JP2019165118A - 希土類元素のシュウ酸塩を用いた溶媒抽出用塩酸溶液の製造方法 - Google Patents

希土類元素のシュウ酸塩を用いた溶媒抽出用塩酸溶液の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 大気中、700℃未満の温度で焼成した、完全な酸化物になっていない炭酸酸化物を含有する焼成物であっても塩酸に溶解して溶媒抽出用の塩酸溶液を作ることができる方法の提供を可能にする。【解決手段】 希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行う工程1と、工程1で酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下に移して950℃以上の温度で熱処理し、希土類元素の酸化物と鉄族元素を分離する工程2と、工程2で分離された希土類元素の酸化物を塩酸に溶解して塩酸溶液を作る工程3と、工程3で得た塩酸溶液にシュウ酸を加えて希土類元素のシュウ酸塩を沈殿させ、希土類元素のシュウ酸塩と塩酸廃液とを分離する工程4と、工程4で分離された希土類元素のシュウ酸塩を大気中、390℃以上700℃未満の温度で焼成した希土類元素の炭酸酸化物を含有する焼成物を塩酸に溶解して塩酸溶液を作る工程5と、を含む【選択図】図3

Description

本開示は、希土類元素(希土類元素は軽希土類元素と重希土類元素を含む)と鉄族元素を含む処理対象物から作製した希土類元素のシュウ酸塩を用いた溶媒抽出用塩酸溶液の製造方法に関する。
R−T−B系永久磁石(Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含む、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む、Bはホウ素である)は、高い磁気特性を有していることから、今日様々な分野で使用されていることは周知の通りである。このような背景のもと、R−T−B系永久磁石の生産工場では、日々、大量の磁石が生産されているが、磁石の生産量の増大に伴い、製造工程中に加工不良物などとして排出される磁石スクラップや、切削屑や研削屑などとして排出される磁石加工屑などの量も増加している。とりわけ情報機器の軽量化や小型化によってそこで使用される磁石も小型化していることから、加工代比率が大きくなることで、製造歩留まりが年々低下する傾向にある。従って、製造工程中に排出される磁石スクラップや磁石加工屑などを廃棄せず、そこに含まれる金属元素、特に希土類元素をいかに回収して再利用するかが今後の重要な技術課題となっている。また、R−T−B系永久磁石を使用した電化製品などから循環資源として希土類元素をいかに回収して再利用するかについても同様である。本発明者らは、これまでこの技術課題に対して精力的に取り組んできており、その研究成果として、R−T−B系永久磁石などの希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する方法として、処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移し、1150℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離して回収する方法を特許文献1において提案している。
特許文献1において提案されている上記の方法は、低コストと簡易さが要求されるリサイクルシステムとして優れたものであるが、処理対象物が例えばR−T−B系永久磁石の場合、鉄族元素から分離して回収された希土類元素の酸化物は、NdやPrなどの軽希土類元素とDyやTbなどの重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物である。従って、希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する優れた方法が特許文献1によって提案された今、次なる課題は、軽希土類元素と重希土類元素をいかに低コストで分離するかという点にある。
軽希土類元素と重希土類元素を分離する方法として知られている一般的なものは、溶媒抽出法によるものである(例えば特許文献2)。現在のところ、溶媒抽出法は、希土類元素の分離や精製についての主流的な技術として位置づけられている。この溶媒抽出法によって軽希土類元素と重希土類元素を分離するには、希土類元素(軽希土類元素と重希土類元素とが含まれている)を、大気中、700℃以上の高温で焼成して完全な酸化物(例えばNdやDyなど)となし、その希土類元素の酸化物を塩酸に溶解して塩酸溶液を作り、その塩酸溶液を溶媒抽出法に用いていた。つまり、塩酸に溶解するには、大気中、700℃以上の高温で焼成して完全な酸化物にしなければならないと考えられていた(例えば特許文献3)。
