JP2018141181A - 希土類元素溶液を調製する方法 - Google Patents

希土類元素溶液を調製する方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018141181A
JP2018141181A JP2017034201A JP2017034201A JP2018141181A JP 2018141181 A JP2018141181 A JP 2018141181A JP 2017034201 A JP2017034201 A JP 2017034201A JP 2017034201 A JP2017034201 A JP 2017034201A JP 2018141181 A JP2018141181 A JP 2018141181A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rare earth
earth element
acid
light rare
heavy rare
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017034201A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6841082B2 (ja
Inventor
星 裕之
Hiroyuki Hoshi
裕之 星
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Proterial Ltd
Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Metals Ltd filed Critical Hitachi Metals Ltd
Priority to JP2017034201A priority Critical patent/JP6841082B2/ja
Publication of JP2018141181A publication Critical patent/JP2018141181A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6841082B2 publication Critical patent/JP6841082B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/20Recycling

Abstract

【課題】溶媒抽出法によって軽希土類元素と重希土類元素を分離するに際し、有機溶媒の使用量の低減化や装置の小型化及び工程上の作業負担の軽減化を可能にする、希土類元素溶液を調製する方法を提供する。【解決手段】(1)軽希土と重希土を含む処理対象物から両者の複合酸化物ないし酸化物の混合物を得る(2)得られた複合酸化物ないし酸化物の混合物を、塩酸および/または硝酸に溶解する(3)得られた溶液に沈殿剤を加えて沈殿物を得る(4)得られた沈殿物を焼成する(5)得られた焼成物を濃度が0.7mol/L以上の塩酸および硝酸から選ばれる少なくとも1つの無機酸と、酢酸、クエン酸、乳酸、アセチルアセトン酸、α−ヒドロキシイソ酪酸から選ばれる少なくとも1つの有機酸からなる混合酸に溶解上限量の1.5倍以上添加して軽希土類元素リッチな溶液と重希土類元素リッチな残渣を得る(6)得られた溶液を残渣から分離する。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、R−Fe−B系永久磁石(Rは希土類元素)などの軽希土類元素と重希土類元素を含む処理対象物から、溶媒抽出法によって両者を分離する際に有用な、希土類元素溶液を調製する方法に関する。
R−Fe−B系永久磁石は、高い磁気特性を有していることから、今日様々な分野で使用されていることは周知の通りである。このような背景のもと、R−Fe−B系永久磁石の生産工場では、日々、大量の磁石が生産されているが、磁石の生産量の増大に伴い、製造工程中に加工不良物などとして排出される磁石スクラップや、切削屑や研削屑などとして排出される磁石加工屑などの量も増加している。とりわけ情報機器の軽量化や小型化によってそこで使用される磁石も小型化していることから、加工代比率が大きくなることで、製造歩留まりが年々低下する傾向にある。従って、製造工程中に排出される磁石スクラップや磁石加工屑などを廃棄せず、そこに含まれる金属元素、特に希土類元素をいかに回収して再利用するかが今後の重要な技術課題となっている。また、R−Fe−B系永久磁石を使用した電化製品などから循環資源として希土類元素をいかに回収して再利用するかについても同様である。本発明者は、これまでこの技術課題に対して精力的に取り組んできており、その研究成果として、R−Fe−B系永久磁石などの希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する方法として、処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移し、1150℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離して回収する方法を特許文献1において提案している。
本発明者が特許文献1において提案した方法は、低コストと簡易さが要求されるリサイクルシステムとして優れたものであるが、処理対象物が例えばR−Fe−B系永久磁石の場合、鉄族元素から分離して回収された希土類元素の酸化物は、NdやPrなどの軽希土類元素とDyなどの重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物である。従って、希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する優れた方法が特許文献1によって提供された今、次なる課題は、軽希土類元素と重希土類元素をいかに分離するかという点にある。
軽希土類元素と重希土類元素を分離する方法として知られている一般的なものは、溶媒抽出法によるものである(例えば特許文献2)。現在のところ、溶媒抽出法は、希土類元素の分離や精製についての主流的な技術として位置付けられている。しかしながら、溶媒抽出法は、抽出剤としての2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシルエステルなどの有機リン化合物や、ケロシンなどの引火性の高い有機溶媒を用いて抽出操作を複数段にわたって繰り返す必要があるので、それぞれの使用量が多く、また、装置が大型のものとなるため、環境保全上や安全上の観点から抽出剤や有機溶媒の使用量の低減化が求められているとともに、装置の小型化が求められている。加えて、溶媒抽出法は、処理対象物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比に応じた処理条件を設定する必要があるため、処理対象物が例えば含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比が様々な磁石加工屑の混合物であって処理対象物における両者の含量比が不明の場合、その都度、処理対象物を分析して両者の含量比を求めてから処理条件を設定したり、両者の含量比が既存の処理条件に適合するものになるように各々の濃度を調整したりしなければならないという工程上の作業負担がある。
国際公開第2013/018710号 特開平2−80530号公報
