリエステルモノフィラメントの弱点である伸長弾性回復率の低さに起因して、張設後の面圧保持性などの点では必ずしも十分であるといえるものではなかった。
【0007】
また、上記(B)のポリエステル製ガットは、ポリエステル系モノフィラメントの中でも伸長弾性回復率の点で優れているポリ(1,3プロピレンテレフタレート)モノフィラメントからなるガットではあるものの、引張強度が高々2.7cN/dtex程度であることから、強度面で必ずしも実用的とは言い難いものであった。
【0008】
さらに、上記(C)のポリエステル製ガットは、上記(B)と同様に、伸長弾性回復率の点で優れているポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメントからなるガットではあるものの、そのポリマーの特性と単糸繊度が小さいことに起因して、ラケットに張設した後のガットの摩耗性が悪く、耐久性の面では必ずしも満足するとは言い難いものであった。
【0009】
一方、ポリエステル系複合繊維の従来技術としては、例えば(D)シースをポリエチレンテレフタレート、コアをポリプロピレンテレフタレートとした複合ポリエステル繊維(特開平11−158731号公報)、(E)鞘部をスルホン酸塩化合物を0.55モル%共重合させたポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、芯部をポリプロピレンテレフタレートとしたカチオン染料可染鞘芯複合ポリエステル繊維(特開平11−302924号公報)、および(F)鞘部をポリプロピレンテレフタレート、芯部をポリエチレンテレフタレートとした芯・鞘複合モノフィラメントからなるスクリーン紗(特開2001−30646号公報)などが既に提案されている。
【0010】
しかしながら、上記(D)の複合繊維は、偏心シーズコア型とすることによりサイドバイドサイド型の層間分離を改良したポリエステル製捲縮性短繊維、また上記(E)の複合繊維は、染色性を改良したポリエステル製繊維を指向するものであって、いずれも単糸直径の細いマルチフィラメントに関するものであり、ラケット用ガットとして使用する太直径のポリエステル製複合モノフィラメントについては何ら言及するものではない。
【0011】
また、上記(F)の複合繊維は、製織中のスカムの発生を抑制したスクリーン紗として使用するものであり、これをラケット用ガットとして使用することについては何ら言及するものではない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0013】
したがって、本発明の目的は、高い引張強度と耐摩耗性を維持しつつ、従来にない高い伸長弾性回復率を有し、特にラケット用ガットとしての特性を備えたポリエステル系複合モノフィラメント、および合成樹脂製ガットが有する優れた耐久性を維持しつつ、天然ガットの優れた打球性とガット張設後の面圧保持性を併せ持つラケット用ガットを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントは、芯部と鞘部の少なくとも2層構造からなり、芯部と鞘部の少なくとも2層構造からなり、芯部ポリマーをプロピレンテレフタレート単位を85重量%以上含有するポリプロピレンテレフタレートまたはポリプロピレンテレフタレート共重合体から構成し、鞘部ポリマーをエチレンテレフタレート単位を85重量%以上含有するポリエチレンテフタレートまたはポリエチレンテレフタレート共重合体から構成したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントのもうひとつの形態は、島の数が2個以上の海島構造からなり、島部ポリマーをプロピレンテレフタレート単位を85重量%以上含有するポリプロピレンテレフタレートまたはポリプロピレンテレフタレート共重合体から構成し、海部ポリマーをエチレンテレフタレート単位を85重量%以上含有するポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレート共重合体から構成したことを特徴とする。
【0016】
なお、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントにおいては、
直径が0.1〜1.5mmの範囲にあること、および
芯部:鞘部の重量比または島部:海部の重量比が10:90〜60:40の範囲にあり、かつ引張強度が3cN/dtex以上であること、特に芯部:鞘部の重量比または島部:海部の重量比が20:80〜35:65の範囲にあり、かつ引張強度が3.5cN/dtex以上であること
が、いずれも好ましい条件であり、これらの条件を満たすことによって一層優れた効果の取得を期待することができる。
【0017】
また、本発明のラケット用ガットは、上記のポリエステル系複合モノフィラメントを用いたことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0019】
