JP6616779B2 - 極性基含有オレフィン系重合体の製造方法 - Google Patents

極性基含有オレフィン系重合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、オレフィン重合用触媒、及びオレフィン系重合体、特に極性基を有するアリル化合物等の極性基含有モノマー重合体の製造方法に関する。
非極性モノマーであるエチレンやプロピレンなどのオレフィンと極性基を有するビニルモノマーとの共重合体は広く知られている。特にエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、エチレンとビニルアルコールとからなるランダム共重合体であり、エチレンと酢酸ビニルのラジカル共重合で得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することによって合成される。EVOHはその優れたガスバリア性を生かして、食品包装用途など広い分野で使用されている。
一方で、アリル基を有するモノマーの重合はビニルモノマーと比べて難しく、その重合体は殆ど知られていない。その主な理由は、アリル基を有するモノマーをラジカル重合させた場合、モノマーへの退化的連鎖移動反応のためポリマーの生長反応が極めて遅く、重合度の低いオリゴマーしか得られないためである(Chem. Rev. 58, 808 (1958))。
特開2011−68881号公報(国際公開第2011/025053号パンフレット;特許文献1)及びJ. Am. Chem. Soc., 133, 1232 (2011)(非特許文献1)には、周期律表第10族の金属錯体触媒を使用したエチレンと極性基含有アリルモノマーの配位共重合が示されており、ラジカル重合法では得られなかった極性基含有アリルモノマー共重合体を合成している。しかしながら、得られた重合体の分子量は、ポリスチレンを標準物質として算出した値で、重量平均分子量(Mw)数千〜数万程度であり、フィルム成形加工性や透明性の点で適したMw10万〜50万程度のポリマーを得ることは困難であった。
特開2011−68881号公報(WO2011/025053)
J. Am. Chem. Soc., 133, 1232 (2011)
本発明の課題は、種々の応用が可能な極性基を有するオレフィン重合体を、これまで製造が困難であった高分子量体として、かつ成形加工性良好な分子量範囲で製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、新規の周期律表第10族金属錯体を触媒としてエチレンやプロピレン等のビニルモノマー(無極性オレフィン)単独または前記無極性オレフィンと極極性基含有オレフィン(極性基を有するアリルモノマーを含む)を共重合することにより、種々の応用が可能な極性基を有するオレフィン重合体を成形加工性良好な分子量範囲で提供可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]の触媒、及び[2]〜[13]の重合体の製造方法に関する。
[1] 一般式(C1)
Figure 0006616779
(式中、Mは周期律表第10族の金属原子を表し、Xはリン原子(P)または砒素原子(As)を表し、Y1は、少なくとも1つのシリル基で置換され、かつハロゲン原子、シリル基、アルコキシ基及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜70の2価の炭化水素基を表し、Qは、Y1[−S(=O)2−O−]M、Y1[−C(=O)−O−]M、Y1[−P(=O)(−OH)−O−]MまたはY1[−S−]Mの「[ ]」の中に示される2価の基を表し(ただし、両側のY1、Mは基の結合方向を示すために記載している。)、R5は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜30の炭化水素基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数2〜30の炭化水素基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基で置換された炭素原子数7〜30の炭化水素基、炭素原子数2〜10のアミド基で置換された炭素原子数3〜30の炭化水素基、炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリールオキシ基、及び炭素原子数2〜10のアシロキシ基からなる群より選ばれる置換基を表し、R6及びR7はそれぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜120の炭化水素基を表し、R6及びR7の少なくとも一方が、炭素原子数1〜10のアルキル基または炭素原子数4〜106のシクロアルキル基である。また、R6またはR7はY1と結合して環構造を形成してもよい。Lは電子供与性配位子を表し、qは0、1/2、1または2である。)で示される金属錯体を含むオレフィン重合用触媒。
[2] 一般式(C1)
Figure 0006616779
(式中の記号は前項1の記載と同じ意味を表す。)で示される金属錯体を重合触媒として使用することを特徴とする、エチレンの単独重合体、またはエチレン及び一般式(1)
Figure 0006616779
(式中、R1は、水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアシル基、炭素原子数2〜10のエステル基、炭素原子数2〜10のアシロキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜12の置換アミノ基、炭素原子数2〜12の置換アミド基、炭素原子数5〜10の置換ピリジル基、炭素原子数4〜10の置換ピロリジル基、炭素原子数5〜10の置換ピペリジル基、炭素原子数4〜10の置換ハイドロフリル基、炭素原子数4〜10の置換イミダゾリル基、メルカプト基、炭素原子数1〜10のアルキルチオ基、炭素原子数6〜10のアリールチオ基、エポキシ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基を示す。nは、0及び1〜6より選ばれる任意の整数である。)で示される極性基を有するオレフィンを含むモノマーとの共重合体の製造方法。
[3] 一般式(1)中のnが0である前項2に記載の重合体の製造方法。
[4] 一般式(1)中のnが1である前項2に記載の重合体の製造方法。
[5] 前記共重合体が、エチレン、一般式(1)で示される極性基を有するオレフィン、及び一般式(2)
Figure 0006616779
(式中、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
で示されるα−オレフィンの共重合体であって、エチレン、一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマーに対応する、一般式(3)、一般式(4)、及び一般式(5)
Figure 0006616779
(式中、l、m及びpは、それぞれのモノマーユニットのモル比を表す数値であり、R1、R2及びnは、上記と同じ意味を表す。)
で示されるモノマーユニットのモル比l、m及びpが、次式
Figure 0006616779
で表される関係を満たす前項2に記載の重合体の製造方法。
[6] 一般式(C1)中のQが−S(=O)2−O−である(ただし、SはY1に結合し、OはMに結合する。)前項2〜5のいずれかに記載の重合体の製造方法。
[7] 一般式(C1)で示される金属錯体が、一般式(C2)
Figure 0006616779
(式中、R12〜R15は水素原子、シリル基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、シリル基またはハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。ただし、R12〜R15の少なくとも1つはシリル基である。M、X、R5、R6、R7、L及びqは一般式(C1)の記載と同じ意味を表す。)
で示される前項2〜6のいずれかに記載の重合体の製造方法。
[8] 一般式(C2)で示される金属錯体が、R12がシリル基である一般式(C3)
Figure 0006616779
(式中、3つのR16はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜8の炭化水素基を表し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。M、X、R5、R6、R7、R13、R14、R15、L及びqは一般式(C1)の記載と同じ意味を表す。)
で示される前項7に記載の重合体の製造方法。
[9] 一般式(C3)中、R16がすべてメチル基である前項8に記載の重合体の製造方法。
[10] 一般式(C3)のR13が水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基である前項8または9に記載の重合体の製造方法。
[11] 一般式(C3)のR13が、水素原子、イソプロピル基またはフェニル基である前項8〜10に記載の重合体の製造方法。
[12] 一般式(C3)のR14、R15が共に水素原子である前項8〜11のいずれかに記載の重合体の製造方法。
[13] 前項2〜12のいずれかに記載の製造方法を用いて、エチレンと一般式(1)のR1が炭素原子数2〜10のアシロキシ基である極性基を有するオレフィンとから共重合体を製造し、前記共重合体に対してけん化反応または加水分解反応を行うことを特徴とする、水酸基を有する共重合体の製造方法。
周期律表第10族の金属錯体を触媒として使用し、極性基を有するアリルモノマーを含む極性基を有するオレフィンと無極性オレフィンを共重合させる本発明の方法により、従来困難であった極性基を有する共重合体を、高分子量体として、かつ成形加工性良好な分子量範囲で製造可能となる。
[触媒]
本発明で使用する周期表第10族金属錯体からなる触媒(の構造)は、一般式(C1)で示される。
Figure 0006616779
式中、Mは周期律表第10族の金属原子を表し、Xはリン原子(P)または砒素原子(As)を表し、Y1は、少なくとも1つのシリル基で置換され、かつハロゲン原子、シリル基、アルコキシ基及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜70の2価の炭化水素基を表し、Qは、Y1[−S(=O)2−O−]M、Y1[−C(=O)−O−]M、Y1[−P(=O)(−OH)−O−]MまたはY1[−S−]Mの「[ ]」の中に示される2価の基を表し(ただし、両側のY1、Mは基の結合方向を示すために記載している。)、R5は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜30の炭化水素基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数2〜30の炭化水素基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基で置換された炭素原子数7〜30の炭化水素基、炭素原子数2〜10のアミド基で置換された炭素原子数3〜30の炭化水素基、炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリールオキシ基、及び炭素原子数2〜10のアシロキシ基からなる群より選ばれる置換基を表し、R6及びR7はそれぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜120の炭化水素基を表し、R6及びR7の少なくとも一方が、炭素原子数1〜10のアルキル基または炭素原子数4〜106のシクロアルキル基である。また、R6またはR7はY1と結合して環構造を形成してもよい。Lは電子供与性配位子を表し、qは0、1/2、1または2である。
なお、本明細書では、「炭化水素」は飽和、不飽和の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素を含む。
以下、一般式(C1)の構造について説明する。
Mは周期律表第10族の元素を表す。周期律表第10族の元素としては、Ni、Pd、Ptが挙げられるが、触媒活性や得られる重合体の分子量の観点からNi及びPdが好ましく、Pdがより好ましい。
Xはリン原子(P)または砒素原子(As)であり、中心金属Mに2電子配位している。Xとしては、入手が容易であることと触媒コストの面からPが好ましい。
