JP2013204036A - 多孔質膜の製造方法、多孔質膜、電解質膜、二次電池及び燃料電池 - Google Patents

多孔質膜の製造方法、多孔質膜、電解質膜、二次電池及び燃料電池 Download PDF

Info

Publication number
JP2013204036A
JP2013204036A JP2012078234A JP2012078234A JP2013204036A JP 2013204036 A JP2013204036 A JP 2013204036A JP 2012078234 A JP2012078234 A JP 2012078234A JP 2012078234 A JP2012078234 A JP 2012078234A JP 2013204036 A JP2013204036 A JP 2013204036A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
porous
porous film
resin composition
sacrificial film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012078234A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5865761B2 (ja
Inventor
Motoharu Ataka
元晴 安宅
Masashi Kano
正史 加納
Takanobu Tsujii
敬亘 辻井
Akio Ishizuka
紀生 石塚
Takaya Sato
貴哉 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
EMAUS KYOTO KK
Kyoto University
Sekisui Chemical Co Ltd
Institute of National Colleges of Technologies Japan
Original Assignee
EMAUS KYOTO KK
Kyoto University
Sekisui Chemical Co Ltd
Institute of National Colleges of Technologies Japan
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by EMAUS KYOTO KK, Kyoto University, Sekisui Chemical Co Ltd, Institute of National Colleges of Technologies Japan filed Critical EMAUS KYOTO KK
Priority to JP2012078234A priority Critical patent/JP5865761B2/ja
Publication of JP2013204036A publication Critical patent/JP2013204036A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5865761B2 publication Critical patent/JP5865761B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
    • Y02P70/50Manufacturing or production processes characterised by the final manufactured product

Landscapes

  • Conductive Materials (AREA)
  • Cell Separators (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)
  • Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)

