JP2013213121A - オレフィン系極性共重合体 - Google Patents

オレフィン系極性共重合体 Download PDF

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Abstract

【課題】後周期遷移金属錯体触媒を用いて、エチレンやα−オレフィンとα,ω−末端官能基化オレフィンの共重合体を製造する
【解決手段】エチレン及び/又は炭素数3〜10のα−オレフィンと、一般式(1)で表わされるモノマー群より選ばれる極性基含有オレフィンモノマーから構成されることを特徴とする、オレフィン系極性共重合体。
【化1】
Figure 2013213121

(1)において、Qは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基、水酸基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基など、Tは極性基である
【選択図】なし

Description

本発明は、特定の構造を有する極性モノマーを構成成分とする、オレフィン系極性共重合体に関し、詳しくは、エチレン及び/又はα−オレフィンモノマーと末端に極性基を含有するオレフィンモノマーから共重合された、特異な構造を有する新規なオレフィン系極性共重合体に係わるものである。
ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィンは、樹脂材料の中で物性や成形性などの諸性質に優れ、経済性や環境問題適合性なども高く、更に、資源再利用性も備えているので、非常に汎用されかつ重要な産業資材である。
しかしながら、ポリオレフィンは、通常は、非極性であるため、他の材料との接着性や印刷適性、或はフィラー等との相溶性の物性などは十分ではなかった。
そこで、その物性改良手段として、ポリオレフィンへの極性官能基導入が検討され、有機過酸化物を用いて極性基含有モノマーをグラフトする方法が広く行われているが、この方法では、グラフト化反応と並行してオレフィン系樹脂双方の分子間架橋、及びオレフィン系樹脂の分子鎖切断などが発生するため、グラフト変性物にオレフィン系樹脂の優れた物性が維持されないという問題が発生している。
また、極性官能基導入手段として、オレフィンと極性モノマーを共重合させることも行われているが、オレフィンと極性基含有オレフィンモノマー(極性コモノマー)とを共重合する手段は高圧法に限定されていた(特許文献1及び特許文献2)。その共重合体中には多くの分岐構造を有し、低弾性率かつ機械物性の低いコポリマーしか得ることができない。
一方、従来一般に用いられているメタロセン触媒を用いた重合方法においては、エチレンと極性基含有モノマーを共重合させる際に、触媒重合活性が低下し共重合し難いとされていたが、メタロセン触媒を用いて、極性コモノマーを等モル以上の有機アルミニウム化合物と反応させた後に(官能基のマスク化)、オレフィンと共重合させる手法が報告されている。しかしながら、この手法では、コポリマー生成と同時に多量のアルミニウム塩が析出する問題点を有しており、有機アルミニウム化合物のコストの点からも普及していない。
ところで、近年において、いわゆるポストメタロセンと称される、後周期遷移金属錯体触媒を用い、有機アルミニウム化合物などのマスク化剤を使用することなく、オレフィンと極性コモノマーを共重合する試みが精力的に進められている。これまでに、極性コモノマーとして、アクリル酸エステル(特許文献3〜8)、アクリロニトリル(非特許文献1)、ビニルエーテル(非特許文献2)などが報告されている。
しかしながら、極性コモノマーのうちでもα,ω−末端官能基化オレフィンは、その重合性オレフィン部位が非共役構造であるために重合性が低く、オレフィン共重合することは困難であった。
特許第2792982号公報 特開平3−229713号公報 特表2002−521534号公報 特開平6−184214号公報 特開2008−223011号公報 特開2010−150246号公報 特開2010−150532号公報 特開2010−202647号公報
K.Nozaki etal.,J.Am.Chem.Soc.,2007,129,8948−8949. R.Jordan etal.,J.Am.Chem.Soc.,2007,129,8946−8947.
背景技術において記述したように、オレフィン系極性共重合体の開発状況を鑑みれば、いわゆるポストメタロセンと称される、後周期遷移金属錯体触媒を用いても、α,ω−末端官能基化オレフィンは、その重合性オレフィン部位が非共役構造であるために重合性が低く、オレフィンと共重合することは困難であったので、本発明者らは、後周期遷移金属錯体触媒を用いて、エチレンやα−オレフィンとα,ω−末端官能基化オレフィンの共重合体を製造することを、本発明の解決すべき課題とするものである。
ところで、本発明者らは、極性コモノマー共重合体とオレフィン系樹脂とを特定の割合でブレンドすることで優れた性能を発現させることを意図し、種々検討したところ、これまでに提案された極性コモノマーを用いた共重合体では、オレフィン系樹脂との相溶性が必ずしも十分でないことが分かり、極性コモノマーの共役オレフィン構造を、非共役のα−オレフィン構造に近づけることで改善できるのではと推考した。かかる推考から、本発明では、α,ω−末端官能基化オレフィン共重合体が、オレフィン系樹脂への親和性を改善できる可能性があることが期待された。
一方、これまでに我々発明者らは、特定の構造を有する、新規な後周期遷移金属錯体触媒を研究開発し、その触媒性能が大幅に向上することを見い出してきた。かかる研究成果を踏まえ、上記の推考と期待とを参酌して、今回、これらの開発触媒を用いることで、従来においては実現が困難であった、オレフィンとα,ω−末端官能基化オレフィンが共重合可能であることを見い出した。
しかして、本発明は、キレート性配位子を有する第5〜10族の遷移金属触媒、特に、パラジウム金属にトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒の存在下に重合されたところの、エチレン及び/又は炭素数3〜10のα−オレフィンと、一般式(1)で表わされるモノマー群より選ばれる極性基含有オレフィンモノマーから構成されることを特徴とする、オレフィン系極性共重合体である。(一般式(1)において、Qは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基、水酸基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基などであり、Tは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基等である。)
なお、「〜から構成される」の表現は、上記のモノマーに限定されることを些かも意図していず、他のモノマーも含み得るのは当然である。
Figure 2013213121
かくして、当オレフィン系極性共重合体は、明白に、オレフィンとα,ω−末端官能基化オレフィンの共重合体であり、従来では重合できず、重合の報告も文献になされていない新規な共重合体であって、本発明は当共重合体を基本発明(第一の発明)とし、また、本発明は、補足的に、極性置換基Tを規定し、共重合体のメチル分岐度、Mw/Mnの比、融点、密度、極性基含有モノマーの構造単位量、遷移金属等を特定する、実施態様発明を包含するものである。
以上において、本発明の創作の経緯と発明の基本的な構成と特徴について、概括的に記述したので、ここで本発明の全体的な構成を俯瞰して総括すると、本発明は次の[1]〜[11]の発明単位群からなるものである。