5は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜30の炭化水素基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数2〜30の炭化水素基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基で置換された炭素原子数7〜30の炭化水素基、炭素原子数2〜10のアミド基で置換された炭素原子数3〜30の炭化水素基、炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数1〜30のアリールオキシ基、または炭素原子数2〜10のアシロキシ基からなる群より選ばれた置換基を表す。
5が表すハロゲン原子の好ましい具体例は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子である。これらの中で、さらに好ましい置換基は、塩素原子である。
5が表す炭素原子数1〜30の炭化水素基は、好ましくは炭素原子数1〜13の炭化水素基であり、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基である。
好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、1−ノニル基、1−デシル基、t−ブチル基、トリシクロヘキシルメチル基、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基、イソプロピル基、1−ジメチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、イソブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、4−ヘプチル基、2−プロピルヘプチル基、2−オクチル基、3−ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、エキソ−ノルボルニル基、エンド−ノルボニル基、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ノピニル基、デカヒドロナフチル基、メンチル基、ネオメンチル基、ネオペンチル基、5−デシル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、及びp−エチルフェニル基等が挙げられる。
これらの中で、さらに好ましい置換基は、メチル基、ベンジル基であり、特に好ましくはメチル基である。
5が表すハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜30の炭化水素基は、好ましくは前述の炭素原子数1〜30の炭化水素基をフッ素原子、塩素原子、または臭素原子で置換した置換基であり、具体的に好ましい例として、トリフルオロメチル基、またはペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
5が表すアルコキシ基で置換された炭素原子数2〜10の炭化水素基は、好ましくは前述の炭素原子数1〜30の炭化水素基をメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、またはt−ブトキシ基で置換した置換基である。さらに好ましくはメトキシ基またはエトキシ基で置換された炭素原子数2〜6の炭化水素基であり、具体的には、1−(メトキシメチル)エチル基、1−(エトキシメチル)エチル基、1−(フェノキシメチル)エチル基、1−(メトキシエチル)エチル基、1−(エトキシエチル)エチル基、ジ(メトキシメチル)メチル基、ジ(エトキシメチル)メチル基、ジ(フェノキシメチル)メチル基が挙げられる。特に好ましくは、1−(メトキシメチル)エチル基、1−(エトキシメチル)エチル基である。
5が表すアルコキシ基は、好ましくは炭素原子数1〜6のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、及びt−ブトキシ基である。これらの中で、さらに好ましい置換基は、メトキシ基、エトキシ基、またはイソプロポキシ基であり、特に好ましくは、メトキシ基である。
5が表す炭素原子数6〜20のアリールオキシ基で置換された炭素原子数7〜30の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素原子数1〜30の炭化水素基をフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ基で置換した置換基である。さらに好ましくはフェノキシ基または2,6−ジメチルフェノキシ基で置換された炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、特に好ましくは、1−(フェノキシメチル)エチル基、または1−(2,6−ジメチルフェノキシメチル)エチル基である。
5が表す炭素原子数2〜10のアミド基で置換された炭素原子数3〜30の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素原子数1〜30の炭化水素基をアセトアミド基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基、イソブチリルアミノ基、ヴァレリルアミノ基、イソヴァレリルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基で置換した置換基である。さらに好ましくは2−アセトアミドフェニル基、2−プロピオニルアミノフェニル基、2−ヴァレリルアミノフェニル基、2−ベンゾイルフェニル基であり、特に好ましくは、2−アセトアミドフェニル基である。
5が表す炭素原子数6〜30のアリールオキシ基は、好ましくは炭素原子数6〜12のアリールオキシ基であり、好ましい具体例としては、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、及び2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ基が挙げられる。これらの中で、さらに好ましい置換基は、フェノキシ基、または2,6−ジメチルフェノキシ基であり、特に好ましくは、フェノキシ基である。
5が表す炭素原子数2〜10のアシロキシ基は、好ましくは炭素原子数2〜8のアシルオキシ基であり、好ましい具体例としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ヴァレリルオキシ基、イソヴァレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基が挙げられる。
これらの中で、さらに好ましい置換基は、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基であり、特に好ましくは、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基である。
これらのR5として好ましい群のうち、さらに好ましくは、炭素原子数1〜20の炭化水素基、アルコキシ基で置換された炭素原子数2〜30の炭化水素基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましい具体例は、メチル基、ベンジル基、メトキシ基、2−アセトアミドフェニル基、アセチルオキシ基である。
6及びR7はそれぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜120の炭化水素基を表す。ただし、R6及びR7の少なくとも一方は、炭素原子数1〜10のアルキル基または炭素原子数4〜106のシクロアルキル基を表す。また、R6またはR7は、Y1と結合して環構造を形成してもよい。
6及びR7が表すアルコキシ基としては、炭素原子数1〜20のものが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。R6及びR7が表すアリールオキシ基としては炭素原子数6〜24のものが好ましく、フェノキシ基等が挙げられる。R6及びR7が表すシリル基としてはトリメチルシリル基、アミノ基としてはアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。R6及びR7が表すハロゲン原子、アルコキシ基及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜120の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、4−ヘプチル基、2−メチル−4−ヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3−メチル−4−ヘプチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、1−アダマンチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、2’−メトキシベンジル基、3’−メトキシベンジル基、4’−メトキシベンジル基、4’−トリフルオロメチルベンジル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリイソプロピルフェニル基、2−t−ブチルフェニル基、2−シクロヘキシルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、2,4,6−トリメトキシフェニル基、4−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−フリル基、2−ビフェニル基、2’,6’−ジメトキシ−2−ビフェニル基、2’−メチル−2−ビフェニル基、2’,4’,6’−トリイソプロピル−2−ビフェニル基等が挙げられる。
また、R6とR7は同じでも、異なっていてもよい。また、R6とR7は結合して環構造を形成してもよい。R6及び/またはR7はY1と結合して環構造を形成してもよい。
なお、R6及びR7の少なくとも一方は、炭素原子数1〜10のアルキル基または炭素原子数4〜106のシクロアルキル基を表す。炭素原子数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基が好ましい。炭素原子数4〜106のシクロアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられるが、以下の一般式(5)で示されるシクロアルキル基が特に好ましい。
Figure 0006616779
式中、Rは置換基を有してもよい炭素原子数1〜14のアルキレン基を表し、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、R9及びR10の少なくとも一方は水素原子ではなく、R9、R10、R11及び前記アルキレン基Rは、それぞれで結合して、環構造を形成してもよい。なお、式中では、炭素原子と一般式(C1)におけるXとの結合も表記している。
さらに、R6及びR7は、合成の容易さから双方とも前記一般式(5)で示されるシクロアルキル基であることが好ましい。
一般式(5)において、Rは置換基を有してもよい炭素原子数1〜14のアルキレン基を表す。R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、R9及びR10の少なくとも一方は水素原子でない。この水素原子でない置換基R9またはR10が、重合反応中のβ−水素脱離によるポリマーの連鎖移動を抑制して、得られる重合体の分子量を向上させると考えられる。R9、R10及びR11が表すアルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基の具体例としては、前記のR6及びR7の具体例と同様のものが挙げられる。R9、R10及びR11は同じでも異なっていてもよい。R9、R10、R11及び前記アルキレン基Rは、それぞれで結合して、環構造を形成してもよい。前記アルキレン基Rとしては、炭素原子数が2〜6であるものが好ましく、炭素原子数が4であるものがより好ましい。
9及びR10の少なくとも一方は、炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数3〜8のシクロアルキル基であることが好ましい。さらにR9及びR10は少なくとも一方がイソプロピル基であることが好ましい。
