JPH07216411A - 摺動部材および摺動部材の摩擦特性の改善方法 - Google Patents

摺動部材および摺動部材の摩擦特性の改善方法

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JPH07216411A
JPH07216411A JP3316894A JP3316894A JPH07216411A JP H07216411 A JPH07216411 A JP H07216411A JP 3316894 A JP3316894 A JP 3316894A JP 3316894 A JP3316894 A JP 3316894A JP H07216411 A JPH07216411 A JP H07216411A
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Mitsunori Kagawa
光則 香川
Satoru Yamamoto
覚 山本
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CHUO HATSUMEI KENKYUSHO KK
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 潤滑オイル等の潤滑剤の存在下に使用され、
青銅系金属粉体焼結体等の焼結体からなる摺動部材に対
して、少なくともその摺動面を含浸剤により封孔処理し
て摺動面の摩擦係数を減少せしめ、摺動部材の摩擦特性
を改善する。含浸剤は有機合成樹脂を主成分とし、含浸
後に有機合成樹脂を完全硬化せしめて硬化物を形成する
ことにより封孔処理が施される。 【効果】 摺動部材の摩擦係数を低下させて摺動特性を
改善することができる。軸受、コンプレッサー、オイル
ポンプ、油圧モータ等の摺動面に応用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、軸受、コンプレッサの
シリンダ、ピストン等のように、流体潤滑環境下に摺動
状態で使用される摺動部材、およびこのような摺動部材
の摩擦特性の改善方法に関する。
【0002】
【従来の技術】潤滑油の存在下に使用される軸受等の摺
動部材は、従来から鋳物、鍛造品、粉体金属焼結体など
が用いられている。しかしながら、鋳物、鍛造品で製造
された摺動部材は、摺動箇所に適した形状の特別な潤滑
機構を付加しなければ摺動面の金属接触を低減させるこ
とができず、摩擦係数を低下させることはできない。ま
た鍛造品については機械的な製作精度にも限界があっ
た。
【0003】一方、粉末金属燒結技術では、比較的寸法
精度に優れた摺動部材を比較的容易に製造できるが、鋳
物、鍛造品と同様に摩擦係数を低減させるには十分な性
質のものではない。また、粉末金属焼結体に対して硬さ
の付与、封孔処理等を目的として、水蒸気処理すること
も知られているが、摺動部材として使用した場合に摩擦
係数を低下させることはできない。
【0004】さらに、摺動部材として用いられる粉末金
属焼結体に対して熱処理、浸炭処理、窒化処理等を施し
て表面硬度を高め耐摩耗性を向上させることも知られて
いる。しかしこの手法でも摺動面の油膜の形成は十分に
なされず、摩擦抵抗の減少は発生せず、基本的に摩耗は
避けられず、掛けられる最大負荷にも限界を生じる。
【0005】また、摺動部材として使用される金属焼結
体に対してテフロン塗装、デフリックコート、リン酸金
属塩被膜の形成、銅溶浸等の処理を施して被膜を形成
し、自己潤滑性を高めて摩擦特性を改善することが知ら
れているが、この手法には以下のような欠点がある。
【0006】(1) 被膜自体の機械的強度が不十分で
あり、高い負荷では被膜が破壊されるおそれがある。 (2) 寸法精度が出しにくい。 (3) 処理コストが高い。
【0007】以上のように、摺動性能の向上を目的とし
て、金属焼結体に対して樹脂含浸処理を施す技術手法
は、従来は全く提案されていない。なお、樹脂含浸によ
る封孔処理自体は、従来から汎く知られている(特開昭
53−24385号公報参照)。
【0008】例えば、金属焼結体に関しては、気密性を
得るため、メッキ、塗装、接着剤を乗せやすくするた
め、機械加工性の改善等を目的として含浸処理が行なわ
れている。また、焼結体以外の製品に対しては、例え
ば、鋳造品、ダイカスト品に発生する鋳巣、ブロウホー
