JP2013213245A - 耐剥離性および耐衝撃疲労特性に優れた歯車 - Google Patents
耐剥離性および耐衝撃疲労特性に優れた歯車 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】C:0.40〜0.60%、Si:0.70超〜1.50%、Mn:1.20〜2.0%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Cr:0.01〜0.50%、Al:0.15〜0.50%、B:0.0020〜0.0100%、およびN:0.010%以下(0%を含まない)を満たし、残部が鉄及び不可避不純物であり、表面が高周波焼入れにより硬化されたものであって、内部組織が、フェライト−パーライト組織であり、かつフェライト分率が10面積%以下であり、更に、内部硬さがHV300以上であり、かつ300℃で2時間焼戻し後の表層硬さがHV680以上であることを特徴とする耐剥離性および耐衝撃疲労特性に優れた歯車。
【選択図】なし
Description
C:0.40〜0.60%、
Si:0.70超〜1.50%、
Mn:1.20〜2.0%、
P:0.03%以下(0%を含まない)、
S:0.03%以下(0%を含まない)、
Cr:0.01〜0.50%、
Al:0.15〜0.50%、
B:0.0020〜0.0100%、および
N:0.010%以下(0%を含まない)
を満たし、残部が鉄及び不可避不純物であり、表面が高周波焼入れにより硬化されたものであって、内部組織が、フェライト−パーライト組織であり、かつフェライト分率が10面積%以下であり、更に、内部硬さがHV300以上であり、かつ300℃で2時間焼戻し後の表層硬さがHV680以上であるところに特徴を有する。
(a)Mo:0.80%以下(0%を含まない)や、
(b)Cu:0.80%以下(0%を含まない)、および/または、Ni:0.80%以下(0%を含まない)、
(c)Ca:0.005%以下(0%を含まない)、および/または、Mg:0.005%以下(0%を含まない)
を含んでいてもよい。
Cは、部品として必要な表層硬さや内部硬さを確保する上で重要な元素であり、0.40%未満では上記硬さが不足し、部品としての強度が不足する。その結果、耐剥離性と耐衝撃疲労特性のどちらも十分に向上させることが難しくなるばかりか、強度を要求される歯車として成立できない。よって本発明では、C量を0.40%以上とする。好ましくは0.45%以上、より好ましくは0.48%以上である。しかしC量が多すぎても、硬さ向上の効果は飽和する。またC量が多すぎると、球状化焼鈍後のセメンタイトが粗大化するため、所定量のAlを含有させても、十分な歯切加工性を確保できない。よってC量は、0.60%以下とする。好ましくは0.58%以下であり、より好ましくは0.55%以下である。
Mnは、焼入性を著しく向上させることから、内部硬さの向上(即ち、耐衝撃疲労特性の向上)に寄与する元素である。よってMn量は1.20%以上とする。好ましくは1.22%以上、より好ましくは1.25%以上である。しかしMnは、Ms点を低下させる元素であるため、過剰に含まれると、表層組織における残留γ量が過剰になり、高周波焼入れ後の表面硬さを確保することができない。また、Mnは焼入れ性向上元素であるため、過剰に含まれるとベイナイトが生成され、耐衝撃疲労特性を十分に向上させることができない。更に、ベイナイトが生成すると内部硬さがバラつき易くなる。よって、Mn量は2.0%以下とする。好ましくは1.50%以下、より好ましくは1.45%以下である。
Pは、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、結晶粒界に偏析して部品(歯車)の衝撃特性を低下させる元素であるため、極力低減する方が好ましい。そのため上限を0.03%とした。P量は、好ましくは0.020%以下、より好ましくは0.015%以下である。
Sも、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、Mnと結合してMnS介在物を生成し、部品(歯車)の疲労強度や衝撃強度を低下させるため、極力低減する方が好ましい。そのため上限を0.03%とした。S量は、好ましくは0.025%以下である。
Crは、パーライト組織中のセメンタイトを、母相へ固溶させ難くする元素である。このCrが多く含まれると、高周波焼入れ時にセメンタイトの溶け残りが生じ易い。セメンタイトの溶け残りがあると、所望の硬さが得られないだけでなく、このセメンタイトを起点とする破壊を招く。またCr量が多過ぎる場合には、ベイナイトが生じやすく、耐衝撃疲労特性を十分に向上させることができない。これらの観点から、Cr量の上限を0.50%とした。Cr量は、好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.20%以下である。しかしながらCrは、鋼材の焼入れ性を高める元素であり、内部硬さを確保するには、Cr量を0.01%以上とする必要がある。好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上である。