以下、R6またはR7が一般式(5)で示される基を表す場合のX−R6またはX−R7部位の具体例を挙げる。なお、Meはメチル基を表し、XとM、XとY1との結合は省略している。
Figure 0006616779
Figure 0006616779
Figure 0006616779
Figure 0006616779
Figure 0006616779
Figure 0006616779
Figure 0006616779
これらの中で、R6及びR7は下記式で示されるメンチル基(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル基)であることが好ましい。さらにR6及びR7は双方ともメンチル基であることがより好ましい。
Figure 0006616779
一般式(C1)において、Qは−S(=O)2−O−、−C(=O)−O−、−P(=O)(−OH)−O−、または−S−で示される2価の基を表し、Mに1電子配位する部位である。前記各式の左側がY1に結合し、右側がMに結合している。これらの中でも触媒活性の面から−S(=O)2−O−が特に好ましい。
1−Q部位では、電気陰性度の大きい酸素原子または硫黄原子が金属原子Mに1電子配位している。Y1−Q−M間の結合電子は、形式上、Y1−Qをアニオン状態、Mをカチオン状態で表記することも可能である。
一般式(C1)中、Y1は少なくとも1つのシリル基で置換され、かつハロゲン原子、シリル基、アルコキシ基及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜70の2価の炭化水素基を表す。Y1上の置換基であるハロゲン原子、アルコキシ基及びアリールオキシ基の具体例はR6及びR7で説明したものと同様である。Y1上の置換基であるシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基等が挙げられ、特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基が好ましい。炭素原子数1〜70の炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基等が挙げられ、特にアリーレン基が好ましい。
1はXとQ部位を結合する架橋部位である。XをP原子で示したY1の具体例を以下に示す。ここで、複数のR4は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、シリル基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、シリル基またはハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。ただし、Y1としての炭素原子数の上限は70であり、R4の少なくとも1つはシリル基である。
Figure 0006616779
4が表すハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基及びシリル基の具体例はY1で説明したものと同様である。R4が表す炭素原子数1〜20の炭化水素基及びハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、エキソ−ノルボニル基、エンド−ノルボニル基、メンチル基、ネオメンチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、4’−トリフルオロメチルベンジル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリイソプロピルフェニル基、2−t−ブチルフェニル基、2−シクロヘキシルフェニル基、4−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−フリル基、2−ビフェニル基、2’−メチル−2−ビフェニル基、2’,4’,6’−トリイソプロピル−2−ビフェニル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基、シンナミル基、スチリル基、アントラセニル基、フルオレニル基等が挙げられる。
置換基R6またはR7は、Y1部位と結合して環構造を形成してもよい。具体的には以下に示す構造が挙げられる。なお、以下の例は、置換基R6とY1部位が結合して環構造を形成している場合を示している。
Figure 0006616779
一般式(C1)で示される金属錯体の中でも、特に以下の一般式(C2)で示されるものが好ましい。
Figure 0006616779
一般式(C2)中、R12〜R15は水素原子、シリル基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、シリル基またはハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。これらの具体例はR4で説明したものと同様である。ただし、R12〜R15の少なくとも1つはシリル基である。M、X、R5、R6、R7、L及びqは一般式(C1)の記載と同じ意味を表す。
一般式(C2)においては、R12がシリル基である以下の一般式(C3)で示されるものが好ましい。
Figure 0006616779
式中、それぞれ独立した3つのR16は同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜8の炭化水素基を表す。M、X、R5、R6、R7、R13、R14、R15、L及びqは一般式(C2)の記載と同じ意味を表す。
一般式(C3)において、R16は炭素原子数1〜4の炭化水素基が好ましく、3つのR16がすべてメチル基であることが特に好ましい。R13は水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基であることが好ましく、水素原子、イソプロピル基、またはフェニル基であることが特に好ましい。R14及びR15は水素原子または炭素原子数1〜4の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
一般式(C3)で示される触媒の中でも特に下記式(C4)または(C5)で示される化合物であることが好ましい(式中、Menはメンチル基を表し、Meはメチル基を表す。)。
Figure 0006616779
一般式(C1)で示される触媒の金属錯体は、公知の文献(例えば、J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 8948)に記載の方法と同様の方法で、合成することができる。すなわち、0価あるいは2価のMソースと一般式(C1)中の配位子とを反応させて金属錯体を合成する。
一般式(C2)及び一般式(C3)で示される化合物は、一般式(C1)中のY1及びQを、一般式(C2)及び一般式(C3)に対応する特定の基にすることにより合成することができる。
0価のMソースは、パラジウムソースとして、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが挙げられ、ニッケルソースとして、テトラカルボニルニッケル(0):Ni(CO)4、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルが挙げられる。
2価のMソースは、パラジウムソースとして、(1,5−シクロオクタジエン)(メチル)塩化パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム:PdCl2(CH3CN)2、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム:PdCl2(PhCN)2、(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)ジクロロパラジウム(II):PdCl2(TMEDA)、(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)ジメチルパラジウム(II):PdMe2(TMEDA)、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II):Pd(acac)2(acac=アセチルアセトナト)、トリフルオロメタンスルホン酸パラジウム(II):Pd(OSO2CF32が、ニッケルソースとして、(アリル)塩化ニッケル、(アリル)臭化ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II):Ni(acac)2、(1,2−ジメトキシエタン)ジクロロニッケル(II):NiCl2(DME)、トリフルオロメタンスルホン酸ニッケル(II):Ni(OSO2CF32が挙げられる。
一般式(C1)で示される金属錯体は、単離して使用することができるが、錯体を単離することなくMを含む金属ソースと配位子前駆体を反応系中で接触させて、これをそのまま(in situ)重合に供することもできる。特に一般式(C1)中のR5が水素原子の場合、0価のMを含む金属ソースと配位子前駆体とを反応させた後、錯体を単離することなくそのまま重合に供することが好ましい。
この場合の配位子前駆体は、一般式(C1)の場合、
Figure 0006616779
(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)
で示される。
一般式(C1)におけるMソース(M)と配位子前駆体(C1−1)(C1配位子)との比率((C1配位子)/M)は、0.5〜2.0の範囲で、さらには、1.0〜1.5の範囲で選択することが好ましい。
一般式(C1)の金属錯体を単離する場合、予め電子供与性配位子(L)を配位させて安定化させたものを用いることもできる。この場合、qは1/2、1または2となる。qが1/2とは一つの2価の電子供与性配位子が2つの金属錯体に配位していることを意味する。qは金属錯体触媒を安定化する意味で1/2または1が好ましい。なお、qが0の場合は配位子がないことを意味する。
電子供与性配位子(L)とは、電子供与性基を有し、金属原子Mに配位して金属錯体を安定化させることのできる化合物である。
電子供与性配位子(L)としては、硫黄原子を有するものとしてジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。窒素原子を有するものとして、アルキル基の炭素原子数1〜10のトリアルキルアミン、アルキル基の炭素原子数1〜10のジアルキルアミン、ピリジン、2,6−ジメチルピリジン(別名:2,6−ルチジン)、アニリン、2,6−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、アセトニトリル、ベンゾニトリル、キノリン、2−メチルキノリン等が挙げられる。酸素原子を有するものとして、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンが挙げられる。金属錯体の安定性及び触媒活性の観点から、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ピリジン、2,6−ジメチルピリジン(別名:2,6−ルチジン)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が好ましく、ジメチルスルホキシド(DMSO)、2,6−ジメチルピリジン(別名:2,6−ルチジン)がより好ましい。
一般式(C1)、一般式(C2)、一般式(C3)、式(C4)または式(C5)で示される金属錯体は、担体に担持して重合に使用することもできる。この場合の担体としては、特に限定されないが、シリカゲル、アルミナ等の無機担体、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の有機担体等を挙げることができる。金属錯体の担持法としては、金属錯体の溶液を担体に含浸させて乾燥する物理的な吸着方法や、金属錯体と担体とを化学的に結合させて担持する方法等が挙げられる。
[モノマー]
本発明の重合体の製造方法では、エチレンを重合させるだけではなく、さらに極性基を有するオレフィンを共重合することができる。本発明で共重合に用いられる第2のモノマーである極性基を有するオレフィンは、一般式(1)で示される。
Figure 0006616779
