JP2013214846A - 探触子、及びそれを用いた被検体情報取得装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】振動膜の機械特性の劣化を抑制して、受信面に光が入射することを抑制できる探触子などを提供する。
【解決手段】探触子は、間隙5を挟んで設けられた2つの電極2、6のうちの一方を含む振動膜4が振動可能に支持されたセル構造7を少なくとも1つ含む素子8を有する。探触子では、振動膜4上に、耐湿性とガスバリア性と応力緩和性を併せ持つ応力緩和層10が形成され、応力緩和層10上に光反射層11が形成されている。こうして、振動膜と応力緩和層との界面及び光反射層と応力緩和層との界面への気体や水分の流入を抑制でき、光反射層の硬さや応力による影響の振動膜の特性への波及を抑えられる。
【選択図】図1

Description

本発明は、被検体に照射された光に起因して該被検体から発生する光音響波を受信するための光音響探触子などとして使用され静電容量型の電気機械変換装置等を備える探触子、それを用いた被検体情報取得装置等に関する。
近年、微細加工技術の発展に伴い、その技術を用いて作製される静電容量型電気機械変換装置(CMUT:Capasitive Micromachined Ultrasonic Transducer)の開発が盛んとなっている。CMUTは、軽量の振動膜を振動させて超音波などの音響波を送信、受信することができ、液中および空気中でも優れた広帯域特性を持つものが容易に得られる。従って、このような特徴を持つCMUTを医療用途に適用すると、従来使用されている圧電型の電気機械変換装置よりも高精度な診断が可能となるため、圧電型電気機械変換装置の代替として注目を集めている。尚、本明細書において、音響波とは、音波、超音波、光音響波と呼ばれるものを含む。例えば、被検体内部に可視光線や赤外線等の光(電磁波)を照射して被検体内部で発生する光音響波を含む。
また近年、疾患を早期発見する技術として、超音波診断、特に光音響を用いた光音響画像診断(PAT:Photo Acoustic Tomography)が注目されている。光音響画像診断とは、生体に対して、非侵襲かつ透過率の高い近赤外光を用いて生体内の画像化を行う技術であり、その原理は、次の様なものである。生体などに近赤外光を照射すると、生体内の細胞が光エネルギーを吸収し、膨張、収縮する。その際に、各物質の光エネルギーの吸収率に応じて異なる強度の光音響波が発生するため、それを受信して、画像として構成することで生体内の画像化を行うことができる。図5に光音響画像診断の概略図を示す。音響媒体25中の生体などの診断対象(被検体)21にレーザー光22を照射し、診断対象21から発生する光音響波23を電気機械変換装置24で検知する。レーザー光22と電気機械変換装置24を同期走査して診断対象21の診断を行う。しかし、この際、診断対象21から外れたもしくはこれを透過したレーザー光が、装置24の光音響波受信面に照射されると、受信面から大きな音響ノイズが発生してしまい、診断に悪影響を及ぼす。特許文献1は、こうした問題を解決するための、光音響画像診断技術を利用した超音波トランスデューサーを提案している。本トランスデューサーでは、トランスデューサー表面に光が照射されるのを防ぐために、光を反射するための光反射部材が設けられている。
特開2010−075681号公報
上記の如く、光音響波を受信するセンサとして静電容量型の電気機械変換装置を用いる探触子を使用するとき、光音響波を発生させるための光が装置に入射すると、装置の受信面において、光音響波が発生しノイズとなってしまう。しかしながら、それを防止するために、光を反射する部材を装置の受信面直上に配置すると、その部材の硬さや応力のために、装置の振動膜のばね定数や振動数の変化が起こり、これにより、装置の感度低下、ばらつきの拡大、帯域幅の減少が発生することがある。
上記課題に鑑み、本発明の探触子は、間隙を挟んで設けられた2つの電極のうちの一方の電極を含む振動膜が振動可能に支持されたセル構造を少なくとも1つ含む素子を有する探触子であって、前記振動膜上に設けられた耐湿性とガスバリア性と応力緩和性を併せ持つ応力緩和層と、前記応力緩和層上に設けられた光反射層と、を有する。