そこで本発明は、例えば溶媒抽出法によって軽希土類元素と重希土類元素を含む処理対象物から両者を分離するに際し、抽出剤や有機溶媒の使用量の低減化や装置の小型化を可能にしたり、処理対象物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比の分析などの工程上の作業負担の軽減化を可能にしたりする、希土類元素溶液を調製する方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記の点に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、軽希土類元素と重希土類元素を含む処理対象物から得られる両者の複合酸化物ないし酸化物の混合物を塩酸や硝酸に溶解した後、沈殿剤を加えて得られる沈殿物を焼成し、得られた焼成物の所定量を、所定濃度の塩酸などの無機酸と酢酸などの有機酸からなる混合酸に溶解することで、軽希土類元素リッチな溶液と、重希土類元素リッチな残渣を得ることができること、軽希土類元素リッチな溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比は、含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比にバラツキがある処理対象物から得られたものであっても、一定の範囲に収束したものになること、この含量比は、塩酸などの無機酸に対する酢酸などの有機酸の混合量を変えることで、調整することができることを見出した。
上記の知見に基づいてなされた本発明の希土類元素溶液を調製する方法は、請求項1記載の通り、
(1)軽希土類元素と重希土類元素を含む処理対象物から両者の複合酸化物ないし酸化物の混合物を得る工程
(2)得られた軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物を、塩酸および/または硝酸に溶解する工程
(3)得られた溶液に沈殿剤を加えて沈殿物を得る工程
(4)得られた沈殿物を焼成する工程
(5)得られた焼成物を、濃度が0.7mol/L以上の、塩酸および硝酸から選ばれる少なくとも1つの無機酸と、酢酸、クエン酸、乳酸、アセチルアセトン酸、α−ヒドロキシイソ酪酸から選ばれる少なくとも1つの有機酸からなる混合酸に、溶解上限量の1.5倍以上添加して、軽希土類元素リッチな溶液と重希土類元素リッチな残渣を得る工程(混合酸の濃度は無機酸の濃度と有機酸の濃度の合計濃度)
(6)得られた溶液を残渣から分離する工程
を少なくとも含んでなることを特徴とする(ここで「リッチ」なる用語は該当する希土類元素の他方の希土類元素に対する含量比が処理対象物における含量比よりも大きいことを意味する)。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、沈殿剤としてシュウ酸、酢酸、炭酸の金属塩から選ばれる少なくとも1つを用いることを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項1記載の方法において、処理対象物がR−Fe−B系永久磁石であることを特徴とする。
また、請求項4記載の方法は、請求項1記載の方法において、処理対象物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(重希土類元素の含量/軽希土類元素の含量)が0.05〜0.50であることを特徴とする。
また、請求項5記載の方法は、請求項1記載の方法において、軽希土類元素リッチな溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(重希土類元素の含量/軽希土類元素の含量)が0.02〜0.10であり、かつ、処理対象物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(重希土類元素の含量/軽希土類元素の含量)よりも0.01以上小さいことを特徴とする。
本発明によれば、例えば溶媒抽出法によって軽希土類元素と重希土類元素を含む処理対象物から両者を分離するに際し、抽出剤や有機溶媒の使用量の低減化や装置の小型化を可能にしたり、処理対象物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比の分析などの工程上の作業負担の軽減化を可能にしたりする、希土類元素溶液を調製する方法を提供することができる。
実施例1における、塩酸に対する酢酸の混合量と、酸溶液由来の焼成物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(重希土類元素の含量WHR/軽希土類元素の含量WLR)の関係を示すグラフである。 実施例2における、塩酸に対するクエン酸の混合量と、酸溶液由来の焼成物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(重希土類元素の含量WHR/軽希土類元素の含量WLR)の関係を示すグラフである。
本発明の希土類元素溶液を調製する方法は、
(1)軽希土類元素と重希土類元素を含む処理対象物から両者の複合酸化物ないし酸化物の混合物を得る工程
(2)得られた軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物を、塩酸および/または硝酸に溶解する工程
(3)得られた溶液に沈殿剤を加えて沈殿物を得る工程
(4)得られた沈殿物を焼成する工程
(5)得られた焼成物を、濃度が0.7mol/L以上の、塩酸および硝酸から選ばれる少なくとも1つの無機酸と、酢酸、クエン酸、乳酸、アセチルアセトン酸、α−ヒドロキシイソ酪酸から選ばれる少なくとも1つの有機酸からなる混合酸に、溶解上限量の1.5倍以上添加して、軽希土類元素リッチな溶液と重希土類元素リッチな残渣を得る工程(混合酸の濃度は無機酸の濃度と有機酸の濃度の合計濃度)
(6)得られた溶液を残渣から分離する工程
を少なくとも含んでなることを特徴とするものである(ここで「リッチ」なる用語は該当する希土類元素の他方の希土類元素に対する含量比が処理対象物における含量比よりも大きいことを意味する)。以下、本発明の方法における工程を順次説明する。
(1)軽希土類元素と重希土類元素を含む処理対象物から両者の複合酸化物ないし酸化物の混合物を得る工程
まず、本発明の方法を適用することができる軽希土類元素と重希土類元素を含む処理対象物は、NdやPrなどの軽希土類元素とDyやTbなどの重希土類元素を含むものであれば特段の制限はなく、軽希土類元素と重希土類元素に加えてその他の元素としてFe,Co,Niなどの鉄族元素やホウ素などを含んでいてもよい。具体的には、例えばR−Fe−B系永久磁石などが挙げられる。軽希土類元素と重希土類元素を含む処理対象物から両者の複合酸化物ないし酸化物の混合物を得る方法は、自体公知の方法であってよく、例えば、特許文献1に記載の、希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移し、1150℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離して回収する方法を好適に採用することができる。軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物の、軽希土類元素の含量と重希土類元素の含量の合計は、70mass%以上が望ましく、75mass%以上がより望ましい。軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物は、鉄族元素やホウ素などを含んでいてもよいが、これらの含量は、それぞれ5.0mass%以下が望ましく、2.5mass%以下がより望ましい。
