JP2013204654A - 湿式油圧クラッチのピストンチェックバルブ構造 - Google Patents

湿式油圧クラッチのピストンチェックバルブ構造 Download PDF

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Abstract

【課題】バルブのオン・オフ切換点が安定している湿式油圧クラッチのピストンチェックバルブ構造を提供すること。
【解決手段】ピストンチェックバルブ構造21は、ピストン20に、油圧室からドレインへの連通孔22が軸方向に設けられており、連通孔22がある部分の油圧室14側に凹部28が設けられ、凹部28にポケット25が設けられている。ポケット25内の、ピストン20の径方向外側の側面に、突起部23が設けられており、ポケット25に転動体24が配設される。ピストン20に、連通孔22を密閉するように、帯板状弾性体26が取付けられている。転動体24に遠心力が作用することで、転動体24は突起部23に乗り上げ、転動体24が突起部23に乗り上げた場合とそうでない場合にバルブのオン・オフが切換わるため、バルブのオン・オフ切換点が安定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動変速機等に使用される湿式油圧クラッチのピストンチェックバルブ構造に関する。
AT・CVT等の湿式油圧クラッチでは、高回転時に発生する遠心油圧の影響を排除し、誤作動防止や良好な油圧制御応答性を得るために、ドリフトオンボール機構やキャンセラー機構が採用されている。ドリフトオンボール機構は、構造が単純で、部品点数が少なく済むため、製造コストを抑えることができるが、構造上、ボールの位置を規制する手段はなく、また、ボールが流体(作動油)の流れの影響を受け易いため、特に、低制御油圧下においてボールの動きが安定せず、クラッチのオン・オフ作動時の応答が遅い、すなわち、油圧制御応答性が悪いという問題がある。一方、キャンセラー機構は、油圧室に発生する遠心油圧の影響を、油圧室と対称的に設けられる油溜まりに発生する遠心油圧でなくすことができるため、より精度の高い油圧制御応答性の要求に応えることができる。しかし、製造コストが高く、油を溜めるための余計なスペースが必要になるため、湿式油圧クラッチのコンパクト性に欠けるという問題がある。
そこで、以下のような、ドリフトオンボール機構の生産性とキャンセラー機構の精度の高い油圧制御応答性とを両立させる、新しい構造のチェックバルブ機構が発案されている。
特開2011−21703
特許文献1には、ピストンに形成された連通孔を開閉する弁体として帯板状弾性体を使用し、ボールが遠心力によって帯板状弾性体側に転がり、その力で帯板状弾性体を押し開けるというピストンチェックバルブ構造が開示されている。このピストンチェックバルブ構造によれば、低油圧制御下におけるボールの動きが安定するため、低油圧制御下において高い油圧制御応答性を得ることができ、また、高い生産性、軽量化、コンパクト化を実現することができるとされている。
上記のピストンチェックバルブ構造では、遠心力がボールに作用し、ボールがボールポケットの斜面を転がり、帯板状弾性体を押し開けるという作動原理であるため、帯板状弾性体を押し開けようとするボールに対し、帯板状弾性体の弾性力と、油圧が抵抗力となって作用する。しかし、帯板状弾性体を押し開ける力(以下、単に、「バルブリフト力」という。)は、遠心力の他にボールとボールポケットの斜面との摩擦が大きく関係するため、バルブのオン・オフが切換わる回転数(以下、単に、「バルブのオン・オフ切換点」という。)が安定し難いという問題がある。
そこで、本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑み、生産性が高く、コンパクトで、高い油圧制御応答性を具え、さらに、バルブのオン・オフ切換点が安定している湿式油圧クラッチのピストンチェックバルブ構造を提供することを、その目的とする。
本発明は、ドラム内にインナプレートとアウタプレートが交互に配置され、前記ドラムとピストンの間に油圧室が形成され、前記ピストンの押圧により前記インナプレートとアウタプレートとが係合しトルクが伝達される湿式油圧クラッチにおいて、
