JP6938264B2 - 金属錯体およびその製造方法、当該金属錯体を含むオレフィン重合用触媒成分およびオレフィン重合用触媒、並びに、当該オレフィン重合用触媒を用いたα−オレフィン重合体及び共重合体の製造方法 - Google Patents
金属錯体およびその製造方法、当該金属錯体を含むオレフィン重合用触媒成分およびオレフィン重合用触媒、並びに、当該オレフィン重合用触媒を用いたα−オレフィン重合体及び共重合体の製造方法 Download PDFInfo
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高圧ラジカル法以外で共重合体を得ることは工業的に困難であり、チーグラー触媒やメタロセン触媒を用いた場合には触媒失活が避けられなかった。
[1] 下記一般式[I]または[II]で表される化合物と、ニッケルまたはパラジウムを含む遷移金属化合物とを接触させることを特徴とする金属錯体の製造方法。
R1 は、(iii)〜(iv)からなる群より選ばれる基を表す。
(iii)ヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していてもよい、炭素数3〜30の分岐した非環状アルキル基、炭素数3〜30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、または炭素数7〜30のアルキルアリール基
(iv)Si(OR8)3−x(R8)x、またはOSi(OR8)3−x(R8)x 。ここで、R8は水素または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。xは0から3までの整数を表す。
R 2 、R 3 およびR 4 は、水素を表す。
R5およびR6は、それぞれ独立に、ヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していない、炭素数7〜30の直鎖状アルキル基、炭素数7〜30の分岐した非環状アルキル基、炭素数7〜30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、または炭素数7〜30のアリールアルキル基を表す。
E1は、リン、砒素またはアンチモンを表す。
X1は、酸素または硫黄を表す。
また、一般式[I]中、
Zは、水素、または脱離基を表し、
mはZの価数を表す。]
[2] 下記一般式[III]で表されることを特徴とする金属錯体。
R1は、(iii)〜(iv)からなる群より選ばれる基を表す。
(iii)ヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していてもよい、炭素数3〜30の分岐した非環状アルキル基、炭素数3〜30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、または炭素数7〜30のアルキルアリール基
(iv)Si(OR8)3−x(R8)x、またはOSi(OR8)3−x(R8)x。ここで、R8は水素または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。xは0から3までの整数を表す。
R2、R3およびR4は、水素を表す。
R5およびR6は、それぞれ独立に、ヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していない、炭素数7〜30の直鎖状アルキル基、炭素数7〜30の分岐した非環状アルキル基、炭素数7〜30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、または炭素数7〜30のアリールアルキル基を表す。
E1は、リン、砒素またはアンチモンを表す。
X1は、酸素または硫黄を表す。
Mは、ニッケルまたはパラジウムを表す。
R7は、水素、またはヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
L1は、Mに配位したリガンドを表す。
R7とL1が互いに結合して環を形成してもよい。]
[3] 上記一般式[I]または[II]で表される化合物と、ニッケルまたはパラジウムを含む遷移金属化合物とを接触させることにより、上記一般式[III]で表される金属錯体を製造することを特徴とする金属錯体の製造方法。
[4] [2]に記載の金属錯体を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒成分。
[5] 下記の成分(A)及び(B)、更に必要に応じて(C)を含むことを特徴とする、オレフィン重合用触媒。
成分(A):[2]に記載の金属錯体
成分(B):成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物またはイオン交換性層状珪酸塩
成分(C):有機アルミニウム化合物
[6] 前記成分(B)がアルミノキサンであることを特徴とする[5]に記載のオレフィン重合用触媒。
[7] [5]又は[6]に記載の重合用触媒の存在下に、(a)α−オレフィンを重合または共重合することを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法。
[8] [5]又は[6]に記載の重合用触媒の存在下に、(a)α−オレフィンと、(b)(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ビニルモノマーまたはアリルモノマーとを共重合することを特徴とするα−オレフィン共重合体の製造方法。
本発明において、「重合」とは、1種類のモノマーの単独重合と複数種のモノマーの共重合を総称するものであり、特に両者を区別する必要がない場合には、総称して単に「重合」と記載する。また、本発明において、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの両方を含む。
本発明の金属錯体は、下記一般式[I]又は[II]で表される化合物と、周期表の9族、10族または11族に属する遷移金属を含む遷移金属化合物とを接触させることにより得られる。
リンフェノレート化合物と上記遷移金属化合物とを混合する条件は、特に限定されない。これらの化合物を直に混合してもよいし、溶媒を用いて混合してもよい。特に、均一な混合を達成する観点から、溶媒を用いることが好ましい。
得られる金属錯体中において、リンフェノレート化合物は配位子となることから、リンフェノレート化合物と上記遷移金属化合物との反応は、通常、配位子交換反応となる。得られる金属錯体が上記遷移金属化合物よりも熱力学的に安定である場合には、リンフェノレート化合物と上記遷移金属化合物とを室温(15〜30℃)で混合することにより配位子交換反応が進行する。一方、得られる金属錯体が上記遷移金属化合物よりも熱力学的に不安定である場合には、配位子交換反応を十分に進行させるため、上記混合物を適宜加熱することが好ましい。
しかし、一般式[I]又は[II]で表される化合物は、リンフェノレート化合物であり、これは二座配位子であるから、当該化合物を周期表の9族、10族または11族に属する遷移金属を含む遷移金属化合物と接触させた場合には、一般式[III]に示す構造以外の構造を有する金属錯体が生成する可能性がある。例えば、一般式[I]又は[II]中のX1のみが遷移金属と結合を形成する場合や、これらの式中のE1のみが遷移金属と結合を形成する場合も考えられる。また、一般式[III]に示す金属錯体は、リンフェノレート化合物と遷移金属化合物との1:1反応生成物であるところ、遷移金属の種類によっては異なる組成比の反応生成物が得られることも考えられる。例えば、2分子以上のリンフェノレート化合物が1つの遷移金属と錯体を形成する場合も考えられるし、リンフェノレート化合物1分子が2つ以上の遷移金属と反応して多核錯体を合成する場合も考えられる。
本発明においては、このような一般式[III]に示す構造以外の構造を有する金属錯体が、一般式[III]に示す金属錯体と同様に、α−オレフィン(共)重合体の製造に用いることが可能であることを否定するものではない。
R1,R2,R3およびR4は、それぞれ独立に、(i)水素、(ii)ハロゲン、(iii)ヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していてもよい特定の基、又は(iv)ヘテロ原子含有置換基を表す。
(ii)ハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中でも、フッ素原子が好ましい。
(iii)に使用されるヘテロ原子としては、酸素、窒素、リン、硫黄、セレン、ケイ素、ハロゲン、ホウ素が挙げられる。これらのヘテロ原子のうち、フッ素、塩素が好ましい。
(iii)に使用される「ヘテロ原子を含有する基」としては、具体的には、後述する(iv)ヘテロ原子含有置換基と同様の基が挙げられる。「ヘテロ原子を含有する基」としては、例えば、アルコキシ基(OR9)、エステル基(CO2R9)等が挙げられる。
なお、R9は後述の通りである。
以上の(iii)においては、R1〜R4に相当する置換基の総炭素数が、好ましくは1〜30であり、より好ましくは2〜25であり、さらに好ましくは4〜20である。
以上を踏まえ、(iii)「ヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していてもよい特定の基」とは、(iii−A)炭素数1〜30の直鎖状アルキル基、炭素数3〜30の分岐した非環状アルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数3〜30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、及び炭素数7〜30のアルキルアリール基、(iii−B)上記(iii−A)のそれぞれの基に上記ヘテロ原子が1又は2以上置換している基、(iii−C)上記(iii−A)のそれぞれの基に上記「ヘテロ原子を含有する基」が1又は2以上置換している基、並びに、(iii−D)上記(iii−A)のそれぞれの基に、上記ヘテロ原子が1又は2以上置換し、かつ、上記「ヘテロ原子を含有する基」が1又は2以上置換している基を指す。(iii−C)については、例えば、アルコキシ基が置換しているアルキル基や、エステル基が置換しているアリール基等が挙げられる。