国際公開第2013/018710号 特開平2−80530号公報 特開2003−160783号公報
本開示の実施形態は、大気中、700℃未満の温度で焼成した、完全な酸化物になっていない炭酸酸化物を含有する焼成物であっても塩酸に溶解して溶媒抽出用の塩酸溶液を作ることができる方法の提供を可能にする。
本開示の限定的ではない例示的な希土類元素のシュウ酸塩を用いた溶媒抽出用塩酸溶液の製造方法は、
希土類元素(希土類元素は軽希土類元素と重希土類元素を含む)と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行う工程1と、
工程1で酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下に移して950℃以上の温度で熱処理し、希土類元素の酸化物と鉄族元素を分離する工程2と、
工程2で分離された希土類元素の酸化物を塩酸に溶解して塩酸溶液を作る工程3と、
工程3で得た塩酸溶液にシュウ酸を加えて希土類元素のシュウ酸塩を沈殿させ、希土類元素のシュウ酸塩と塩酸廃液とを分離する工程4と、
工程4で分離された希土類元素のシュウ酸塩を大気中、390℃以上700℃未満の温度で焼成した希土類元素の炭酸酸化物を含有する焼成物を塩酸に溶解して塩酸溶液を作る工程5と、を含む。
ある実施形態において、前記工程5における焼成温度が450℃以上700℃未満である。
ある実施形態において、前記工程5における焼成温度が450℃以上600℃未満である。
本開示の実施形態によれば、希土類元素(希土類元素は軽希土類元素と重希土類元素を含む)と鉄族元素を含む処理対象物から、溶媒抽出法によって軽希土類元素と重希土類元素を分離する方法において、焼成処理コストを低減することができるとともに熱エネルギーの削減が可能となる。
実験例1の試料No.1のTG−DTAの結果を示す図である。 実験例1の試料No.1〜8の外観を示す図である。 実験例1の試料No.1〜8のX線回折測定結果を示す図である。 実験例1の試料No.2〜8の焼成物を塩酸に溶解した後の状態を示す写真である。
以下、本開示の実施形態における工程を順次説明する。
工程1:希土類元素(希土類元素は軽希土類元素と重希土類元素を含む)と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行う工程
まず、本開示の実施形態の方法の適用対象となる少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物は、Nd,Pr軽希土類元素とDy,Tbなどの重希土類元素を含む希土類元素と、Fe,Co,Niなどの鉄族元素とを含むものであれば特段の制限はなく、希土類元素と鉄族元素に加えてその他の元素として例えばホウ素などを含んでいてもよい。具体的には、例えばR−T−B系永久磁石(Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含む、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む、Bはホウ素である)などが挙げられるが、とりわけ本開示の実施形態の方法は鉄族元素含量が30mass%以上である処理対象物に好適に適用することができる(例えばR−T−B系永久磁石の場合、その鉄族元素含量は、通常、60mass%〜82mass%である)。処理対象物の大きさや形状は特段制限されるものではなく、処理対象物がR−T−B系永久磁石の場合には製造工程中に排出される磁石スクラップや磁石加工屑などであってよい。処理対象物に対して十分な酸化処理を行うためには、処理対象物は5mm以下の粒径を有する粒状ないし粉末状であることが望ましい(例えば調製の容易性に鑑みれば粒径の下限は1μmが望ましい)。しかしながら、処理対象物の全てがこのような粒状ないし粉末状である必要は必ずしもなく、粒状ないし粉末状であるのは処理対象物の一部であってよい。
本開示の実施形態の方法における処理対象物に対する酸化処理は、処理対象物に含まれる希土類元素を酸化物に変換することを目的とするものである。処理対象物に対する酸化処理によって処理対象物に含まれる鉄族元素が希土類元素とともに酸化物に変換されてもよい。処理対象物に対する酸化処理は、酸素含有雰囲気中で処理対象物を熱処理したり燃焼処理したりすることによって行うことが簡便である。酸素含有雰囲気は大気雰囲気であってよい。処理対象物を熱処理する場合、例えば350℃〜1000℃で1時間〜12時間行えばよい。処理対象物を燃焼処理する場合、例えば自然発火や人為的点火により行えばよい。また、処理対象物に対する酸化処理は、アルカリ水溶液中で処理対象物の酸化を進行させるアルカリ処理によって行うこともできる。