JP7486741B2 - 圧縮機及び冷凍サイクル装置 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、作動流体を吸い込んで吐出する圧縮機、及び冷凍サイクル装置に関する。
空気調和機等の冷凍サイクル装置では、作動流体である冷媒を吸い込んで吐出する圧縮機構部を有する、冷媒圧縮機等の圧縮機が用いられている。圧縮機の効率を高めるには、摺動部の摩擦損失を低減することや、シール面の隙間からの作動流体の漏れ損失を低減することが重要である。
圧縮機構部においては、耐摩耗性、シール性、騒音低減等を目的に、摺動面やシール面にコーティングが施されることがある。特許文献1には、圧縮機構部の摺動面にフッ素樹脂コーティングを施すことが開示されている。特許文献2には、圧縮機構部が備える弁装置において、リード弁に撥油性の被膜を形成することが開示されている。
特開平1-182589号公報 特開平5-99149号公報
しかし、特許文献1の圧縮機構部では、摺動面に潤滑剤を保持させることが難しく、潤滑剤による冷却効果が十分に得られにくい。特許文献2の圧縮機構部では、弁装置のシール性が低下し、またリード弁や弁座が摩耗しやすいため、性能や信頼性が低下する。
本発明が解決しようとする課題は、圧縮機構部における摺動面の摩擦損失の低減やシール性向上を図れる圧縮機、及び前記圧縮機を用いた冷凍サイクル装置を提供することである。
実施形態の圧縮機は、作動流体を吸い込んで吐出する圧縮機構部を持ち、かつ圧縮機構部の摺動面又はシール面の少なくとも一方に、連続空孔とポリマー骨格の3次元共連続構造を有するポリマーモノリスが設けられている。
実施形態の冷凍サイクル装置の一例を示した概略構成図。 図1の冷凍サイクル装置における圧縮機の圧縮機構部のA-A断面図。 図1の圧縮機構部におけるシリンダ室の吐出孔近傍を拡大した断面図。 実験例1のポリマーモノリスを走査型電子顕微鏡により観察した写真。 実験例1におけるポリマーモノリスを設けていないブレードを備える態様を基準とした圧縮機の総合効率比。 実験例1におけるポリマーモノリスを設けていないブレードを備える態様を基準とした圧縮機の体積効率比。 実験例1におけるポリマーモノリスを設けていないブレードを備える態様と比較した圧縮機の運転騒音。
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「摺動面」とは、圧縮機構部を構成する複数の部品において、互いに接触した状態で摺動する面を意味する。
「シール面」とは、圧縮機構部を構成する複数の部品において、圧縮機構部内の作動流体の漏れを抑制するように、互いに接触した状態か、もしくはわずかに離間した状態で向き合わされる面を意味する。互いに向き合うシール面同士の距離は、0.05mm以下が好ましく、0.02mm以下がより好ましい。
「ポリマーモノリス」とは、3次元的に連通した連続空孔とポリマー骨格とで3次元共連続構造が形成されている高分子多孔質体を意味する。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
実施形態の圧縮機は、作動流体を吸い込んで吐出する圧縮機構部を有し、前記圧縮機構部の摺動面又はシール面の少なくとも一方に、連続空孔とポリマー骨格の3次元共連続構造を有するポリマーモノリスが設けられている。すなわち、圧縮機構部の摺動面とシール面の両方、又はいずれか一方にポリマーモノリスが設けられている。圧縮機は、作動流体を吸い込んで吐出する圧縮機構部を有するものであればよく、圧縮機構部の摺動面又はシール面の少なくとも一方にポリマーモノリスが設けられる以外は公知の態様を制限なく採用できる。
また、実施形態の冷凍サイクル装置は、圧縮機と、放熱器と、膨張装置と、吸熱器とを備えるものであり、上記特徴を有する圧縮機を備える以外は公知の態様を採用できる。
以下、実施形態の圧縮機及び冷凍サイクル装置の一例を示して説明する。
本実施形態の冷凍サイクル装置1は、図1に示すように、圧縮機2と、圧縮機2に接続された放熱器である凝縮器3と、凝縮器3に接続された膨張装置4と、膨張装置4と圧縮機2との間に接続された吸熱器としての蒸発器5と、を備えている。
圧縮機2は、いわゆるロータリ式の圧縮機であり、作動流体として低圧の気体冷媒を内部に取り込んで圧縮し、高温、高圧の気体冷媒とするものである。なお、圧縮機は、ロータリ式には限定されず、スクロール式、レシプロ式、斜板式等の圧縮機であってもよい。圧縮機2の具体的な構成については後述する。
凝縮器3は、圧縮機2から送り込まれる高温、高圧の気体冷媒から熱を放熱させ、高圧の液体冷媒にするものである。
膨張装置4は、凝縮器3から送り込まれる高圧の液体冷媒の圧力を下げ、低温、低圧の液体冷媒にするものである。
蒸発器5は、膨張装置4から送り込まれる低温、低圧の液体冷媒を気化させ、低温、低圧の液体冷媒を低圧の気体冷媒にするものである。蒸発器5においては、低圧の液体冷媒が気化する際に周囲から気化熱が奪われ、周囲が冷却される。なお、蒸発器5を通過した低圧の気体冷媒は、圧縮機2内に取り込まれる。
このように、本実施形態の冷凍サイクル装置1では、作動流体である冷媒が気体冷媒と液体冷媒とに相変化しながら循環する。
圧縮機2は、圧縮機本体11と、アキュムレータ12と、を備えている。
アキュムレータ12は、いわゆる気液分離器である。アキュムレータ12は、蒸発器5と圧縮機本体11との間に設けられている。アキュムレータ12は、吸い込みパイプ21を通して圧縮機本体11に接続されている。アキュムレータ12は、蒸発器5で気化された気体冷媒、及び蒸発器5で気化されなかった液体冷媒のうち、気体冷媒のみを圧縮機本体11に供給する。
圧縮機本体11は、回転軸31と、電動機部32と、圧縮機構部33と、これら回転軸31、電動機部32及び圧縮機構部33を収納する密閉容器34と、を備えている。
