以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。同一の構成要素には原則として同一の符号を付して、説明を省略する。本発明の一態様のプローブは光反射膜を備え、その光反射膜を配置する位置に着目している。なお、本明細書においては、説明の都合上、光吸収により発生する音響波を「光音響波」と表現し、素子から送信される音響波や該送信された音響波が反射して返ってきた反射波を「超音波」と表現する場合がある。
<第1の実施形態>
(プローブの構成)
本実施形態のプローブは、超音波の送信及び受信のうち少なくとも一方を行うことが可能であり、且つ、光音響波の受信を行うことが可能な、静電容量型トランスデューサの素子を備える。図1を用いて本実施形態のプローブの構成について説明する。図1は、本実施形態のプローブの断面の一部を示す模式図であり、プローブの外周側は省略している。
本実施形態のプローブは、素子チップ200、光反射膜202、音響レンズ201、を備える。素子チップ200は支持部材130上に設けられている。素子チップ200内のセルが備える第1の電極103は配線108を介して電極パッド110に電気的に接続されており、電極パッド110はワイヤー131によりフレキシブル配線基板120に接続されている。また、第2の電極102は配線107を介して電極パッド109に電気的に接続されており、電極パッド109はワイヤー131によりフレキシブル配線基板120に接続されている。
フレキシブル配線基板120は、絶縁層123と絶縁層124とに挟まれた導電層122と、導電層122に電気的に接続される電極パッド121と、を備える。素子チップ200の電極パッド110とフレキシブル配線基板120の電極パッド121とがワイヤー131により電気的に接続される。なお、図1では、第1の電極103用の導電層122と、第2の電極102用の導電層122と、はそれぞれ別々のフレキシブル配線基板120内に設けられているが、本実施形態は共通のフレキシブル配線基板120内に配置されていてもよい。つまり、第1の電極103用の導電層122と、第2の電極102用の導電層122と、が電気的に絶縁されていれば、1つのフレキシブル配線基板120内に第1の電極103用の導電層122と第2の電極102用の導電層122とが設けられていてもよい。なお、フレキシブル配線基板120内の導電層122は、直流電圧発生手段192(図12参照)や送受信回路191(図12参照)に接続されている。
(素子の構成)
素子チップ200は、1つ以上のセルを備える素子を有している。図12は1つのセルの拡大図である。セルは、間隙であるキャビティ105を介して設けられた一対の電極のうち一方の電極を含む振動膜が振動可能に支持された最小単位の構成である。図1では、第1の電極103と第2の電極102とがキャビティ105を介して設けられており、振動膜はメンブレン101と第2の電極102とを備える。振動膜は、振動膜支持部104により支持されている。
なお、素子とは、1つ以上のセルを備える電気的に独立した1つの構成単位を示す。つまり1つのセルを1つの容量と考えた場合、素子内の複数セルの容量は電気的に並列接続されており、この素子単位で信号の入力や出力が行われる。図1では、素子は4つのセルを備えているが、本実施形態のセルの個数は複数でもよく、いくつであっても構わない。
また図1では、素子は1つであるが、本実施形態の素子の個数は複数でもよく、いくつであっても構わない。素子を複数有する場合、素子同士は電気的に分離されている。具体的には、第1の電極103と第2の電極102とのうち少なくともいずれか一方が素子毎に電気的に分離される必要がある。素子毎に電気的に分離された電極は個別電極として機能する。個別電極は、送受信回路191(図12参照)に接続されており、素子毎に駆動したり、素子毎の出力を取り出すことができる。第1の電極103と第2の電極102とのうちの他方は、複数の素子間で電気的に接続された共通電極でもよく、素子毎に分離された個別電極でもよい。
また、振動膜は、図2ではメンブレン101と第2の電極102とから構成されているが、少なくとも第2の電極102を有し振動可能な構成であればよい。
また、本実施形態では、第1の電極103は基板上に直接設けられているが、基板との間に絶縁膜を介してもよい。また、第1の電極103上には絶縁膜が設けられてもよい。
素子が設けられる基板としては、シリコン基板、ガラス基板等を用いることができる。第1の電極103及び第2の電極102としては、チタン、アルミ等の金属や、アルミシリコン合金等を用いることができる。絶縁膜106及びメンブレン101は、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜等を用いることができる。また、セルは、犠牲層をエッチングすることによりキャビティを形成する犠牲層型や、SOI基板の活性層(表面シリコン層)をメンブレンとして用いる接合型等の公知の方法で作製することができる。
(素子の駆動原理)
