JP2017043807A - 希土類元素の回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移して1000℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離して回収する方法において、熱処理温度が低温域の場合でも、希土類元素を酸化物として鉄族元素からマクロに分離して回収する方法を提供すること。【解決手段】 酸化処理を行った処理対象物に、リチウム源とリン源を添加して、処理対象物に含まれる希土類元素とリチウムとリンの原子組成百分率を、希土類元素が8atm%以下、リチウムが20atm%〜36atm%、リンが56atm%以上とし、炭素の存在下で1000℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離する工程を少なくとも含んでなることを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、例えばR−Fe−B系永久磁石(Rは希土類元素)などの、少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する方法に関する。
R−Fe−B系永久磁石は、高い磁気特性を有していることから、今日様々な分野で使用されていることは周知の通りである。このような背景のもと、R−Fe−B系永久磁石の生産工場では、日々、大量の磁石が生産されているが、磁石の生産量の増大に伴い、製造工程中に加工不良物などとして排出される磁石スクラップや、切削屑や研削屑などとして排出される磁石加工屑などの量も増加している。とりわけ情報機器の軽量化や小型化によってそこで使用される磁石も小型化していることから、加工代比率が大きくなることで、製造歩留まりが年々低下する傾向にある。従って、製造工程中に排出される磁石スクラップや磁石加工屑などを廃棄せず、そこに含まれる金属元素、特に希土類元素をいかに回収して再利用するかが今後の重要な技術課題となっている。また、R−Fe−B系永久磁石を使用した電化製品などから循環資源として希土類元素をいかに回収して再利用するかについても同様である。本発明者の研究グループは、これまでこの技術課題に対して精力的に取り組んできており、その研究成果として、R−Fe−B系永久磁石などの少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する方法として、処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境をカーボンブラックの存在下に移し、不活性ガス雰囲気中や真空中において1000℃以上の温度で熱処理することによる方法を提案している(特許文献1)。
本発明者の研究グループが特許文献1において提案した方法によれば、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離して回収することができるが、例えば酸化処理を行った処理対象物に対する熱処理温度の違いにより、希土類元素と鉄族元素の分離態様は異なり、熱処理温度が1450℃といった高温域の場合、熱処理してから炉冷した処理容器内には、生成物として、一方が希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物であり、他方が鉄族元素の炭素との合金を主成分とする塊状物である、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物が得られることが多い。この2種類の塊状物は、力を加えることで両者が分離するので、希土類元素を酸化物として鉄族元素からマクロに分離して回収することができるが、熱処理温度を次第に低くしていくと、こうした分離態様ではなく、熱処理してから炉冷した処理容器内には、生成物として粗い粒子が接合してなる単一の塊状物が得られることが多くなる。この塊状物を構成する個々の粒子は2相構造を有しており、その一方が希土類元素の酸化物であって他方が鉄族元素の炭素との合金であるため、塊状物を構成する個々の粒子を粉砕した後、磁気的方法によって鉄族元素の炭素との合金からなる相の粉末を分離することで(希土類元素の酸化物からなる相の粉末は磁石に付かないが鉄族元素の炭素との合金からなる相の粉末は磁石に付く)、希土類元素の酸化物からなる相の粉末を回収することができる。しかしながら、この塊状物から希土類元素の酸化物を回収するためには、塊状物を構成する個々の粒子を粉砕する工程と、得られた粉砕物を磁気的に分離する工程が必要となる。従って、熱処理温度が低温域の場合でも、こうした工程を必要としない、希土類元素を酸化物として鉄族元素からマクロに分離して回収する方法が確立できれば、その方法は低コストと簡易さが要求されるリサイクルシステムとしてより優れたものとなる。
国際公開第2014/104205号
