JP6522464B2 - 複合膜及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、二次電池用セパレータや濾過剤などとして利用することのできる複合膜及びその製造方法に関する。
共連続構造を有する多孔質のモノリスは多くの用途に検討されている。例えば、クロマトグラフィーのカラムに分離剤として利用すること(例えば、特許文献1等参照)、モノリスと強化材を組み合わせて義肢の構造体として利用すること(例えば、特許文献2等参照)、リチウムイオン電池のセパレータとして利用すること(例えば、特許文献3,4等参照)、モノリスに金属触媒を付与してカラムリアクターとして利用すること(例えば、特許文献5等参照)などが検討されている。
これらの用途の中で、数十ミクロン程度の薄い膜として利用するセパレータや濾過剤の用途を考えた場合、エポキシモノリスだけからなる膜では十分に強度があるとはいえない。
この強度を改善するためにエポキシ樹脂の種類の検討(例えば、特許文献6等参照)や、炭素繊維とガラス繊維を補強材に利用する方法(例えば、特許文献7等参照)、補強材にセルロースナノファイバーを添加する方法(例えば、非特許文献1等参照)も提案されている。
国際公開第2006/126387号 特開2008−013672号公報 特許第4940367号公報 特開2013−020960号公報 特開2010−207777号公報 特開2013−020947号公報 国際公開第2011/098794号
平成26年度繊維学会ポスター発表1P138「セルロースナノファイバー補強ポリマーモノリス膜の創生と応用」
しかし、特許文献6,7や非特許文献1で提案されているような技術では、まだ性能やコスト、製造方法において難がある。
そこで、本発明の課題は、薄膜で十分な機械強度を有すると共に、十分な空隙率を有し、二次電池用セパレータや濾過剤などとしての使用に好適な複合膜を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するため、下記の構成を備える。
すなわち、本発明にかかる複合膜は、三次元網目状骨格構造及び連通する空隙を有するエポキシ樹脂硬化物多孔体とセルロース系繊維シートとを含んでなる。
また、本発明にかかる複合膜の製造方法は、エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物をセルロース系繊維シートに含浸し、得られた含浸物を加熱して前記エポキシ樹脂を硬化し、得られた硬化物から前記ポロゲンを除去する。
本発明による複合膜は、薄膜で十分な機械強度を有すると共に、十分なイオン通過性や通気性ないし通液性を有するという、優れた特性を有する。本発明による複合膜は、このように、薄膜と機械強度のバランスに優れるのみならず、十分なイオン通過性や通気性ないし通液性に優れているため、二次電池用セパレータや濾過剤としての使用に好適である。
そして、本発明に係る複合膜の製造方法によれば、低コストで優れた特性を備える上記本発明に係る複合膜を製造することができる。
実施例1にかかる複合膜におけるモノリス構造断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 実施例1にかかる複合膜における膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 実施例4にかかる複合膜における膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
以下、本発明にかかる複合膜とその製造方法の好ましい実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔複合膜〕
本発明の複合膜は、三次元網目状骨格構造及び連通する空隙を有するエポキシ樹脂硬化物多孔体とセルロース系繊維シートとを含んでなる。
本発明の複合膜は、その空孔率が20%〜70%であることが好ましい。空孔率が20%以上であれば、十分なイオン通過性と、通気性ないし通液性が得られる。また、空孔率が70%以下であれば、複合膜としての十分な機械強度が得られる。もっとも、求められる機械強度は用途によって異なり得るものであり、その用途に適した機械強度を有するものであるならば、空孔率70%以上であっても構わない。
また、本発明の複合膜は、その平均孔径が0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。平均孔径が小さすぎると、二次電池用セパレータなどとして使用した場合、十分なイオンが通過しがたい傾向にある。
