JP2013204095A - 希土類元素の回収方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸化した処理対象物を、窒化ホウ素の存在下、1200℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離する工程を少なくとも含んでなる。希土類元素の酸化物、鉄族元素は高温で窒化ホウ素と反応することなくそれぞれそのままで溶融するのに対し、鉄族元素の酸化物は高温で窒化ホウ素と反応することで鉄族元素に還元されて溶融し、結果として、希土類元素の酸化物の溶融物と鉄族元素の溶融物を分離できる。酸化した処理対象物が、処理対象物に対して、熱処理、燃焼処理、アルカリを用いた黒色酸化処理から選択される少なくとも1つである。
【選択図】図3
Description
また、特許文献2では、酸化ホウ素を主成分とするガラススラグとともに処理対象物をるつぼ内で溶解してから凝固させることで、希土類元素だけをガラススラグと反応させて酸化物としてガラススラグ中に抽出する方法が提案されている。この方法は、特許文献1に記載の方法のように酸やアルカリを必要としないことから、特許文献1に記載の方法に比較して工程が簡易であるという点において優れていると考えられる。しかしながら、この方法は、希土類元素と酸化ホウ素の酸化還元反応を利用したものであるので、大気中や水中に放置された磁石スクラップや磁石加工屑などのような酸化した処理対象物の場合、そこに含まれる希土類元素が既に酸化していると、酸化ホウ素との酸化還元反応が起こらないので、希土類元素を酸化物としてガラススラグ中に抽出することができないという制約がある。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、酸化した処理対象物が、処理対象物に対して人為的に酸化処理を行うことで得られたものであることを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項2記載の方法において、酸化処理が、熱処理、燃焼処理、アルカリを用いた黒色酸化処理から選択される少なくとも1つであることを特徴とする。
また、請求項4記載の方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法において、酸化した処理対象物の窒化ホウ素の存在下での熱処理を、窒化ホウ素るつぼを処理容器および窒化ホウ素供給源として用いて行うことを特徴とする。
また、請求項5記載の方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法において、酸化した処理対象物の窒化ホウ素の存在下での熱処理を、銅および/またはニッケルの共存下で行うことを特徴とする。
また、請求項6記載の方法は、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法において、処理対象物の少なくとも一部が500μm以下の粒径を有する粒状ないし粉末状であることを特徴とする。
また、請求項7記載の方法は、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法において、処理対象物がR−Fe−B系永久磁石であることを特徴とする。
酸化鉄(Fe2O3)の粉末と酸化ネオジム(Nd2O3)の粉末のそれぞれ2.00gを、寸法が外径10mm×高さ15mm×肉厚1mmの窒化ホウ素るつぼ(以下同じ)に収容した後、工業用アルゴンガス雰囲気(酸素含有濃度:0.2ppm、流量:10L/分。以下同じ)中で1450℃で1時間熱処理し、窒化ホウ素るつぼを窒化ホウ素供給源として熱処理した際の性状変化を調べた。その結果、酸化鉄については、熱処理後にるつぼ内に金属状物とガラス状物が形成され、るつぼが痩せ細った(図1)。X線回折によってるつぼ内の金属状物の結晶構造解析を行ったところ、この金属状物は鉄であることがわかった(図2:使用装置はリガク社製のRINT2400、以下同じ)。一方、酸化ネオジムについては、熱処理による外観変化は認められず(図1)、X線回折によってるつぼ内の粉末状物の結晶構造解析を行ったところ、この粉末状物は酸化ネオジムであることがわかった(図2)。以上の結果から、希土類元素の酸化物(酸化ネオジム)と鉄族元素の酸化物(酸化鉄)を窒化ホウ素の存在下で熱処理した際の性状変化の違いが明らかとなり、前者は窒化ホウ素と反応しない一方、後者は窒化ホウ素と反応することで鉄族元素に還元されることがわかった。このことは以下に示す実施例において、希土類元素を酸化物として鉄から分離することができるという事実を支持するものであった。
R−Fe−B系永久磁石の製造工程中に発生した約10μmの粒径を有する加工屑(自然発火防止のため水中で7日間保管したもの)に対し、吸引ろ過することで脱水してから大気雰囲気中で火をつけて燃焼処理を行うことで酸化処理を行った。こうして酸化処理を行った磁石加工屑のICP分析結果(使用装置:島津製作所社製のICPV−1017、以下同じ)を表1に示す。また、ガス分析の結果(使用装置:堀場製作所社製のEMGA−550W、以下同じ)、酸化処理を行った磁石加工屑に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の6.5倍であった。
表3に示す組成を有するR−Fe−B系永久磁石粉末2.00g(組成分析はICP分析による)を、酸化処理を行うことなく窒化ホウ素るつぼに収容した後、実施例1と同様にして熱処理した。その後、るつぼを室温まで炉冷したところ、磁石粉末が溶解した後に凝固しただけであって、るつぼ内には2種類の塊状物は形成されず、希土類元素を酸化物として鉄から分離することはできなかった(図3)。