Abstract

【課題】膜表面における非多孔性のスキン層の形成を抑制した、多孔質膜の製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】(1)樹脂組成物を犠牲膜4上に流延し、前記樹脂組成物を硬化させて多孔質膜5にした硬化積層体1を形成後、犠牲膜4の少なくとも一部を除去することにより、犠牲膜4に接して硬化された多孔質膜5の表面に、多孔質膜5の内部の多孔構造と連結した開口部を形成することを特徴とする多孔質膜の製造方法。(2)第一の基板2上及び第二の基板3上に犠牲膜4をそれぞれ形成し、第一の基板2の犠牲膜4上に前記樹脂組成物を流延し、第二の基板3を、第二の基板の犠牲膜4が前記流延した樹脂組成物に接するように重ねた後、前記樹脂組成物を硬化させて多孔質膜5にした硬化積層体1を形成することを特徴とする前記多孔質膜の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、多孔質膜の製造方法、多孔質膜、電解質膜、二次電池及び燃料電池に関する。
二次電池や燃料電池の電解質膜又はセパレータとして使用される多孔質膜には、高い空隙率、耐薬品性、優れた機械的強度などの特性が求められる。これらの特性を備える多孔質膜として、三次元網目構造の連続した骨格と空隙とを有するモノリス型多孔体の適用が検討されている。従来のモノリス型多孔体の例として、特許文献1が知られている。これらのモノリス型多孔体の内部構造は、明確な三次元網目構造を形成しているとは言い難く、むしろ粒子凝集体の間隙に不規則な形状の空隙が走っている構造である。一方、特許文献2には、比較的規則的な空隙が三次元網目構造として形成された、エポキシ樹脂からなるモノリス型多孔体の製造方法が開示されている。
国際公開WO2006/073173号 特開2009-269948号公報
ところで、従来の製造方法で形成された多孔質膜の表面には、非多孔性のスキン層が形成される問題があった。多孔質膜を電池の電解質膜やセパレータとして使用する場合、電解質等が多孔質膜を透過する必要がある。このため、多孔質膜の表面に形成されたスキン層を、研磨や薬品処理によって除去する工程が必要であった。多孔質膜をロール・ツー・ロール法などの大量生産方式で製造する場合、スキン層の除去工程はコスト増につながり、製造歩留まりの悪さを生じる虞があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、膜表面における非多孔性のスキン層の形成を抑制した、多孔質膜の製造方法の提供を課題とする。また、本発明の製造方法によって得られた多孔質膜、該多孔質膜をセパレータとして備えた二次電池、該多孔質膜に電解質を含浸させた電解質膜、並びに該電解質膜を備えた二次電池及び燃料電池の提供を課題とする。
本発明の請求項1に記載の多孔質膜の製造方法は、樹脂組成物を犠牲膜上に流延し、前記樹脂組成物を硬化させて多孔質膜にした硬化積層体を形成後、前記犠牲膜の少なくとも一部を除去することにより、前記犠牲膜に接して硬化された前記多孔質膜の表面に、前記多孔質膜の内部の多孔構造と連結した開口部を形成することを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の多孔質膜の製造方法は、請求項1において、第一の基板上及び第二の基板上に前記犠牲膜をそれぞれ形成し、前記第一の基板の犠牲膜上に前記樹脂組成物を流延し、前記第二の基板を、前記第二の基板の犠牲膜が前記流延した樹脂組成物に接するように重ねた後、前記樹脂組成物を硬化させて多孔質膜にした前記硬化積層体を形成することを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の多孔質膜の製造方法は、請求項1又は2において、前記犠牲膜が水溶性であり、前記硬化積層体を水中に投入して前記犠牲膜の少なくとも一部を溶解させることにより、前記硬化積層体を構成していた前記多孔質膜を前記水中に放出させることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の多孔質膜の製造方法は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記犠牲膜に接して硬化された多孔質膜の表面に、前記多孔質膜の内部とは異なる性状を有する変性層が形成されることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の多孔質膜の製造方法は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記犠牲膜の主成分がポリビニルアルコールであることを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の多孔質膜の製造方法は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記樹脂組成物を、加熱によって硬化させることを特徴とする。
本発明の請求項7に記載の多孔質膜の製造方法は、請求項1〜6のいずれか一項において、前記多孔質膜の主成分がエポキシ樹脂硬化物であることを特徴とする。
本発明の請求項8に記載の多孔質膜は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする。
本発明の請求項9に記載の二次電池は、請求項8に記載の多孔質膜をセパレータとして備えたことを特徴とする。
本発明の請求項10に記載の電解質膜は、請求項8に記載の多孔質膜に電解質が含浸されてなることを特徴とする。
本発明の請求項11に記載の二次電池は、請求項10に記載の電解質膜を備えたことを特徴とする。
本発明の請求項12に記載の燃料電池は、請求項10に記載の電解質膜を備えたことを特徴とする。
本発明の多孔質膜の製造方法によれば、多孔質膜の表面にスキン層が形成されることを抑制し、膜表面が多孔性である多孔質膜を容易に低コストで製造することができる。本発明の製造方法によって得られる多孔質膜は、電池を構成するセパレータ又は電解質膜として利用可能であり、該セパレータ又は電解質を備えた二次電池若しくは燃料電池の製造に利用できる。
本発明にかかる製造方法で形成した硬化積層体の一例の断面を示す模式図である。 本発明にかかる製造方法で形成した硬化積層体の一例の上面を示す写真である。 硬化積層体を構成していた多孔質膜が水中に放出された様子を示す写真である。 実施例1で得た多孔質膜の断面を示す、倍率4,000のSEM画像である。 実施例1で得た多孔質膜の断面において、ポアサイズ100〜500nmの多孔構造が形成された様子を示す、倍率10,000のSEM画像である。 実施例1で得た多孔質膜の膜表面において、膜内部の多孔構造に連結した開口部が形成された様子を示す、倍率20,000のSEM画像である。 実施例1で得た多孔質膜の第一の基板側の膜表面において、膜内部の多孔構造に連結した開口部が形成された様子を示す、倍率4,000のSEM画像である。 実施例1で得た多孔質膜の第二の基板側の膜表面において、膜内部の多孔構造に連結した開口部が形成された様子を示す、倍率4,000のSEM画像である。 実施例2で得た多孔質膜の断面を示す、倍率4,000のSEM画像である。 比較例1で得た多孔質膜のスキン層の表面を示す、倍率4,000のSEM画像である。 比較例1で得た多孔質膜の断面におけるスキン層及び膜内部の多孔構造の様子示す、倍率4,000のSEM画像である。 比較例1で得た多孔質膜のスキン層を除去した後の、多孔質膜の表面を示す、倍率4,000のSEM画像である。 実施例1及び比較例1で得た各多孔質膜の表面部を測定した、FT-IRのスペクトルである。上図が実施例1のスペクトルであり、下図が比較例1のスペクトルである。 上側のスペクトルは、図13の上図から下図を差し引いた差スペクトルである。下側のスペクトルは、参照のための2%PVAフィルムのFT-IRスペクトルである。
以下、本発明について図面を参照して詳しく説明する。
<多孔質膜の製造方法>
本発明の多孔質膜の製造方法は、樹脂組成物を犠牲膜上に流延し、前記樹脂組成物を硬化させて多孔質膜にした硬化積層体を形成後、前記犠牲膜の少なくとも一部を除去することにより、前記犠牲膜に接して硬化された前記多孔質膜の表面に、前記多孔質膜の内部の多孔構造と連結した開口部を形成する方法である。
前記樹脂組成物は、多孔質膜を構成する樹脂材料を含むものであり、基板等に流延することができる流動性を有するものであれば特に制限されない。前記流動性は、多孔質膜の製造プロセスにおける通常の温度範囲(例えば0〜100℃)で発現されていればよい。前記流動性の程度は特に制限されないが、例えば基板上にディスペンサーを用いて当該樹脂組成物を流延できる程度であればよい。ここで、「流延する」とは、基板等に前記樹脂組成物を滴下して、当該樹脂組成物が自重によって自然に基板上に広がることだけに限定されず、滴下した樹脂組成物をヘラや刷毛等で塗布して延ばすことも含む操作である。
前記犠牲膜は、前記樹脂組成物及び前記多孔質膜と密着して、空気などが間に介在することを防ぐ表面特性を有することが好ましい。
前記犠牲膜は親水性又は疎水性の何れであってもよい。前記犠牲膜に流延する樹脂組成物との親和性が高い方、又は前記樹脂組成物の硬化後に形成される多孔質膜との親和性が高い方を選択することが好ましい。例えば、前記多孔質膜の表面特性が親水性である場合は、前記犠牲膜は親水性であることが好ましい。同様に、前記多孔質膜の表面特性が疎水性である場合は、前記犠牲膜は疎水性であることが好ましい。
前記犠牲膜の厚さは、上に流延する樹脂組成物との密着性、及び形成された多孔質膜との密着性が保たれる厚さであれば特に制限されない。多孔質膜の厚さにもよるが、通常、10nm〜5000nmが好ましく、10〜1000nmがより好ましく、10〜500nmがより好ましい。
前記犠牲膜の具体例としては、親水性の前記多孔質膜との親和性及び密着性に優れる、ポリビニルアルコールを主成分とする膜が好ましい。例えば、平均重合度2000〜5000、鹸化度80〜95%の市販のポリビニルアルコールを1〜10重量%の水溶液として調製し、このポリビニルアルコール水溶液を基板上に流延した後、乾燥して水分を除去することによって、親水性の前記犠牲膜を形成することができる。基板上に流延された前記水溶液の厚さを調整することにより、形成される犠牲膜の厚さを調整することができる。
前記犠牲膜をポリビニルアルコールで構成する場合、該ポリビニルアルコールの重量平均重合度は、1000〜5000が好ましく、2000〜5000が好ましく、2000〜4000がさらに好ましい。また、前記ポリビニルアルコールの鹸化度は、80〜98%が好ましく、85〜95%がより好ましく、85〜90%がさらに好ましい。
前記ポリビニルアルコールを主成分とする膜における、ポリビニルアルコールの含有量としては、50〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましい。100重量%ではない場合、当該犠牲膜の残部は、ポリビニルアルコールと親和性の高い又はポリビニルアルコール水溶液に溶解可能な、高分子又は低分子によって構成されることが好ましい。