そこで本発明は、少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移して1000℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離して回収する方法において、熱処理温度が低温域の場合でも、希土類元素を酸化物として鉄族元素からマクロに分離して回収する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の点に鑑みて鋭意検討を行った結果、酸化処理を行った処理対象物を炭素の存在下で1000℃以上の温度で熱処理する際、リチウム源とリン源を、処理対象物に含まれる希土類元素に対して所定の割合で添加することで、熱処理温度が低温域の場合でも、生成物として、一方が希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物であり、他方が鉄族元素の炭素との合金を主成分とする塊状物である、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物が得られることを見出した。
上記の知見に基づいてなされた本発明の少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する方法は、請求項1記載の通り、酸化処理を行った処理対象物に、リチウム源とリン源を添加して、処理対象物に含まれる希土類元素とリチウムとリンの原子組成百分率を、希土類元素が8atm%以下、リチウムが20atm%〜36atm%、リンが56atm%以上とし、炭素の存在下で1000℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離する工程を少なくとも含んでなることを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、リチウム源が、リチウム塩、リチウム酸化物、リチウム水酸化物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項1記載の方法において、リン源が、リン酸塩、リン酸化物、単体リンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また、請求項4記載の方法は、請求項1記載の方法において、熱処理温度を1350℃以下とすることを特徴とする。
また、請求項5記載の方法は、請求項1記載の方法において、処理対象物の少なくとも一部が5mm以下の粒径を有する粒状ないし粉末状であることを特徴とする。
また、請求項6記載の方法は、請求項1記載の方法において、処理対象物の鉄族元素含量が30mass%以上であることを特徴とする。
また、請求項7記載の方法は、請求項1記載の方法において、処理対象物がR−Fe−B系永久磁石であることを特徴とする。
本発明によれば、少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移して1000℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離して回収する方法において、熱処理温度が低温域の場合でも、希土類元素を酸化物として鉄族元素からマクロに分離して回収する方法を提供することができる。
実施例における試験例1の結果をプロットしたLiO−P−Rの3元系状態図である。 同、試験例1の試験条件No.1の場合における熱処理後の炭素るつぼを室温まで炉冷した後のるつぼ内の様子を示す写真である。
本発明の少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する方法は、酸化処理を行った処理対象物に、リチウム源とリン源を添加して、処理対象物に含まれる希土類元素とリチウムとリンの原子組成百分率を、希土類元素が8atm%以下、リチウムが20atm%〜36atm%、リンが56atm%以上とし、炭素の存在下で1000℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離する工程を少なくとも含んでなることを特徴とするものである。
本発明の方法の適用対象となる少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物は、Nd,Pr,Dy,Tb,Smなどの希土類元素とFe,Co,Niなどの鉄族元素を含むものであれば特段の制限はなく、希土類元素と鉄族元素に加えてその他の元素として例えばホウ素などを含んでいてもよい。具体的には、例えばR−Fe−B系永久磁石などが挙げられるが、とりわけ本発明の方法は鉄族元素含量が30mass%以上である処理対象物に好適に適用することができる(例えばR−Fe−B系永久磁石の場合、その鉄族元素含量は、通常、60mass%〜82mass%である)。処理対象物の大きさや形状は特段制限されるものではなく、処理対象物がR−Fe−B系永久磁石の場合には製造工程中に排出される磁石スクラップや磁石加工屑などであってよい。処理対象物に対して十分な酸化処理を行うためには、処理対象物は5mm以下の粒径を有する粒状ないし粉末状であることが望ましい(例えば調製の容易性に鑑みれば粒径の下限は1μmが望ましい)。しかしながら、処理対象物の全てがこのような粒状ないし粉末状である必要は必ずしもなく、粒状ないし粉末状であるのは処理対象物の一部であってよい。
