JP2013214845A - 探触子、及びそれを用いた被検体情報取得装置 - Google Patents

探触子、及びそれを用いた被検体情報取得装置 Download PDF

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Abstract

【課題】光反射層のピンホールやキズを介して音響媒体が光反射部材の支持層に浸透することが抑制されてソルベントクラックの発生が抑えられ、受信面上で発生する光音響波によるノイズを抑えられる探触子を提供する。
【解決手段】探触子は、間隙を挟んで設けられた2つの電極のうちの一方の電極を含む振動膜が振動可能に支持されたセル構造を少なくとも1つ含む素子を備える。探触子は、振動膜上に配置された支持層103と支持層103上に配置された光反射層104を有し、光反射層104の上に音響媒体100に対する保護層105が形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、被検体に照射された光に起因して該被検体から発生する光音響波を受信するための光音響探触子などとして使用され静電容量型の電気機械変換装置等を備える探触子、それを用いた被検体情報取得装置等に関する。
従来の超音波探触子では、圧電材料からなるトランスデューサ(つまり電気機械変換装置)を用いたものが使用されてきたが、近年では、半導体プロセスを用いて製造される静電容量型超音波トランスデューサ(CMUT:Capacitive Micromachined Ultrasonic
Transducer)が注目されている。静電容量型超音波トランスデューサは、例えば、空隙のある2つの平行平板電極をセル(キャビティ)構造とし、一方の振動可能な振動膜(メンブレン)を振動させることにより、音響波の送受信が可能である。特に音響媒体中においては優れた広帯域特性を容易に得ることができる。本明細書において、音響波とは、音波、超音波、光音響波と呼ばれるものを含む。例えば、被検体内部に可視光線や赤外線等の光(電磁波)を照射して被検体内部で発生する光音響波を含む。
上記の如き技術状況で、特許文献1では、光音響波を受信する探触子おいて、被検体に照射された光を反射するための光反射部材が、探触子の受信面より大きく設定されている構成が提案されている。特許文献2では、振動膜に保護層を有する静電容量型の超音波探触子が提案されている。本探触では、上部電極上に保護層を有する構造となっており、保護層材料として絶縁性の有機物が配置される構成である。尚、本明細書では、メンブレン部分の振動膜と上部電極部分をあわせて振動膜と表現する場合もある。
特開2010-075681号公報 特開2009-272824号公報
静電容量型光音響探触子において、光音響波を発生させるための光が探触子に入射すると、探触子の受信面で光音響波が発生しノイズとなるため、受信面に光が入らないように光反射層が必要となる。ただし、光反射層を形成することによって探触子中の電気機械変換装置の振動膜のばね定数や変形量にばらつきを生じさせてはならない。そのため、振動膜上に直接光反射層を形成せずに支持層上に光反射層を形成し、振動膜と光反射層付きの支持層とを接着させる。この場合、振動膜と光反射層付きの支持層とを音響整合層(振動膜と支持層との音響インピーダンスを整合させる為の層)を介して接着させることがより好ましい。
しかしながら、振動膜と光反射層付きの支持層とを音響整合層を介して積層した探触子を音響媒体中で使用する場合、支持層に応力が印加されるためソルベントクラックが発生することがある。ソルベントクラックの発生によって光反射層付きの支持層に亀裂が発生し、亀裂の間から光が入射され、光音響波が発生してノイズが増加するといったことがある。ソルベントクラックとは環境応力亀裂とも呼ばれており、応力と環境要因(化学薬品)の作用でクラックが発生する現象として知られている。実用的には、溶剤だけでなく、油、界面活性剤、その他の化学薬品などでも同様の作用をするものがある。
上記構成の探触子では、振動膜と光反射層付きの支持層とを音響整合層を介して形成する場合に接着材などを用いるため、支持層に応力が印加されてしまうことになる。また、光反射層は光音響波を透過させる必要があるため、薄い膜が好ましいが、形成時にピンホールなどが発生してしまうことがある。さらに、探触子の作製時の不注意や、探触子を走査しながら被検体を測定するのに起因して、光反射層にキズが生じてしまうことがある。