密閉容器34は筒状に形成されるとともに、その軸線O1方向の両端部が閉塞されている。密閉容器34内には、潤滑剤Jが収容されている。潤滑剤J内には、圧縮機構部33の一部が浸漬されている。
回転軸31は、密閉容器34の軸線O1に沿って同軸上に配置されている。なお、以下の説明では、軸線O1に沿う方向を単に軸方向といい、軸方向に直交する方向を径方向といい、軸線O1周りの方向を周方向という。
電動機部32は、密閉容器34内における軸方向の第1側に配置されている。圧縮機構部33は、密閉容器34内における軸方向の第2側に配置されている。以下の説明では、軸方向に沿う電動機部32側(第1側)を上側、圧縮機構部33側(第2側)を下側とする。
電動機部32は、いわゆるインナーロータ型のDCブラシレスモータである。具体的に、電動機部32は、固定子35と、回転子36と、を備えている。
固定子35は、密閉容器34の内壁面に焼嵌め等により固定されている。
回転子36は、固定子35の内側に径方向に間隔をあけた状態で、回転軸31の上部に固定されている。
圧縮機構部33は、複数のシリンダ室を有する多気筒の圧縮機構部である。例えば、実施形態の圧縮機構部33は、2個のシリンダ室38a,38bを有する2気筒の圧縮機構部である。圧縮機構部33は、複数のシリンダ37a,37bと、仕切板39と、上側の主軸受40と、下側の副軸受41と、上側の第1マフラ51及び第2マフラ52と、下側の第3マフラ53と、を備える。
2つのシリンダ37a,37bは、それぞれ筒状で、上からこの順に回転軸31が貫通し、回転軸31と同軸上に配置されている。シリンダ37aとシリンダ37bとの間に仕切板39が設けられている。上側のシリンダ37aの上端開口部が主軸受40で閉塞され、下側のシリンダ37bの下端開口部が副軸受41で閉塞されている。主軸受40及び副軸受41は回転軸31を回転可能に支持している。
シリンダ37aの内側にはシリンダ室38aが形成されている。回転軸31のうち、シリンダ室38a内に位置する部分には、軸線O1に対して径方向に偏心する偏心部42aが形成されている。偏心部42aにはローラ43aが外挿されている。
図1及び図2に示すように、シリンダ37aにおける周方向の一部には、径方向の外側に向けて窪むブレード溝44が形成されている。ブレード溝44は、シリンダ37aの軸方向(高さ方向)の全体に亘って形成されている。ブレード溝44は、径方向の外側端部において、密閉容器34内に連通している。
ブレード溝44内には、ブレード45が設けられている。ブレード45は、シリンダ37aに対して径方向にスライド移動可能に構成されている。ブレード45は、径方向の外側端面である背面が付勢手段により径方向の内側に向けて付勢されている。ブレード45は、径方向の内側端面である先端面がシリンダ室38a内においてローラ43aの外周面に当接している。これにより、ブレード45は、ローラ43の偏心回転に伴ってシリンダ室38a内に進退可能に構成されている。ローラ43a及びブレード45により、シリンダ室38aは吸込室46aと圧縮室46bとに分割される。
ブレード45とブレード溝44の内面の間、ブレード45と主軸受40の下面との間、ブレード45と仕切板39の上面との間には、潤滑油Jが介在している。
シリンダ37aにおける、ブレード溝44に対するローラ43aの回転方向(図2中の矢印参照)前方(図2中、ブレード溝44の左側)に位置する部分には、シリンダ37aを径方向に貫通する吸込孔47が形成されている。吸込孔47の径方向の外側端部は吸い込みパイプ21(図1参照)と接続されている。一方、吸込孔47の径方向の内側端部は、シリンダ室38aの吸込室46a内に開口している。
シリンダ37aの上端開口部は主軸受40によって閉塞されている。主軸受40は、回転軸31のうち、シリンダ37aよりも上方に位置する部分を回転可能に支持している。具体的に、主軸受40は、回転軸31が挿通された筒部40aと、筒部40aの下端部から径方向の外側に向けて突設されたフランジ部40bと、を備えている。
シリンダ37aの上側に位置する主軸受40のフランジ部40bにおける、ローラ43aの回転方向に沿うブレード溝44の手前側(図2中、ブレード溝44の右側)には、吐出孔(通孔)48aが形成されている。吐出孔48aは、シリンダ室38a内の軸方向から見て半円形状に形成されている。吐出孔48aは、シリンダ37aの少なくとも上面で開口している。
図1及び図3に示すように、主軸受40のフランジ部40bにおける吐出孔48aの外側の周縁部には環状の吐出弁座49aが設けられており、その上に開閉弁50aが設けられている。シリンダ室38a(圧縮室46b)内の圧力に伴って開閉弁50aが開閉することで、吐出孔48aが開閉されてシリンダ室38a外に気体冷媒を吐出することができる。開閉弁50aの閉弁時には、吐出弁座49aによって吐出孔48aの外側の周縁部と開閉弁50aとの間がシールされる。
シリンダ室38bは、シリンダ室38aとは上下反転した態様で構成されている。シリンダ37bの内側にシリンダ室38bが形成されている。回転軸31のうち、シリンダ室38b内に位置する部分には、軸線O1に対して径方向に偏心する偏心部42bが形成されている。偏心部42bにはローラ43bが外挿されている。シリンダ37bにはブレード溝が形成され、ブレード溝内にブレードが設けられている。そして、ローラ43b及びブレードにより、シリンダ室38bが吸込室と圧縮室とに分割される。シリンダ37bにも、吸込室に開口する吸込孔が形成されている。
シリンダ37bの下端開口部は副軸受41によって閉塞されている。副軸受41は、回転軸31のうち、シリンダ37bよりも下方に位置する部分を回転可能に支持している。具体的に、副軸受41は、回転軸31が挿通された筒部41aと、筒部41aの上端部から径方向の外側に向けて突設されたフランジ部41bと、を備えている。