(iv)ヘテロ原子含有置換基とは、具体的には、OR9、CO2R9、CO2M’、C(O)N(R8)2、C(O)R9、SR9、SO2R9、SOR9、OSO2R9、P(O)(OR9)2−y(R8)y、CN、NHR9、N(R9)2、Si(OR8)3−x(R8)x、OSi(OR8)3−x(R8)x、NO2、SO3M’、PO3M’2、P(O)(OR2)2M’、及びエポキシ含有基を指す。ここで、R8は水素または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。また、R9は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウムまたはホスホニウムを表し、xは0から3までの整数、yは0から2までの整数を表す。
なお、R1,R2,R3およびR4から適宜選択された複数の基が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、または酸素、窒素、硫黄からなる群より選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。このとき、環員数は5〜8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。
また、R1内に含まれる複数の基が互いに連結し、R1上に環を形成してもよい。R2、R3、又はR4のいずれかが複数の基を含む場合も同様である。
特にR1については、これらの中で好ましいものとして、(i)水素原子;(iii)t−ブチル基、ペンタフルオロフェニル基、カルバゾリル基;(iv)メトキシ基、トリメチルシリル基、トリメチルシリルオキシ基、シクロヘキシルアミノ基等が挙げられる。
また、R3については、これらの中で好ましいものとして、(i)水素原子又は(iii)t−ブチル基等が挙げられる。
上記直鎖状アルキル基、分岐した非環状アルキル基、アルケニル基、側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、及びアリールアルキル基の各炭素数は、好ましくは7〜25であり、より好ましくは8〜20であり、さらに好ましくは10〜15である。
R5及びR6は、金属Mの近傍にあって、立体的および/または電子的にMに相互作用を及ぼす。こうした効果を及ぼすためには、R5及びR6は、かさ高い方が好ましい。
好ましいR5及びR6の具体的な例示として、5−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イル基(1−アダマンチル基)、5−メチル−2−(プロパン−2−イル)シクロヘキシル基(メンチル基)、2,6−ジメチルヘプタン−4−イル基、2,4−ジメチルペンタン−3−イル基、ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタ−2−イル基、2,4−フェニルペンタン−3−イル基、シクロヘプチル基、2−ヘプチル基などを挙げることができる。これらの中でも、1−アダマンチル基及びメンチル基がより好ましい。
すなわち、酸素含有基として、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基などのアリーロキシ基、アセチル基、ベンゾイル基などのアシル基、アセトキシ基、カルボキシエチル基、カルボキシt−ブチル基、カルボキシフェニル基などのエステル基などを挙げることができる。窒素含有基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などのジアルキルアミノ基などを挙げることができる。硫黄含有基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオ−n−プロポキシ基、チオイソプロポキシ基、チオ−n−ブトキシ基、チオ−t−ブトキシ基、チオフェノキシ基などのチオアルコキシ基、p−メチルチオフェノキシ基、p−メトキシチオフェノキシ基などのチオアリーロキシ基などを挙げることができる。リン含有置換基としては、ジメチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジ−n−プロピルホスフィノ基、シクロヘキシルホスフィノ基などのジアルキルホスフィノ基などを挙げることができる。セレン含有基としては、メチルセレニル基、エチルセレニル基、n−プロピルセレニル基、n−ブチルセレニル基、t−ブチルセレニル基、フェニルセレニル基などのセレニル基を挙げることができる。
X1は、酸素または硫黄を表す。この中でも、X1は酸素であることが好ましい。
Zは、水素、または脱離基を表す。Zは、具体的には、水素原子、R9SO2基(ここでR9は、前記したとおりである)、CF3SO2基などを挙げることができる。
mはZの価数を表す。
以下、一般式[III]中のM、R7、L1について説明する。
本発明において、Mは、周期表の9族、10族または11族に属する遷移金属である。
Mは、好ましくは、10族のニッケル、パラジウム、白金および9族のコバルト、ロジウムおよび11族の銅であり、さらに好ましくは、10族のニッケル、パラジウム、白金であり、最も好ましくは10族のニッケルまたはパラジウムである。
Mの価数については2価が好ましい。ここでMの価数とは、有機金属化学で用いられる形式酸化数(formal oxidation number)を意味する。すなわち、ある元素が関与する結合中の電子対を電気陰性度の大きい元素に割り当てたとき、その元素の原子上に残る電荷の数を指す。例えば、本発明の一般式[III]において、E1がリン、X1が酸素、Mがニッケル、R7がフェニル基、L1がトリエチルホスフィンであり、ニッケルがリン、酸素、フェニル基の炭素、トリエチルホスフィンのリンと結合を形成している場合、ニッケルの形式酸化数、すなわちニッケルの価数は2価となる。なぜならば、上述の定義に基づき、これらの結合において、電子対は、ニッケルよりも電気陰性度の大きい2つのリン、酸素、炭素に割り当てられ、電荷は、リンが0、酸素が−1、フェニル基が−1で、錯体は、全体として電気的に中性であるため、ニッケル上に残る電荷は+2となるからである。
2価の遷移金属としては、例えば、ニッケル(II)、パラジウム(II)、白金(II)、コバルト(II)が好ましく、2価以外では、銅(I)またはロジウム(III)も好ましい。
R7の具体的な例としては、ヒドリド基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、p−メチルフェニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。
なお、R7とL1が互いに結合して環を形成してもよい。そのような例として、シクロオクタ−1−エニル基を挙げることができ、これも本発明における好ましい様態である。
例えば、ニッケルを含む遷移金属化合物としては、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、一般式:Ni(CH2CR13CH2)2で表される錯体[ここでR13は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素基、OR8、CO2R8、CO2M’、C(O)N(R9)2、C(O)R8、SR8、SO2R8、SOR8、OSO2R8、P(O)(OR8)2−y(R9)y、CN、NHR8、N(R8)2、Si(OR9)3−x(R9)x、OSi(OR9)3−x(R9)x、NO2、SO3M’、PO3M’2、P(O)(OR8)2M’またはエポキシ含有基を表す(ここで、R8は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R9は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウムまたはホスホニウムを表し、xは0〜3の整数を表し、yは0〜2の整数を表す。)。]、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル(II)、一般式:Ni(CH2SiR13 3)2L1 2で表される錯体(ここでR13、L1は、上記の通りである。)、一般式:NiR13 2L1 2で表される錯体(ここでR13、L1は、上記の通りである。)等を使用することができる。
また、9族、10族または11族の遷移金属を含む遷移金属化合物については、一般式:MR13 pL1 q(ここで、Mは、9族、10族または11族の遷移金属であり、R13およびL1は、本明細書に記載した通りであり、pおよびqは、Mの価数を満たす0以上の整数である。)を使用することができる。
特に好ましくは、ニッケル(0)ビス(1,5−シクロオクタジエン)、NiPhCl(PEt3)2、NiPhCl(PPh3)2、Ni(CH2CHCH2)2、Ni(CH2CMeCH2)2、Ni(CH2SiMe3)2(Py)2(以下Pyは、ピリジンを表す。)、Ni(CH2SiMe3)2(Lut)2(以下Lutは、2,6−ルチジンを表す。)、NiPh2(Py)2、NiPh2(Lut)2,Pd(dba)2、Pd2(dba)3、Pd3(dba)4(ここで、dbaは、ジベンジリデンアセトンを表す。)、Pd(OCOCH3)2、(1,5−シクロオクタジエン)Pd(メチル)(クロリド)である。
なお、反応を行う際に、本発明に係るL1を共存させてもよい。本発明に係るMとして、ニッケルやパラジウムを用いた場合には、ルイス塩基性のL1を系内に共存させることによって、精製した一般式[III]の錯体の安定性が増す場合があり、このような場合には、L1が本発明の重合反応または共重合反応を阻害しない限りにおいて、L1を共存させることが好ましい。
本発明の製造方法においては、上述したように、一般式[I]または[II]で表される化合物と、周期表の9族、10族または11族に属する遷移金属を含む遷移金属化合物とを接触させることにより、一般式[III]で表される金属錯体を製造することができる。
本発明のオレフィン重合用触媒成分は、上記金属錯体、又は上記製造方法で得られる金属錯体を含むことを特徴とする。