このように、光反射層にピンホールやキズが生じた探触子を音響媒体中で使用すると、応力が印加されている支持層に音響媒体が浸透しソルベントクラックが発生する懸念がある。また、ソルベントクラックの発生によって光反射層のピンホールやキズがさらに大きく成長し、光の透過量が増えて探触子の受信面上で光音響波が発生するため、ノイズが増加してしまう懸念がある。
上記課題を解決するための本発明の探触子は、間隙を挟んで設けられた2つの電極のうちの一方の電極を含む振動膜が振動可能に支持されたセル構造を少なくとも1つ含む素子を備え、振動膜上に配置された支持層と該支持層上に配置された光反射層を有する。そして、光反射層の上に音響媒体に対する保護層が形成されている。
本発明の探触子は、光反射層上に音響媒体に対する保護層を有している。従って、光反射層のピンホールやキズを介して音響媒体が支持層に浸透することが抑制され、ソルベントクラックの発生が抑えられる。これにより、光反射層にピンホールやキズがあっても光反射層のキズ等の進行を防ぐことができ、探触子の受信面で光音響波が発生することによるノイズの増加を防ぐことができる。また、探触子を走査しながら被検体を測定する場合でも、保護層を形成することで光反射層に新たにキズが生じることが抑制され、支持層のソルベントクラックの発生を抑えることができる。
本発明の光音響探触子を説明するための断面図である。 本発明の実施例1の光音響探触子の断面図である。 本発明の実施例2の光音響探触子の断面図である。 (a)は静電容量型電気機械変換装置を用いる探触子の上面図、(b)は静電容量型電気機械変換装置(犠牲層型)を用いる探触子のA−B断面図。 静電容量型電気機械変換装置(接合型)を用いる探触子の断面図。 本発明の実施例2の光音響探触子の断面図である。 本発明の探触子を用いる被検体情報取得装置を示す図。
本発明の探触子の特徴は、音響波受信面であるセル構造の振動膜上に、支持層と該支持層上に配置された光反射層を有し、光反射層の上に、音響媒体に対する保護層が形成されていることである。探触子は、光反射層と被検体との間に音響媒体を介して被検体に対して静止または移動させて使用される。セル構造は、例えば、基板と接して形成された第一の電極の上に間隙を介して形成された第二の電極と、第二の電極を備える振動膜と、第一の電極と振動膜との間に間隙が形成されるように振動膜を支持する振動膜支持部と、で構成される。セル構造は、所謂犠牲層型、接合型の製法などで作製することができる。後述の図4の例は犠牲層型の製法で作製することができる構造を有し、後述の図5の例は接合型の製法で作製することができる構造を有する。本発明の探触子と光源とデータ処理装置を用いて被検体情報取得装置を構成することができ、ここでは、探触子は、光源から出射した光が被検体に照射されることにより発生する音響波を受信して電気信号に変換し、データ処理装置は、電気信号を用いて被検体の画像データを生成する。
以下、本発明の実施形態を説明する。図4に、セル構造を複数含む素子(エレメント)を有した静電容量型の電気機械変換装置の一例を示す。本実施形態の探触子は、電気機械変換装置と筐体11(図1参照)とを少なくとも備える。図4(a)は上面図を示し、図4(b)は、図4(a)のA−B断面図である。本電気機械変換装置は、セル構造7を有する素子8を複数個有している。図4では、4個の素子8がそれぞれ9個のセル構造7を有しているが、それぞれが幾つであっても構わない。
本実施形態のセル構造7は、図4(b)に示す様に、基板1、第一の電極2、第一の電極2上の絶縁膜3、空隙などである間隙5、振動膜4、振動膜4上の第二の電極6で構成されている。セル構造では、間隙を挟んで設けられた2つの電極のうちの一方の電極を含む振動膜が振動可能に支持されている。基板1は、Siで構成されているが、ガラスなどの絶縁性基板を用いても構わない。第一の電極2はチタンやアルミニウムなどの金属薄膜で形成される。基板1を低抵抗のシリコンで形成する場合には、それ自体を第一の電極2とすることも可能である。絶縁膜3は、酸化シリコンなどの薄膜を堆積することで形成できる。振動膜4やそれを支持する部分である振動膜支持部9は、窒化シリコンなどの薄膜を堆積することで形成される。第二の電極6は、チタンやアルミニウムなどの金属薄膜で構成することができる。また、図4において、10は音響整合層、11は光反射部材、12は保護層である。これらについては、後述する。
