JP5597582B2 - 金属錯体ならびにそれを用いたα−オレフィン重合体の製造方法およびα−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
また、Brookhartらは、α−ジイミン配位子を用いたパラジウム錯体を触媒として、エチレンとアクリル酸エステルの共重合体が製造できることを報告している。
しかしながら、得られた共重合体は、分岐構造に富むものであり、分岐は、メチル基、エチル基をはじめ、種々の炭素数であって、かつ、分岐の数も非常に多く、結果として、得られた共重合体は、結晶性の低いものであった(例えば、非特許文献1参照。)。
しかしながら、これらの公知文献で用いられている触媒は、希少な資源であり、かつ、高価なパラジウムを用いているため、工業的な応用には問題が大きい。
しかしながら、未だ共重合活性的には充分とは言えず、改良の余地が非常に多くある。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、一般式(A)中、R5は、トリフルオロメチル基またはペンタフルオロフェニル基であることを特徴とする金属錯体が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、ルイス塩基の存在下で重合を行うことを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第5又は6の発明において、有機アルミニウム化合物の非存在下で重合を行うことを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、ルイス塩基の存在下で重合を行うことを特徴とするα−オレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、第8又は9の発明において、有機アルミニウム化合物の非存在下で重合を行うことを特徴とするα−オレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法が提供される。
以下、重合体の構成モノマー、触媒成分、製造方法等について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「重合」という用語は、1種類のモノマーの単独重合と複数種のモノマーの共重合を総称するものであり、特に両者を区別する必要がない場合には、総称して単に「重合」と記載する。
(a)α−オレフィン
本発明における成分(a)は、一般式:CH2=CHR10で表されるα−オレフィンである。ここで、R10は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であり、分岐、環、および/または不飽和結合を有していてもよい。R10の炭素数が20より大きいと、十分な重合活性が発現しない傾向がある。このため、なかでも、好ましい(a)成分としては、R10が水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であるα−オレフィンが挙げられる。
さらに好ましい(a)成分としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキセン、スチレンが挙げられる。なお、単独の(a)成分を使用してもよいし、複数の(a)成分を併用してもよい。
本発明における成分(b)は、一般式:CH2=C(R11)CO2(R12)で表される(メタ)アクリル酸エステルである。ここで、R11は、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、分岐、環、および/または不飽和結合を有していてもよい。R12は、炭素数1〜30の炭化水素基であり、分岐、環、および/または不飽和結合を有していてもよい。さらに、R12内の任意の位置にヘテロ原子を含有していてもよい。
R11の炭素数が11以上であると、十分な重合活性が発現しない傾向がある。したがって、R11は、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であるが、好ましい(b)成分としては、R11が水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基である(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。より好ましい(b)成分としては、R11がメチル基であるメタクリル酸エステルまたはR11が水素原子であるアクリル酸エステルが挙げられる。同様に、R12の炭素数が30を超えると、重合活性が低下する傾向がある。よって、R12の炭素数は1〜30であるが、R12は、好ましくは炭素数1〜12であり、さらに好ましくは炭素数1〜8である。
また、R12内に含まれていても良いヘテロ原子としては、酸素、硫黄、セレン、リン、窒素、ケイ素、フッ素、ホウ素等が挙げられる。これらのヘテロ原子のうち、酸素、ケイ素、フッ素が好ましく、酸素が更に好ましい。また、R12は、ヘテロ原子を含まないものも好ましい。
本発明の反応生成物、すなわち金属錯体は、下記一般式(A)で表される。
Mの価数については2価が好ましい。ここでMの価数とは、有機金属化学で用いられる形式酸化数(formal oxidation number)を意味する。すなわち、ある元素が関与する結合中の電子対を電気陰性度の大きい元素に割り当てたとき、その元素の原子上に残る電荷の数を指す。例えば、本発明の一般式(A)において、E1がリン、X1が酸素、Mがニッケル、R1がフェニル基、L1がピリジンであり、ニッケルがリン、酸素、フェニル基の炭素、ピリジンの窒素と結合を形成している場合、ニッケルの形式酸化数、すなわちニッケルの価数は2価となる。なぜならば、上述の定義に基づき、これらの結合において、電子対は、ニッケルよりも電気陰性度の大きいリン、酸素、炭素、窒素に割り当てられ、電荷は、リンが0、酸素が−1、フェニル基が−1、ピリジンが0で、錯体は、全体として電気的に中性であるため、ニッケル上に残る電荷は+2となるからである。
2価の遷移金属としては、例えば、ニッケル(II)、パラジウム(II)、白金(II)、コバルト(II)が好ましく、2価以外では、銅(I)またはロジウム(III)も好ましい。
R1の具体的な例としては、ヒドリド基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、p−メチルフェニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。
L1は、Mと配位結合を形成するが、本発明においては、(a)成分の重合や(a)成分と(b)成分の共重合を進行させるために、L1をMから取り除く化合物(スカベンジャー)を使用する必要がない。
なお、R1とL1が互いに結合して環を形成してもよい。そのような例として、シクロオクタ−1−エニル基を挙げることができ、これも本発明における好ましい様態である。
