JP2016070489A - 摩擦クラッチ - Google Patents
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Abstract
【課題】最大伝達トルク容量を大きく確保できながら、係合/解放時の伝達トルク容量の制御性の向上を図ることができる、摩擦クラッチを提供する。【解決手段】クラッチプレート16に対して回転中心線方向の一方側には、第1ピストン21および第2ピストン22が回転中心線方向に移動可能に設けられている。第1ピストン21および第2ピストン22の一方側には、油室31が形成されている。第1ピストン21および第2ピストン22は、それぞれ第1リターンスプリング42および第2リターンスプリング43により、油室31側に弾性的に付勢されている。第1リターンスプリング42の付勢力は、第2リターンスプリング43の付勢力よりも小さい。【選択図】図1
Description
本発明は、摩擦クラッチに関する。
たとえば、車両用の自動変速機には、摩擦クラッチが多用されている。
この自動変速機では、複数の摩擦クラッチが選択的に係合および解放されることにより、複数の変速段が構成される。そのため、変速段の切替時(変速時)には、係合状態の摩擦クラッチが解放されつつ、解放状態の別の摩擦クラッチが係合されることがある。この切替時に生じるショックを抑えるためには、それらの摩擦クラッチの伝達トルク容量を緻密に制御する必要がある。
湿式多板の摩擦クラッチの伝達トルク容量は、ピストンに加わる油圧ならびにディスクの枚数および径により定まる。ディスクの枚数および径は、既定であるので、ピストンに加わる油圧の制御により、伝達トルク容量を制御することができる。
伝達トルク容量を緻密に制御するには、ピストンに加わる油圧を緻密に制御する必要がある。しかしながら、ピストンに加わる油圧を緻密に制御するには、油圧を調節するためのソレノイドバルブに供給される電流を精密に制御しなければならず、その制御には限界がある。
伝達トルク容量の制御性は、ピストンに加わる油圧の変化に対する伝達トルク容量の変化率(ゲイン)に左右される。すなわち、ピストンに加わる油圧の変化に対する伝達トルク容量の変化率が大きいほど、伝達トルク容量の制御性が悪くなり、変化率が小さいほど、伝達トルク容量の制御性が良くなる。たとえば、ピストンの受圧面積(油圧を受ける面積)を小さくすることにより、ピストンに加わる油圧の変化に対する伝達トルク容量の変化率を下げることができる。しかし、ピストンの受圧面積を小さくすると、摩擦クラッチの最大伝達トルク容量が低下してしまう。
本発明の目的は、最大伝達トルク容量を大きく確保できながら、係合/解放時の伝達トルク容量の制御性の向上を図ることができる、摩擦クラッチを提供することである。
前記の目的を達成するため、本発明に係る摩擦クラッチは、クラッチプレートと、クラッチプレートの回転中心線方向に移動可能に設けられ、回転中心線方向の一方側からクラッチプレートを押圧するための第1ピストンと、回転中心線方向に移動可能に設けられて、一方側から第1ピストンを介してクラッチプレートを押圧するための第2ピストンと、第1ピストンおよび第2ピストンに対して一方側に設けられ、油圧が供給される油室を第1ピストンおよび第2ピストンとの間に形成するクラッチドラムと、第1ピストンを一方側に弾性的に付勢する第1付勢部材と、第1付勢部材よりも大きい付勢力で第2ピストンを一方側に弾性的に付勢する第2付勢部材とを含む。
この構成によれば、クラッチプレートに対して回転中心線方向の一方側には、第1ピストンおよび第2ピストンが回転中心線方向に移動可能に設けられている。第1ピストンおよび第2ピストンの一方側には、油室が形成されている。第1ピストンおよび第2ピストンは、それぞれ第1付勢部材および第2付勢部材により、油室側に弾性的に付勢されている。第1付勢部材の付勢力は、第2付勢部材の付勢力よりも小さい。
油室内に油圧が供給されると、第1ピストンおよび第2ピストンが油圧を受ける。油室内に供給される油圧が低い時(低油圧時)は、相対的に大きな付勢力で付勢されている第2ピストンが停止したまま、相対的に小さい付勢力で付勢されている第1ピストンが第1付勢部材の付勢力に抗して移動する。そして、第1ピストンによりクラッチプレートが押圧されて、摩擦クラッチが係合し始める。摩擦クラッチの伝達トルク容量の変化に寄与する油圧は、第1ピストンが受ける油圧である。第1ピストンが受ける油圧の変化は、油室内に供給される油圧の変化に対して緩慢であるから、摩擦クラッチの伝達トルク容量は、油室内に供給される油圧の変化に対して緩慢に変化する。よって、摩擦クラッチの係合/解放の切替時に、油室内に供給される油圧の制御により、伝達トルク容量を緻密に制御することができる。その結果、摩擦クラッチの係合/解放の切替時におけるショックの発生を抑えることができる。