ル、ピンホール等の欠陥を樹脂含浸により封孔処理し
て、耐圧部品としての使用を可能とすることが行なわれ
ている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、粉末焼結体
で製造された摺動部材において、摺動面の摩擦係数を低
下させて摩擦特性を改善することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、摩擦係数
を低下させてを摺動特性を改善すべく鋭意検討した結
果、以下の通り、本発明を完成するに至った。すなわ
ち、鋳造品、鍛造品からなる摺動部材は、摺動面の金属
接触を避けるために、特別な給油機構を必要とし、その
結果、摺動面における安定した油膜の存在によって、流
体潤滑領域の低摩擦係数を得る以外有効な手段がない。
そのような機構以外においては、摺動面の金属接触は避
けられず、摺動部材の材質自体の特性に左右されてしま
う。
【0011】一方、金属燒結体からなる摺動部材は、多
孔質であり金属接触は少ないが、多孔質であるが故に潤
滑油の油圧が分散してしまい、油膜の発生が不十分とな
り摩擦係数が低下しないことが判明した。従来の水蒸気
処理による封孔処理では、油圧を高めて摩擦係数を十分
に低下させることができない。
【0012】これに対して、粉体焼結体からなる摺動部
材に対して、樹脂ベースの含浸剤により封孔処理して気
密性を持たせれば、潤滑油等を用いた摺動環境下では、
流体摩擦だけの潤滑機構に近づくようになり、結果とし
て摩擦係数μが減少し、耐摩耗性、耐久性などの摺動に
関する性能が向上することが判明した。
【0013】すなわち、本発明の摺動部材は、潤滑剤の
存在下に摺動状態で使用される摺動部材において、粉体
の焼結体からなり、少なくとも摺動面が含浸剤により封
孔処理されていることを特徴とする。また、本発明の摺
動部材の摩擦特性の改善方法は、潤滑剤の存在下に使用
され、粉体の焼結体からなる摺動部材に対して、少なく
ともその摺動面を含浸剤により封孔処理して摺動面の摩
擦係数を減少せしめることを特徴とする。
【0014】
【実施例】本発明で対象とするのは、潤滑剤の存在下に
摺動状態で使用される摺動部材である。ここで「摺動状
態で使用される」とは、それ自体が駆動されて回転運
転、直線運動などをし、静止あるいは運動している他の
部材との間に摺動面を形成する運動摺動部材と;それ自
体は静止しているが、他の部材がそれに沿って動くため
に、この他の部材との間に摺動面を形成する静止摺動部
材との双方を含むことを意味する。
【0015】すなわち、回転軸と軸受のように強制潤滑
機構中の各摺動部品、剛体中に潤滑剤が封入され、この
剛体中で、摺動部材が運動する場合の剛体、運動部材な
どが、本発明の摺動部材に含まれる。後者の一例として
は、シリンダー内に潤滑油を充填し、シリンダ内でピス
トンを回転させる圧縮機などが例示される。また、潤滑
剤は、液体でも、気体でもよく、潤滑油が代表的であ
る。気体を潤滑剤として用いる摺動部材としては、気体
封入軸受などがある。
【0016】摺動時に掛かる荷重状態は特に問わず、例
えば以下のものが挙げられる。 (1) 摺動軸心線に垂直方向に掛けるラジアル方向の
荷重 (2) 摺動軸心線に平行に掛かるスラスト方向の荷重 (3) 歯車等の噛み合い荷重 (4) 運動の接線方向に垂直な荷重 (5) 上記の複合的な荷重
【0017】本発明の摺動部材は、粉体の焼結体からな
り、例えば、鉄系粉体焼結体、銅合金系粉体焼結体、ア
ルミニウム合金系粉体焼結体、ステンレス合金系粉体焼
結体等の金属粉体焼結体、その他の無機系粉体焼結体な
どがある。本発明では、含浸剤を用いて封孔処理がなさ
れる。封孔処理は、少なくとも摺動面に対して行なわれ
るが、部材の表面全体を封孔処理してもよい。
【0018】本発明における含浸剤は、粉末燒結体の空
隙内部に充填し、かつ完全硬化させるという目的のため
に、粘性がある程度低いことや、濡れ性が良いこと、完
全硬化が可能なことなどの性質を持つことが条件であ
る。含浸後に燒結体の空隙内部で完全硬化が可能なもの
としては、一般的には、有機モノマーを主成分としたも
の、有機ポリマーを主成分としたもの、有機ポリマーを
溶剤カットしたもの、有機ポリマーの水性エマルジョン
タイプなど、いずれも用いることができる。含浸剤のタ