本発明の探触子では、装置受信面である振動膜上に、耐湿性、ガスバリア性、応力緩和性(より好ましくは更に振動膜との音響インピーダンス整合性)を併せ持つ応力緩和層を有し、その上に光反射層を形成している。従って、振動膜と応力緩和層との界面及び光反射層と応力緩和層との界面への気体や水分の流入を抑制することができ、界面状態の変化による層間の密着性の劣化を抑制することができる。また、応力緩和性のある部材を使用することで、光反射層の硬さや応力による影響が振動膜の特性にあまり及ばないようにできる。更に、応力緩和層の音響インピーダンスを1MRayls以上2MRayls以下とする場合(1MRayls=1×10kg・m-2・s-1であり、以下では、MRaylsを用いる)、受信面をなす振動膜との音響インピーダンスの整合性から、振動膜と層応力緩和層との界面での音響波の反射が抑制される。これにより、装置受信面に光反射層を形成する探触子の性能ばらつきを抑制して、音響波を受信する装置への好適な適用を実現することができる。
(a)は静電容量型電気機械変換装置を用いる探触子の上面図、(b)は静電容量型電気機械変換装置(犠牲層型)を用いる探触子のA−B断面図。 静電容量型電気機械変換装置(接合型)を用いる探触子の断面図。 ホットスタンプ法による光反射層の形成方法を説明する断面図。 ホットスタンプ法による光反射層の形成方法を説明する断面図。 本発明の探触子の例の概略を示す図。 光音響画像診断の概略を説明する図。 本発明の探触子を用いる被検体情報取得装置を示す図。
本発明の探触子の特徴は、装置の音響波受信面であるセル構造の振動膜上に、耐湿性、ガスバリア性、応力緩和性を併せ持つ応力緩和層を設け、応力緩和層上に光反射層を形成することである。探触子の受信面と光反射層と間には応力を緩和する緩衝部材が必要であるが、その材料には、それぞれの界面の状態変化による密着性の劣化が発生しないように耐湿性やガスバリア性が必要である。本発明の探触子の構成は、こうした必要性に答えるものである。より好ましくは、振動膜と応力緩和層との界面での音響波の反射を抑制するために音響インピーダンスの整合性の必要性も満たすとよい。上記構成において、耐湿性とは、水分や湿気の通し難さを示す性質であり、具体的には、水分透過率が100g/(m・day)以下であることが好ましい。また、ガスバリア性とは、気体(具体的には酸素)の通し難さを示すガスのバリア性であり、具体的には、10−12cm・cm/(cm・s・Pa)以下であることが好ましい。さらに、応力緩和性とは、光反射層の応力による影響が振動膜の特性に波及するのを抑える性質であり、少なくとも応力緩和層のヤング率が光反射層のヤング率より小さい(より好適には光反射層のヤング率と振動膜のヤング率の間)ことを示す性質である。より具体的には、ヤング率は0MPa以上100MPa以下が好ましく、より好ましくは20MPa以上80MPa以下であることが好ましい。セル構造は、例えば、基板と接して形成された第一の電極の上に間隙を介して形成された第二の電極と、第二の電極を備える振動膜と、第一の電極と振動膜との間に間隙が形成されるように振動膜を振動可能に支持する振動膜支持部と、で構成される。セル構造は、所謂犠牲層型、接合型の製法などで作製することができる。後述の図1の例は犠牲層型の製法で作製することができる構造を有し、後述の図2の例は接合型の製法で作製することができる構造を有する。本発明の探触子と光源とデータ処理装置を用いて被検体情報取得装置を構成することができ、ここでは、探触子は、光源から発振した光が被検体に照射されることにより発生する音響波を受信して電気信号に変換し、データ処理装置は、電気信号を用いて被検体の画像データなどの情報を生成する。
以下、本発明の実施形態を説明する。図1に、セル構造を複数含む素子(エレメント)を有した静電容量型電気機械変換装置を用いる探触子の一例を示す。図1(a)は上面図を示し、図1(b)は、図1(a)のA−B断面図である。本探触子は、セル構造7を含む素子8を複数個有している。図1では、4個の素子8がそれぞれ9個のセル構造7を有しているが、それぞれが幾つであっても構わない。