アルカリ処理に用いることができるアルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニアなどが挙げられる。また、アルカリ水溶液の濃度としては0.1mol/L〜10mol/Lが挙げられる。処理温度としては60℃〜150℃が挙げられるが、より効果的な酸化処理を行うためには100℃以上が望ましく、より安全性を高めるためには130℃以下が望ましい。処理時間としては30分間〜10時間が挙げられる。処理対象物に対する酸化処理は、単一の方法で行ってもよいし、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。処理対象物に対してこうした酸化処理を行うと、処理対象物に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の1.5倍以上となり、希土類元素の酸化物への変換をより確実なものにすることができる。酸化処理によって処理対象物に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の2.0倍以上になることが望ましい。また、処理対象物に対する酸化処理は、炭素の非存在下で行うことが望ましい。炭素の存在下で処理対象物に対する酸化処理を行うと、処理対象物に含まれる希土類元素が炭素と望まざる化学反応を起こして所望する酸化物への変換が阻害される恐れがあるからである(従ってここでは「炭素の非存在下」は処理対象物に含まれる希土類元素の酸化物への変換が阻害されるに足る化学反応の起因となる炭素が存在しないことを意味する)。
工程2:工程1で酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下に移して950℃以上の温度で熱処理し、希土類元素の酸化物と鉄族元素を分離する工程
次に、酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下に移し、950℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離することができる。これは、酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下に移し、酸化処理を行った処理対象物に対して炭素を供給しながら950℃以上の温度で熱処理すると、酸化処理を行った処理対象物に含まれる希土類元素の酸化物は高温で酸化物のままで溶融するのに対し、鉄族元素は炭素を固溶して合金化して溶融し、また、鉄族元素の酸化物は炭素によって還元された後に炭素を固溶して合金化して溶融し、結果として、希土類元素の酸化物の溶融物と鉄族元素と炭素の合金の溶融物が相溶することなく互いに独立して存在するという本発明者らによって見出された現象に基づくものである。酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下で熱処理する温度を950℃以上に規定するのは、950℃未満であると、希土類元素の酸化物も鉄族元素と炭素の合金も溶融しないからである。酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下で熱処理する温度は1150℃以上が望ましく、1300℃以上がより望ましく、1350℃以上がさらに望ましく、1400℃以上が最も望ましい。なお、熱処理温度の上限は例えばエネルギーコストの点に鑑みれば1700℃が望ましく、1650℃がより望ましく、1600℃がさらに望ましい。熱処理時間は例えば10分間〜3時間が適当である。酸化処理を行った処理対象物に対する炭素の供給源は、グラファイト(黒鉛や石墨)、木炭、コークス(石油コークスなど)、石炭、ダイヤモンド、カーボンブラックなど、どのような構造や形状のものであってもよいが、炭素るつぼを用いて熱処理を行えば、炭素るつぼは処理容器としての役割とともにその表面からの炭素供給源としての役割も果たすので都合がよい(もちろん別個の炭素供給源をさらに添加することを妨げるものではない)。処理容器として炭素るつぼを用いる場合、酸化処理を行った処理対象物の炭素の存在下での熱処理は、アルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気(酸素含有濃度は1ppm未満が望ましい)中や真空(1000Pa未満が望ましい)中で行うことが望ましい。大気雰囲気などの酸素含有雰囲気中で熱処理を行うと、雰囲気中の酸素が炭素るつぼの表面において炭素と反応することで炭酸ガスが発生し、炭素るつぼが炭素供給源としての役割を効率的に果さない恐れがあるからである。