多孔質膜をエポキシ樹脂で構成する場合、犠牲膜の材料としてポリビニルアルコールを用いると、当該ポリビニルアルコールをエポキシ樹脂で構成された多孔質膜の表面に結合させることができる。これは、ポリビニルアルコールのエポキシ樹脂に対する反応性が高いためである。表面に結合したポリビニルアルコールは、後述する変性層を形成することができる。
前記犠牲膜は樹脂(高分子ポリマー)を含有する膜であることが好ましい。前記犠牲膜が樹脂を含有する場合、当該樹脂の種類は、前記多孔膜を構成する樹脂と同じ種類でも良いし、異なる種類でも良いが、異なる種類であることが好ましい。
前記犠牲膜の他の例としては、シリコーン系ポリマー、フッ素系ポリマー、自己架橋型ポリマー等の各種ポリマーで構成された膜が挙げられる。
また、多孔質膜と犠牲膜との親和性又は結合性を高めるために、犠牲膜にシランカップリング剤などの公知のカップリング剤を含有させてもよい。
本発明の製造方法においては、前記犠牲膜の上に前記樹脂組成物を流延することによって、前記樹脂組成物からなる層と前記犠牲膜とが密着した状態の樹脂組成物積層体を形成する。(本明細書において、樹脂組成物積層体を単に「積層体」と呼ぶことがある。)前記積層体において、前記樹脂組成物からなる層と前記犠牲膜とが密着していない領域があると、硬化後に形成される多孔質膜の前記領域に該当する部位にスキン層が形成されてしまう虞がある。したがって、前記犠牲膜の上に前記樹脂組成物を流延する方法は、前記樹脂組成物からなる層と前記犠牲膜とを密着して積層できる方法であれば特に制限されないが、前記犠牲膜を損傷するような勢いで前記樹脂組成物を滴下したり、展開したりすることは避けるべきである。
前記積層体の積層構造としては、前記犠牲膜の上に前記樹脂組成物を流延してなる層を積層した2層構造が最小単位となる。この2層構造において前記樹脂組成物を硬化させて多孔質膜を形成した場合、前記多孔質膜が有する2面のうち、前記犠牲膜と密着した面については、スキン層の形成を抑制することができる。一方、前記犠牲膜と密着していない面については、スキン層が形成されてしまう虞がある。多孔質膜の用途にもよるが、通常は、多孔質膜の両面においてスキン層の形成を抑制することが望ましい。このため、本発明の製造方法においては、前記樹脂組成物を流延してなる層の両面に、前記犠牲膜が各々配置された3層構造を有する積層体を形成することが好ましい。
前記樹脂組成物積層体を形成する好適な方法として、第一の基板上及び第二の基板上に前記犠牲膜をそれぞれ形成し、前記第一の基板の犠牲膜上に前記樹脂組成物を流延した後、前記第二の基板を、前記第二の基板の犠牲膜が前記流延した樹脂組成物に接するように重ねる方法が例示できる。この樹脂組成物積層体を構成する樹脂組成物を硬化させて、当該樹脂組成物を多孔質膜にすることによって、図1に示すように、多孔質膜の両面を犠牲膜が挟んでなる3層構造を有する硬化積層体を容易に形成することができる。
前記基板としては、その表面に前記犠牲膜を形成できるものであれば特に制限されず、たとえばガラス板、プラスチック板等が挙げられる。樹脂組成物を硬化させる際の加熱処理や電磁波照射処理に耐える材料で構成される基板が好ましい。前記基板の厚さは特に制限されず、前記積層体を構成した際に、自重を支えられる剛性を発現する厚さであることが好ましい。
前記樹脂組成物積層体の形成後に、前記樹脂組成物を硬化させる。ここで、「樹脂組成物を硬化させる」とは、前記樹脂組成物に含有される樹脂材料を重合又は架橋させることを意味する。
前記樹脂組成物を硬化させる方法は特に制限されず、前記樹脂組成物を硬化させる硬化剤、架橋剤又は重合剤の種類に応じて、例えば加熱したり、紫外線や電子線等の電磁波を照射したりすることによって硬化反応を起こす方法が例示できる。
加熱時間や硬化反応時間等の条件は、前記樹脂組成物が硬化して多孔質膜を形成できる条件であれば特に限定されず、適宜調整される。
硬化反応後、前記硬化積層体の積層構造を解除して、形成された多孔質膜に密着している前記犠牲膜の少なくとも一部を除去することにより、目的の多孔質膜を得ることができる。
前記犠牲膜を前記多孔質膜の表面から除去する際、当該犠牲膜の全てを完全に除去しても良いし、当該犠牲膜の一部を残存させても良い。
ここで、一部を残存させた状態としては、当該多孔質膜の表面に形成された複数の開口部が塞がれない程度に、当該多孔質膜の表面の表層部に犠牲膜が残存した状態であること、又は当該多孔質膜の表面の表層部に犠牲膜に由来する官能基が結合した状態であること、が好ましい。また、前記犠牲膜が前記開口部の内部を埋めて充填すること無く、前記犠牲膜が前記開口部の周囲に付着している状態であることが好ましい。
この様に多孔質膜の表面の表層部に前記犠牲膜の一部を残存させることにより、残存した犠牲膜で構成された変性層を当該多孔質膜の表面の表層部に形成することができる。
前記形成された多孔質膜に密着している前記犠牲膜を除去する方法としては、物理的に剥がす方法の他、前記犠牲膜を溶解する方法が例示できる。後者の方法を以下に説明する。
前記犠牲膜が水溶性である場合、前記樹脂組成物積層体を構成する前記樹脂組成物を硬化させて前記多孔質膜が形成された硬化積層体を得た後、前記硬化積層体を水中に投入して前記犠牲膜を溶解させることにより、前記硬化積層体の積層構造を解除させ、前記硬化積層体中に挟まれていた前記多孔質膜を前記水中に放出させることができる。この方法によれば、前記多孔質膜の表面に密着していた前記犠牲膜を、前記表面を損傷することなく容易に除去することができる。
ここでは前記犠牲膜が水溶性である場合を説明したが、前記犠牲膜が脂溶性である場合には、前記犠牲膜が溶解する適当な溶媒(例えば油)中に前記硬化積層体を投入することにより、多孔質膜から当該犠牲膜を同様に除去することができる。
前記犠牲膜を溶解することによって除去する場合、溶解条件を調整することによって、犠牲膜を完全に除去するか、犠牲膜の一部を残存させるか、を調整することができる。溶解条件を激しくする(例えば、高温、長時間)ことにより、犠牲膜をほぼ完全に除去することができる。また、溶解条件を穏和にする(例えば、低温、短時間)ことにより、犠牲膜の一部を残存させることができる。
以上で説明した様に、前記樹脂組成物を前記犠牲膜に密着させた状態で硬化することにより、形成される多孔質膜の表面にスキン層(非多孔性の層)が形成されることを抑制することができる。つまり、本発明の製造方法によれば、前記犠牲膜に接して形成された多孔質膜の表面に、前記多孔質膜の内部の多孔構造と連結した開口部を形成することができる。
また、本発明の製造方法において、形成される多孔質膜の表面に、前記多孔質膜の内部の性状とは異なる性状を有する変性層を形成することができる。
前記性状とは、物理的又は化学的な性質であることが好ましい。前記犠牲膜に接して硬化された多孔質膜の表面の性状は、当該犠牲膜と当該多孔質膜との相互作用又は反応を制御することによって、種々の異なる状態に調整することができる。
前記物理的性質としては、多孔質構造の形状、ポアサイズ、開口部の形状などが例示できる。前記化学的な性質としては、樹脂(高分子ポリマーの種類)、官能基の種類、官能基の量などが例示できる。
前記変性層が樹脂を含有する場合、当該変性層の樹脂の種類は、当該多孔膜を構成する樹脂と同じ種類でも良いし、異なる種類でも良いが、異なる種類であることが好ましい。
前記多孔質膜がエポキシ樹脂で構成される場合、前記犠牲膜としては、1級アミノ基、2級アミノ基、メルカプト基、チオール基、イオン性基、シアノ基、カーボネート基、ハロゲン基、オキシアルキレン基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基又は水酸基を有する化合物で構成された膜であることが好ましい。前記犠牲膜がこれらの官能基を有する膜であると、前記多孔質膜と前記犠牲膜とが接する領域において、前記官能基がエポキシ樹脂と反応して、前記多孔質膜の表面に前記官能基に由来する官能基を付与させることができる。この観点から、エポキシ基との反応性に優れた水酸基がより好ましい。
例えば、前記犠牲膜としてポリビニルアルコールを主成分とする膜を用いると、硬化後に形成される多孔質膜の表面に、ポリビニルアルコールに由来する水酸基を導入することができる。このように、水酸基によって多孔質膜の表面を修飾することにより、当該多孔質膜に親水性を付与することができる。この場合、多孔質膜と犠牲膜との界面において、多孔質膜に含有されるエポキシ樹脂と、犠牲膜に含有されるポリビニルアルコールの水酸基とが反応することにより、これらの間に化学的な結合が形成される。
また、犠牲膜を構成する樹脂又は化合物を適宜選択することにより、多孔質膜表面の開口部の平均径を多孔質膜内部の空隙の平均孔径(ポアサイズ)よりも小さくすること、すなわち多孔質膜表面の開口部を縮小(シュリンク)させることができる。
前記変性層の厚みは特に制限されず、変性層を付与する用途に応じて適宜選択すればく、例えば1000nm以下であることが好ましい。
前記変性層を形成する方法としては、例えば、前記犠牲膜を前記多孔質膜の表面から除去する際に当該犠牲膜の一部を残存させることによって、目的の多孔質膜の表面の表層部に前記変性層を形成する方法、又は、前記樹脂組成物を前記犠牲膜と接触した状態で硬化させることによって、目的の多孔質膜の表面の表層部に前記犠牲膜に由来する官能基を反応させて、該官能基由来の基を多孔質膜の表面に付与する方法が挙げられる。
<樹脂組成物>
本発明の製造方法で使用する前記樹脂組成物は、前記多孔質膜を構成する樹脂材料を含むものであり、基板等に流延することができる流動性を有するものである。
前記樹脂材料は、前記多孔質膜を構成する樹脂のモノマー又は未架橋のプレポリマーであることが好ましい。前記モノマーが重合して鎖状若しくは網目状のポリマーを形成することにより又は前記未架橋のプレポリマーが架橋することにより、後述するように多孔質膜が形成される。前記樹脂組成物の流動性は高い方が製造プロセス上好ましいため、前記樹脂材料としては前記モノマーが好ましい。
前記多孔質膜を構成する前記樹脂材料は、硬化後に多孔質膜を形成できるものであれば特に制限されず、公知の樹脂材料が使用可能である。具体的な樹脂材料については後述する。
前記樹脂組成物には、前記樹脂材料の他に、多孔質構造をより容易に形成するためのポロゲン、前記ポロゲンと同等の効果をもたらす有機高分子、又は前記ポロゲン及び金属アルコキシドからなるゾルを含有させることが好ましい。前記ポロゲンを用いることにより、モノリス型の多孔質膜を容易に形成することができる。前記ポロゲン、前記有機高分子及び前記ゾルについては後述する。
