JP6264195B2 - 希土類元素の回収方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2では、処理対象物に含まれる鉄族元素を酸化することなく希土類元素のみを酸化することによって両者を分離する方法として、処理対象物を炭素るつぼの中で加熱する方法が提案されている。この方法は、特許文献1に記載の方法のように酸やアルカリを必要とせず、また、炭素るつぼの中で処理対象物を加熱することで理論的にるつぼ内の雰囲気が鉄族元素が酸化されることなく希土類元素のみが酸化される酸素分圧に自律的に制御されることから、特許文献1に記載の方法に比較して工程が簡易であるという点において優れていると考えられる。しかしながら、単に処理対象物を炭素るつぼの中で加熱すればるつぼ内の雰囲気が所定の酸素分圧に自律的に制御されて希土類元素と鉄族元素を分離できるのかといえば、現実的には必ずしもそうではない。特許文献2では、るつぼ内の雰囲気の望ましい酸素含有濃度は1ppm〜1%であるとされているが、本質的には雰囲気を制御するための外的操作は必要とされないとある。しかしながら、本発明者らの検討によれば、少なくとも酸素含有濃度が1ppm未満の場合には希土類元素と鉄族元素は分離できない。従って、炭素るつぼの中で処理対象物を加熱すれば、理論的にはるつぼ内の雰囲気が鉄族元素が酸化されることなく希土類元素のみが酸化される酸素分圧に自律的に制御されるとしても、現実的にはるつぼ内を酸素含有濃度が1ppm以上の雰囲気に人為的に制御する必要がある。こうした制御は、特許文献2にも記載されているように酸素含有濃度が1ppm以上の不活性ガスをるつぼ内に導入することで行うことができるが、工業用不活性ガスとして汎用されているアルゴンガスの場合、その酸素含有濃度は通常0.5ppm以下である。従って、酸素含有濃度が1ppm以上のアルゴンガスをるつぼ内に導入するためには、汎用されているアルゴンガスをそのまま用いることはできず、その酸素含有濃度をわざわざ高めた上で用いる必要がある。結果として、特許文献2に記載の方法は、一見工程が簡易に思えるものの実はそうではなく、特許文献1に記載の方法と同様、低コストと簡易さが要求されるリサイクルシステムとして実用化するには困難な側面を有するといわざるを得ない。
(1)酸化処理を行った処理対象物に含まれるホウ素モル濃度が希土類元素のモル濃度の0〜0.50倍であること
(2)950℃〜1300℃の温度で熱処理すること
を満足させて熱処理を行い、得られる熱処理物を水と反応させることで、希土類元素の酸化物を粉末として回収することを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、酸化処理を行った処理対象物の炭素の存在下での熱処理を、炭素るつぼを処理容器および炭素供給源として用いて行うことを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項1記載の方法において、処理対象物の少なくとも一部が500μm以下の粒径を有する粒状ないし粉末状であることを特徴とする。
また、請求項4記載の方法は、請求項1記載の方法において、処理対象物の鉄族元素含量が30mass%以上であることを特徴とする。
また、請求項5記載の方法は、請求項1記載の方法において、処理対象物がR−Fe−B系永久磁石であることを特徴とする。
(1)酸化処理を行った処理対象物に含まれるホウ素モル濃度が希土類元素のモル濃度の0〜0.50倍であること
(2)950℃〜1300℃の温度で熱処理すること
を満足させて熱処理を行い、得られる熱処理物を水と反応させることで、希土類元素の酸化物を粉末として回収することを特徴とするものである。
R−Fe−B系永久磁石の製造工程中に発生した約10μmの粒径を有する磁石加工屑(自然発火防止のため水中で7日間保管したもの)に対し、吸引ろ過することで脱水してからロータリーキルンを用いて燃焼処理することで酸化処理を行った。こうして酸化処理を行った磁石加工屑に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の4.2倍であり、ホウ素モル濃度は希土類元素のモル濃度の0.44倍(0.78mass%)であった。
熱処理温度を1050℃にすること以外は実施例1と同様にして実験を行ったところ、熱処理物として粗い粒子がわずかな力で壊れる程度に接合した単一の塊状物が得られ、この塊状物を水と反応させることで得られた粉末を、デカンテーションを行うことによって分離処理することで、上澄み液から粒径が約2μmの粉末を約0.5g得た。一方、残留液から粒径が約5μmの粉末を約3.0g得た。上澄み液から得られた粉末(水中浮遊粉末:a)と、残留液から得られた粉末(水中沈降粉末:b)を、それぞれSEM・EDX分析した結果を図2(SEM像)と表2に示す。表2から明らかなように、上澄み液から得られた粉末の主成分は希土類元素である一方、残留液から得られた粉末の成分で最も含量が多い成分は鉄であり、磁石加工屑から希土類元素の酸化物を主成分とする粉末が得られることがわかった(希土類元素が酸化物であることは別途に行った標準試料を用いたX線回折分析において念のため確認した)。