ここで、[1]における、特定構造を有するオレフィン系極性共重合体が、基本発明[1]として構成され、[2]以下の各発明は、基本発明に付随的な要件を加え、或いはその実施の態様を示すものである。そして、[9]〜[11]の発明は、本発明の特定構造を有するオレフィン系極性共重合体の製法に係り付加的な要件を規定している。なお、全発明単位をまとめて発明群と称す。
[1]エチレン及び/又は炭素数3〜10のα−オレフィンと、一般式(1)で表わされるモノマー群より選ばれる極性基含有オレフィンモノマーから構成されることを特徴とする、オレフィン系極性共重合体。
Figure 2013213121
[一般式(1)において、Qは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基、水酸基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素数3〜20の二価の炭化水素基、炭素数2〜10のエステル基で置換された炭素数4〜20の二価の炭化水素基、炭素数3〜18のシリル基で置換された炭素数5〜20の二価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基からなる群より選ばれた置換基を示す。
Tは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、カルボキシル基、炭素数2〜10のエステル基、炭素数2〜10のオキシラニル基、アミノ基、炭素数1〜12の置換アミノ基、炭素数3〜18のシリル基又はハロゲンからなる群より選ばれた置換基を示す。]
[2]極性基含有モノマーにおいて、Tが炭素数2〜10のオキシラニル基、又は炭素数1〜12の置換アミノ基、或いはカルボン酸無水物基であることを特徴とする、[1]におけるオレフィン系極性共重合体。
[3]13C−NMRにより算出されるメチル分岐度が、コポリマー1,000炭素当たり5.0以下であることを特徴とする、[1]は[2]におけるオレフィン系極性共重合体。
[4]ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比が1.5〜3.5の範囲であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかにおけるオレフィン系極性共重合体。
[5]融点が50℃〜140℃であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかにおけるオレフィン系極性共重合体。
[6]密度が0.94〜0.98g/cmであることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかにおけるオレフィン系極性共重合体。
[7]共重合体中の極性基含有モノマーに由来する構造単位量が0.001〜10.0
00mol%であることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかにおけるオレフィン系極性共重合体。
[8]有機アルミニウム化合物又は有機ホウ素化合物を使用せずに重合されたことを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかにおけるオレフィン系極性共重合体。
[9]キレート性配位子を有する第5〜10族の遷移金属触媒の存在下に重合されたことを特徴とする、[1]〜[8]のいずれかにおけるオレフィン系極性共重合体。
[10]遷移金属触媒が、パラジウム金属にトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒であることを特徴とする、[9]におけるオレフィン系極性共重合体。
[11]トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が、少なくとも一つは二級又は三級のアルキル基で置換されたフェニル基を有することを特徴とする、10]におけるオレフィン系極性共重合体。
本発明においては、特定の後周期遷移金属錯体触媒を用いて、エチレンやα−オレフィンとα,ω−末端官能基化オレフィンの共重合体を製造することを可能とした。
かくして、本発明により、メチル分岐度が少なく、かつ、分子量分布の狭い、エチレン及び/又は炭素数3〜10のα−オレフィンと、極性基含有オレフィンモノマーとの共重合体を提供することが可能になった。
以下においては、本発明のオレフィン系極性共重合体について、更にはその共重合体の製法や利用等について、項目毎に具体的かつ詳細に説明する。
[1]本発明の極性基含有モノマー
(1)極性基含有モノマーについて
本発明で用いられる極性基含有モノマーは、α,ω−末端官能基化オレフィンであり、一般式(1)からなる群より選ばれることを特徴とする。
Figure 2013213121
[一般式(1)において、Qは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基、水酸基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素数3〜20の二価の炭化水素基、炭素数2〜10のエステル基で置換された炭素数4〜20の二価の炭化水素基、炭素数3〜18のシリル基で置換された炭素数5〜20の二価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基からなる群より選ばれた置換基を示す。
Tは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、カルボキシル基、炭素数2〜10のエステル基、炭素数2〜10のオキシラニル基、アミノ基、炭素数1〜12の置換アミノ基、炭素数3〜18のシリル基、又は、ハロゲンからなる群より選ばれた置換基を示す。]
(2)極性基含有モノマーにおける具体例
炭素数2〜10の二価の炭化水素基であるQは、好ましくは、炭素数2〜8の二価の炭化水素基、更に好ましくは、炭素数2〜8のアルキレン基、フェニレン基、アルキレン−フェニレン−アルキレン基である。
好ましい具体例は、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、1,4−シクロへキシレン基、{メチレン−(1,4−シクロへキシレン)}基、{メチレン−(1,4−シクロへキシレン)−メチレン}基、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、3−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、3−ペンテニレン基、4−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、3−ヘキセニレン基、4−ヘキセニレン基、5−ヘキセニレン基、フェニレン基、メチレンフェニレン基、{メチレン−(1 ,4−フェニレン)−メチレン}基であり、更に好ましくは、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、4−ヘキセニレン基、{メチレン−(1,4−シクロへキシレン)−メチレン}基、フェニレン基であり、特に好ましくは、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、4−ヘキセニレン基、{メチレン−(1,4−シクロへキシレン)−メチレン}基である。
水酸基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基であるQは、好ましくは、前述の炭素数2〜10の二価の炭化水素基の水酸基置換体が挙げられる。