前記樹脂組成物には、前記モノマーを重合させて樹脂を形成するための重合開始剤又は前記プレポリマーを架橋させるための架橋剤を含有させることが好ましい。前記重合開始剤及び架橋剤をまとめて硬化剤と呼ぶ。前記硬化剤は、重合によって形成される樹脂の骨格に組み込まれてもよいし、樹脂を構成するプレポリマー間を単に架橋するだけでもよい。使用する樹脂に適した公知の硬化剤を使用することができる。例えば、熱又は光によって硬化反応を開始させる公知の硬化剤が挙げられる。
その他、前記樹脂組成物には、溶媒、レベリング剤、界面活性剤、充填剤、色素、染料等を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、必要に応じて適宜含有させても良い。
前記樹脂組成物における各成分の種類や配合量は、形成する多孔質膜の機械的強度、化学的表面特性、耐薬品性、多孔構造の大きさや形状等に応じて、公知の多孔質膜を形成するための樹脂組成物における各成分の種類や配合量を適用できる。具体例は後述する。
本発明にかかる多孔質膜の製造方法によって形成される多孔質膜は、機械的強度、寸法安定性、絶縁性及び耐薬品性に優れ、膜表面が高い親水性を有する、エポキシ樹脂硬化物を主成分とする膜であることが好ましい。つまり、前記樹脂組成物は、エポキシ樹脂を形成する樹脂材料(単にエポキシ樹脂と呼ぶことがある。)及び硬化剤を主成分として含有することが好ましい。また、(メタ)アクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等を用いることができる。
前記エポキシ樹脂硬化物を主成分とする膜における、エポキシ樹脂硬化物の含有量としては、50〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましい。前記多孔質膜を構成する材料が前記エポキシ樹脂硬化物のみではない場合、当該多孔質膜を構成する材料の残部は、前記エポキシ樹脂硬化物と親和性の高い又は前記樹脂組成物においてエポキシ樹脂と混和可能な、高分子又は低分子によって構成されることが好ましい。
また、前記樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤を50〜99重量%含有することが好ましく、60〜80重量%含有することがより好ましい。前記樹脂組成物のエポキシ樹脂及び硬化剤以外の成分としては、後述するポロゲン、希釈溶媒などが例示される。
前記エポキシ樹脂を含む樹脂組成物は、大きく分類すると、芳香族エポキシ樹脂と芳香族硬化剤の組み合わせ、芳香族エポキシ樹脂と非芳香族硬化剤の組み合わせ、非芳香族エポキシ樹脂と芳香族硬化剤の組み合わせ、非芳香族エポキシ樹脂と非芳香族硬化剤の組み合わせに分けることができる。
例えば、国際公開第2006/073173号には、エポキシ樹脂硬化物の炭素原子全体に占める芳香環由来の炭素原子の比率が0.10〜0.65で構成されるメソポアのないエポキシ樹脂多孔体を製造するための樹脂組成物および硬化方法(重合方法)が開示されている。また、分子構造式から導き出される芳香族由来の炭素原子の比率が0.1未満であってもエポキシ樹脂多孔体の形成が可能であることに加え、さらに芳香環由来の炭素原子の比率が0.65以下で骨格内にメソポアを形成した2種類の孔を有するエポキシ樹脂多孔体を製造するための樹脂組成物および硬化方法は、特開2009-269948に開示されている。
本発明にかかる多孔質膜の製造方法において、多孔質膜を構成する樹脂組成物については、従来公知の樹脂組成物およびその硬化方法を適用することができる。これらのうち、特開2009-269948に記載された樹脂組成物およびその硬化方法が好適である。
以下、この好適な方法に基づいて、本発明の多孔質膜の製造方法において使用できる樹脂組成物およびその硬化方法を説明する。
本発明の多孔質膜は、以下に説明するエポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含有する樹脂組成物を、前記犠牲膜で挟まれた状態の積層構造にしたうえで硬化させて製造することが好ましい。
本発明にかかる多孔質膜の製造方法の第一実施形態として、25℃における粘度が400mPa・s以上のポリアミノアミド系硬化剤を用いたエポキシ樹脂を、前記犠牲膜で挟まれた積層状態で硬化する方法が挙げられる。
第一実施形態で使用するエポキシ樹脂組成物としては、エポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせによる炭素原子全体に占める芳香族由来の炭素原子の比率が0.1未満であって、その中でも、非芳香族エポキシ樹脂と非芳香族アミン硬化剤との組み合わせ、特に、脂環式エポキシ樹脂とポリアミノアミド系硬化剤との組み合わせが好ましい。尚、エポキシ樹脂と硬化剤は、それぞれ1種類又は2種以上混在して使用してもよい。エポキシ樹脂又は硬化剤のいずれか一方でも芳香族系の原料を用いた場合、得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性が向上するが、電池の電解質層におけるセパレータとして用いた場合、芳香環の平面認識力によって、平面的な物質を選択的に保持するなどといった付加的な作用が起きる可能性がある。このため芳香族系の原料は少ない方が好ましい。したがって、エポキシ樹脂硬化物を構成する炭素原子全体に占める芳香環由来の炭素原子の比率が0.1未満(下限は0)であることが好ましい。
本発明の多孔質膜を形成するために使用可能なエポキシ樹脂としては、たとえば、芳香環由来の炭素原子を含む芳香族エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンべ−スなどのポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、2,2,2,−トリ−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアネートなどのトリグリシジルイソシアヌレート、トリアジン環含有エポキシ樹脂等、複素芳香環を含むエポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンなどを挙げることができる。
また、芳香環由来の炭素原子を含まない非芳香族エポキシ樹脂として、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
これらのなかでも、分子内にグリシジル基が二つ以上有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、2,2,2,−トリ−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアネート、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンがより好ましい。
本発明の多孔質膜を形成するために使用される硬化剤のうち、芳香環由来の炭素原子を含む芳香族硬化剤としては、メタフェニレンジアミンやジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼンなどの芳香族アミン、無水フタル酸や無水トリメット酸、無水ピロメット酸などの芳香族酸無水物、フェノール系化合物、フェノール系樹脂、フェノールホルムアルデヒド型ノボラックやフェノールアルキル型ノボラック等のノボラック型フェノール樹脂、イソフタル酸ジヒドラジドなどの芳香族ヒドラジド類、トリアジン環などの複素芳香環を有する芳香族アミン、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド等の芳香族ポリアミン類及び芳香族ポリアミンヒドラジド類などが挙げられる。
また、芳香環由来の炭素原子を含まない非芳香族硬化剤として、エチレンジアミンやジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミンなどの脂肪族アミン類、アジピン酸ジヒドラジドやセバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジドなどの脂肪族ヒドラジド類、イソホロンジアミンやメンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタンやこれらの変性品などの脂環族ポリアミン類、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)などの脂肪族ポリアミンヒドラジド類、ポリアミン類とダイマー酸からなる脂肪族ポリアミドアミン類やポリアミノアミド類など、ビューレトリートリ−(ヘキサメチレン−N,N−ジメチルセミカルバジド)を主成分とするオリゴマープロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、ビューレトリートリ−(ヘキサメチレン−N,N−ジメチルセミカルバジド)を主成分とするオリゴマーN,N−ジメチルホルムアミド溶液、スピログリコールや2−(5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチルプロパン−1−オールなどのグリコール類、その他アミンアダクト系硬化剤などが挙げられる。
これらの硬化剤のうち、特に好ましくは、25℃における粘度が400mPa・s以上のポリアミノアミド系硬化剤を用いることである。この場合は下記の有機高分子或いは金属アルコキシドを用いることなくポロゲンを存在させるだけでメソポアの空隙を持つ多孔質の構造物が作成できるが、上記のその他の硬化剤を使用したときは下記の有機高分子或いは金属アルコキシドを使用する必要がある。尚、本発明で用いるポリアミノアミド系硬化剤の粘度の上限は特に限定されないが、容易に入手可能なことなどを考慮すれば、単一円筒回転粘度計法による40℃における粘度が70,000mPa・s以下のポリアミノアミド系硬化剤を用いるのが好ましい。さらに、25℃における粘度が400mPa・s以上のポリアミノアミド系硬化剤を使用する場合であっても有機高分子や金属アルコキシドの使用を妨げるものではない。
本発明の多孔質膜を形成するために、エポキシ樹脂硬化物のマクロ孔やメソポアの空隙となりえるポロゲンを使用できる。つまり、エポキシ樹脂及び硬化剤を溶かすことができ、且つエポキシ樹脂と硬化剤が重合した後、反応誘起相分離を生じさせることが可能な溶剤をポロゲンとして用いることができる。
このようなポロゲンとしては、たとえば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール類などを挙げることができる。これらのなかでも、分子量200以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。あるいは、分子量600以上のポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなど、室温中において蝋質(半固形)状であっても、重合温度においてエポキシ樹脂や硬化剤と相溶し、かつ液状となるものであれば、ポロゲンとして使用することができる。