本発明において、X1は、酸素または硫黄を表す。これらのうち、酸素が好ましい。また、本発明において、E1は、リン、砒素またはアンチモンを表す。これらのうち、リンが好ましい。
R2及びR3において、ヘテロ原子含有基中に含まれるヘテロ原子としては、酸素、窒素、リン、硫黄、セレン、ケイ素、フッ素、ホウ素が挙げられる。これらのヘテロ原子のうち、酸素、ケイ素、フッ素が好ましい。また、これらのヘテロ原子を含むヘテロ原子含有基としては、酸素含有基として、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、カルボキシレート基が挙げられ、窒素含有基としては、アミノ基、アミド基が挙げられ、硫黄含有基としては、チオアルコキシ基やチオアリーロキシが挙げられ、リン含有置換基としては、フォスフィノ基が挙げられ、セレン含有基としては、セレニル基が挙げられ、ケイ素含有基としては、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基が挙げられ、フッ素含有基としては、フルオロアルキル基、フルオロアリール基が挙げられ、ホウ素含有基としては、アルキルホウ素基、アリールホウ素基が挙げられる。これらのヘテロ原子含有基のうち、もっとも好ましいのは、アルコキシ基またはアリーロキシ基である。
すなわち、酸素含有基として、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基などのアリーロキシ基、アセチル基、ベンゾイル基などのアシル基、アセトキシ基、エチルカルボキシレート基、t−ブチルカルボキシレート基、フェニルカルボキシレート基などのカルボキシレート基などを挙げることができる。窒素含有基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などのジアルキルアミノ基などを挙げることができる。硫黄含有基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオ−n−プロポキシ基、チオイソプロポキシ基、チオ−n−ブトキシ基、チオ−t−ブトキシ基、チオフェノキシ基などのチオアルコキシ基、p−メチルチオフェノキシ基、p−メトキシチオフェノキシ基などのチオアリーロキシ基などを挙げることができる。リン含有置換基としては、ジメチルフォスフィノ基、ジエチルフォスフィノ基、ジ−n−プロピルフォスフィノ基、シクロヘキシルフォスフィノ基などのジアルキルフォスフィノ基などを挙げることができる。セレン含有基としては、メチルセレニル基、エチルセレニル基、n−プロピルセレニル基、n−ブチルセレニル基、t−ブチルセレニル基、フェニルセレニル基などのセレニル基を挙げることができる。
これらのうち、好ましいものとしては、水素原子、フッ素原子、クロロ原子、ブロモ原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、トリメチルシリル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、ニトリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリメチルシロキシ基、トリメトキシシロキシ基、スルフォン酸ナトリウム、スルフォン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどが挙げられ、特に好ましいものとしては、水素原子、フッ素原子、メチル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、トリメチルシリル基、メトキシ基、フェノキシ基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリメチルシロキシ基、トリメトキシシロキシ基、スルフォン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。
炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、ヨードメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,1,1−テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリフルオロビニル基、1,1−ジフルオロベンジル基、1,1,2,2−テトラフルオロフェニルエチル基、2−、3−、4−フルオロフェニル基、2−、3−、4−クロロフェニル基、2−、3−、4−ブロモフェニル基、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジフルオロフェニル基、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、4−フルオロナフチル基、4−クロロナフチル基、2,4−ジフルオロナフチル基、ヘプタフルオロ−1−ナフチル基、ヘプタクロロ−1−ナフチル基、2−、3−、4−トリフルオロメチルフェニル基、2−、3−、4−トリクロロメチルフェニル基、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(トリクロロメチル)フェニル基、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、4−トリフルオロメチルナフチル基、4−トリクロロメチルナフチル基、2,4−ビス(トリフルオロメチル)ナフチル基などが挙げられる。
なお、本明細書中において、例示した置換基等を、一部省略して記載する。例えば、上記の「2−、3−、4−フルオロフェニル基」は、「2−フルオロフェニル基」、「3−フルオロフェニル基」、「4−フルオロフェニル基」の3つの化合物を挙げたことを意味する。
トリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基が挙げられる。
これらのうち、R7については、かさ高い電子吸引性基が、重合活性が高く、さらに高分子量の重合体を与える傾向にあり、好ましい。R7の炭素数は1〜30であるが、炭素数3〜30であることが好ましい。
R7の例を具体的に挙げると、ハロゲン化炭化水素基として、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、2−、3−、4−フルオロフェニル基、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−、3−、4−トリフルオロメチルフェニル基、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基や、トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基が挙げられる。
これらのうち、好ましいR7として、ペンタフルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基や、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基などが挙げられる。