まず、本発明の方法における処理対象物に対する酸化処理は、処理対象物に含まれる希土類元素を酸化物に変換することを目的とするものである。処理対象物に対する酸化処理によって処理対象物に含まれる鉄族元素が希土類元素とともに酸化物に変換されてもよい。処理対象物に対する酸化処理は、酸素含有雰囲気中で処理対象物を熱処理したり燃焼処理したりすることによって行うことが簡便である。酸素含有雰囲気は大気雰囲気であってよい。処理対象物を熱処理する場合、例えば350℃〜1000℃で1時間〜12時間行えばよい。処理対象物を燃焼処理する場合、例えば自然発火や人為的点火により行えばよい。また、処理対象物に対する酸化処理は、アルカリ水溶液中で処理対象物の酸化を進行させるアルカリ処理によって行うこともできる。アルカリ処理に用いることができるアルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニアなどが挙げられる。また、アルカリ水溶液の濃度としては0.1mol/L〜10mol/Lが挙げられる。処理温度としては60℃〜150℃が挙げられるが、より効果的な酸化処理を行うためには100℃以上が望ましく、より安全性を高めるためには130℃以下が望ましい。処理時間としては30分間〜10時間が挙げられる。処理対象物に対する酸化処理は、単一の方法で行ってもよいし、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。処理対象物に対してこうした酸化処理を行うと、処理対象物に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の1.5倍以上となり、希土類元素の酸化物への変換をより確実なものにすることができる。酸化処理によって処理対象物に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の2.0倍以上になることが望ましい。また、処理対象物に対する酸化処理は、炭素の非存在下で行うことが望ましい。炭素の存在下で処理対象物に対する酸化処理を行うと、処理対象物に含まれる希土類元素が炭素と望まざる化学反応を起こして所望する酸化物への変換が阻害される恐れがあるからである(従ってここでは「炭素の非存在下」は処理対象物に含まれる希土類元素の酸化物への変換が阻害されるに足る化学反応の起因となる炭素が存在しないことを意味する)。
次に、酸化処理を行った処理対象物を、炭素の存在下で1000℃以上の温度で熱処理する。この際、酸化処理を行った処理対象物に、リチウム源とリン源を添加して、処理対象物に含まれる希土類元素とリチウムとリンの原子組成百分率を、希土類元素が8atm%以下、リチウムが20atm%〜36atm%、リンが56atm%以上とすることで、一方が希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物であり、他方が鉄族元素の炭素との合金を主成分とする塊状物である、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物を得ることができる。これは、酸化処理を行った処理対象物に含まれる希土類元素の酸化物は高温で酸化物のままで溶融するのに対し、鉄族元素は炭素を固溶して合金化して溶融し、また、鉄族元素の酸化物は炭素によって還元された後に炭素を固溶して合金化して溶融し、結果として、希土類元素の酸化物の溶融物と鉄族元素と炭素の合金の溶融物が相溶することなく互いに独立して存在するという本発明者の研究グループによって見出された現象に基づくものである。この2種類の塊状物は、力を加えることで両者が分離するので、本発明の方法によれば、希土類元素を酸化物として鉄族元素からマクロに分離して回収することができる。酸化処理を行った処理対象物への、リチウム源とリン源の添加方法は、特に制限されるものではなく、単に混合するだけであってよい。リチウム源としては、リチウム塩(炭酸リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウムなどのリチウムと無機酸の塩や、シュウ酸リチウム、ギ酸リチウム、酢酸リチウムなどのリチウムと有機酸の塩など)、リチウム酸化物、リチウム水酸化物などが挙げられる。リン源としては、リン酸塩(リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウムなどのアンモニアとリン酸の塩など)、リン酸化物(五酸化リン、三酸化リンなど)、単体リン(赤燐など)などが挙げられる。また、リチウム源とリン源の役割を兼ね備える物質として、リン酸三リチウムなどのリチウムとリンを分子中に含む化合物を用いてもよい。希土類元素の酸化物を効率よく回収するためには、希土類元素とリチウムとリンの原子組成百分率において、希土類元素は1atm%以上が望ましい。
熱処理温度を1000℃以上に規定するのは、1000℃未満であると、鉄族元素の炭素との合金化や鉄族元素の酸化物の炭素による還元が十分に進行しないことにより、希土類元素の酸化物と鉄族元素と炭素の合金が互いに独立して存在しにくくなることで、両者の分離が困難になるからである。熱処理温度は1050℃以上が望ましく、1100℃以上がより望ましく、1150℃以上がさらに望ましい。なお、熱処理温度の上限は特に制限されないが、エネルギーコストの点に鑑みれば1700℃が望ましく、また、熱処理温度が1350℃よりも高温であると、酸化処理を行った処理対象物に、リチウム源とリン源を添加しなくても、一方が希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物であり、他方が鉄族元素の炭素との合金を主成分とする塊状物である、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物が得られることが多いので、本発明の方法は、熱処理温度が1350℃以下の場合に効果を発揮する。熱処理時間は例えば10分間〜5時間が適当である。