JP2013204567A - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固定スクロール12と、旋回スクロール24と、偏心軸部19を備えた回転軸14と、偏心軸部19の外周に嵌合されるドライブブシュ20と、旋回スクロール24に形成され、ドライブブシュ20が軸受23を介して回転自在に嵌挿されるボス部27と、駆動機構収容空間と、を備え、圧縮室Sが形成されるスクロール圧縮機10である。軸受23はすべり軸受であり、回転軸14の遠心力により開閉可能な開閉弁を備え、駆動機構収容空間は、開閉弁により、上流側空間29と下流側空間51に区画されており、旋回スクロール24は、圧縮室Sと上流側空間29との間を連通する旋回スクロール側連通路48を備え、開閉弁は、設定回転数以上の駆動時に生じる遠心力により開き、上流側空間29と下流側空間51を連通させる。
【選択図】 図2
Description
スクロール圧縮機は、固定スクロールと旋回スクロールを噛み合わせて、圧縮室としての密閉空間を形成しており、旋回スクロールの旋回による圧縮室の容積減少により冷媒の圧縮を行う。
スクロール圧縮機は、車両に搭載される空調装置の冷凍回路の一部を構成する圧縮機として用いる場合がある。
スクロール圧縮機は、ピストン式圧縮機等に比較すると、回転数が高くなっても体積効率の低下が小さいという特徴がある。
このため、例えば、車両搭載のエンジンの駆動と常に連動して駆動されるスクロール圧縮機の場合、冷房負荷が小さい環境ではスクロール圧縮機が高回転数で駆動されると冷房能力が過大となるおそれがある。
冷房能力が過大となると、スクロール圧縮機の動力が増大するとともに吐出温度が高くなりスクロール圧縮機の信頼性が低下する。
特許文献1に開示された可変容量式スクロール型圧縮機では、固定スクロールの固定基板部に、固定スクロールと旋回スクロールとを係合して形成する一対の圧縮室のうち、一方の圧縮室のみと吸入室とを連通させるバイパスポートが形成されている。
そして、バイパスポートを開閉するスプール弁体と電磁弁を有する圧力調整手段を備え、スプール弁体と圧力調整手段にてバイパスポートを開閉することで吐出容量を変化させる。
これにより、可変容量動作時には、一対の圧縮室における一方の圧縮室内の冷媒のみがバイパスポートを介して吸入室に流れる。
このため、構造が複雑となるほか、部品点数の増大を招くという問題がある。
また、従来では、高回転数でのスクロール圧縮機駆動時における冷房能力過大の問題を解決するために、スクロール圧縮機が高回転数で駆動されるときに体積効率を積極的に低下させるという技術思想は着目されていなかった。
開閉弁が上流側空間と下流側空間を連通することにより、圧縮室の冷媒の一部は旋回スクロール側連通路、上流側空間を通じて下流側空間へ流出する。
圧縮室から下流側空間へ冷媒の一部が流出するため体積効率が低下して冷房能力が低下する。
本発明は、遠心力により開く開閉弁を備えた構成とし、スクロール圧縮機の設定回転数に基づいて上流側空間と下流側空間を連通することができる。
この場合、設定回転数より低い回転数での駆動時又は駆動停止時において、ドライブブシュ側連通路を開閉弁により閉じることができる。
この場合、弁体をボール弁とすることにより、ボール弁と付勢部材を組み合わせた簡素な構造の開閉弁を実現することができる。
この場合、弁体をスプール弁とすることにより、スプール弁と付勢部材を組み合わせた簡素な構造の開閉弁を実現することができる。
また、弁体をスプール弁とする開閉弁は開度を調整することができ、回転数に応じて体積効率を低下させることができる。
この場合、ドライブブシュにドライブブシュ側連通路を形成して開閉弁を設けるだけでよく、ドライブブシュを加工するだけで済む。
この場合、圧縮室から上流側空間へ流出した冷媒は、ボス部側通路、軸受側通路および偏心部側通路が連通するタイミングにおいて、ドライブブシュ側連通路およびボス部側通路、軸受側通路を通じて下流側空間部へ流出させることができる。