(2)得られた軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物を、塩酸および/または硝酸に溶解する工程
この工程に用いる塩酸や硝酸は、先の工程で得られた軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物を溶解することができる濃度や容量で用いることができる。具体的には、例えば、濃度が0.5mol/L以上の塩酸や硝酸を、軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物1gに対して1mL〜50mLの割合で用いればよい。用いる塩酸や硝酸の濃度の上限は、安全性などの点に鑑みれば例えば5.0mol/Lである。溶解温度は、例えば20℃〜85℃であってよい。溶解時間は、例えば1時間〜3日間であってよい。なお、軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物は、その溶解を効率的に行うために、粒径が1mm以下の粒状ないし粉末状に粉砕して塩酸や硝酸に溶解することが望ましい。粉砕は粒径が500μm以下になるまで行うことがより望ましい。所望する粒径の軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物は、例えば篩を用いて分級することで得ることができる。
(3)得られた溶液に沈殿剤を加えて沈殿物を得る工程
この工程に用いることができる沈殿剤としては、例えばシュウ酸や酢酸や炭酸の金属塩(炭酸ナトリウムなど)が挙げられ、先の工程で塩酸や硝酸に溶解した軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物を、軽希土類元素と重希土類元素のシュウ酸塩や酢酸塩や炭酸塩からなる沈殿物に変換する。シュウ酸や酢酸や炭酸の金属塩は、軽希土類元素と重希土類元素のシュウ酸塩や酢酸塩や炭酸塩からなる沈殿物を得ることができる量で用いることができる。具体的には、シュウ酸や酢酸や炭酸の金属塩は、先の工程で塩酸や硝酸に溶解した軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物1gに対して例えば0.8g〜3.0gの割合で用いればよい。沈殿温度は、例えば20℃〜85℃であってよい。沈殿時間は、例えば1時間〜6時間であってよい。
(4)得られた沈殿物を焼成する工程
次に、先の工程で得られた軽希土類元素と重希土類元素のシュウ酸塩や酢酸塩や炭酸塩からなる沈殿物を焼成し、軽希土類元素と重希土類元素のシュウ酸塩や酢酸塩や炭酸塩を再び複合酸化物ないし酸化物の混合物に変換する。軽希土類元素リッチな溶液と重希土類元素リッチな残渣を効果的に得るためには、沈殿物の焼成は、例えば大気雰囲気などの酸素が存在する雰囲気で500℃〜1000℃で行うことが望ましい。焼成温度は、600℃〜950℃がより望ましく、700℃〜900℃がさらに望ましい。焼成時間は、例えば1時間〜6時間であってよい。
(5)得られた焼成物を、濃度が0.7mol/L以上の、塩酸および硝酸から選ばれる少なくとも1つの無機酸と、酢酸、クエン酸、乳酸、アセチルアセトン酸、α−ヒドロキシイソ酪酸から選ばれる少なくとも1つの有機酸からなる混合酸に、溶解上限量の1.5倍以上添加して、軽希土類元素リッチな溶液と重希土類元素リッチな残渣を得る工程(混合酸の濃度は無機酸の濃度と有機酸の濃度の合計濃度)
この工程は、本発明の方法において鍵となる工程である。肝要なのは、先の工程で得られた焼成物、即ち、軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物を、塩酸および硝酸から選ばれる少なくとも1つの無機酸と、酢酸、クエン酸、乳酸、アセチルアセトン酸、α−ヒドロキシイソ酪酸から選ばれる少なくとも1つの有機酸からなる混合酸に溶けきらない量、即ち、溶解上限量よりも多い量で混合酸に添加しなければならないということと、混合酸は、所定の濃度(無機酸の濃度と有機酸の濃度の合計濃度)以上のものでなければならないということである。このように処理条件を設定することで、焼成物に含まれる軽希土類元素は混合酸に溶解しようとする一方で、重希土類元素は焼成物に残留しようとすることを本発明者は見出した。軽希土類元素と重希土類元素のこの性質を利用することで、軽希土類元素リッチな溶液と重希土類元素リッチな残渣を得ることができる。また、軽希土類元素リッチな溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比は、含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比にバラツキがある処理対象物から得られたものであっても、一定の範囲に収束したものになり、この含量比は、無機酸に対する有機酸の混合量を変えることで、調整することができる。混合酸への焼成物の添加量の下限を溶解上限量の1.5倍と規定するのは、1.5倍未満では、焼成物に含まれる重希土類元素が軽希土類元素とともに混合酸に溶解してしまいやすくなるからである。混合酸への焼成物の添加量を溶解上限量の1.0倍以下とすると、焼成物が混合酸に溶けきってしまうので、焼成物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の全量が混合酸に溶解する(結果として軽希土類元素リッチな溶液と重希土類元素リッチな残渣を得ることはできない)。混合酸への焼成物の添加量の上限は、例えば溶解上限量の4.0倍である。溶解上限量の4.0倍を超えると、焼成物に含まれる軽希土類元素の多くが混合酸に溶解しきれなくなることで、軽希土類元素が焼成物に残留しやすくなり、結果として軽希土類元素リッチな溶液と重希土類元素リッチな残渣を得にくくなる。軽希土類元素リッチな溶液と重希土類元素リッチな残渣を効果的に得るためには、混合酸への焼成物の添加量は、溶解上限量の1.8倍〜3.5倍が望ましく、2.0倍〜3.0倍がより望ましい。なお、混合酸に対する焼成物の溶解上限量は、用いる混合酸に焼成物を少量ずつ溶解することで実験的に求めることもできるし、計算で求めることもできる(例えば、焼成物に軽希土類元素と重希土類元素以外の金属元素が含まれていてもその量はごく僅かであるので、焼成物が軽希土類元素と重希土類元素のみからなると見做し、焼成物の組成に基づいて、用いる混合酸から供給される水素イオンのモル量(pHの変動による供給量の変動はないものとする)と各希土類元素の価数から算出する。こうして算出される溶解上限量は厳密なものではないが、この工程を実施する上での支障はない)。用いる混合酸の濃度の下限を0.7mol/Lと規定するのは、0.7mol/L未満では、焼成物に含まれる軽希土類元素が重希土類元素に優先して溶解せずに、軽希土類元素とともに重希土類元素も溶解してしまいやすくなるからである。混合酸の濃度の下限は1.0mol/Lが望ましい。なお、混合酸の濃度の上限は、安全性などの点に鑑みれば、例えば5.0mol/Lである。無機酸に対する有機酸の混合量は、無機酸1molに対して有機酸0.05mol〜0.50molが望ましく、0.10mol〜0.40molがより望ましい。無機酸に対する有機酸の混合量が少なすぎても多すぎても、軽希土類元素リッチな溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比を調整しにくくなる(その理由は必ずしも明確ではないが、有機酸として用いる酢酸、クエン酸、乳酸、アセチルアセトン酸、α−ヒドロキシイソ酪酸の、軽希土類元素と重希土類元素のそれぞれに対する錯体形成能の違いに基づくと考えられる)。焼成物を添加する混合酸の温度は、例えば20℃〜85℃であってよく、焼成物を添加した後、例えば1時間〜10時間撹拌保持するのがよい。