式中、R1は、水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアシル基、炭素原子数2〜10のエステル基、炭素原子数2〜10のアシロキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜12の置換アミノ基、炭素原子数2〜12の置換アミド基、炭素原子数5〜10の置換ピリジル基、炭素原子数4〜10の置換ピロリジル基、炭素原子数5〜10の置換ピペリジル基、炭素原子数4〜10の置換ハイドロフリル基、炭素原子数4〜10の置換イミダゾリル基、メルカプト基、炭素原子数1〜10のアルキルチオ基、炭素原子数6〜10のアリールチオ基、エポキシ基、ハロゲン原子からなる群より選ばれた置換基を表す。nは、0及び1〜6より選ばれる任意の整数を示す。
炭素原子数1〜10のアルコキシ基であるR1は、好ましくは、炭素原子数1〜4のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、1−プロポキシ基、1−ブトキシ基、及びt−ブトキシ基である。
これらの中で、さらに好ましい置換基は、メトキシ基、エトキシ基またはイソプロポキシ基であり、特に好ましくは、メトキシ基である。
炭素原子数6〜20のアリールオキシ基であるR1は、好ましくは、炭素原子数6〜12のアリールオキシ基であり、好ましい具体例としては、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジ−t−ブチルフェノキシ基及び2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ基が挙げられる。
これらの中で、さらに好ましい置換基は、フェノキシ基、3,5−ジ−t−ブチルフェノキシ基または2,6−ジメチルフェノキシ基であり、特に好ましくは、フェノキシ基、3,5−ジ−t−ブチルフェノキシ基である。
炭素原子数2〜10のアシル基であるR1は、好ましくは、炭素原子数2〜8のアシル基であり、好ましい具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ヴァレリル基、イソヴァレリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基が挙げられる。
これらの中で、さらに好ましい置換基は、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基であり、特に好ましくは、ベンゾイル基である。
炭素原子数2〜10のエステル基であるR1は、好ましくは、炭素原子数2〜8のエステル基であり、好ましい具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、(4−ヒドロキシブトキシ)カルボニル基、(4−グリシジルブトキシ)カルボニル基、フェノキシカルボニル基が挙げられる。
これらの中で、さらに好ましい置換基は、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(4−ヒドロキシブトキシ)カルボニル基であり、特に好ましくは、メトキシカルボニル基である。
炭素原子数2〜10のアシロキシ基であるR1は、好ましくは、炭素原子数2〜8のアシロキシ基であり、好ましい具体例としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ヴァレリルオキシ基、イソヴァレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基が挙げられる。
これらの中で、さらに好ましい置換基は、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基であり、特に好ましくは、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ基である。
炭素原子数1〜12の置換アミノ基であるR1の好ましい具体例としては、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、モノフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、モルホリニル基が挙げられる。
これらの中で、さらに好ましい置換基は、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基である。
炭素原子数1〜12の置換アミド基であるR1の好ましい具体例としては、アセトアミド基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基、イソブチリルアミノ基、ヴァレリルアミノ基、イソヴァレリルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基が挙げられる。
これらの中で、さらに好ましい置換基としては、アセトアミド基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基であり、特に好ましくは、アセトアミド基である。
炭素原子数5〜10の置換ピリジル基であるR1の好ましい具体例としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、2−(3−メチル)ピリジル基、2−(4−メチル)ピリジル基、3−(2−メチル)ピリジル基、3−(4−メチル)ピリジル基、2−(4−クロロメチル)ピリジル基、3−(4−クロロメチル)ピリジル基が挙げられる。
これらの中で、さらに好ましい置換基としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、2−(4−メチル)ピリジル基が挙げられ、特に好ましくは、2−ピリジル基である。
炭素原子数4〜10の置換ピロリジル基であるR1の好ましい具体例としては、2−ピロリジル基、3−ピロリジル基、2−(1−メチル)ピロリジル基、2−(1−ブチル)ピロリジル基、2−(1−シクロペンテニル)ピロリジル基、2−(4−メトキシカルボニル)ピロリジル基、2−(5−メトキシカルボニル)ピロリジル基、2−(6−メトキシカルボニル)ピロリジル基が挙げられる。
これらの中で、さらに好ましい置換基は、2−ピロリジル基、3−ピロリジル基、2−(1−メチル)ピロリジル基、2−(6−メトキシカルボニル)ピロリジル基であり、特に好ましくは、2−ピロリジル基である。
炭素原子数5〜10の置換ピペリジル基であるR1の好ましい具体例としては、2−ピペリジル基、3−ピペリジル基、2−(1,2,3,6−テトラヒドロ)ピペリジル基、2−(1−メチル)ピペリジル基、2−(1−エチル)ピペリジル基、2−(4−メチル)ピペリジル基、2−(5−メチル)ピペリジル基、2−(6−メチル)ピペリジル基が挙げられる。
これらの中で、さらに好ましい置換基は、2−ピペリジル基、3−ピペリジル基、2−(1,2,3,6−テトラヒドロ)ピペリジル基、2−(6−メチル)ピペリジル基であり、特に好ましくは、2−ピペリジル基、2−(1,2,3,6−テトラヒドロ)ピペリジル基である。
炭素原子数4〜10の置換ハイドロフリル基であるR1の好ましい具体例としては、2−テトラハイドロフリル基、3−テトラハイドロフリル基、2−(5−メチル)テトラハイドロフリル基、2−(5−イソプロピル)テトラハイドロフリル基、2−(5−エチル)テトラハイドロフリル基、2−(5−メトキシ)テトラハイドロフリル基、2−(5−アセチル)テトラハイドロフリル基、2−(4,5−ベンゾ)テトラハイドロフリル基が挙げられる。
これらの中で、さらに好ましい置換基は、2−テトラハイドロフリル基、3−テトラハイドロフリル基、2−(5−メチル)テトラハイドロフリル基、2−(5−イソプロピル)テトラハイドロフリル基、2−(4,5−ベンゾ)テトラハイドロフリル基であり、特に好ましくは、2−テトラハイドロフリル基、2−(5−メチル)テトラハイドロフリル基、2−(5−イソプロピル)テトラハイドロフリル基である。
炭素原子数4〜10の置換イミダゾリル基であるR1の好ましい具体例としては、2−イミダゾリル基、2−(1−メチル)イミダゾリル基、2−(1−ベンジル)イミダゾリル基、2−(1−アセチル)イミダゾリル基、2−(4,5−ベンゾ)イミダゾリル基、2−(1−メチル−4,5−ベンゾ)イミダゾリル基が挙げられる。
これらの中で、さらに好ましい置換基は、2−イミダゾリル基、2−(1−メチル)イミダゾリル基、2−(4,5−ベンゾ)イミダゾリル基であり、特に好ましくは、2−(1−メチル)イミダゾリル基、2−(4,5−ベンゾ)イミダゾリル基である。
炭素原子数1〜10のアルキルチオ基であるR1の好ましい具体例は、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、t−ブチルチオ基であり、炭素原子数6〜10のアリールチオ基であるR1の好ましい具体例は、フェニルチオ基である。
これらの中で、さらに好ましい置換基は、メチルチオ基、t−ブチルチオ基、フェニルチオ基であり、特に好ましくは、メチルチオ基、フェニルチオ基である。
ハロゲン原子であるR1の好ましい具体例は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子である。これらの中で、さらに好ましい置換基は塩素原子である。
これらのR1として好ましい群のうち、さらに好ましくは、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のエステル基、炭素原子数2〜10のアシロキシ基であり、一般式(1)で示される特に好ましい極性コモノマーの具体例は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、酢酸アリル、アリルメチルエーテルである。
また、エチレンと一般式(1)のR1がアシロキシ基である極性基を有するオレフィンをモノマーとして製造される共重合体に対して、けん化反応または加水分解反応を行うことにより、水酸基を有する共重合体を製造することができる。例えば、一般式(1)で示される極性基を有するオレフィンが酢酸アリルの場合、エチレンと共重合させて得られる酢酸アリル・エチレン共重合体に対して、けん化反応または加水分解反応を行うことにより、水酸基を有する重合体、すなわちアリルアルコール・エチレン共重合体を得ることができる。また、けん化度を調整することによりアリルアルコール・酢酸アリル・エチレン三元共重合体とすることも可能である。
けん化反応を行う場合は、塩基性条件下でアルコール化合物とエチレンと一般式(1)のR1がアシロキシ基である極性基を有するオレフィンをモノマーとして製造される共重合体とを反応させる。使用する塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、コストの面で水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムが好ましい。使用するアルコール化合物については特に制限はないが、生成するエステルとけん化反応後の共重合体と反応溶媒の蒸留分離を行う必要性があるため、低沸点の炭素原子数1〜3のアルコールが好ましい。炭素原子数1〜3のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールが挙げられる。
加水分解反応を行う場合は、酸性条件あるいは塩基性条件下で水と反応させる。使用する酸として、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられ、製造コストの面で塩酸が好ましい。使用する塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、製造コストの面で水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムが好ましい。
けん化反応及び加水分解反応のいずれの場合も、溶媒は使用しても使用しなくてもよい。使用する場合の溶媒は、特に限定されないが、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素等が挙げられる。
また、本発明の(共)重合体の製造方法では、エチレンと一般式(1)で示される極性基を有するオレフィンに加えて、第3のモノマーを用いてもよい。第3のモノマーとして、一般式(2)
Figure 0006616779
で示されるα−オレフィンを共重合させることができる。