R5の例を具体的に挙げると、ハロゲン化炭化水素基として、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、2−、3−、4−フルオロフェニル基、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−、3−、4−トリフルオロメチルフェニル基、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基や、トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基が挙げられる。
これらのうち好ましいものとして、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられる。
本発明の金属錯体は、下記一般式(B)又は(C)で表される化合物と、周期律表の9族、10族または11族に属する遷移金属を含む遷移金属錯体(D)とを接触させることにより得ることができる。
例えば、ニッケルを含む遷移金属錯体(D)としては、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、一般式:(CH2CR13CH2)2Niで表される錯体[ここでR13は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素基、OR8、CO2R8、CO2M’、C(O)N(R9)2、C(O)R8、SR8、SO2R8、SOR8、OSO2R8、P(O)(OR8)2−y(R9)y、CN、NHR8、N(R8)2、Si(OR9)3−x(R9)x、OSi(OR9)3−x(R9)x、NO2、SO3M’、PO3M’2、P(O)(OR8)2M’またはエポキシ含有基を表す(ここで、R8は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R9は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウムまたはフォスフォニウムを表し、xは0〜3の整数を表し、yは0〜2の整数を表す。)。]、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル(II)、一般式:Ni(CH2SiR13 3)2L1 2で表される錯体(ここでR13、L1は、本明細書に記載した通りである。)、一般式:NiR13 2L1 2で表される錯体(ここでR13、L1は、本明細書に記載した通りである。)等を使用することができる。
また、9族、10族または11族の遷移金属を含む遷移金属錯体(D)については、一般式:MR13 pL1 q(ここで、Mは、9族、10族または11族の遷移金属であり、R13およびL1は、本明細書に記載した通りであり、pおよびqは、Mの価数を満たす0以上の整数である。)を使用することができる。
特に好ましくは、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(CH2CHCH2)2Ni、(CH2CMeCH2)2Ni、Ni(CH2SiMe3)2(Py)2(以下Pyは、ピリジンを表す。)、Ni(CH2SiMe3)2(Lut)2(以下Lutは、2,6−ルチジンを表す。)、NiPh2(Py)2、Ni(Ph)2(Lut)2,Pd(dba)2、Pd2(dba)3、Pd3(dba)4(ここで、dbaは、ジベンジリデンアセトンを表す。)、Pd(OCOCH3)2、(1,5−シクロオクタジエン)Pd(メチル)(クロリド)である。
なお、反応を行う際に、本発明に係るL1を共存させてもよい。本発明に係るMとして、ニッケルやパラジウムを用いた場合には、ルイス塩基性のL1を系内に共存させることによって、精製した錯体(A)の安定性が増す場合があり、このような場合には、L1が本発明の重合反応または共重合反応を阻害しない限りにおいて、L1を共存させることが好ましい。
本発明において、一般式(A)で表される金属錯体を、重合または共重合の触媒成分として使用することができる。前記したように、一般式(A)で表される金属錯体は、一般式(B)または(C)と遷移金属錯体成分(D)との反応によって、形成させることができる。一般式(A)で表される金属錯体を触媒成分に用いる場合、単離したものを用いてもよいし、担体に担持したものを用いてもよい。こうした担持α−オレフィンの重合やα−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合に使用する反応器中で、これらのモノマーの存在下または非存在下で行ってもよいし、該反応器とは別の容器中で行ってもよい。
重合温度、重合圧力および重合時間に、特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。すなわち、重合温度は、通常−20℃〜290℃、好ましくは0℃〜250℃、共重合圧力は、0.1MPa〜300MPa、好ましくは、0.3MPa〜250MPa、重合時間は、0.1分〜10時間、好ましくは、0.5分〜7時間、さらに好ましくは1分〜6時間の範囲から選ぶことができる。
重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても特に制限はなく、目的に応じてさまざまな供給法をとることができる。たとえばバッチ重合の場合、あらかじめ所定量のモノマーを重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を重合反応器に供給してもよい。また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を重合反応器に連続的に、または間歇的に供給し、重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
重合体の分子量制御には、従来公知の方法を使用することができる。すなわち、重合温度を制御して分子量を制御する方法、モノマー濃度を制御して分子量を制御する方法、連鎖移動剤を使用して分子量を制御する方法、遷移金属錯体中のリガンド構造の制御により分子量を制御する等が挙げられる。連鎖移動剤を使用する場合には、従来公知の連鎖移動剤を用いることができる。例えば、水素、メタルアルキルなどを使用することができる。
また、(b)成分自身が一種の連鎖移動剤となる場合には、(b)成分の(a)成分に対する比率や、(b)成分の濃度を制御することによっても、分子量調節が可能である。遷移金属錯体中のリガンド構造を制御して、分子量調節を行う場合には、前記したR2、R3中のヘテロ原子含有基の種類、数、配置を制御したり、金属Mのまわりに嵩高い置換基を配置したり、前記したR6中にヘテロ原子を導入したりすることによって、一般に分子量が向上する傾向を利用することができる。なお、金属Mに対して、アリール基やヘテロ原子含有置換基などの電子供与性基が相互作用可能となるように電子供与性基を配置することが好ましい。こうした電子供与性基が金属Mと相互作用可能であるかどうかは、一般に、分子模型や分子軌道計算で電子供与性基と金属Mとの距離を測定することによって判断できる。