本発明にかかる好適な多孔質膜を製造する第二実施形態として、前記犠牲膜の間に積層された樹脂組成物における相分離をより誘起させるために、ポロゲンと同等の効果をもたらす有機高分子をポロゲンに加えて添加する方法が例示できる。上記有機高分子としては、重合系に均一かつ溶解することが出来れば特に分子量などは限定されないが、たとえば、ポリエチレングルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体に代表されるこれらの共重合体等が挙げられる。上記の中で好ましくは、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体を用いることである。尚、これらが単独で用いられてもよいし、併用されても構わない。有機高分子の配合割合は、得ようとする骨格部のメソポア径に応じて適宜調節することができる。
本発明にかかる好適な多孔質膜を製造する第三実施形態として、前記犠牲膜の間に積層された樹脂組成物におけるエポキシ樹脂の硬化時に、ポロゲンと金属アルコキシドからなるゾルを添加して重合し、後に溶解により添加物を洗浄することで添加物が物理的に存在した孔を骨格内のメソポアとして形成する方法が有効な方法として例示できる。この方法の場合は、上記の第一実施形態のように、硬化剤として25℃における粘度が400mPa・s以上のポリアミノアミドといった特定の硬化剤に限定する必要はなく、より多くの硬化剤を用いることができる。
上記、金属アルコキシドからなるゾルとしては、シリカアルコキシドとして、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、1,2−ビストリメトキシシリルエタン、Si原子に1〜4つのアルコキシ基が結合したシリカアルコキシド、グリシジル基を導入したシリカアルコキシド等、チタンアルコキシドとして、チタニウムn−プロポキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムn−ブトキシド、チタニウムt−ブトキシド等、ジルコニウムアルコキシドとして、ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド等、ハフニウムアルコキシドとして、ハフニウムプロポキシド、ハフニウムイソプロポキシド、ハフニウムn−ブトキシド、ハフニウムt−ブトキシド等が挙げられる。
これらのなかでも、Si原子に1〜4つのアルコキシ基が結合したシリカアルコキシド、グリシジル基を導入したシリカアルコキシドからなるゾルが好ましく、グリシジル基を導入したシリカアルコキシドからなるゾルが特に好ましい。グリシジル基を導入することにより、エポキシ樹脂硬化物内に取り込みやすくすることが可能となる。尚、これらが単独で用いられてもよいし、併用されても構わない。
また、前記多孔質膜を形成するためのエポキシ樹脂を含有する組成物には、犠牲膜を構成する化合物(例えば、ポリビニルアルコール)との親和性を向上させるために、シランカップリング剤などの公知のカップリング剤を含有させてもよい。
本発明にかかる多孔質膜の製造方法の樹脂組成物において、全炭素原子に占める芳香環由来の炭素原子比率が0.65を超すと、柱状のエポキシ樹脂硬化物の三次元分岐網目状構造の骨格からなる非粒子凝集型の硬化物多孔体を得ることが困難となるおそれがある。
本発明にかかる多孔質膜の製造方法の樹脂組成物において、エポキシ樹脂と硬化剤の配合割合は、上記の全炭素原子に占める芳香環由来の炭素原子比率を満足する範囲のなかで、エポキシ基1当量に対して、硬化剤当量(アミン当量)が0.6〜1.5の範囲になるように調整するのが好ましい。硬化剤当量比が0.6より少ない場合はエポキシ樹脂硬化物の架橋密度が低くなり、耐熱性、耐溶剤性などが低下する場合がある。また1.5より多くなると、未反応の官能基が多くなり、未反応のまま硬化物中に残留したり、あるいは架橋密度向上を阻害する要因となり好ましくない。
本発明にかかる多孔質膜は、上記の様に、エポキシ樹脂とポリアミン系硬化剤の混合物を、それらと非反応性であり、かつそれらを溶解可能なポロゲンに常温で又は加温して溶解し、さらに適宜、有機高分子の添加や金属アルコキシドからなるゾルを添加して調製した樹脂組成物を得て、この樹脂組成物を加熱重合し、重合物とポロゲンがスピノーダル相分離後、相分離が進展して共連続構造が消滅する前に、架橋反応によって構造を固定させ、次いでポロゲンや添加物を除去することによって製造できる。
前記多孔質膜の多孔構造をより容易に形成するために、硬化促進剤を添加することが効果的である場合もある。硬化促進剤としては、公知の物を使用することができる。例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の三級アミン、2−フェノール−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェノール−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類などを挙げることができる。
本発明にかかる多孔質膜を形成する時間、すなわち前記犠牲膜と密着して積層された状態の樹脂組成物を重合させる反応時間(重合速度)の目安としては、大きな空隙(マクロ孔)を形成することを考慮しても、重合開始から構造固定まで、遅くとも1日で終了することが産業上の利用観点からも好ましい。また、相分離による曇点発生から三次元架橋による構造の固定まで、半日以内であることが好ましい。このような重合速度を目安に重合温度が設定される。
本発明にかかる多孔質膜の製造方法において、樹脂組成物を調製する方法としては、例えば、エポキシ基1当量に対して、ポリアミノアミド系硬化剤当量が0.6〜1.5の範囲になるようにエポキシ樹脂とポリアミノアミド系硬化剤を選択した後、まず、エポキシ樹脂及びポロゲンを反応容器に投入して、混合及び溶解し、次いでポリアミノアミド系硬化剤を添加して溶解して、前記樹脂組成物とする方法が挙げられる。
前記樹脂組成物を構成するエポキシ樹脂が常温で固形の場合、粉砕した該エポキシ樹脂を100℃以下に加熱したポロゲンに投入して溶解した後、ポリアミノアミド系硬化剤を添加し、均一に混合された液体状の樹脂組成物を得て、その後直ちに前記犠牲膜で挟まれた樹脂組成物積層体を形成し、所定の重合温度に加熱して重合を行うことが好ましい。
前記樹脂組成物において、加熱による重合が進行し、ポリマー成分が増大すると、スピノーダル相分離が起こり、共連続構造が発現する。前記相分離が更に進行し、共連続構造が消滅する前にエポキシ樹脂の架橋反応を進行させることにより構造が固定されて、所望の三次元網目構造が得られる。しかし、この現象を目視で確認することは困難であるため、あらかじめ試験的にポリアミノアミド系硬化剤の種類と量、ポロゲン及び有機高分子、金属アルコキシドからなるゾルの量などを変化させて、得られた多孔質膜の構造を電子顕微鏡等で確認し、最適温度プロファイルを決定した上で、大量製造を行うことが好ましい。
前記樹脂組成物におけるポロゲン及び前記添加物の配合率が異なると、相分離のメカニズムが大きく変化する。このため、目的とする空隙やメソポアの細孔径を形成するためには、ポロゲンや添加物の配合比率を予め調べておくことが好ましい。この際、エポキシ樹脂と硬化剤のポロゲンに対する比率(エポキシ樹脂及び硬化剤/ポロゲン)は、好ましくは、重量比で0.1〜10倍であり、より好ましくは、1〜7倍である。また、エポキシ樹脂と硬化剤に対する有機高分子や金属アルコキシドからなるゾルの添加物の比率は、好ましくは重量比で0.1〜30%であり、より好ましくは1〜15%である。また、ポロゲンの配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは30〜90重量部であり、より好ましくは60〜90重量部である。
前記樹脂組成物におけるエポキシ樹脂と硬化剤の架橋を十分に行うために、構造固定後、更にアフターキュアーを行っても良い。得られた多孔質膜を洗浄して、当該多孔質膜からポロゲンを除去した後にアフターキュアーを行うと、収縮が発生して多孔構造に変化を生じることがある。この変化を防ぐためには、ポロゲンを除去せずにアフターキュアーを行うほうが良い。また、使用したポロゲンが低沸点溶剤である場合は、高沸点溶剤に置換した後でアフターキュアーを行うなどの方法を採ることができる。
本発明の多孔質膜の製造方法によれば、前記樹脂組成物におけるポロゲン又は前記添加剤の量を調整することにより、多孔質膜の空隙率を約20〜95%にコントロールすることができる。多孔質膜の強度をより向上させる必要がある場合には、多孔質膜の構成材料として、多官能エポキシ樹脂や多官能硬化剤を用いることができる。
以上で説明した、第一〜第三実施形態の製造方法によって得られる多孔質膜は、その多孔質構造の骨格内に、さらに1nm〜1μmの孔径のメソポアを備えるものである。この1nm〜1μmのメソポアが形成されていることにより、多孔質膜の表面積が拡大されているため、例えば、電解質の保持性に優れた電解質膜として好適に使用できる。
本発明の製造方法で得られた多孔質膜の細孔(マクロ孔及びメソポア)径の測定は、電子顕微鏡画像で確認することが最も簡略な方法であるが、水銀圧入法や窒素吸着法で測定することも可能である。
本発明の製造方法で得られた多孔質膜の空孔率、マクロ孔径、メソポア径などは、使用するエポキシ樹脂、ポリアミノアミド系硬化剤、ポロゲンなどの原料の種類や比率、又は温度、攪拌、圧力などの反応条件により変化するため、最適な条件を選択することが好ましい。前記樹脂組成物の好適な硬化温度(重合温度)は40〜130℃であり、前記樹脂組成物の調製時の好適な攪拌速度は100〜1000rpmであり、前記樹脂組成物の硬化時における好適な圧力は大気圧(約0.1MPa)である。
<多孔質膜>
本発明の多孔質膜は、樹脂(高分子ポリマー)からなる多孔質体が膜状に製膜されたものであり、その両方の表面の表層部に変性層を有することが好ましい。
ここで、「変性層」とは、前記多孔質膜の内部の性状とは異なる性状を有する層である。前記性状とは、物理的又は化学的な性質であることが好ましい。
前記物理的性質としては、多孔質構造の形状、ポアサイズ、開口部の形状などが例示できる。前記化学的な性質としては、樹脂(高分子ポリマーの種類)、官能基の種類、官能基の量などが例示できる。
前記変性層が樹脂を含有する場合、当該変性層の樹脂の種類は、当該多孔膜を構成する樹脂と同じ種類でも良いし、異なる種類でも良いが、異なる種類であることが好ましい。
また、前記変性層が形成された膜の表面は、多孔質であり、膜内部の多孔質構造と連結された開口部を有する。この点においても、本発明にかかる多孔質膜の表面に形成された変性層と、従来の多孔質膜の表面に形成されたスキン層と呼ばれる非多孔質面とは明確に区別される。