下流側空間部側となるドライブブシュ側連通路の開口をドライブブシュに設けることができない場合でも、設定回転数以上により駆動されるとき、ボス部から冷媒を流出させて体積効率の低下を図ることができる。
以下、第1の実施形態に係るスクロール圧縮機について図面を参照して説明する。
本実施形態のスクロール圧縮機は、車両に搭載される車載用空調装置の冷凍回路の一部を構成する圧縮機である。
第1ハウジング11の内部には、回転軸14が軸受15を介して回転自在に支持されており、回転軸14は軸心Pを中心に回転可能である。
回転軸14は、軸受15に支持される支持軸部16から第1ハウジング11の外側へ突出する入力軸部17を備えている。
第1ハウジング11には入力軸部17が挿通される貫通孔18が形成されている。
入力軸部17にはプーリー(図示せず)が取り付けられており、プーリーはベルト(図示せず)を介して外部駆動源であるエンジンEGの動力伝達を受けると回転軸14を回転する。
従って、回転軸14の回転数はエンジンEGの回転数に応じて変動する。
偏心軸部19の軸心Qは回転軸14の軸心Pに対して偏心した位置に設定されており、回転軸14が回転すると偏心軸部19は回転軸14の軸心Pに対して偏心して回転する。
偏心軸部19の外周には、略筒状のドライブブシュ20が相対回動可能に嵌合されている。
ドライブブシュ20は、偏心軸部19が挿通された筒部21と、筒部21から径方向に延在して一体形成されたバランスウエイト部22を有している。
バランスウエイト部22は回転軸14の回転による偏心軸部19およびドライブブシュ20の筒部21の偏心回転による回転のアンバランスを調整する。
図2に示すように、ドライブブシュ20の端面に係合されたサークリップ19Aにより、ドライブブシュ20の軸心Q方向の移動が規制されている。
旋回スクロール24は、円板状の旋回側基板25と、渦巻き状の旋回側壁体26と、ドライブブシュ20が支持されるボス部27を備えている。
旋回側基板25の面は、軸心Pに対して直角に配置されており、旋回側基板25における固定スクロール12側の面から渦巻き状の旋回側壁体26が突出して形成されている。
旋回側壁体26の基部は旋回側基板25と接続され、旋回側壁体26の先端部は固定スクロール12と対向する。
旋回側壁体26は軸心Pと平行な壁面を有しており、旋回側壁体26の先端部における先端面に形成された溝にはシール部材28が装着されている。
駆動機構収容空間は、後述するドライブブシュ側連通路52の上流側に区画形成される上流側空間29と、ドライブブシュ側連通路52の下流側に区画形成される下流側空間51を有する。
駆動機構収容空間は、旋回スクロール24を駆動する機構の要素である回転軸14の偏心軸部19と、ドライブブシュ20と、軸受23が収容されている空間でもある。
ボス部27は、旋回側基板25の偏心軸部19と対向する面の中心部に形成されており、軸受23を介して嵌挿されたドライブブシュ20を回転自在に支持する。
ボス部27の内部には、偏心軸部19の端部、ドライブブシュ20、軸受23および旋回側基板25により駆動機構収容空間の上流側空間29が区画形成されている。
なお、ボス部27の内部とは、ボス部27を形成する筒状体の内周側の空間である。
上流側空間29は、ほぼ密閉された空間である。
本実施形態の軸受23は複数のすべり軸受から構成されている。
図2に示すように、軸受23は、ボス部27の内周面に圧入により固定される第1すべり軸受30と、ドライブブシュ20に圧入により固定される第2すべり軸受31から構成されている。
第1すべり軸受30および第2すべり軸受31は筒状のブシュ軸受である。
第1すべり軸受30の内周面と第2すべり軸受31の外周面は互いに摺動可能であり、第1すべり軸受30の内周面および第2すべり軸受31の外周面は摺接面である。
ピン32と近接して別のピン33が第1ハウジング11に圧入により固定されており、ピン33の軸心はピン32の軸心と平行である。
これらのピン32、33は、リング部材34が有する円孔に挿入されており、ピン32、33、リング部材34は、偏心軸部19の軸心Qを中心とする旋回スクロール24の回転(自転)を防止する自転防止機構を構成する。