前記ピストンに形成される、該ピストンの前記油圧室側とその反対側であるドレイン側とを連通させる連通孔と、
前記ピストンの油圧室側に開口する有底穴であるポケットと、
前記ポケット内に配設される、該ポケット内で転動可能な転動体と、
前記ピストンに一端が取付けられ、前記ポケットの開口の少なくとも一部を覆い、且つ、遊端部が前記連通孔を密閉する帯板状弾性体と、
前記ポケットの側面であって、前記転動体を配設したときの該転動体の重心より前記ポケットの底側、且つ、前記ピストンの径方向外側に形成される、前記転動体が当接可能な突起部を具えることを特徴とする湿式油圧クラッチのピストンチェックバルブ構造によって前記課題を解決した。
本発明によれば、遠心力を受けた転動体が段部に乗り上げると、帯板状弾性体が転動体によって押し開けられ、帯板状弾性体と連通孔との間に隙間が生じ、連通孔が開放されることになる。すなわち、転動体の重心位置に加わる、突起部の先端を支点とするモーメント荷重(以下、単に、「モーメント荷重」という。)を、バルブリフト力に変換しているため、バルブのオン・オフ切換点を安定させることができる。このとき、転動体と突起部の先端とが点接触することになるため、バルブリフト力に対する、転動体とポケットとの摩擦による影響を排除することができる。さらに、転動体の重心位置と、転動体との接触点である突起部の先端との相対位置関係を変更することにより、モーメント荷重、ひいてはバルブリフト力を調整することができ、また、突起部の先端の形状を変更し、転動体が乗上げる位置を変更すれば、帯板状弾性体を押し開ける度合(以下、単に、「バルブリフト量」という。)を調整することができる。
また、突起部をポケットの側面と底面との接合部に形成された段部とすれば、生産が簡便になり、さらに、段部を複数設ける構成とすれば、遠心力による転動体に対するモーメント荷重の方向変動を少なくすることができる。
本発明のピストンチェックバルブ構造を採用した湿式油圧クラッチの縦断面図。 本発明のピストンチェックバルブ構造の要部拡大断面図。 (a)は本発明のオン・オフ切換点を表した図。(b)は従来技術のオン・オフ切換点を表した図。 (a)は段部が一段の本発明の作動時を表した図。b)は段部が複数段の本発明の作動時を表した図。 本発明のピストンチェックバルブ構造における、転動体、ポケット及び段部の形状の一例を表した図。
以下、本発明の実施形態を図1〜5を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明のピストンチェックバルブ構造21を有するピストン20を具える湿式油圧クラッチ10(以下、単に、「クラッチ10」という。)の縦断面図である。図1に示すクラッチ10は、油圧室14が最小体積の、オフ状態である。クラッチ10は、ドラム12、ドラム12内に交互に配置されたインナプレート16とアウタプレート18、及び戻しばね15を具えている。インナプレート16には、通常、摩擦材が貼付けられる。油圧室14に、図示しない制御バルブから作動油が供給される、すなわち、クラッチ油圧オンとなることにより、ピストン20が左方向に押圧されると、インナプレート16とアウタプレート18とが摩擦係合し、トルクが伝達される。このとき、クラッチ10はオン状態となり、戻しばね15は圧縮される。そして、ピストン20へ作用する油圧が解除される、すなわち、クラッチ油圧オフとなると、戻しばね15がピストン20を押戻すため、クラッチ10はオフ状態となる。
次に、ピストンチェックバルブ構造21について説明する。
ピストン20には、油圧室側とその反対側であるドレイン側とを連通させる連通孔22が軸方向に設けられている。また、連通孔22の油圧室14側開口の周囲には、凹部28が設けられ、凹部28には、さらに、油圧室側に開口する有底穴であるポケット25が設けられている。凹部28は、ピストンチェックバルブ構造21が、ドラム12に干渉しないように設けられるものである。ポケット25には、転動体24が配設されており、帯板状弾性体26の一端が取付具27によってピストン20に取付けられている。帯板状弾性体26は、その遊端部26aが、連通孔22を密閉してシールする役割を果たすものであるため、板状のばねを用いるのが好ましい。