本実施形態のセル構造7は、図1(b)に示す様に、基板1、第一の電極2、第一の電極2上の絶縁膜3、空隙などである間隙5、振動膜4、2つの電極の一方である振動膜4上の第二の電極6で構成されている。基板1は、Siで構成されているが、ガラスなどの絶縁性基板を用いても構わない。第一の電極2はチタンやアルミニウムなどの金属薄膜で形成される。基板1を低抵抗のシリコンで形成する場合などには、それ自体を第一の電極2とすることも可能である。絶縁膜3は、酸化シリコンなどの薄膜を堆積することで形成できる。振動膜4やそれを支持する部分である振動膜支持部9は、窒化シリコンなどの薄膜を堆積することで形成することができる。第二の電極6は、チタンやアルミニウムなどの金属薄膜で構成することができる。本明細書では、窒化シリコン膜や単結晶シリコン膜からなるメンブレン部分の振動膜と第二の電極部分を併せて振動膜と表現する場合もある。
図1の例は犠牲層型の製法で作製できる構造を備えているが、本実施形態の探触子は、接合型の製法を用いても形成することができる。図2に示す接合型の構成でのセル構造7は、シリコン基板1の上に、空隙などの間隙5、振動膜4、振動膜支持部9、第二の電極6を設けることで構成される。ここでは、低抵抗のシリコン基板1が、第一の電極を兼ねているが、基板として、絶縁性のガラス基板を用いることも可能であり、その場合は基板1上に第一の電極2となる金属薄膜(チタン、アルミニウムなど)を形成する。振動膜4は、接合されたシリコン基板などから形成される。ここでは、振動膜支持部9は、酸化シリコンから形成しているが、窒化シリコンなどの薄膜を堆積形成することも可能である。第二の電極6は、アルミニウムなどの金属薄膜で形成している。
本実施形態の探触子の駆動原理を説明する。セル構造は、間隙5を挟んで設けられた第一の電極2と第二の電極6付きの振動膜とで形成されているので、音響波を受信するには、第一の電極2もしくは第二の電極6に直流電圧を印加する。音響波を受信すると、振動膜が変形して間隙の距離(高さ)が変化するため、電極間の静電容量が変化する。この静電容量変化を第一の電極2もしくは第二の電極6から検出することで、音響波を検出できる。また、素子は、第一の電極2もしくは第二の電極6に交流電圧を印加して振動膜を振動させることで、音響波を送信することもできる。
さらに、図1及び図2に示す様に、本発明の実施形態である探触子は、音響波の受信面となる振動膜上に耐湿性とガスバリア性を有した応力緩和層10を有し、応力緩和層10上に光反射層11を有している。応力緩和層は、振動膜4の機械特性を変化させないために、振動膜4を形成する材料よりもヤング率が小さいものがよい。また、音響インピーダンスも、振動膜で形成する受信面とほぼ同程度のものであることが望ましい。具体的には、ヤング率は0MPa以上100MPa以下が好ましく、より好ましくは20MPa以上80MPa以下であることが好ましい。音響インピーダンスは、1MRayls以上2MRayls以下であることが望ましい。このような応力緩和層であれば、振動膜上に形成しても、光反射層の応力や剛性などの影響により振動膜の機械特性が変化させられることがあまりない。これにより、セル間の振動膜の機械特性のばらつきを低減させられ、素子間の性能ばらつき、特に感度ばらつきや帯域ばらつきを低減させることができる。また、応力緩和層の音響インピーダンスを1MRayls以上2MRayls以下とすることで、音響波の受信面とほぼ同等の音響インピーダンスとなり、受信面と応力緩和層の界面での音響波の反射が抑えられる。また、水などの低い音響インピーダンスを持つ音響媒体内で本探触子を用いる場合、応力緩和層との音響インピーダンスの差が小さいため(水の音響インピーダンスは約1.5MRaylsである)、音響媒体と応力緩和層との界面での反射を抑えることができる。尚、他の層と比較して、光反射層は薄いので、音響インピーダンスに関しては無視してもよい。
また、応力緩和層10が耐湿性とガスバリア性を有しているので、振動膜と応力緩和層10との界面および光反射層11と応力緩和層10との界面へ、外部環境から気体や水分が流入することを抑制できる。よって、使用時や保管時において界面状態が変化することによる密着性の劣化を抑制することができる。応力緩和層10の材料としては、熱を加えることで軟化して流動性を有し、冷却することで硬化する接着性を示す熱可塑性樹脂を用いることができる。電気機械変換装置の受信面は微小な凹凸構造を有しているが、このような熱可塑性の材料を用いて、加熱しながら応力緩和層を形成することで、流動性を有した状態で受信面に塗布できる。そのため、凹凸形状を吸収した状態で応力緩和層10を硬化・形成し、受信面に接着することが可能となる。