このため、回転軸14が回転するとき、旋回スクロール24は偏心軸部19の軸心Qを中心とする回転(自転)を行うことなく、軸心Pの周囲を旋回する。
つまり、旋回スクロール24は軸心Pの周囲を非自転状態にて旋回可能に設けられている。
固定側基板35の面は、軸心Pに対して直角に配置されており、固定側基板35における旋回スクロール24側の面から渦巻き状の固定側壁体36が突出して形成されている。
固定側壁体36は軸心Pと平行な壁面を有しており、図2に示すように、固定側壁体36の先端面に形成された溝にはシール部材38が装着されている。
固定スクロール12の固定側基板35の中心部には、吐出ポート40が形成されており、圧縮された冷媒は吐出ポート40から吐出される。
固定側基板35と第2ハウジング13との間には、吐出ポート40と連通する吐出室41が形成されている。
吐出室41内において吐出ポート40を開閉するリード式の吐出弁42と、吐出弁42の最大開度を規定するリテーナ43がボルト(図示せず)により固定側基板35に固定されている。
第2ハウジング13の内部には吐出室41と連通する吐出通路44が形成されており、吐出通路44は外部冷媒回路と接続されている。
吐出通路44を冷媒が通過するとき、冷媒に含まれている潤滑油がオイルセパレータ45により分離され、分離された潤滑油は吐出室41の下部に形成された貯油室46に貯留される。
吐出通路44と貯油室46との間の通路には潤滑油中の異物を取り除くフィルタ47が設けられている。
貯油室46に貯留された潤滑油は図示しない通路を通り吸入口39に導入される。
図3に示すように、吐出ポート40を挟んで形成される一対の圧縮室Sが形成され、一方の圧縮室Sと他方の圧縮室Sの容積は同一である。
圧縮室Sの容積は、旋回スクロール24の旋回に伴って減少し、容積減少により圧縮室S内の冷媒が圧縮される。
旋回スクロール側連通路48は、圧縮室Sと上流側空間29を連通する通路であり、旋回スクロール24に形成されている。
ドライブブシュ側連通路52は、上流側空間29と下流側空間51を連通し、ドライブブシュ20に形成されている。
図2に示すように、旋回スクロール24の旋回側基板25には、圧縮室Sと上流側空間29を連通する旋回スクロール側連通路48が形成されている。
旋回スクロール側連通路48は、圧縮室S内の潤滑油を含む冷媒を上流側空間29へ供給するための通路である。
旋回スクロール側連通路48の圧縮室S側の開口49は、旋回側基板25における外周側の旋回側壁体26寄りの位置に形成されており、外周側の旋回側壁体26の基部と隣接している。
旋回スクロール側連通路48の上流側空間29側の開口50は、旋回側基板25におけるボス部27の基部に隣接して形成されており、軸受23の端面と接近した位置に形成されている。
第1ハウジング11内における回転軸14の支持軸部16が支持される下流側空間51は軸封シールGにより密封されている。
第1ハウジング11内の下流側空間51および上流側空間29は吸入圧の雰囲気であり、圧縮室Sの吸入圧よりも高圧の冷媒は旋回スクロール側連通路48を通り、上流側空間29へ流出する。
図2に示すように、ドライブブシュ20にドライブブシュ側連通路52が形成されている。
ドライブブシュ20の端面には、ドライブブシュ側連通路52の上流側空間29側の開口53が形成されている。
図2、図4に示すように、ドライブブシュ20には、開口53から軸心Q方向へ穿孔された第1ブシュ孔54と、第1ブシュ孔54と連通し、外周面から内周面に貫通する第2ブシュ孔56が設けられている。
第2ブシュ孔56における外周面側の外孔部57の孔径は、内周面側の内孔部58の孔径より大きく設定され、外孔部57と内孔部58との間はテーパー面が形成されている。
ドライブブシュ20には、外孔部57から軸受15側へ向けて軸心方向に貫通する第3ブシュ孔59が形成されている。
ドライブブシュ20の軸受15側の端面60には、ドライブブシュ側連通路52の下流側空間51側の開口61が形成されている。