油室内に供給される油圧の上昇に伴い、第2ピストンが受ける油圧が上昇すると、第2ピストンが第2付勢部材の付勢力に抗して移動する。そして、第2ピストンにより第1ピストンが押圧され、その押圧力が第1ピストンからクラッチプレートに入力される。これにより、クラッチピストンは、第1ピストンおよび第2ピストンの両方が受ける油圧により押圧される。油室内に供給される油圧の変化に対して、第1ピストンおよび第2ピストンの両方が受ける油圧は、第1ピストンのみが受ける油圧よりも急峻に変化する。したがって、摩擦クラッチの伝達トルク容量は、油室内に供給される油圧の変化に対して急峻に変化する。よって、摩擦クラッチの係合/解放が完了するまでに要する時間の増大を抑制することができる。
そして、第1ピストンの受圧面積および第2ピストンの受圧面積の合計で最大伝達トルク容量が決まるので、その受圧面積の合計を大きく確保することにより、最大伝達トルク容量を大きく確保することができる。
また、単一の油室に供給される油圧により、第1ピストンおよび第2ピストンの両方を動作させることができるので、第1ピストンおよび第2ピストンを動作させるための油室を個別に設ける構成よりも、摩擦クラッチを小型にすることができる。また、油圧の供給のための構成を簡素化することができる。
第1ピストンは、第2ピストンの外周部に対して回転中心線方向に対向する第1対向部と、第2ピストンの外周部に対して回転中心線方向と直交する回転径方向に対向する第2対向部とを有していてもよい。
これにより、第1ピストンの第1対向部で第2ピストンによる押圧を受けることができる。また、第1ピストンと第2ピストンとの間から油圧が抜けることを抑制するために、第1ピストンの第2対向部と第2ピストンとの間にシール材を設けることができる。さらには、第1ピストンとクラッチドラムとの間から油圧が抜けることを抑制するために、第2対向部とクラッチドラムとの間にシール材を設けることができる。そして、そのシール材を第1弾性部材として兼用することもできる。
また、摩擦クラッチは、第1ピストンおよび第2ピストンに対して他方側に配置され、油圧が供給されるキャンセラ室を第1ピストンおよび第2ピストンとの間に形成する遠心油圧キャンセラを備え、第1付勢部材は、第1ピストンと遠心油圧キャンセラとの間に介在される第1リターンスプリングであり、第2部材は、第2ピストンと遠心油圧キャンセラとの間に介在される第2リターンスプリングであってもよい。
第1ピストンとクラッチドラムとの間には、油圧が抜けるのを防止するために、それらの間を封止するシール材が必要である。ところが、そのシール材は、第1ピストンが移動する際の抵抗となる。そのため、第1付勢部材の付勢力が小さいと、油室内から油圧が解放されて、第1ピストンが第1付勢部材の付勢力により一方側に戻るときに、第1ピストンがスムーズに移動しないおそれがある。第1ピストンが良好に戻らないと、第1ピストンからクラッチプレートに押圧力が付与され続けて、クラッチプレートの焼き付きを発生する懸念がある。
第1付勢部材の付勢力を大きくすれば、第1ピストンの解放方向のスムーズな移動を確保できるが、油圧による第1ピストンの動き(係合方向の移動)が悪くなり、伝達トルク容量の制御性が低下する。また、シール材の緊迫力を低下させると、第1ピストンのスムーズに移動させやすくすることができるが、第1ピストンとクラッチドラムとの間から油が漏れ出るという背反を生じる。
そこで、摩擦クラッチは、第1ピストンとクラッチドラムとの間を封止するシール材をさらに含み、第1ピストンがクラッチプレートを押圧していない状態でのシール材の緊迫力が相対的に大きく、第1ピストンが一方側に移動するときのシール材の緊迫力が相対的に小さくなるように、クラッチドラムにおけるシール材が当接する面に、段差または傾斜が設けられていてもよい。
これにより、第1ピストンがクラッチプレートを押圧していない状態、言い換えれば摩擦クラッチが解放された状態では、シール材が有する相対的に大きい緊迫力により、第1ピストンとクラッチドラムとの間からの油の漏れを抑制することができる。油室内から油圧が解放されて、第1ピストンが第1付勢部材の付勢力により一方側に戻るときには、シールの緊迫力が相対的に小さいので、第1ピストンを一方側に良好に移動させることができる。その結果、油室内から油圧が解放されるときに、第1ピストンがクラッチプレートを押圧しない位置に良好に戻るので、クラッチプレートの焼き付きの発生を抑制することができる。