本発明においては、一般式[III]で表される金属錯体を、重合または共重合の触媒成分として使用することができる。前記したように、一般式[III]で表される金属錯体は、一般式[I]または[II]と遷移金属錯体成分との反応によって、形成させることができる。一般式[III]で表される金属錯体を触媒成分に用いる場合、単離したものを用いてもよいし、担体に担持したものを用いてもよい。こうした担持α−オレフィンの重合やα−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合に使用する反応器中で、これらのモノマーの存在下または非存在下で行ってもよいし、該反応器とは別の容器中で行ってもよい。
これらは混合層を形成していてもよい。人工合成物としては、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライト等が挙げられる。これら具体例のうち好ましくは、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロサイト、ハロサイト等のハロサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられ、特に好ましくはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられる。
本発明のオレフィン重合用触媒は、下記の成分(A)及び(B)、更に必要に応じて(C)を含むことを特徴とする。
成分(A):上記金属錯体、又は上記製造方法で得られる金属錯体
成分(B):成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩
成分(C):有機アルミニウム化合物
有機アルミニウムと水との反応は、通常、不活性炭化水素(溶媒)中で行われる。不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
(Rx)tAl(X3)(3−t)
(一般式中、Rxは、炭素数1〜18、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基を示し、X3は、水素原子又はハロゲン原子を示し、tは、1≦t≦3の整数を示す。)
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などのいずれでも差し支えないが、メチル基、イソブチル基が好ましく、メチル基であることが特に好ましい。上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
なお、上記した有機アルミニウムオキシ化合物のうち、アルキルアルミニウムと水とを反応させて得られるものは、通常、アルミノキサンと呼ばれ、特にメチルアルミノキサン(実質的にメチルアルミノキサン(MAO)からなるものを含む)は、有機アルミニウムオキシ化合物として、好適である。MAO溶液を溶媒留去して得られた固体状のドライメチルアルミノキサン(DMAO)もまた好適である。
もちろん、有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した各有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、前記有機アルミニウムオキシ化合物を前述の不活性炭化水素溶媒に溶解又は分散させた溶液としたものを用いても良い。
本発明において、成分(B)として好ましく用いられるものは、スメクタイト族に属するもので、具体的にはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどを挙げることができる。中でも、共重合体部分の重合活性、分子量を高める観点からモンモリロナイトが好ましい。
珪酸塩は酸処理及び/又は塩類処理を行ってもよい。該処理においては、対応する酸と塩基を混合して反応系内で塩を生成させて処理を行ってもよい。
Al(Rp)aX(3−a)
一般式中、Rpは、炭素数1〜20の炭化水素基、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基又はシロキシ基を示し、aは0より大きく3以下の数を示す。
一般式で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲン又はアルコキシ含有アルキルアルミニウムが挙げられる。
(ii)成分(A)と成分(C)とを接触させた後に、成分(B)を添加する方法
(iii)成分(B)と成分(C)とを接触させた後に、成分(A)を添加する方法
(iv)各成分(A)、(B)、(C)を同時に接触させる方法。
更に、各成分中で別種の成分を混合物として用いてもよいし、別々に順番を変えて接触させてもよい。なお、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
又、成分(B)と成分(C)とを接触させた後、成分(A)と成分(C)の混合物を加えるというように、成分を分割して各成分に接触させてもよい。
上記の各成分(A)(B)(C)の接触は、窒素などの不活性ガス中において、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素溶媒中で行うことが好ましい。接触は、−20℃から溶媒の沸点の間の温度で行うことができ、特に室温から溶媒の沸点の間での温度で行うのが好ましい。
本発明のα−オレフィン重合体の製造方法の一実施形態は、上記重合用触媒の存在下で、(a)α−オレフィンを重合又は共重合するものである。
本発明における成分(a)は、一般式:CH2=CHR10で表されるα−オレフィンである。ここで、R10は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であり、分岐、環、および/または不飽和結合を有していてもよい。R10の炭素数が20より大きいと、十分な重合活性が発現しない傾向がある。このため、なかでも、好ましい(a)成分としては、R10が水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であるα−オレフィンが挙げられる。
さらに好ましい(a)成分としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキセン、スチレンが挙げられる。なお、単独の(a)成分を使用してもよいし、複数の(a)成分を併用してもよい。
本発明における(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、一般式:CH2=C(R11)CO2(R12)で表される。ここで、R11は、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、分岐、環、および/または不飽和結合を有していてもよい。R12は、炭素数1〜30の炭化水素基であり、分岐、環、および/または不飽和結合を有していてもよい。さらに、R12内の任意の位置にヘテロ原子を含有していてもよい。
R11の炭素数が11以上であると、十分な重合活性が発現しない傾向がある。したがって、R11は、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であるが、好ましい(メタ)アクリル酸エステルとしては、R11が水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基であるものが挙げられる。より好ましい(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、R11がメチル基であるメタクリル酸エステルまたはR11が水素原子であるアクリル酸エステルが挙げられる。同様に、R12の炭素数が30を超えると、重合活性が低下する傾向がある。よって、R12の炭素数は1〜30であるが、R12は、好ましくは炭素数1〜12であり、さらに好ましくは炭素数1〜8である。
また、R12内に含まれていても良いヘテロ原子としては、酸素、硫黄、セレン、リン、窒素、ケイ素、フッ素、ホウ素等が挙げられる。これらのヘテロ原子のうち、酸素、ケイ素、フッ素が好ましく、酸素が更に好ましい。また、R12は、ヘテロ原子を含まないものも好ましい。
重合温度、重合圧力および重合時間に、特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。すなわち、重合温度は、通常−20℃〜290℃、好ましくは0℃〜250℃、共重合圧力は、0.1MPa〜300MPa、好ましくは、0.3MPa〜250MPa、重合時間は、0.1分〜10時間、好ましくは、0.5分〜7時間、さらに好ましくは1分〜6時間の範囲から選ぶことができる。
重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても特に制限はなく、目的に応じてさまざまな供給法をとることができる。たとえばバッチ重合の場合、あらかじめ所定量のモノマーを重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を重合反応器に供給してもよい。また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を重合反応器に連続的に、または間歇的に供給し、重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
重合体の分子量制御には、従来公知の方法を使用することができる。すなわち、重合温度を制御して分子量を制御する方法、モノマー濃度を制御して分子量を制御する方法、連鎖移動剤を使用して分子量を制御する方法、遷移金属錯体中のリガンド構造の制御により分子量を制御する等が挙げられる。連鎖移動剤を使用する場合には、従来公知の連鎖移動剤を用いることができる。例えば、水素、メタルアルキルなどを使用することができる。
また、(b)成分自身が一種の連鎖移動剤となる場合には、(b)成分の(a)成分に対する比率や、(b)成分の濃度を制御することによっても、分子量調節が可能である。