シリンダ37bの下側に位置する副軸受41のフランジ部41bにおける、ローラ43bの回転方向に沿うブレード溝の手前側には、吐出孔(通孔)48bが形成されている。吐出孔48bは、シリンダ37bの少なくとも下面で開口している。副軸受41のフランジ部41bにおける吐出孔48bの外側の周縁部には環状の吐出弁座49bが設けられており、その上に開閉弁50bが設けられている。シリンダ室38b(圧縮室)内の圧力に伴って開閉弁50bが開閉することで、吐出孔48bが開閉されてシリンダ室38b外に気体冷媒を吐出することができる。開閉弁50bの閉弁時には、吐出弁座49bによって副軸受41のフランジ部41bにおける吐出孔48bの外側の周縁部と開閉弁50bとの間がシールされる。
主軸受40の上側には、第1マフラ51と第2マフラ52がこの順に設けられている。第1マフラ51及び第2マフラ52には、それぞれ連通孔51a,52aが形成されている。副軸受41の下側には、第3マフラ53が設けられている。また、圧縮機構部33は、下側の第3マフラ53内から第1マフラ51内まで通じる不図示のマフラ室間通路を有している。シリンダ室38aから吐出孔48aを通して吐出される高温、高圧の気体冷媒、及びシリンダ室38bから吐出孔48bを通して吐出される高温、高圧の気体冷媒は、連通孔51a,52aを通して密閉容器34内に吐出される。
圧縮機構部33における各部材の材質は、特に限定されない。シリンダ37a,37b、主軸受40、副軸受41の材質は、例えば、FC250等のねずみ鋳鉄とすることができる。ローラ43a,43bの材質は、例えば、FC250のねずみ鋳鉄にMo、Ni、Cr等を添加した特殊合金鋳鉄(モニクロ鋳鉄)とすることができる。ブレード45の材質は、例えば、SUS440Cにガス窒化処理を施して形成したものを使用できる。
圧縮機2では、電動機部32の固定子35に電力が供給されると、回転軸31が回転子36とともに軸線O1周りに回転する。そして、回転軸31の回転に伴い、シリンダ室38a内で偏心部42a及びローラ43aが偏心回転し、シリンダ室38b内で偏心部42b及びローラ43bが偏心回転する。これにより、吸込みパイプ21,21を通してそれぞれのシリンダ室38a,38b内に気体冷媒が取り込まれるとともに、シリンダ室38a,38b内に取り込まれた気体冷媒が圧縮される。
具体的には、シリンダ室38aのうち、吸込室46a内に吸込孔47を通して作動流体(気体冷媒)が吸い込まれるとともに、圧縮室46bにて先に吸込孔47から吸い込まれていた気体冷媒が圧縮される。圧縮された気体冷媒は、主軸受40の吐出孔48aを通してシリンダ室38aの外側(第1マフラ51内)に吐出され、連通孔51a,52aを通して密閉容器34内に吐出される。また、シリンダ室38bでも同様に気体冷媒が圧縮され、副軸受41の吐出孔48bを通してシリンダ室38bの外側(第3マフラ53内)に吐出される。第3マフラ53内に吐出された気体冷媒は、マフラ室間通路を通じて第1マフラ51内へと送られ、連通孔51a,52aを通して密閉容器34内に吐出される。
密閉容器34内に吐出された気体冷媒は、凝縮器3に送り込まれる。
作動流体としては、特に限定されず、例えば、塩素を含まない炭化水素系冷媒、二酸化炭素、飽和フッ化炭化水素系冷媒、不飽和フッ化炭化水素系冷媒及び含フッ素エーテル系冷媒等が挙げられる。作動流体としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
作動流体の具体例としては、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、2-メチルブタン、イソブタン、冷媒用炭酸ガス(R744)、HFC23、HFC32、HFC125、HFC134a、HFC143a、HFC236fa、HFC410A(R410A)、HFO1225ye、HFO1233zd、HFO1233yd、HFO1234yf、HFO1234ze、HFO1234ye、HFO1243zf、HFE245mc、HFE143m等が挙げられる。
潤滑剤としては、特に限定されず、例えば、鉱物油、ポリオールエステル油、ポリビニルエーテル油、アルキレングリコール油、ポリアルファオレフィン油等の潤滑油が挙げられる。なお、潤滑剤Jは、潤滑油には限定されず、公知のイオン液体等であってもよい。潤滑剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
潤滑剤の100℃における動粘度は、5.0mm/s以上25mm/s以下が好ましく、5.0mm/s以上20mm/s以下がより好ましく、10mm/s以上20mm/s以下がさらに好ましい。潤滑剤の動粘度が前記下限値以上であれば、ポリマーモノリスの連続空孔内における潤滑剤の流速が速くなりすぎることによる漏れ損失の増大を抑制しやすい。潤滑剤の動粘度が前記上限値以下であれば、潤滑剤の流速が遅くなりすぎることによる冷却効果の低下を抑制しやすい。
潤滑剤の具体例としては、例えば、100℃の動粘度が8.7mm/sであるポリオールエステル油(POE)、100℃の動粘度が8.0mm/sであるポリビニルエーテル油(PVE)、100℃の動粘度が20mm/sであるポリアルキレングリコール油(PAG)等が挙げられる。
圧縮機構部33における摺動面又はシール面の少なくとも一方には、ポリマーモノリスが設けられている。ポリマーモノリスの詳細については後述する。摺動面やシール面にポリマーモノリスを設けることで、強度を保ちつつ柔軟性を高めることができ、またポリマーモノリスが多量の潤滑剤を長時間保持することができる。これにより、摺動面圧の分散や摺動部の温度上昇の抑制等により、摩耗や焼き付き等を抑制することができ、シール面のシール性も向上することから、高信頼性かつ高性能な圧縮機となる。またポリマーモノリスの柔軟性によって騒音低減効果も得られる。
圧縮機構部においては、少なくともシール面にポリマーモノリスが設けられていることが好ましい。