また、第2ピストンが第1ピストンを介してクラッチプレートを押圧する構成では、第1ピストンおよび第2ピストンが回転中心線方向に対して傾いた場合に、第1ピストンの傾き分が第2ピストン自身の傾きに加わり、第2ピストンの傾きが大きくなるおそれがある。第2ピストンの傾きが大きくなると、クラッチプレートの片当たりによる焼き付きが発生したり、第2ピストンが油圧により移動する際に揺れたりすることにより、クラッチプレートに付与される押圧力が変動するおそれがある。
そこで、第1ピストンは、回転中心線を中心線とする円筒状の円筒部を有しており、摩擦クラッチは、クラッチドラムと一体的に設けられ、第1ピストンの円筒部の内周面に沿った円筒状をなし、油室を円筒部に付与される油圧が供給される第1油室と第2ピストンに付与される油圧が供給される第2油室とに分断するガイドをさらに含み、ガイドには、第1油室と第2油室とを連通する連通孔が貫通して形成されていてもよい。
第1ピストンの円筒部の内周面に沿って円筒状のガイドが設けられているので、円筒部がガイドに沿うことにより、第1ピストンが回転中心線方向に対して傾くことを抑制できる。第1ピストンの傾きが抑制されるので、第2ピストンが大きく傾くことを抑制でき、クラッチプレートの焼き付きやクラッチプレートに付与される押圧力の変動の発生を抑制できる。
また、ガイドが油室を第1ピストン側の第1油室と第2ピストン側の第2油室とに分断するように設けられていても、ガイドには、第1油室と第2油室とを連通する連通孔が形成されているので、たとえば、第2油室に供給される油圧を連通孔を通して第1油室に供給することができ、第1油室の油圧を連通孔を通して第2油室に抜き取ることができる。
ガイドが設けられる構成では、第1ピストンとガイドとの間および第2ピストンとガイドとの間にそれぞれシール材が設けられていてもよい。
ガイドが設けられず、第1ピストンと第2ピストンとの間にその間を封止するシール材が設けられる構成では、第1ピストンの傾きがシール材を介して第2ピストンに伝わり、第2ピストンが大きく傾くおそれがある。第1ピストンとガイドとの間および第2ピストンとガイドとの間にそれぞれシール材が設けられる構成では、たとえ第1ピストンが回転中心線方向に対して傾いても、その傾きがシール材を介して第2ピストンに伝達されることを抑制できる。
本発明によれば、最大伝達トルク容量を大きく確保できながら、摩擦クラッチの係合/解放時の伝達トルク容量の制御性の向上を図ることができる。
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1、図2および図3は、本発明の一実施形態に係る摩擦クラッチ1を回転中心線Cを含む平面で切断した断面図である。図1、図2および図3には、摩擦クラッチ1における回転中心線Cに対する一方側のみが示されている。
摩擦クラッチ1は、たとえば、自動変速機または無段変速機に組み込まれて、駆動力が入力される回転体である入力軸2の回転を入力軸2と回転中心線Cを共通にする別の回転体3に伝達/遮断するために用いられる。
摩擦クラッチ1は、入力軸2と一体に形成されたクラッチドラム11と、回転体3に固定されたクラッチハブ12とを備えている。
クラッチドラム11は、回転中心線Cと直交する方向、つまり回転径方向に延びる略円板状の円板部13を有している。円板部13の外周部14は、クラッチハブ12側に屈曲している。また、クラッチドラム11は、円板部13の外周部14から回転中心線Cと平行をなす方向、つまり回転中心線方向に延びる略円筒状の円筒部15を有している。円筒部15の内側には、複数の円環板状のクラッチプレート16が間隔を空けて配置され、円筒部15には、各クラッチプレート16の外周部がスプライン嵌合されている。
クラッチハブ12は、クラッチドラム11の円筒部15と回転径方向に対向する対向部17を有している。その円筒部15と対向部17との間には、複数の円環板状のクラッチディスク18がクラッチプレート16と回転中心線方向に交互に並ぶように配置され、対向部17には、各クラッチディスク18の内周部がスプライン嵌合されている。
クラッチドラム11の内側であって、クラッチプレート16よりもクラッチドラム11の円板部13側の位置には、第1ピストン21および第2ピストン22が回転中心線方向に移動可能に設けられている。