(6)得られた溶液を残渣から分離する工程
先の工程で得られる溶液には軽希土類元素が多く含まれ(即ち軽希土類元素の重希土類元素に対する含量比が処理対象物における含量比よりも大きい)、残渣には重希土類元素が多く含まれる(即ち重希土類元素の軽希土類元素に対する含量比が処理対象物における含量比よりも大きい)。従って、溶液を残渣から例えば濾過により分離することで、軽希土類元素リッチな溶液を本発明の希土類元素溶液として得ることができる。重希土類元素リッチな残渣から分離された軽希土類元素リッチな溶液、即ち、本発明の希土類元素溶液は、自体公知の方法によって溶媒抽出法に付すことで、溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素を分離することができる。この際、軽希土類元素リッチな溶液には、処理対象物よりも軽希土類元素が多く含まれているので、処理対象物それ自体を溶媒抽出法に付して軽希土類元素と重希土類元素を分離する場合よりも、抽出操作に必要な段数を少なくすることができるため、抽出剤や有機溶媒の使用量の低減化や装置の小型化が可能になる。また、処理対象物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(重希土類元素の含量/軽希土類元素の含量)が、例えば0.05〜0.50の範囲でバラツキがあっても、軽希土類元素リッチな溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(重希土類元素の含量/軽希土類元素の含量)は、例えば0.02〜0.10の範囲に収束したものになるということは特筆すべき点である(但し処理対象物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(重希土類元素の含量/軽希土類元素の含量)よりも0.01以上小さい)。従って、含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(重希土類元素の含量/軽希土類元素の含量)が、例えば0.05〜0.50の範囲の処理対象物であれば(R−Fe−B系永久磁石における両者の含量比はこの範囲にある)、その都度、処理対象物を分析して両者の含量比を求めなくても、収束した含量比に適合する処理条件で溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素を分離することができる。また、軽希土類元素リッチな溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比は、無機酸に対する有機酸の混合量を変えることで調整することができるので、両者を分離するための処理条件を設定する際の自由度が高い。なお、軽希土類元素リッチな溶液から分離された重希土類元素リッチな残渣に対して例えば(2)〜(6)の工程を実施することで、残渣に含まれる軽希土類元素の量を低減すること(重希土類元素の軽希土類元素に対する含量比をより大きくすること)ができる。この場合、重希土類元素リッチな残渣から分離された軽希土類元素リッチな溶液は、本発明の希土類元素溶液として、自体公知の方法によって溶媒抽出法に付すことで、溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素を分離することができることは、上記の通りである。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
実施例1:モデル実験その1
60℃に加熱した濃度が1.1mol/Lの塩酸5400mL、1450mL、750mL、100mLに、それぞれ343gのNd試薬、93gのPr11試薬、53gのDy試薬、7gのTb試薬を添加して6時間撹拌することで、それぞれの希土類元素の塩酸溶液を調製した。調製したそれぞれの希土類元素の塩酸溶液を表1の割合で混合し、含まれる希土類元素の濃度が異なる3種類の塩酸溶液A〜Cをそれぞれ3L調製した。
Figure 2018141181
調製した3種類の塩酸溶液A〜Cのそれぞれに、シュウ酸二水和物390gを加え、室温で2時間撹拌することで、水分を多量に含む白色粉末の沈殿物(軽希土類元素と重希土類元素のシュウ酸塩)を得た。得られた沈殿物を、アルミナるつぼに収容し、大気雰囲気で900℃で2時間焼成することで、茶色の組成の異なる3種類の焼成物A〜Cを得た。それぞれの焼成物の重量、SEM・EDX分析(使用装置:日立ハイテクノロジーズ社製のS800、以下同じ)の結果、軽希土類元素(Nd,Pr)と重希土類元素(Dy,Tb)の含量比(WHR/WLR)を表2に示す。なお、それぞれの焼成物は、軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物であることを、別途に行ったX線回析分析(使用装置:ブルカー・エイエックスエス社製のD8 ADVANCE、以下同じ)において確認した。
Figure 2018141181
濃度が1.1mol/Lの塩酸と、酢酸を用い、両者を各種の割合で混合し、表3に示す6種類の混合酸A〜Fを調製した。
Figure 2018141181
焼成物Bを、60℃に加熱した濃度が1.1mol/Lの塩酸と6種類の混合酸A〜Fのそれぞれ100mLに、18.9g(塩酸と6種類の混合酸のそれぞれへの溶解上限量のほぼ3倍に相当)添加して2時間撹拌した後、残渣をろ過することで、酸溶液と残渣を分離した。得られた酸溶液にシュウ酸二水和物13gを加えて室温で2時間撹拌することで白色の沈殿物を得、この沈殿物を大気雰囲気で900℃で2時間焼成することで焼成物を得た。焼成物の重量とSEM・EDX分析の結果から、焼成物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(WHR/WLR:酸溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比に相当)を調べた。結果を図1に示す。図1から明らかなように、いずれの酸溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比も、焼成物Bに含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(0.13)よりも小さく、これらの酸溶液は軽希土類リッチな溶液(本発明の希土類元素溶液)であった。また、塩酸に対する酢酸の混合量を変えることで、酸溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比を調整することができた(塩酸に対する酢酸の混合量を多くすると酸溶液に含まれる重希土類元素の量が多くなる)。一方、酸溶液から分離された残渣を大気雰囲気で900℃で2時間焼成することで得られた焼成物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(WHR/WLR:残渣に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比に相当)を調べたところ、いずれの残渣に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比も、焼成物Bに含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比よりも大きく、これらの残渣は重希土類リッチであった。