圧縮機2の圧縮機構部33において、主軸受40の吐出孔48aの周縁部に設けられている環状の吐出弁座49aと開閉弁50aの互いに対向する面はシール面である。同様に、副軸受41の吐出孔48bの周縁部に設けられている環状の吐出弁座49bと開閉弁50bの互いに対向する面はシール面である。
例えば、図3に示すように、主軸受40の吐出孔48aの周縁部に設けられている環状の吐出弁座49aと対向する、開閉弁50aのシール面54にポリマーモノリス80が設けられる。このように、作動流体を圧縮室に吸入するか、もしくは圧縮室から吐出する通孔と、通孔を開閉する開閉弁と、通孔の周囲に設けられ、弁閉時に開閉弁との間をシールする弁座とを備える圧縮機構部において、開閉弁及び弁座のシール面のいずれか一方又は両方にポリマーモノリスが設けられていることが好ましい。これにより、開閉弁と弁座のシール面において、潤滑剤を十分に保持させつつ、潤滑剤による表面張力を低減できる。またポリマーモノリスの柔軟性によって閉弁時の衝撃を緩和できるため、シール性向上、摩耗防止、開弁抵抗低減、衝撃音低減等の効果が得られる。
また、ブレード45の先端面、両側の側面、上端面及び下端面、ローラ43a,43bの外周面、内周面、上端面及び下端面、ブレード溝44の内面、主軸受40の下面と内周面、副軸受41の上面と内周面、仕切板の上面と下面、回転軸31の外周面等は、摺動面である。ブレード45の両側の側面、上端面及び下端面、ローラ43a,43bの上端面及び下端面、主軸受40の下面、副軸受41の上面、仕切板の上面と下面等は、シール面でもある。シリンダ37a,37bの内周面等は、シール面である。これらの摺動面やシール面にポリマーモノリスを設けてもよい。
圧縮機構部33では、摺動面又はシール面のいずれか一方又は両方として機能する、互いに対向する第一の表面と第二の表面において、第二の表面は第一の表面よりも表面硬さが高い場合、第二の表面にポリマーモノリスが設けられていることが好ましい。
互いに摺動する摺動面は、摺動による摩擦によって表面が徐々に削られていく。第二の表面の表面硬さが第一の表面の表面硬さよりも高いことで、初期摩耗等での第二の表面の摩耗量が少なくなる。これにより、より多くのポリマーモノリスを長期的に第二の表面に残存させることができる。そのため、ポリマーモノリスによる効果をより長く持続させることができる。
第二の表面の表面硬さと第一の表面の表面硬さの差は、50HV~2830HVが好ましく、200HV~2000HVがより好ましい。表面硬さの差が前記範囲の下限値以上であれば、第一の表面に対して第二の表面の摩耗が低減される。表面硬さの差が前記範囲の上限値以下であれば、硬さの差による第一の表面の著しい摩耗が防止される。
第一の表面の表面硬さ(ビッカーズ硬さ)は、170HV~600HVが好ましく、200HV~520HVがより好ましい。
第二の表面の表面硬さ(ビッカーズ硬さ)は、220HV~3000HVが好ましく、500HV~2500HVがより好ましい。
第二の表面は、未処理の基材表面であってもよく、基材表面に表面硬化処理を施して表面硬さが高められた面であってもよい。表面硬化処理によって表面硬さを高める手法は、第二の表面を形成する基材として、硬さの低い基材でも使用できるようになるため、基材の材料の選択肢が広がり、製造性、生産性、入手性等の自由度が向上する点で有利である。
表面硬化処理としては、表面硬さを高めることができる処理であれば特に限定されず、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティング、ガス窒化処理、浸炭処理等が挙げられる。
圧縮機構部33では、摺動面又はシール面のいずれか一方又は両方として機能する、互いに対向する第一の表面と第二の表面において、第二の表面が第一の表面よりも表面粗さRaが大きい場合、第二の表面にポリマーモノリスが設けられていることが好ましい。これにより、摩耗が進行しても、より多くのポリマーモノリスが第二の表面の凹部に残存しやすくなるため、ポリマーモノリスによる効果をより長く持続させることができる。
第二の表面の表面粗さRaは、0.10μm以上が好ましく、0.10~0.25μmがより好ましく、0.10~0.20μmがさらに好ましい。第二の表面の表面粗さRaが前記範囲の下限値以上であれば、第二の表面の摩耗を低減する効果がより高くなるため、圧縮機の信頼性がより高くなる。
なお、第一の表面及び第二の表面の表面粗さRaは、ポリマーモノリスがない状態の表面粗さRaである。表面粗さRaは、JIS B0601:2001に準拠して測定される。
第一の表面及び第二の表面の下記式(1)で表される合成粗さαは、1.0μm以下が好ましい。
α={(α+(α1/2 ・・・(1)
ただし、式(1)中のαは、第一の表面の表面粗さRaである。αは、第二の表面の表面粗さRaである。
合成粗さαは表面粗さRaの標準偏差を表す。表面粗さのバラツキを考慮することで、ポリマーモノリスの効果を高めることができる。合成粗さαが1.0μm以下であれば、ポリマーモノリスを過度に長くしなくても、摺動面の摩耗を低減する効果がより高くなるため、圧縮機の信頼性がより高くなる。
ポリマーモノリスの空孔率は、30%以上80%以下が好ましく、40%以上70%以下がより好ましく、50%以上70%以下がさらに好ましい。ポリマーモノリスの空孔率が前記範囲の下限値以上であれば、より多くの潤滑剤をポリマーモノリスに貯留させることができる。ポリマーモノリスの空孔率が前記範囲の上限値以下であれば、十分な強度のポリマーモノリスを形成しやすい。
なお、ポリマーモノリスの空孔率は水銀圧入法で測定した値である。