上述した様に、本実施形態の探触子は、応力緩和層10上に光反射層11を有する。光反射層11は、生体などに照射して光音響波を発生させる光を発する光源からの光を反射するために形成する。つまり、こうした光源の光が受信面に入射することで受信面から発生する光音響波のノイズを低減させるために用いる。光反射層11は、光源に用いる波長の光を反射させるために、AuやAlや誘電体多層反射膜などが用いられる。反射率は、使用する光の波長領域(例えば700nm〜1000nm)において80%以上であることが望ましく、90%以上であることがより好ましい。光反射層11は受信面上に配置されるため、音響波の減衰、反射を小さくする必要があるため、薄いことが好ましい。具体的には10μm以下であることが好ましい。
上記構成において、応力緩和層10は、エチレン酢酸ビニル共重合体、いわゆるエチレンビニルアセテート(EVA)を用いることが望ましい。EVAは、太陽電池を封止するための材料として使用されており、高い耐湿性やガスバリア性を有している。また、重合させる際のアセテートの分量を調整することで、ヤング率ないし剛性や音響インピーダンスを調整することが可能である。エチレン酢酸ビニル共重合体は、ヤング率が100MPa以下程度であり、音響インピーダンスが1.5MRayls以上2MRayls以下程度である。そのため、応力緩和層10として使用することで、その応力や硬さの影響で振動膜の機械特性が変化するのを抑制しつつ、界面での音響波の反射を低減することができる。
図4に、静電容量型電気機械変換装置を用いて構成した探触子全体の例の概略図を示す。本探触子では、音響波を受信するセンサとしてCMUTを備えたデバイス基板16が使用されている。CMUTの受信面上に、応力緩和性、ガスバリア性、耐湿性、音響インピーダンスの整合作用を持つ応力緩和層10、レーザー光17を反射するための光反射層11が形成されており、これらをケース18に収めている。生体などから放出された音響波19が、光反射層11と応力緩和層10を透過し、デバイス基板16内の受信面に到達することで電気機械変換装置は音響波を受信する。尚、ケース18とデバイス基板16の端部は隙間なく接着しており、音響波伝達媒体(音響媒体)20がケース18内に侵入しないようになっている。音響媒体20としては通常、生体等に音響インピーダンスが近い低音響インピーダンスの媒体である水やポリエチレングリコール、セバシン酸エステルなどが用いられる。
以下、より具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1の探触子は、図1の犠牲層型の製法で製造された静電容量型電気機械変換装置を用いて説明する。図1(a)は、セル構造7が複数個集まって形成された素子8を示す。本実施例でも、素子を4つのみ示しているが、素子数は幾つであっても構わない。
セル構造は、シリコン基板1上の第一の電極2、絶縁層3、間隙5を介して形成された第二の電極6、第二の電極6を支持する振動膜4などで構成されている。シリコン基板1は、厚さが300μmのものである。基板1上に、基板1と第一の電極2を絶縁するための酸化シリコン膜を1μm程度形成し、その上に第一の電極2を50nm程度形成する。電極の材料としては、チタンなどを用いることができる。また、シリコン基板1として0.01Ωcm程度の低抵抗基板1を用いれば、シリコン基板1を第一の電極2として使用することもできる。更には、ガラスなどの絶縁性の基板1を利用することもできる。次に、第一の電極2上に厚さ100nm程度のシリコン酸化膜からなる絶縁膜3を形成する。絶縁膜3上にギャップ200nm程度の間隙5を介して、振動膜4となる窒化シリコン膜を400nm程度形成し、その上に第二の電極6のチタン膜を100nm程度形成する。本実施例では、第二の電極6上にも、振動膜4となる窒化シリコン膜を700nm程度形成している。つまり、第二の電極6が窒化シリコン膜で挟まれて振動膜を構成している。セル構造の振動膜の上面形状は、直径40μm程度の円形であるが、形状は円形でなくてもよく、直径も仕様に応じて自由に変えることができる。本実施例の探触子は、引き出し配線をシリコン基板1上に形成する、または、基板中の貫通電極を用いることで、第一の電極2と第二の電極6に対して電気信号を取り出したり、入力したりすることができる。