遷移金属錯体中のリガンド構造を制御して、分子量調節を行う場合には、前記したR2、R3中のヘテロ原子含有基の種類、数、配置を制御したり、金属Mのまわりに嵩高い置換基を配置したり、前記したR6中にヘテロ原子を導入したりすることによって、一般に分子量が向上する傾向を利用することができる。なお、金属Mに対して、アリール基やヘテロ原子含有置換基などの電子供与性基が相互作用可能となるように電子供与性基を配置することが好ましい。こうした電子供与性基が金属Mと相互作用可能であるかどうかは、一般に、分子模型や分子軌道計算で電子供与性基と金属Mとの距離を測定することによって判断できる。
以下の合成例で、とくに断りのない限り、操作は精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は脱水・脱酸素したものを用いた。
(1)重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mn:以下のGPC測定により求めた。
はじめに、試料約20mgをポリマーラボラトリー社製高温GPC用前処理装置PL−SP 260VS用のバイアル瓶に採取し、安定剤としてBHTを含有するo−ジクロロベンゼン(BHT濃度=0.5g/L)を加え、ポリマー濃度が0.1質量%になるように調整した。ポリマーを上記高温GPC用前処理装置PL−SP 260VS中で135℃に加熱して溶解させ、グラスフィルターにて濾過して試料を調製した。なお、本発明におけるGPC測定において、グラスフィルターに捕捉されたポリマーはなかった。次に、カラムとして、東ソー社製TSKgel GMH−HT(30cm×4本)およびRI検出器を装着したウォーターズ社製GPCV 2000を使用してGPC測定を行った。測定条件としては、試料溶液注入量:約520μL、カラム温度:135℃、溶媒:o−ジクロロベンゼン、流量:1.0mL/minを採用した。分子量の算出は以下のように行った。すなわち、標準試料として市販の単分散のポリスチレンを使用し、該ポリスチレン標準試料およびエチレン系重合体の粘度式から、保持時間と分子量に関する校正曲線を作成し、該校正曲線に基づいて分子量の算出を行った。なお、粘度式としては、[η]=K×Mαを使用し、ポリスチレンに対しては、K=1.38E−4、α=0.70を使用し、エチレン系重合体に対しては、K=4.77E−4、α=0.70を使用し、プロピレン系重合体に対しては、K=1.03E−4、α=0.78を使用した。
(合成例1):リガンドB−350の合成
以下のスキームに従ってリガンドB−350を合成した。
なお、以降の化学式中、−OMOMとはメトキシメトキシ基(−OCH2OCH3)を表す。
アルゴン雰囲気下で化合物1(10.0g、73.4mmol)、塩化アルミニウム(10.47g、78.6mmol)、三塩化リン(50.7g、369.2mmol、32.5mL)の混合物を80℃で12時間撹拌し、オレンジ色の懸濁液を得た。その後、過剰な三塩化リンを常圧蒸留により除去し、セライトを通してろ過した。ろ液を水150mLに注ぎ入れ、ジクロロメタン(150mLx2)で抽出し、有機相は無水硫酸ナトリウムで乾燥し、その後濃縮することで化合物2を得た。
化合物2(13.0g、36.8mmol)のTHF150mL溶液に水素化アルミニウム(3.3g、86.9mmol)を−14℃で60分かけて加えた。30℃まで昇温後、混合物は12時間撹拌し、灰色懸濁液を得た。懸濁液は−14℃に冷却し、1MのHCl水溶液100mLをシリンジでゆっくりと滴下した。生じた二層の上層を分液漏斗により分離し、酢酸エチル100mLで抽出した。有機相は無水硫酸ナトリウムで乾燥し、その後濃縮することで化合物3を得た。
アルゴン雰囲気下で化合物3(5.8g、19.2mmol)、化合物4(5.7g、19.2mmol)、ナトリム−tert−ブトキシド(3.7g、38.4mmol)、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル(DPEPhos、2.1g、3.84mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(1.8g、1.9mmol)にトルエン500mLを30℃で加えた。反応混合物は110℃で12時間撹拌し、灰色の懸濁液を得た。反応溶液を30℃まで降温し、セライトを通してろ過し、ろ液を水150mLに注ぎ入れ、酢酸エチル(150mLx2)で抽出し、有機相は無水硫酸ナトリウムで乾燥し、その後濃縮することでオレンジ色の残渣を得た。シリカゲルカラム(展開溶媒に、石油エーテル/酢酸エチル=0:1−50:1)で精製し、化合物5aを得た(3.0g、5.8mmol、収率30.2%)。
アルゴン雰囲気下で、化合物5a(3.0g、5.8mmol)のTHF溶液20mLにn−ブチルリチウム(2.5M、2.8mL、7.0mmol)を−78℃で加えた。
反応溶液は−78℃で2時間撹拌し、オレンジ色の懸濁液を得た。そこにヘキサフルオロベンゼン(1.6g、8.7mmol、1.00mL)を−78℃加え、30℃で12時間撹拌した。反応溶液は、氷で冷却した飽和塩化アンモニウムに注ぎ入れ、酢酸エチル(100mLx2)で抽出した。有機相は無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮することで黄色残渣を得た。シリカゲルカラム(展開溶媒に、石油エーテル:酢酸エチル=1:0−30:1)で精製し、化合物6aを得た(1.3g、2.2mmol、収率37.1%)。
アルゴン雰囲気下で、化合物6a(1.7g、2.8mmol)にHCL/酢酸エチル(4M、100mL、400.0mmol)を0℃で加えた。30℃まで昇温した後に、反応混合物は20時間撹拌し、白色の懸濁溶液を得た。揮発成分を減圧下で留去し、粗生成物を得た。ジクロロメタン100mLを添加し、有機相は飽和炭化水素ナトリウム水溶液100mLで洗浄した。その後、有機相を濃縮し、B−350を得た(1.3g、2.4mmol、収率85.4%)。
1HNMR(400MHz,CDCl3,δ,ppm):8.21(s,1H),7.70(d,J=7.6Hz,1H),7.25(s,1H),6.99(t,J=7.6Hz,1H),2.03−1.90(m,18H),1.71(s,12H);
31PNMR(162MHz,CDCl3,δ,ppm)−5.59(s).
以下のスキームにしたがってリガンドB−352を合成した。
濃塩酸(12M、198.0mL)に無水塩化亜鉛(287.9g、2.11mol)を一気に投入した。無水塩化亜鉛が塩酸に溶解後、化合物11(100.0g、634.0mmol)を加えた。その後、溶液は35℃で16時間撹拌し、黄色懸濁溶液を得た。
懸濁溶液を冷却した後、石油エーテル(80mLx3)で抽出した。有機相は50mLの水と濃硫酸を小分けして変色がなくなるまで加えた。有機相は水(50mLx5)で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した後に濃縮し、粗生成物を得た。
粗生成物は減圧蒸留(b.p.60℃/20mmHg)で精製し、無色オイルである化合物12が得られた。収量:90.0g(515.4mmol、収率:80.5%)
窒素雰囲気下で3つ口フラスコに、マグネシウム(7.1g、293.1mmol)を入れた後に、無水THF80mLとヨウ素(10.0mg、39.4μmol)を加えた。その後化合物12(40.0g、229.0mmol)をゆっくりと加えた。反応溶液は70℃で3時間撹拌し、化合物13を含む黒色懸濁液を得た。黒色懸濁液を0℃に冷却した後に、トルエン50mLに溶かした三塩化リン(11.0g、80.1mmol)を滴下して加えた。得られた懸濁溶液は0℃で1時間撹拌した後に、70℃で14時間撹拌し、白色懸濁溶液を得た。懸濁溶液はろ過による分離し、ろ液は溶媒留去し黄色オイルとして化合物14(粗生成物)を得た。
化合物15(2.1g、15.2mmol)をTHF30mLに溶解し、n−ブチルリチウム(2.5M、6.1mL、15.2mmol)を−78℃で加え、0℃で1時間撹拌した、化合物14(3.5g、10.1mmol)のTHF10mL溶液を反応溶液に加え、20℃で16時間撹拌し、化合物16を含む黄色溶液を得た。この黄色溶液はそのまま次の反応に使用した。
窒素雰囲気下で、化合物16を含む黄色溶液(4.5g、10.1mmol)のTHF30mL溶液に、n−BuLi(2.5M、6.48mL、16.2mmol)を0℃で加え、0℃で2時間撹拌した。反応溶液にヘキサフルオロベンゼン(2.8g、15.2mmol)を0℃で加え、20℃で16時間撹拌し、黄色溶液を得た。反応溶液は、水でクエンチし、酢酸エチル(20mLx2)で抽出した。有機相は、水20mL、塩水20mLで洗浄し、硫酸ナトリムで乾燥し、その後濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物は展開溶媒に石油エーテル/酢酸エチル=100/1を用い、シリカゲルカラムにより精製し、化合物6bを得た。
化合物6b(200.0mg、293.8μmol)の酢酸エチル溶液10mLにHCl/酢酸エチル(4M、734.5μL、2937.9μmol)を0℃で加え、15℃で30分撹拌した。その後、混合溶液を濃縮し、飽和炭酸水素ナトリム溶液30mLを加えクエンチし、ジクロロメタン(20mLx2)で抽出した。有機相は無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に濃縮し、リガンドB−352を得た。
1HNMR(400MHz,C6D6,δ,ppm):7.99(d,J=10.08Hz,1H),7.51(d,J=7.60,2.52,1.76Hz,1H),7.06(d,J=7.32Hz,1H),6.82(t,J=7.60Hz,1H),2.79(sept,J=7.08Hz,1H),2.18−2.09(m,1H),1.96−1.86(m,3H),1.81−1.74(m,1H),1.69−1.65(m,1H),1.61−1.47(m,3H),1.42−1.32(m,2H),1.24−1.15(m,2H),1.07−1.02(m,1H),0.97−0.93(m,9H),0.90−0.86(m,10H),0.54−0.45(m,1H),0.34(d,J=7.84Hz,3H).;
31PNMR(162MHz,C6D6,δ,ppm)−37.52(s).