一般式(2)において、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。一般式(2)で示されるα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、スチレン等が挙げられる。この中で、プロピレン、1−ブテン、または1−ヘキセンが好ましい。また、これらは2種以上を組み合わせて重合させてもよい。ただし、第3のモノマーとしてプロピレンが共重合されるときは、得られる重合体中に含まれるプロピレンとエチレンの合計に対するプロピレンの比率は40mol%未満である。
エチレン及び一般式(1)で示される極性基を有するオレフィンに加えて、一般式(2)で示されるα−オレフィンを共重合させる場合、本発明の製造方法で得られる共重合体中のエチレン、一般式(1)、一般式(2)のモノマーに対応する、一般式(3)、一般式(4)、及び一般式(5)
Figure 0006616779
で示されるモノマーユニットのモル比l、m及びpが、次式
Figure 0006616779
で表される関係を満たすものであることが好ましい。
エチレンと一般式(1)で示されるモノマーとの共重合体の場合(p=0)、lの比率:100×l/(l+m)は80〜99が好ましく、90〜99がより好ましい。
また、一般式(1)で示される、極性基を有するオレフィンの含有量(モル%=m/(l+m)×100)に関して、特に制限はないが、好ましくは、0.1%以上、20%以下である。さらに好ましくは、0.1%以上、15%以下であり、特に好ましくは、0.1%以上、10%以下である。
エチレン、一般式(1)で示されるモノマー、一般式(2)で示されるモノマーの共重合体の場合、lの比率:100×l/(l+m+p)は80〜99が好ましく、90〜99がより好ましい。
また、一般式(1)で示される、極性基を有するオレフィンの含有量(モル%=m/(l+m+p)×100)に関して、特に制限はないが、好ましくは、0.1%以上、20%以下である。さらに好ましくは、0.1%以上、15%以下であり、特に好ましくは、0.1%以上、10%以下である。
[重合方法]
本発明の金属錯体を触媒として使用して、エチレン、一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマーを重合する方法は特に制限されるものではなく、一般に使用される方法で重合可能である。すなわち、溶液重合法、懸濁重合法、気相重合法等のプロセス法が可能であるが、特に溶液重合法、懸濁重合法が好ましい。また重合様式は、バッチ様式でも連続様式でも可能である。また、一段重合でも、多段重合でも行うこともできる。
一般式(C1)、一般式(C2)、一般式(C3)または式(C4)もしくは式(C5)で示される金属錯体触媒は2種類以上を混合して重合反応に使用してもよい。混合して使用することで重合体の分子量、分子量分布、一般式(2)のモノマーに由来するモノマーユニットの含有量を制御することが可能であり、所望の用途に適した重合体を得ることができる。金属錯体触媒総量とモノマーの総量のモル比は、モノマー/金属錯体の比で、1〜10,000,000の範囲、好ましくは10〜1,000,000の範囲、より好ましくは100〜100,000の範囲が用いられる。
重合温度は、特に限定されない。通常−30〜400℃の範囲で行われ、好ましくは0〜180℃、より好ましくは20〜150℃の範囲で行われる。
エチレン圧が内部圧力の大半を占める重合圧力については、常圧から100MPaの範囲内で行われ、好ましくは常圧から20MPa、より好ましくは常圧から10MPaの範囲内で行われる。
重合時間は、プロセス様式や触媒の重合活性などにより適宜調整することができ、数分の短い時間も、数千時間の長い反応時間も可能である。
重合系中の雰囲気は触媒の活性低下を防ぐため、モノマー以外の空気、酸素、水分等が混入しないように窒素ガスやアルゴン等の不活性ガスで満たすことが好ましい。また溶液重合の場合、モノマー以外に不活性溶媒を使用することが可能である。不活性溶媒としては、特に限定されないが、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル等の脂肪族エステル、安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
[重合体の構造の解析方法]
実施例で得た(共)重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、以下のメソッドAまたはメソッドBにより決定した。
(メソッドA)
昭和電工(株)製AT−806MSカラム(2本直列)を備えた東ソー(株)製高温GPC装置、HLC−8121GPC/HTを用い、ポリスチレンを分子量の標準物質とするサイズ排除クロマトグラフィー(溶媒:1,2−ジクロロベンゼン、温度:145℃)により算出した。
(メソッドB)
昭和電工(株)製AD806M/Sカラム(3本直列)及びフォックスボロー(FOXBORO)社製MIRAN1A・RI検出器(測定波長:3.42μm)を備えたウォーターズ(Waters)社製高温GPC装置150Cを用い、ポリスチレンを分子量の標準物質とするサイズ排除クロマトグラフィー(溶媒:1,2−ジクロロベンゼン、温度:140℃)により決定した。その後、粘度式([η]=K×Mα)を使用して、ポリエチレン標準分子量への換算を行った。このときに使用する係数K及びαは、以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10-4、α=0.7
PE:K=3.92×10-4、α=0.733
一般式(1)で示される極性基を有するオレフィンに由来するモノマーユニットの含有率は、以下のメソッドCまたはメソッドDにより決定した。
(メソッドC)
日本電子(株)製JNM−ECS400を使用して、溶媒として1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2を使用した120℃における1H−NMRによって決定した。
(メソッドD)
約0.5mmのプレス板を作製し、(株)島津製作所製FTIR−8300型を用いて、赤外吸収スペクトルにより行った。コモノマー含量は、3,450cm-1付近のカルボニル基の倍音吸収と、4,250cm-1付近のオレフィン吸収の赤外吸収強度比をもとに算出した。なお、算出に当たっては、13C−NMR測定により作成した検量線を使用した。
(共)重合体の融点は、セイコーインスツルメンツ(株)製DSC6200示差走査熱量測定装置を使用して測定した。シート状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して結晶化させた後に、10℃/分で200℃まで昇温することにより融解曲線を得た。融解曲線を得るために行った最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点とした。
[金属錯体1の合成]
下記の反応スキームに従って金属錯体1を合成した。
Figure 0006616779
(a)塩化メンチル(化合物1a)の合成
文献(J. Org. Chem., 17, 1116. (1952))記載の手法で、塩化メンチル(化合物1a)の合成を行った。すなわち、塩化亜鉛(77g、0.56mol)の37%塩酸(52mL、0.63mol)溶液に、(−)−メントール(27g、0.17mol)を加え、35℃に加熱しながら、5時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応液にヘキサン(50mL)を加え、分液漏斗を使用して、有機層と水層を分離した。有機層は水(30mL×1)で洗浄後、さらに濃硫酸(10mL×5)及び水(30mL×5)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行い、塩化メンチル(化合物1a)を無色の油状物質として得た。収量は27g(収率91%)であった。
(b)塩化ジメンチルホスフィン(化合物1c)の合成
文献(Journal fur Praktische Chemie, 322, 485. (1980))記載の手法で、塩化ジメンチルホスフィン(化合物1c)の合成を行った。すなわち、アルゴン雰囲気下、塩化メンチル(化合物1a;2.6g、15mmol)とマグネシウム(0.63g、26mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(30mL)中で、70℃に加熱しながら反応させて得られた塩化メンチルマグネシウム(化合物1b)の溶液を、三塩化リン(0.63mL、7.2mmol)のTHF(30mL)溶液に−78℃で加えた。室温まで昇温後、70℃に加熱しながら2時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、蒸留精製を行い、塩化ジメンチルホスフィン(化合物1c)を得た。収量は、0.62g(収率25%)であった。
31P−NMR(162MHz,THF):δ 123.9.
(c)2−(ジメンチルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(化合物1d)の合成
ベンゼンスルホン酸(13.2g,83.5mmol)のテトラヒドロフラン溶液(150mL)に、n−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液,66.8mL,167mmol)を0℃で加え、10℃で1時間撹拌した。反応容器を−78℃に冷却した後に、塩化ジメンチルホスフィン(化合物1c;11.5g,33.4mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を−78℃で加え、室温で16時間撹拌した。反応液にトリフルオロ酢酸(9.52g,83.5mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を0℃で加えて反応停止した後に、溶媒を減圧留去した。ジクロロメタン(100mL×4回)で抽出した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去後、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=10/1)で精製し、酢酸エチルで洗浄することにより、2−(ジメンチルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(化合物1d)を白色粉末として得た。収量は5.0g(収率32%)であった。
(d)2−(ジメンチルホスフィノ)−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物1e)の合成
2−(ジメンチルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(化合物1d;2.50g,5.4mmol)のTHF溶液(40mL)に、n−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液,12.9mL,32.2mmol)を−78℃で加え、10℃で4時間撹拌した。反応容器を−78℃に冷却した後に、トリメチルシリルクロリド(4.05mL,32.2mmol)を−78℃で加え、10℃で16時間撹拌した。反応液を氷水(50mL)に注いで反応停止した後に、酢酸エチル(100mL×3回)にて抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチル(15mL)にて洗浄することにより、2−(ジメンチルホスフィノ)−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物1e)を白色粉末として得た。収量は2.10g(収率73%)であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.99 (d, J = 7.2 Hz, 1 H), 7.57 (dd, J = 7.2, 16.0 Hz, 1 H), 7.47 (m, 1 H), 5.30 (d, J = 339.2 Hz, 1 H), 3.57 (dd, J = 12.4, 27.6 Hz, 1 H), 2.71 (br s, 2 H), 2.03 (br s, 1 H), 1.74 (br s, 6 H), 1.60 (br s, 1 H), 1.41 (br s, 2 H), 1.28 (m, 1 H), 1.09 (m, 6 H), 0.94-0.67 (m, 15 H), 0.46 (s, 9 H), 0.22 (d, J = 6.4 Hz, 3 H).