3種類の焼成物A〜Cのそれぞれを、60℃に加熱した混合酸E100mLに、溶解上限量の1.5倍、2.0倍、2.5倍、3.0倍、3.5倍に相当する量添加して2時間撹拌した後、残渣をろ過することで、酸溶液と残渣を分離した。得られた酸溶液にシュウ酸二水和物13gを加えて室温で2時間撹拌することで白色の沈殿物を得、この沈殿物を大気雰囲気で900℃で2時間焼成することで焼成物を得た。焼成物の重量とSEM・EDX分析の結果から、焼成物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(WHR/WLR:酸溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比に相当)を調べた。その結果、3種類の焼成物A〜Cのそれぞれを混合酸Eに溶解上限量の2.0倍に相当する量添加した場合、焼成物A由来の焼成物のWHR/WLRは0.09、焼成物B由来の焼成物のWHR/WLRは0.07、焼成物C由来の焼成物のWHR/WLRは0.05であり、3種類の焼成物A〜Cの間でのWHR/WLRのバラツキ幅0.12が0.04に収束した。この3種類の焼成物A〜C由来の焼成物の間でのWHR/WLRのバラツキ幅の収束は、3種類の焼成物A〜Cのそれぞれを混合酸Eに溶解上限量の2.5倍、3.0倍、3.5倍に相当する量添加した場合にもほぼ維持されていた。また、3種類の焼成物A〜Cのそれぞれを、混合酸B、混合酸C、混合酸D、混合酸Fのそれぞれに溶解上限量の2.0倍、2.5倍、3.0倍、3.5倍に相当する量添加した場合にも、3種類の焼成物A〜C由来の焼成物の間でのWHR/WLRのバラツキ幅の収束が認められた。
なお、塩酸と酢酸の混合酸を用いて得た軽希土類元素と重希土類元素を含む酸溶液を水相として溶媒抽出法に付しても、塩酸に酢酸を混合したことが、軽希土類元素と重希土類元素の分離に対して悪影響を与えることはなかった(塩酸を用いて得た軽希土類元素と重希土類元素を含む酸溶液を水相として溶媒抽出法に付した場合の抽出挙動と差異がない)。
実施例2:モデル実験その2
濃度が1.1mol/Lの塩酸と、クエン酸を用い、両者を各種の割合で混合し、表4に示す5種類の混合酸G〜Kを調製した。
Figure 2018141181
実施例1における焼成物Bを、60℃に加熱した濃度が1.1mol/Lの塩酸と5種類の混合酸G〜Kのそれぞれ100mLに、18.9g(塩酸と5種類の混合酸のそれぞれへの溶解上限量のほぼ3倍に相当)添加して2時間撹拌した後、残渣をろ過することで、酸溶液と残渣を分離した。得られた酸溶液にシュウ酸二水和物13gを加えて室温で2時間撹拌することで白色の沈殿物を得、この沈殿物を大気雰囲気で900℃で2時間焼成することで焼成物を得た。焼成物の重量とSEM・EDX分析の結果から、焼成物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(WHR/WLR:酸溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比に相当)を調べた。結果を図2に示す。図2から明らかなように、いずれの酸溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比も、焼成物Bに含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(0.13)よりも小さく、これらの酸溶液は軽希土類リッチな溶液(本発明の希土類元素溶液)であった。また、塩酸に対するクエン酸の混合量を変えることで、酸溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比を調整することができた(塩酸に対するクエン酸の混合量が多くなると酸溶液に含まれる重希土類元素の量が多くなる)。一方、酸溶液から分離された残渣を大気雰囲気で900℃で2時間焼成することで得られた焼成物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(WHR/WLR:残渣に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比に相当)を調べたところ、いずれの残渣に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比も、焼成物Bに含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比よりも大きく、これらの残渣は重希土類リッチであった。
実施例1における3種類の焼成物A〜Cのそれぞれを、60℃に加熱した混合酸J100mLに、溶解上限量の1.5倍、2.0倍、2.5倍、3.0倍、3.5倍に相当する量添加して2時間撹拌した後、残渣をろ過することで、酸溶液と残渣を分離した。得られた酸溶液にシュウ酸二水和物13gを加えて室温で2時間撹拌することで白色の沈殿物を得、この沈殿物を大気雰囲気で900℃で2時間焼成することで焼成物を得た。焼成物の重量とSEM・EDX分析の結果から、焼成物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(WHR/WLR:酸溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比に相当)を調べた。その結果、3種類の焼成物A〜Cのそれぞれを混合酸Jに溶解上限量の3.0倍に相当する量添加した場合、焼成物A由来の焼成物のWHR/WLRは0.07、焼成物B由来の焼成物のWHR/WLRは0.06、焼成物C由来の焼成物のWHR/WLRは0.03であり、3種類の焼成物A〜Cの間でのWHR/WLRのバラツキ幅0.12が0.04に収束した。この3種類の焼成物A〜C由来の焼成物の間でのWHR/WLRのバラツキ幅の収束は、3種類の焼成物A〜Cのそれぞれを混合酸Jに溶解上限量の3.5倍に相当する量添加した場合にもほぼ維持されていた。また、3種類の焼成物A〜Cのそれぞれを、その他の混合酸に溶解上限量の3.0倍、3.5倍に相当する量添加した場合にも、3種類の焼成物A〜C由来の焼成物の間でのWHR/WLRのバラツキ幅の収束が認められた。
なお、塩酸とクエン酸の混合酸を用いて得た軽希土類元素と重希土類元素を含む酸溶液を水相として溶媒抽出法に付しても、塩酸にクエン酸を混合したことが、軽希土類元素と重希土類元素の分離に対して悪影響を与えることはなかった(塩酸を用いて得た軽希土類元素と重希土類元素を含む酸溶液を水相として溶媒抽出法に付した場合の抽出挙動と差異がない)。
実施例3:軽希土類元素(Nd,Pr)と重希土類元素(Dy)の分離
(工程1)
R−Fe−B系永久磁石の製造工程中に発生した約10μmの粒径を有する磁石加工屑(自然発火防止のため水中で7日間保管したもの)に対し、吸引ろ過することで脱水してからロータリーキルンを用いて燃焼処理することで酸化処理を行った。こうして酸化処理を行った磁石加工屑のICP分析(使用装置:島津製作所社製のICPV−1017)の結果を表5に示す。
Figure 2018141181