さらに、本発明の複合膜は、セパレータとしてはその平均孔径は10μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。平均孔径が大きすぎると、複合膜の厚みが薄い場合(例えば、20μm以下)に、一つの孔が複合膜を貫通している状態となるおそれがあり、この場合、耐デンドライト性や濾過性が低下することになったり、薄膜としての十分な機械強度が得られなくなったりするおそれがある。その他の用途、例えば濾過用などとしては対象物の大きさ次第であり、0.1〜100μm程度は使用可能である。
〔複合膜の製造方法〕
本発明の複合膜の製造方法は、エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物をセルロース系繊維シートに含浸し、得られた含浸物を加熱してエポキシ樹脂を硬化し、得られた硬化物からポロゲンを除去する。
まず、原料となる各成分について詳述する。
本発明の複合膜の製造方法で用いる上記エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。2種以上を併用することも可能である。なかでも、エポキシ当量が600以下でポロゲンに溶解可能なエポキシ樹脂が特に好ましい。
本発明の複合膜の製造方法で用いる上記硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン類、ポリアミドアミン類、酸無水物、フェノール系などを挙げることができる。より具体的には、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ポリアミン類とダイマー酸からなる脂肪族ポリアミドアミンなどが挙げられる。本発明においては、エポキシ樹脂と反応して水酸基を形成し、得られる多孔体に親水性を付与する機能を有する硬化剤を用いることが好ましい。
本発明の複合膜の製造方法においては、硬化促進剤を使用することもできる。硬化促進剤としては特に限定されず、既知のあらゆる化合物を使用することができるが、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の三級アミン、2−フェノール−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェノール−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類などを好適に用いることができる。
本発明において、用語「ポロゲン」とは、細孔形成剤としての不活性溶媒又は不活性溶媒混合物を指称する。ポロゲンは、重合のある段階で多孔性ポリマーを形成させる重合反応中に存在し、所定の段階でこれを反応混合物中から除去することによって、三次元網目状骨格構造及び連通する空隙を有するエポキシ樹脂硬化物多孔体が得られる。
本発明においては、ポロゲンとして、水酸基を有し、水酸基価100(mgKOH/g)以上のポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体を使用することが望ましい。水酸基価が100(mgKOH/g)より小さくなると粘度が高くなり、形成されるエポキシ樹脂硬化物多孔体の孔径を大きくすることが困難になったり、エポキシ樹脂硬化物多孔体への親水性の付与効果が低下することがある。エポキシ樹脂硬化物多孔体表面の水酸基量とポロゲンの水酸基当量とは密接な関係にあり、ポロゲンの水酸基価が小さくなるに連れてエポキシ樹脂硬化物表面に現れる水酸基量も減少し、表面の親水性が低下するためと考えられる。
本発明の複合膜の製造方法に使用されるセルロース系繊維シートとしては、紙や不織布を挙げることができる。
また、セルロース系繊維シートにおけるセルロース系繊維は、天然あるいは合成のいずれでもよい。セルロース系繊維シートは、他の繊維シートと比べて、エポキシ樹脂との密着性が良い。
上記のセルロース系繊維は、表面に官能基を有することが、繊維と樹脂の界面接着強度の点から好ましい。官能基としては、例えば、アミノ基、グリシジル基、水酸基などが挙げられる。繊維の表面に官能基を導入する方法については、特に限定されないが、例えば、プラズマ処理や電解酸化処理などによる表面処理が有効である。
本発明の複合膜は、その使用目的からいってできるだけ薄い膜で且つ高多孔性が望まれるので、使用するセルロース系繊維シートは薄くて空隙率の大きいものが望ましい。例えば、厚さは500μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。薄い方の下限としては最小孔径の10倍程度はあった方が良く、また強度の点からは5μm以上が好ましく、出来れば10μm以上がより好ましい。また、本発明の複合膜の製造方法では、セルロース系繊維シートの空隙内に多孔性モノリスを形成するのでセルロース系繊維シートの空隙率はできるだけ大きいことが望ましい。具体的には、空隙率として50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましい。