本発明でいうポリエステル系複合モノフィラメントとは、芯部と鞘部の少なくとも2層構造からなる複合モノフィラメントである。複合形態は2層構造を有する芯鞘型複合モノフィラメントを基本とするが、3層以上の多層構造を有する芯鞘型複合モノフィラメントを除外するものではない。
【0020】
本発明のもうひとつの形態のポリエステル系複合モノフィラメントは、島の数が2個以上の海島構造からなる複合モノフィラメントである。島の数は具体的には3島、13島、19島などがあるが、2個以上であれば任意に選択することができる。海部の中の島部の配置は必ずしも限定されるものではないが、一般的には回転対称に配置されたものである。
【0021】
また、芯部および鞘部、また島部および海部の形状については、必ずしも円形断面だけに限定されるものではなく、三角断面、四角断面および多葉断面などの任意の形状をとることができる。
【0022】
本発明のポリエステル系複合モノフィラメントにおいて、鞘部または海部に用いられるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)は、実質的にテレフタル酸とエチレングリコールとを縮重合して得られるものであるが、酸成分の一部、およびグリコール成分の一部を、当業界で良く知られる様々なジカルボン酸とグリコールで置き換えたPET共重合体であってもよい。ここで、上記酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸およびスルホン酸金属塩置換イソフタル酸などが挙げられる。また、上記グリコール成分としては、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノール、1,4シクロヘキサンジオールおよびポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0023】
本発明のポリエステル系複合モノフィラメントにおいて、芯部または島部に用いられるポリプロピレングリコール(以下、PPTと略称する)は、実質的にテレフタル酸とプロピレングリコールを縮重合して得られるものであるが、酸成分の一部、およびグリコール成分の一部を、当業界で良く知られる様々なジカルボン酸とグリコールで置き換えたPPT共重合体であってもよく、これら他成分の具体例としては、上記PETで示した酸成分および上記PETで示したグリコール成分からプロピレングリコールを外してエチレングリコールを加えたグリコール成分などを挙げることができる。
【0024】
PETおよびPPTの極限粘度は、0.6以上あればよいが、PETの場合は0.7以上、またPPTの場合は0.8以上あることが、高い強靱性の複合モノフィラメントおよびガットが得られることから好ましい。この点からは極限粘度は高ければ高いほど好適であるが、1.5を越えると紡糸が困難となるため好ましくない。
【0025】
ここで、本発明でいう極限粘度とは、オルソクロロフェノール溶液中25℃で測定した粘度から求めた極限粘度であり、〔η〕で表される値である。
【0026】
なお、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントを構成する各ポリマーには、少量の酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、窒化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、ジルコニウム酸、などの各種無機粒子や架橋高分子粒子、各種金属粒子などの粒子類のほか、従来公知の抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、イオン交換剤、着色防止剤、耐光剤、難燃剤、各種着色剤、耐電防止剤、ワックス類、シリコーンオイル、各種界面活性剤、各種強化繊維類、および各種可塑剤などが添加されていてもよい。
【0027】
このように、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントは、芯部ポリマーまたは島部ポリマーをPPTから構成し、鞘部ポリマーまたは海部ポリマーをPETから構成することが重要な要件である。
【0028】
つまり,PPTポリマーは、伸長弾性回復率に極めて優れた特性を有しているが、PPT単独からなるモノフィラメントでは引張強度が高々2cN/dtexであり、例えばガット用に用いられるモノフィラメントには少なくとも3cN/dtex以上(ガットの強力としては600N以上)の引張強度が要求されることからあまり実用的ではない。
【0029】
また、PET単独からなるモノフィラメントでは、引張強度には優れるが、伸長弾性回復率が低いため、これを用いたラケット用ガットは、耐久性に優れる反面、面圧保持性が劣り、本発明が目的とする特性を十分満足することができない。
【0030】