実施例1に記載の脱水した磁石加工屑265kgと、R−Fe−B系永久磁石にDyを拡散させるための拡散源として使用済みのDyFe2合金片(磁石由来の軽希土類元素やホウ素などを含み、400μm〜700μm程度の粒径を有するもの)15kgをよく混合し、ロータリーキルンを用いて燃焼処理することで酸化処理を行った。こうして酸化処理を行った磁石加工屑と使用済みのDyFe2合金片の混合物に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の4.2倍であり、ホウ素モル濃度は希土類元素のモル濃度の0.16倍(0.40mass%)であった。熱処理を行う対象物をこの酸化処理を行った磁石加工屑と使用済みのDyFe2合金片の混合物にすることと、熱処理時間を2時間にすること以外は実施例1と同様にして実験を行ったところ、熱処理物として粗い粒子がわずかな力で壊れる程度に接合した単一の塊状物が得られ、この塊状物を水と反応させることで得られた粉末を、デカンテーションを行うことによって分離処理することで、上澄み液から粒径が約2μmの粉末を約1.5g得た。一方、残留液から粒径が約5μmの粉末を約1.7g得た。上澄み液から得られた粉末(水中浮遊粉末:a)と、残留液から得られた粉末(水中沈降粉末:b)を、それぞれSEM・EDX分析した結果を図3(SEM像)と表3に示す。表3から明らかなように、上澄み液から得られた粉末の主成分は希土類元素である一方、残留液から得られた粉末の成分で最も含量が多い成分は鉄であり、磁石加工屑と使用済みのDyFe2合金片の混合物から希土類元素の酸化物を主成分とする粉末が得られることがわかった(希土類元素が酸化物であることは別途に行った標準試料を用いたX線回折分析において念のため確認した)。
実施例3に記載の使用済みのDyFe2合金片5gを、大気中、900℃で10時間焼成することで酸化処理を行った。こうして酸化処理を行った使用済みのDyFe2合金片に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の4.4倍であり、ホウ素モル濃度は希土類元素のモル濃度の0.14倍(0.50mass%)であった。熱処理を行う対象物をこの酸化処理を行った使用済みのDyFe2合金片にすること以外は実施例3と同様にして実験を行ったところ、熱処理物として粗い粒子の集合体が得られ、この粗い粒子の集合体を水と反応させることで得られた粉末を、デカンテーションを行うことによって分離処理することで、上澄み液から粒径が約2μmの粉末を約0.3g得た。一方、残留液から粒径が約0.5mmの粉末を約4.2g得た。上澄み液から得られた粉末(水中浮遊粉末:a)と、残留液から得られた粉末(水中沈降粉末:b)を、それぞれSEM・EDX分析した結果を図4(SEM像)と表4に示す。表4から明らかなように、上澄み液から得られた粉末の主成分は希土類元素である一方、残留液から得られた粉末の成分で最も含量が多い成分は鉄であり、使用済みのDyFe2合金片から希土類元素の酸化物を主成分とする粉末が得られることがわかった(希土類元素が酸化物であることは別途に行った標準試料を用いたX線回折分析において念のため確認した)。
熱処理温度を1050℃にすること以外は実施例4と同様の実験を行うことで、実施例4と同様の結果を得ることができた。
Claims (5)
- 少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する方法であって、処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移して熱処理する際、次の2つの条件、
(1)酸化処理を行った処理対象物に含まれるホウ素モル濃度が希土類元素のモル濃度の0〜0.50倍であること
(2)950℃〜1300℃の温度で熱処理すること
を満足させて熱処理を行い、得られる熱処理物を水と反応させることで、希土類元素の酸化物を粉末として回収することを特徴とする方法。 - 酸化処理を行った処理対象物の炭素の存在下での熱処理を、炭素るつぼを処理容器および炭素供給源として用いて行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
- 処理対象物の少なくとも一部が500μm以下の粒径を有する粒状ないし粉末状であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 処理対象物の鉄族元素含量が30mass%以上であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 処理対象物がR−Fe−B系永久磁石であることを特徴とする請求項1記載の方法。
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