ポリマーモノリスの平均空孔径は、0.1μm以上2.0μm以下が好ましく、0.2μm以上2.0μm以下がより好ましく、0.2μm以上1.5μm以下がさらに好ましい。ポリマーモノリスの平均空孔径が前記範囲の下限値以上であれば、ポリマーモノリスの連続空孔内に潤滑剤を流入させやすく、ポリマーモノリスによる効果が得られやすい。ポリマーモノリスの平均空孔径が前記範囲の上限値以下であれば、ポリマーモノリスの連続空孔内における潤滑剤の流速が速くなりすぎることによる漏れ損失の増大を抑制しやすい。
なお、ポリマーモノリスの平均空孔径は水銀圧入法で測定した値である。
ポリマーモノリスの表面には連続空孔に通じる開口部が形成され、圧縮機構部を潤滑する潤滑油がポリマーモノリスの開口部を通じて連続空孔内に流出入するようになっていることが好ましい。すなわち、ポリマーモノリスの連続空孔が表面まで到達して開口部が形成され、前記開口部を通じて潤滑油がポリマーモノリスの連続空孔に流出入できるようになっていることが好ましい。これにより、摺動面又はシール面に供給される潤滑油がポリマーモノリスに保持されやすくなるため、ポリマーモノリスによる効果がさらに得られやすくなる。
また、ポリマーモノリスの表面に連続空孔に通じる複数の開口部が形成されており、運転時にそれら複数の開口部間に圧力差が生じることが好ましい。これにより、連続空孔内における潤滑剤の流れが促進され、特に摺動面の冷却効果が高くなり、摺動信頼性がさらに高くなる。
ポリマーモノリスの平均膜厚は、5μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がさらに好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。ポリマーモノリスの平均膜厚が前記範囲の下限値以上であれば、潤滑油を十分に保持できる。ポリマーモノリスの平均膜厚が前記範囲の上限値以下であれば、部品の精度をより高くできる。
ポリマーモノリスのポリマー骨格は、重合性化合物と架橋剤との重合物であることが好ましい。
重合性化合物としては、特に限定されず、架橋剤との重合によりポリマー骨格を形成可能な化合物であればよい。例えば、エポキシ化合物、(メタ)アクリレート化合物、スチレン化合物等が挙げられる。なかでも、柔軟性に優れ、微細な多孔質構造のポリマーモノリスを形成しやすい点から、エポキシ化合物が好ましい。
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンべース等のポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、2,2,2,-トリ-(2,3-エポキシプロピル)-イソシアネート等のトリグリシジルイソシアヌレート、トリアジン環含有エポキシ樹脂等、複素芳香環を含むエポキシ樹脂、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン等の芳香環由来の炭素原子を含む芳香族系エポキシ化合物や、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の芳香環由来の炭素原子を含まない脂肪族系エポキシ化合物等が挙げられる。なかでも2官能以上のエポキシ化合物が好ましく、分子内にグリシジル基を2つ以上有する化合物がより好ましい。好ましい具体例としては、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、アミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
アミン化合物としては、例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼン等の芳香族アミン化合物;トリアジン環等の複素芳香環を有する芳香族アミン化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6-トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4-アミノシクロへキシル)メタン及びこれらの変性品等の脂環族アミン化合物;1,6-ヘキサメチレンビス(N,N-ジメチルセミカルバジド)等の脂肪族ポリアミンヒドラジド化合物;ポリアミン類とダイマー酸からなる脂肪族ポリアミドアミン類やポリアミノアミド類等が挙げられる。
酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメット酸、無水ピロメット酸等の芳香族酸無水物が挙げられる。
フェノール化合物としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂等が挙げられる。
ヒドラジド化合物としては、例えば、イソフタル酸ジヒドラジド等の芳香族ヒドラジド化合物;アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等の脂肪族ヒドラジド化合物が挙げられる。
架橋剤は重合性化合物の種類に応じて適宜選択することが好ましい。重合性化合物として、エポキシ化合物を用いた場合は、架橋剤はアミン化合物であることが好ましく、2官能以上のアミン化合物である分子内にアミノ基を2つ以上有する化合物ことがより好ましい。2官能以上のアミン化合物としては、脂環族アミン化合物であることが好ましい。好ましい具体例としては、ビス(4-アミノシクロへキシル)メタン等が挙げられる。
ポリマーモノリスのポリマー骨格としては、ポリマーモノリスの形成が簡便な点から、2官能以上のエポキシ化合物と2官能以上のアミン化合物の重合物であることが好ましく、2官能以上の脂肪族系エポキシ化合物と2官能以上の脂環族アミン化合物の重合物であることがより好ましい。
重合性化合物と架橋剤の配合割合は、架橋密度等を考慮して決定すればよい。例えば、重合性化合物が2官能以上のエポキシ化合物であり、架橋剤が2官能以上のアミン化合物である場合、重合性化合物のエポキシ基1当量に対して、架橋剤のアミン当量が0.6~1.5の範囲になるように調整することが好ましい。