ボール弁62は第2ブシュ孔56の内孔部58と対向して設けられ、コイルばね63はボール弁62と軸受23との間に設けられている。
このため、ボール弁62はコイルばね63の付勢力を受けてテーパー面に当接して第2ブシュ孔56の内孔部58を閉じるように設けられ、ボール弁62およびコイルばね63は開閉弁を構成する。
このように、本実施形態では、ドライブブシュ側連通路52および開閉弁の形成位置をドライブブシュ20としている。
ボール弁62は、設定回転数以上でスクロール圧縮機10が駆動されるとき、遠心力を受けてコイルばね63の付勢力に対抗して径方向外周側へ変位し、第2ブシュ孔56の内孔部58を開く。
従って、ボール弁62を遠心力と反対方向へ付勢するコイルばね63のばね定数は、設定回転数以上のときに遠心力より小さいばね力となるように設定される。
駆動時において冷房能力が過大となる回転数を設定回転数とすることが好ましい。
このように、本実施形態では、ボール弁62およびコイルばね63の構成による開閉弁は、回転軸14の遠心力により開閉可能である。
また、駆動機構収容空間は、この開閉弁により上流側空間29と下流側空間51に区画されていると言える。
外部駆動源の動力が回転軸14に伝達され、回転軸14の回転により偏心軸部19と連結された旋回スクロール24が軸心Pの周囲を旋回する。
このとき、ピン32、33とリング部材34が旋回スクロール24の軸心を中心とする回転(自転)を防止し、旋回スクロール24は偏心軸部19に対して自転することなく、軸心Pの周囲を非自転状態で旋回する。
このため、吸入口39を通じて外周部側から圧縮室Sに導入された冷媒は、圧縮室Sの体積縮小により圧縮されて高圧となり、吐出ポート40から吐出弁42を開いて吐出室41へ吐出される。
吐出室41に吐出された冷媒は吐出通路44に導入され、吐出通路44に設けたオイルセパレータ45は冷媒に含まれる潤滑油を冷媒から分離する。
分離後の冷媒ガスは外部冷媒回路へ吐出され、分離された潤滑油はフィルタ47を通過して貯油室46に貯留される。
スクロール圧縮機10が設定回転数より低い回転数にて運転される状態では、ボール弁62の遠心力よりもコイルばね63の付勢力が勝っているため、ボール弁62は内孔部58を閉じたままである。
圧縮室Sの冷媒の一部が旋回スクロール側連通路48を通じて上流側空間29へ流出しても、ドライブブシュ側連通路52が閉じられた状態にあることから、ドライブブシュ側連通路52を通じて冷媒が下流側空間51へ流出することはない。
スクロール圧縮機10が、設定回転数より低い回転数にて運転される場合、空調装置の冷房能力は過大とならない状態にあり、体積効率が低下することなくスクロール圧縮機10は駆動される。
なお、ボール弁62がドライブブシュ側連通路52を閉じているときは、上流側空間29へ流出した冷媒に含まれる潤滑油は、上流側空間29やドライブブシュ側連通路52におけるボール弁62より上流側に貯留される。
つまり、ボール弁62およびコイルばね63の構成による開閉弁は遠心力を受けて開き、上流側空間29と下流側空間51を連通させる。
このとき、ドライブブシュ側連通路52が開いた状態となることから、圧縮室Sから旋回スクロール側連通路48を通じて上流側空間29へ流出した冷媒は、ドライブブシュ側連通路52を通じて下流側空間51へ流出する。
これにより、スクロール圧縮機10の体積効率は低下し、設定回転数以上の回転数での運転時における空調装置の冷房能力過大が抑制される。
なお、スクロール圧縮機10が設定回転数以上の回転数にて運転される状態から、設定回転数より低い回転数にて運転される状態となると、ボール弁62の遠心力よりもコイルばね63の付勢力が勝ってボール弁62は径方向内周側へ変位し内孔部58を閉じる。
なお、下流側空間51へ流出した冷媒に含まれる潤滑油は、下流側空間51における軸受15やピン32、33およびリング部材34等の摺動部の潤滑を行う。