また、連通孔22をシールする効果を高め、連通孔22を確実に塞ぐことができるように、例えば、予め弾性変形を与える、又は連通孔22の周辺を僅かに隆起させるというような方法で、帯板状弾性体26に予荷重を加えておいてもよい。なお、転動体24としては、球体や円筒形状のものというような、遠心力を受けてポケット25内を転がることができるものであればよい。また、帯板状弾性体26の形状は、連通孔22を密閉できるものであり、且つ、転動体24のバルブリフト力を受けることができるものであれば、ポケット25の開口の一部を覆う構成でも、全体を覆う構成でもよい。このようにピストンチェックバルブ構造21は、キャンセラー機構に比べて部品点数が少なく、単純な構造であるため、生産性に優れ、クラッチ10のコンパクト化に資することができる。
図2(a)は、バルブがオン状態(閉弁状態)、すなわち、ピストン20が無回転又は低速回転時の状態を示しており、図2(b)は、バルブがオフ状態(開弁状態)、すなわち、ピストン20が高速回転時の状態を示している。ポケット25は、ピストン20が無回転又は低速回転で転動体24が作動しないときに、帯板状弾性体26が連通孔22を密閉することができるように、転動体24を収容する深さである必要があり、また、帯板状弾性体26に転動体24による荷重がかからない程度の深さにすることが好ましい。ポケット25には、側面と底面との接合部、すなわち、転動体24の重心より底側に、突起部として、一段の段部23が設けられている。段部23は、遠心力を受けた転動体24が乗り上げるように、ピストン20の径方向外側であって、ポケット25の側面に設けられる必要がある。なお、ポケット25の上述した条件が満たされていれば、例えば、ポケット25の底面は円弧状であってもよく、段部23をポケット25の底面の中央部を凹陥させることによって形成するというように、形状を適宜変更してもよい。さらに、突起部は上述した段部23のような形状に限らず、先端が段部23の角の位置に一致するように、ポケット25の側面又は底面から突設させた板状の突起、或いは、鍔のような形状のものでもよい。
図2(a)に示すように、ピストン20が低速回転状態では、転動体24には段部23を乗り上げることができる程の遠心力が作用しておらず、連通孔22は帯板状弾性体26によって確実に密閉されているため、ピストンチェックバルブ構造21は、低油圧制御下において高い油圧制御応答性を実現することができる。一方、ピストン20が高速回転状態となると、図2(b)に示す状態となる。すなわち、転動体24が遠心力によって段部23に乗り上げるとともに、帯板状弾性体26を押し開ける。かくして、バルブはオフ状態となり、油圧室14に存在する遠心油圧油は連通孔22を通じてドレインへ排出され、クラッチ油圧オフとしたときの、遠心油圧によるピストン20への影響を排除することができる。
図3(a)は、本発明のピストンチェックバルブ構造を有するクラッチのオン・オフ切換点を表した図であり、図3(b)は、特許文献1のようなピストンチェックバルブ構造を有するクラッチのオン・オフ切換点を表した図である。図中のS、S′は、バルブリフト力を、Tは、油及び帯板状弾性体による荷重の総和である開弁抗力を示している。図3(b)に示すように、転動体とボールポケットの斜面との摩擦抵抗によって、バルブリフト力を得ている場合、バルブリフト力が必ずしも安定せず、バルブのオン・オフ切換点がX−Y間の範囲で変動してしまう。一方、本発明のピストンチェックバルブ構造を有するクラッチの場合は、転動体と突起部の先端とが点接触することになるため、バルブリフト力に対する、転動体とポケットとの摩擦による影響を排除することができ、転動体が突起部に乗り上げた場合とそうでない場合にバルブのオン・オフが切換わるため、図3(a)に示すように、バルブのオン・オフ切換点が安定している。
次に、図4を参照して、本発明のピストンチェックバルブ構造21の転動体24の動きについて説明する。図4において、矢印Aは転動体24の重心Gに作用する遠心力を、矢印Bは突起部の先端である段部23の角を支点として、転動体24に作用するモーメント荷重の方向を示している。また、r、r′は転動体24の半径を、点線の円Vは、転動体24の重心Gの軌跡を示している。