第1ピストン21は、回転径方向に延びる略円環状の円環部23と、円環部23の外周端からクラッチプレート16側に延びる略円筒状の第1円筒部24と、円環部23の回転径方向の途中からクラッチドラム11の円板部13側に延びる略円筒状の第2円筒部25とを有している。
第2ピストン22は、第1ピストン21に対して回転径方向の内側に配置されている。第2ピストン22は、内周部がクラッチプレート16側に膨出した略円環板状をなし、入力軸2に外嵌されている。第2ピストン22の外周部26は、第1ピストン21の円環部23の下端部27に対して回転中心線方向にクラッチドラム11の円板部13側から対向し、第2円筒部25に対して回転径方向に内側から対向している。
第1ピストン21の第2円筒部25の外周面には、シール溝28が全周にわたって形成されている。シール溝28には、シール材29が嵌入されている。シール材29は、第1ピストン21の位置にかかわらず、クラッチドラム11の円板部13の外周部14と常に接触している。シール材29は、たとえば、Dリングからなる。また、第2ピストン22のクラッチドラム11の円板部13側の面には、シール材30が貼着されている。シール材30の外周端部および内周端部は、第1ピストン21および第2ピストン22の位置にかかわらず、それぞれ第1ピストン21の第2円筒部25および入力軸2に常に接触している。
これにより、クラッチドラム11と第1ピストン21および第2ピストン22との間には、入力軸2、クラッチドラム11、第1ピストン21、第2ピストン22およびシール材29,30により閉鎖された油室31が形成されている。油室31は、入力軸2に形成された油流路32と連通しており、油室31には、油流路32を通して油圧が供給/開放される。
第2ピストン22に対して油室31と反対側には、遠心油圧キャンセラ41が配置されている。遠心油圧キャンセラ41は、入力軸2の外周に外嵌されて、回転径方向の途中部がクランク状に屈曲した略円環板状に形成されている。遠心油圧キャンセラ41は、入力軸2にスプライン嵌合されている。
遠心油圧キャンセラ41の屈曲部分よりも外周側の部分と第1ピストン21との間には、複数の第1リターンスプリング42が回転中心線Cを中心とする等角度間隔で介裝されている。第1リターンスプリング42は、たとえば、コイルばねからなる。第1リターンスプリング42の付勢力により、第1ピストン21と遠心油圧キャンセラ41とは、互いに離間する方向に弾性的に付勢されている。
遠心油圧キャンセラ41の屈曲部分よりも内周側の部分と第2ピストン22との間には、複数の第2リターンスプリング43が回転中心線Cを中心とする等角度間隔で介裝されている。第2リターンスプリング43は、たとえば、コイルばねからなる。第2リターンスプリング43の付勢力は、第1リターンスプリング42の付勢力よりも大きく設定され、この付勢力により、第2ピストン22と遠心油圧キャンセラ41とは、互いに離間する方向に弾性的に付勢されている。
また、遠心油圧キャンセラ41は、第1リターンスプリング42および第2リターンスプリング43に付勢されることにより、入力軸2に取り付けられたスナップリング44に当接し、回転中心線方向の移動が規制されている。
遠心油圧キャンセラ41の外周部には、遠心油圧キャンセラ41と第1ピストン21の第1円筒部24との間を封止する環状のシール材45が設けられている。これにより、第1ピストン21と遠心油圧キャンセラ41との間には、入力軸2、第1ピストン21、第2ピストン22、遠心油圧キャンセラ41およびシール材45により閉鎖されたキャンセラ室46が形成されている。キャンセラ室46は、入力軸2に形成された油流路47と連通しており、キャンセラ室46には、油流路47を通して作動油が供給される。
図4は、摩擦クラッチ1の伝達トルク容量と伝達トルク容量の変化に寄与する油圧との関係を示すグラフである。
油室31の油圧が解放された状態では、図1に示されるように、第1ピストン21および第2ピストン22がクラッチドラム11の円板部13に最も近接した位置に位置する。このとき、摩擦クラッチ1は、クラッチプレート16とクラッチディスク18とが圧接していない解放状態であり、摩擦クラッチ1のトルク容量は、図4に示されるように、0である。キャンセラ室46は、油流路47を通して供給される作動油で満たされている。