Nは、鋼材に不可避的に含まれる元素であり、Alと結合した場合、AlNとなり結晶粒界に析出する。上述した通り、AlNが粒界に多く析出すると、熱間での粒界強度が著しく低下し、熱間鍛造性を低下させる。よってN量は、極力低減する必要があり、0.010%以下とする。好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.006%以下である。
Moは、焼入性を著しく向上させる効果を有すると共に、靭性の向上に有効な元素である。これらの効果を発揮させるには、0.1%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.15%以上である。しかし、Mo量が過剰になっても効果は飽和し、コストアップを招くだけである。またMoが過剰に含まれていると、ベイナイトが形成されて、フェライト強化による衝撃疲労強度の向上効果を発揮させることができない。また、ベイナイトが生成すると内部硬さがバラつき易くなる。よって、Mo量は0.80%以下とすることが好ましい。より好ましくはそれぞれ0.6%以下であり、更に好ましくはそれぞれ0.3%以下である。
Cu、Niも、焼入性を著しく向上させる効果を有すると共に、靭性の向上に有効な元素である。これらの効果を発揮させるには、Cuを0.1%以上(より好ましくは0.15%以上)含有させることが好ましく、Niを0.1%以上(より好ましくは0.15%以上)含有させることが好ましい。
CaとMgは、酸化物系介在物を形成して歯切加工性を向上させる元素であり、必要に応じて鋼に含有させても良い。上記効果を得るには、Ca、Mgいずれの場合も、好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.001%以上含有させるのがよい。しかしこれらの元素が過剰に含まれると、大型の介在物が形成されて歯車強度が低下するため、それぞれ0.005%以下とすることが好ましい。より好ましくは、それぞれ0.003%以下である。
硬さ調査試験片は、下記の通り用意した。即ち、上記熱間鍛造および球状化焼鈍を行った上記形状がφ30mm×L1000mmの球状化焼鈍材を、φ20mm×L100mmに切削加工した鋼材をまず用意した。
上記硬さ調査試験片を300℃で2時間焼き戻したものを用い、表層から50μm位置のビッカース硬さ(表層300℃焼戻し硬さ)を測定した。
上記硬さ調査試験片(高周波焼入れ前)にて内部硬さの測定に用いた箇所をナイタルにて腐食し、100倍で光学顕微鏡にて観察して、内部組織を同定した(下記表3および表4において、Pはパーライト、αはフェライト、Bはベイナイトを示す)。また、3視野当たりのフェライト分率(面積%)を求めた。
歯切加工性評価用試験片として、上記形状がW110mm×L155mm×T30mmの鍛造品を、W100mm×L150mm×T20mmに加工したものを用いた。そして、以下の条件で切削試験を行い、刃先の工具磨耗量を測定した。工具磨耗量は、一般的な高周波用鋼として用いられるS53Cの場合で250μm程度であるため、その1/2以下である125μm以下を合格(歯切加工性に優れている)と評価した。
工具:ハイス製のホブツール
切り込み量:1.0mm
1歯あたり送り速度:0.30mm/歯
切削速度:150m/min
切削雰囲気:乾式
磨耗の判定:歯切工具により1歯あたりに加工した長さが7500mmに到達した時の、歯切工具の歯先の逃げ面磨耗量を測定
これらの結果を表3および表4に示す。
Claims (4)
- C:0.40〜0.60%(質量%を示す。化学成分について以下同じ)、
Si:0.70超〜1.50%、
Mn:1.20〜2.0%、
P:0.03%以下(0%を含まない)、
S:0.03%以下(0%を含まない)、
Cr:0.01〜0.50%、
Al:0.15〜0.50%、
B:0.0020〜0.0100%、および
N:0.010%以下(0%を含まない)
を満たし、残部が鉄及び不可避不純物であり、
表面が高周波焼入れにより硬化されたものであって、
内部組織が、フェライト−パーライト組織であり、かつ
フェライト分率が10面積%以下であり、更に、
内部硬さがHV300以上であり、かつ
300℃で2時間焼戻し後の表層硬さがHV680以上である
ことを特徴とする耐剥離性および耐衝撃疲労特性に優れた歯車。 - 更に他の元素として、
Mo:0.80%以下(0%を含まない)を含む請求項1に記載の歯車。 - 更に他の元素として、
Cu:0.80%以下(0%を含まない)、および/または、Ni:0.80%以下(0%を含まない)を含む請求項1または2に記載の歯車。 - 更に他の元素として、
Ca:0.005%以下(0%を含まない)、および/または、Mg:0.005%以下(0%を含まない)を含む請求項1〜3のいずれかに記載の歯車。
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