本実施形態の素子の駆動原理を説明する。本実施形態のプローブは、光音響波の受信と、超音波の送信及び受信と、を行うことができる。ただし、超音波(反射波)の受信も光音響波も受信も基本的には同じ動作であるため、以下では、超音波の受信時の駆動方法と、超音波の送信の駆動方法と、に分けて説明する。
素子が超音波を受信する場合、第1の電極103と第2の電極102とを夫々所定の電圧値に固定し、第1及び第2の電極間に電位差を生じさせる。例えば、第1の電極103を共通電極とし、第2の電極102を個別電極とした場合、第1の電極103には直流電圧発生手段192から直流電圧Vaが印加され、第2の電極102はグランド電位Vgに固定された状態にする。なお、本発明においてグランド電位Vgとは、送受信回路191が有する直流の基準電位を示す。
これにより、第1及び第2の電極間にVbias=Va−Vgの電位差が発生する。この状態で超音波を受信すると、個別電極である第2の電極102を有する振動膜が振動するため、第2の電極102と第1の電極103との間の距離が変わり、静電容量が変化する。この静電容量変化によって、第2の電極102から素子毎に信号(電流)が出力される。
この電流が、フレキシブル配線基板120を介して送受信回路191に入力される。送受信回路は、電流を電圧に変換し、受信信号として外部の信号処理部に送信する。
一方、超音波を送信する場合は、第1の電極103と第2の電極102との間に電位差が発生させた状態で、送受信回路191から第2の電極102に送信信号である交流電圧やパルス電圧が供給される。もしくは、送受信回路から第2の電極102に直流電圧に交流電圧を重畳した電圧(つまり正負が反転しない交流電圧)が送信信号として供給される。この送信信号による静電気力によって振動膜が振動し、素子毎に独立して超音波を送信することができる。
尚、上記では、第1の電極103に直流電圧発生手段192が、第2の電極102に送受信回路191がそれぞれ接続されているが、第2の電極102に直流電圧発生手段192が、第1の電極103に送受信回路191がそれぞれ接続される構成でもよい。
(音響レンズ201)
本実施形態のプローブは、素子の上部(被検体側)に音響レンズ201を備える。音響レンズ201は、各素子から送信される超音波を集束させる(絞る)ことができ、送信超音波の中心軸付近の音圧を高めることができる。また、被検体内において送信超音波は反射され、戻ってきた反射波をプローブで受信する。その際、音響レンズ201を有しているので、送信超音波の中心軸付近から戻ってくる超音波の受信感度を、他の領域から戻ってくる超音波に比べて、高くすることができる。そのため、中心軸付近の検査対象(超音波による検査対象)に対する検出感度を、他の領域に比べて高くすることができるため、中心軸付近の分解能を高めることができる。
音響レンズ201の音響インピーダンスは生体に近いことが好ましく、1MRayls以上2MRayls以下であることが好ましい。さらには、1.5MRayls近傍(つまり1.5MRaylsに対して音響インピーダンスの差が±10%以下の範囲)であることがより好ましい。また、音響レンズ201の厚さは、必要なレンズの曲率により決まり、10μm以上1mm以下のものを用いることが一般的である。
また、本実施形態の音響レンズ201は、光音響発生のために使用される波長帯域の光に対して透明であることが好ましい。つまり使用される波長帯域の光を吸収せず透過させることが好ましい。具体的に、本実施形態の音響レンズ201は、光音響波発生のために使用される波長帯域の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
また、本実施形態の音響レンズ201は、使用される光の波長帯域において0.2mm−1未満の吸収係数である。これにより、音響レンズ201の厚さが0.5mmの時に吸収される光を20%程度に抑制することができる。また、本実施形態の音響レンズ205は、使用される光の波長帯域において0.1mm−1未満の吸収係数であることが好ましい。これにより音響レンズ201の厚さが0.5mmの時に吸収される光を10%程度に抑制することができる。
なお、使用する光の波長帯域として想定される600nmから1100nm程度の帯域に対して、被検体内の代表的な光吸収体(光音響での検査対象)であるヘモグロビンの吸収係数は0.3mm−1以上0.9mm−1以下である。この観点からも、音響レンズ201の吸収係数を0.2mm−1未満とすることにより、ヘモグロビンの吸収係数より小さくなるため好ましい。なお、光音響波発生のためには所定の波長にピークを持つレーザー光が用いられることが多いため、この場合、音響レンズ201の吸収係数は、そのピーク波長において0.2mm−1未満であることを示す。
また、本実施形態の音響レンズ201の吸収係数は、0.01mm−1未満であることがより好ましい。これにより音響レンズ201で吸収される光を1%未満程度に抑制することができる。なお、被検体として想定される生体(脂肪組織)の光吸収係数は、600nmから1100nmの光波長帯域において、0.005mm−1以上0.02mm−1以下程度である。この観点からも、音響レンズ201の光吸収係数を、被検体と同等もしくは同等以下の光吸収係数とすることで、検査対象である光吸収体からの光音響波に対して、ノイズ成分となる信号を低減することができる。