酸化処理を行った処理対象物に対する炭素の供給源は、特許文献1において用いられているカーボンブラックの他、グラファイト(黒鉛や石墨)、木炭、コークス、石炭(無煙炭など)、ダイヤモンドなど、どのような構造や形状のものであってもよいが、炭素るつぼを用いて熱処理を行えば、炭素るつぼは処理容器としての役割とともにその表面からの炭素供給源としての役割も果たすので都合がよい(もちろん別個の炭素供給源をさらに添加することを妨げるものではない)。処理容器として炭素るつぼを用いる場合、酸化処理を行った処理対象物の炭素の存在下での熱処理は、アルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気(酸素含有濃度は1ppm未満が望ましい)中や真空(1000Pa未満が望ましい)中で行うことが望ましい。大気雰囲気などの酸素含有雰囲気中で熱処理を行うと、雰囲気中の酸素が炭素るつぼの表面において炭素と反応することで二酸化炭素を生成し、炭素るつぼが炭素供給源としての役割を効率的に果さない恐れがあるからである。なお、用いることができる処理容器は、炭素るつぼに限定されるわけではなく、非炭素製の処理容器、例えばアルミナや酸化マグネシウムや酸化カルシウムなどの金属酸化物や酸化ケイ素でできたセラミックスるつぼ(単一の素材からなるものであってもよいし複数の素材からなるものであってもよい。炭化ケイ素などの炭素元素を含む素材であっても炭素供給源としての役割を果さない素材からなるものを含む)などを用いることもできる。非炭素製の処理容器を用いる場合、処理容器は炭素供給源としての役割を果さないので、処理容器に炭素供給源を添加することによって酸化処理を行った処理対象物を熱処理する。また、非炭素製の処理容器として製鉄のための溶鉱炉、電気炉、誘導炉などを用いるとともに、炭素供給源として木炭やコークスなどを用いれば、酸化処理を行った処理対象物を一度に大量に熱処理することができる。添加する炭素供給源の量は処理対象物に含まれる鉄族元素に対してモル比で1.5倍以上であることが望ましい。添加する炭素供給源の量をこのように調整することで、処理対象物に含まれる鉄族元素が酸化処理によって酸化物に変換されてもその還元を確実なものとして炭素との合金化を進行させることができる。なお、非炭素製の処理容器を用いる場合、酸化処理を行った処理対象物の炭素の存在下での熱処理は、アルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気(酸素含有濃度は1ppm未満が望ましい)中や真空(1000Pa未満が望ましい)中で行ってもよいし、大気雰囲気などの酸素含有雰囲気中で行ってもよい。酸化処理を行った処理対象物の炭素の存在下での熱処理を酸素含有雰囲気中で行った場合、熱処理後における余剰の炭素供給源は雰囲気中の酸素と反応することによって二酸化炭素となって処理容器から排出される点において都合がよい。
なお、リン源として、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウムなどのアンモニアとリン酸の塩を用いる場合、熱処理する前に予備加熱することで、これらの化合物に由来するアンモニアを放出除去しておくことが、熱処理による希土類元素と鉄族元素の分離反応を円滑に進行させることができる点において望ましい。予備加熱は、200℃〜500℃の温度にて、非炭素性の処理容器を用い、アルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気(酸素含有濃度は1ppm未満が望ましい)中や真空(1000Pa未満が望ましい)中で、10分間〜3時間行うことが望ましい。
本発明の方法において得られる、一方が希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物であり、他方が鉄族元素の炭素との合金を主成分とする塊状物である、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物は、力を加えることで両者を分離することができる。EDX分析によれば、鉄族元素の炭素との合金を主成分とする塊状物から分離された希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物の希土類元素含量は、例えば70mass%以上であり、鉄族元素含量は例えば2.0mass%以下であるが、希土類元素含量は80mass%以上が望ましく、鉄族元素含量は1.0mass%以下が望ましい。
本発明の方法の適用対象となる少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物が例えばR−Fe−B系永久磁石などのようにその他の元素としてホウ素を含む場合、本発明の方法によって鉄族元素の炭素との合金から分離することで回収された希土類元素の酸化物にはホウ素が多少なりとも含まれる。ホウ素を含む希土類元素の酸化物をフッ素を含む溶融塩成分を用いた溶融塩電解法によって還元すると、希土類元素の酸化物に含まれるホウ素がフッ素と反応することで有毒なフッ化ホウ素が発生する恐れがある。従って、こうした場合には予め希土類元素の酸化物のホウ素含量を低減しておくことが望ましい。ホウ素を含む希土類元素の酸化物のホウ素含量の低減は、例えばホウ素を含む希土類元素の酸化物をアルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)や酸化物とともに例えば炭素の存在下で熱処理することで行うことができる。アルカリ金属の炭酸塩や酸化物は、例えばホウ素を含む希土類元素の酸化物1重量部に対して0.1重量部〜2重量部用いればよい。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