ただし、前記変性層を構成する樹脂として、例えば電解液等の液体に対する膨潤性を有するものを用いた場合、本発明に係る多孔質膜が前記液体に接することにより膨潤又は膨張し、当該多孔質膜の表面が非多孔性になる場合がある。このように、本発明に係る多孔質膜が液体に接している状態において、その多孔質膜の表面が非多孔性になっていたとしても、このような特性は、本発明に係る多孔質膜の用途によっては問題を生じないし、むしろ有利に作用することもある。例えば、本発明に係る多孔質膜を電池のセパレータとして使用する場合、前記変性層がPVAで構成されており、電解液又は電解質に接することにより膨張した結果、当該変性層を有する本発明に係る多孔質膜の表面が非多孔性になることがある。この場合、PVAは電解液によって膨潤されているため、当該変性層のイオン伝導性(電解液の透過性)は確保される。つまり、本発明に係る多孔質膜は、その表面に存在する変性層を膨潤させること又は乾燥させることにより、可逆的又は非可逆的に、その表面の物理的な性状を多孔性から非多孔性へ切り換えられる性質を有することが好ましい。すなわち、本発明に係る多孔質膜は、当該変性層を膨潤させる液体と接している状態において、その表面が多孔性であっても良いし、非多孔性であっても良い。
また、PVA等の電解液透過性の樹脂からなる変性層(変性膜)によって、本発明に係る多孔質膜の表面を被覆した形態としても良い。この場合、前記多孔質膜の本体部分は多孔質構造を有する一方、前記変性膜によって被覆された表面は非多孔性となる。このような形態であっても、当該多孔質膜を電池のセパレータとして使用することが可能である。
前記変性層の厚さは特に制限されないが、本発明にかかる製造方法で得られた多孔質膜の変性層であれは、例えば0.1nm〜1000nmとすることができる。
ただし、変性層と膜内部との境界は、電子顕微鏡を用いて膜の厚さ方向の断面を観察しても、必ずしも明確ではないことがある。この場合は、上記変性層の厚さは単なる目安となる。
本発明の多孔質膜は、エポキシ樹脂硬化物で構成された多孔質体からなることが好ましく、柱状のエポキシ樹脂硬化物の三次元分岐網目構造を骨格として有し、且つ骨格間に空隙を有し、さらに骨格内に1nm〜1μmの孔径のメソポアを有して形成されている多孔質膜であることがより好ましい。ここで、多孔質膜の多孔構造の基礎となる構造は、0.1μm以上の骨格と空隙(マクロ孔)がお互いに絡み合った三次元的な網目構造を有しており、当然ながら骨格内のメソポアはマクロ孔より小さな細孔である。また、骨格内のメソポア構造は、三次元網目構造のような連続した比較的均一な孔を形成している領域だけでなく、不連続又は不均一な孔であるように観察される領域もありうる。
前記変性層は、1級アミノ基、2級アミノ基、メルカプト基、チオール基、イオン性基、シアノ基、カーボネート基、ハロゲン基、オキシアルキレン基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基又は水酸基を有することが好ましく、水酸基を有することがより好ましい。
また、前記多孔質膜がエポキシ樹脂で構成される場合、前記変性層は、1級アミノ基、2級アミノ基、メルカプト基、チオール基、イオン性基、シアノ基、カーボネート基、ハロゲン基、オキシアルキレン基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基又は水酸基、或いは前記エポキシ樹脂とこれらの官能基とが反応したことにより生成した基若しくは原子団を有することが好ましい。
前記変性層が前記官能基、該官能基と多孔質膜を構成する樹脂とが反応したことにより生成した基若しくは原子団を有することにより、当該多孔質膜の表面の表層部に当該官能基、前記生成した基若しくは原子団に由来する化学的な特性を付与することができる。
本発明の多孔質膜は三次元架橋されており、耐薬品性、耐熱性に優れていることから、過酷な環境下でも使用可能である。本発明の多孔質膜がエポキシ樹脂硬化物である場合、機械的強度、寸法安定性、絶縁性及び耐薬品性に優れ、膜表面が高い親水性を有するため、二次電池や燃料電池の構成材料であるセパレータ又は電解質膜として好適に使用することができる。
さらに、本発明の多孔質膜においては、膜表面に対してグラフト反応等の処理を行うことによって、目的に応じた官能基を樹脂硬化物の表面、すなわち多孔質膜の表面及び多孔質膜の内部の網目構造の表面、に付加する表面修飾を行うことが可能である。
本発明の多孔質膜は、その膜表面に水酸基が付与されていることが好ましい。水酸基を付加することにより、多孔質膜の表面の親水性を増加させることができる。前記水酸基は、多孔質膜形成時に膜表面に密着していた犠牲層に由来する水酸基であっても良いし、多孔質膜の表面を構成する樹脂が有するエポキシ基が開環して水酸基を形成したものであっても良い。
本発明の製造方法によって得られた前記多孔質膜は、従来公知の二次電池又は燃料電池に用いられるセパレータとして利用可能である。また、従来公知の電解質を本発明の多孔質膜に含浸させることにより、二次電池又は燃料電池等の構成材料として利用可能な電解質膜とすることができる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[ポリビニルアルコール溶液]
平均重合度nが3500、鹸化度が86〜90%である下記式(1)で表されるポリビニルアルコール(PVA)の市販の水溶液(和光純薬工業株式会社製)を2重量%水溶液に調製し、使用した。
[樹脂組成物]
エポキシ当量が95〜110(平均102)である下記式(2)で表されるエポキシ化合物(商品名「テトラドC」、東京化成工業株式会社製)を4重量部、
アミン価が520〜550である下記式(3)で表されるBACM(ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン)を0.575重量部、
平均重合度nが200である下記式(4)で表されるPEG200(ポリエチレングリコール200)を1重量部、の割合で混合した樹脂組成物(重合液)を調製して使用した。
[実施例1]
PVA水溶液を75mm×75mmサイズのガラス板2枚に、スピンコーターを用いて2,000rpm、20secの条件で塗布した後、105℃で1時間のアニール処理を施すことによって、PVAからなる犠牲膜が成膜された2枚のガラス板(第一のガラス板及び第二のガラス板)を得た。
次に、第一のガラス板の犠牲膜上に、約320mgの重合液を流延し、スペーサーを使用せずに、第二のガラス基板を第一のガラス基板に重ねて、第二のガラス板の犠牲膜を、流延した重合液に接するように置いた。これにより、図1〜2に示すように、重合液からなる層の両面が犠牲膜に挟まれた樹脂組成物積層体を得た。
続いて、積層体を110℃で1時間加熱することにより、重合液中のエポキシ化合物を硬化させ、多孔質膜(モノリス膜)を形成し、硬化積層体を得た。つぎに、多孔質膜の両面に犠牲膜が密着した状態となった前記硬化積層体を、50〜60℃の温水中に投入し、5〜20分間放置することにより、犠牲膜が温水に溶解して、硬化積層体の積層構造が解除され、2枚のガラス板の間に挟まれていた多孔質膜が浮き上がってきた(図3)。この多孔質膜をフッ素フィルム(日東電工株式会社製)上に採取し、MeOHで約30分間洗浄後、105℃の真空下で1晩乾燥させた。
以上の方法により、マクロ孔(ポアサイズ)が0.3〜0.6μmで、膜厚10μmのほぼ均一なモノリス構造が形成された多孔質膜(図4〜8)を得た。なお、前記ポアサイズは、多孔質膜の表面に形成された変性層を除く、膜厚方向の断面で観察される膜内部のポアサイズである。
得られた多孔質膜の両面、すなわち重合中に犠牲膜と接していた面において、スキン層(非多孔質膜面)は形成されなかった。つまり、多孔質膜の表面は、内部の多孔構造と連結した開口部が複数形成された多孔構造であった。さらに、多孔質膜の両面の表層部には変性層が形成された。この変性層を赤外吸収分光法により分析したところ、変性層はポリビニルアルコールによって構成されていることを確認できた。また、変性層を有する多孔質膜を複素インピーダンス測定によりイオン導電性を測定したところ、10−4S/cm以上であり、高いイオン導電性を有していることが確認された。
[実施例2]
実施例1と同様に、犠牲膜を表面に形成した第一及び第二のガラス板を得た後、第一のガラス板の犠牲膜を形成した面の端部を構成する、向かい合う2辺に、メンディングテープ(住友スリーエム株式会社製)を1枚の厚さで貼り付けて、スペーサーとした。次に、貼り付けた2枚のスペーサー間における、犠牲膜が形成された第一のガラス板の中央部に、約800mgの重合液を流延した。続いて、第二のガラス板をスペーサーを介して第一のガラス板に重ねて、第二のガラス板の犠牲膜面を、流延した重合液に接するように置いて、樹脂組成物積層体を得た。この樹脂組成物積層体を実施例1と同様の方法で処理することにより、膜厚25μmの多孔質膜を得た。
得られた多孔質膜は、実施例1で得られた多孔質膜と比べて、膜厚が異なる以外は、同様の多孔構造を有していた。当該多孔質膜の両面、すなわち重合中に犠牲膜と接していた面において、スキン層(非多孔質膜面)は形成されなかった(図9)。その代わりに、多孔質膜の両面には、実施例1と同様の変性層が形成された。
[比較例1]
第一及び第二のガラス板の表面に犠牲膜を形成せず、第一のガラス板の表面に直接、樹脂組成物を流延した以外は、実施例1と同様に行い、多孔質膜を形成した。
比較例1で得た多孔質膜の表面には、非多孔性のスキン層が形成された(図10)。
膜断面のSEM画像を観察したところ、スキン層が表層部に形成されていることが確認された(図11)。次に、スキン層にメンディングテープを貼り付けて、圧着した後で剥離することにより、スキン層を除去した。スキン層を除去した後の膜表面は多孔質性であった(図12)。
[赤外分光スペクトル]
図13に、実施例1で得た多孔質膜の表面部をFT−IRで測定したスペクトル(上図)、及び比較例1で得た多孔質膜の表面部をFT−IRで測定したスペクトル(下図)を示す。さらに、図13の上図から下図を差し引いた、差スペクトルを図14の上側に示す。図14の下側のスペクトルは、2%PVAフィルムの表面部をFT−IRで測定したスペクトルであり、上側の差スペクトルと比較するために示したものである。
FT−IRの測定には全反射法(ATR:Attenuated Total Reflectance)を用いた。しかし、実施例1で得た多孔質膜の表面部に形成された変性層の厚み(膜厚)が非常に薄いため、測定結果に主成分としてバルク層(多孔質膜の内部)の情報が含まれる。そこで、多孔質膜の表面部の変性層のみを評価するために、実施例1(変性層有り)と比較例1(変性層無し)の両方のFT−IRを測定して、その差スペクトル(図14の上側のスペクトル)を検討した。その結果、当該差スペクトルが2%PVAフィルムのスペクトルの特徴と一致していることから、当該変性層がPVAであることが確認された。
本発明の多孔質膜の製造方法は、ロール・ツー・ロール方式による大量生産に適しており、大面積の多孔質膜を低コストで製造することができる。
1…硬化積層体、2…第一の基板、3…第二の基板、4…犠牲膜、5…多孔質膜