好ましい具体例は、(1−ヒドロキシ)エチレン基、(2−ヒドロキシ)エチレン基、(1−ヒドロキシ)トリメチレン基、(2−ヒドロキシ)トリメチレン基、(3−ヒドロキシ)トリメチレン基、(1−ヒドロキシ)テトラメチレン基、(2−ヒドロキシ)テトラメチレン基、(3−ヒドロキシ)テトラメチレン基、(4−ヒドロキシ)テトラメチレン基、(1−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(2−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(3−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(4−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(5−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(1−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(2−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(3−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(4−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(5−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(6−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基であり、更に好ましくは、(1−ヒドロキシ)エチレン基、(2−ヒドロキシ)エチレン基、(5−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(6−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基であり、特に好ましくは、(5−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(6−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基である。
炭素数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素数3〜20の二価の炭化水素基であるQは、好ましくは、前述の炭素数2〜10の二価の炭化水素基を、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換した構造体が挙げられる。
好ましい具体例は、(1−メトキシ)エチレン基、(2−メトキシ)エチレン基、(1−エトキシ)エチレン基、(2−エトキシ)エチレン基、(1−メトキシ)トリメチレン基、(2−メトキシ)トリメチレン基、(3−メトキシ)トリメチレン基、(1−メトキシ)テトラメチレン基、(2−メトキシ)テトラメチレン基、(3−メトキシ)テトラメチレン基、(4−メトキシ)テトラメチレン基、(1−メトキシ)ペンタメチレン基、(2−メトキシ)ペンタメチレン基、(3−メトキシ)ペンタメチレン基、(4−メトキシ)ペンタメチレン基、(5−メトキシ)ペンタメチレン基、(1−メトキシ)ヘキサメチレン基、(2−メトキシ)ヘキサメチレン基、(3−メトキシ)ヘキサメチレン基、(4−メトキシ)ヘキサメチレン基、(5−メトキシ)ヘキサメチレン基、(6−メトキシ)ヘキサメチレン基であり、 更に好ましくは、(1−メトキシ)エチレン基、(2−メトキシ)エチレン基、(1−エトキシ)エチレン基、(2−エトキシ)エチレン基であり、特に好ましくは、(1−メトキシ)エチレン基、(2−メトキシ)エチレン基である。
炭素数2〜10のエステル基で置換された炭素数4〜20の二価の炭化水素基であるQは、好ましくは、前述の炭素数2〜10の二価の炭化水素基を、炭素数2〜10のエステル基で置換した構造体が挙げられる。好ましい具体例は、(1−メトキシカルボニル)エチレン基、(2−メトキシカルボニル)エチレン基、(1−エトキシカルボニル)エチレン基、(2−エトキシカルボニル)エチレン基、(1−メトキシカルボニル)トリメチレン基、(2−メトキシカルボニル)トリメチレン基、(3−メトキシカルボニル)トリメチレン基、(1−メトキシカルボニル)テトラメチレン基、(2−メトキシカルボニル)テトラメチレン基、(3−メトキシカルボニル)テトラメチレン基、(4−メトキシカルボニル)テトラメチレン基、(1−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(2−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(3−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(4−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(5−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(1−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(2−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(3−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(4−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(5−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(6−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基であり、更に好ましくは、(1−メトキシカルボニル)エチレン基、(2−メトキシカルボニル)エチレン基、(1−エトキシカルボニル)エチレン基、(2−エトキシカルボニル)エチレン基であり、特に好ましくは、(1−メトキシカルボニル)エチレン基、(2−メトキシカルボニル)エチレン基である。
炭素数3〜18のシリル基で置換された炭素数5〜20の二価の炭化水素基であるQは、好ましくは、前述の炭素数2〜10の二価の炭化水素基を、炭素数3〜18のシリル基で置換した構造体が挙げられる。好ましい具体例は、(1−トリメチルシリル)エチレン基、(2−トリメチルシリル)エチレン基、(1−トリエチルシリル)エチレン基、(2−トリエチルシリル)エチレン基、(1−トリメチルシリル)トリメチレン基、(2−トリメチルシリル)トリメチレン基、(3−トリメチルシリル)トリメチレン基、(1−トリメチルシリル)テトラメチレン基、(2−トリメチルシリル)テトラメチレン基、(3−トリメチルシリル)テトラメチレン基、(4−トリメチルシリル)テトラメチレン基、(1−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(2−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(3−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(4−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(5−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(1−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(2−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(3−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(4−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(5−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(6−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基であり、更に好ましくは、(1−トリメチルシリル)エチレン基、(2−トリメチルシリル)エチレン基、(1−トリエチルシリル)エチレン基、(2−トリエチルシリル)エチレン基であり、特に好ましくは、(1−トリメチルシリル)エチレン基、(2−トリメチルシリル)エチレン基である。