(1)スクロール圧縮機10が設定回転数以上により駆動されるとき、ボール弁62はコイルばね63の付勢力に勝る遠心力を受けてドライブブシュ側連通路52を開く。ボール弁62がドライブブシュ側連通路52を開くことにより、圧縮室Sの冷媒の一部は旋回スクロール側連通路48、上流側空間29およびドライブブシュ側連通路52を通じて第1ハウジング11内の下流側空間51へ流出する。圧縮室Sから下流側空間51へ冷媒の一部が流出するため、スクロール圧縮機10の体積効率が低下して空調装置の冷房能力が低下する。本実施形態によれば、スクロール圧縮機10の設定回転数に基づいてドライブブシュ側連通路52を開閉することができる。スクロール圧縮機10が設定回転数以上の回転数にて駆動されるとき、空調装置の冷房能力過大を抑制することができる。
(2)スクロール圧縮機10の回転数が高くなると、吐出冷媒流量が増大する。冷房能力(圧縮比)はスクロール圧縮機10の圧縮機構の形状等によって決まっているが、吐出冷媒流量の増大により、駆動時の冷媒能力が圧縮機構の形状等によって決まる冷房能力を越えて過大となる。冷房能力が過大となると、吐出温度の異常上昇によりスクロール圧縮機10の信頼性が低下したり、動力上昇により効率が低下したりする。本実施形態によれば、設定回転数に基づいてドライブブシュ側連通路52を開閉することができ、回転数に応じて冷房能力を低下させることができるため、冷房能力過大を抑制できる。
(3)ボール弁62およびコイルばね53が設けられるから、設定回転数より低い回転数での駆動時又は駆動停止時において、ドライブブシュ側連通路52をボール弁62により閉じることができる。また、ボール弁62とコイルばね63を組み合わせた簡素な構造の開閉弁を実現することができる。
(4)軸受23がすべり軸受であることから、軸受23の摺接面における隙間はころがり軸受と比較すると狭い。このため、圧縮室Sと上流側空間29が旋回スクロール側連通路48により連通しても、ボール弁62がドライブブシュ側連通路52を閉じた状態での上流側空間29の気密性が高い。その結果、ドライブブシュ側連通路52を閉じた状態においてスクロール圧縮機10の体積効率低下を抑制することができる。また、旋回スクロール側連通路48に開閉手段や絞りを設ける必要がない。
(6)本実施形態のスクロール圧縮機10は、遠心力を受けてドライブブシュ側連通路52を開くボール弁62をドライブブシュ20に設けている。このため、遠心力により開閉する開閉弁を回転軸14の自転する部位に設けた場合と比較すると、開閉弁が回転の中心からより離れた位置となり、公転するドライブブシュ20は自転する部位よりも大きな遠心力を得ることができる。従って、ボール弁62へ遠心力をより効果的に作用させることができる。
次に、第2の実施形態に係るスクロール圧縮機について説明する。
本実施形態のスクロール圧縮機は、ドライブブシュ側連通路および開閉弁の構成が第1の実施形態と異なる。
本実施形態では、第1の実施形態と共通する要素については、第1の実施形態の説明を援用し、符号を共通して用いる。
図5に示すように、ドライブブシュ側連通路71は、ドライブブシュ20に形成された第1ブシュ孔54、第2ブシュ孔72および第3ブシュ孔75により構成されている。
第2ブシュ孔72における外周面側の外孔部73の孔径は、内周面側の内孔部74の孔径より大きく設定されている。
ドライブブシュ20には、外孔部73から軸受15側へ向けて軸心方向に貫通する第3ブシュ孔75が形成されている。
ドライブブシュ20の軸受15側の端面60には、ドライブブシュ側連通路71の下流側空間51側の開口76が形成されている。
スプール弁77は円柱状であって、外孔部73においてドライブブシュ20と摺接し、ドライブブシュ20の径方向に往復移動可能である。
コイルばね78はスプール弁77と軸受23との間に設けられている。
このため、スプール弁77はコイルばね78の付勢力を受けて第2ブシュ孔72の内孔部74を閉じるように設けられ、スプール弁77およびコイルばね78は開閉弁を構成する。
このように、本実施形態では、ドライブブシュ側連通路71および開閉弁の形成位置をドライブブシュ20としている。