本実施形態の電気機械変換装置は、接合型の製法を用いても形成することができる。図5に示す接合型の構成でのセル構造7は、シリコン基板1の上に、空隙などの間隙5、振動膜4、振動膜支持部9、第二の電極6を設けることで構成される。ここでは、低抵抗のシリコン基板1が、第一の電極を兼ねているが、基板として、絶縁性のガラス基板を用いることも可能であり、その場合は基板1上に第一の電極2となる金属薄膜(チタン、アルミニウムなど)を形成する。振動膜4は、接合されたシリコン基板などから形成される。ここでは、振動膜支持部9は、酸化シリコンから形成されるが、窒化シリコンなどの薄膜を堆積形成することも可能である。第二の電極6は、アルミニウムなどの金属薄膜で形成される。
本実施形態の探触子の駆動原理を説明する。セル構造は、間隙5を挟んで設けられた第一の電極2と振動膜とで形成されているので、音響波を受信するためには、第一の電極2もしくは第二の電極6に直流電圧を印加する。音響波を受信すると、振動膜が変形して間隙の距離(高さ)が変化するため、電極間の静電容量が変化する。この静電容量変化を第一の電極2もしくは第二の電極6から検出することで、音響波を検出することができる。また、素子は、第一の電極2もしくは第二の電極6に交流電圧を印加して振動膜を振動させることで、音響波を送信することもできる。
次に、本実施形態の光音響探触子の振動膜上の層構成について図1で説明する。探触子は、受信部を有する光音響探触子基板101上に、音響整合層102、支持層103、光反射層104、保護層105を積層した構成になっている。支持層103と光反射層104で光反射部材が構成される。保護層105は光音響波を伝達する音響媒体100と接触している。音響媒体100は、ひまし油、DIDS(セバシン酸ジイソデシルエステル)、ポリエチレングリコール、エタノール、生理食塩水、水など、光音響波を伝搬可能な材料を用いることができる。探触子基板101は、上述した様に、単結晶シリコン基板上に形成されたキャビティ上に単結晶シリコンや窒化シリコンなどからなるメンブレン(振動膜)を備えた受信部や電極などで構成されている。
音響整合層102は、受信部のメンブレン上に形成される。音響整合層102としては、メンブレンのばね定数などの機械特性を大きく変化させないようなヤング率の小さいものが好ましい。具体的には、ヤング率が0MPa以上100MPa以下がよい。100MPa以下のヤング率を有することにより、光反射層104の応力による振動膜への影響を緩和し、且つ、剛性(ヤング率)も十分に小さいため、振動膜7の機械特性をほぼ変化させない。さらに、音響整合層102は、その音響インピーダンスがメンブレンと同程度の材料が好ましい。具体的には、音響インピーダンスが1MRayls以上2MRayls以下であることが好ましい。音響整合層102の材料としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を架橋させたシリコンゴムを用いることができる。PDMSはヤング率が1MPa程度と小さく、また、音響インピーダンスも1MRayls〜2MRayls(1MRayls=1×10kg・m-2・s-1であり、以下では、MRaylsを用いる)とメンブレンの音響インピーダンスと同程度である。よって、振動膜と音響整合層102との界面での音響波の反射を抑制できる。PDMSはシリカ粒子等を添加することで音響インピーダンスを調整することができる。そのため、使用する目的の材料に応じて音響インピーダンスを調整し、効率良く光音響波を受信することができる。
光反射層104は、被検体から光音響波を発生させるための光を反射するための膜であり、使用する光の波長領域(例えば700nm〜1000nm近辺)において高反射率の材料を用いることができる。反射率は、使用する光の波長領域において80%以上であることが望ましく、90%以上であることがより好ましい。例えば、Au、Ag、Alあるいはこれらを含む合金などの金属薄膜を用いることができる。また、光反射層104の厚みとしては、10μm以下であることが好ましい。Auを用いる場合、Auの音響インピーダンスは約63MRaylsと高く、音響インピーダンスの不整合による超音波の反射を防ぐためには十分薄くする必要がある。Auの薄膜を形成するには、蒸着やスパッタリングなどの薄膜形成方法を用いることができるが、この限りではなく、従来の公知の方法を用いることができる。蒸着やスパッタリングで形成する場合には、Auの膜厚は0.05μm〜0.2μmの範囲にあればよい。金属薄膜の上に誘電体多層膜を形成し、さらに反射率を増加させることもできる。また、誘電体多層膜を光反射層として用いることもできる。