ハロゲン原子で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基からなる群より選ばれた置換基であるQは、好ましくは、前述の炭素数2〜10の二価の炭化水素基を、ハロゲン原子で置換した構造体が挙げられる。好ましい具体例は、(1−クロロ)エチレン基、(2−クロロ)エチレン基、(1−ブロモ)エチレン基、(2−ブロモ)エチレン基、(1−クロロ)トリメチレン基、(2−クロロ)トリメチレン基、(3−クロロ)トリメチレン基、(1−クロロ)テトラメチレン基、(2−クロロ)テトラメチレン基、(3−クロロ)テトラメチレン基、(4−クロロ)テトラメチレン基、(1−クロロ)ペンタメチレン基、(2−クロロ)ペンタメチレン基、(3−クロロ)ペンタメチレン基、(4−クロロ)ペンタメチレン基、(5−クロロ)ペンタメチレン基、(1−クロロ)ヘキサメチレン基、(2−クロロ)ヘキサメチレン基、(3−クロロ)ヘキサメチレン基、(4−クロロ)ヘキサメチレン基、(5−クロロ)ヘキサメチレン基、(6−クロロ)ヘキサメチレン基であり、更に好ましくは、(1−クロロ)エチレン基、(2−クロロ)エチレン基、(1−ブロモ)エチレン基、(2−ブロモ)エチレン基であり、特に好ましくは、(1−クロロ)エチレン基、(2−クロロ)エチレン基である。
炭素数1〜10のアルコキシ基であるTは、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、グリシジル基などである。これらの中で、更に好ましい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、又はイソプロポキシ基、グリシジル基であり、特に好ましくは、メトキシ基、グリシジル基である。
炭素数6〜20のアリーロキシ基であるTは、好ましくは炭素数6〜12のアリーロキシ基であり、好ましい具体例は、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、及び2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ基が挙げられる。
これらの中で、更に好ましい置換基としては、フェノキシ基、又は2,6−ジメチルフェノキシ基であり、特に好ましくは、フェノキシ基である。
炭素数2〜10のエステル基であるTは、好ましくは炭素数2〜8のエステル基であり、好ましい具体例は、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、(4−ヒドロキシブチル)カルボニル基、(4−グリシジルブチル)カルボニル基、フェノキシカルボニル基、スクシン酸無水物基、スクシン酸イミド基が挙げられる。これらの中で、更に好ましい置換基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(4−ヒドロキシブチル)カルボニル基、スクシン酸無水物基が挙げられ、特に好ましくは、メトキシカルボニル基、スクシン酸無水物基である。
炭素数2〜10のオキシラニル基であるTの好ましい具体例は、オキシラン−1−イル基、2−メチル−オキシラン−1−イル基、2−エチル−オキシラン−1−イル基、2−フェニル−オキシラン−1−イル基が挙げられる。これらの中で、更に好ましい置換基は、オキシラン−1−イル基、2−メチル−オキシラン−1−イル基である。
炭素数1〜12の置換アミノ基であるTの好ましい具体例は、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、モノフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、モルホリニル基が挙げられる。
これらの中で、更に好ましい置換基は、ジメチルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基である。
炭素数3〜18のシリル基であるTの好ましい具体例は、トリメチルシリル基、(ジメチル)(フェニル)シリル基、(ジフェニル)(メチル)シリル基、トリフェニルシリル基である。これらの中で、更に好ましい置換基は、トリメチルシリル基である。
ハロゲンであるTは、好ましくはフッ素、塩素、臭素が挙げられる。これらの中で、更に好ましい置換基は、塩素である。
[2]本発明におけるα−オレフィン
本発明に用いられるα−オレフィンは、エチレン及び/又は炭素数3〜10のα−オレフィンである。好ましい具体例として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられ、特に好ましい具体例として、エチレンが挙げられる。また、α−オレフィンは、一種類を使用してもよいし、複数を併用してもよい。
[3]遷移金属触媒
本発明の極性基含有オレフィン共重合体の製造方法の一例として、キレート性配位子を有する第5〜10族の遷移金属化合物を触媒として用い、重合する方法がある。
好ましい遷移金属の具体例として、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子、マンガン原子、鉄原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子等が挙げられる。これらの中で好ましくは、バナジウム原子、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子であり、特に好ましくは、ニッケル原子、パラジウム原子である。これらの金属は、単一であっても複数を併用してもよい。
キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位(bidentate)又は多座配位(m ultidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Brookhartらによる総説に、その構造が例示されている(Chem.Rev.,2000,100,1169)。
好ましくは、二座アニオン性P、O配位子として例えば、リンスルホン酸、リンカルボン酸、リンフェノール、リンエノラートが挙げられ、他に、二座アニオン性N、O配位子として例えば、サリチルアルドイミナートやピリジンカルボン酸が挙げられ、他に、ジイミン配位子、ジフェノキサイド配位子、ジアミド配位子が挙げられる。
ここで、キレート性配位子を有する第5〜10族の遷移金属化合物の代表としては、代表的に、いわゆる、ホスフィンフェノラート系及びホスフィンスルホナート系と称される触媒が知られている。ホスフィンフェノラート系触媒は、置換基を有していても良いアリール基を有するリン系リガンドがニッケル金属に配位した触媒である(例えば、特開2010−260913号公報を参照)。ホスフィンフェノラート系触媒は、本発明の実施例においても使用され、置換基を有していても良いアリール基を有するリン系リガンドが、ニッケル又はパラジウム金属に配位した触媒であり(例えば、特開2010−202647号公報を参照)、特に、トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が、少なくとも一つは二級もしくは三級のアルキル基で置換されたフェニル基を有することが好ましい(例えば、特開2010−150246号公報を参照)。