さらに、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントとは逆に、芯部ポリマーまたは島部ポリマーをPETから構成し、鞘部ポリマーまたは海部ポリマーをPPTから構成した複合モノフィラメント、つまり少なくとも糸表面の一部にPPTが露出している複合モノフィラメントでは、高温延伸行程で糸の表面に毛羽が発生して剥離を引き起こし、さらにガットとして用いた場合に本発明が目的とする面圧保持性や耐久性を十分満足することができない。
【0031】
これに対し、芯部ポリマーまたは島部ポリマーをPPTから構成し、鞘部ポリマーまたは海部ポリマーをPETから構成した本発明のポリエステル系複合モノフィラメントは、これをラケット用ガットとして適用した場合に、優れた耐久性を維持しつつ、天然ガットの優れた打球性とガット張設後の面圧保持性を併せ持つという理想的な性能を発揮することができる。
【0032】
本発明のポリエステル系複合モノフィラメントの直径は、0.1〜1.5mmの範囲にあることが望ましい。直径が0.1mm以下のマルチフィラメントやモノフィラメントでは摩耗性が弱く、また、直径が1.5mm以上の太直径ではガットとして用いた場合は打球性が悪くなるからである。
【0033】
次に、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントにおける芯部:鞘部の重量比または島部:海部の重量比は、10:90〜60:40の範囲、より好ましくは20:80〜35:65の範囲にあることが望ましく、その場合にはPPTの優れた伸長弾性回復率を維持しつつ、引張強度が3cN/dtex以上、より好ましくは3.5cN/dtex以上のポリエステル系複合モノフィラメントを得ることができる。
【0034】
本発明のポリエステル系複合モノフィラメントは、以下に説明する方法により効率的に製造することができる。
【0035】
まず、上記ポリエステル系複合モノフィラメントを溶融紡糸するに際しては、複合用紡糸機を用いる通常の条件を採用することができ、ポリマー温度200〜350℃、押出圧力1〜50MPa、口金孔径0.1〜5mm、紡糸速度0.3〜100m/分などの条件を適宜選択することができる。
【0036】
次に、複合用紡糸機のダイ内で芯鞘または海島構造に複合化され口金から紡出されたモノフィラメントは、短い気体ゾーンを通過した後、冷却浴内で冷却されるが、ここでの冷却温度は、冷却浴内でのモノフィラメントの蛇行防止や、得られるモノフィラメントの真円性の面から、50℃以上90℃以下とすることがが好ましい。
【0037】
ここで使用する冷却媒体としては、ポリマーに不活性な液体、通常は水、ポリエチレングリコールおよびグリセリンなどが挙げられる。
【0038】
冷却固化された複合モノフィラメントは、引き続き1段目の延伸行程に送られるが、延伸および熱固定の雰囲気(浴)としては、温水、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびシリコーンオイルなどの加熱した熱媒体浴、乾熱気体浴および水蒸気浴などが用いられる。
【0039】
本発明が目的とする高強度で伸長弾性回復率の高いポリエステル系複合モノフィラメントを得る延伸条件としては、1段目の延伸を、比較的低温・低倍率の条件、すなわち60〜120℃、特に85〜95℃の温水浴中で、2.0〜3.5倍、特に2.5〜3.2倍の条件とし、また2段目以降の延伸を、260℃以下、特に180〜250℃の乾熱気体浴中で、全延伸倍率が4.0〜8.5倍、特に5.0〜7.8倍となるような条件とすることが好ましく採用される。
【0040】
また、1段乃至多段延伸後には、必要に応じて延伸歪みを除去することなどを目的として、適度な定長および/または弛緩熱処理を行うこともできる。
【0041】
このようにして得られる本発明のポリエステル系複合モノフィラメントは、高い引張強度と耐摩耗性を維持しつつ、従来にない高い伸長弾性回復率を有することから、各種産業資材用途、水産資材用途、特に釣糸および楽器弦などを代表とするスポーツレジャー用途などに広く使用することができるが、中でもこれをテニス、バトミントンおよびスカッシュなどのスポーツラケット用ガットとして用いた場合には、優れた耐久性を維持しつつ、天然ガットの優れた打球性とガット張設後の面圧保持性を併せ持つという理想的な性能を発現する。
【0042】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、実施例における複合モノフィラメントの評価およびその複合モノフィラメントを用いたラケット用ガットの評価は以下の方法に準じて行った。
【0043】
[引張強力、引張強度]
JISL1013の規定に準じて測定した。
【0044】
[10%伸長弾性回復率]
引張試験機を用い、試長200mm(チャックの掴み間隔)、引張速度50mm/分、チャート速度250mm/分条件で、まず10%伸長させそのまま1分間停止する。次に、同じ速度で除重、2分間放置した後、再び同じ速度で一定伸びまで引き伸ばす。記録した応力−歪み曲線から残留伸び(L)を測定し、下記式で算出した。