(e)金属錯体触媒1の合成
アルゴン雰囲気下、2−(ジメンチルホスフィノ)−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物1e;2.04g,3.79mmol)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.20mL,18.4mmol)の塩化メチレン溶液(30mL)に、(cod)PdMeCl(cod=1,5−シクロオクタジエン、1.00g,3.77mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、残渣を塩化メチレン(10mL)に溶解させ、この溶液を、炭酸カリウム(5.20g,37.6mmol)と2,6−ルチジン(4.40mL,37.8mmol)の塩化メチレン懸濁液(20mL)に加え、室温で1時間撹拌した。この反応液をセライト(乾燥珪藻土)及びフロリジル(ケイ酸マグネシウム)でろ過した後に、溶媒を濃縮し、減圧下乾燥を行った。ヘキサン(5mL×3回)で洗浄することにより、金属錯体触媒1を得た。収量は、2.32g(収率80%)であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.80 (d, J = 7.5 Hz, 1 H), 7.77 (t, J = 8.0 Hz, 1 H), 7.54 (t, J = 7.7 Hz, 1 H), 7.36 (dd, J = 7.7, 7.6 Hz, 1 H), 7.10 (d, J = 7.7 Hz, 1 H), 7.05 (d, J = 7.6 Hz, 1 H), 3.70 (m, 1 H), 3.24 (s, 3 H), 3.16 (s, 3 H), 2.5-0.7 (m, 19 H), 0.96 (d, J = 6.4 Hz, 3 H), 0.95 (d, J = 6.4 Hz, 3 H), 0.83 (d, J = 6.6 Hz, 3 H), 0.76 (d, J = 6.7 Hz, 3 H), 0.50 (d, J = 6.6 Hz, 3 H), 0.37 (s, 9 H), 0.36 (m, 3 H), 0.15 (d, J = 6.7 Hz, 3 H).
[金属錯体2の合成]
下記の反応スキームに従って金属錯体2を合成した。
Figure 0006616779
(f)2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−ベンゼンスルホン酸(化合物2d)の合成
5−イソプロピル−ベンゼンスルホン酸イソプロピルエステル(15.0g,62.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液(120mL)に、n−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液,24.8mL,62.0mmol)を−78℃で加え、−78℃で1時間撹拌した。塩化ジメンチルホスフィン(化合物1c;9.5g,27.5mmol)のテトラヒドロフラン(60mL)溶液を−78℃で加え、室温で16時間撹拌した。反応液に氷水(100mL)を加えて反応停止した後に、酢酸エチル(100mL×3回)で抽出した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過、溶媒留去後、そのまま次の反応に用いた。
2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−ベンゼンスルホン酸イソプロピルエステル(36.3mmol)のテトラヒドロフラン溶液(80mL)に、メタノール(100mL)、水酸化ナトリウム(8.7g,218mmol)、水(40mL)を加え、80℃で16時間撹拌した。室温まで冷却した後、減圧下で溶媒留去し、塩化メチレン(200mL)、水(200mL)を加えた。さらにトリフルオロ酢酸を加えてpH4〜5にした後、ジクロロメタン(100mL×2回)で抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去後、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=30/1)で精製し、2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−ベンゼンスルホン酸(化合物2d)を白色粉末として得た。収量は6.0g(収率42%)であった。
(g)2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物2e)の合成
2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−ベンゼンスルホン酸(化合物2d;2.0g,3.94mmol)のTHF溶液(40mL)に、n−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液,9.5mL,23.6mmol)を−40℃で加え、10℃で6時間撹拌した。反応容器を−78℃に冷却した後に、トリメチルシリルクロリド(3.0mL,23.6mmol)を−78℃で加え、室温で1時間撹拌した。反応液を氷水(50mL)に注いで反応停止した後に、酢酸エチル(50mL×3回)にて抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=50/1)で精製することにより、2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物2e)を白色粉末として得た。収量は0.88g(収率38%)であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.5-7.4 (m, 2 H), 5.22 (d, J = 329.2 Hz, 1 H), 3.56 (m, 2 H), 2.67 (br, 2 H), 1.95 (br, 1 H), 1.8-1.6 (br, 7 H), 1.4-1.3 (br, 9 H), 1.2-1.1 (br, 9 H), 1.0-0.8 (br, 12 H), 0.73 (br, 3 H), 0.55 (s, 9 H).
(h)金属錯体触媒2の合成
アルゴン雰囲気下、2−(ジメンチルホスフィノ)−5−イソプロピル−6−(トリメチルシリル)−ベンゼンスルホン酸(化合物2e;1.10g,1.89mmol)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.60mL,9.19mmol)の塩化メチレン溶液(10mL)に、(cod)PdMeCl(cod=1,5−シクロオクタジエン、0.47g,1.84mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、残渣を塩化メチレン(10mL)に溶解させ、この溶液を、炭酸カリウム(2.70g,19.5mmol)と2,6−ルチジン(2.3mL,19.7mmol)の塩化メチレン懸濁液(10mL)に加え、室温で1時間撹拌した。この反応液をセライト(乾燥珪藻土)及びフロリジル(ケイ酸マグネシウム)でろ過した後に、溶媒を濃縮し、減圧下乾燥を行った。ヘキサン(10mL)に溶解させ、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することにより、金属錯体触媒2を得た。収量は、0.58g(収率39%)であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.63 (t, J = 8.2 Hz, 1 H), 7.53 (t, J = 7.7 Hz, 1 H), 7.29 (d, J = 8.2 Hz, 1 H), 7.10 (d, J = 7.8 Hz, 1 H), 7.04 (d, J = 7.3 Hz, 1 H), 3.88 (m, 2 H), 3.48 (m, 1 H), 3.24 (s, 3 H), 3.14 (s, 3 H), 2.6-1.4 (brm, 18 H), 1.38 (d, J = 6.6 Hz, 3 H), 1.04 (d, J = 6.7 Hz, 3 H), 0.96 (d, J = 6.3 Hz, 3 H), 0.94 (d, J = 6.2 Hz, 3 H), 0.84 (d, J = 6.7 Hz, 3 H), 0.74 (d, J = 6.6 Hz, 6 H), 0.46 (s, 9 H), 0.34 (d, J = 1.1 Hz, 3 H), 0.23 (d, J = 6.6 Hz, 3 H).
[比較金属錯体1〜3の合成]
(i)比較金属錯体1の合成
下記式
Figure 0006616779
で示される比較金属錯体1は、上述の2−(ジメンチルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(化合物1d)から合成した。アルゴン雰囲気下、2−(ジメンチルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(0.14g,0.30mmol)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.26mL,1.5mmol)の塩化メチレン溶液(10mL)に、(cod)PdMeCl(0.079g,0.30mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、残渣を塩化メチレン(10mL)に溶解させ、この溶液を、炭酸カリウム(0.42g,3.0mmol)と2,6−ルチジン(0.35mL,3.0mmol)の塩化メチレン懸濁液(2mL)に加え、室温で1時間撹拌した。この反応液をセライト(乾燥珪藻土)及びフロリジル(ケイ酸マグネシウム)でろ過した後に、溶媒を濃縮し、減圧下乾燥を行い、比較金属錯体1を得た。収量は、0.17g(収率80%)であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 8.26 (ddd, J = 7.8, 3.9, 1.4 Hz, 1H), 7.81 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.56 (t, J = 7.7 Hz, 1H), 7.49 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.43 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.13 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 3.75 (s, 1H), 3.24 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 2.59 (s, 1H), 2.49-2.39 (m, 2H), 2.29-2.27 (m, 1H), 2.05-1.96 (m, 1H), 1.89-1.37 (m, 12H), 1.21-1.11 (m, 2H), 0.98 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.95 (d, J = 6.2 Hz, 3H), 0.84 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.78 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.58 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.41 (d, J = 2.3 Hz, 3H), 0.08 (d, J = 6.6 Hz, 3H);
31P−NMR(162MHz,CDCl3):δ 16.6.