油流路32から油室31に油圧が供給されると、その油圧により、図2に示されるように、第1ピストン21がクラッチプレート16側に移動し、第1ピストン21の第1円筒部24がクラッチプレート16を押圧する。油室31内に供給される油圧が低い時(低油圧時)は、第2ピストン22は、第2リターンスプリング43の付勢力により停止した状態を保っている。第1ピストン21によりクラッチプレート16が押圧されることにより、クラッチプレート16とクラッチディスク18とが圧接し、摩擦クラッチ1の係合が開始される。摩擦クラッチ1の伝達トルク容量の変化に寄与する油圧は、第1ピストン21が受ける油圧である。第1ピストン21が受ける油圧の変化は、油室31内に供給される油圧の変化に対して緩慢であるから、摩擦クラッチ1の伝達トルク容量は、図4に示されるように、第1ピストン21が受ける油圧の変化に対応して、油室31内に供給される油圧の変化に対して緩慢に変化する。よって、摩擦クラッチ1の係合/解放の切替時に、油室31内に供給される油圧の制御により、伝達トルク容量を緻密に制御することができる。その結果、摩擦クラッチ1の係合/解放の切替時におけるショックの発生を抑えることができる。
油室31内に供給される油圧の上昇に伴い、第2ピストン22が受ける油圧が上昇すると、図3に示されるように、第2リターンスプリング43の付勢力に抗して、第2ピストン22がクラッチプレート16側に移動する。そして、第2ピストン22により第1ピストン21の円環部23の下端部27が押圧され、その押圧力が第1ピストン21からクラッチプレート16に入力される。これにより、クラッチプレート16は、第1ピストン21および第2ピストン22の両方が受ける油圧により押圧される。油室31内に供給される油圧の変化に対して、第1ピストン21および第2ピストン22の両方が受ける油圧は、第1ピストン21のみが受ける油圧よりも急峻に変化する。したがって、摩擦クラッチ1の伝達トルク容量は、図4に示されるように、第1ピストン21および第2ピストン22の両方が受ける油圧の変化に対応して、油室31内に供給される油圧の変化に対して急峻に変化する。よって、摩擦クラッチ1の係合/解放が完了するまでに要する時間の増大を抑制することができる。
また、第1ピストン21の受圧面積(油圧を受ける面積)および第2ピストン22の受圧面積の合計で最大伝達トルク容量が決まるので、その受圧面積の合計を大きく確保することにより、最大伝達トルク容量を大きく確保することができる。
クラッチドラム11が入力軸2と一体的に回転している状態では、キャンセラ室46内の作動油に遠心力が作用し、キャンセラ室46に遠心油圧が発生する。この遠心油圧により、油室31内の遠心油圧をキャンセル(相殺)することができる。そのため、係合状態から油室31内の油圧が開放されると、第1リターンスプリング42および第2リターンスプリング43の付勢力により、それぞれ第1ピストン21および第2ピストン22がクラッチドラム11側にスムーズに移動する。
また、単一の油室31に供給される油圧により、第1ピストン21および第2ピストン22の両方を動作させることができるので、第1ピストン21および第2ピストン22を動作させるための油室を個別に設ける構成よりも、摩擦クラッチ1を小型にすることができる。また、油圧の供給のための構成を簡素化することができる。
図5は、本発明の変形例に係る摩擦クラッチ1の要部を示す断面図である。図5において、図1に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号が付された部分の説明を省略する。
図1に示されるシール材30に代えて、図5に示されるように、第2ピストン22の外周部26と第1ピストン21の第2円筒部25との間を封止するシール材51と、第2ピストン22の内周端部と入力軸2との間を封止するシール材(図示せず)とが設けられていてもよい。
図6および図7は、図5に示されるシール材29の近傍を拡大して図解的に示す断面図である。
クラッチドラム11の円板部13の外周部14の内周面52には、シール材29が当接している。このシール材29が当接する内周面52には、図6および図7に示されるように、段差53が形成されていてもよい。
段差53は、内周面52における段差53よりも円板部13側の部分が回転中心線Cに相対的に近く、内周面52における段差53よりもクラッチプレート16側の部分が回転中心線Cから相対的に遠くなるように形成されている。また、油室31の油圧が解放されて、第1ピストン21が円板部13に最も近接した位置に位置するときに、内周面52における段差53よりも円板部13側の部分にシール材29が当接し、油室31に油圧が供給されて、第1ピストン21がクラッチプレート16側に移動を開始した直後に、シール材29が段差53を超えるように、段差53の位置が設定されている。