このようなセルロース系繊維シートとしては、具体的には、例えば、日本製紙パピリア株式会社の「超極薄紙」(坪量6g/m2、厚さ16μm、麻と木材繊維使用、セルロース繊維の比重を1.5として計算すると空隙率は74%)などが好ましく挙げられる。
次に、上記各成分を用いた本発明の複合膜の製造方法について詳述する。
本発明による複合膜の製造方法では、本発明者らによる先行特許出願である特願2005−2550号及びそれに基づく国際出願PCT/JP2006/300069の明細書に記載されたエポキシ樹脂硬化物多孔体の製造方法を参考にすることができる。具体的には、前記先行特許出願の明細書に記載の方法を採用するに際し、エポキシ樹脂と硬化剤を溶解したポロゲンを加熱して反応させる代わりに、エポキシ樹脂、硬化剤、ポロゲンを含んでなるエポキシ樹脂組成物をセルロース系繊維シートに含浸して得た含浸物を加熱反応させることで、複合膜を製造することができる。
まず、エポキシ樹脂と硬化剤を、例えば、エポキシ基1当量に対する硬化剤当量の比率が0.6〜1.5の範囲になるように選択し、エポキシ樹脂と硬化剤、並びにそれらと非反応性で溶解可能なポロゲンを含んでなるエポキシ樹脂組成物を調製する。
エポキシ基1当量に対する硬化剤当量の比率が0.6より小さい場合は、硬化物の架橋密度が低くなり、耐熱性、耐溶剤性などが低下するおそれがある。また、上記比率が1.5より大きくなると、硬化剤中の未反応の官能基が多くなり、未反応のまま硬化物中に残留したり、あるいは架橋密度の増加を阻害する要因となったりするおそれがある。
前記エポキシ樹脂組成物をセルロース系繊維シートに含浸する。含浸後、繊維束内などに残留している気泡を十分に脱泡することが好ましい。
次いで、得られた含浸物を一定の厚み(セルロース系繊維シートの厚みや、最終的に得ようとする複合膜の厚みなどを考慮して適宜設定すればよい)に調整した後に、所定の重合温度に加熱して重合を行う。
含浸物を一定の厚みに設定する方法としては、例えば、
(1)ガラスや金属製の平板の上にセルロース系繊維シートとエポキシ樹脂組成物を置き、泡を含まないように含浸させた後に設定の厚さになるようにもう一枚の平板で挟み、硬化する方法、
(2)ガラスや金属製の平板の上にセルロース系繊維シートとエポキシ樹脂組成物を置き、泡を含まないように含浸させた後に設定の厚さになるようにバーコーターのような直線上のもので表面を平らにした後、硬化する方法
(3)ガラスや金属製の平板の上にセルロース系繊維シートと増粘させたエポキシ樹脂組成物を置き、泡を含まないように含浸させた後に、セルロース系繊維シートとエポキシ樹脂組成物を基材から外し、設定の厚さになるように両面からバーコーターやロールコーター、ナイフコーター、ブレードコーターのようなよく知られた(直線状の)塗布装置で表面を平らにした後、硬化する方法、
などを挙げることができる。
(4)また、長尺のセルロース系繊維シートを使用する場合は増粘させたエポキシ樹脂組成物を使用してロールコーター、ナイフコーター、ブレードコーターのようなよく知られた塗布装置を使用して連続的に塗布することも出来る。
上記のうち、(3)の増粘させたエポキシ樹脂組成物を使用する方法は、スキン層(空気と接する表面に孔がないか極めて少ないスキン層)が生じないという利点がある。
(3)のようにエポキシ樹脂組成物を増粘して使用するのは、(1)、(2)のように平板上の支持基板を用いない状態で、未硬化のエポキシ樹脂組成物が流動性のために垂れたりして膜厚が不均一にならないようにするためであるが、同時にスキン層の形成を防ぐ効果がある。
増粘剤としては市販のものが種々使用できるが、中でも、微粉シリカが好ましい。微粉シリカとしては「アエロジル」シリーズ(日本アエロジル株式会社製)として販売されているものなどが挙げられ、親水性の表面を持つものが好ましい。また、この増粘剤については、(3)に限らず、(1)、(2)、(4)においても使用することができる。
重合誘起により、重合物とポロゲンをスピノーダル分解させることでミクロ相分離を起こさせることができる。そして、ミクロ相分離が生長すると、重合物とポロゲンによる共連続構造が不安定化して粒子凝集構造に転移しようとするが、その前に重合物を三次元架橋させることにより共連続構造体を構造固定(凍結固定)することができる。
このように、含浸物を加熱して硬化物を得る工程は、通常、重合、架橋、相分離、及び硬化の各段階を含み、これらの各段階は、場合により、複合的に進行し得る。
次いで、得られた硬化物からポロゲンを水あるいはポロゲンを溶解可能で且つエポキシ樹脂が熱分解しない温度以下(適用するエポキシ樹脂によっても異なり得るが、例えば、200℃以下程度)で熱乾燥可能な溶媒で抽出することによって除去した後、乾燥することにより、三次元網目状骨格構造を有する多孔体を含んでなる複合膜が得られる。