以下のスキームにしたがってリガンドB−415を合成した。
窒素雰囲気下で、3つ口フラスコにマグネシウム(7.12g、293.06mmol)を入れて、無水THF30mLとヨウ素(158.76mg、625.49μmol、126μL)を室温で加えた。その後、化合物12(40g、228.95mmol)のTHF溶液10mLをゆっくりと滴下し、1,2−ジブロモエタン(430.11mg、2.29mmol、172.73μL)を二回に分けて加えた。反応溶液は68℃で3時間撹拌し、黒色の懸濁液を得た。反応溶液を室温まで冷却した後ろ過し、ろ液を三塩化リン(8.59g、62.55mmol)のヘキサン溶液120mLに添加し、白色の懸濁液を得た。懸濁液はゆっくりと室温まで昇温し、68℃で16時間撹拌した。反応溶液をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮し、淡黄色のオイル状生成物を得た。その後、減圧蒸留(140−155℃、80pa)により精製し、化合物14を純度61%で得た(21.7g、38.37mmol、収率30.7%)。
アルゴン雰囲気下で、化合物14(6.0g、17.39mmol)のTHF溶液50mLに水素化アルミニウムリチウム(792.22mg、20.87mmol)を0℃で加え、18℃で12時間撹拌し、白色の懸濁液を得た。脱気した水(1.2mL)、脱気した15%水酸化ナトリウム水溶液3.6mLを0℃で反応溶液に加えた。ろ過後、固体残渣をジクロロメタン(50mLx3)で洗浄し、白色固体として化合物17を得た(5.9g、16.72mmol、収率96.13%、純度88%)。
水素化ナトリウム(66.30g、1.66mol)のTHF(300.00mL)懸濁溶液に化合物18(100.00g、665.69mmol、102.04mL)を0℃で加え、0℃で30分撹拌した。この反応溶液にクロロメチルメチルエーテル(107.19g、1.33mol、101.12mL)を0℃で加え、15℃で15時間撹拌し、白色の懸濁液を得た。反応溶液を水200mLでクエンチし、酢酸エチル(200mLx3)で抽出した。混合有機層は食塩水200mLで洗浄した。その後、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過し、ろ液を濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物はシリカゲルカラム(展開液:石油エーテル)で精製し、化合物19(112.00g、576.52mmol、86.60%)を得た。
化合物19(10.00g、51.47mmol)のTHF溶液(30.00mL)にn−BuLi(2.5M、22.65mL)を0℃で加えた。反応溶液は0℃で1時間撹拌した。その後、ヨウ素(15.68g、61.76mmol、12.44mL)を加え、25℃で16時間撹拌し、黄色溶液を得た。その後、反応溶液を飽和硫酸ナトリウム水溶液30mLでクエンチし、酢酸エチル(30mLx3)で抽出した。混合有機層は食塩水15mLで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過した。ろ液を濃縮し粗生成物を得た。粗生成物はシリカゲルカラム(展開液:石油エーテル)で精製し、化合物20(12.00g、37.48mmol、収率72.82%)を得た。
化合物20(5.9g、16.72mmol)と化合物17(5.95g、16.72mmol)、Pd(dba)2(961.50mg、1.67mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(3.21g、33.44mmol)とビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル(1.80g、3.34mmol)にトルエン(80mL)を加え、窒素雰囲気下で、110℃、18時間撹拌し褐色の懸濁液を得た。反応溶液は室温まで冷却し、その後ろ過した。固体残渣を酢酸エチル(100mLx4)で洗浄し、ろ液と合わせて濃縮し、黒色オイル状の粗生成物を得た。粗生成物はシリカゲルカラム(展開液:石油エーテル)で精製した。その後、80℃、4時間減圧乾燥し、化合物6c(5.3g、9.86mmol、収率58.95%)を黄色固体として得た。
化合物6c(1.2g、2.39mmol)のジクロロメタン20mL溶液にHCl/酢酸エチル(2M、30.00mL)を加えた。反応溶液は18℃で24時間撹拌し、黄色溶液を得た。反応溶液を濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物のpHを飽和炭酸水素ナトリム水溶液30mLで6.5〜7.0に調整し、ジクロロメタン(35mLx3)で抽出し、減圧下で濃縮し、淡黄色固体としてリガンドB−415を得た(700mg、1.45mmol、収率60.74%、純度95%)。
1HNMR(400MHz,C6D6,δ,ppm):8.19(d,J=11.81Hz,1H)、7.38(dt,J=7.45,1.96Hz,1H),7.28(dd,J=7.64,1.20Hz,1H),6.83(t,J=7.64Hz,1H),2.94−2.81(m,1H),2.25−2.10(m,1H),2.00−1.78(m,4H),1.73−1.63(m,1H),1.62−1.46(m,5H),1.55(s,9H),1.44−1.30(m,2H),1.28−1.16(m,2H),1.13−0.89(m,3H),0.96(d,J=6.88Hz,3H),0.93(d,J=6.76Hz,3H),0.93(d,J=6.88Hz,3H),0.87(d,J=6.88Hz,3H),0.85(d,J=6.88Hz,3H),0.61−0.40(m,1H),0.32(d,J=6.76Hz,3H);
31PNMR(162MHz,C6D6,δ,ppm):−37.76(s).
以下のスキームにしたがってリガンドB−414を合成した。
化合物21(2.00g、5.85mmol)のエーテル溶液(10.00mL)にn−BuLi(2.5M、2.46mL)を−78℃で加え、−78℃で1時間撹拌した。反応溶液にクロロトリメチルシラン(762.65mg、7.02mmol、886.81μL)を−78℃で添加し、20℃で16時間撹拌し、白色の懸濁液を得た。反応溶液に水(20mL)を加え、酢酸エチル(50mLx3)で抽出した。混合有機相は硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過した後に濃縮し、粗生成物を得た。シリカゲルカラム(展開液:石油エーテル)で精製し、化合物22(1.30g、3.88mmol、収率66.27%)を得た。
化合物22(1.00g、2.98mmol)のエーテル溶液(10.00mL)にn−BuLi(2.5M、1.31mL)を−78℃で加え、−78℃で1時間撹拌した。得られた反応溶液に化合物17(1.94g,2.98mmol)を−78℃で添加し、20℃で12時間撹拌した。ジメチルスルフィドボラン(10M、357.60μL)を−78℃で加え、20℃で12時間撹拌し、白色の懸濁液を得た。反応溶液に水(10mL)を0℃で加え、酢酸エチル(20mLx3)で抽出した。得られた混合有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過した後にろ液を濃縮し、粗生成物を得た。シリカゲルカラム(展開液:石油エーテル)で精製し、化合物23(700.00mg、1.21mmol、収率40.59%)を得た。
化合物23(2.10g、3.63mmol)のトルエン懸濁液(50.00mL)に1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(814.05mg、7.26mmol、798.09μL)を加え、反応混合液を70℃で16時間撹拌した。減圧下で溶媒を全て留去し、黄色のオイルを得た。その後、シリカゲルカラム(展開液:石油エーテル)で精製し、化合物24(1.20g、2.12mmol、収率58.52%)を得た。
Pd/C(2.40g、2.12mmol)のエタノール(80.00mL)懸濁液に化合物24(1.20g、2.12mmol)のエタノール溶液(5.00mL)を20℃で加え、水素存在下、20℃で160時間撹拌し、黒色の懸濁液を得た。反応溶液はセライトを通してろ過し、ジクロロメタン(100mL)で洗浄した。ろ液は減圧下で濃縮し、濃黄色オイルを得た。シリカゲルカラム(展開液:石油エーテル)で精製し、リガンドB−414を黄色オイルとして得た(350.00mg、737.20μmol、収量34.77%)。
1HNMR(400MHz,C6D6,δ,ppm):7.81(d,J=11.24Hz,1H)、7.50(ddd,J=7.58,2.97,1.70Hz,1H),7.43(dd,J=7.14,1.52Hz,1H),6.88(t,J=7.39Hz,1H),2.92−2.78(m,1H),2.19−2.11(m,1H),1.99−1.76(m,4H),1.72−1.45(m,4H),1.44−1.31(m,2H),1.30−1.14(m,2H),1.13−0.99(m,4H),0.96(d,J=6.82Hz,3H),0.94(d,J=6.06Hz,3H),0.93(d,J=6.82Hz,3H),0.87(d,J=6.00Hz,3H),0.84(d,J=6.82Hz,3H),0.48−0.46(m,1H),0.44(s,9H),0.32(d,J=6.82Hz,3H);
31PNMR(162MHz,C6D6,δ,ppm):−39.04(s).