具体的な音響レンズ201の材料としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を主成分とした有機ポリマーを架橋したシリコーンゴムや樹脂が好ましい。PDMSにシリカ粒子等を添加したものや、PDMSの水素の一部をフッ素で置換したフロロシリコーンなどでもよい。ただし、一般的な超音波プローブに用いられるシリコーンゴムは白や灰色であり、ある程度光を吸収してしまう。このようなシリコーンゴムを音響レンズに用いると、音響レンズで光を吸収して光音響波を発生し、検査対象からの光音響波のノイズとなる可能性がある。よって、本実施形態のような光学特性の材料を用いることが好ましい。
(光反射膜202)
本実施形態では、素子チップ200上に音響マッチング層141が形成され、その上に素子を覆うように光反射膜202が配置されている。光反射膜202上には、接着層204が配置され、その上に音響レンズ201が配置されている。つまり、プローブは素子と音響レンズ201との間に光反射膜202を備える。
光反射膜202は、光音響波を発生させるために光源から照射される波長の光を反射することができる。そのため、音響レンズ201を透過して光反射膜202に到達した光を、光反射膜202で反射させることができ、光反射膜202での光音響波の発生や、素子での光音響波の発生を抑制することができる。また、光反射膜202で反射した光は、音響レンズ201を再び透過して、プローブの外に出て行く。そのため、被検体へ照射された光の一部がプローブ内に侵入してきても、プローブ内部での光音響波の発生を抑えることができる。
ここで、光反射膜202付近では音響インピーダンスのミスマッチが発生しやすい。光を反射するためには、光反射膜202はある程度の厚さが必要となるが、あまり厚くすると、超音波や光音響波を反射する可能性がある。そのため、光反射膜202の厚みは、光の波長以上、送受信する最大周波数の超音波の波長λの1/16以下が好ましい。さらには波長λの1/32以下が好ましい。
例えば、Auの場合、音響インピーダンスが約63×106[kg・m−2・s−1]であり、超音波の周波数が10MHz程度(波長が約150μm)であるため、Au膜の厚さは5μm以下であることが好ましい。また、光反射のためには500nm以上あることが好ましい。
また、本実施形態の光反射膜202は、音響レンズの下側(素子側)に設けられているため、素子チップの基板表面に対して平行になるように光反射膜202を配置することが可能となる。つまり、光反射膜202と素子との間隔が光反射膜の面内方向に均一になるように配置され得る。これにより面内の場所により音響マッチング層141の厚さばらつきが低減されるため、音響マッチング層141内での音響波の減衰特性を均一にすることができる。なお、平行とは、厳密に平行な場合だけでなく、送受信する最大周波数の超音波の波長λに対して無視できる程度の誤差を含む。具体的には、光反射膜202と素子との間隔の面内方向のばらつきが波長λの1/16未満の範囲の誤差を含む。より好ましくは面内方向のばらつきが波長λの1/32未満の範囲であるとよい。
また、素子の表面(振動膜上面)と光反射膜202との間隔は、超音波の波長λ(音響マッチング層141内での波長)に比べて、十分短くすることが望ましい。これは、光反射膜202で送信超音波が反射された場合においてもその反射波の受信信号が検査対象の受信信号に影響を与えることを低減するためである。この点についても本実施形態では、音響レンズ201よりも素子側に光反射膜202が設けられているため、素子と光反射膜202の距離を波長に比べて短くすることができる。
比較例として、図11に光反射膜182が音響レンズ181の被検体側の面に設けられている例を示す。図11で示すように、音響レンズ181の表面に光反射膜182を形成した場合は、素子から光反射膜182までの距離が、音響レンズ181の厚さ分だけ遠くなる。また、音響レンズ181は凸状であるため(つまりA≠B)であり、素子と光反射膜182と距離が面内方向に均一でなくなる。そのため、超音波の反射の影響が大きくなり、送受信特性が変化する可能性がある。
それに対して、本実施形態の構成では、図11での構成による課題が発生しにくく、光反射膜付近での超音波の反射による、送受信特性の変化が少なくなる。なお、本実施形態のように、光反射膜202を音響レンズ201より素子側に配置することができるのは、音響レンズ201を透明であることによる。
また、本実施形態の光反射膜202は、使用する波長帯域の光の反射率が80%以上であることが好ましく90%以上であることがより好ましい。また、光反射膜202は素子チップ200内の複数の素子を覆うように設けられていることが好ましい。つまり、素子が設けられた面(素子チップ200の基板表面)への正射影において、光反射膜202の正射影内に複数の素子の正射影が含まれるように光反射膜202が設けられていることが好ましい。
