JP2011236452A - ベイナイト鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.14〜0.35%、Si:0.05〜0.70%、Mn:1.10〜2.30%、S:0.003〜0.120%、Cu:0.01〜0.40%、Ni:0.01〜0.40%、Cr:0.01〜0.50%、Mo:0.01〜0.30%、および、V:0.05〜0.45%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、13C+8Si+10Mn+3Cu+3Ni+22Mo+11V≦30、5C+Si+2Mn+3Cr+2Mo+4V≦7.3、2.4≦0.3C+1.1Mn+0.2Cu+0.2Ni+1.2Cr+1.1Mo+0.2V≦3.1、2.5≦C+Si+4Mo+9V、C≧Mo/16+V/3を満たすベイナイト鋼とする。
【選択図】なし
Description
Cは、強度を確保するために必要な元素であるとともに、時効処理によりMo、Vの炭化物を析出させ、鋼材芯部の強度を高める。その効果を得るため、C含有量の下限を0.14%以上とする。C含有量の下限は、好ましくは0.15%以上、より好ましくは0.16%以上である。
Siは、鋼溶製時の脱酸剤として機能するとともに、時効硬化特性を高める。その効果を得るため、Si含有量の下限を0.05%以上とする。Si含有量の下限は、好ましくは0.07%以上、より好ましくは0.10%以上である。
Mnは、本発明において重要な役割を果たす元素であり、熱間鍛造後の組織においてベイナイト組織を生成させるために不可欠な元素である。また、Mnは、被削性向上に寄与するMn系硫化物を形成させるために必須の元素でもある。その効果を得るため、Mn含有量の下限を1.10%以上とする。Mn含有量の下限は、好ましくは1.30%以上、より好ましくは1.40%以上である。
Sは、Mnとともに被削性向上に寄与するMn系硫化物の生成に必要な元素である。その効果を得るため、S含有量の下限を0.003%以上とする。S含有量の下限は、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.010%以上である。
Cuは、Mnと同様に、ベイナイト組織を生成させるために不可欠な元素である。その効果を得るため、Cu含有量の下限を0.01%以上とする。Cu含有量の下限は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上である。
Niは、Mnと同様に、ベイナイト組織を生成させるために不可欠な元素である。その効果を得るため、Ni含有量の下限を0.01%以上とする。Ni含有量の下限は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上である。
Crは、Mnと同様に、ベイナイト組織を生成させるために不可欠な元素である。ベイナイト組織を安定に生成させるため、Cr含有量の下限を0.01%以上とする。Cr含有量の下限は、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.05%以上である。
Moは、本発明において重要な役割を果たす元素であり、時効硬化処理によって硬さを増加させ、かつ、ベイナイト組織を生成させるために不可欠な元素である。また、Mo、Vの炭窒化物を時効処理により析出させると、耐力比の向上、耐久比の向上に寄与するため、被削後の高強度化にとって重要な元素である。その効果を得るため、Mo含有量の下限を0.01%以上とする。Mo含有量の下限は、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.05%以上である。
Vは、本発明において重要な役割を果たす元素であり、時効処理によって硬さを増加させ、かつ、ベイナイト組織を生成させるために不可欠な元素である。また、Mo、Vの炭窒化物を時効処理により析出させると、耐力比の向上、耐久比の向上に寄与するため、被削後の高強度化にとって重要な元素である。その効果を得るため、V含有量の下限を0.05%以上とする。V含有量の下限は、好ましくは0.07%以上、より好ましくは0.10%以上である。