以下のスキームにしたがってリガンドB−439を合成した。
アルゴン雰囲気下で、化合物14(9.3g、26.96mmol)のTHF溶液100mLに水素化アルミニウムリチウム(1.13g、29.66mmol)を0℃で加え、10℃で48時間撹拌し、白色の懸濁液を得た。懸濁液に、脱気した水(1.2mL)、脱気した15%水酸化ナトリウム水溶液(1.2mL)、脱気した水(3.6mL)を0℃で順番に加えた。ろ過をした後に、固体残渣をジクロロメタン(50mLx3)で洗浄し、ろ液と合わせて濃縮し化合物17(7.5g、20.77mmol、収率77.05%、純度86%)を白色固体として得た。
化合物25(3g、13.82mmol)、化合物17(4.99g、13.82mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(794.72mg、1.38mmol)、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル(1.49g、2.76mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(2.66g、27.64mmol)にトルエン80mLを加え、12時間還流し、黒色の懸濁液を得た。減圧下で溶媒を留去し、粗生成物を得た。85℃で4時間減圧乾燥し、化合物6d(3.1g、6.91mmol、収率50.02%、純度99.6%)を褐色固体として得た。
アルゴン雰囲気下で、化合物6d(3.1g、6.94mmol)の酢酸エチル溶液(20mL)に塩酸/酢酸エチル(4M、40mL)を0℃で加え、20℃で3.5時間撹拌し、褐色溶液を得た。その後、減圧下で溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をジクロロメタン50mLに溶解し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム50mLで洗浄し、濃縮することでリガンドB−439を褐色固体として得た(2.36g、5.74mmol、収率82.77%、純度98%)。
1HNMR(400MHz,C6D6,δ,ppm):7.53(dd,J=7.7Hz,2.6Hz,1H),7.15(t,J=3.3Hz,2H),6.84−6.89(m,2H),3.0(sept,J=6.4Hz,1H),2.23−2.32(m,1H),1.92−2.07(m,4H),1.76−1.81(m,1H),1.68−1.76(m,3H)、1.26−1.36(m,2H),1.15−1.24(m,2H),1.09−1.13(m,1H),1.01−1.05(m,9H),0.91−0.98(m,10H),0.58−0.67(m,1H),0.43(d,J=6.6Hz,3H);
31PNMR(162MHz,CDCl3,δ,ppm)−46.64(s).
以下のスキームにしたがってリガンドB−412を合成した。
アルゴン雰囲気下で、化合物1(10.00g、73.41mmol)、塩化アルミニウム(10.47g、78.55mmol、4.29mL)、三塩化リン(50.70g、369.18mmol、32.50mL)の混合物を80℃で6時間撹拌し、オレンジ色の懸濁液を得た。過剰な三塩化リンは常圧蒸留で除去した。その後、反応溶液をろ過し、ろ液に水(150mL)を加え、ジクロロメタン(150mLx2)で抽出した。混合有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過し、ろ液を濃縮することで化合物2をオレンジ固体として得た(12.90g、33.16mmol、収率45.0%)。
アルゴン雰囲気下で、化合物2(12.90g、36.56mmol)のTHF溶液(150.00mL)に水素化アルミニウムリチウム(3.27g、86.27mmol)を−14℃で2時間かけて加えた。30℃まで昇温後、反応溶液を18時間撹拌し、灰色の懸濁液を得た。懸濁液は再度−14℃まで冷却し、1Mの塩酸を100mL加えた。酢酸エチルで抽出し、混合有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過した後にろ液を濃縮し、化合物3(粗生成物)を得た。
化合物19(10.00g、51.47mmol)のTHF溶液(25.00mL)にn−BuLi(2.5M、24.71mL)を0℃で加え、0℃で1時間撹拌した。その後、ヨウ素(15.68g、61.76mmol、12.44mL)を反応溶液に加え、25℃で16時間撹拌し、褐色溶液を得た。反応溶液に水100mL加え、酢酸エチル(70mLx3)で抽出した。混合有機層を飽和チオ硫酸ナトリウム(50mLx2)で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過した後に、ろ液を濃縮し、粗生成物を黒色オイルとして得た。その後、シリカゲルカラム(展開溶媒:石油エーテル)で精製し、化合物20を淡黄色オイルとして得た(9.38g、29.30mmol、収率56.92%)。
化合物20(6.88g、21.49mmol)、化合物3(6.50g、21.49mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(4.13g、42.98mmol)、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル(2.31g、4.30mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(1.97g、2.15mmol)にトルエン(100mL)をアルゴン雰囲気下で加え、110℃で15時間撹拌し、黒色の懸濁液を得た。反応溶液を30℃に冷却し、ろ過した。固体残渣を酢酸エチル(100mLx4)で洗浄し、ろ液と合わせて濃縮し、黒色オイル状の粗生成物を得た。シリカゲルカラム(展開溶媒:石油エーテル/酢酸エチル=1/0−50/1)で精製し、120℃で減圧乾燥し、化合物6eを得た(2.80g、5.66mmol、収率26.34%)。
アルゴン雰囲気下で、化合物6e(1.83g、3.70mmol)のジクロロメタン溶液(10.00mL)に塩酸/酢酸エチル(4M、30.49mL)を0℃で加え、15℃で3時間撹拌し、濃黄色溶液を得た。その後、減圧下で溶媒を留去し粗生成物を得た。粗生成物にジクロロメタンを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、濃縮することでリガンドB−412を黄色固体として得た(1.65g、3.66mmol、収率98.96%)。
1HNMR(400MHz,C6D6,δ,ppm):8.92(d,J=11.75Hz,1H),7.51(d,J=7.52Hz,1H),7.37(d,J=7.77Hz,1H),6.88(t,J=7.70Hz,1H),2.03(d(br),J=12.06Hz,6H),1.94(d(br),J=12.06Hz,6H),1.82−1.72(br,6H),1.60(s,9H),1.58−1.48(br,12H);
31PNMR(162MHz,C6D6,δ,ppm):3.31(s).