光反射膜202の材料としては、金属薄膜からなることが好ましく、Au、Ag、Al、Cuのうち少なくとも1つの元素を含む金属や、これらの合金を用いることができる。形成方法としては、蒸着もしくはスパッタリングを用いることができる。また、密着力を上げるためにCrやTiの下地層を設けてもよい。また、金属膜だけでなく、誘電体多層膜を用いることもできる。さらには、金属膜の上に誘電体多層膜を形成した積層構造とすることもできる。このような積層構造の場合、反射率を更に向上させることができるため好ましい。
本実施形態の光反射膜202は、素子チップ200上に音響マッチング層141を塗布し、硬化することにより形成し、その音響マッチング層141上に光反射膜202を成膜する方法で容易に形成することができる。続けて、光反射膜202に接着層204を介して音響レンズ201を貼り付ける。接着層204の硬化後の特性は、音響レンズ201と同様に、使用する光の波長を透過する特性を有するものを用いている。
音響マッチング層141は、周辺の部材や媒質と比べて、音響インピーダンスが大きく違いがなく、送受信特性に大きな影響を与えないものであれば用いることができる。具体的には、樹脂やシリコーンゴムなどを用いて、容易に構成することができる。また電気的に絶縁性であることが好ましい。具体的には、音響インピーダンスは1MRayls以上2MRayls以下であることが好ましい。より好ましくは1.5MRayls±0.1MRaylsの範囲である。音響マッチング層141としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を主成分とした有機ポリマーを架橋したシリコーンゴムが好ましい。PDMSにシリカ粒子等を添加したものや、PDMSの水素の一部をフッ素で置換したフロロシリコーンなどでもよい。その厚さは10μm以上900μm以下が好ましい。厚さを10μm以上とすることで、PDMSと素子チップ200との間の接着力を十分に確保することができる。また、振動膜の変形量やバネ定数などの機械特性を大きく変化させないよう、音響マッチング層141のヤング率は10MPa以下であることが好ましい。
また、接着層204は、音響レンズ201と音響インピーダンスが十分近いもの(音響インピーダンスの差が±30%以下であることが好ましい)を用いることができる。具体的には、樹脂やシリコーンゴムなどを用いて、容易に構成することができる。また、音響レンズ201の音響インピーダンスと異なっていたとしても、接着層204の厚さを超音波の波長λより十分小さくすることで、送受信特性へほとんど影響を与えないようにして、用いることもできる。具体的に接着層204の厚さは、波長λの1/8以下が好ましく、波長λの1/16以下がより好ましい。
以上説明したように、本実施形態のプローブにより、超音波の送受信特性への影響を低減し、入射する光によるノイズの発生を抑制することができるプローブを提供することができる。なお、本実施形態のプローブは、光音響波の受信及び、超音波の送信及び受信を行うことができる。図9及び図10を用いて後述するが、本実施形態のプローブは、音響波を受信することにより被検体内の情報を取得する被検体情報取得装置に適用することができる。
被検体情報取得装置は、光照射により発生する光音響波の受信信号を用いて、被検体内の複数位置のそれぞれに対応する特性値を示す特性情報を取得することができる。光音響波により取得される特性情報は、光エネルギーの吸収率を反映している。また、被検体情報取得装置は、送信された超音波が反射されて戻ってきた反射波の受信信号を用いて、被検体内の音響インピーダンスの差を反映した特性情報を取得することができる。
本実施形態のプローブが適用される被検体情報取得装置において用いられる光は、被検体や検査対象に応じて所望の波長の光を用いるとよい。光音響での検査対象をヘモグロビン等の生体内の物質とする場合は、600nm以上1100nm以下の波長帯域のパルスレーザー光であることが好ましい。
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、素子と音響レンズ201との間の構成が第1の実施形態と異なる。本実施形態では、光反射膜202が音響レンズ201に直接形成されている点が特徴である。よって、第1の実施形態と同じ部分については説明を省略し、第1の実施形態とは違う部分について詳細に説明する。
図2は、本実施形態のプローブの断面を示す模式図である。本実施形態では、光反射膜202を、音響レンズ201の素子チップ200側の面に、接着剤を介さずに直接配置している。光反射膜202が形成された音響レンズ201は、音響マッチング層142を介して、素子チップ200上に配置されている。
本実施形態の光反射膜202は、音響レンズ201の素子チップ200側の面(裏面)に、金属等の光反射膜を成膜することで、容易に形成することができる。その際、音響レンズ201と光反射膜202の密着性を上げるために、音響レンズ201の裏面に、超音波の送受信特性に影響を与えない程度に密着性を向上させるため、表面の活性化やごく薄い膜を形成する処理を行ってもよい。光反射膜202の材料は、第1の実施形態と同様の材料を用いることができる。