光反射層104は、光音響波を透過させる必要があるため膜厚が薄い膜が好ましいが、蒸着やスパッタリングを用いて光反射層を形成する場合には、製法上ピンホールなどが発生してしまうことがある。さらに、光音響探触子を走査しながら被検体を測定する場合には、膜厚が薄いため光反射層にキズが生じやすい。光反射層104は、音響整合層102の上に直接形成することもできるが、支持層103上に形成するのがより好ましい。なぜなら、音響整合層102はヤング率が小さい材料であるため、光反射層104を直接音響整合層に形成した場合には、光反射層の応力で音響整合層が変形する可能性があるからである。また、音響整合層102はヤング率が小さい材料であるため、表面粗さを小さくすることが難しく、音響整合層上の光反射層の反射率を高くすることが難しい。そのため、光反射層104は音響整合層102よりも剛性の高い支持層103上に形成するのが好ましい。支持層103の材料としては、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、パラキシリレン樹脂などの何れかを主成分とする樹脂フィルムを用いることができる。これらの支持層103は、音響インピーダンスの不整合による超音波の反射を防ぐために、音響インピーダンスが音響整合層102と近いことが好ましい。具体的には支持層103のヤング率は、100MPa以上20GPa以下が望ましい。また、音響インピーダンスは1MRayls以上5MRayls以下程度がよい。支持層103の音響インピーダンスを音響整合層102の音響インピーダンスの値に近くすることによって、支持層103と音響整合層102との界面での音響波の反射量を低減することができる。
例えば、音響整合層102にPDMSを用いる場合には、支持層103にオレフィン樹脂を用いることが好ましく、その中でもポリメチルペンテン樹脂をより好適に用いることができる。この場合、PDMSは超音波探触子基板101と支持層103との接着層として機能することもできるが、その限りではなく、接着剤を用いてこれらを接着することもできる。ただし、超音波探触子基板101と支持層103を、音響整合層102や接着材料を介して接着させる場合、支持層103に応力が印加されてしまうことがある。そのため、光反射層104の上に保護層105を形成することによって、光反射層の形成時のピンホールやキズがあっても音響媒体が支持層に浸透するのを防ぐのである。また、保護層105を形成することによって、光音響探触子を走査して使用するときに光反射層にキズが発生するのを防ぐことができる。つまり、本発明の保護層105は、光反射層104の上に形成され、音響媒体100が浸透(透過)しにくい膜である。保護層105は、光反射層104よりも音響媒体100の透過率が低いことが好ましい。具体的には、音響媒体の透過率が、10−3g/(m・day)以下であることがより好ましく、10−5g/(m・day)以下であることがさらに好ましい。こうして、光反射層のキズを増やさないとともに、光反射層にピンホールやキズがあっても亀裂の進行を防ぐことができ、ノイズの増加を防ぐことができる。
また、保護層105の音響媒体100に対する膨潤度(乾燥状態から水分を吸収して体積が膨張する特性の度合い)が大きい場合には、音響媒体が支持層103に浸透しやすく、支持層に残留応力がある状態において、クラックが発生しやすい。そこで、ソルベントクラックを生じさせないより好ましい条件として、保護層105の音響媒体100に対する膨潤度が、支持層103の音響媒体100に対する膨潤度と同等ないし小さいのが好ましい。つまり、保護層105の音響媒体100に対する膨潤度が、支持層103の膨潤度以下であることが好ましい。具体的には、保護層105を音響媒体中に浸漬した場合の、保護層105の質量変化率が1%以下であることが好ましい。さらに、保護層105は、その内部応力または保護層105にかかる応力が、支持層103にかかる応力よりも小さくなるように形成されるのが好ましい。保護層105にかかる応力を、より小さくすることでソルベントクラックの発生率を低下させることができる。保護層105にかかる応力は、音響媒体に対して、クラックが発生するクラック応力限界未満にすることがより好ましい。また、保護層105の膜厚は、10μm以下であることが好ましい。