[4]重合触媒の使用態様
本発明の重合触媒は、単独で用いてもよく、また担体に担持して用いることもできる。使用可能な担体としては、本発明の主旨を損なわない限りにおいて、任意の担体を用いることができる。
一般に、無機酸化物やポリマ−担体が好適に使用できる。具体的には、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThOなど又はこれらの混合物が挙げられ、SiO−Al、SiO−V、SiO−TiO、SiO−MgO、SiO−Crなどの混合酸化物も使用することができ、無機ケイ酸塩、ポリエチレン担体、ポリプロピレン担体、ポリスチレン担体、ポリアクリル酸担体、ポリメタクリル酸担体、ポリアクリル酸エステル担体、ポリエステル担体、ポリアミド担体、ポリイミド担体などが使用可能である。
これらの担体については、粒径、粒径分布、細孔容積、比表面積などに特に制限はなく、任意のものが使用可能である。
触媒成分は、重合槽内で、或は重合槽外でオレフィンの存在下で予備重合を行ってもよい。オレフィンとは炭素間二重結合を少なくとも1個含む炭化水素をいい、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチルブテン−1、スチレン、ジビニルベンゼンなどが例示されるが、特に種類に制限はなく、これらと他のオレフィンとの混合物を用いてもよい。好ましくは炭素数2又は3のオレフィンである。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
[5]共重合反応
本発明における共重合反応は、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素溶媒や液化α−オレフィンなどの液体、また、ジエチルエ−テル、エチレングリコ−ルジメチルエ−テル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、安息香酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、ホルミルアミド、アセトニトリル、メタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、エチレングリコ−ルなどのような極性溶媒の存在下或いは非存在下に行われる。また、ここで記載した液体化合物の混合物を溶媒として使用してもよい。なお、高い重合活性や高い分子量を得るうえでは、上述の炭化水素溶媒がより好ましい。
本発明における共重合に際して、公知の添加剤の存在下又は非存在下で共重合を行うことができる。添加剤としては、ラジカル重合禁止剤や、生成共重合体を安定化する作用を有する添加剤が好ましい。例えば、キノン誘導体やヒンダ−ドフェノ−ル誘導体などが好ましい添加剤の例として挙げられる。
具体的には、モノメチルエ−テルハイドロキノンや、2,6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノ−ル(BHT)、トリメチルアルミニウムとBHTとの反応生成物、4価チタンのアルコキサイドとBHTとの反応生成物などが使用可能である。
また、添加剤として、無機及び又は有機フィラ−を使用し、これらのフィラ−の存在下で重合を行ってもよい。
本発明において、重合形式に特に制限はない。媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが好ましく用いられる。
また、重合様式としては、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの様式でもよい。
未反応モノマ−や媒体は、生成共重合体から分離し、リサイクルして使用してもよい。リサイクルの際、これらのモノマ−や媒体は、精製して再使用してもよいし、精製せずに再使用してもよい。生成共重合体と未反応モノマ−及び媒体との分離には、従来の公知の方法が使用できる。例えば、濾過、遠心分離、溶媒抽出、貧溶媒を使用した再沈などの方法が使用できる。
共重合温度、共重合圧力及び共重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。
即ち、共重合温度は、通常−20℃から290℃、好ましくは0℃から250℃、共重合圧力は、0.1MPaから100MPa、好ましくは、0.3MPaから90MPa、共重合時間は、0.1分から10時間、好ましくは、0.5分から7時間、更に好ましくは1分から6時間の範囲から選ぶことができる。
本発明において、共重合は、一般に不活性ガス雰囲気下で行われる。例えば、窒素、アルゴン雰囲気が使用でき、窒素雰囲気が好ましく使用される。なお、少量の酸素や空気の混入があってもよい。
共重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても特に制限はなく、目的に応じて様々な供給法をとることができる。例えばバッチ重合の場合、予め所定量のモノマーを共重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を共重合反応器に供給してもよい。また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を共重合反応器に連続的に、又は間歇的に供給し、共重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
共重合体の組成の制御に関しては、複数のモノマーを反応器に供給し、その供給比率を変えることによって制御する方法を一般に用いることができる。その他、触媒の構造の違いによるモノマー反応性比の違いを利用して共重合組成を制御する方法や、モノマー反応性比の重合温度依存性を利用して共重合組成を制御する方法が挙げられる。
共重合体の分子量制御には、従来公知の方法を使用することができる。即ち、重合温度を制御して分子量を制御する方法、モノマー濃度を制御して分子量を制御する方法、連鎖移動剤を使用して分子量を制御する方法、遷移金属錯体中の配位子構造の制御により分子量を制御するなどが挙げられる。
連鎖移動剤を使用する場合には、従来公知の連鎖移動剤を用いることができる。例えば、水素、メタルアルキルなどを使用することができる。
[6]コポリマー組成
本発明における共重合体は、共重合体中の極性基含有モノマーに由来する構造単位量が0.001〜10.000mol%であることが好ましい。これらのうちで特に、0.0
10〜5.000mol%の範囲で選択されることが好ましい。
極性基含有モノマーとして不飽和ジカルボン酸無水物を用いた共重合体は、含有するジカルボン酸無水物基が空気中の水分と反応して開環し、一部がジカルボン酸となる場合がある。本発明の主旨を逸脱しない範囲においてならば、ジカルボン酸無水物基が開環していても良い。
この構造単位量は、遷移金属触媒の選択や、重合時に添加する極性基含有モノマー量、重合時の圧力や温度で制御することが可能である。共重合体中の極性基含有モノマーに由来する構造単位量を増加させる具体的手段として、重合時に添加する極性基含有モノマー量の増加、重合時のオレフィン圧力の低減、重合温度の増加が有効である。例えば、これらの因子を調節して、目的とするコポリマー領域に制御することが求められる。
本発明における共重合体は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比が1.5〜3.5の範囲であることが好ましい。このうちで更に好ましくは1.6〜3.3の範囲であり、特に好ましくは1.7〜3.0の範囲である。