イプは、適用する摺動条件や、材質等により最適化する
ことができる。
【0019】有機モノマー型含浸剤は、一般に合成樹脂
を形成するモノマーを主成分とし、少量の多官能性モノ
マーを含み大部分が液状の組成物中に、過酸化触媒、あ
るいは他のフリーラジカル触媒および重合抑制剤等を配
合したものであり、用途によっては適当な固体潤滑剤を
分散させたり、液体潤滑剤を配合することもある。重合
形態としては、加熱、常温、紫外線、嫌気性などを利用
することができる。例として(メタ)アクリル酸エステ
ル系モノマー、スチレン系モノマー、アリル系モノマー
などがある。
【0020】有機ポリマー型含浸剤は、一般に未硬化状
態で液体状の有機ポリマーを主成分とした系に、硬化促
進剤、改質剤、希釈剤、充填剤等を配合、もしくは、含
浸工程直前に後添加したものであり、用途によっては適
当な固体潤滑剤を分散させたり、液体潤滑剤を混合する
場合もある。硬化形態としては、加熱、常温、紫外線な
どを利用することができる。例として、エポキシ系樹
脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド系
樹脂、ポリアセタール系樹脂等がある。
【0021】溶剤カット型含浸剤は、3〜7割の有機溶
剤ベースに、適当な高分子樹脂を溶解、もしくは分散さ
せた系に、硬化触媒や架橋剤等を配合したものであり、
用途によっては適当な固体潤滑剤を分散させたり、液体
潤滑剤を混合する場合もある。硬化形態としては、常温
放置、もしくは加熱放置などを利用することができる。
例として、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ウレタ
ン系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂などがあ
る。
【0022】水性エマルジョン型含浸剤は、水系中でエ
マルジョン化させた樹脂、あるいは水系中でサスペンジ
ョン重合によりエマルジョン化させた樹脂を含有する水
系液体に、硬化触媒や安定剤等を配合したものであり、
用途によっては、適当な固体潤滑剤を分散させたり、液
体潤滑剤を混合する場合もある。硬化形態としては、常
温放置、もしくは加熱放置などを利用することができ
る。例として、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポ
リウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などがある。
【0023】封孔処理は従来と同じ工程で行なうことが
でき、含浸剤の含浸、余剰含浸剤の洗浄除去、含浸剤の
硬化により封孔処理が完了する。含浸方法には、真空含
浸方法、含浸液の浸透を利用し、常温・常圧下に被処理
物を含浸液中に浸漬する方法などがある。
【0024】真空含浸方法には、含浸槽中を真空にした
後に含浸液中に被処理物を浸漬する方法、浸漬後に更に
含浸槽内を加圧する方法、浸漬後に含浸槽内を真空にす
る方法、真空にした後に更に真空槽内を加圧する方法な
どがある。硬化方法としては一般に加熱硬化方法が採用
され、何らかの熱媒体によって、含浸された焼結体を含
浸剤に応じて加熱することにより、含浸剤が熱硬化し、
封孔処理がなされる。
【0025】本発明における、代表的な含浸剤とその処
理方法は、次のような内容である。含浸剤は、メタアク
リル酸エステルモノマー型で、その組成は、主成分とし
て2−ヒドロキシプロピルメタアクリレートを68.6
%、架橋剤としてポリプロピレングリコールモノメタク
リレートを19.6%、ネオペンチルグリコールジメタ
クリレートを9.8%、ポリプロプレングリコールジメ
タクリレートを1%、改質剤としてネオペンチルグリコ
ールジグリシジルエーテルを1%、また、重合抑制剤と
してp−メトキシフェノールを全体に対して450pp
m配合した物を主剤とし、これに、硬化剤として有機過
酸化物であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサ
ノエートを1%後添加した物である。また、用途によっ
ては、固体潤滑剤として、平均粒径が0.3〜3μm程
度の窒化ボロン粉末、あるいは四フッカエチレン樹脂
を、重量比で1〜3%程度、かかる含浸液に均一に分散
させる場合もある。
【0026】かかる含浸剤の物性としては、粘度が9.