第1ピストン21が円板部13に最も近接した位置に位置する状態では、図6に示されるように、シール材29が内周面52における段差53よりも円板部13側の部分に当接している。この状態では、シール材29がシール溝28と内周面52との間で圧縮されることによる緊迫力を有し、このシール材29の緊迫力により、第1ピストン21の第2円筒部25と内周面52との間が封止されている。
なお、図6および図7では、シール材29におけるシール溝28と内周面52との間で圧縮される部分にハッチングが付されている。
油室31に油圧が供給されて、第1ピストン21がクラッチプレート16側に移動し始めると、図7に示されるように、シール材29が段差53を乗り越え、シール材29が内周面52における段差53よりもクラッチプレート16側の部分に当接する。これにより、シール材29がシール溝28と内周面52との間で圧縮されることにより有する緊迫力は、第1ピストン21の移動開始前と比較して低下するが、シール溝28内に供給される油圧によりシール材29が変形し、その変形による緊迫力がシール材29に発生する。その結果、第1ピストン21の第2円筒部25と内周面52との間を良好に封止可能な緊迫力をシール材29に確保することができ、第2円筒部25と内周面52との間からの油の漏れを抑制することができる。
油室31内から油圧が解放されると、第1リターンスプリング42の付勢力により、第1ピストン21がクラッチドラム11側に移動し始める。油室31内の油圧が解放されているので、油圧によるシール材29の変形がなくなる。その結果、シール材29が有する緊迫力は、シール材29がシール溝28と内周面52との間で圧縮されることにより有する緊迫力のみに低下する。そのため、第1リターンスプリング42の付勢力により、第1ピストン21をクラッチドラム11側に良好に移動させることができる。よって、第1ピストン21がクラッチプレート11を押圧しない位置に良好に戻るので、クラッチプレート11の焼き付きの発生を抑制することができる。
図8および図9は、図5に示されるシール材29の近傍を拡大して図解的に示す断面図である。
クラッチドラム11の円板部13の外周部14の内周面52には、図6および図7に示される段差53に代えて、図8および図9に示される傾斜54が形成されていてもよい。
傾斜54は、クラッチプレート16側に近づくほど回転中心線Cから相対的に遠くなるように形成されている。また、油室31の油圧が解放されて、第1ピストン21が円板部13に最も近接した位置に位置するときに、傾斜54よりも円板部13側の平坦部分にシール材29が当接し、油室31に油圧が供給されて、第1ピストン21がクラッチプレート16側に移動を開始した直後に、傾斜54と平坦部分との境界55を越えるように、傾斜54の位置が設定されている。
第1ピストン21が円板部13に最も近接した位置に位置する状態では、図8に示されるように、シール材29が内周面52における傾斜54よりも円板部13側の平坦部分に当接している。この状態では、シール材29がシール溝28と内周面52との間で圧縮されることによる緊迫力を有し、このシール材29の緊迫力により、第1ピストン21の第2円筒部25と内周面52との間が封止されている。
なお、図8および図9では、シール材29におけるシール溝28と内周面52との間で圧縮される部分にハッチングが付されている。
油室31に油圧が供給されて、第1ピストン21がクラッチプレート16側に移動し始めると、図9に示されるように、シール材29が傾斜54と平坦部分との境界55を越え、シール材29が傾斜54に当接する。これにより、シール材29がシール溝28と内周面52との間で圧縮されることにより有する緊迫力は、第1ピストン21の移動に伴って低下するが、シール溝28内に供給される油圧によりシール材29が変形し、その変形による緊迫力がシール材29に発生する。その結果、第1ピストン21の第2円筒部25と内周面52との間を良好に封止可能な緊迫力をシール材29に確保することができ、第2円筒部25と内周面52との間からの油の漏れを抑制することができる。
油室31内から油圧が解放されると、第1リターンスプリング42の付勢力により、第1ピストン21がクラッチドラム11側に移動し始める。油室31内の油圧が解放されているので、油圧によるシール材29の変形がなくなる。その結果、シール材29が有する緊迫力は、シール材29がシール溝28と内周面52との間で圧縮されることにより有する緊迫力のみに低下する。そのため、第1リターンスプリング42の付勢力により、第1ピストン21をクラッチドラム11側に良好に移動させることができる。よって、第1ピストン21がクラッチプレート11を押圧しない位置に良好に戻るので、クラッチプレート11の焼き付きの発生を抑制することができる。