本実施例の探触子では、応力緩和層10が振動膜上に配置され、光反射層11が応力緩和層10上に形成されている。応力緩和層10はエチレンビニルアセテート(EVA)を用いており、光反射層11は金膜である。応力緩和層10の音響インピーダンスは1.6MRayls〜1.7MRayls程度であり、応力緩和層10と振動膜4との界面での音響インピーダンスの差が小さいため、音響波の反射は殆ど発生しない。また、本実施例の探触子を水などの低音響インピーダンスの溶媒(音響媒体)中で使用する場合には、溶媒と応力緩和層10の界面での音響波の反射も非常に小さくすることができる。光反射層11は、光音響波を発生するために使用する光源の光を反射するものであり、これにより、光が受信面や応力緩和層10に吸収されることで発生する光音響波のノイズを低減することができる。
応力緩和層10の材料であるEVAは熱可塑性の樹脂であるため、熱を加えることで流動性を有する。従って、凹凸を有した受信面上にも平滑に形成され、接着することができる。更には、真空中で加圧熱圧着することで、受信面との間に気泡が入ることを容易に防ぐことができる。気泡は音響インピーダンスの不整合を引き起こし、性能不良の原因となるが、このような形成方法で作製することで、気泡の混入で発生する性能の劣化を低減させられる。光反射層11は、蒸着法やスパッタリングなどの膜堆積法、または接着剤を用いた金薄膜の貼付けなどで形成することができる。金膜の貼付けには、熱を加えることで流動性と接着性を持つ熱可塑性の樹脂の接着性に加えて、シリコーン系の接着剤を10μm〜30μm程度に薄く塗布して接着に利用することもできる。
(実施例2)
実施例2の探触子を、図2を用いて説明する。本実施例の図2は、接合型の製法で製造された電気機械変換装置を用いる探触子の断面図である。セル構造は、基板1として厚さ300μm、0.01Ωcmのシリコン基板1を用いる。低抵抗のシリコン基板1を使用することで、基板1を第一の電極2として使用することができる。基板1上に、振動膜支持部9となる酸化シリコン膜が形成されており、更には間隙5を介して、振動膜4となる厚さ1μmのシリコンが接合されている。振動膜4上には、第二の電極6となる厚さ200nmのアルミ膜が形成されている。第一の電極2である基板1と第二の電極6に対して電気信号を入力したり、取り出したりすることで、電気機械変換装置を駆動させて、音響波の送受信を行う。接合型の特徴は、機械的特性が安定して内部の残留応力の小さい単結晶シリコンを振動膜4として使用することができるため、素子内のセル間ばらつきが小さく、特性が揃った素子8を形成することができることである。
本実施例では、耐湿性、ガスバリア性、応力緩和性、音響インピーダンスの整合性を併せ持つ応力緩和層10が振動膜上に配置され、光反射層11が応力緩和層10上に形成されている。応力緩和層10の材料には、酢酸ビニル共重合体、いわゆるエチレンビニルアセテート(EVA)などを用いることができる。応力緩和層10は、実施例1と同様にして形成することができる。
応力緩和層10上に形成する光反射層11は、ホットスタンプ法を用いて形成することができる。ホットスタンプ法とは、ホットスタンプ箔と呼ばれるフィルムを用いて、熱可塑性の樹脂上に金属箔を転写する方法である。図3−1、図3−2に、ホットスタンプ法で形成する光反射層11の形成方法を示す。ホットスタンプ箔は、PETなどからなる反射層形成用基板のキャリアフィルム14上に離形材13を介して金属箔16が蒸着などの手法で形成されている。この金属箔16が応力緩和層10上に転写されて光反射層11となる。また、金属箔16の表面には、熱などで接着硬化する接着剤12が塗布されていることもある。このホットスタンプ箔を熱可塑性の樹脂の表面に装着して、金属箔が形成されていないキャリアフィルム14の側から、耐熱性のシリコンラバー板15などを媒介として加熱圧着する(図3−1(a)、(b)参照)。そのときに発生する応力緩和層10と金属箔16の接着性が、金属箔16と離形材13の接着性よりも大きいため、金属箔16が応力緩和層10上に転写される(図3−2(c)参照)。応力緩和層10と金属箔16との接着には、金属箔16上に塗布された接着剤12の接着性、もしくは、応力緩和層10が加熱されることで発生する熱による接着性が利用される。本手法を、本実施例の応力緩和層10上の光反射層11の形成方法として用いると、薄い金属箔を応力緩和層上に密着性良くかつ平滑に形成することができる。また、光反射層11での光の反射性能を確保しつつ、光反射層11での音響波の反射や減衰を更に抑制することができる。