試験例1:
R−Fe−B系永久磁石の製造工程中に発生した約10μmの粒径を有する磁石加工屑(自然発火防止のため水中で7日間保管したもの)に対し、吸引ろ過することで脱水してからロータリーキルンを用いて燃焼処理することで酸化処理を行った。こうして酸化処理を行った磁石加工屑のICP分析(使用装置:島津製作所社製のICPV−1017)とガス分析(使用装置:堀場製作所社製のEMGA−550W)の結果を表1に示す。酸化処理を行った磁石加工屑に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の7.3倍であった。
次に、酸化処理を行った磁石加工屑2.00gに、リチウム源として炭酸リチウムと、リン源としてリン酸二アンモニウムを、磁石加工屑に含まれる希土類元素(Nd,Pr,Dy、以下同じ)とリチウムとリンの原子組成百分率が表1に示す関係となるように混合し、容量が15mLのアルミナるつぼに収容した後、工業用アルゴンガス雰囲気(酸素含有濃度:0.2ppm、流量:5L/分。以下同じ)中で300℃で1時間予備加熱した。アルミナるつぼを室温まで炉冷した後、るつぼから内容物を取り出して瑪瑙製の乳鉢と乳棒で粉砕し、寸法が外径35mm×高さ15mm×肉厚5mmの炭素るつぼ(黒鉛製、以下同じ)に移し替え、工業用アルゴンガス雰囲気中で1300℃で2時間熱処理した。その後、炭素るつぼを室温まで炉冷し、るつぼ内の様子を観察した。結果を表2に示す。なお、表2において、○は互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物が得られたことを意味し、×は得られなかったこと意味する。
上記の結果をプロットしたLiO−P−Rの3元系状態図を図1に示す。表2と図1から明らかなように、磁石加工屑に含まれる希土類元素とリチウムとリンの原子組成百分率を、希土類元素が8atm%以下、リチウムが20atm%〜36atm%、リンが56atm%以上とすることで、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物が得られることがわかった。なお、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物は、一方が希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物であり、他方が鉄族元素の炭素との合金を主成分とする塊状物であることを、SEM・EDX分析(使用装置:日立ハイテクノロジーズ社製のS800、以下同じ)によって確認した。試験条件No.1の場合における熱処理後の炭素るつぼを室温まで炉冷した後のるつぼ内の様子を図2に示す。図2において、塊状物Aは鉄族元素の炭素との合金を主成分とする塊状物であって、塊状部Bは希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物であり、両者は力を加えることで分離した。塊状物Aの鉄含量は68.8mass%であり、炭素含量は13.8mass%であり、リン含量は16.0mass%であった。塊状物Bの希土類元素含量は88.2mass%であり、酸素含量は8.3mass%であり、鉄含量は0.2mass%であった。よって、本発明の方法によれば、希土類元素を酸化物として鉄からマクロに分離して回収することができることがわかった。なお、熱重量・示差熱(TG−DTA)分析(使用装置:リガク社製のTAS−200)によれば、塊状物A、塊状物Bいずれも1300℃以下で吸熱反応が認められることから、酸化処理を行った磁石加工屑に添加した炭酸リチウムとリン酸二アンモニウムは、それぞれ希土類元素の酸化物と鉄の炭素との合金の融点を降下させる作用を発揮し、リチウムは希土類元素の酸化物に取り込まれ、リンは鉄の炭素との合金に取り込まれたと推察された。
実施例1:
リチウム源として炭酸リチウムのかわりに酸化リチウムを用い、リン源としてリン酸二アンモニウムのかわりに五酸化リンを用いることと、予備加熱をしないこと以外は、試験例1の試験条件No.1と同様にして、一方が希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物であり、他方が鉄族元素の炭素との合金を主成分とする塊状物である、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物を得た。この2種類の塊状物は、力を加えることで両者が分離し、それぞれの塊状物の組成は、試験例1の試験条件No.1において得られた2種類の塊状物のそれぞれの組成と近似したものであった。
実施例2:
熱処理温度を1200℃とすること以外は、試験例1の試験条件No.1と同様にして、一方が希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物であり、他方が鉄族元素の炭素との合金を主成分とする塊状物である、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物を得た。この2種類の塊状物は、力を加えることで両者が分離し、それぞれの塊状物の組成は、試験例1の試験条件No.1において得られた2種類の塊状物のそれぞれの組成と近似したものであった。