ここで、スピノーダル分解を生ぜしめるためには、重合液を臨界組成近傍とすることが重要である。
重合が進行し、ポリマー成分が増大すると、スピノーダル分解によって相分離が起こり、共連続構造が発現するが、上記のとおり、相分離が更に進行し、共連続構造が消滅する前にエポキシ樹脂の架橋反応を進行させることにより構造が固定されて、所望の三次元網目状骨格構造、又は三次元網目状骨格と球状微粒子が混在する三次元網目状骨格構造、及び連通する空隙を有する多孔体を製造することが可能となる。
得られた多孔体の構造は、例えば、走査型電子顕微鏡観察によって確認することができる。
本発明の複合膜における上記の空孔率、平均孔径及び孔径分布は、用いるエポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンの種類や使用比率、あるいは重合温度条件により変化する。従って、系の相図を作成し、最適な条件を選択することにより、上記範囲の空孔率、平均孔径及び孔径分布を得ることができる。
〔複合膜の用途〕
本発明の複合膜は、薄膜で十分な機械強度を有すると共に、十分なイオン通過性や通気性ないし通水性を有するので、リチウムイオン電池などの二次電池用のセパレータや濾過剤などとして利用することができる。
また、セルロース系繊維シートとの複合化で強度が向上していることから得られた複合膜を円筒状や箱形などの平面的利用以外の形状に加工して使用することも出来る。
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
以下では、まず、実施例等における物性等の評価方法について示したのち、次いで、各実施例、比較例の内容及びそれらの評価・考察を示す。
〔実施例等における物性等の評価方法〕
<多孔体の構造>
走査型電子顕微鏡によって多孔体の断面写真を撮影し、多孔体の構造を観察した。
<空孔率>
複合膜の空孔率は、次の式によって算出した。
空孔率(%)=(1−W/ρV)×100
ここで、
W:複合膜の乾燥重量(g)
V:複合膜の見掛けの体積(cm3
ρ:複合膜の固形分密度(g/m3
である。尚、ここで複合膜の固形分密度は、複合膜をエタノールに入れて脱泡後、JIS−K−7112(B法I)に従い測定した値である。
<平均的孔径>
電子顕微鏡写真から概算した。複合膜の平均孔径は、通常、この複合膜の平均的孔径の数値範囲内にあると理解できる。
<引張強さ>
幅1cm長さ5cmのサンプルを作成し、引張り試験器「テンシロン」(株式会社エー・アンド・デイ社製)で測定した。
〔実施例等で使用した繊維シートの詳細〕
後述の実施例及び比較例では、下表に示すセルロース系繊維シート及びPET紙を用いた。
セルロース系繊維シート1は日本製紙パピリア株式会社製の「超極薄紙」でありセルロース系繊維シート2、3及びPET紙も同社製(の試作品)である。
〔実施例1〕
<エポキシ樹脂組成物の調製>
エポキシ樹脂として、エポキシ当量が95〜110(平均102)である下記式(1)で表されるエポキシ化合物(商品名「テトラッドーC」、三菱ガス化学工業株式会社)1重量部、硬化剤として、アミン価が520〜550である下記式(2)で表されるビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(東京化成工業株式会社製)0.575重量部、ポロゲンとして、平均分子量が200である下記式(3)で表されるポリエチレングリコール200(和光純薬工業株式会社製)4重量部を用い、これらを、自転・公転ミキサーの「あわとり練太郎」で混合することで、エポキシ樹脂組成物を得た。粘度は25℃で135mPa・Sであった(粘度計は振動式粘度計「VM−10−AM、株式会社セコニック製」を使用)。
<複合膜の作製>
平均重合度nが3500、鹸化度が86〜90%であるポリビニルアルコール(PVA)(和光純薬工業株式会社製)の2重量%水溶液を、75mm×75mmのガラス板2枚に、スピンコーターを用いて2,000rpm、20秒の条件で塗布した後、105℃で1時間のアニール処理を施すことによって、ポリビニルアルコール層を形成したガラス板を2枚得た。
次いで、ポリビニルアルコール層を形成したガラス板のポリビニルアルコール層形成面に、ガラス板と同じ大きさに切断した表1記載のセルロース系繊維シート1(日本製紙パピリア株式会社の「超極薄紙」(坪量6g/m2、厚さ16μm、麻と木材繊維使用、セルロース繊維の比重を1.5として計算すると空隙率は74%))を置いた。