ポリマーモノリスは、例えば、重合性化合物と架橋剤と孔形成剤とを含むポリマーモノリス形成用組成物によって形成することができる。より具体的には、摺動面又はシール面にポリマーモノリス形成用組成物を塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を硬化する。重合性化合物の重合に伴ってポリマー成分が増大し、スピノーダル分解が起こって共連続構造が発現する。その後、硬化膜から孔形成剤を除去することでポリマーモノリスを形成することができる。
ポリマーモノリスを設ける摺動面又はシール面には、ポリマーモノリス形成用組成物との親和性を向上させるために、シランカップリング剤等の公知のカップリング剤による処理や、プラズマ処理等が施されていてもよい。
ポリマーモノリス形成用組成物の塗布方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、浸漬塗布、スプレー塗布、スピン塗布、バーコーター塗布、アプリケーター塗布、ロールコーター塗布、カーテンコーター塗布、スクリーン印刷等が挙げられる。なかでも、凹凸面や曲面への塗布が容易である点から、浸漬塗布が好ましい。
塗布膜の硬化処理方法としては、特に限定されず、重合性化合物や架橋剤の種類に応じて適宜選択できる。例えば、加熱する方法、紫外線や電子線等の電磁波を照射する方法等が挙げられる。加熱により硬化処理を行う場合、加熱温度は、25~200℃が好ましく、30~180℃がより好ましく、40~160℃がさらに好ましい。低い温度で硬化処理を行うほど、最終的に形成されるポリマーモノリスの平均空孔径をより大きくすることができる。高い温度で硬化処理を行うほど、最終的に形成されるポリマーモノリスの平均空孔径をより小さくすることができる。
硬化処理を行った後、さらにアニール処理を行うことも好ましい。アニール処理を行うことで、硬化反応を完了させるとともに基材との密着性が向上する。アニール処理を行う場合、温度は、100~200℃が好ましく、120~180℃がより好ましく、150~180℃がさらに好ましい。
硬化膜から孔形成剤を除去する処理としては、例えば、硬化膜中に含まれる孔形成剤を抽出する処理が挙げられる。孔形成剤が水溶性である場合、水、アルコール、アセトン等の孔形成剤よりも揮発性の高い溶媒中に入れることにより、孔形成剤を硬化膜から抽出できる。この後、置換された溶媒を揮発除去することによりポリマーモノリスが得られる。
孔形成剤を抽出する方法としては、前述の溶媒による抽出とそれに続く熱乾燥法ではなく、孔形成剤を直接加熱除去する方法でもよい。この場合、沸点が高い孔形成剤については、減圧下に加熱することで、より低温で孔形成剤を揮発除去することもできる。
孔形成剤としては、重合性化合物及び架橋剤を溶解可能であり、かつ、重合性化合物と架橋剤とが重合した後、反応誘起相分離を生じさせることが可能な化合物であることが好ましい。孔形成剤の具体例としては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。これらのなかでも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール及びジエチレングリコールが好ましい。ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの分子量は600未満であることが好ましいが、分子量600を超えるものを用いることもできる。
孔形成剤は、圧縮機構部に使用する潤滑油と相溶性の良いものを用いることも好ましい。このような孔形成剤を用いた場合は、ポリマーモノリス中に孔形成剤が含まれた状態でも部品として使用することができ、孔形成剤の洗浄除去等の工程を簡略化又は省略するもともでき、圧縮機の製造コストをより低減できる。
孔形成剤の配合量は、重合性化合物と架橋剤の合計100質量部に対して、50~700質量部が好ましく、200~500質量部がより好ましい。孔形成剤の配合量が前記範囲であれば、ポリマーモノリスによる効果がさらに向上する。
ポリマーモノリスは、シリカ粒子を含んでいることが好ましい。すなわち、ポリマーモノリス形成用組成物にはシリカ粒子が含まれていることが好ましい。これにより、ポリマーモノリス形成用組成物の塗布時の液だれを効果的に抑制することができ、圧縮機の製造性が向上する。
シリカ粒子の平均粒子径は、0.001~100μmが好ましく、0.01~10μmがより好ましく、0.01~0.1μmがさらに好ましい。シリカ粒子の平均粒子径が前記範囲であれば、ポリマーモノリス形成用組成物の粘度を適度に増粘させることができ、塗布時の液だれを抑制しやすい。
シリカ粒子の市販品としては、例えば、「アエロジル」(日本アエロジル株式会社)、「レオロシール」(株式会社トクヤマ)等が挙げられる。
シリカ粒子の配合量は、重合性化合物と架橋剤と孔形成剤の合計100質量部に対して、0.001~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましい。シリカ粒子の配合量が前記範囲であれば、ポリマーモノリス形成用組成物の粘度を適度に増粘させることができ、塗布時の液だれを抑制しやすい。