Mw/Mnがこの範囲を満たすと、積層体の成形を始めとして各種加工性が十分となり、接着強度が優れたものとなる。Mw/Mnは、使用する遷移金属触媒の選択で制御することが可能である。
本発明における共重合体は、融点が50℃〜140℃であることが好ましい。このうちで特に好ましくは、60℃〜138℃であり、更に好ましくは70℃〜135℃の範囲である。この範囲を満たすと耐熱性と接着性が優れたものとなる。
この融点は、使用する遷移金属触媒の選択や、重合時に添加する極性基含有モノマー量で制御することが可能である。共重合体の融点を増加させる具体的手段として、重合時に添加する極性基含有モノマー量の低減、重合時のオレフィン圧力の増加、重合温度の低下が有効である。例えば、これらの因子を調節して、目的とするコポリマー領域に制御することが求められる。
本発明における共重合体は、13C−NMRにより算出されるメチル分岐度が、コポリマー1,000炭素あたり5.0以下であることが好ましい。このうちで特に好ましくは、コポリマー1,000炭素あたり3.0以下である。メチル分岐がこの数値を満たすと弾性率が高く、成形体の機械強度も高くなる。
このメチル分岐度は、使用する遷移金属触媒の選択や、重合温度で制御することが可能である。共重合体のメチル分岐度を低下させる具体的手段として、重合温度の低下が有効である。例えば、これらの因子を調節して、目的とするコポリマー領域に制御することが求められる。
本発明における共重合体は、密度が0.94〜0.98g/cmであることが好ましい。このうちで特に好ましくは、0.94〜0.97g/cmである。
この範囲を満たせば、弾性率及び機械物性が優れ、成形性も良好なものとなる。この密度は、使用する遷移金属触媒の選択や、重合温度で制御することが可能である。共重合体の密度を低下させる具体的手段として、重合温度の低下が有効である。例えば、これらの因子を調節して、目的とするコポリマー領域に制御することが求められる。
本発明における共重合体は、FRが4.00〜20.00であることが好ましい。このうちで特に好ましくは、4.00〜12.00である。この範囲を満たせば、成形性が良好で、弾性率及び機械物性も優れたものとなる。このFRは、使用する遷移金属触媒の選択や、重合温度で制御することが可能である。共重合体のFRを低下させる具体的手段として、重合温度の低下が有効である。例えば、これらの因子を調節して、目的とするコポリマー領域に制御することが求められる。
以下において、本発明を実施例によって具体的に説明し、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。なお、実施例で用いた配位子構造を以下に示した。
Figure 2013213121
1.評価方法
(1)分子量及び分子量分布(Mw、Mn、Q値)
(測定条件)使用機種:ウォ−タ−ズ社製150C 検出器:FOXBORO社
製MIRAN1A・IR検出器(測定波長:3.42μm) 測定温度:140℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB) カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本) 流速:1.0mL/分 注入量:0.2mL
(試料の調製)試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノ−ル)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させた。
(分子量の算出)標準ポリスチレン法により行い、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソ−社製の銘柄であり、F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000、である。各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成した。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
(2)融点(Tm)
セイコ−インスツルメンツ社製DSC6200示差走査熱量測定装置を使用して、シ−ト状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して結晶化させた後に、10℃/分で200℃まで昇温することにより融解曲線を得た。
融解曲線を得るために行った最後の昇温段階における主吸熱ピ−クのピ−クトップ温度を融点Tmとし、該ピ−クのピ−ク面積をΔHmとした。
(3)NMR分析
(3−1)測定条件
試料200〜250mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C6D5Br)=4/1(体積比)2.4ml及び化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れて窒素置換した後封管し、加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定に供した。NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400M型NMR装置を用いて試料温度130℃で行った。
H−NMRはパルス角1°、パルス間隔1.8秒、積算回数1,024回の条件で測定した。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチルプロトンのピークを0.088ppmとして設定し、他のプロトンによるピークの化学シフトはこれを基準とした。
13C−NMRはパルス角90°、パルス間隔20秒、積算回数512回とし、プロトン完全デカップリング法で測定した。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチル炭素のピークを1.98ppmとして設定し、他の炭素によるピークの化学シフトはこれを基準とした。
(3−2)メチル分岐量の測定方法
メチル分岐量は13C−NMRスペクトルで30.0ppm付近のポリエチレン骨格主鎖炭素によるピークの積分強度を1,000に規格化した時の20.0ppm、33.2ppm、37.5ppmのメチル分岐による3本の特性ピークの積分強度の和の1/4をもって1,000C当たりのメチル分岐の個数として求めた。
(3−3)コモノマー含有量の測定方法
コモノマー含有量はH−NMRスペクトルで1.3ppm付近のポリエチレン骨格主鎖炭素に結合したプロトンによるピークの積分強度Imainと、各コモノマーの特性ピークの積分強度を用いて求めた。
(3−3−1)1,2−エポキシ−9−デセン含有量
2.4、2.6、2.8 ppmに生じる共重合体中に含まれる1,2−エポキシ−9−デセンのプロトンによるピークの積分強度の和をI2.4−2.8とした時に、以下の式に従って求めた。
1,2−エポキシ−9−デセン含有量 (mol%)=(400/3)×I2.4−2.8/Imain
(3−3−2)(2,7−オクタジエン−1−イル)こはく酸無水物含有量
2.2〜3.0ppmの範囲に生じる共重合体中に含まれる(2,7−オクタジエン−1−イル)こはく酸無水物のプロトンによるピークの積分強度の和をI2.2−3.0とした時に、以下の式に従って求めた。
(2,7−オクタジエン−1−イル)こはく酸無水物含有量 (mol%)=80×I2.2−3.0/Imain
(3−3−3)5−ヘキセン−1−オール含有量
3.5ppmに生じる共重合体中に含まれる5−ヘキセン−1−オールのプロトンによるピークの積分強度をI3.5とした時に、以下の式に従って求めた。
5−ヘキセン−1−オール含有量 (mol%)=200×I3.5/Imain
(3−3−4)7−オクテン−1−オール含有量