10%伸長弾性回復率=(10−L)/10×100(%)
数値が大きいほど伸長弾性回復性に優れている。
【0045】
[ガット特性の評価]
A.面圧保持性
フェース面積115平方インチのテニスラケットに60ポンドのテンションで張設し、面圧測定器(スイス製RaTest)を用いて張設直後と張設後1週間後の面圧を測定し、張設直後の面圧に対する保持率で評価した。数値が大きいほど面圧保持性に優れている。
B.耐久性
フェース面積115平方インチのテニスラケットに60ポンドのテンションで張設し、テニスボールを時速100Kmで、打ち出し間隔15回/分、打ち出し距離50cm、打ち出し角度40度で打撃し、ガットが切断するまでの打ち出し回数で評価した。数値が大きいほど耐久性に優れている。
【0046】
[実施例1]
芯部ポリマーをポリプロピレンテレフタレート(シェルジャパン製コルテラ、ブライトタイプ、〔η〕=1.23)とし、鞘部ポリマーをポリエチレンテレフタレート(三井化学製J−055、〔η〕=1.40)として、かつ芯/鞘重量比率が30/70となるように、エクストルーダー型複合紡糸機で290℃で溶融し、孔径4.5mmの口金を通して紡糸し、さらに70℃の温水浴中で冷却した。
【0047】
次に、この未延伸糸を93℃の温水延伸浴中で3.0倍に一段目延伸し、さらに200℃乾熱浴中で1.85倍に二段目延伸(全延伸倍率5.55倍)することにより複合モノフィラメントを得た。
【0048】
引き続いて、250℃の乾熱浴中に処理倍率0.95倍で通過させて熱処理を施すことにより、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表1に示す。
【0049】
[実施例2]
芯部ポリマーと鞘部ポリマーの芯/鞘重量比率を50/50としたこと以外は実施例1と同様にして、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表1に示す。
【0050】
[比較例1]
実施例1で用いたポリプロピレンテレフタレート単独をエクストルーダー型紡糸機で260℃で溶融し、孔径4.5mmの口金を通して紡糸し、さらに56℃の温水中で冷却した。
【0051】
次に、この未延伸糸を65℃の温水延伸浴中で3.5倍に一段目延伸し、さらに130℃の乾熱浴中で1.29倍に二段目延伸(全延伸倍率4.5倍)してモノフィラメントを得た。
【0052】
引き続いて、130℃の乾熱浴中に0.90倍で通過させて熱処理を施すことにより、直径1.25mmのモノフィラメントを得た。
【0053】
得られたモノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表1に示す。
【0054】
[比較例2]
実施例1で用いたポリエチレンテレフタレート単独としたこと以外は実施例1と同様にして、直径1.25mmのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表1に示す。
【0055】
[比較例3]
実施例1において、芯部ポリマーと鞘部ポリマーを逆に入れ替えたこと以外は実施例1と同様にして、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表1に示す。
【0056】
[比較例4]
実施例2において、芯部ポリマーと鞘部ポリマーを逆に入れ替えたこと以外は実施例2と同様にして、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
[実施例3]
島部ポリマーをポリプロピレンテレフタレート(シェルジャパン製コルテラ、ブライトタイプ、〔η〕=1.23)とし、海部ポリマーをポリエチレンテレフタレート(三井化学製J−055、ブライトタイプ、〔η〕=1.40)として、かつ島部(島の数が3)/海部の重量比率が30/70となるように、エクストルーダー型複合紡糸機で290℃で溶融し、孔径4.5mmの口金を通して紡糸し、さらに70℃の温水浴中で冷却した。
【0059】
次に、この未延伸糸を93℃の温水延伸浴中で3.0倍に一段目延伸し、さらに200℃乾熱浴中で1.85倍に二段目延伸(全延伸倍率5.55倍)して複合モノフィラメントを得た。
【0060】
引き続いて、250℃の乾熱浴中に0.95倍で通過させて熱処理を行うことにより、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。
【0061】
得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表2に示す。
【0062】
[実施例4]
実施例3において、島部ポリマー/海部ポリマーの重量比率を50/50に変更してこと以外は実施例3と同様にして、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。