また、本実施形態の音響マッチング層142は、第1の実施形態の音響マッチング層141と同様に周辺の部材や媒質と比べて、音響インピーダンスが大きく違いがなく、送受信特性に大きな影響を与えないものである。さらに本実施形態の音響マッチング層142は、素子チップ200と音響レンズ201とを接着できる接着層として機能するものである。たとえば、シリコーン接着材などにより、容易に構成することができる。音響マッチング層142の厚さは、超音波の波長λより十分小さくすることが望ましい。具体的に音響マッチング層142の厚さは、波長λの1/8以下が好ましく、波長λの1/16以下がより好ましい。また、音響マッチング層142は、電気的に絶縁性を持った材料である方が望ましい。ただし、素子チップ200上に形成した素子の表面に絶縁膜などを備えており、電極パッド109、110、電極パッド121やワイヤー131が絶縁材料で封止されている構成であれば、必ずしも絶縁性材料である必要はない。
本実施形態の構成の場合、音響レンズ201の素子チップ200側の面に直接光反射膜202を成膜するため、音響レンズ201と光反射膜202との間に接着層を配置する必要がなくなる。そのため、接着層が不要になる分、透過率の低下と、音響特性への影響を無くすことができるため好ましい。また、第1の実施形態の素子チップ上に形成した凹凸のある素子チップ200上に絶縁膜を介して形成する場合に比べて、より平たんな面上に光反射膜202を形成することができる。そのため、光反射膜202の特性がより良く、且つ光反射膜202と素子との間の距離が面内方向により均一な構成となる。また、第1の実施形態に比べて、構成要素を減らすことができるため、製造工程も簡略化することができるため好ましい。
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、素子と音響レンズ201との間の構成が第1及び第2の実施形態と異なる。本実施形態では、光反射膜202が支持層としてフィルム203上に形成されている点が特徴である。第1又は第2の実施形態と同じ部分については説明を省略する。
図3は、本実施形態のプローブの断面を示す模式図である。本実施形態では、素子チップ200上に音響マッチング層142が配置され、その上にフィルム203、さらにこのフィルム203上に光反射膜202が形成されている。光反射膜202の上には、接着層204を介して、音響レンズ201が配置された構成になっている。
本実施形態は、光反射膜202の支持層として、延伸法を用いて製膜した平坦性が良いフィルム203を用い、このフィルム上に光反射膜202を形成する。この場合、延伸法を用いて製膜したフィルムは厚さばらつきを±10%以下にすることができるため、光反射膜202の厚さが薄くても平坦性が高いため反射率を高めることができる。また、光反射膜202をより薄くすることができるため、送受信特性に与える影響を更に小さくすることができる。また、このフィルムの効果としては平坦性に限らずない。例えば、光反射膜202を音響マッチング層142に形成する場合よりも、光反射膜202が撓んだり変形したりすることを抑制する効果もある。この場合、フィルムは音響マッチング層142よりもヤング率が大きいことが好ましい。具体的には、ヤング率は100MPa以上20GPa以下が好ましい。また、フィルムの音響インピーダンスは、音響マッチング層142や音響レンズ201に近いことが好ましく、具体的には音響インピーダンスが1MRayls以上5MRayls以下であることが好ましく、1MRayls以上3MRayls以下であることがより好ましい。
本実施形態のフィルムは203、フィルム203上に光反射膜202を直接形成できるものであれば用いることができる。フィルムの材質は、PET、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを用いることができる。フィルムの厚さは、1ミクロンから30ミクロン程度のものを用いることができる。
光反射膜202はあらかじめフィルム203に形成しておき、光反射膜202が形成された後のフィルム203は、音響マッチング層142を介して、素子チップ200上に接着することで容易に配置することができる。その後、フィルム203の光反射膜202を形成した側は、接着層204により音響レンズ201と接着される。
また、本実施形態では、光反射膜202を形成したフィルム203を設けるため、フレキシブル配線基板120や、素子チップ200の端部も、効率良く光反射膜202で覆うことができるため好ましい。
<第4の実施形態>
第4の実施形態は、音響レンズ201の代わりに保護層205を備えていることが特徴である。それ以外は、第1から第3の何れかの実施形態と同じである。第1から第3の実施形態の何れかと同じ部分については説明を省略する。