次に、酸化処理を行った磁石加工屑50gとカーボンブラック(東海カーボン社製のファーネスブラック、以下同じ)10gを混合し、カーボンブラック10gを予め底面に敷き詰めた寸法が内径50mm×深さ50mm×肉厚10mmの炭素るつぼ(黒鉛製)に収容した後、電気炉を用い、工業用アルゴンガス雰囲気(酸素含有濃度:0.2ppm、流量:10L/分。以下同じ)中で1450℃まで10℃/分で昇温してから1時間熱処理した。その後、炉内の加熱を停止し、炉内の工業用アルゴンガス雰囲気を維持したまま、炭素るつぼを室温まで炉冷した。炉冷を終了した後、炭素るつぼ内には、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物(塊状物Aと塊状物B)が存在した。塊状物Aと塊状物BのそれぞれのSEM・EDX分析を行ったところ、塊状物Aの主成分は鉄である一方、塊状物Bの主成分は希土類元素の酸化物であった。塊状物BのSEM・EDX分析の結果(Nd,Pr,Dyのみ)を表6に示す(鉄は検出限界以下)。なお、塊状物Bの主成分である希土類元素の酸化物は、軽希土類元素(Nd,Pr)と重希土類元素(Dy)の複合酸化物ないし酸化物の混合物であることを、別途に行ったX線回析分析において確認した。
Figure 2018141181
(工程2)
工程1で得た希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物Bを、瑪瑙製の乳鉢と乳棒で粉砕し、ステンレス製の篩を用いて粒径が125μm未満の粉末を得る操作を複数回行うことで、約1kgの塊状物Bの粉末を調製した。こうして調製した塊状物Bの粉末75gを、濃度が1.0mol/Lの塩酸1Lに加え、80℃で6時間撹拌した後、残渣をろ過することで、塊状物Bの塩酸溶液を得た。
(工程3)
工程2で得た塊状物Bの塩酸溶液1Lに、シュウ酸二水和物130gを加え、室温で2時間撹拌することで、水分を多量に含む白色粉末の沈殿物(軽希土類元素と重希土類元素のシュウ酸塩)を約100g得た。
(工程4)
工程3で得た沈殿物を、アルミナるつぼに収容し、大気雰囲気で900℃で2時間焼成することで、茶色の焼成物を65.5g得た。この焼成物のSEM・EDX分析の結果(Nd,Pr,Dyのみ)を表7に示す。なお、この焼成物は、軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物であることを、別途に行ったX線回析分析において確認した。
Figure 2018141181
(工程5)
60℃に加熱した実施例1における混合酸E100mLに、溶解上限量の2.0倍に相当する量の工程4で得た焼成物を添加して撹拌した。なお、用いる混合酸Eに対する工程4で得た焼成物の溶解上限量(6.55g)は、混合酸Eに焼成物を少量ずつ溶解することで実験的に求めた。
(工程6)
工程5における撹拌を開始してから2時間後、残渣をろ過することで、酸溶液と残渣を分離した。得られた酸溶液にシュウ酸二水和物13gを加えて室温で2時間撹拌することで白色の沈殿物を得、この沈殿物を大気雰囲気で900℃で2時間焼成することで焼成物を得た。焼成物の重量とSEM・EDX分析の結果から、焼成物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(WHR/WLR:酸溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比に相当)を調べたところ0.09であり、酸溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比は、工程4で得た焼成物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(0.21)よりも小さく、この酸溶液は軽希土類リッチな溶液(本発明の希土類元素溶液)であった。一方、酸溶液から分離された残渣を大気雰囲気で900℃で2時間焼成することで得られた焼成物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(WHR/WLR:残渣に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比に相当)を調べたところ、残渣に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比は、工程4で得た焼成物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比よりも大きく、この残渣は重希土類リッチであった。
実施例4:
実施例1における混合酸Eのかわりに、濃度が1.3mol/Lの硝酸と酢酸からなる混合酸(硝酸濃度:1.1mol/L+酢酸濃度:0.2mol/L)を用いること以外は、実施例3と同様にして、軽希土類元素と重希土類元素の含量比が、実施例3で得た本発明の希土類元素溶液とほぼ同じの、軽希土類リッチな溶液である本発明の希土類元素溶液を得た。
実施例5:
実施例1における混合酸Eのかわりに、濃度が1.1mol/Lの塩酸と乳酸からなる混合酸(塩酸濃度:1.0mol/L+乳酸濃度:0.1mol/L)を用いること以外は、実施例3と同様にして、軽希土類元素と重希土類元素の含量比が、実施例3で得た本発明の希土類元素溶液とほぼ同じの、軽希土類リッチな溶液である本発明の希土類元素溶液を得た。
実施例6:
実施例1における混合酸Eのかわりに、濃度が1.1mol/Lの塩酸とアセチルアセトン酸からなる混合酸(塩酸濃度:0.8mol/L+アセチルアセトン酸濃度:0.3mol/L)を用いること以外は、実施例3と同様にして、軽希土類元素と重希土類元素の含量比が、実施例3で得た本発明の希土類元素溶液とほぼ同じの、軽希土類リッチな溶液である本発明の希土類元素溶液を得た。
実施例7:
実施例1における混合酸Eのかわりに、濃度が1.1mol/Lの塩酸とα−ヒドロキシイソ酪酸からなる混合酸(塩酸濃度:0.8mol/L+α−ヒドロキシイソ酪酸濃度:0.3mol/L)を用いること以外は、実施例3と同様にして、軽希土類元素と重希土類元素の含量比が、実施例3で得た本発明の希土類元素溶液とほぼ同じの、軽希土類リッチな溶液である本発明の希土類元素溶液を得た。
実施例8:
実施例1における混合酸Eのかわりに、濃度が2.0mol/Lの塩酸と酢酸からなる混合酸(塩酸濃度:1.5mol/L+酢酸濃度:0.5mol/L)を用いること以外は、実施例3と同様にして、軽希土類元素と重希土類元素の含量比が、実施例3で得た本発明の希土類元素溶液とほぼ同じの、軽希土類リッチな溶液である本発明の希土類元素溶液を得た。
実施例9:
実施例1における混合酸Eのかわりに、濃度が3.0mol/Lの塩酸と酢酸からなる混合酸(塩酸濃度:2.5mol/L+酢酸濃度:0.5mol/L)を用いること以外は、実施例3と同様にして、軽希土類元素と重希土類元素の含量比が、実施例3で得た本発明の希土類元素溶液とほぼ同じの、軽希土類リッチな溶液である本発明の希土類元素溶液を得た。
実施例10:
実施例1における混合酸Eのかわりに、濃度が3.0mol/Lの硝酸とクエン酸からなる混合酸(硝酸濃度:2.0mol/L+クエン酸濃度:1.0mol/L)を用いること以外は、実施例3と同様にして、軽希土類元素と重希土類元素の含量比が、実施例3で得た本発明の希土類元素溶液とほぼ同じの、軽希土類リッチな溶液である本発明の希土類元素溶液を得た。
本発明は、例えば溶媒抽出法によって軽希土類元素と重希土類元素を含む処理対象物から両者を分離するに際し、抽出剤や有機溶媒の使用量の低減化や装置の小型化を可能にしたり、処理対象物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比の分析などの工程上の作業負担の軽減化を可能にしたりする、希土類元素溶液を調製する方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。