Claims (12)

  1. 樹脂組成物を犠牲膜上に流延し、前記樹脂組成物を硬化させて多孔質膜にした硬化積層体を形成後、前記犠牲膜の少なくとも一部を除去することにより、
    前記犠牲膜に接して硬化された前記多孔質膜の表面に、前記多孔質膜の内部の多孔構造と連結した開口部を形成することを特徴とする多孔質膜の製造方法。
  2. 第一の基板上及び第二の基板上に前記犠牲膜をそれぞれ形成し、前記第一の基板の犠牲膜上に前記樹脂組成物を流延し、前記第二の基板を、前記第二の基板の犠牲膜が前記流延した樹脂組成物に接するように重ねた後、前記樹脂組成物を硬化させて多孔質膜にした前記硬化積層体を形成することを特徴とする請求項1に記載の多孔質膜の製造方法。
  3. 前記犠牲膜が水溶性であり、
    前記硬化積層体を水中に投入して前記犠牲膜の少なくとも一部を溶解させることにより、前記硬化積層体を構成していた前記多孔質膜を前記水中に放出させることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質膜の製造方法。
  4. 前記犠牲膜に接して硬化された多孔質膜の表面に、前記多孔質膜の内部とは異なる性状を有する変性層が形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
  5. 前記犠牲膜の主成分がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
  6. 前記樹脂組成物を、加熱によって硬化させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
  7. 前記多孔質膜の主成分がエポキシ樹脂硬化物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする多孔質膜。
  9. 請求項8に記載の多孔質膜をセパレータとして備えたことを特徴とする二次電池。
  10. 請求項8に記載の多孔質膜に電解質が含浸されてなることを特徴とする電解質膜。
  11. 請求項10に記載の電解質膜を備えたことを特徴とする二次電池。
  12. 請求項10に記載の電解質膜を備えたことを特徴とする燃料電池。
JP2012078234A 2012-03-29 2012-03-29 多孔質膜の製造方法、電解質膜の製造方法、二次電池の製造方法及び燃料電池の製造方法 Active JP5865761B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012078234A JP5865761B2 (ja) 2012-03-29 2012-03-29 多孔質膜の製造方法、電解質膜の製造方法、二次電池の製造方法及び燃料電池の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012078234A JP5865761B2 (ja) 2012-03-29 2012-03-29 多孔質膜の製造方法、電解質膜の製造方法、二次電池の製造方法及び燃料電池の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013204036A true JP2013204036A (ja) 2013-10-07
JP5865761B2 JP5865761B2 (ja) 2016-02-17