以下の合成例で、とくに断りのない限り、操作は精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は脱水・脱酸素したものを用いた。
(1)Tm、Tc:
以下のDSC測定により求めた。
Perkin Elmer社製Diamond DSC示差走査熱量測定装置を使用して、試料(約5mg)を210°
Cで5分間融解後、10°
C/分の速度で−10°
Cまで降温し、−10°
Cで5分保持した後に、10°
C/分の速度で210°
Cまで昇温することにより融解曲線を得た。降温段階における主発熱ピークのピークトップ温度を結晶化温度Tcとした。また、融解曲線を得るために行った最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tmとした。
以下のGPC測定により求めた。
はじめに、試料(約20mg)をポリマーラボラトリー社製高温GPC用前処理装置PL−SP260VS用のバイアル瓶に採取し、安定剤としてBHTを含有するo−ジクロロベンゼン(BHT濃度=0.5g/L)を加え、ポリマー濃度が0.1wt%になるように調整した。ポリマーを上記高温GPC用前処理装置PL−SP 260VS中で135°
Cに加熱して溶解させ、グラスフィルターにて濾過して試料を調製した。
なお、本発明におけるGPC測定において、グラスフィルターに捕捉されたポリマーはなかった。
次に、カラムとして、東ソー社製TSKgel GMH−HT(30cm、4本)およびRI検出器を装着したウォーターズ社製GPCV2000を使用して、GPC測定を行った。測定条件としては、試料溶液注入量:約520μL、カラム温度:135°
C、溶媒:o−ジクロロベンゼン、流量:1.0mL/分を採用した。分子量の算出は、以下のように行った。すなわち、標準試料として市販の単分散のポリスチレンを使用し、該ポリスチレン標準試料およびエチレン系重合体の粘度式から、保持時間と分子量に関する校正曲線を作成し、該校正曲線に基づいて分子量の算出を行った。
なお、粘度式としては、[η]=K×Mαを使用し、ポリスチレンに対しては、K=1.38E−4、α=0.70を使用し、エチレン系重合体に対しては、K=4.77E−4、α=0.70を使用した。
SHIMADZU社製FTIR−8700を用いて、熱プレスによってシートにしたサンプルをIR測定することにより、コモノマー含量を求めた。その際、EtBAの場合は、1,740cm−1/730−720cm−1の面積比を、以下の式を用いて換算した値である。
[RA]=1.3503(面積比)−0.2208
[配位子の合成例]
(1)2−t−ブチルフェニルメトキシメチルエーテル(1)の合成:
2−t−ブチルフェニルメトキシメチルエーテル(1)は、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,2000,3277などを参考にして合成した。
フェノール(50g,0.53mol)、炭酸カリウム(138g,1.0mol)、メトキシメチルクロリド(50g,0.62mol)、アセトン(500mL)の混合物を、攪拌しながら昼夜攪拌をした。室温まで冷却し、沈殿物を濾過で除去し、濃縮をした。
得られた残渣をシリカゲルカラムで精製したところ、フェニルメトキシメチルエーテル(2)がオイルとして得られた(20g,0.14mol)。
4−トリフルオロメチルフェノール(90g,0.555mol)の脱水THF(100mL)溶液を、水素化ナトリウム(48g(60wt%),1.2mol)の脱水THF(400mL)スラリーに0℃で滴下し、徐々に室温まで昇温し、室温で1時間攪拌した。その混合液を再び0℃まで冷やした後、同温度でメトキシメチルクロリド(57.8g,0.718mol)を添加し、徐々に室温まで昇温し、室温で16時間攪拌した。水で反応をクエンチし、減圧下でTHFを除去した。酢酸エチルを用いて抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水し、硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下に溶媒を留去して濃縮した。
粗生成物を、石油エーテルを展開液としてシリカゲルカラムにて精製し、4−トリフルオロメチルフェニルメトキシメチルエーテル(3)を得た(102g,0.495mol,89%収率)。
4−ブロモフェノール(100g,0.58mol)の脱水THF(200mL)溶液を、水素化ナトリウム(25.5g(60%wt),0.64mol)の脱水THF(400mL)スラリーに0℃で滴下し、徐々に室温まで昇温し、室温で1時間攪拌した。その混合液を再び0℃まで冷やした後、同温度でメトキシメチルクロリド(55.7g,0.70mol)を添加し、徐々に室温まで昇温し、室温で16時間攪拌した。水で反応をクエンチし、減圧下でTHFを除去した。酢酸エチルを用いて抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。
硫酸ナトリウムで脱水し、硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下に溶媒を留去して濃縮し、4−ブロモフェニルメトキシメチルエーテルを得た(91g,0.42mol,72%収率)。
粗生成物を、減圧蒸留(78−80℃/0.2mmHg)することで精製し、4−トリメチルシリルフェニルメトキシメチルエーテル(4)を得た(58g,0.28mol,72%収率)。
(1)2,6−ジメトキシヨードベンゼン(B−14−2)の合成:
脱水THF(500mL)に2,6−ジメトキシベンゼン(B−14−1,50g,0.36mol)を溶解させた。ここに、窒素雰囲気下でn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(166mL,0.42mol)を0℃で徐々に加えた。ここで得られた溶液に、脱水THF(200mL)に溶解させたヨウ素(96.5g,0.38mol)の溶液を0℃で40分間かけて滴下した。得られた溶液を室温で終夜攪拌した。終了後、メタノール(80mL)を滴下し、得られた混合物を減圧下に濃縮し、水(200mL)を加えた後、酢酸エチル(3×250mL)で抽出した。有機層を集め、Na2S2O3および食塩水で該有機層を洗浄した後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。
乾燥後、無機塩を濾別し、減圧下に濃縮を行い、残渣をメタノール(50mL)で4回洗浄して乾燥させたところ、2,6−ジメトキシヨードベンゼン(B−14−2)が黄色の固体として得られた(63g,0.24mol,66%収率)。