Claims (5)

  1. (1)軽希土類元素と重希土類元素を含む処理対象物から両者の複合酸化物ないし酸化物の混合物を得る工程
    (2)得られた軽希土類元素と重希土類元素の複合酸化物ないし酸化物の混合物を、塩酸および/または硝酸に溶解する工程
    (3)得られた溶液に沈殿剤を加えて沈殿物を得る工程
    (4)得られた沈殿物を焼成する工程
    (5)得られた焼成物を、濃度が0.7mol/L以上の、塩酸および硝酸から選ばれる少なくとも1つの無機酸と、酢酸、クエン酸、乳酸、アセチルアセトン酸、α−ヒドロキシイソ酪酸から選ばれる少なくとも1つの有機酸からなる混合酸に、溶解上限量の1.5倍以上添加して、軽希土類元素リッチな溶液と重希土類元素リッチな残渣を得る工程(混合酸の濃度は無機酸の濃度と有機酸の濃度の合計濃度)
    (6)得られた溶液を残渣から分離する工程
    を少なくとも含んでなることを特徴とする希土類元素溶液を調製する方法(ここで「リッチ」なる用語は該当する希土類元素の他方の希土類元素に対する含量比が処理対象物における含量比よりも大きいことを意味する)。
  2. 沈殿剤としてシュウ酸、酢酸、炭酸の金属塩から選ばれる少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 処理対象物がR−Fe−B系永久磁石であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 処理対象物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(重希土類元素の含量/軽希土類元素の含量)が0.05〜0.50であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 軽希土類元素リッチな溶液に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(重希土類元素の含量/軽希土類元素の含量)が0.02〜0.10であり、かつ、処理対象物に含まれる軽希土類元素と重希土類元素の含量比(重希土類元素の含量/軽希土類元素の含量)よりも0.01以上小さいことを特徴とする請求項1記載の方法。
JP2017034201A 2017-02-24 2017-02-24 希土類元素溶液を調製する方法 Active JP6841082B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017034201A JP6841082B2 (ja) 2017-02-24 2017-02-24 希土類元素溶液を調製する方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017034201A JP6841082B2 (ja) 2017-02-24 2017-02-24 希土類元素溶液を調製する方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018141181A true JP2018141181A (ja) 2018-09-13
JP6841082B2 JP6841082B2 (ja) 2021-03-10