以下のスキームにしたがってリガンドB−348を合成した。
化合物4(3.0g、10.0mmol)のTHF溶液30mLにn−ブチルリチウム(2.5M、4.0mL、10.0mmol)を−78℃で加え、−78℃で1時間撹拌した。その後クロロジシクロヘキシルホスフィン(2.3g、10.0mmol)を−78℃で加え、10℃で12時間撹拌した。反応溶液を氷水に注ぎ入れ、酢酸エチル(30mLx3)で抽出した。有機相は無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮することで粗生成物を得た。その後、シリカゲルカラム(展開溶媒に、石油エーテル/酢酸エチル=10:1)で精製し、淡黄色オイルとして化合物5fを得た(2.2g、収率53.2%)。
化合物5f(2.2g、5.3mmol)のTHF溶液30mLにn−ブチルリチウム(2.5M、2.6mL、6.4mmol)を−78℃で加え、−78℃で1時間撹拌した。その後ヘキサフルオロベンゼン(1.5g、8.0mmol)を−78℃で添加し、反応溶液は10℃で12時間撹拌し、黄色溶液を得た。この反応溶液を氷水30mLに注ぎ入れ、酢酸エチル(30mLx3)で抽出した。有機相は無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮することで粗生成物を得た。その後、シリカゲルカラム(展開溶媒に、石油エーテル/酢酸エチル=10:1)で精製し、粘着性のある淡黄色オイルとして化合物6fを得た(0.8g、収率30.1%)。
化合物6f(1.0g、2.0mmol)の酢酸エチル15mL溶液に、HCl/酢酸エチル(729.3mg、20.0mmol)を0℃で加え、15℃で15分間撹拌した。反応溶液は濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30mLでクエンチした。その後、ジクロロメタン(50mLx2)で抽出し、有機相は無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物はシリカゲルカラム(展開溶媒に、石油エーテル/酢酸エチル=5/1)で精製し、リガンドB−348を得た(800.0mg、収率87.6%)。
1HNMR(400MHz,CDCl3,δ,ppm):7.42−7.36(m,1H),7.23(d,J=7.6Hz,1H),7.03(t,J=7.6Hz,1H),2.02−1.59(m,12H),1.32−1.11(m,10H);
31PNMR(162MHz,CDCl3,δ,ppm)−33.26(s).
(実施例1):錯体(B−350)Ni((1,4,5−η)−COE)の合成
以下の操作は、すべて高純度アルゴン雰囲気下で行った。以下、ビス−1,5−シクロオクタジエンニッケル(0)をNi(COD)2と称し、(1,4,5−η)−4−シクロオクテン−1−イル配位子を(1,4,5−η)−COEと称する。
初めに25mLのナスフラスコに、上記リガンドB−350(65mg、0.12mmol)を秤り取った。次に、Ni(COD)2(43mg、0.16mmol)を別のフラスコに秤り取り、トルエン(8.0mL)に溶解させ、20mmol/mLのNi(COD)2トルエン溶液を調製した。得られた溶液は、黄色透明であった。ここで得られたNi(COD)2トルエン溶液6.2mLを、リガンドB−350を入れたナスフラスコに加え、溶液を得た。その後、室温で1時間撹拌した。この時、溶液の色が次第に暗黄色〜褐色に変化し、沈殿がないことを確認し、B−350とNi(COD)2の反応生成物((B−350)Ni((1,4,5−η)−COE))の20mmol/mL溶液を得た。ここで、反応生成物の濃度は、B−350とNi(COD)2が1対1で反応してニッケル錯体を形成しているとして計算した。
上記実施例1において、リガンドB−350の替わりにリガンドB−352を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により、錯体(B−352)Ni((1,4,5−η)−COE)を合成した。
以下のスキームにしたがって錯体(B−350)NiPh(PEt3)を合成した。
1HNMR(500MHz,C6D6)δ7.43(d,J=7.5Hz,2H),6.97(t,J=7.3Hz,2H),6.80(t,J=7.0Hz,1H),1.32(m,12H),1.02(m,18H);
13CNMR(126MHz,C6D6):155.31(t,J=54Hz,1C),137.54(t,J=6Hz,2C),126.79(t,J=4Hz,2C),121.33(t,J=4Hz,1C),14.25(t,J=20Hz,6C),8.32(s,6C);
31PNMR(202MHz,C6D6)δ11.1;
Elemental analysis,Calcd for C18H35ClNiP2;C,53.05;H,8.66.found C,52.81;H,8.57.
1HNMR(400MHz,C6D6)δ7.74(d,J=8Hz,2H),7.61(t,J=6.6Hz,1H),6.97(d,J=6.8Hz,2H),6.80(t,J=7.6Hz,1H),6.65(t,J=7.0Hz,1H),2.53−2.50(m,6H),2.13−2.09(m,6H),1.82(s,6H),1.65−1.54(m,12H),0.93−0.83(m,15H);
31PNMR(162MHz,C6D6)δ42.88(d,J=260Hz,1P),12.83(d,J=260Hz,1P).
上記錯体(B−350)NiPh(PEt3)を、グローブボックス中、室温でn−ペンタンを用いて再溶解させた。溶液をバイアルに移して−30℃に冷却し、フリーザー内にて−30℃で放置したところ、(B−350)NiPh(PEt3)の単結晶の成長が見られた。
得られた単結晶の中から、約0.25×0.20×0.18mmの寸法を有するものを選び、ループ状のマウント上にセットし、該マウントをゴニオメーターの台座、および、CCD検出器を有するRigaku社製Saturn 724 CCD回折計に−180℃で装着した。単結晶は、回折計から45mmの距離にセットした。グラファイトで単色化したMo−Kα線を用いて回折強度測定を行った。はじめに格子定数を決定し、プログラムCrystal Clearを用いて720フレームの反射データを得た。得られたデータについては、Lorentz補正を行った。得られた単結晶の単位格子は単斜晶系(monoclinic)であり、空間群はP21/nであった。プログラムSHELXT2014を用いて直接法で構造決定し、SHELXL2014によって観測された反射のF2に対して、フルマトリクス最小2乗法により精密化を行った。なお、水素以外のすべての原子について、異方性温度因子により構造精密化を行い、水素原子の位置は計算により定め、等方性温度因子により構造精密化を行った。R2(I>2σ(I))=0.1147で収束した。
図1は、錯体(B−350)NiPh(PEt3)のORTEP図である。X線結晶構造解析の結果、得られた錯体は、化学式C44H53F5NiOP2であり、図1に示す平面4配位構造を有していることが明らかになった。ホスフィン上のエチル基および1,2,3,4,5−ペンタフルオロフェニル基はディスオーダーしていた。NiとP2の距離は2.243Å、NiとOの距離は1.904Å、NiとP1の距離は2.205Å、Niとフェニル基上の炭素原子の距離は1.891Åであった。また、P−Ni−Oの配位夾角は86.8°であった。
上記実施例1において、リガンドB−350の替わりにリガンドB−415を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により、錯体(B−415)Ni((1,4,5−η)−COE)を合成した。
上記実施例1において、リガンドB−350の替わりにリガンドB−414を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により、錯体(B−414)Ni((1,4,5−η)−COE)を合成した。
上記実施例1において、リガンドB−350の替わりにリガンドB−439を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により、錯体(B−439)Ni((1,4,5−η)−COE)を合成した。
上記実施例1において、リガンドB−350の替わりにリガンドB−412を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により、錯体(B−412)Ni((1,4,5−η)−COE)を合成した。
上記実施例1において、リガンドB−350の替わりにリガンドB−348を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により、錯体(B−348)Ni((1,4,5−η)−COE)を合成した。
(実施例1A):実施例1の錯体を用いたプロピレン重合
内容積2Lの誘導攪拌式オートクレーブに、プロピレン(500mL)を導入した。実施例1の錯体((B−350)Ni((1,4,5−η)−COE))を窒素ガスでオートクレーブに導入した。混合物を攪拌しながらオートクレーブを50℃に昇温した。50℃に達した時点から所定時間重合させた。未反応モノマーを除去した後、オートクレーブを開放し、加熱乾燥を行い、重合体を得た。
実施例1Aにおいて、実施例1の錯体((B−350)Ni((1,4,5−η)−COE)))の替わりに実施例2の錯体((B−352)Ni((1,4,5−η)−COE))を用いたこと以外は、実施例1Aと同様の手順により、重合体を得た。
50mLステンレス鋼オートクレーブを120℃の乾燥機で3時間乾燥した後に、組み立てて、125℃で2時間減圧乾燥した。室温まで冷却後、アルゴン下で、オートクレーブに実施例3の錯体((B−350)NiPh(PEt3))(5.0μmol、10.0mL、0.50mmol/Lトルエン溶液)とトルエン(5mL)、プロピレン6mLを加えた。その後、オートクレーブを50℃まで昇温し43時間撹拌した。室温まで冷却後、エチレンをパージし、反応はエタノール20mLでクエンチし、重合物をろ過により回収した。重合物を100〜120℃で2時間減圧乾燥し、目的とする重合物を得た。