ポリマーモノリス形成用組成物は、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。ポリマーモノリス形成用組成物に界面活性剤を含有させることで、重合後の相分離サイズを制御しやすい。界面活性剤としては、特に制限されず、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、親水性ブロックと疎水性ブロックからなるブロックコポリマー、例えばポリアクリル酸ブロックとポリアクリルエステルブロックからなるブロックコポリマー、ポリオキシエチレンブロックとポリアクリルエステルブロックからなるブロックコポリマー、ポリオキシエチレンブロックとポリオキシプロピレンブロックからなるブロックコポリマー等が挙げられる。界面活性剤の分子量についても、特に限定されず、低分子化合物でも高分子化合物でも使用することができる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、脂肪アルコールのリン酸エステル塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ホルマリン縮合ナフタレンスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキル1級アミン塩、アルキル2級アミン塩、アルキル3級アミン塩、アルキル4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類等が挙げられる。高分子界面活性剤としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、部分ケン化ポリメタクリル酸塩等が例示される。
ポリマーモノリス形成用組成物中における界面活性剤の配合量は、重合性化合物と架橋剤の合計100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。界面活性剤の配合量が前記範囲であれば、潤滑油保持性に優れた部材をより容易に得ることができる。
ポリマーモノリス形成用組成物には、沸点が100℃以下の低沸点溶剤を配合してもよい。低沸点溶剤の沸点は、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましい。低沸点溶剤の沸点が前記範囲であれば、塗布膜から溶剤が速やかに除去されやすく、塗布時の液だれなどを抑制しやすい。低沸点溶剤としては、アセトン、テトラヒドロフラン、エタノール等が挙げられ、アセトンが特に好ましい。
ポリマーモノリス形成用組成物に低沸点溶剤を配合する場合、低沸点溶剤の配合量は、重合性化合物と架橋剤と孔形成剤の合計100質量部に対して、1~1000質量部が好ましく、1~100質量部がより好ましい。低沸点溶剤の配合量が前記範囲であれば、塗布時の液だれを抑制しやすい。
ポリマーモノリス形成用組成物には、その機械的特性を向上させる目的でセルロースナノファイバーを配合してもよい。セルロースナノファイバーの原料として用いることができるセルロースの種類は、特に限定されず、例えば木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースや、さらにレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースを用いることができる。
セルロースナノファイバーの製造方法も特に限定されず、例えばグラインダーによる機械処理の他、TEMPO等のN-オキシル化合物を用いた酸化処理、希酸加水分解処理、酵素処理等を機械処理と併用してセルロースナノファイバーを得る方法が知られている。また、バクテリアセルロースもセルロースナノファイバーとして用いることができる。さらに、各種天然セルロースを各種セルロース溶剤に溶解させた後、電界紡糸することによって得られる再生セルロースナノファイバーを用いてもよい。
ポリマーモノリス形成用組成物にセルロースナノファイバーを配合する場合、セルロースナノファイバーの配合量は、重合性化合物と架橋剤と孔形成剤の合計100質量部に対して、0.01~1000質量部が好ましく、1~100質量部がより好ましい。セルロースナノファイバーの配合量が前記範囲であれば、ポリマーモノリスの機械的特性が向上する。
ポリマーモノリス形成用組成物は、種々の特性を向上させる等の目的で、レベリング剤、消泡剤、着色剤、無機フィラー、グラファイトやフッ素粒子等の自己潤滑性固体・ナノ材料等の各種添加剤を添加することができる。なお、モノリス構造を生じるためのスピノーダル分解を阻害しないものを選択するように留意するべきである。
ポリマーモノリス形成用組成物の25℃における粘度は、10mPa・s以上が好ましく、100mPa・s以上がより好ましい。粘度が前記範囲であれば、塗布時の液だれを抑制しやすい。
以上説明したように、実施形態によれば、圧縮機構部の摺動面又はシール面の少なくとも一方にポリマーモノリスが設けられる。これにより、強度を保ちつつ柔軟性が高まり、また潤滑剤を長期間保持できるため、圧縮機構部における摺動面の摩擦損失の低減や、シール面のシール性向上を図ることができる。またポリマーモノリスの柔軟性によって騒音低減効果も得られる。
なお、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
以下、実施例によって具体的に説明するが、以下の記載によっては限定されない。なお、以下の記載における「部」は、「質量部」を意味する。
[空孔率及び平均空孔径]
ポリマーモノリスの空孔率及び平均空孔径は水銀圧入法で測定した。
[ポリマーモノリスの平均膜厚]
ポリマーモノリスの平均膜厚(乾燥膜厚)の測定には、分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社製「M-2000U」)を用いた。光源には、重水素(Deuterium)及び石英タングステンハロゲン(Quartz Tungsten Halogen:QTH)ランプを用いた。
[総合効率、体積効率]
作動流体としてHFC32冷媒、潤滑剤として100℃における動粘度が8.7mm/sであるPOEを用い、ASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)条件にて、ポリマーモノリスを設けていないブレードを備える態様を基準とした圧縮機の総合効率比及び体積効率比を評価した。
[騒音試験]