Family

ID=63526516

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017034201A Active JP6841082B2 (ja) 2017-02-24 2017-02-24 希土類元素溶液を調製する方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6841082B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110499420A (zh) * 2019-10-09 2019-11-26 杨腾跃 一种稀土萃取装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110499420A (zh) * 2019-10-09 2019-11-26 杨腾跃 一种稀土萃取装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP6841082B2 (ja) 2021-03-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5327409B2 (ja) 希土類元素の回収方法
JP5146658B2 (ja) 希土類元素の回収方法
US20200199709A1 (en) Process for the recovery of rare earth metals from permanent magnets
KR102289085B1 (ko) 선택적 산화 열처리를 통한 폐 Nd 영구자석의 고효율 침출 방법 및 이에 의해 제조된 Nd 분말
JP2011184735A (ja) 希土類元素の浸出方法
JP6769437B2 (ja) 軽希土類元素と重希土類元素を分離するために有用な方法
JP6841082B2 (ja) 希土類元素溶液を調製する方法
JP2012167345A (ja) 希土類系磁石合金材料からの金属元素の分離回収方法
JP6299181B2 (ja) 希土類元素の回収方法
JP2014145099A (ja) 希土類元素の回収方法
KR101932552B1 (ko) 질산을 이용하여 폐 ito스크랩으로부터 ito타겟용 분말의 제조방법 및 그 분말
JP6413877B2 (ja) 希土類元素の回収方法
JP6597447B2 (ja) 軽希土類元素と重希土類元素を含む処理対象物から重希土類元素を溶出させる方法
JP2019026871A (ja) 希土類フッ化物の製造方法
JP7067196B2 (ja) 希土類元素のシュウ酸塩の製造方法
JP2013204095A (ja) 希土類元素の回収方法
JP6988292B2 (ja) 希土類元素の炭酸塩の製造方法
JP6988293B2 (ja) 希土類元素の炭酸塩の製造方法
JP2018003090A (ja) 希土類元素とアルミニウムの複合酸化物からアルミニウムを分離する方法
JP2017043807A (ja) 希土類元素の回収方法
JP2018053326A (ja) DyとTbを含む処理対象物から両者を分離する方法
JP6264195B2 (ja) 希土類元素の回収方法
JP2016186121A (ja) 希土類元素含有物からの希土類元素回収方法
Ioannidis et al. Separation of rare earth elements from waste NdFeB magnets: The influence of hematite seeds and agents on the hematite precipitation in nitric acid medium
JP2019165118A (ja) 希土類元素のシュウ酸塩を用いた溶媒抽出用塩酸溶液の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190906

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200529

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200804

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200825

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210119

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210201

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6841082

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350