さらに、保護層105は、光音響波を透過し、且つ、使用する光の波長領域(例えば700nmから800nm)において光透過率が85%以上であることが好ましい。例えば、保護層105の材料としてオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、パラキシリレン樹脂などを用いて形成することができる。これらの樹脂を形成する方法として、ディップコート、スピンコーティング、ゾル‐ゲル法、スプレー法、化学蒸着法などがあるが、これらに限らず公知の作製方法を用いることができる。保護層105を低応力で形成する方法として、化学蒸着法によってパラキシリレンを形成することが好ましい。化学蒸着法を用いることでパラキシリレン樹脂を、光反射層104上にコンフォーマル、且つ、ピンホールフリーの低応力薄膜として形成することができる。化学蒸着法を用いたパラキシリレン樹脂は、膜厚を数μmで形成することができ、光音響波の減衰が少ない。また、パラキシリレン樹脂は分子量が約50万の高分子膜であるため、音響媒体に対する膨潤度も小さい。
このように、本実施形態の光音響探触子は、光反射層の上に保護層を形成することによって、光反射層の形成時のピンホールやキズがあっても音響媒体が支持層に浸透するのを防ぐことができる。また、保護層を形成することによって探触子を走査して使用するときに光反射層にキズが発生するのを防ぐことができる。従って、光反射層のピンホールやキズを介して音響媒体が支持層に浸透するのを抑えられ、ソルベントクラックの発生が抑制される。さらに、支持層よりも低応力、且つ、支持層の音響媒体に対する膨潤度よりも小さい膨潤度の保護層を光反射層上に形成することが望ましく、こうすることで、よりソルベントクラックの発生を抑えることができる。その結果、光反射層上のキズを増やさないとともに、光反射層上にピンホールやキズがあっても亀裂の進行を防ぐことができ、光音響波のノイズの増加を防ぐことができる。
以下、実施例を説明する。
(実施例1)
図2を用いて、本発明の探触子の実施例1を説明する。本実施例では、パリレンで保護層を形成する。探触子基板201は、単結晶シリコン基板上に形成されたキャビティ上に単結晶シリコンや窒化シリコンなどからなるメンブレンを備えた受信部や電極などで構成されている。探触子基板201はデバイスボード208に固定され、デバイスボード208上のパッド(図示せず)とワイヤーボンディングによって電気的にも接続されている。ワイヤーとパッドは封止材206によって保護されている。光音響波を受信する受信部は30mm×20mmの大きさで、2つの封止材206の間に形成されている。探触子基板201の受信部からの光音響波の受信信号は、フレキ基板209を通って回路210に接続されている。回路210を通った信号はケーブル212を通って、信号処理装置(図示せず)に接続されている。
探触子基板201上の音響整合層202は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いて形成されている。PDMSはヤング率が1MPa程度と小さく、また、音響インピーダンスも1MRayls〜2MRaylsと受信部のメンブレンの音響インピーダンスと同程度である。PDMSは、光反射層204が形成された支持層203と探触子基板201とを接着する材料としても機能する。PDMSの膜厚は薄すぎると接着力が下がるため、50μm〜500μmである。支持層203は、オレフィン樹脂の中のポリメチルペンテン樹脂を用い、膜厚は100μmである。ポリメチルペンテン樹脂は、PDMSよりも剛性が高く、光反射層204の応力で支持層203が変形しない様になっている。光反射層204はAu/Cr/SiO(厚さ=150nm/10nm/100nm)の3層構成である。SiOは溶剤などに対するバリア性を高めるためで、CrはAuとSiOの密着性を高めるために用いている。探触子基板201の受信面上以外の部分の支持層203は、筐体211と接着層207を介して接着されており、筐体211内に音響媒体200が侵入してくるのを防いでいる。