なお、用いることができる処理容器は、炭素るつぼに限定されるわけではなく、非炭素製の処理容器、例えばアルミナや酸化マグネシウムや酸化カルシウムなどの金属酸化物や酸化ケイ素でできたセラミックスるつぼ(単一の素材からなるものであってもよいし複数の素材からなるものであってもよい。炭化ケイ素などの炭素元素を含む素材であっても炭素供給源としての役割を果さない素材からなるものを含む)などを用いることもできる。非炭素製の処理容器を用いる場合、処理容器は炭素供給源としての役割を果さないので、処理容器に炭素供給源を添加することによって酸化処理を行った処理対象物を熱処理する。また、非炭素製の処理容器として製鉄のための溶鉱炉、電気炉、誘導炉などを用いるとともに、炭素供給源として木炭やコークスなどを用いれば、酸化処理を行った処理対象物を一度に大量に熱処理することができる。添加する炭素供給源の量は処理対象物に含まれる鉄族元素に対してモル比で1.5倍以上であることが望ましい。添加する炭素供給源の量をこのように調整することで、処理対象物に含まれる鉄族元素が酸化処理によって酸化物に変換されてもその還元を確実なものとして炭素との合金化を進行させることができる。なお、非炭素製の処理容器を用いる場合、酸化処理を行った処理対象物の炭素の存在下での熱処理は、アルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気(酸素含有濃度は1ppm未満が望ましい)中や真空(1000Pa未満が望ましい)中で行ってもよいし、大気雰囲気などの酸素含有雰囲気中で行ってもよい。
以上のようにして酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下で熱処理することで、希土類元素の酸化物と鉄族元素と炭素の合金のいずれもが溶融すると、両者の溶融物は、相溶せず、前者の溶融物は後者の溶融物よりも比重が軽いため、後者の溶融物の表面に浮き上がった状態で存在するようになるので、両者を容易に分離することができる。また、熱処理を行った後に冷却を行うと、希土類元素の酸化物の溶融物と鉄族元素と炭素の合金の溶融物は、それぞれが塊状物を形成して処理容器に固着するので、塊状物の形態で両者を分離することもできる。また、処理容器に固着した希土類元素の酸化物の塊状物と鉄族元素と炭素の合金の塊状物を1350℃以上の温度で熱処理すると、いずれの塊状物も溶融し、後者の溶融物は処理容器の表面に拡散層を形成して展延するのに対し、前者の溶融物は後者の溶融物の表面に浮き上がった状態で存在するようになるので、前者の溶融物を後者の溶融物から容易に分離することができる。また、この現象を利用すれば、希土類元素の酸化物の塊状物と鉄族元素と炭素の合金の塊状物が固着した処理容器を、天地を逆転させた状態で例えばアルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気(酸素含有濃度は1ppm未満が望ましい)中や真空(1000Pa未満が望ましい)中で1350℃以上の温度で熱処理することで(熱処理時間は例えば10分間〜3時間が適当である)、前者の溶融物だけを落下させて後者の溶融物と分離するといったこともできる。
前記工程1及び工程2は、特許文献1に記載の方法に該当する。
工程3:工程2で分離された希土類元素の酸化物を塩酸に溶解して塩酸溶液を作る工程
この工程3で用いる塩酸は、工程2で得た希土類元素の酸化物を溶解することができる濃度や容量で用いることができる。具体的には、例えば、用いる塩酸の濃度は0.5mol/L〜11mol/L(濃塩酸)程度であり、その容量は濃度に応じて希土類元素の酸化物1gに対して1mL〜35mL程度である。溶解温度は、例えば20℃〜85℃であってよい。溶解時間は、例えば1時間〜3日間であってよい。なお、希土類元素の酸化物は、その溶解を効率的に行うために、粒径が1mm以下の粒状ないし粉末状に粉砕して塩酸に溶解することが望ましい。粉砕は粒径が500μm以下になるまで行うことがより望ましい。
工程4:工程3で得た塩酸溶液にシュウ酸を加えて希土類元素のシュウ酸塩を沈殿させ、希土類元素のシュウ酸塩と塩酸廃液とを分離する工程
次に、工程3で得た希土類元素の塩酸溶液にシュウ酸を加えて希土類元素のシュウ酸塩を沈殿させ、希土類元素のシュウ酸塩と塩酸廃液とを分離する。この工程4で用いるシュウ酸は、希土類元素のシュウ酸塩を沈殿させることができる量で用いることができる。具体的には、例えば、3mol/L塩酸40lLにシュウ酸二水和物を82.75kg加えることでシュウ酸塩を沈殿させることができる。沈殿物は公知のろ過手段によってろ過し、希土類元素のシュウ酸塩と塩酸廃液とを分離する。
工程5:工程4で分離された希土類元素のシュウ酸塩を大気中、390℃以上700℃未満の温度で焼成した希土類元素の炭酸酸化物を含有する焼成物を塩酸に溶解して塩酸溶液を作る工程