Tiは、鋼中のOと結合して、微細な酸化物を形成する。これがMn系硫化物の析出に対し核として働く。そのため、Mn系硫化物を微細に分散させるのに役立つ。また、Tiは、鋼中のC、Nとも結合して、微細な窒化物あるいは炭窒化物を形成する。これが熱間鍛造時のオーステナイト結晶粒の粗大化を防止し、強度を向上させるのに寄与する。その効果を得るため、Ti含有量の下限を0.001%以上とする。Ti含有量の下限は、好ましくは0.002%以上、より好ましくは0.003%以上である。
本ベイナイト鋼は、被削性向上元素として従来積極添加していたPbを低減し、具体的には不可避的不純物レベルの0.03質量%以下に留めるようにする。Caは、それによる被削性低下を補うために添加することができる元素である。また、Caは、その一部がMnS中に固溶し、熱間鍛造時の硫化物の変形を抑制するので、被削性向上に有利である。その効果を顕著なものとするため、Ca含有量の下限を0.0003%以上とする。Ca含有量の下限は、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0007%以上である。
Alは、脱酸剤として添加することもあるが、製鋼工程上不可避的不純物である。過剰なAlは粗大な酸化物の生成に繋がりやすく、これが応力集中源となって部品の疲労強度を低下させる。そのため、Al含有量の上限は、好ましくは0.040%以下、より好ましくは0.035%以下とする。
Oは、製鋼工程上不可避的不純物である。また、Oは、Alと結合して酸化物を形成し、これが応力集中源となって部品の疲労強度を低下させる。そのため、O含有量の上限は、好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.006%以下とする。
Pは、製鋼工程上の不可避的不純物として混入しうる元素である。Pは、鋼の靭性を低下させるので、その含有率は、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下、さらに好ましくは0.02%以下である。
Nは、Alと結合して窒化物を形成し、この窒化物が微細に析出すると熱間鍛造時の結晶粒成長を抑制して強度向上に寄与する。このような効果を得るため、N含有量の下限を、好ましくは、0.003%以上とする。より好ましくは0.004%以上である。
上記関係式は、熱間鍛造性と密接な関わりがある。すなわち、本ベイナイト鋼は、脱炭抑制を図りつつ変形抵抗を十分に低減し、所望の部品形状への加工を効率良く行なう観点から、好ましくは900〜1300℃(A1変態点以上)、より好ましくは950〜1200℃の温度範囲にて熱間鍛造を施すことが望ましい。時効硬化特性を得るためにMo、Vを多量添加すると、熱間鍛造時における熱間変形抵抗が高くなり加工効率を落としてしまう。したがって、これら元素を低減しつつ時効硬化量を得るための工夫が重要となる。また、500〜700℃の時効処理を行った際にマトリックス組織の硬さを低減させないようにするため、Siを添加し軟化抵抗性を向上させる方法もある。しかし、SiもMo程ではないが熱間変形抵抗を高めてしまう。また、本ベイナイト鋼においては、熱間鍛造後の組織をベイナイト単相(詳しくは、実施例にて後述)とするのが望ましい。そのためには、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Vを添加すると良いが、これら元素も熱間変形抵抗を高めてしまう。これら全てを勘案すると、上記関係式を満足することが必要となる。これにより、本ベイナイト鋼の熱間変形抵抗が、一般的な熱間鍛造非調質鋼の熱間変形抵抗である140MPaを下回ることが可能となり、加工効率の維持を図ることができるという意義がある。
上記関係式は、熱間鍛造後(時効処理前)の硬さと密接な関わりがある。すなわち、上述した化学組成を有する鋼の加熱、熱間鍛造加工、空冷工程を経た後の硬さは、その後の機械加工工程における被削性に大きな影響を与える。一般的に切削加工可能な硬さは300HV程度と言われており、本発明者らは鋭意検討した結果、上記関係式を満足させることにより、熱間鍛造後(時効処理前)の硬さを300HV以下にすることが可能なことを見出したのである。
上記関係式は、安定してベイナイト組織を得ることと密接な関わりがある。すなわち、熱間鍛造部品はその形状が複雑であり、部位により冷却速度が異なる。そのため、広い冷却範囲でベイナイト組織が得られることが望ましい。上記関係式を満たすことにより、安定してベイナイト組織を得ることが可能となる。本ベイナイト鋼は、その組織がベイナイト単相(詳しくは、実施例にて後述)であることが好ましい。