パラキシリレン樹脂(パリレン)の保護層205は、光反射層204上に化学蒸着法を用いて形成する。保護層205の膜厚は3μmである。化学蒸着法を用いてパラキシリレン樹脂を形成することにより、光反射層204上にコンフォーマルにピンホールフリーの低応力な膜を形成することができる。光反射層204が形成されたポリメチルペンテン樹脂の支持層203と探触子基板201とを、PDMSを用いて接着した場合、有限要素法による計算では60MPaの応力が支持層203に印加されている。しかし、パラキシリレン樹脂を、化学蒸着法を用いて形成した場合の応力は、数MPaであり、音響媒体200に対してソルベントクラックが発生しにくい。また、パラキシリレン樹脂は分子量が約50万の高分子膜であるため、音響媒体に対する保護層の膨潤度は、支持層203の膨潤度よりも小さい。
このように、実施例1の光音響探触子は、パラキシリレン樹脂の保護層205を形成することによって光反射層204上のピンホールやキズを介して音響媒体が支持層203に浸透することがなく、ソルベントクラックが発生しない。これにより、光反射層204にピンホールやキズがあっても亀裂の進行を防ぐことができ、ノイズを低減することができる。また、光音響探触子を走査しながら被検体を測定する場合でも、保護層205を形成することで新たに光反射層にキズが生じることがなく、ソルベントクラックの発生を抑え、低ノイズの光音響探触子を作製することができる。実施例1では、保護層205は一層としているが、この限りではなく、複数層でもよい。例えば、キズの防止に適した層とソルベントクラックを防止するのに適した層に分離し、機能別に複数の保護層を構成してもよい。
(実施例2)
図3を用いて、本発明の光音響探触子の実施例2を説明する。実施例2では、スプレー法によって保護層を形成する。実施例2は、上記実施例1とほぼ同様の構成である。図3において、図2で示す2百番台の数字と下2桁が同じ3百番台の数字は、図2で示す部分とそれぞれ同様な機能を有する部分を示す。本実施例では、保護層305の形成方法としてスプレー法を用いている。スプレー法によりポリウレタンを膜厚10μm以下で形成することができる。このような方法でも、実施例1と同様な効果を奏することができる。
(実施例3)
図6を用いて、本発明の光音響探触子の実施例3を説明する。本実施例の探触子は、図6で示す様な振動膜上の層構成を有する。探触子は、受信部を有する光音響探触子基板401上に、応力緩和や音響整合などの役割を有する応力緩和層402、支持層403、ガスバリア層404、光反射層405、保護層406を積層した構成になっている。応力緩和層402は、PDMSなどで形成され、例えば1.5MRayls程度の音響インピーダンスを有する。支持層403はポリメチルペンテン(TPX)等で形成され、例えば1.8MRayls程度の音響インピーダンスを有する。ガスバリア層404はSiOなどで形成され、ガスバリア性や耐湿性などを有する。光反射層405は、Au/Crなどで形成される。ガスバリア層404と光反射層405は薄いので、これらの音響インピーダンスは音響整合には殆ど関係しない。音響媒体400と接触する保護層406は、パラキシリレン系ポリマーであるパリレン等で形成され、例えば2.8MRayls程度の音響インピーダンスを有する。支持層とガスバリア層と光反射層で光反射部材が構成され、こうした構成によっても実施例1と同様な効果を奏することができる。
(実施例4)
上記実施形態や実施例で説明した電気機械変換装置を備える探触子は、音響波を用いた被検体情報取得装置に適用することができる。被検体からの音響波を電気機械変換装置で受信し、出力される電気信号を用い、光吸収係数などの被検体の光学特性値を反映した被検体情報を取得することができる。