次に、工程4で分離された希土類元素のシュウ酸塩を大気中、390℃以上700℃未満の温度で焼成した希土類元素の炭酸酸化物を含有する焼成物を塩酸に溶解して塩酸溶液を作製する。前記の通り、従来、溶媒抽出法に供するための希土類元素を溶解した塩酸溶液を準備するには、希土類元素を、大気中、700℃以上の高温で焼成して完全な酸化物(例えばNdやDyなど)にしなければならないと考えられていた。この従来の考え方に基づくと、工程4で分離された希土類元素のシュウ酸塩を大気中、700℃以上で焼成する必要がある。しかし、本発明者らは、鋭意研究の結果、希土類元素のシュウ酸塩を390℃以上700℃未満の温度で焼成した、完全な酸化物になっていない、希土類元素の炭酸酸化物(例えばNdCOなど)を含有する焼成物であっても、十分に塩酸に溶解し、溶媒抽出法に供するための塩酸溶液を準備できることを知見した。焼成温度は450℃以上700℃未満が好ましく、450℃以上600℃未満がより好ましい。後述する実験例に示すように、700℃未満(例えば600℃)では、希土類元素の炭酸酸化物(NdCO)を含むと考えられる不完全な希土類元素の酸化物が得られ、450℃以上600℃未満では希土類元素の酸化物をほとんど含まない希土類元素の炭酸酸化物(NdCO)が得られており、それらはいずれも塩酸に溶解することを確認した。これによって、従来は700℃以上で焼成していたものを700℃未満、好ましくは600℃未満で焼成することが可能となり、焼成処理コストの低減、熱エネルギーの削減が可能となる。処理時間としては1分間〜10時間が挙げられる。
工程5で得た塩酸溶液を用いて溶媒抽出法を実施することにより、軽希土類元素と重希土類元素とを分離することができる。溶媒抽出法は特許文献2に記載の方法など公知の方法を適用することができる。
以下、本開示の実施形態を実験例によって詳細に説明するが、本開示の実施形態は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
実験例1
(工程1)
R−T−B系永久磁石の製造工程中に発生した約10μmの粒径を有する磁石加工屑(自然発火防止のため水中で7日間保管したもの)に対し、吸引ろ過することで脱水してからロータリーキルンを用いて燃焼処理することで酸化処理を行った。こうして酸化処理を行った磁石加工屑のICP分析(使用装置:島津製作所社製のICPV−1017)の結果を表1に示す。
(工程2)
次に、酸化処理を行った磁石加工屑50gとカーボンブラック(東海カーボン社製のファーネスブラック)10gを混合し、カーボンブラック10gを予め底面に敷き詰めた寸法が内径50mm×深さ50mm×肉厚10mmの炭素るつぼ(黒鉛製)に収容した後、電気炉を用い、工業用アルゴンガス雰囲気(酸素含有濃度:0.2ppm、流量:10L/分)中で1450℃まで10℃/分で昇温してから1時間熱処理した。その後、炉内の加熱を停止し、炉内の工業用アルゴンガス雰囲気を維持したまま、炭素るつぼを室温まで炉冷した。炉冷を終了した後、炭素るつぼ内には、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物(塊状物Aと塊状物B)が存在した。塊状物Aと塊状物BのそれぞれのICP分析と酸素分析(堀場製作所社製のEMGA−550W)を行ったところ、塊状物Aの主成分は鉄である一方、塊状物Bの主成分は希土類元素の酸化物であった。塊状物BのICP分析の結果を表2に示す。なお、塊状物Bの主成分である希土類元素の酸化物は、軽希土類元素(Nd,Pr)と重希土類元素(Dy)の複合酸化物ないし酸化物の混合物であることを、別途に行ったX線回折測定(使用装置:ブルカー・エイエックスエス社製のD8 ADVANCE、以下同じ)において確認した。
(工程3)
工程2で得た希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物Bを、瑪瑙製の乳鉢と乳棒で粉砕し、ステンレス製の篩を用いて粒径が125μm未満の粉末を得る操作を複数回行うことで、約1kgの塊状物Bの粉末を調製した。こうして調製した塊状物Bの粉末150gを、濃度が3mol/Lの塩酸1Lに加え、80℃で6時間撹拌した後、残渣をろ過することで、塊状物Bの塩酸溶液を得た。
(工程4)
室温において、ビーカー内の工程3で得た塊状物Bの塩酸溶液1L(希土類元素イオンを合計として約116.8g含有)に、シュウ酸二水和物200gを加え希土類元素のシュウ酸塩を沈殿させた。市販の孔径が1.0μmのPTFE製メンブレンフィルタ(開口部:77mmφ)を用い、沈殿物を含む処理液の全量について、ベッセル内圧を30mbarに固定して吸引濾過を行い、フィルタ上に沈殿物を濾取して、希土類元素のシュウ酸塩と塩酸廃液とに分離した。
(工程5)