上記にて調製したエポキシ樹脂組成物を繊維シートの中央部に置き、この上に、ポリビニルアルコール層を形成した別のガラス板を、ポリビニルアルコール層形成面が、エポキシ樹脂組成物層と接触するように、直接、エポキシ樹脂組成物層上に載せた。このとき、気泡が混入しないよう、エポキシ樹脂組成物が静かに繊維シート全体を覆うように留意した。
そして、余分なエポキシ樹脂組成物が2枚のガラス板の間から出てくるようにして軽く手で圧着してあふれた液を除き、その後、ダブルクリップ等で2枚のガラス板を四方向から軽く固定した。
上記のようにしてエポキシ樹脂組成物を繊維シートに含浸して得られた含浸物を挟んだガラス板を、110℃で1時間加熱することにより、エポキシ樹脂組成物層中のエポキシ化合物を硬化させ、硬化物を得た。次いで、硬化物を温度80〜90℃に調整した温水中に投入し、60分間放置することによりポリビニルアルコール層の一部を溶解させることで、ガラス板から剥離させた。ついで、硬化物を温度50〜60℃に調整した純水からなる温水中に投入し、温水を適宜撹拌しつつ2時間放置することにより、加熱後のエポキシ樹脂組成物層中に含有するポリエチレングリコール200を抽出する工程を3回繰り返した後、60℃の真空下で1晩乾燥させて、繊維シートとエポキシ樹脂硬化物多孔体からなるスキン層のない複合膜を得た。
得られた複合膜の厚みは24μm、繊維含有率は35重量%、複合膜の空孔率は43%であり、走査型電子顕微鏡で確認した複合膜の平均的孔径は0.8〜1.2μmであった。複合膜引張強さはMD方向(繊維シートの繊維方向)が75.4MPa、CD方向(繊維シートの繊維と直角方向)が17.3MPaであった。また、得られた複合膜について、複素インピーダンス測定によりイオン導電性を測定したところ、10-4S/cm以上となり高いイオン導電性を有していることが確認できた。
また、得られた複合膜について、走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図1及び図2に示す。図1は、上記複合膜を切断して撮影したモノリス構造断面のSEM写真であり、図2は、上記複合膜における膜表面のSEM写真である。
〔実施例2〕
実施例1において、上記表1記載のセルロース系繊維シート1に代えて、上記表1記載のセルロース系繊維シート2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る複合膜を得た。
得られた複合膜の厚みは38.2μm、複合膜の空孔率は49%であり、走査型電子顕微鏡で確認した複合膜の平均的孔径は0.8〜1.2μmであった。複合膜引張強さはMD方向(繊維シートの繊維方向)が40.6MPa、CD方向(繊維シートの繊維と直角方向)が23.1MPaであった。また、得られた複合膜について、複素インピーダンス測定によりイオン導電性を測定したところ、10-4S/cm以上となり高いイオン導電性を有していることが確認できた。
〔実施例3〕
実施例1において、上記表1記載のセルロース系繊維シート1に代えて、上記表1記載のセルロース系繊維シート3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る複合膜を得た。
得られた複合膜の厚みは53.7μm、複合膜の空孔率は50%であり、走査型電子顕微鏡で確認した複合膜の平均的孔径は0.8〜1.2μmであった。複合膜引張強さはMD方向(繊維シートの繊維方向)が33.7MPa、CD方向(繊維シートの繊維と直角方向)が22.3MPaであった。また、得られた複合膜について、複素インピーダンス測定によりイオン導電性を測定したところ、10-4S/cm以上となり高いイオン導電性を有していることが確認できた。
〔実施例4〕
実施例1のエポキシ樹脂組成物に増粘剤として、アエロジル130(日本アエロジル株式会社製)をポリエチレングリコール200に対して5重量%となる割合で用いて、自転・公転ミキサーの「あわとり練太郎」で混合することで、増粘したエポキシ樹脂組成物を得た。粘度は25℃で840mPa・Sであった(粘度計は振動式粘度計「VM−10−AM、株式会社セコニック製」を使用)。
次に、市販の40cm角ガラス板の上に、15cm×30cmの大きさに切断した表1記載のセルロース系繊維シート1(日本製紙パピリア株式会社の「超極薄紙」(坪量6g/m2、厚さ16μm、麻と木材繊維使用、セルロース繊維の比重を1.5として計算すると空隙率は74%))を置き、増粘したエポキシ樹脂組成物を繊維シートの中央部に置き、ガラス棒で繊維シート全体に行き渡るように伸ばして含浸させた後に、軽く押さえたバーコーター(No.3)2本の間を通して引き上げることにより均一な膜厚の含浸物を得た。これを110℃の高温乾燥機中で1時間加熱して硬化させ、硬化物を得た。ついで、硬化物を温度50〜60℃に調整した温水中に投入し、温水を適宜撹拌しつつ2時間放置することにより、加熱後のエポキシ樹脂組成物層中に含有するポリエチレングリコール200を抽出する工程を3回繰り返した。その後、60℃の真空下で一晩乾燥させた。