上記で得られた化合物(B−14−2,5g,18.9mmol)を脱水THFに溶解させ、イソプロピルマグネシムクロライドのTHF溶液(9.5mL,2.0M,19.0mmol)を−50℃で徐々に添加し、得られた混合物を室温で1時間攪拌した。次に、該混合物を−78℃に冷却し、三塩化リン(1.3g,9.5mmol)をゆっくり添加した。
その後、室温で終夜攪拌し、得られたビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィンクロリド(B−14−4)を含む反応中間体は、精製することなく次の反応に使用した。
2−t−ブチルフェニルメトキシメチルエーテル(1,1.84g,9.5mmol)を脱水THF(20mL)に溶解させ、窒素雰囲気下でn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(4.2mL,10.5mmol)を0℃で徐々に加えた。同温度で30分間攪拌した後、徐々に昇温し、室温で1.5時間攪拌した。
次いで、該溶液に、上記で得られた化合物(B−14−4)のTHF溶液を−78℃で滴下し、得られた反応混合物を室温で終夜攪拌した。終了後、反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出を行い、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。無機塩を濾別して有機層を減圧下に濃縮した。
得られた残渣をシリカゲルカラムで精製したところ、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−6−t−ブチルフェニルメトキシメチルエーテル(B−14−8,2.5g,5.0mmol,53%収率)が得られた。この合成をスケールアップして同様の反応を行い、化合物(B−14−8)を12g得た。
上記で合成した化合物(B−14−8,12g,24mmol)をジエチルエーテル(50mL)に溶解させ、塩化水素で飽和させたジエチルエーテル(100mL)溶液を−40℃で添加した。同温度で1時間攪拌した後、室温まで徐々に昇温させ、室温でさらに1時間攪拌した。反応混合物を減圧下に濃縮し、B−14塩酸塩を灰色がかった白色固体として得た。
ここで得られた塩酸塩をジクロロメタン(100mL)に溶解させ、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(250mL)をゆっくり加えた。室温で30分間攪拌した後、ジクロロメタン(3×150mL)で抽出を行った。有機層を集めて硫酸ナトリウムで乾燥した。
乾燥後、無機塩を濾別し、減圧下に濃縮し、残渣を石油エーテル(50mL)で2回洗浄し、目的とする配位子(B−14)を灰色がかった白色固体として得た(6.0g,13.2mmol,55%収率)。
1HNMR(CD2Cl2,δ,ppm):7.30(dt,J=9.1,1.5Hz,1H),7.22(t,J=8.1Hz,2H),7.15(dd,J=7.8,1.5Hz,1H),7.07(d,J=5.6Hz,1H),6.65(t,J=7.0Hz,1H),6.50(dd,J=8.3,3.0Hz,4H),3.51(s,12H),1.36(s,9H);31PNMR(CD2Cl2,δ,ppm)−61.6(s).
(1)2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−6−トリメチルシリルフェニルメトキシメチルエーテル(B−56DM−6)の合成:
フェニルメトキシメチルエーテル(2,3.16g,22.9mmol)を脱水THF(50mL)に溶解させ、0℃に冷却した。0℃でn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(9.1mL,22.8mmol)を滴下し、0℃で30分攪拌した。攪拌しながら室温まで昇温し、室温でさらに2時間攪拌した。0℃に冷却し、トリメチルシリルクロライド(2.90mL,22.8mmol)を加えた後、室温で1時間攪拌した。再び0℃に冷却し、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(9.1mL,22.8mmol)を0℃で滴下した。攪拌しながら室温まで昇温し、室温で2時間攪拌した。再度0℃に冷却し、合成例1(1)と同様に合成した化合物(B−14−4)のTHF溶液(22.8mmol,150mL)を0℃で加え、得られた反応混合物を室温で終夜攪拌した。10%水酸化ナトリウム水溶液で反応をクエンチし、減圧下にTHFを除去した。酢酸エチルを用いて抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水し、硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下に溶媒を留去して濃縮した。
粗生成物を、石油エーテル/酢酸エチル(10/1,v/v)を展開液としてシリカゲルカラムにて精製し、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−6−トリメチルシリルフェニルメトキシメチルエーテル(B−56DM−6)の白色固体を得た(3.6g,7.0mmol,31%収率)。同様な操作を繰返し、化合物(B−56DM−6)を7.4g得た。
塩化水素の酢酸エチル溶液(2M,100mL)に、化合物(B−56DM−6,7.4g,14.4mmol)を0℃で添加した。得られた混合物を徐々に室温まで昇温し、室温で1.5時間攪拌した。
減圧下に酢酸エチルを除去し、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−6−トリメチルシリルフェノールの塩酸塩(B−56DMHCl)の白色固体を得た。
塩酸塩(B−56DMHCl,7.2g,14.2mmol)、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(200mL)、および酢酸エチル(150mL)の混合物をアルゴン雰囲気下で2時間攪拌した。酢酸エチルを用いて抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水し、硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下に溶媒を除去して濃縮した。
得られた粗生成物を、さらに減圧下、3時間乾燥させ、目的とする2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−6−トリメチルシリルフェノール配位子(B−56DM)を得た(6.3g,13.4mmol,94%収率)。
1HNMR(CDCl3,δ,ppm):7.54(m,1H),7.26(dd,J=7.1,1.5Hz,1H),7.19(t,J=8.3Hz,2H),6.96(s(br),1H),6.75(t,J=6.8Hz,1H),6.46(dd,J=8.3,3.0Hz,4H),3.52(s,12H),0.24(s,9H);31PNMR(CDCl3,δ,ppm):−60.4(s).