図4は、本実施形態のプローブの断面の模式図である。本実施形態では、素子チップ200の表面側に、音響レンズ201の代わりに保護層205が配置されている。保護層205の音響インピーダンスは被検体や周囲の媒体に近いことが好ましく、1MRayls以上2MRayls以下であることが好ましい。さらには、1.5MRayls近傍(つまり1.5MRaylsに対して音響インピーダンスの差が±10%以下の範囲)であることがより好ましい。
また、本実施形態の保護層205は、光音響発生のために使用される波長帯域の光に対して透明であることが好ましい。つまり使用される波長帯域の光を吸収せず透過させることが好ましい。具体的に、本実施形態の保護層205は、光音響波発生のために使用される波長帯域の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
また、本実施形態の保護層205は、使用される光の波長帯域において0.2mm−1未満の吸収係数である。これにより、保護層205の厚さが0.5mmの時に吸収される光を20%程度に抑制することができる。また、本実施形態の保護層205は、使用される光の波長帯域において0.1mm−1未満の吸収係数であることが好ましい。これにより保護層205の厚さが0.5mmの時に吸収される光を10%程度に抑制することができる。
なお、使用する光の波長帯域として想定される600nmから1100nm程度の光波長帯域に対して、被検体内の代表的な光吸収体(光音響での検査対象)であるヘモグロビンの吸収係数は0.3mm−1以上0.9mm−1以下である。この観点からも、保護層205の吸収係数を0.2mm−1未満とすることにより、ヘモグロビンの吸収係数より小さくなるため好ましい。なお、光音響波発生のためには所定の波長にピークを持つレーザー光が用いられることが多いため、この場合、保護層205の吸収係数は、そのピーク波長において0.2mm−1未満であることを示す。
また、本実施形態の保護層205の吸収係数は、0.01mm−1未満であることがより好ましい。これにより保護層205で吸収される光を1%未満程度に抑制することができる。なお、被検体として想定される生体(脂肪組織)の光吸収係数は、600nmから1100nmの光波長帯域において、0.005mm−1以上0.02mm−1以下程度である。この観点からも、保護層205の光吸収係数を、被検体と同等もしくは同等以下の光吸収係数とすることで、検査対象である光吸収体からの光音響波に対して、ノイズ成分となる信号を低減することができる。
具体的な保護層205の材料としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を主成分とした有機ポリマーを架橋したシリコーンゴムや樹脂が好ましい。PDMSにシリカ粒子等を添加したものや、PDMSの水素の一部をフッ素で置換したフロロシリコーンなどでもよい。PET、ポリプロピレン、ポリエチレンなど等の樹脂でもよい。
本実施形態のように表面に保護層205を備えていることにより、光反射膜202に傷をつくことを避けることができ、光によるノイズ発生の抑制効果の低下を少なくすることができる。
なお、本実施形態は、音響レンズを備えていないが、素子毎に入力される送信信号の遅延量を調整することで電子フォーカスすることができる。なお、ここまでの説明では、第3の実施形態の音響レンズ201を保護層205に替えた構成で説明したが、本実施形態はこれに限ったものではなく、第1や第2の実施形態の構成にも同様に用いることができる。
本実施形態によると、音響レンズを用いずに超音波の送受信を行う場合でも、送受信特性を大きく劣化させることなく、且つ、入射した光によるノイズの発生を抑制することができる。
<第5の実施形態>
第5の実施形態は、保護層と光反射膜202との関係が、第4の実施形態と異なる、それ以外は第4の実施形態と同じであるため、同じ部分については説明を省略する。
図5は、本実施形態のプローブの断面の模式図である。本実施形態では、光反射膜202を形成したフィルム状の保護層206の素子チップ側の面に光反射膜202が直接形成されていることが特徴である。そして、光反射膜202を形成した保護層206を、光反射膜202側を素子チップ200側に向けて、音響マッチング層142で固定することにより、簡単に構成することができる。保護層206には、第4の実施形態と同様に、照射される光を吸収せず透過させることが好ましい。また、被検体や周囲の媒体の音響インピーダンスと近いことが好ましい。
また、第3の実施形態のフィルム203と同様に平坦性がよい保護層206を用いることが好ましい。平坦性がよい保護層206上に光反射膜202を形成することにより、光反射膜202の厚さが薄くても、反射率を高めることができる。そのため、光反射膜202をより薄くすることができ、超音波の送受信特性に与える影響を更に小さくすることができる。
更に、光反射膜202側を素子チップ200側に向けることにより、保護層206自体に、光反射膜202を形成するための支持部材としての機能と、表面保護の機能と、の2つの機能を持たすことができる。また、第4の実施形態に比べて、接着層204が不要なため、反射特性のさらなる改善と、送受信特性への影響のさらなる低減が可能となる。