図7は、光音響効果を利用した本実施例の被検体情報取得装置を示したものである。光源51から発生したパルス光52は、レンズ、ミラー、光ファイバー等の光学部材54を介して、被検体53に照射される。被検体53の内部にある光吸収体55は、パルス光のエネルギーを吸収し、音響波である光音響波56を発生する。電気機械変換装置を収納する筺体を備えるプローブ(探触子)57は、光音響波56を受信して電気信号に変換し、信号処理部59に出力する。信号処理部59は、入力された電気信号に対して、A/D変換や増幅等の信号処理を行い、データ処理部50へ出力する。データ処理部50は、入力された信号を用いて被検体情報(光吸収係数などの被検体の光学特性値を反映した被検体情報)を画像データとして取得する。表示部58は、データ処理部50から入力された画像データに基づいて、画像を表示する。なお、プローブは、機械的に走査するものであっても、医師や技師等のユーザが被検体に対して移動させるもの(ハンドヘルド型)であってもよい。
100:音響媒体、101:基板、102:音響整合層、103:支持層、104:光反射層、105:保護層

Claims (13)

  1. 間隙を挟んで設けられた2つの電極のうちの一方の電極を含む振動膜が振動可能に支持されたセル構造を少なくとも1つ含む素子を備え、前記振動膜上に配置された支持層と前記支持層上に配置された光反射層を有する探触子であって、
    前記光反射層の上に音響媒体に対する保護層が形成されていることを特徴とする探触子。
  2. 前記振動膜上に、該振動膜と前記支持層との音響インピーダンスを整合させるための音響整合層が形成され、前記支持層は前記音響整合層の上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の探触子。
  3. 前記保護層は、前記光反射層よりも前記音響媒体の透過率が低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の探触子。
  4. 前記保護層は、前記音響媒体に対する膨潤度が、前記支持層の膨潤度以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の探触子。
  5. 前記光反射層は、Au、Ag、Alあるいはこれらを含む金属薄膜からなり、その膜厚が0.05μm〜0.2μmの範囲にあることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の探触子。
  6. 前記支持層は、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、パラキシリレン樹脂の何れかを主成分とすることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の探触子。
  7. 前記音響媒体は、ひまし油、DIDS(セバシン酸ジイソデシルエステル)、ポリエチレングリコール、エタノール、生理食塩水、水の何れかであることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の探触子。
  8. 前記保護層は、前記音響媒体に対する膨潤度が、前記支持層のそれと同等ないし小さく、且つ、前記保護層の応力が、前記支持層の応力よりも小さいことを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の探触子。
  9. 前記保護層は、音響波を透過し、且つ、使用する光の波長領域での光透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の探触子。
  10. 前記保護層は、厚みが10μm以下であることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の探触子。
  11. 前記保護層は、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、パラキシリレン樹脂の何れかを主成分とすることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の探触子。
  12. 前記保護層は、化学蒸着法によって形成されていることを特徴とする請求項1から11の何れか1項に記載の探触子。
  13. 請求項1及至12の何れか1項に記載の探触子と、光源と、データ処理装置と、を有し、
    前記探触子は、前記光源から出射した光が被検体に照射されることにより発生する音響波を受信して電気信号に変換し、
    前記データ処理装置は、前記電気信号を用いて被検体の情報を取得することを特徴とする被検体情報取得装置。
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