スプール弁77は、設定回転数以上でスクロール圧縮機70が駆動されるとき、遠心力を受けてコイルばね78の付勢力に対抗して径方向外周側へ変位し、第2ブシュ孔72の内孔部74を開く。
つまり、スプール弁77およびコイルばね78の構成による開閉弁は遠心力を受けて開き、上流側空間29と下流側空間51を連通させる。
従って、コイルばね78のばね定数は、設定回転数以上のときに遠心力より小さいばね力となるように設定される。
駆動時において冷房能力が過大となる回転数を設定回転数とすることが好ましい。
スプール弁77の変位量に応じてドライブブシュ側連通路71の開度が調整され、これにより冷媒の流量が変動する。
つまり、スプール弁77は開度調整弁として機能する。
さらに、本実施形態のスクロール圧縮機70では、設定回転数以上の回転数にて駆動されるとき、回転数に応じてスプール弁77の変位量が変動されるから、ドライブブシュ側連通路71を通る冷媒流量が調整され、回転数増減に比例した体積効率の低下を図ることができる。
つまり、スクロール圧縮機70が設定回転数以上の回転数で運転される場合でも、低い回転数では体積効率の低下を小さくし、高い回転数では体積効率の低下を大きくすることができる。
この変形例によれば、第2の実施形態と同等の作用効果を得ることができるほか、ドライブブシュ20に通路を設ける加工箇所がより少なくなるため、製作コストの低減を図ることができる。
次に、第3の実施形態に係るスクロール圧縮機について説明する。
本実施形態のスクロール圧縮機は、ドライブブシュ側連通路および開閉弁の構成が第1の実施形態と異なる。
本実施形態では、第1の実施形態と共通する要素については、第1の実施形態の説明を援用し、符号を共通して用いる。
図7に示すように、本実施形態のドライブブシュ側連通路91は、ドライブブシュ20の第1ブシュ孔54および第2ブシュ孔92と、により構成されている。
第2ブシュ孔92は、第1ブシュ孔54と連通するように径方向に形成された孔であり、外周面側の外孔部93の孔径は、内周面側の内孔部94の孔径より大きく設定されている。
第2すべり軸受31には、第2ブシュ孔92と連通する径方向の通孔95が形成されている。
図7、図8に示すように、第1すべり軸受30には、軸方向において通孔95と対向可能な位置に径方向に貫通する通孔96が形成されており、ボス部27には通孔96と連通する径方向のボス孔97が形成されている。
つまり、ドライブブシュ側連通路91は軸受側通路と連通し、軸受側通路およびボス部側通路を介して上流側空間29と下流側空間51とを連通する。
ボール弁62は外孔部93において内孔部94と対向して設けられ径方向に往復移動可能である。
コイルばね63はボール弁62と軸受23との間に設けられている。
このため、ボール弁62はコイルばね63の付勢力を受けて第2ブシュ孔92の内孔部94を閉じるように設けられ、ボール弁62およびコイルばね63は開閉弁を構成する。
このように、本実施形態では、ドライブブシュ側連通路91および開閉弁の形成位置をドライブブシュ20としている。
従って、コイルばね63のばね定数は、設定回転数以上のときに遠心力より小さいばね力となるように設定される。
駆動時において冷房能力が過大となる回転数を設定回転数とすることが好ましい。
ボール弁62が内孔部94を開く状態において、第2すべり軸受31の通孔95と第1すべり軸受30の通孔96が対向したとき、上流側空間29の冷媒はドライブブシュ側連通路91、通孔95、96およびボス孔97を通じて下流側空間51へ流出される。
なお、ボール弁62が内孔部94を開く状態であっても、第2すべり軸受31の通孔95と第1すべり軸受30の通孔96が対向しないとき、ドライブブシュ側連通路91は閉じた状態となり、上流側空間29の冷媒は下流側空間51へ流出されない。
本実施形態では、第2すべり軸受31の通孔95と第1すべり軸受30の通孔96は、回転軸14の回転に従って連通するから、上流側空間29の冷媒は間欠的に下流側空間51へ流出される。