(1)2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4,6−ビス(トリメチルシリル)フェニルメトキシメチルエーテル(B−84−8)の合成:
4−トリメチルシリルフェニルメトキシメチルエーテル(4,17.3g,82.2mmol)の脱水THF(200mL)溶液に、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(33.0mL,82.5mmol)を0℃で滴下し、攪拌しながら室温まで昇温し、室温でさらに2時間攪拌した。0℃に冷却し、その混合物にトリメチルシリルクロリド(10.5mL,82.7mmol)を同温度で添加し、攪拌しながら室温まで昇温し、室温でさらに2時間攪拌した。再び0℃に冷却し、その混合物に、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(33.0mL,82.5mmol)を同温度で添加し、攪拌しながら室温まで昇温し、室温でさらに2時間攪拌した。得られた混合物を再び0℃まで冷却した後、合成例1(1)と同様に得られた化合物(B−14−4,68.5mmol)の脱水THF(250mL)溶液を滴下し、徐々に室温まで昇温し、室温で16時間攪拌した。水で反応をクエンチし、減圧下にTHFを除去した。酢酸エチルを用いて抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。
硫酸ナトリウムで脱水し、硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下に溶媒を留去して濃縮した。粗生成物を、石油エーテル/酢酸エチル(25/1,v/v)を展開液としてシリカゲルカラムにて精製し、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4,6−ビス(トリメチルシリル)フェニルメトキシメチルエーテル(B−84−8)を得た(11.0g,18.7mmol,27%収率)。
上記で合成した化合物(B−84−8,11.0g,18.7mmol)の酢酸エチル(100mL)溶液に、塩化水素の酢酸エチル溶液(4M,70mL)に0℃で滴下し、反応混合物を同温度で30分間攪拌した。徐々に室温まで昇温し、室温で1時間攪拌した後、反応混合物を濃縮した。残渣に酢酸エチル(150mL)と炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(200mL)を加え、30分間攪拌した。酢酸エチルで抽出操作(3×200mL)を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水させた後、硫酸ナトリウムを濾別し、減圧下に溶媒を留去して濃縮した。
粗生成物を、石油エーテル/酢酸エチル(30/1,v/v)を展開液としてシリカゲルカラムにて精製し、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4,6−ビス(トリメチルシリル)フェノール配位子(B−84)が得られた(4.7g(94%純度),8.1mmol,43%収率)。
1HNMR(CDCl3,δ,ppm):7.82(dd,J=12.6,1.2Hz,1H),7.41(s,1H),7.23(s,1H),7.19(t,J=8.4Hz,2H),6.47(dd,J=8.4,2.8Hz,4H),3.53(s,12H),0.255(s,9H),0.196(s,9H);31PNMR(CDCl3,δ,ppm):−60.8(s).
(1)2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4−トリフルオロメチル−6−トリメチルシリルフェニルメトキシメチルエーテル(B−86−6)の合成:
化合物(3,12.4g,60mmol)の脱水THF(70mL)溶液に、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(24mL,60mmol)を0℃で滴下し、徐々に室温まで昇温し、室温で2時間攪拌した。その混合物を再び0℃まで冷却した後、同温度でトリメチルシリルクロリド(6.4g,59mmol)を添加し、徐々に室温まで昇温し、室温で1時間攪拌した。得られた混合溶液を−30℃まで冷却した後、合成例1(1)と同様に得られた化合物(B−14−4,60mmol)の脱水THF(250mL)溶液を滴下し、徐々に室温まで昇温し、室温で16時間攪拌した。水で反応をクエンチし、減圧下にTHFを除去した。酢酸エチルを用いて抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水し、硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下に溶媒を留去して濃縮した。
粗生成物を、石油エーテル/酢酸エチル(10/1,v/v)を展開液としてシリカゲルカラムにて精製し、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4−トリフルオロメチル−6−トリメチルシリルフェニルメトキシメチルエーテル(B−86−6)を得た(8.5g,15mmol,24%収率)。
化合物(B−86−6,8.4g,14mmol)を、塩化水素の酢酸エチル溶液(1M,125mL)に入れた。徐々に室温まで昇温し、室温で1.5時間攪拌した。酢酸エチルの一部除去した混合物を炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で中和をした。酢酸エチルで抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。
硫酸ナトリウムで脱水させた後、硫酸ナトリウムを濾別し、減圧下に溶媒を留去して濃縮することで、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4−トリフルオロメチル−6−トリメチルシリルフェノール配位子(B−86)が白色固体として得られた(5.4g,10mmol,71%収率)。
1HNMR(CDCl3,δ,ppm):7.81(dd,J=10.4,1.8Hz,1H),7.46(d,J=1.8Hz,1H),7.38(d,J=3.8Hz,1H),7.23(t,J=8.4Hz,2H),6.49(dd,J=8.4,3.0Hz,4H),3.54(s,12H),0.27(s,9H);31PNMR(CDCl3,δ,ppm):−61.5(s).