作動流体としてHFC32冷媒、潤滑剤として100℃における動粘度が8.7mm/sであるPOEを用い、回転軸の回転数を90rpsとして、ポリマーモノリスを設けていないブレードを備える態様を基準とした圧縮機の運転騒音を測定した。
[実験例1]
図1及び図2に例示した圧縮機構部33を備える圧縮機2と同様の態様の圧縮機を製造した。圧縮機構部におけるブレード(SUS440C)の上端面、下端面及び両方の側面にはガス窒化処理を施し、表面硬さを1000HVとした。ブレードの上端面、下端面及び両方の側面の表面粗さRaは0.16であった。ブレードの上端面、下端面及び両方の側面のそれぞれと対向する、主軸受の下面、副軸受の上面、仕切板の上面及び下面、シリンダのブレード溝の内面の表面硬さは210HV、表面粗さRaは0.11であった。
重合性化合物として、エポキシ当量が95~110(平均102)である下記式(2)で表されるエポキシ化合物(商品名「テトラッドC」、三菱ガス化学工業株式会社製)10質量部、架橋剤として、アミン価が520~550である下記式(3)で表されるビス(4-アミノシクロへキシル)メタン(東京化成工業株式会社製)5.75質量部、孔形成剤として、平均分子量が200である下記式(4)で表されるポリエチレングリコール200(キシダ化学株式会社製)40質量部、シリカ粒子としてアエロジル130(日本アエロジル株式会社製)2.5質量部を用い、これらを自転・公転ミキサーの「あわとり錬太郎」で混合することで、ポリマーモノリス形成用組成物を得た。
Figure 0007486741000001
浸漬塗布により、ガス窒化処理を施したブレード(SUS440C)の下端面及び両方の側面に前記ポリマーモノリス形成用組成物を塗布した。塗布膜を120℃で60分間加熱して硬化させた後、溶媒として純水を用いて孔形成剤を抽出により除去し、表面に複数の開口部を有する平均膜厚が20μmのポリマーモノリスを形成した。ポリマーモノリスの空孔率は55%、平均空孔径は0.3μmであった。ポリマーモノリスを走査型電子顕微鏡によって観察した写真を図4に示す。
また、ポリマーモノリスを設けていないブレードを備える態様を基準とした圧縮機の総合効率比を図5、体積効率比を図6に示す。ポリマーモノリスを設けていないブレードを備える態様と比較した圧縮機の運転騒音を図7に示す。
図5及び図6に示すように、ブレードにポリマーモノリスを設けることで、圧縮機の総合効率及び体積効率が向上した。また、図7に示すように、ブレードにポリマーモノリスを設けることで、騒音低減効果が得られた。
1…冷凍サイクル装置、2…圧縮機、3…凝縮器(放熱器)、4…膨張装置、5…蒸発器(吸熱器)、34…密閉容器、37a,37b…シリンダ、38a,38b…シリンダ室、39…仕切板、40…主軸受、41…副軸受、43a,43b…ローラ、45…ブレード、48a,48b…吐出孔(通孔)、49a,49b…吐出弁座、50a,50b…開閉弁、80…ポリマーモノリス。

Claims (12)

  1. 作動流体を吸い込んで吐出する圧縮機構部を有する圧縮機において、
    前記圧縮機構部は、作動流体を圧縮室に吸入するか、もしくは圧縮室から吐出する通孔と、前記通孔を開閉する開閉弁と、前記通孔の周囲に設けられ、弁閉時に前記開閉弁との間をシールする弁座と、を備え、
    前記開閉弁及び前記弁座のシール面のいずれか一方又は両方に、連続空孔とポリマー骨格の3次元共連続構造を有するポリマーモノリスが設けられている圧縮機。
  2. 前記ポリマーモノリスの表面に前記連続空孔に通じる開口部が形成され、前記圧縮機構部を潤滑する潤滑油が前記開口部を通じて前記連続空孔内に流出入する、請求項1に記載の圧縮機。
  3. 前記ポリマーモノリスの表面に前記連続空孔に通じる複数の開口部が形成され、運転時に前記の複数の開口部間で圧力差が生じる、請求項1又は2に記載の圧縮機。
  4. 前記圧縮機構部を潤滑する潤滑剤の100℃における動粘度が、5.0mm/s以上25mm/s以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の圧縮機。
  5. 前記ポリマーモノリスの空孔率が30%以上80%以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の圧縮機。
  6. 前記ポリマーモノリスの平均空孔径が0.1μm以上2.0μm以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の圧縮機。
  7. 前記圧縮機構部は、前記シール面として機能する第一の表面と第二の表面とを有し、前記第二の表面は前記第一の表面よりも表面粗さRaが大きく、前記第二の表面に前記ポリマーモノリスが設けられている、請求項1~のいずれか一項に記載の圧縮機。
  8. 前記圧縮機構部は、前記シール面として機能する第一の表面と第二の表面とを有し、前記第二の表面は前記第一の表面よりも表面硬さが高く、前記第二の表面に前記ポリマーモノリスが設けられている、請求項1~のいずれか一項に記載の圧縮機。
  9. 前記第二の表面に表面硬化処理が施されている、請求項に記載の圧縮機。
  10. 前記ポリマーモノリスの前記ポリマー骨格が、2官能以上のエポキシ化合物と2官能以上のアミン化合物との重合物である、請求項1~のいずれか一項に記載の圧縮機。
  11. 前記ポリマーモノリスがシリカ粒子を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の圧縮機。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の圧縮機と、放熱器と、膨張装置と、吸熱器とを備えた冷凍サイクル装置。
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