実施例3:
リチウム源として炭酸リチウムのかわりに酢酸リチウムを用いること以外は、試験例1の試験条件No.1と同様にして、一方が希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物であり、他方が鉄族元素の炭素との合金を主成分とする塊状物である、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物を得た。この2種類の塊状物は、力を加えることで両者が分離し、それぞれの塊状物の組成は、試験例1の試験条件No.1において得られた2種類の塊状物のそれぞれの組成と近似したものであった。
実施例4:
リン源としてリン酸二アンモニウムのかわりに赤燐を用いることと、予備加熱をしないこと以外は、試験例1の試験条件No.1と同様にして、一方が希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物であり、他方が鉄族元素の炭素との合金を主成分とする塊状物である、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物を得た。この2種類の塊状物は、力を加えることで両者が分離し、それぞれの塊状物の組成は、試験例1の試験条件No.1において得られた2種類の塊状物のそれぞれの組成と近似したものであった。
実施例5:
試験例1で調製した酸化処理を行った磁石加工屑5.00gに、リチウム源として炭酸リチウムと、リン源としてリン酸二アンモニウムを、磁石加工屑に含まれる希土類元素とリチウムとリンの原子組成百分率が、希土類元素が8.0atm%、リチウムが31.0atm%、リンが61.0atm%となるように混合するとともに、無煙炭(販売元:神鋼商事)を0.72g混合し、炭素るつぼに収容した後、工業用アルゴンガス雰囲気中で1300℃で2時間熱処理することで、一方が希土類元素の酸化物を主成分とする塊状物であり、他方が鉄族元素の炭素との合金を主成分とする塊状物である、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物を得た。この2種類の塊状物は、力を加えることで両者が分離し、それぞれの塊状物の組成は、試験例1の試験条件No.1において得られた2種類の塊状物のそれぞれの組成と近似したものであった。
比較例1:
試験例1で調製した酸化処理を行った磁石加工屑2.00gとカーボンブラック(東海カーボン社製のファーネスブラック)0.40gを混合して炭素るつぼに収容した後、工業用アルゴンガス雰囲気中で1200℃で2時間熱処理した。その後、炭素るつぼを室温まで炉冷し、るつぼ内の様子を観察したところ、粗い粒子が接合してなる単一の塊状物が存在し、互いに独立かつ密接して存在する2種類の塊状物は得られなかった。なお、得られた単一の塊状物を構成する個々の粒子は2相構造を有しており、その一方は希土類元素の酸化物であって他方は鉄族元素の炭素との合金であった(SEM・EDX分析による)。
本発明は、少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移して1000℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離して回収する方法において、熱処理温度が低温域の場合でも、希土類元素を酸化物として鉄族元素からマクロに分離して回収する方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。

Claims (7)

  1. 少なくとも希土類元素と鉄族元素を含む処理対象物から希土類元素を回収する方法であって、酸化処理を行った処理対象物に、リチウム源とリン源を添加して、処理対象物に含まれる希土類元素とリチウムとリンの原子組成百分率を、希土類元素が8atm%以下、リチウムが20atm%〜36atm%、リンが56atm%以上とし、炭素の存在下で1000℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離する工程を少なくとも含んでなることを特徴とする方法。
  2. リチウム源が、リチウム塩、リチウム酸化物、リチウム水酸化物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. リン源が、リン酸塩、リン酸化物、単体リンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 熱処理温度を1350℃以下とすることを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 処理対象物の少なくとも一部が5mm以下の粒径を有する粒状ないし粉末状であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 処理対象物の鉄族元素含量が30mass%以上であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  7. 処理対象物がR−Fe−B系永久磁石であることを特徴とする請求項1記載の方法。
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