(j)比較金属錯体2及び比較金属錯体3の合成
下記式
Figure 0006616779
で示される比較金属錯体2及び比較金属錯体3は、特許文献1;特開2011−68881号公報に従って合成した。
[重合体の合成]
上記の方法で合成した金属錯体1及び比較金属錯体1〜3を使用して、オレフィンの(共)重合を行った。重合条件及び重合結果をそれぞれ表1〜5に示す。
なお、触媒濃度及び触媒活性は次の式により計算した。
Figure 0006616779
Figure 0006616779
実施例1:金属錯体1を使用したエチレンの単独重合(重合体1の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体1(3.9mg,0.0050mmol)を含む120mLオートクレーブ中に、トルエン(75mL)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、1時間撹拌した。室温まで冷却後、オートクレーブ内の反応液をメタノール(300mL)に加え、重合体を析出させた。生じた重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、重合体1を得た。収量は3.8gであった。触媒活性は、760g/(mmol・h)と算出された。重合体1の分子量は、前述のメソッドAにより決定し、数平均分子量852,000、重量平均分子量1,636,000と算出し、Mw/Mnは1.9であった。重合条件と結果をそれぞれ表1、表2に示す。
比較例1:比較金属錯体1を使用したエチレンの単独重合(比較重合体1の調製)
金属錯体1の代わりに、比較金属錯体1を使用して、実施例1と同様の手法でエチレンの単独重合を行い、比較重合体1を得た。収量は2.4gであった。触媒活性は、480g/(mmol・h)と算出された。比較重合体1の分子量は、メソッドAにより決定し、数平均分子量352,000、重量平均分子量747,000と算出し、Mw/Mnは2.1であった。重合条件と結果をそれぞれ表1、表2に示す。
実施例2:金属錯体1を使用した酢酸アリルとエチレンの共重合(重合体2の調製)
窒素雰囲気下、金属錯体1(7.7mg,0.010mmol)を含む120mLオートクレーブ中に、酢酸アリル(75mL,700mmol)を加えた。エチレン(4.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、5時間撹拌した。室温まで冷却後、オートクレーブ内の反応液をメタノール(300mL)に加え、共重合体を析出させた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、重合体2を得た。収量は2.3gであった。触媒活性は、46g/(mmol・h)と算出された。重合体2の分子量は、メソッドAにより決定し、数平均分子量220,000、重量平均分子量540,000と算出し、Mw/Mnは2.5であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、1H−NMR測定により、エチレン:酢酸アリルのモル比は100:3.0(酢酸アリルモル分率=2.9%)と決定した。重合条件と結果をそれぞれ表1、表2に示す。
実施例3:金属錯体2を使用した酢酸アリルとエチレンの共重合(重合体3の調製)
金属錯体1の代わりに、金属錯体2を使用して、実施例2と同様の手法で、酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。その結果、重合体3を得た。収量は1.6gであった。触媒活性は、32g/(mmol・h)と算出された。重合体3の分子量は、メソッドAにより決定し、数平均分子量168,000、重量平均分子量390,000と算出し、Mw/Mnは2.3であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、メソッドCにより決定し、エチレン:酢酸アリルのモル比は100:3.7(酢酸アリルモル分率=3.6%)と算出された。重合条件と結果をそれぞれ表1、表2に示す。
比較例2〜4:比較金属錯体1〜3を使用した酢酸アリルとエチレンの共重合(比較重合体2〜4の調製)
金属錯体触媒1の代わりに、それぞれ比較金属錯体1〜3を使用して、実施例2と同様の手法で、酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。重合条件と結果をそれぞれ表1、表2に示す。
Figure 0006616779
Figure 0006616779
表1及び2に示すように、本発明の金属錯体1及び金属錯体2を触媒として使用した実施例1、実施例2、及び実施例3では、重量平均分子量Mwが数十万以上の高分子量体を、これまでの触媒(比較例1〜4)より高い活性で合成することが可能であった。
実施例4:酢酸アリルとエチレンの共重合(重合体4の調製)
実施例2のトルエンと酢酸アリルの容積比、エチレン圧、反応スケール及び反応時間を表3のように変えて、同様に酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。すなわち、窒素雰囲気下、金属錯体触媒1(30.7mg,0.040mmol)を含む500mLオートクレーブ中に、酢酸アリル(150mL,1400mmol)、トルエン(150mL)を加えた。エチレン(1.65MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、14時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ内の反応液をメタノール(1L)に加え、共重合体を析出させた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、重合体4を得た。結果を表4に示す。
実施例5:酢酸アリルとエチレンの共重合(重合体5の調製)
溶媒にトルエンを使用せず、実施例4のエチレン圧及び反応時間を表3のように変えて、同様に酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。すなわち、窒素雰囲気下、金属錯体触媒1(30.7mg,0.040mmol)を含む500mLオートクレーブ中に、酢酸アリル(300mL,2800mmol)を加えた。エチレン(2.5MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、12時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ内の反応液をメタノール(1L)に加え、共重合体を析出させた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、重合体を得た。結果を表4に示す。
実施例6、比較例5:酢酸アリルとエチレンの共重合(重合体6、比較重合体5の調製)
実施例5のエチレン圧、反応時間及び触媒を表3のように変えて、同様に酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。結果を表4に示す。
実施例11:酢酸アリルとエチレンの共重合(重合体11の調製)
実施例4のエチレン圧及び反応時間を表3のように変えて、同様に酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。結果を表4に示す。
実施例12:酢酸アリルとエチレンの共重合(重合体12の調製)
実施例5の触媒濃度、エチレン圧及び反応時間を表3のように変えて、同様に酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。結果を表4に示す。
Figure 0006616779
Figure 0006616779
比較例5に対して、本発明の金属錯体1を使用した実施例4〜6では、重量平均分子量Mwが18万〜33万と、成形加工性に優れる分子量範囲のポリマーを製造可能であった。また、共重合体中の酢酸アリル含有率も向上することが明らかとなった。比較例5での触媒使用量や反応温度などの条件は実施例と同一であるにも拘わらず、比較例5で得られた重合体は、分子量が高く、触媒活性は低いという結果になった。この重合体の分子量は高すぎて成形加工性に劣ることになる。実施例12は、分子量は低いが、酢酸アリルの含有量10mol%以上を達成した。
参考例1:本発明の金属錯体1と比較金属錯体1の高温での安定性比較
金属錯体1と比較金属錯体1の高温における安定性の比較実験を行った。窒素ガス雰囲気下、金属錯体1及び比較金属錯体1のトルエン溶液10mL(5mmol/L)を調製した。オイルバス中150℃でそれぞれ5分間加熱した後にトルエンを留去、残渣を重クロロホルムに溶解し31P−NMR測定を行った。金属錯体1の場合は、150℃加熱前後でピークの変化がみられなかった(分解なし)。比較金属錯体1の場合は、加熱後にPdブラックの析出が観察され、比較金属錯体1由来のピーク(δ16.7ppm)の他に、分解生成物と考えられるピーク(δ11.0、13.8、14.6ppm)が複数確認された。これらの存在比率は、積分比から、比較金属錯体1(5%)、δ11.0ppm(2%)、13.8ppm(5%)、14.6ppm(88%)と算出した。本発明の金属錯体1は比較金属錯体1よりも高温安定性に優れることが明らかとなった。
実施例7:酢酸アリルとエチレンの共重合(重合体7の調製)
窒素ガス雰囲気下、金属錯体1(7.7mg,0.010mmol)を含む120mLオートクレーブ中に、酢酸アリル(75mL,700mmol)を加えた。オートクレーブを150℃に加熱し、エチレン(4.0MPa)を充填した後、0.5時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ内の反応液を留去し、残留物を回収した。減圧下乾燥して、重合体7を得た。重合条件と結果を表5に示す。
比較例6:酢酸アリルとエチレンの共重合(比較重合体6の調製)
金属錯体1の代わりに、比較金属錯体1を使用して、実施例7と同様に酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。すなわち、窒素雰囲気下、比較金属錯体1(6.9mg,0.010mmol)を含む120mLオートクレーブ中に、酢酸アリル(75mL,700mmol)を加えた。オートクレーブを150℃に加熱し、エチレン(4.0MPa)を充填した後、0.5時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ内の反応液を留去し、残留物を回収した。減圧下乾燥して、比較重合体を得た。収量は0.01gであった。触媒活性は、2.6g/(mmol・h)と算出された。回収したポリマー量が少なかったため、各種分析は困難であった。重合条件と結果を表5に示す。
Figure 0006616779
実施例7、比較例6及び参考例1に示すように、本発明の触媒として使用する金属錯体1は比較金属錯体1と比較し、熱安定性に優れ、高温域において高い重合活性を発現する。つまり、反応温度を上げることで、触媒あたりのポリマーの生産量を増やすことが可能となり、製造コストを減らすことができる。
さらに、一般式(1)で示される極性基を有するビニルモノマーとして、アクリル酸エステルを使用し、エチレンとの共重合を行った。
実施例8:アクリル酸メチルとエチレンの共重合(重合体8の調製)
金属錯体触媒1を使用して、アクリル酸メチルとエチレンの共重合を行った。窒素雰囲気下、金属錯体1(77mg,0.10mmol)及びトルエン(10mL)を含む30mLフラスコを、超音波振動器にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。次に、内容積1Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内に、トルエン及びアクリル酸メチル(重合時の濃度1mol/L、総液量700mL)を窒素ガス雰囲気下で導入した。先に調製した触媒スラリーを添加し、80℃、エチレン圧3MPaとして重合を開始した。反応中は温度を80℃に保ち、エチレンの分圧が3.0MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。重合終了後、エチレンをパージし、オートクレーブを室温まで冷却し、ろ過により重合体と溶媒を分離した。さらに、アセトン(1L)を用いて重合体を再沈させ、沈殿したポリマーをろ過した。さらに、得られた固形ポリマーをアセトン(1L)に分散させ、ここに1N−塩酸(20ml)を加えて1時間撹拌し、ポリマーをろ過した。得られた固形ポリマーを少量のアセトンで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、重合体8を得た。収量は11.0gであり、触媒活性は、110g/(mmol・h)と算出された。重合体8の分子量は、メソッドBにより決定し、重量平均分子量Mwが129,000であり、Mw/Mnは1.7であった。融点は120.4℃であった。アクリル酸メチルの取り込み量は、メソッドDにより決定し、1.3mol%であった。