5〜11.5cps(25℃)、比重が1.02(25
℃)、表面張力が33dyn/cm(25℃)と測定さ
れており、浸透性に対して十分な物性値である。
【0027】含浸方法としては、密封されたタンク中に
被含浸物である焼結体をセットし、タンク内部を真空ポ
ンプにより減圧せしめ、一定の真空時間を持って放置し
焼結体の空隙内部より残留空気を除去させる。好ましく
は、真空度5mmHg以下で15分間維持する。その
後、減圧したまま含浸剤に被含浸物を完全浸漬させ、液
面の気泡がほぼ消失するまで脱泡し、空隙内部に含浸液
を置換させる。含浸タンクを大気解放後、再びタンクを
密閉して圧縮空気により6.0kg/cm2 まで加圧す
る。好ましくは、6.0kg/cm2 で15分間保持さ
せる。これにより空隙内部への含浸剤の充填が終了す
る。その後含浸タンクより被含浸物を取り出し、水洗浄
によって、表面の余剰含浸剤を洗浄除去し、被含浸物と
充填されている含浸剤を90℃まで加熱し、重合反応に
より空隙内部で完全硬化させる。加熱は好ましくは、適
当な防錆剤が添加されている90℃以上の温水に常圧下
で被含浸を浸漬させ、重合反応の温度90℃まで加熱
し、15分間保持し、その後乾燥炉によって乾燥させ
る。乾燥後は常温まで冷却し、工程が完了する。
【0028】本発明における摺動部材の代表例は軸と軸
受であり、摺動面に樹脂含浸による封孔処理を施すこと
により摩擦係数が低下し、耐摩耗性が向上し耐久性が改
善される。また、負荷荷重により焼き付けの発生を防止
できるので、さらに荷重を増加させることができ、高速
運転等が可能となる。軸は回転軸でも直動軸でもよい。
【0029】また、本発明の摺動部材を冷凍機用等の圧
縮機(コンプレッサー)部品へ応用することができる。
冷凍機は、圧縮機の作用により冷媒の気化、液化を繰返
し低温を作り出す装置である。圧縮機における冷媒とし
ては従来フロンR−11,R−12が主に用いられてき
たが、地球環境に対する配慮からその使用が制限され、
フロンR−134aなどの代替フロンの使用が検討され
ている。しかし、これら代替フロンは、従来のフロンR
−11等よりも蒸発潜熱量が小さいため、圧縮率を現行
よりも高めないと低温を作り出せない。そのため、圧縮
機の摺動部位の負荷荷重はさらに高荷重となるが、現在
の摺動技術では耐久性が不十分である。本発明によれ
ば、摺動部材を樹脂含浸により封孔処理することによ
り、摺動特性を改善することができる。圧縮機として
は、下記の表1に示すように種々の方式があるが、それ
ぞれの摺動部材の摩擦特性を本発明により改善すること
ができる。
【0030】
【表1】 表1: 圧 縮 機 の 摺 動 部 材 方 式 摺 動 部 材 ピストン式 軸受 ロータリー式 シリンダー、ローター、ベーン、ピストン、軸受 ロータリーベーン式 シリンダー、ローター、ベーン、軸受 スクロール式 固定スクロール、可動スクロール、軸受
【0031】図1は、ロータリー式圧縮機の構成を簡略
化して示す分解斜視図である。シリンダ11内には潤滑
油が配合されたフロンが充填され、ピストン17が上軸
受体(あるいは上ベアリング)13および下軸受体(あ
るいは下ベアリング)15に支承されて偏心回転し、ス
プリング21により上下動するベーン19とピストン1
7およびシリンダー11内壁との間に形成される閉空間
の変化により、冷媒を圧縮する。ここで、駆動されるピ
ストン17に対して、シリンダー11、上軸受体13、
下軸受体15、ベーン19はいずれも摺動面を有し、こ
れらは本発明における摺動部材である。
【0032】図2は、本発明の摺動部材が応用されるオ
イルポンプの一例を示す。オイルポンプは、電動モータ
ーによる圧送力により油圧を得、これを他の部材の駆動
源とするものである。ここで、力伝達用の油は、同時に
潤滑剤としても機能しているが、この油圧を発生させる
油中に別途に潤滑剤を添加配合することもできる。
【0033】図2は、ギア式(凹凸式)のオイルポンプ
を示し、ポンプ本体31でモータによりドライブギア3
3を回転させることによりドリブンギア35を矢印方向
に回転させ、吸入口37より吸入したオイルを圧送して
油圧を得る。
【0034】オイルポンプは、現状では大きな問題点は
表面化していないが、より効率の良い運転を実現させる
ためには摺動特性の向上が第1の条件となり、この解決
課題は、本発明の摺動部材によって改善される。オイル
ポンプとしては下記の表2に示すように種々の方式があ
り、それぞれの摺動部材の摩擦特性は本発明の樹脂含浸
による封孔処理によって改善される。
【0035】
【表2】 表2: オイルポンプの摺動部材 形 式 用 途 例 摺 動 部 材 ギア式(凸凸式) 圧送式オイルポンプ ポンプ本体、ドライブギア、 ドリブンギア、軸受 ギア式(凹凹式) 圧送式オイルポンプ ポンプ本体、ドライブギア、 ドリブンギア、軸受 トロコイド式 圧送式オイルポンプ ポンプ本体、インナーおよびアウタ ガソリンポンプ ーローター、軸受 ベーン式 パワーステアリング用 ポンプ本体、カムリング、 オイルポンプ ローター、ベーン、軸受