なお、ボス部27のボス孔97および第1すべり軸受30の通孔96を周方向において複数設けてもよく、この場合、より冷媒を多く空間へ流出させることができる。
○ 上記の実施形態では、開閉弁の弁体を球状のボール弁や円柱状のスプール弁としたが、弁体の形状は特に限定されない。設定回転数以上の回転数での駆動時に遠心力を受けてドライブブシュ側連通路を開くことが可能な弁体であればその形状は自由である。
○ 上記の実施形態では、付勢部材としてコイルばねを用いたが、付勢部材はコイルばねに限定されない。例えば、板ばねや皿ばね等の各種ばねや、ゴム材料等により形成された弾性体を付勢部材として用いてもよい。
○ 上記の実施形態では、車両に搭載される車載用空調装置の冷凍回路の一部を構成するスクロール圧縮機として説明したが、車載用空調装置に限定されない。
○ 上記の実施形態では、ドライブブシュは偏心軸部に相対回転可能に嵌合されているとしたが、ドライブブシュは偏心軸部に圧入されてもよい。
11 第1ハウジング
12 固定スクロール
13 第2ハウジング
14 回転軸
15 軸受
16 支持軸部
17 入力軸部
19 偏心軸部
20 ドライブブシュ
23 軸受
24 旋回スクロール
27 ボス部
29 上流側空間
30 第1すべり軸受
31 第2すべり軸受
37 外殻体
39 吸入口
40 吐出ポート
48 旋回スクロール側連通路
49、50 開口(旋回スクロール側連通路)
51 下流側空間
52、71、79、91 ドライブブシュ側連通路
53、61、76 開口(ドライブブシュ側連通路)
54 第1ブシュ孔
56、72、92 第2ブシュ孔
57、73、93 外孔部
58、74、94 内孔部
59、75 第3ブシュ孔
62 ボール弁
63、78 コイルばね
77 スプール弁
80 孔
95、96 通孔
97 ボス孔
EG エンジン
P、Q 軸心
S 圧縮室
Claims (6)
- ハウジングと、
前記ハウジングに固定される固定スクロールと、
非自転状態で旋回可能な旋回スクロールと、
前記旋回スクロールへ向けて突出する偏心軸部を備え、前記ハウジングに支持される回転軸と、
前記偏心軸部の外周に嵌合されるドライブブシュと、
前記旋回スクロールに形成され、前記ドライブブシュが軸受を介して回転自在に嵌挿されるボス部と、
前記ハウジング内に形成され、前記偏心軸部、前記ドライブブシュおよび前記軸受が収容される駆動機構収容空間と、を備え、
前記固定スクロールおよび前記旋回スクロールにより圧縮室が形成されるスクロール圧縮機において、
前記軸受はすべり軸受であり、
前記回転軸の遠心力により開閉可能な開閉弁を備え、
前記駆動機構収容空間は、前記開閉弁により、上流側空間と下流側空間に区画されており、
前記旋回スクロールは、前記圧縮室と前記上流側空間を連通する旋回スクロール側連通路を備え、
前記開閉弁は、設定回転数以上の駆動時に生じる遠心力により開き、前記上流側空間と前記下流側空間を連通させることを特徴とするスクロール圧縮機。 - 前記開閉弁は、前記ドライブブシュの径方向へ往復移動する弁体と、前記弁体を付勢する付勢部材とを備え、
前記付勢部材は、駆動時に前記弁体が受ける遠心力の方向と反対方向へ前記弁体を付勢することを特徴とする請求項1記載のスクロール圧縮機。 - 前記弁体はボール弁であることを特徴とする請求項2記載のスクロール圧縮機。
- 前記弁体はスプール弁であることを特徴とする請求項2記載のスクロール圧縮機。
- 前記開閉弁は、前記ドライブブシュに形成されたドライブブシュ側連通路に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のスクロール圧縮機。
- 前記ボス部は、前記下流側空間と連通し径方向に貫通するボス部側通路を備え、
前記軸受は、前記ボス部側通路と連通し径方向へ貫通する軸受側通路を備え、
前記ドライブブシュ側連通路は前記軸受側通路と連通することを特徴とする請求項5記載のスクロール圧縮機。
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