実施例9:アクリル酸t−ブチルとエチレンの共重合(重合体9の調製)
アクリル酸t−ブチルとエチレンの共重合を行った。窒素ガス雰囲気下、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(275.1mg,1.0mmol)及びリンスルホン酸配位子1e(538.8mg,1.0mmol)を含む30mLフラスコに、トルエン(10mL)を加え、触媒スラリーを調製した。次に、内容積1Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内に、トルエン及びアクリル酸t−ブチル(重合時の濃度0.15mol/L、総液量700mL製)を窒素ガス雰囲気下で導入した。先に調製した触媒スラリーを添加し、40℃、エチレン圧3.0MPaとして重合を開始した。反応中は温度を40℃に保ち、エチレンの分圧が3.0MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。重合終了後、エチレンをパージし、オートクレーブを室温まで冷却し、アセトン(1L)を用いて重合体を再沈させ、沈殿した重合体をろ過した。さらに、得られた固形重合体をアセトン(1L)に分散させ、ここに1N−塩酸(10ml)を加えて1時間撹拌後、ポリマーをろ過した。得られた固形物をアセトンで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、重合体9を得た。収量は0.20gであり、触媒活性は0.20g/(mmol・h)と算出された。重合体9の分子量は、メソッドBにより決定し、重量平均分子量Mwは29,000であり、Mw/Mnは3.0であった。融点は132.2℃であった。
実施例10:アクリル酸t−ブチルとエチレンの共重合(重合体10の調製)
実施例9のリンスルホン酸配位子1eを化合物2eに代えた以外は同様にして、アクリル酸t−ブチルとエチレンの共重合を行った。その結果、重合体10を得た。収量は3.1gであり、触媒活性は3.1g/(mmol・h)と算出された。重合体10の分子量は、メソッドBにより決定し、重量平均分子量Mwは50,000であり、Mw/Mnは2.8であった。融点は132.3℃であった。アクリル酸t−ブチルの取り込み量は、メソッドDにより決定し、0.4mol%であった。
実施例13:酢酸アリル・エチレン共重合体のけん化反応(重合体13の調製)
実施例11に記載の重合条件と同様の条件で合成した酢酸アリル・エチレン共重合体(メソッドAにより数平均分子量101,000、重量平均分子量201,000、Mw/Mn=2.0と決定し、メソッドCにより、酢酸アリル含有率=4.8mol%と決定)のけん化反応を行った。すなわち、窒素雰囲気下、酢酸アリル・エチレン共重合体(25.1g)、トルエン(1,050mL)及びエタノール(400mL)を含む、加熱還流管を取り付けた2Lセパラブルフラスコを90℃に加熱しながら、酢酸アリル・エチレン共重合体が溶解するまで、誘導撹拌機で撹拌した。その溶液に、水酸化ナトリウム(0.15g、3.8mmol)のエタノール(40mL)溶液を加え、さらに90℃で4時間撹拌した。室温まで冷却後、反応液を、37%塩酸(1mL)を含むメタノール(3L)に加えた。沈殿した共重合体をろ過により回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、アリルアルコール・エチレン共重合体(重合体13)を得た。収量は23.3gであった。1H−NMR測定により、原料中の酢酸アリルユニット由来の−OC(=O)CH3基が−OH基に変換され、けん化反応が完全に進行していることを確認した。重合体13の分子量は、メソッドAにより決定し、数平均分子量86,000、重量平均分子量190,000と算出し、Mw/Mnは2.2であった。共重合体中のアリルアルコール含有率は、メソッドCにより、エチレン:アリルアルコールのモル比は100:4.7(アリルアルコールモル分率=4.5%)と決定した。融点は、106.0℃であった。
実施例14:酢酸アリル・エチレン共重合体のけん化反応(重合体14の調製)
実施例12に記載の重合条件と同様の条件で合成した酢酸アリル・エチレン共重合体(メソッドAにより数平均分子量33,000、重量平均分子量72,000、Mw/Mn=2.2と決定し、メソッドCにより、酢酸アリル含有率=10.4mol%と決定)を原料として、実施例13と同様の方法で、けん化反応を行った。条件を表6に、結果を表7に示す。
Figure 0006616779
Figure 0006616779

Claims (11)

  1. 一般式(C2)
    Figure 0006616779
    (式中、Mは周期律表第10族の金属原子を表し、Xはリン原子(P)または砒素原子(As)を表し、R 5 、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜30の炭化水素基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数2〜30の炭化水素基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基で置換された炭素原子数7〜30の炭化水素基、炭素原子数2〜10のアミド基で置換された炭素原子数3〜30の炭化水素基、炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリールオキシ基、及び炭素原子数2〜10のアシロキシ基からなる群より選ばれる置換基を表し、R6及びR7はそれぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜120の炭化水素基を表し、R6及びR7の少なくとも一方が、炭素原子数1〜10のアルキル基または炭素原子数4〜106のシクロアルキル基である。R 12 〜R 15 は水素原子、シリル基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、シリル基またはハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。ただし、R 12 〜R 15 の少なくとも1つはシリル基である。Lは電子供与性配位子を表し、qは0、1/2、1または2である。)で示される金属錯体を含むオレフィン重合用触媒。
  2. 一般式(C2)
    Figure 0006616779
    (式中、Mは周期律表第10族の金属原子を表し、Xはリン原子(P)または砒素原子(As)を表し、R 5 は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜30の炭化水素基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数2〜30の炭化水素基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基で置換された炭素原子数7〜30の炭化水素基、炭素原子数2〜10のアミド基で置換された炭素原子数3〜30の炭化水素基、炭素原子数1〜30のアルコキシ基、炭素原子数6〜30のアリールオキシ基、及び炭素原子数2〜10のアシロキシ基からなる群より選ばれる置換基を表し、R 6 及びR 7 はそれぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜120の炭化水素基を表し、R 6 及びR 7 の少なくとも一方が、炭素原子数1〜10のアルキル基または炭素原子数4〜106のシクロアルキル基である。R 12 〜R 15 は水素原子、シリル基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、シリル基またはハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。ただし、R 12 〜R 15 の少なくとも1つはシリル基である。Lは電子供与性配位子を表し、qは0、1/2、1または2である。)で示される金属錯体を重合触媒として使用することを特徴とする、エチレンの単独重合体、またはエチレン及び一般式(1)
    Figure 0006616779
    (式中、R1は、水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアシル基、炭素原子数2〜10のエステル基、炭素原子数2〜10のアシロキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜12の置換アミノ基、炭素原子数2〜12の置換アミド基、炭素原子数5〜10の置換ピリジル基、炭素原子数4〜10の置換ピロリジル基、炭素原子数5〜10の置換ピペリジル基、炭素原子数4〜10の置換ハイドロフリル基、炭素原子数4〜10の置換イミダゾリル基、メルカプト基、炭素原子数1〜10のアルキルチオ基、炭素原子数6〜10のアリールチオ基、エポキシ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基を示す。nは、0及び1〜6より選ばれる任意の整数である。)で示される極性基を有するオレフィンを含むモノマーとの共重合体の製造方法。
  3. 一般式(1)中のnが0である請求項2に記載の重合体の製造方法。
  4. 一般式(1)中のnが1である請求項2に記載の重合体の製造方法。
  5. 前記共重合体が、エチレン、一般式(1)で示される極性基を有するオレフィン、及び一般式(2)
    Figure 0006616779
    (式中、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
    で示されるα−オレフィンの共重合体であって、エチレン、一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマーに対応する、一般式(3)、一般式(4)、及び一般式(5)
    Figure 0006616779
    (式中、l、m及びpは、それぞれのモノマーユニットのモル比を表す数値であり、R1、R2及びnは、上記と同じ意味を表す。)
    で示されるモノマーユニットのモル比l、m及びpが、次式
    Figure 0006616779
    で表される関係を満たす請求項2に記載の重合体の製造方法。
  6. 一般式(C2)で示される金属錯体が、R12がシリル基である一般式(C3)
    Figure 0006616779
    (式中、3つのR16はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜8の炭化水素基を表し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。M、X、R5、R6、R7、R13、R14、R15、L及びqは一般式(C2)の記載と同じ意味を表す。)
    で示される請求項2〜5のいずれかに記載の重合体の製造方法。
  7. 一般式(C3)中、R16がすべてメチル基である請求項6に記載の重合体の製造方法。
  8. 一般式(C3)のR13が水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基である請求項6または7に記載の重合体の製造方法。
  9. 一般式(C3)のR13が、水素原子、イソプロピル基またはフェニル基である請求項6〜8のいずれかに記載の重合体の製造方法。
  10. 一般式(C3)のR14、R15が共に水素原子である請求項6〜9のいずれかに記載の重合体の製造方法。
  11. 請求項2〜10のいずれかに記載の製造方法を用いて、エチレンと一般式(1)のR1が炭素原子数2〜10のアシロキシ基である極性基を有するオレフィンとから共重合体を製造し、前記共重合体に対してけん化反応または加水分解反応を行うことを特徴とする、水酸基を有する共重合体の製造方法。
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