図4(a)は、ポケット25の段部23が一段の場合を示している。図4(a)の左図の状態から、転動体24の重心Gに遠心力が作用すると、矢印B方向にモーメント荷重が発生する。そして、ピストン20が高速回転し、モーメント荷重が、油と図示しない帯板状弾性体(図1、2参照。)による開弁抗力を上回ると、図4(a)の右図の状態となり、バルブがオフ状態となる。そして、ピストン20が低速回転となり、モーメント荷重が、開弁抗力を下回ると、図4(a)の左図の状態となり、バルブがオン状態となる。なお、転動体24の重心位置Gと、転動体24との接触点である段部23の角との相対位置関係を変更することにより、モーメント荷重、ひいてはバルブリフト力を調整することができ、また、段部23の形状を変更し、転動体24が乗上げる位置を変更すればバルブリフト量を調整することができる。
図4(b)は、ポケット25の段部23が複数段の場合を示している。段部23が一段の場合、転動体24のモーメント荷重の方向変動が1S〜1Fとなるが(図4(a)参照。)、段部23が複数段の場合、2S〜2M〜2Fとなり、段部23が一段の場合と比べて、モーメント荷重の方向変動を少なくすることができる。なお、転動体24の基本的な動きは、一段の場合と同じであるため、説明を省略する。
図5は、本発明のピストンチェックバルブ構造における、転動体、ポケット及び段部の形状の一例を表した図である。なお、図5において、A、B、Cは、ポケット25a、25b、25cを平面視したときの形状を表している。図5(a)に示すように、転動体24として球を使用し、円形のポケット25aの側面の全周に亘って段部23を設けてもよく、或いは、図5(b)に示すように、ピストン20の径方向外側であって、楕円形のポケット25bの側面に段部23を設ける構成としてもよい。また、図5(c)に示すように、転動体24aのような円柱形のころを使用し、平面視横長の長方形のポケット25cの径方向外側の側面に段部23を設ける構成としてもよい。
以上説明したように、本発明によれば、バルブのオン・オフ切換えに、突起部の先端を支点として転動体の重心に作用するモーメント荷重を利用しているため、転動体と突起部の先端とが点接触することになり、バルブリフト力に対する、転動体とポケットとの摩擦による影響を排除することができる。かくして、バルブのオン・オフ切換点が安定していて、且つ、低油圧制御時の油圧応答性に優れた湿式油圧クラッチのピストンチェックバルブ構造を提供することができる。
10 湿式油圧クラッチ
12 ドラム
14 油圧室
16 インナプレート
18 アウタプレート
20 ピストン
22 連通孔
23 突起部(段部)
24 転動体
25 ポケット
26 帯板状弾性体
26a 帯板状弾性体の有端部

Claims (3)

  1. ドラム内にインナプレートとアウタプレートが交互に配置され、前記ドラムとピストンの間に油圧室が形成され、前記ピストンの押圧により前記インナプレートとアウタプレートとが係合しトルクが伝達される湿式油圧クラッチにおいて、
    前記ピストンに形成される、該ピストンの前記油圧室側とその反対側であるドレイン側とを連通させる連通孔と、
    前記ピストンの油圧室側に開口する有底穴であるポケットと、
    前記ポケット内に配設される、該ポケット内で転動可能な転動体と、
    前記ピストンに一端が取付けられ、前記ポケットの開口の少なくとも一部を覆い、且つ、遊端部が前記連通孔を密閉する帯板状弾性体と、
    前記ポケットの側面であって、前記転動体を配設したときの該転動体の重心より前記ポケットの底側、且つ、前記ピストンの径方向外側に形成される、前記転動体が当接可能な突起部を具えることを特徴とする、
    湿式油圧クラッチのピストンチェックバルブ構造。
  2. 前記突起部が、前記ポケットの側面と底面との接合部に形成された段部である、請求項1の湿式油圧クラッチのピストンチェックバルブ構造。
  3. 前記段部が複数段である、請求項2の湿式油圧クラッチのピストンチェックバルブ構造。
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