【0036】さらに本発明の摺動部材はスラスト荷重の
油圧駆動部品へ応用することができ、その一例として油
圧モーターを挙げることができる。油圧モーターは、オ
イルポンプとは逆の原理であり、油圧によってジローラ
と呼ばれる回転子を回転させ、このシャフトに回転出力
を与える構成である。出力軸であるシャフトと、油圧を
受ける回転子および油圧の流れを受ける回転子(ディス
クバルブ)とはスラスト方向の荷重が掛かりながら相対
運動している。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、焼結体に対して樹脂含
浸し封孔処理を施して摺動部材とすることにより、摺動
部材の摩擦係数を低下させて摺動特性を改善することが
できる。
【0038】
【実験例】
実験例1 青銅系金属粉体焼結体を用いた内径8mm、ジャーナル
長9mmの軸受と、S45C生材から切り出し加工した
外径7.988±0.005mmのシャフトを作成し、
ハメ合い公差h7の精度で用意した。このとき、メタク
リル酸エステルモノマーと少量の架橋剤を配合した系
に、過酸化触媒としてターシャリブチルパーオキサイド
を添加した加熱重合型含浸液で軸受を真空含浸し、余剰
の含浸液を洗浄、除去後に、90℃の温水中で加熱硬化
して封孔処理を施し、本発明品の軸受を得た。また、封
孔処理を施さない以外は上記と同様の仕様の軸受とシャ
フトを用意し、未処理品とした。
【0039】粘度グレードVG42の潤滑オイルを用
い、潤滑オイルの存在下にシャフトを3000rpmで
回転させた。このとき、負荷を5kgfから50kgf
まで増加させて摩擦係数を測定した。
【0040】この結果を図3に示す。未処理品は摩擦係
数μが大きく、負荷を10kgfとしてPV値を209
4.4kgf/cm2 ・m/minとした時点で焼き付
きが発生し運転不能となった。一方、本発明品は焼き付
きを発生することがなく、摩擦係数μは、0.016ま
で低下した。
【0041】実験例2 鉄系金属粉体焼結体を用い、内径20mm、外径25.
6mmのリングと、直径55mmのディスクを作成し、
双方の摺動面の面粗度を2sと規定した。このときリン
グとディスク双方に対して、実験例1と同じ含浸剤を用
いて封孔処理を施し、本発明品のリングとディスクを得
た。また、封孔処理を施さない以外は上記と同様のリン
グとディスクを用意し、未処理品とした。
【0042】粘度グレードVG42の潤滑オイルを用
い、潤滑オイルの存在下に、リングとディスクの双方の
摺動面を押しつけ、ディスクを1.0m/secの速さ
で回転させた。このとき負荷を、2kgf、5kgf、
10kgf、15kgfと変化させ、摩擦係数を測定し
た。この結果を図4に示す。未処理品は明らかに、摩擦
係数が大きく、油膜の安定性が悪い。一方、本発明品
は、各荷重において安定した摩擦係数を示し、0.1以
下で推移している。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の応用例を示す圧縮機の分解斜
視図である。
【図2】図2は、本発明の応用例を示すオイルポンプの
説明図である。
【図3】図3は、実験例1における摩擦係数とPV値の
関係を示すグラフである。
【図4】図4は、実験例2における摩擦係数と負荷荷重
の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
11 シリンダー 13 上軸受体(上ベアリングとも呼ばれる) 15 下軸受体(下ベアリングとも呼ばれる) 17 ピストン 19 ベーン 31 ポンプ本体 33 ドライブギア 35 ドリブンギア 37 吸入口

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 潤滑剤の存在下に摺動状態で使用される
    摺動部材において、 粉体の焼結体からなり、少なくとも摺動面が含浸剤によ
    り封孔処理されていることを特徴とする摺動部材。
  2. 【請求項2】 含浸剤が有機合成樹脂を主成分とし、含
    浸後に有機合成樹脂を完全硬化せしめて硬化物を形成す
    ることにより封孔処理が施されている請求項1に記載の
    摺動部材。
  3. 【請求項3】 潤滑剤の存在下に使用され、粉体の焼結
    体からなる摺動部材に対して、少なくともその摺動面を
    含浸剤により封孔処理して摺動面の摩擦係数を減少せし
    めることを特徴とする摺動部材の摩擦特性の改善方法。
  4. 【請求項4】 含浸剤が有機合成樹脂を主成分とし、含
    浸後に有機合成樹脂を完全硬化せしめて硬化物を形成す
    ることにより封孔処理が施されている請求項3に記載の
    摺動部材の摩擦特性の改善方法。
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