(実施例3)
上記実施形態や実施例で説明した電気機械変換装置を備える探触子は、音響波を用いた被検体情報取得装置に適用することができる。被検体からの音響波を電気機械変換装置で受信し、出力される電気信号を用い、光吸収係数などの被検体の光学特性値を反映した被検体情報を取得することができる。
図6は、光音響効果を利用した本実施例の被検体情報取得装置を示したものである。光源51から発生したパルス光52は、レンズ、ミラー、光ファイバー等の光学部材54を介して、被検体53に照射される。被検体53の内部にある光吸収体55は、パルス光のエネルギーを吸収し、音響波である光音響波56を発生する。電気機械変換装置を収納する筺体を備えるプローブ(探触子)57は、光音響波56を受信して電気信号に変換し、信号処理部59に出力する。信号処理部59は、入力された電気信号に対して、A/D変換や増幅等の信号処理を行い、データ処理部50へ出力する。データ処理部50は、入力された信号を用いて被検体情報(光吸収係数などの被検体の光学特性値を反映した被検体情報)を画像データとして取得する。表示部58は、データ処理部50から入力された画像データに基づいて、画像を表示する。なお、プローブは、機械的に走査するものであっても、医師や技師等のユーザが被検体に対して移動させるもの(ハンドヘルド型)であってもよい。
1:基板、2:第一の電極、3:絶縁膜、4:振動膜、5:間隙、6:第二の電極、7:セル構造、8:素子、10:応力緩和層、11:光反射層

Claims (7)

  1. 間隙を挟んで設けられた2つの電極のうちの一方の電極を含む振動膜が振動可能に支持されたセル構造を少なくとも1つ含む素子を有する探触子であって、
    前記振動膜上に設けられた耐湿性とガスバリア性と応力緩和性を併せ持つ応力緩和層と、
    前記応力緩和層上に設けられた光反射層と、を有することを特徴とする探触子。
  2. 前記応力緩和層は、音響インピーダンスが1MRayls以上2MRayls以下であることを特徴とする請求項1に記載の探触子。
  3. 前記応力緩和層は、ヤング率が0MPa以上100MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の探触子。
  4. 前記応力緩和層は、熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1及至3のいずれか1項に記載の探触子。
  5. 前記応力緩和層は、エチレン酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1及至4のいずれか1項に記載の探触子。
  6. 請求項1及至5のいずれか1項に記載の探触子と、光源と、データ処理装置と、を有し、
    前記探触子は、前記光源から発振した光が被検体に照射されることにより発生する音響波を受信して電気信号に変換し、
    前記データ処理装置は、前記電気信号を用いて被検体の情報を取得することを特徴とする被検体情報取得装置。
  7. 請求項1及至5のいずれか1項に記載の探触子の製造方法であって、
    反射層形成用基板に光反射層を離形材を介して形成する工程と、
    応力緩和層の表面に、前記光反射層を加熱圧着する工程と、
    前記反射層形成用基板と前記光反射層との接着性が前記応力緩和層と前記反射層との接着性より小さいことを利用して前記反射層形成用基板を取り除き、前記応力緩和層に前記光反射層を転写する工程と、
    を含むことを特徴とする探触子の製造方法。
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