得られた複合膜の厚みは23μm、繊維含有率は35重量%、複合膜の空孔率は43%であり、走査型電子顕微鏡で確認した複合膜の平均的孔径は0.2〜0.5μmであった。複合膜引張強さはMD方向(繊維シートの繊維方向)が70.5MPa、CD方向(繊維シートの繊維と直角方向)が16.3MPaであった。また、得られた複合膜について、複素インピーダンス測定によりイオン導電性を測定したところ、10-4S/cm以上となり高いイオン導電性を有していることが確認できた。
また、得られた複合膜について、走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図3に示す。図3は、上記複合膜における膜表面のSEM写真であり、スキン層のない表面をもっている(表面に孔がある)ことが分かる。
〔比較例1〕
実施例1と同様の方法で、セルロース系繊維シート1の代わりに厚さ25μmのテフロン(登録商標)フィルムを3mmの幅に切ってガラス板の4辺の周辺部に置いてスペーサーとし、エポキシ樹脂組成物だけで膜を形成した。
得られたエポキシ多孔体の厚みは23μmで、引張強さは10.4MPaで(繊維シートを入れていないので強度に方向性はない)、走査型電子顕微鏡で確認したエポキシ多孔体の平均的孔径は0.8〜1.2μmであった。また、得られた多孔膜について、複素インピーダンス測定によりイオン導電性を測定したところ、10-4S/cm以上となり高いイオン導電性を有していることが確認できた。
〔比較例2〕
実施例1において、上記表1記載のセルロース系繊維シート1に代えて、上記表1記載のPET紙を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る複合膜を得た。
得られた複合膜の厚みは13μmで、複合膜の空孔率は23%であり、引張強さはMD方向(繊維シートの繊維方向)が24.8MPaで、CD方向(繊維シートの繊維と直角方向)が9.8MPaで、複合前のPET紙と殆ど変わりがなかった。走査型電子顕微鏡で確認した複合膜の平均的孔径は0.8〜1.2μmであった。
〔物性のまとめ〕
各実施例及び比較例について、物性を下表2にまとめた。なお、表2において、イオン導電率については、10-4S/cm以上を「○」と表記している。また、「−」の表記は、測定ができないか無意味であるため測定していないことを意味する。
〔結果についての考察〕
実施例1〜4に示す結果から、セルロース系繊維シートとエポキシ樹脂硬化物多孔体との複合膜は、薄膜でありながら、多孔性を大きく低下させることなく、それぞれの材料の強度の足し算以上の強度を持つ材料が得られることが分かった。
一方、各実施例と比較例2との比較から、単に繊維シートを用いればよいというのではなく、セルロース系繊維シートを用いることが重要であることが分かった。
実施例1と実施例4を比較すると、実施例4の方が孔径が小さいことが分かる。これは、実施例4では、実施例1と異なり、硬化時にガラス板がないため、直接加熱となり実質硬化温度が高いことから孔径が小さくなったと推定される。

Claims (10)

  1. 三次元網目状骨格構造及び連通する空隙を有するエポキシ樹脂硬化物多孔体とセルロース系繊維シートとを含んでなる、複合膜。
  2. 空孔率が20%〜70%、平均孔径が0.1〜10μmである、請求項1に記載の複合膜。
  3. 厚みが10〜100μmである、請求項1又は2に記載の複合膜。
  4. 二次電池のセパレータとして利用される、請求項1から3までのいずれかに記載の複合膜。
  5. エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物をセルロース系繊維シートに含浸し、得られた含浸物を加熱して前記エポキシ樹脂を硬化し、得られた硬化物から前記ポロゲンを除去する、複合膜の製造方法。
  6. 前記含浸の際に用いる前記エポキシ樹脂組成物が増粘剤をも含むものである、請求項5に記載の複合膜の製造方法。
  7. 前記増粘剤が微粉シリカである、請求項6に記載の複合膜の製造方法。
  8. 前記含浸物を加熱して硬化する前に、2本のバーコーターの間を通して厚み調整する、請求項6又は7に記載の複合膜の製造方法。
  9. 前記含浸の際に用いる前記セルロース系繊維シートの空隙率が50%以上である、請求項5から8までのいずれかに記載の複合膜の製造方法。
  10. 前記含浸の際に用いる前記セルロース系繊維シートの厚みが1〜1000μmである、請求項5から9までのいずれかに記載の複合膜の製造方法。
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