<第6の実施形態>
第6の実施形態は、音響レンズ201の被検体側の面にも光反射膜202が配置されている点が第1から第5の実施形態とは異なる。それ以外は、第1から第5の何れかの実施形態と同じであるため、同じ部分については説明を省略する。
図6(a)は、本実施形態のプローブの断面を示す模式図である。本実施形態のプローブは、素子が形成された領域では、音響レンズ201の素子チップ200側(裏側)に光反射膜202が配置されている。つまり、基板表面への正射影において、音響レンズ201の凸部とオーバーラップする領域(凸部の範囲を含む領域)に、音響レンズ201と素子との間に光反射膜202が配置されている。そして、素子が形成されていない領域では、音響レンズ201の素子チップ200とは反対側(つまり被検体側である表側)に、光反射膜202が配置されている。つまり、基板表面への正射影において、音響レンズ201の凸部とオーバーラップしない領域では、音響レンズ201の素子チップ200とは反対側の面に光反射膜202が設けられている。
ここで、音響レンズ201の表側の光反射膜202と裏側の光反射膜は202とは、基板表面への正射影において、一部が重なっている。これにより、光が光反射膜の間を抜けて素子に到達することを抑制することができる。
また、本実施形態では、素子が形成された領域には、光反射膜202と素子との間隔を近くすることができ、且つ、光反射膜202と素子との間隔が面内方向に均一となる。一方、素子が形成されていない領域では、音響レンズ201の表面に光反射膜202を配置しているため、音響レンズ201より下側(素子側)に配置されている接着層204等の部材へ光が入射されない。つまり、接着層204等の光吸収による微量の光音響波も抑制できる。
音響レンズ201の表側に光反射膜202を選択的に形成するには、ステンシルマスクなどを用いて成膜することで容易に実現することができる。
なお、本実施形態は、凸型の音響レンズ201だけではなく、図6(b)で示すように凹型の音響レンズ201においても同様に用いることができる。さらに、本実施形態は音響レンズ201を用いる構成に限定されず、第4及び第5の実施形態に記載した保護層を配置した構成にも同様に適用することができる。
<第7の実施形態>
第7の実施形態は、素子チップ200を収容するための筐体301(プローブの外枠)を備え、筐体301の被検体側の面にも光反射膜が配置されている。それ以外は第1から第6の何れかの実施形態と同じであるため、同じ部分については説明を省略する。
図7は、本実施形態のプローブの断面を示す模式図である。図7では、筐体301の内側に素子チップ200等が配置されている。なお、図7では、光反射膜202は、音響マッチング層141の上に直接形成されているが、本実施形態はこの構成に限らない。本実施形態では、筐体301の被検体側の表面に、光反射膜302が設けられ、この光反射膜302により筐体301の被検体側の表面が露出しないように覆われている。この光反射膜302により、筐体301から発生する光音響波を抑制できる。光反射膜302は、光反射膜202と同様の材料を用いることができる。
ただし、筐体301上の光反射膜302は、超音波や光音響波を通過させる必要がないため、光反射膜302の厚さは光の反射特性のみを満たせばよい。つまり、光反射膜202よりも厚くてもよい。よって、光反射膜302は、樹脂を多層に積層した光反射膜を用いてもよい。樹脂の場合、表面に配置されても金属膜に比べて傷が付きにくく、表面を保護するために光反射膜302の被検体側に部材を追加する必要がないため、光学的な反射率が低くなることがない。
また、素子上に配置される光反射膜202は、基板表面への正射影において、筐体301と一部重なる領域ができるように配置すればよく、全面に配置する必要はない。これにより、超音波の送受信特性に影響を与える光反射膜202を、他の領域の制約を受けることなく、最小限の領域に限って配置することができる。
<第8の実施形態>
第8の実施形態は、音響レンズ201が筐体301により区画された領域に配置されている。それ以外は第8の実施形態と同じであるため、同じ部分については説明を省略する。
図8は、本実施形態のプローブの断面を示す模式図である。なお、図8では、光反射膜202はフィルム203上に形成され、フィルム203と素子チップ200との間には音響マッチング層142が設けられている構成が記載されているが、本実施形態はこの構成に限らない。本実施形態では、音響レンズ201の形状が他の実施形態と異なり、素子チップ200上のみに配置されている。そして、音響レンズ201が配置されていないフレキシブル配線基板上の領域には、被検体側の表面とレンズ側の側面とに光反射膜302が形成された筐体301が配置されている。