図10は、本発明の他の実施形態に係る摩擦クラッチ61の要部を示す断面図である。図10において、図5に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号が付された部分の説明を省略する。
図10に示される摩擦クラッチ61では、クラッチドラム11がガイド62を円板部13と一体的に有している。ガイド62は、回転中心線Cを中心とする円筒状をなし、円板部13から第1ピストン21の第2円筒部25と第2ピストン22の外周部26との間に延出している。
第1ピストン21の第2円筒部25の内周面には、シール溝63が全周にわたって形成されている。シール溝63には、シール材64が嵌入されている。シール材64は、たとえば、Dリングからなる。シール溝63は、シール溝28よりも円板部13側に位置し、シール材64は、第1ピストン21の位置にかかわらず、ガイド62の外周面と常に接触している。これにより、第1ピストン21とガイド62との間は、シール材64によって、常に封止されている。
なお、第2円筒部25の内周面におけるシール溝63よりも円板部13側の部分とガイド62との間には、隙間が生じている。
第2ピストン22の外周部26に設けられたシール材51は、第2ピストン22の位置にかかわらず、ガイド62の内周面と常に接触している。これにより、第2ピストン22とガイド62との間は、シール材51によって、常に封止されている。
第1ピストン21とガイド62との間がシール材64により封止され、第2ピストン22とガイド62との間がシール材51により封止されることにより、油室31は、ガイド62により第1ピストン21側の第1油室311と第2ピストン22側の第2油室312とに分断されている。
そして、ガイド62には、複数の連通孔65が貫通形成されている。複数の連通孔65は、周方向に間隔を空けて配置され、各連通孔65は、第1ピストン21が円板部13に最も近接した位置に位置するときにも、シール材64よりも円板部13側に位置している。これにより、第1油室311と第2油室312とは、連通孔65を介して連通している。
第1ピストン21の第2円筒部25の内周面に沿って円筒状のガイド62が設けられているので、第2円筒部25がガイド62に沿うことにより、第1ピストン21が回転中心線方向に対して傾くことを抑制できる。第1ピストン21の傾きが抑制されるので、第2ピストン22が大きく傾くことを抑制でき、クラッチプレート16の焼き付きやクラッチプレート16に付与される押圧力の変動の発生を抑制できる。
また、ガイド62が油室を第1ピストン21側の第1油室311と第2ピストン22側の第2油室312とに分断するように設けられていても、ガイド62には、第1油室311と第2油室312とを連通する連通孔65が形成されているので、たとえば、第2油室312に供給される油圧を連通孔65を通して第1油室311に供給することができ、第1油室311の油圧を連通孔65を通して第2油室312に抜き取ることができる。
ガイド62が設けられず、第1ピストン21と第2ピストン22との間にその間を封止するシール材51が設けられる構成では、第1ピストン21の傾きがシール材51を介して第2ピストン22に伝わり、第2ピストン22が大きく傾くおそれがある。第1ピストン21とガイド62との間および第2ピストン22とガイド62との間にそれぞれシール材64,51が設けられる構成では、たとえ第1ピストン21が回転中心線方向に対して傾いても、その傾きがシール材64,51を介して第2ピストン22に伝達されることを抑制できる。
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、第1ピストン21は、受圧面積が小さいので、第1リターンスプリング42を省略して、摩擦クラッチ1が解放される際に、シール材29の復元力により、クラッチドラム11側に移動させることも可能である。第1リターンスプリング42の省略により、摩擦クラッチ1の構成を簡素化することができ、摩擦クラッチ1のコストを低減させることができる。
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1 摩擦クラッチ
11 クラッチドラム
16 クラッチプレート
21 第1ピストン
22 第2ピストン
25 第2円筒部(第2対向部、円筒部)
27 下端部(第1対向部)
29 シール材
31 油室
42 第1リターンスプリング(第1付勢部材)