分離した希土類元素のシュウ酸塩を、真空中にて60℃で6時間乾燥(試料No.1)、大気中で、300℃(試料No.2)、400℃(試料No.3)、450℃(試料No.4)、500℃(試料No.5)、600℃(試料No.6)、700℃(試料No.7)、800℃(試料No.8)でそれぞれ3時間焼成した。試料No.1のTG−DTA(熱重量・示差熱分析)をリガク社製TG8110Dによって測定した。測定結果を図1に示す。図1において横軸は温度(℃)であり、左縦軸はDTA(μV)、右縦軸はTG(%)の結果を示す。また、試料No.1〜8の外観を図2に示す。各焼成物は、No.1及び2が白色、No.3が薄茶色、No.4及び5がきな粉色、No.6が茶色、No.7が濃い茶色、No.8がさらに濃い茶色の粉末状を呈している。さらに、各焼成物のX線回折測定結果を図3に示す。図3において横軸は回折角度(2θ)、縦軸は回折強度を示す。なお、図3においては含有量の多いNdの挙動のみを示す。
図1、図3から分かる通り、真空中にて60℃で6時間乾燥後はNdのシュウ酸塩(Nd(C3・10HO)であったものが、温度を上昇させ約390℃に到達するまでに脱HOが生じNd(Cが生成される。さらに温度を上昇させ約600℃に到達するまでに脱CO、脱COが生じNdの炭酸酸化物(NdCO)が生成される。そして、700℃未満ではNdの炭酸酸化物(NdCO)を含む不完全なNdの酸化物が生成していると考えられ、800℃を超えると完全なNdの酸化物(Nd)になっていることが推察される。図3では、450℃近傍でNdの炭酸酸化物(NdCO)が現れ始め、700℃近傍でNdの酸化物が現れ始め、Ndの炭酸酸化物(NdCO)を含む不完全なNdの酸化物が生成しており、800℃では完全なNdの酸化物(Nd)が生成されている。
次に、3mol/L塩酸100mLに、試料No.2〜8の焼成物を800℃で焼成して調製した酸化物に換算して16.6g加え、大気中、60℃で1時間撹拌しながら溶解処理した。5分間放置した後の状態を図4に示す。図4に示す通り、300℃(試料No.2)では全く溶解せず白い焼成物がビーカーの底に沈殿していた。一方、400℃以上(試料No.3〜8)では塩酸に溶解していることがわかる(No.3は濃い茶色の液体、No.4〜8は透明な黄色の液体になっていた)。この結果から、希土類元素のシュウ酸塩を、大気中、700℃以上の高温で焼成して完全な酸化物(例えばNd)にせずとも、希土類元素のシュウ酸塩を390℃以上700℃未満の温度で焼成した、完全な酸化物になっていない、希土類元素の炭酸酸化物(例えばNdCO)を含有する焼成物であっても、十分に塩酸に溶解し、溶媒抽出法に供するための塩酸溶液を準備できることを確認した。
本開示の実施形態は、希土類元素(希土類元素は軽希土類元素と重希土類元素を含む)と鉄族元素を含む処理対象物から、溶媒抽出法によって軽希土類元素と重希土類元素を分離する方法において、大気中、700℃未満の温度で焼成した、完全な酸化物になっていない炭酸酸化物を含有する焼成物であっても塩酸に溶解して溶媒抽出用の塩酸溶液を作ることができる方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。

Claims (3)

  1. 希土類元素(希土類元素は軽希土類元素と重希土類元素を含む)と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行う工程1と、
    工程1で酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下に移して950℃以上の温度で熱処理し、希土類元素の酸化物と鉄族元素を分離する工程2と、
    工程2で分離された希土類元素の酸化物を塩酸に溶解して塩酸溶液を作る工程3と、
    工程3で得た塩酸溶液にシュウ酸を加えて希土類元素のシュウ酸塩を沈殿させ、希土類元素のシュウ酸塩と塩酸廃液とを分離する工程4と、
    工程4で分離された希土類元素のシュウ酸塩を大気中、390℃以上700℃未満の温度で焼成した希土類元素の炭酸酸化物を含有する焼成物を塩酸に溶解して塩酸溶液を作る工程5と、
    を含むことを特徴とする希土類元素のシュウ酸塩を用いた溶媒抽出用塩酸溶液の製造方法。
  2. 前記工程5における焼成温度が450℃以上700℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の希土類元素のシュウ酸塩を用いた溶媒抽出用塩酸溶液の製造方法。
  3. 前記工程5における焼成温度が450℃以上600℃未満であることを特徴とする請求項2に記載の希土類元素のシュウ酸塩を用いた溶媒抽出用塩酸溶液の製造方法。
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