(1)2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4−トリメチルシリルフェニルメトキシメチルエーテル(B−79−7)の合成:
4−トリメチルシリルフェニルメトキシメチルエーテル(4,23.9g,114mmol)の脱水THF(250mL)溶液に、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(45.6mL,114mmol)を0℃で滴下し、徐々に室温まで昇温し、室温で2時間攪拌した。得られた混合溶液を0℃まで冷却した後、合成例1(1)と同様に得られた化合物(B−14−4,114mmol)の脱水THF(500mL)溶液を滴下し、徐々に室温まで昇温し、室温で16時間攪拌した。水で反応をクエンチし、減圧下にTHFを除去した。酢酸エチルを用いて抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水し、硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下に溶媒を留去して濃縮した。
粗生成物を、石油エーテル/酢酸エチル(10/1,v/v)を展開液としてシリカゲルカラムにて精製し、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4−トリメチルシリルフェニルメトキシメチルエーテル(B−79−7)を得た(34.0g,66.1mmol,58%収率)。
化合物(B−79−7,32.0g,62.2mmol)の脱水THF(350mL)溶液に、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(21.0mL,52.0mmol)を室温で滴下し、同温度で2時間攪拌した。その混合物を再び−78℃まで冷却した後、同温度でヘキサフルオロベンゼン(48.0g,258mmol)を添加し、徐々に室温まで昇温し、室温で14時間攪拌した。水で反応をクエンチし、減圧下にTHFを除去した。酢酸エチルを用いて抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水し、硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下に溶媒を留去して濃縮した。
粗生成物を、石油エーテル/酢酸エチル(12/1,v/v)を展開液としてシリカゲルカラムにて精製し、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4−トリメチルシリル−6−ペンタフルオロフェニルフェニルメトキシメチルエーテル(B−79−8)を得た(14.5g,21.3mmol,41%収率)。
上記で合成した化合物(B−79−8,14.5g,21.3mmol)の脱水THF溶液(200mL)に、塩化水素の酢酸エチル溶液(4M,60mL)に0℃で添加した。同温度で30分間攪拌した後、徐々に室温まで昇温し、室温で2時間攪拌した後、反応混合物を濃縮した。残渣を酢酸エチル(150mL)に溶解させ、それに炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液を加えた混合物を30分間攪拌した。酢酸エチルで抽出操作(3×200mL)を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。
硫酸ナトリウムで脱水させた後、硫酸ナトリウムを濾別し、減圧下に溶媒を留去して濃縮した残渣を、石油エーテル/酢酸エチル溶媒で再結晶することで、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4−トリメチルシリル−6−ペンタフルオロフェニルフェノール配位子(B−79)が白色固体として得られた(9.8g,15.4mmol,74%収率)。
1HNMR(CDCl3,δ,ppm):7.95(dd,J=13.4,1.5Hz,1H),7.49(br(s),1H),7.23(t,J=10.6Hz,3H),6.48(dd,J=8.4,2.8Hz,4H),3.55(s,12H),0.23(s,9H);31PNMR(CDCl3,δ,ppm):−59.5(s).
(1)2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4−トリフルオロメチルフェニルメトキシメチルエーテル(B−80−5)の合成:
4−トリフルオロメチルフェニルメトキシメチルエーテル(3,15.2g,60.0mmol)の脱水THF(100mL)溶液に、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(30.0mL,75.0mmol)を0℃で滴下し、徐々に室温まで昇温し、室温で2時間攪拌した。得られた混合溶液を−30℃まで冷却した後、合成例1(1)と同様に得られた化合物(B−14−4,75.0mmol)の脱水THF(300mL)溶液を滴下し、徐々に室温まで昇温し、室温で16時間攪拌した。水で反応をクエンチし、減圧下にTHFを除去した。酢酸エチルを用いて抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水し、硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下に溶媒を留去して濃縮した。
粗生成物を、石油エーテル/酢酸エチル(10/1,v/v)を展開液としてシリカゲルカラムにて精製し、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4−トリフルオロメチルフェニルメトキシメチルエーテル(B−80−5)を得た(18.0g,35.3mmol,48%収率)。
化合物(B−80−5,18.0g,35.3mmol)の脱水THF(250mL)溶液に、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(14.6mL,36.5mmol)を0℃で滴下し、徐々に室温まで昇温し、室温で2時間攪拌した。その混合物を再び−78℃まで冷却した後、同温度でヘキサフルオロベンゼン(33.5g,186mmol)を添加し、徐々に室温まで昇温し、室温で14時間攪拌した。水で反応をクエンチし、減圧下にTHFを除去した。酢酸エチルを用いて抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水し、硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下に溶媒を留去して濃縮した。
粗生成物を、石油エーテル/酢酸エチル(10/1,v/v)を展開液としてシリカゲルカラムにて精製し、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4−トリフルオロメチル−6−ペンタフルオロフェニルフェニルメトキシメチルエーテル(B−80−6)を得た(14.0g,20.7mmol,59%収率)。
上記で合成した化合物(B−80−6,14.0g,73.5mmol)を、塩化水素の酢酸エチル溶液(1M,150mL)に0℃で添加した。徐々に室温まで昇温し、室温で1.5時間攪拌した。酢酸エチルの除去した後、残渣を炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(200mL)で中和をした。酢酸エチルで抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。
硫酸ナトリウムで脱水させた後、硫酸ナトリウムを濾別し、減圧下に溶媒を留去して濃縮することで、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファニル−4−トリフルオロメチル−6−ペンタフルオロフェニルフェノール配位子(B−80)が白色固体として得られた(7.0g,11.1mmol,54%収率)。
1HNMR(CDCl3,δ,ppm):7.97(d,J=11.4Hz,1H),7.74(br(s),1H),7.38(s,1H),7.26(t,J=8.4Hz,2H),6.50(dd,J=8.4,3.0Hz,4H),3.56(s,12H);31PNMR(CDCl3,δ,ppm):−59.0(s).