3.5ppmに生じる共重合体中に含まれる7−オクテン−1−オールのプロトンによるピークの積分強度をI3.5とした時に、以下の式に従って求めた。
7−オクテン−1−オール含有量 (mol%)=200×I3.5/Imain
(3−3−5)N,N−ジメチル−7−オクテン−1−アミン含有量
2.2、2.3ppmに生じる共重合体中に含まれるN,N−ジメチル−7−オクテン−1−アミンのプロトンによるピークの積分強度の和をI2.2−2.3とした時に、以下の式に従って求めた。
N,N−ジメチル−7−オクテン−1−アミン含有量 (mol%)=50×I2.2−2.3/Imain
(4)MFR及びFR
MFRは、JIS K6760に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定した。FR(フローレイト比)は、190℃、10kg荷重の条件で同様に測定したMFRであるMFR10kgとMFRとの比(=MFR10kg/MFR)から算出した。
(5)密度
密度は、JIS K7112に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
2.配位子合成
下記合成例で得られた配位子を用いた。なお、以下の合成例で特に断りのない限り、操作は精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は脱水・脱酸素したものを用いた。
(合成例1)配位子(I)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(2g,12.6mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,10mL,25.3mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(1.0mL,12.6mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液A)。
1−ブロモ−2−シクロヘキシルベンゼン(6g,25.3mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、t−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M,31.6mL,50.6mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、1時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Aに−78℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。LC−MS純度50%・水(200mL)を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)。塩化メチレン抽出し(100mL×3)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=50/1)により精製し、白色の目的物を1.0g得た。
H−NMR(CDCl,ppm):7.86(m,1H),7.30(dt,J =1.2,7.6Hz,1H),7.24−7.15(m,5H),6.96(m, 2H),6.83(m,1H),6.57(m,2H),3.21(br,2H), 1.55(br,8H),1.31(br,4H),1.14(br,8H).31P−NMR(CDCl,ppm):−28.7.
(合成例2)リンスルホン酸配位子(II)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(2g,12.6mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,10mL,25.3mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(1.0mL,12.6mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液B1)。
マグネシウムをテトラヒドロフラン(20mL)に分散させ、1−ブロモ−2−メトキシベンゼン(2.3g,12.6mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液B1に−78℃で滴下し、1時間撹拌した(反応液B2)。
1−ブロモ−2−イソプロピルベンゼン(2.5g,12.6mmol)のジエチルエーテル(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,5.0mL,12.6mmol)を−30℃でゆっくりと滴下し、室温で2時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液B2に−78℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。LC−MS純度60%・水(50mL)を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)。塩化メチレン抽出し(100mL)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。メタノールで再結晶化することにより、白色の目的物を1.1g得た。
H−NMR(CDCl,ppm):8.34(t,J=6.0Hz,1H), 7.7−7.6(m,3H),7.50(t,J=6.4Hz,1H),7.39(m, 1H),7.23(m,1H),7.1−6.9(m,5H),3.75(s,3 H), 3.05(m,1 H),1.15(d,J=6.8Hz,3H),1.04(d, J=6.4 Hz,3H).31P−NMR(CDCl,ppm):−10.5.
(合成例3)配位子(III)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(400mg,2.5mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,2mL,5mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−70℃まで冷却し、三塩化リン(340mg,2.5mmol)を加え、室温まで温度を上昇させながら2時間撹拌した(反応液C)。
1−ブロモ−2−イソプロピルベンゼン(1g,5mmol)のジエチルエーテル(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,2mL,5mmol)を−30℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら3時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Cに室温で滴下し、一晩撹拌した。反応後、水(20mL)を加え、エーテル抽出し(20mL×2)、1N塩酸(20mL×2)で洗浄した後、溶媒を留去した。メタノール(5mL)で洗浄し、白色の目的物を100mg得た。
H−NMR(CDCl,ppm):8.35(ddd,J=0.8,4.8, 7.6Hz,1H),7.74(tt,J=1.4,7.6Hz,1H),7.65(t,J=7.6Hz,2H),7.53(t,J=6.4Hz,2H),7.42(ddt,J=1.2,2.8,7.6Hz,1H),7.26(ddt,J =0.8,4.8,8.0Hz,2H),7.05(dd,J=0.8,7.6Hz,1H),6.98(dd,J=0.8,5.2Hz,2H),3.00 (m, 2H),1.15(d,J=6.8 Hz,6 H),1.09(d,J=6.0 Hz,6H).31P−NMR(CDCl,ppm):9.5.