【0063】
得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表2に示す。
【0064】
[比較例5]
実施例3において、島部ポリマーと海部ポリマーを逆に入れ替えたこと以外は実施例3と同様にして、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。
【0065】
得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表2示す。
【0066】
[比較例6]
実施例4において、島部ポリマーと海部ポリマーを逆に入れ替えたこと以外は実施例4と同様にして、直径1.25mmの複合モノフィラメントを得た。
【0067】
得られた複合モノフィラメントおよびそれを用いたラケット用ガットの評価結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表1および表2の結果から明らかなように、本発明のポリエステル系複合モノフィラメント(実施例1〜4)は、いずれも高い引張強度を維持しながら、従来にない高い伸長弾性回復率を有する。そして本発明のポリエステル系複合モノフィラメントを用いたラケット用ガットは、耐久性に優れ、かつラケットに張設後の面圧保持性に優れることから弛みが少ないというラケット用ガットとしての理想的な性能を発揮する。
【0070】
一方、PPT単独のモノフィラメント(比較例1)は、伸長弾性回復率には優れるが、強度が低いため、これを用いたラケット用ガットは、面圧保持性には優れるが耐久性が劣り、ガット用モノフィラメントとしては実用的ではない。
【0071】
また、PET単独のモノフィラメント(比較例2)は、引張強度には優れるが、伸長弾性回復率が低いため、これを用いたラケット用ガットは、耐久性には優れるが面圧保持性が劣り、本発明の目的を満足するものではない。
【0072】
さらに、本発明の芯部ポリマーと鞘部ポリマーまたは島部ポリマーと海部ポリマーを逆に入れ替えたポリエステル系複合モノフィラメント(比較例3、4、5、6)は、表面に毛羽が発生し、モノフィラメントの物性およびガットの特性が本発明の目的とする効果を満たすものではなかった。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントは、高い引張強度と耐摩耗性を維持しつつ、従来にない高い伸長弾性回復率を有することから、各種産業資材用途、水産資材用途、特に釣糸および楽器弦などを代表とするスポーツレジャー用途などに広く使用することができ、なかでもテニス、バトミントンおよびスカッシュなどのスポーツラケット用ガットとして最適な性能を有している。
【0074】
また、本発明のポリエステル系複合モノフィラメントからなるラケット用ガットは、優れた耐久性を維持しつつ、天然ガットの優れた打球性とガット張設後の面圧保持性を併せ持つという理想的な性能を発現する。
Claims (6)
- 芯部と鞘部の少なくとも2層構造からなり、芯部ポリマーをプロピレンテレフタレート単位を85重量%以上含有するポリプロピレンテレフタレートまたはポリプロピレンテレフタレート共重合体から構成し、鞘部ポリマーをエチレンテレフタレート単位を85重量%以上含有するポリエチレンテフタレートまたはポリエチレンテレフタレート共重合体から構成したことを特徴とするポリエステル系複合モノフィラメント。
- 島の数が2個以上の海島構造からなり、島部ポリマーをプロピレンテレフタレート単位を85重量%以上含有するポリプロピレンテレフタレートまたはポリプロピレンテレフタレート共重合体から構成し、海部ポリマーをエチレンテレフタレート単位を85重量%以上含有するポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレート共重合体から構成したことを特徴とするポリエステル系複合モノフィラメント。
- 直径が0.1〜1.5mmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル系複合モノフィラメント。
- 芯部:鞘部の重量比または島部:海部の重量比が10:90〜60:40の範囲にあり、かつ引張強度が3cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル系複合モノフィラメント。
- 芯部:鞘部の重量比または島部:海部の重量比が20:80〜35:65の範囲にあり、かつ引張強度が3.5cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル系複合モノフィラメント。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステル系複合モノフィラメントからなることを特徴とするラケット用ガット。
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