実施例1Aにおいて、実施例1の錯体((B−350)Ni((1,4,5−η)−COE)))の替わりに実施例4の錯体((B−415)Ni((1,4,5−η)−COE))を用いたこと以外は、実施例1Aと同様の手順により、重合体を得た。
実施例1Aにおいて、実施例1の錯体((B−350)Ni((1,4,5−η)−COE)))の替わりに実施例5の錯体((B−414)Ni((1,4,5−η)−COE))を用いたこと以外は、実施例1Aと同様の手順により、重合体を得た。
実施例1Aにおいて、実施例1の錯体((B−350)Ni((1,4,5−η)−COE)))の替わりに参考例6の錯体((B−439)Ni((1,4,5−η)−COE))を用いたこと以外は、実施例1Aと同様の手順により、重合体を得た。
実施例1Aにおいて、実施例1の錯体((B−350)Ni((1,4,5−η)−COE)))の替わりに実施例7の錯体((B−412)Ni((1,4,5−η)−COE))を用いたこと以外は、実施例1Aと同様の手順により、重合体を得た。
実施例1Aにおいて、実施例1の錯体((B−350)Ni((1,4,5−η)−COE))の替わりに実施例2の錯体((B−352)Ni((1,4,5−η)−COE))を用いたこと、及び実施例2の錯体を窒素ガスでオートクレーブに導入した後に、さらにオートクレーブに10−ウンデセン酸エチルを加えたこと以外は、実施例1Aと同様の手順により、共重合体を得た。共重合体中のコモノマー含有率は、1HNMR測定により、プロピレン:コモノマーのモル比を決定し、コモノマー含量mol%という表記で表に記載した。
実施例1Aにおいて、実施例1の錯体((B−350)Ni((1,4,5−η)−COE))の替わりに実施例2の錯体((B−352)Ni((1,4,5−η)−COE))を用いたこと、及び実施例2の錯体を窒素ガスでオートクレーブに導入した後に、さらにオートクレーブに10−ウンデセン−1−オールを加えたこと以外は、実施例1Aと同様の手順により、共重合体を得た。共重合体中のコモノマー含有率は、1HNMR測定により、プロピレン:コモノマーのモル比を決定し、コモノマー含量mol%という表記で表に記載した。
実施例1Aにおいて、実施例1の錯体((B−350)Ni((1,4,5−η)−COE))の替わりに比較例1の錯体((B−348)Ni((1,4,5−η)−COE))を用いたこと以外は、実施例1Aと同様の手順により、重合体を得た。
上記表4の比較例1Aから分かるように、従来の錯体(比較例1)を用いたポリプロピレン重合では、得られる重合体の分子量Mwは1,440と小さい。これに対し、上記表4の実施例1A〜実施例7Aから分かるように、本発明の金属錯体(実施例1〜実施例7)を用いたポリプロピレン重合では、得られる重合体の分子量Mwは3,300以上と大きい。このように、R5及びR6に嵩高い置換基を用いた本発明の金属錯体は、R5及びR6がシクロヘキシル基の場合と比較して、より高分子量のポリプロピレンが得られることが分かる。また、上記本発明の金属錯体を用いた場合、重合活性は4.6×102(g/mol/hr)以上と良好であり、かつ得られたポリプロピレンの分子量分布Mw/Mnは2.2以下に収まる。
また、上記表4の実施例2B〜実施例2Cから分かるように、本発明の金属錯体により、α−オレフィンと極性基含有モノマーとの共重合が、良好な重合活性で達成される。
以上より、本発明の金属錯体は、従来よりもより高分子量のα−オレフィン単独重合体が得られ、かつ、良好な重合活性でα−オレフィンと極性基含有モノマーとの共重合を達成でき、優れた技術的意義を持つことが明らかである。
Claims (8)
- 下記一般式[I]または[II]で表される化合物と、ニッケルまたはパラジウムを含む遷移金属化合物とを接触させることを特徴とする金属錯体の製造方法。
R1は、(iii)〜(iv)からなる群より選ばれる基を表す。
(iii)ヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していてもよい、炭素数3〜30の分岐した非環状アルキル基、炭素数3〜30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、または炭素数7〜30のアルキルアリール基
(iv)Si(OR8)3−x(R8)x、またはOSi(OR8)3−x(R8)x。ここで、R8は水素または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。xは0から3までの整数を表す。
R2、R3およびR4は、水素を表す。
R5およびR6は、それぞれ独立に、ヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していない、炭素数7〜30の直鎖状アルキル基、炭素数7〜30の分岐した非環状アルキル基、炭素数7〜30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、または炭素数7〜30のアリールアルキル基を表す。
E1は、リン、砒素またはアンチモンを表す。
X1は、酸素または硫黄を表す。
また、一般式[I]中、
Zは、水素、または脱離基を表し、
mはZの価数を表す。] - 下記一般式[III]で表されることを特徴とする金属錯体。
R1は、(iii)〜(iv)からなる群より選ばれる基を表す。
(iii)ヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していてもよい、炭素数3〜30の分岐した非環状アルキル基、炭素数3〜30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、または炭素数7〜30のアルキルアリール基
(iv)Si(OR8)3−x(R8)x、またはOSi(OR8)3−x(R8)x。ここで、R8は水素または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。xは0から3までの整数を表す。
R2、R3およびR4は、水素を表す。
R5およびR6は、それぞれ独立に、ヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していない、炭素数7〜30の直鎖状アルキル基、炭素数7〜30の分岐した非環状アルキル基、炭素数7〜30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、または炭素数7〜30のアリールアルキル基を表す。
E1は、リン、砒素またはアンチモンを表す。
X1は、酸素または硫黄を表す。
Mは、ニッケルまたはパラジウムを表す。
R7は、水素、またはヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
L1は、Mに配位したリガンドを表す。
R7とL1が互いに結合して環を形成してもよい。] - 下記一般式[I]または[II]で表される化合物と、ニッケルまたはパラジウムを含む遷移金属化合物とを接触させることにより、下記一般式[III]で表される金属錯体を製造することを特徴とする金属錯体の製造方法。
R1は、(iii)〜(iv)からなる群より選ばれる基を表す。
(iii)ヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していてもよい、炭素数3〜30の分岐した非環状アルキル基、炭素数3〜30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、または炭素数7〜30のアルキルアリール基
(iv)Si(OR8)3−x(R8)x、またはOSi(OR8)3−x(R8)x。ここで、R8は水素または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。xは0から3までの整数を表す。
R2、R3およびR4は、水素を表す。
R5およびR6は、それぞれ独立に、ヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していない、炭素数7〜30の直鎖状アルキル基、炭素数7〜30の分岐した非環状アルキル基、炭素数7〜30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、または炭素数7〜30のアリールアルキル基を表す。
E1は、リン、砒素またはアンチモンを表す。
X1は、酸素または硫黄を表す。
また、一般式[I]中、
Zは、水素、または脱離基を表し、
mはZの価数を表す。]
Mは、ニッケルまたはパラジウムを表す。
R7は、水素、またはヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基からなる群より選ばれる基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
L1は、Mに配位したリガンドを表す。
R7とL1が互いに結合して環を形成してもよい。
なお、式[III]中のR1〜R6、E1、X1は式[I]および式[II]と同様である。] - 請求項2に記載の金属錯体を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒成分。
- 下記の成分(A)および(B)、更に必要に応じて(C)を含むことを特徴とする、オレフィン重合用触媒。
成分(A):請求項2に記載の金属錯体
成分(B):成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物またはイオン交換性層状珪酸塩
成分(C):有機アルミニウム化合物 - 前記成分(B)がアルミノキサンであることを特徴とする請求項5に記載のオレフィン重合用触媒。
- 請求項5または6に記載の重合用触媒の存在下に、(a)α−オレフィンを重合または共重合することを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法。
- 請求項5または6に記載の重合用触媒の存在下に、(a)α−オレフィンと、(b)(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ビニルモノマーまたはアリルモノマーとを共重合することを特徴とするα−オレフィン共重合体の製造方法。
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