また、音響レンズ201の素子チップ側の面(裏面)側に配置される光反射膜202は、基板表面への正射影において音響レンズ201と重なる領域を有するように、少し大き目に配置される。本実施形態では、素子の上部を、被検体表面を光反射膜202と光反射膜302とにより、ほぼ完全に囲むことができるため、入射する光がほぼ光反射膜で反射可能な構成になっている。そのため、光の反射効率がよく、光によるノイズの発生が極めて小さくすることができる。
本実施形態は、一例として下記の手順などで容易に作製することができる。まず、光反射膜202が一部の領域に形成されたフィルム203を位置合わせしながら、素子チップ200上に音響マッチング層142を介して接着する。次に、フィルム203上の光反射膜202を基準にして、光反射膜302を表面及び側面に備えた筐体301を、接着層303を用いてフィルム203に接着する。最後に、音響レンズ201を、接着層204を用いて、フィルム203及び筐体301に接着する。この際、筐体301と素子チップ200の位置関係は調整されているため、音響レンズ201は素子チップ200に対する位置を正確にアライメントして接着することができる。
<第9の実施形態>
図9を用いて第9の実施形態を説明する。本実施形態は、第1から第8の何れかの実施形態に記載のプローブを備えた被検体情報取得装置に関する。特に、光音響効果を利用した被検体情報取得装置400に関する。
図9の被検体情報取得装置400では、発光指示信号503に基づいて光源401が発生した光501(パルス光)が被検体402に照射される。被検体内では光を吸収した検査対象物から光音響波502が発生する。この、光音響波502をプローブ403により受信し、受信信号504を出力する。受信信号504は処理部である画像情報生成装置404に入力され、画像情報生成装置404は、受信信号504の大きさ、形状、時間の情報と、光源401が発生した光501の大きさ、形状、時間の情報(発光情報)と、を基に信号処理を行う。具体的には、画像情報生成装置404では、受信信号504と発光情報とを基に画像再構成を行うことで被検体402内の特性情報を示す画像信号を生成し、再構成画像情報505として出力する。画像情報生成装置404で生成された、光音響波に基づく画像は、表示装置(不図示)により表示される。
なお、光音響波により取得される特性情報は、光エネルギーの吸収率を反映している。具体的に、光音響波により取得される特性情報としては、発生した光音響波の初期音圧、初期音圧から導かれる光エネルギー吸収密度、吸収係数、組織を構成する物質の濃度、等を反映した特性情報がある。物質の濃度とは、例えば、酸素飽和度、トータルヘモグロビン濃度、オキシヘモグロビンあるいはデオキシヘモグロビン濃度などである。また、複数位置の特性情報を、2次元又は3次元の特性分布として取得することにより画像データが生成される。
本実施形態の被検体情報取得装置は、第1から第8の実施形態のいずれかのプローブを用いることで、光源からの光によるノイズの発生を抑制することができ、ノイズによる画質劣化が少なく画像を生成できる。
<第10の実施形態>
図10を用いて第10の実施形態を説明する。本実施形態は、第1から第8の何れかの実施形態に記載のプローブを用いた被検体情報取得装置に関する。特に、本実施形態の被検体情報取得装置は、光音響効果を利用した光音響波の受信だけでなく、超音波の送信及び受信も行う。つまり、本実施形態の被検体情報取得装置は、第9の実施形態の構成及び動作に加えて、超音波の送信及び反射波の受信を行い、反射波の受信信号を基に被検体内の特性情報を行う。
図10を用いて本実施形態の被検体情報取得装置について説明する。本実施形態では、送信信号508に基づきプローブ403から、被検体402に向かって超音波506が出力(送信)される。被検体402内では検査対象物の表面での固有音響インピーダンスの差により、超音波が反射する。反射した反射波507は、プローブ403で受信され、プローブから受信信号509が出力される。受信信号509は処理部である画像情報生成装置404に入力され、画像情報生成装置404は、受信信号509の大きさ、形状、時間の情報と、送信信号508の情報(送信情報)と、を基に信号処理を行う。具体的には、画像情報生成装置404では、受信信号509と送信情報とを基に画像再構成を行うことで、被検体402内の特性情報を示す画像信号を生成し、再構成画像情報505として出力する。画像情報生成装置404で生成された、光音響波に基づく画像や、超音波送受信に基づく画像は、表示装置(不図示)により表示される。
なお。反射波の受信信号により得られる特性情報は、被検体内の音響インピーダンスの差を反映している。具体的に反射波により取得される特性情報としては、被検体内の音響インピーダンス差を反映した形態情報や、音響インピーダンス差から導かれる、組織の弾性や粘性を示す情報や血流速度等の移動情報などがある。複数位置の特性情報を、2次元又は3次元の特性分布として取得することにより画像データとして生成され得る。
本実施形態の被検体情報取得装置は、第1から第8の実施形態のいずれかのプローブを用いることで、光によるノイズの発生を抑制することができる。さらに、超音波の送受信特性を大きく変化させることがない。よって、ノイズによる画質劣化が少なく良質な画像を生成できる。