3.重合
実施例1(エチレン/1,2−エポキシ−9−デセン共重合)
充分に窒素置換した30mLフラスコに、150μmolのビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムとリンスルホン酸配位子(II)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて20分間処理することで、触媒スラリーを調製した。次に、内容積2.4Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、1,2−エポキシ−9−デセン(コモノマー濃度0.2mol/L)、精製トルエンを精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した(全量700mL)。先に調製した触媒溶液を添加し、重合温度100℃、エチレン圧1.0MPaで重合を開始した。反応中は温度を一定に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給した。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーをアセトン(1L)を用いてポリマーを再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。濾過により得られた固形ポリマーをアセトンで洗浄後、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にポリマーを回収した。
実施例2〜実施例5
表1に示すコノモマー種、及びコモノマー濃度に変更する以外は、実施例1に準じて、共重合体を製造した。重合体の物性評価結果を表2にまとめた。
Figure 2013213121
Figure 2013213121
実施例6〜8
(ビスジベンジリデンアセトン)パラジウムとホスフィンスルホナート配位子(III)のスラリーを別々に用意し、超音波振動器にて処理した後、混合して室温で15分間撹拌することで触媒スラリーを調製した。内容積10mLの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン、所定量のコモノマーを導入した。昇温後、エチレンで加圧して2MPaとした後、先に調製した触媒スラリーを所定量添加して、重合を開始した。なお、重合時の液総量は5mLになるように調製した。反応中は温度を一定に保ち、エチレンの分圧が2MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。重合終了後に、未反応のエチレンをパージ後、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーを濾過により回収し、40℃で6時間減圧乾燥した。
実施例6〜8の重合条件、及び、生成コポリマーの分析結果を表3に示す。
Figure 2013213121
[実施例の結果の考察]
実施例1〜8の結果において、キレート性配位子を有する第5〜10族の遷移金属触媒、特に、パラジウム金属にトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒の存在下に重合することにより、エチレン及び/又は炭素数3〜10のα−オレフィンと、一般式(1)で表わされるモノマー群より選ばれる極性基含有オレフィンモノマーから構成されることを特徴とする、α,ω−末端官能基化オレフィンのオレフィン系極性共重合体が製造されている。そして、当共重合体は、メチル分岐度が少なく、かつ、分子量分布の狭い、優れた共重合体である。
本発明により、エチレン及び/又は炭素数3〜10のαオレフィンと、α,ω−末端官能基化オレフィンである、極性基含有オレフィンモノマーとの共重合体を得ることが可能になった。かくして、新規なα,ω−末端官能基化オレフィンの共重合体を提供しうることになり、ポリオレフィン共重合体の産業分野において格別に有用となる。

Claims (11)

  1. エチレン及び/又は炭素数3〜10のα−オレフィンと、一般式(1)で表わされるモノマー群より選ばれる極性基含有オレフィンモノマーから構成されることを特徴とする、オレフィン系極性共重合体。
    Figure 2013213121
    [一般式(1)において、Qは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基、水酸基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素数3〜20の二価の炭化水素基、炭素数2〜10のエステル基で置換された炭素数4〜20の二価の炭化水素基、炭素数3〜18のシリル基で置換された炭素数5〜20の二価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基からなる群より選ばれた置換基を示す。
    Tは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、カルボキシル基、炭素数2〜10のエステル基、炭素数2〜10のオキシラニル基、アミノ基、炭素数1〜12の置換アミノ基、炭素数3〜18のシリル基又はハロゲンからなる群より選ばれた置換基を示す。]
  2. 極性基含有モノマーにおいて、Tが炭素数2〜10のオキシラニル基、又は炭素数1〜12の置換アミノ基、或いはカルボン酸無水物基であることを特徴とする、請求項1に記載のオレフィン系極性共重合体。
  3. 13C−NMRにより算出されるメチル分岐度が、コポリマー1,000炭素当たり5.0以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のオレフィン系極性共重合体。
  4. ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比が1.5〜3.5の範囲であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン系極性共重合体。
  5. 融点が50℃〜140℃であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のオレフィン系極性共重合体。
  6. 密度が0.94〜0.98g/cmであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオレフィン系極性共重合体。
  7. 共重合体中の極性基含有モノマーに由来する構造単位量が0.001〜10.000mol%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のオレフィン系極性共重合体。
  8. 有機アルミニウム化合物又は有機ホウ素化合物を使用せずに重合されたことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のオレフィン系極性共重合体。
  9. キレート性配位子を有する第5〜10族の遷移金属触媒の存在下に重合されたことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のオレフィン系極性共重合体。
  10. 遷移金属触媒が、パラジウム金属にトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒であることを特徴とする、請求項9に記載のオレフィン系極性共重合体。
  11. トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が、少なくとも一つは二級又は三級のアルキル基で置換されたフェニル基を有することを特徴とする、請求項10に記載のオレフィン系極性共重合体。
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