比較例1に記載のR−Fe−B系永久磁石粉末に対し、大気雰囲気中で860℃で2時間熱処理することで酸化処理を行った。こうして酸化処理を行った磁石粉末2.00gを0.5gの銅箔(酸化処理を行った磁石粉末の25mass%)とともに窒化ホウ素るつぼに収容した後、実施例1と同様にして熱処理した。その後、るつぼを室温まで炉冷したところ、るつぼ内には2種類の塊状物が固着して存在した(図4)。塊状物Aと塊状物BのそれぞれをSEM・EDX(日立ハイテクノロジーズ社製のS800、以下同じ)を用いて分析した結果を表4に示す。表4から明らかなように、塊状物Aの主成分は鉄と銅である一方、塊状物Bの主成分は希土類元素と酸素であり、希土類元素を酸化物として鉄と銅から分離することができたことがわかった。塊状物Bの酸素を除いた希土類元素の純度は99.2%であった。なお、塊状物Aが球状であるのは、鉄が銅と合金化して鉄の融点が下がったことに起因すると考えられ、塊状物Bとの分離を容易にした。
実施例1と同様にして酸化処理を行った磁石加工屑に対し、さらに大気雰囲気中で860℃で2時間熱処理することで酸化処理を行った。ガス分析の結果、酸化処理を行った磁石加工屑に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の10.5倍であった。次に、酸化処理を行った磁石加工屑2.00gを0.5gの銅箔(酸化処理を行った磁石加工屑の25mass%)で包み込んで窒化ホウ素るつぼに収容した後、実施例1と同様にして熱処理した。その後、るつぼを室温まで炉冷したところ、るつぼ内には2種類の塊状物が固着して存在した(図4)。なお、塊状物Bは無色透明の上層と緑色の下層の2層構造を有していた。塊状物Aと塊状物BのそれぞれをEPMAを用いて分析した結果を表5に示す。表5から明らかなように、塊状物Aの主成分は鉄と銅である一方、塊状物Bの上層の主成分はホウ素と酸素、下層の主成分は希土類元素と酸素であり、希土類元素を酸化物として鉄と銅から分離することができたことがわかった。塊状物Bの下層の酸素を除いた希土類元素の純度は81.7%であった。なお、塊状物Bの上層と下層は融点の違いを利用して容易に分離することができた(塊状物Bの上層が酸化ホウ素を主成分とするものであることによる)。なお、塊状物Aが球状であるのは、鉄が銅と合金化して鉄の融点が下がったことに起因すると考えられ、塊状物Bとの分離を容易にした。
実施例1で行った燃焼処理のかわりにアルカリを用いた黒色酸化処理を行うことで磁石加工屑に対して酸化処理を行った。具体的には、130℃に加熱した5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に磁石加工屑を1時間浸漬した後、純水で3回洗浄し、自然乾燥した。ガス分析の結果、酸化処理を行った磁石加工屑に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の8.5倍であった。次に、酸化処理を行った磁石加工屑2.00gを0.5gの銅箔(酸化処理を行った磁石加工屑の25mass%)で包み込んで窒化ホウ素るつぼに収容した後、実施例1と同様にして熱処理した。その後、るつぼを室温まで炉冷したところ、るつぼ内には2種類の塊状物が固着して存在した(図4)。塊状物Aと塊状物BのそれぞれをSEM・EDXを用いて分析した結果を表6に示す。表6から明らかなように、塊状物Aの主成分は鉄と銅である一方、塊状物Bの主成分は希土類元素と酸素であり、希土類元素を酸化物として鉄と銅から分離することができたことがわかった。塊状物Bの酸素を除いた希土類元素の純度は82.1%であった。なお、塊状物Aが球状であるのは、鉄が銅と合金化して鉄の融点が下がったことに起因すると考えられ、塊状物Bとの分離を容易にした。
銅箔の代わりにニッケル箔を用いること以外は実施例1と同様にして熱処理した。その後、るつぼを室温まで炉冷したところ、るつぼ内には2種類の塊状物が固着して存在した(図4)。塊状物Aと塊状物BのそれぞれをSEM・EDXを用いて分析した結果を表7に示す。表7から明らかなように、塊状物Aの主成分は鉄とニッケルである一方、塊状物Bの主成分は希土類元素と酸素であり、希土類元素を酸化物として鉄とニッケルから分離することができたことがわかった。塊状物Bの酸素を除いた希土類元素の純度は81.0%であった。なお、塊状物Aが球状であるのは、鉄がニッケルと合金化して鉄の融点が下がったことに起因すると考えられ、塊状物Bとの分離を容易にした。
Claims (7)
- 少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する方法であって、酸化した処理対象物を、窒化ホウ素の存在下、1200℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離する工程を少なくとも含んでなることを特徴とする方法。
- 酸化した処理対象物が、処理対象物に対して人為的に酸化処理を行うことで得られたものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 酸化処理が、熱処理、燃焼処理、アルカリを用いた黒色酸化処理から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項2記載の方法。
- 酸化した処理対象物の窒化ホウ素の存在下での熱処理を、窒化ホウ素るつぼを処理容器および窒化ホウ素供給源として用いて行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
- 酸化した処理対象物の窒化ホウ素の存在下での熱処理を、銅および/またはニッケルの共存下で行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
- 処理対象物の少なくとも一部が500μm以下の粒径を有する粒状ないし粉末状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
- 処理対象物がR−Fe−B系永久磁石であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
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