Family

ID=49523476

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012078234A Active JP5865761B2 (ja) 2012-03-29 2012-03-29 多孔質膜の製造方法、電解質膜の製造方法、二次電池の製造方法及び燃料電池の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5865761B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015109272A (ja) * 2013-10-25 2015-06-11 日東電工株式会社 非水電解質蓄電デバイス用セパレータ、非水電解質蓄電デバイス及びそれらの製造方法
JP2015168714A (ja) * 2014-03-05 2015-09-28 三菱瓦斯化学株式会社 樹脂構造体、並びにそれを用いたプリプレグ、樹脂シート、金属箔張積層板、及びプリント配線板
WO2019021963A1 (ja) * 2017-07-25 2019-01-31 東レ株式会社 流体分離膜

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102206971B1 (ko) * 2019-04-24 2021-01-25 충남대학교산학협력단 다층 다공성 고분자 박막의 제조방법 및 이에 의한 금속이온전지용 다층 분리막

Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4864155A (ja) * 1971-11-30 1973-09-05
JP2001181436A (ja) * 1999-12-27 2001-07-03 Sk Kaken Co Ltd 連通多孔体の形成方法
JP2004026954A (ja) * 2002-06-24 2004-01-29 Mitsubishi Chemicals Corp 多孔質材料の製造方法及び多孔質材料
JP2006241362A (ja) * 2005-03-04 2006-09-14 Ntn Corp 樹脂製多孔体およびその製造方法
JP2008013672A (ja) * 2006-07-06 2008-01-24 Kyoto Institute Of Technology エポキシ樹脂硬化物多孔体と繊維を含んでなる複合材料
JP2009269948A (ja) * 2008-04-30 2009-11-19 Emaus Kyoto:Kk 多孔体及びその製造方法
JP2011101878A (ja) * 2009-10-16 2011-05-26 Nitto Denko Corp 複合半透膜の製造方法
JP2011122124A (ja) * 2009-12-14 2011-06-23 Daicel Chemical Industries Ltd 多孔質膜及びその製造方法
JP2012005968A (ja) * 2010-06-25 2012-01-12 Nitto Denko Corp 多孔性支持体及びその製造方法
JP2013203998A (ja) * 2012-03-29 2013-10-07 Emaus Kyoto:Kk 多孔質膜、電解質膜、二次電池および燃料電池

Patent Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4864155A (ja) * 1971-11-30 1973-09-05
JP2001181436A (ja) * 1999-12-27 2001-07-03 Sk Kaken Co Ltd 連通多孔体の形成方法
JP2004026954A (ja) * 2002-06-24 2004-01-29 Mitsubishi Chemicals Corp 多孔質材料の製造方法及び多孔質材料
JP2006241362A (ja) * 2005-03-04 2006-09-14 Ntn Corp 樹脂製多孔体およびその製造方法
JP2008013672A (ja) * 2006-07-06 2008-01-24 Kyoto Institute Of Technology エポキシ樹脂硬化物多孔体と繊維を含んでなる複合材料
JP2009269948A (ja) * 2008-04-30 2009-11-19 Emaus Kyoto:Kk 多孔体及びその製造方法
JP2011101878A (ja) * 2009-10-16 2011-05-26 Nitto Denko Corp 複合半透膜の製造方法
JP2011122124A (ja) * 2009-12-14 2011-06-23 Daicel Chemical Industries Ltd 多孔質膜及びその製造方法
JP2012005968A (ja) * 2010-06-25 2012-01-12 Nitto Denko Corp 多孔性支持体及びその製造方法
JP2013203998A (ja) * 2012-03-29 2013-10-07 Emaus Kyoto:Kk 多孔質膜、電解質膜、二次電池および燃料電池

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015109272A (ja) * 2013-10-25 2015-06-11 日東電工株式会社 非水電解質蓄電デバイス用セパレータ、非水電解質蓄電デバイス及びそれらの製造方法
JP2015168714A (ja) * 2014-03-05 2015-09-28 三菱瓦斯化学株式会社 樹脂構造体、並びにそれを用いたプリプレグ、樹脂シート、金属箔張積層板、及びプリント配線板
WO2019021963A1 (ja) * 2017-07-25 2019-01-31 東レ株式会社 流体分離膜

Also Published As

Publication number Publication date
JP5865761B2 (ja) 2016-02-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10195794B2 (en) Method for producing porous polyimide film, and porous polyimide film
JP6142118B2 (ja) 多孔質膜、電解質膜、二次電池および燃料電池
JP6421671B2 (ja) 多孔質ポリイミドフィルム
JP5134480B2 (ja) エポキシ樹脂多孔質膜及びその製造方法
TWI433905B (zh) 光導波管用黏著劑組成物、使用該組成物的光導波管用黏著膜與光導波管用黏著片以及使用該些物件的光學裝置
JP5865761B2 (ja) 多孔質膜の製造方法、電解質膜の製造方法、二次電池の製造方法及び燃料電池の製造方法
CN104854490A (zh) 偏振膜的制造方法
JP2017530002A (ja) 分離モジュール、システム、及び方法
KR20130118302A (ko) 섬유 강화 복합 재료용 에폭시 수지 조성물, 프리프레그 및 섬유 강화 복합 재료
JP2016183332A (ja) 多孔質ポリイミドフィルムの製造方法、及び多孔質ポリイミドフィルム
CN105745560A (zh) 偏光板、制造该偏光板的方法、和包含该偏光板的图像显示装置
CN102053420A (zh) 液晶显示装置
JP6564588B2 (ja) 多孔質モノリスコーティング構造物及びその製造方法
TW200905963A (en) Membrane-electrode bonding agent, proton conducting membrane with bonding layer, membrane-electrode assembly, solid polymer fuel cell, and method for producing membrane-electrode assembly
JPWO2005056683A1 (ja) 熱硬化性樹脂組成物、基板用材料及び基板用フィルム
JP6747091B2 (ja) 多孔質フィルム、及びその製造方法
JP2009269948A (ja) 多孔体及びその製造方法
JP6522464B2 (ja) 複合膜及びその製造方法
Li et al. Transparent Surfactant/Epoxy Composite Coatings with Self‐Healing and Superhydrophilic Properties
CN106873068A (zh) 偏振板和图像显示装置
TW201829527A (zh) 潛在性硬化劑及其製造方法、以及熱硬化型環氧樹脂組成物
JP6383582B2 (ja) 接着構造体
JP2008121005A (ja) 接着剤組成物、接着剤組成物半硬化体、接着フィルム及び積層接着フィルム並びにそれらの製造方法
JP5476988B2 (ja) 電気装置及びそれに用いるエポキシ樹脂組成物
CN106842676B (zh) 偏振板组及液晶面板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20141212

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150811

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150908

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151105

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20151201

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20151228

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5865761

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250