43 第2リターンスプリング(第2付勢部材)
52 内周面
53 段差
54 傾斜
62 ガイド
65 連通孔
C 回転中心線
11 クラッチドラム
16 クラッチプレート
21 第1ピストン
22 第2ピストン
25 第2円筒部(第2対向部、円筒部)
27 下端部(第1対向部)
29 シール材
31 油室
42 第1リターンスプリング(第1付勢部材)
43 第2リターンスプリング(第2付勢部材)
52 内周面
53 段差
54 傾斜
62 ガイド
65 連通孔
C 回転中心線
Claims (4)
- クラッチプレートと、
前記クラッチプレートの回転中心線方向に移動可能に設けられ、前記回転中心線方向の一方側から前記クラッチプレートを押圧するための第1ピストンと、
前記回転中心線方向に移動可能に設けられて、前記一方側から前記第1ピストンを介して前記クラッチプレートを押圧するための第2ピストンと、
前記第1ピストンおよび前記第2ピストンに対して前記一方側に設けられ、油圧が供給される油室を前記第1ピストンおよび前記第2ピストンとの間に形成するクラッチドラムと、
前記第1ピストンを前記一方側に弾性的に付勢する第1付勢部材と、
前記第1付勢部材よりも大きい付勢力で前記第2ピストンを前記一方側に弾性的に付勢する第2付勢部材とを含む、摩擦クラッチ。 - 前記第1ピストンは、前記第2ピストンの外周部に対して前記回転中心線方向に対向する第1対向部と、前記第2ピストンの外周部に対して前記回転中心線方向と直交する回転径方向に対向する第2対向部とを有する、請求項1に記載の摩擦クラッチ。
- 前記第1ピストンと前記クラッチドラムとの間を封止するシール材をさらに含み、
前記第1ピストンが前記クラッチプレートを押圧していない状態での前記シール材の緊迫力が相対的に大きく、前記第1ピストンが前記一方側に移動するときの前記シール材の緊迫力が相対的に小さくなるように、前記クラッチドラムにおける前記シール材が当接する面に、段差または傾斜が設けられている、請求項1または2に記載の摩擦クラッチ。 - 前記第1ピストンは、前記回転中心線を中心線とする円筒状の円筒部を有しており、
前記クラッチドラムと一体的に設けられ、前記第1ピストンの前記円筒部の内周面に沿った円筒状をなし、前記油室を前記円筒部に付与される油圧が供給される第1油室と前記第2ピストンに付与される油圧が供給される第2油室とに分断するガイドをさらに含み、
前記ガイドには、前記第1油室と前記第2油室とを連通する連通孔が貫通して形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の摩擦クラッチ。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014202674 | 2014-09-30 | ||
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Publication Number | Publication Date |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
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JP (1) | JP2016070489A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020197295A (ja) * | 2019-06-05 | 2020-12-10 | 株式会社パイオラックス | バネ組立体 |
KR20230153140A (ko) * | 2022-04-28 | 2023-11-06 | 현대트랜시스 주식회사 | 차량용 자동변속기 |
-
2015
- 2015-06-30 JP JP2015130681A patent/JP2016070489A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020197295A (ja) * | 2019-06-05 | 2020-12-10 | 株式会社パイオラックス | バネ組立体 |
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KR102639718B1 (ko) * | 2022-04-28 | 2024-02-23 | 현대트랜시스 주식회사 | 차량용 자동변속기 |
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