上記関係式は、時効硬化特性と密接な関わりがある。すなわち、疲労強度を高めるためには時効硬化量を大きくする必要がある。そのため、本ベイナイト鋼は、上記関係式を満足している必要がある。なお、十分な時効硬化特性を得るためには、好ましくは500〜700℃、より好ましくは575〜675℃の温度範囲、好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは1〜5時間の条件で時効処理することが望ましい。最も好ましくは、効率的に効果を得る観点から、625℃にて1〜4h時効処理すると良い。
真空誘導炉にて表1および表2に示す各種化学成分の鋼の鋳塊50kgを溶製し、熱間鍛造をしてφ70mmの棒鋼とした。これをさらに1100℃以上でφ10、20、50、60mmまで1ヒートで鍛造し冷却速度を一定にするため適当な間隔を空けて空冷し、供試材とした。
φ10mmの供試材を機械加工して、φ8mm×12mmの試験片を採取し、熱間加工再現試験装置(例えば、富士電波工機製「加工フォーマスター」)を用いて、温度1100℃にて熱間変形抵抗を測定した。熱間変形抵抗が140MPa以下であった場合を熱間鍛造性に優れるとした。「熱間変形抵抗140MPa以下」としたのは、一般的な熱間鍛造機の能力範囲だからである。
φ20mmの供試材を用いて硬さ試験片と被削性試験片を採取し試験を実施した。硬さは試験片の半径の1/2の箇所で測定した。また、超硬工具を用いてドリル加工性の評価を実施した。具体的には、切削速度200m/min、送り0.1mm/rev、穴深さ60mmの加工を実施し、横逃げ面平均工具摩耗幅が0.2mmに至るまでの加工時間を測定し、従来鋼の加工時間を100としたときの工具寿命比を被削性指数とし、100を下回った物を被削性に劣ると判断した。300HV以下のものは被削性指数が100を上回り被削性に優れている。但し、鍛造後の硬さが300HVを下回っていてもSが低いと快削性に寄与するMnSが少なくなり被削性に劣る。
φ10mm、20mm、50mm、60mmの供試材の軸横断面全面の金属組織を観察した。ベイナイト組織の面積率が90%以上であった場合を「○」、ベイナイト組織とフェライト組織の混合(フェライト組織の面積率10%以上)であった場合を「F」、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合(マルテンサイト組織の面積率10%以上)であった場合を「M」とした。そして、φ50mmの丸棒、φ10mmの丸棒がともに「○」となる場合を、ベイナイトに単相化されていると判断した。
上記時効処理後の供試材よりJIS Z 2201 4号引張試験片を採取し、これを用いて引張強度、0.2%耐力、耐力比(0.2%耐力/引張強度)を測定した。上記引張強度が950MPa以上、耐力比が0.80以上であった場合に高耐力を有すると判断した。
上記時効処理後の供試材よりJIS Z 2274 1号回転曲げ疲労試験片を採取し、これを用いて回転曲げ疲労強度、耐久比(疲労強度/引張強度)を測定した。上記疲労強度が510MPa以上、耐久比が0.50以上であった場合に高耐久を有すると判断した。
Claims (2)
- 質量%で、
C :0.14〜0.35%、
Si:0.05〜0.70%、
Mn:1.10〜2.30%、
S :0.003〜0.120%、
Cu:0.01〜0.40%、
Ni:0.01〜0.40%、
Cr:0.01〜0.50%、
Mo:0.01〜0.30%、および、
V :0.05〜0.45%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
13[C]+8[Si]+10[Mn]+3[Cu]+3[Ni]+22[Mo]+11[V]≦30、
5[C]+[Si]+2[Mn]+3[Cr]+2[Mo]+4[V]≦7.3、
2.4≦0.3[C]+1.1[Mn]+0.2[Cu]+0.2[Ni]+1.2[Cr]+1.1[Mo]+0.2[V]≦3.1、
2.5≦[C]+[Si]+4[Mo]+9[V]、[C]≧[Mo]/16+[V]/3
を満たすことを特徴とするベイナイト鋼。 - 質量%で、
Ti:0.001〜0.100%、および、
Ca:0.0003〜0.0100%から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のベイナイト鋼。
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