[錯体の合成例]
ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)をNi(COD)2と称する。錯体(触媒)の調製法は、WO2010/50256を参考にした。31PNMRの値から、得られた錯体の構造は、WO2010/50256で決定された構造と、ほぼ同様と考えられる。
(1)B−14Ni触媒ベンゼン溶液の調整:
Ni(COD)2(52.8mg,192μmol)をベンゼン(15mL)に溶解させ、その溶液(16μmol/mL,9.4mL,150μmol)をB−14(68.2mg,150μmol)に添加した後、30℃で1.5時間攪拌(湯浴使用)することで、B−14Ni触媒ベンゼン溶液(16μmol/mL)を調製した。
31PNMR(C6D6,δ,ppm):0.0(s).
(2)B−56DMNi触媒ベンゼン溶液の調整:
Ni(COD)2のベンゼン溶液(16μmol/mL,9.4mL,150μmol)をB−56DM(70.6mg,150μmol)に添加した後、50℃で1.5時間攪拌することで、B−56DMNi触媒ベンゼン溶液(16μmol/mL)を調製した。
31PNMR(C6D6,δ,ppm):−2.8(s).
(3)B−84Ni触媒ベンゼン溶液の調整:
Ni(COD)2のベンゼン溶液(16μmol/mL,9.4mL,150μmol)をB−84(81.4mg,150μmol)に添加した後、40℃で2時間攪拌することで、B−84Ni触媒ベンゼン溶液(16μmol/mL)を調製した。
31PNMR(C6D6,δ,ppm):0.0(s).
(4)B−86Ni触媒ベンゼン溶液の調整:
Ni(COD)2のベンゼン溶液(16μmol/mL,9.4mL,150μmol)をB−86(80.8mg,150μmol)に添加した後、室温で2.5時間攪拌することで、B−86Ni触媒ベンゼン溶液(16μmol/mL)を調製した。
31PNMR(C6D6,δ,ppm):−2.8(s).
(5)B−79Ni触媒ベンゼン溶液の調整:
Ni(COD)2のベンゼン溶液(16μmol/mL,9.4mL,150μmol)をB−79(95.5mg,150μmol)に添加した後、室温で2.5時間攪拌することで、B−79Ni触媒ベンゼン溶液(16μmol/mL)を調製した。
31PNMR(C6D6,δ,ppm):−4.1(s).
(6)B−80Ni触媒ベンゼン溶液の調整:
Ni(COD)2のベンゼン溶液(16μmol/mL,9.4mL,150μmol)をB−80(94.9mg,150μmol)に添加した後、室温で1時間攪拌することで、B−80Ni触媒ベンゼン溶液(16μmol/mL)を調製した。
31PNMR(C6D6,δ,ppm):−4.3(s).
[エチレン/アクリル酸エステルの共重合例]
内容積2Lの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トルエン(1,000mL)、アクリル酸t−ブチル(tBA)(6.0mL,41mmol)、上記B−14Ni触媒ベンゼン溶液(16μmol/mL,5.0mL,80μmol)を導入し、70℃まで昇温し、同温度で3.0MPaに保つようにエチレンを追加しながら1時間攪拌を継続した。その後、未反応エチレンをパージして重合を停止した。オートクレーブを開放して、濾過及び洗浄後、2.37gの共重合体が得られた。
他の共重合は、導入する触媒ベンゼン溶液の種類が異なるだけで、全て同じ操作を実施した。その結果を表8に示す。
Claims (10)
- 下記一般式(A)で表される金属錯体。
- 一般式(A)中、Mは、ニッケル又はパラジウムであることを特徴とする請求項1に記載の金属錯体。
- 一般式(A)中、R5は、トリフルオロメチル基またはペンタフルオロフェニル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属錯体。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属錯体の存在下、α−オレフィンを重合することを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法。
- ルイス塩基の存在下で重合を行うことを特徴とする請求項5に記載のα−オレフィン重合体の製造方法。
- 有機アルミニウム化合物の非存在下で重合を行うことを特徴とする請求項5又は6に記載のα−オレフィン重合体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属錯体の存在下、α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合することを特徴とするα−オレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法。
- ルイス塩基の存在下で重合を行うことを特徴とする請求項8に記載のα−オレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法。
- 有機アルミニウム化合物の非存在下で重合を行うことを特徴とする請求項8又は9に記載のα−オレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法。
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