JPH06229476A - 摺動装置、流体装置、圧縮機及びその製造方法 - Google Patents

摺動装置、流体装置、圧縮機及びその製造方法

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JPH06229476A
JPH06229476A JP31938791A JP31938791A JPH06229476A JP H06229476 A JPH06229476 A JP H06229476A JP 31938791 A JP31938791 A JP 31938791A JP 31938791 A JP31938791 A JP 31938791A JP H06229476 A JPH06229476 A JP H06229476A
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layer
resin
cylinder block
synthetic resin
metal
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JP31938791A
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English (en)
Inventor
Mitsuo Oginoya
三男 萩野谷
Naonobu Kanamaru
尚信 金丸
Kazuhiko Sato
和彦 佐藤
Minoru Mitani
稔 三谷
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SOKEN KAKO KK
Hitachi Ltd
Original Assignee
SOKEN KAKO KK
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 すべり、摩擦を受ける一方の部材をAl系合
金で形成し、その表面を陽極酸化層中の空隙部に金属あ
るいは樹脂を含浸した表面層に改質し、もう一方の部材
を樹脂を主体とした表面層を有する部材との組合せとし
た摺動装置。 【効果】 両部材間の摩擦係数が小さく、機械的損失が
少なくなり、耐摩耗性に優れるため耐久性が向上し、体
積効率、全断熱効率の低下が少なく、省エネルギーにも
寄与できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は部材同志がすべり、摩擦
を受ける摺動装置に係り、特に流体機械等に用いて好適
な摺動装置、流体装置、更にシリンダボア内をピストン
が往復運動して気体あるいは液体を圧縮する圧縮機及び
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】各種機械等においては部材同志がすべ
り、摩擦を受ける部材が多く用いられている。したがっ
て、その部材の使用条件に応じて好適な材料が使用さ
れ、かつ、提案もなされている。使用条件によって材料
の組合せも様々であることから、提案も多種多様であ
る。近年、機械の軽量化が望まれており、摺動部材にも
Al系合金が多く用いられるようになり、Al合金の表
面処理等の提案も多い。例えば、実開平1−80822
号にはAl軸に陽極酸化処理(アルマイト処理)を施こ
し、この軸を合成樹脂のベアリングで支承した軸受装置
が提案されている。この提案は軸とベアリングの組合せ
であり、軸受の場合は比較的潤滑状態の良好な使い方が
多く、使用に耐えられるものと思われる。特にジャーナ
ル荷重を受ける軸受では流体潤滑になり易い。しかし、
スラスト荷重を受ける場合は境界潤滑になり易く、異状
摩耗が生じ易い。特に、陽極酸化層は硬質で多孔質なた
め、軟質な樹脂を攻撃し易いという欠点がある。また、
摺動時の熱によりクラックが生じ易い。したがって、境
界潤滑状態あるいは無潤滑状態になった場合に樹脂側の
異状摩擦が生ずるおそれがある。特に、高速、高荷重の
摺動においては、その傾向が高くなる。
【0003】また従来、レシプロ型圧縮機のシリンダブ
ロック材にはSiを12重量%程度含有したAl−Si
系合金の鋳造材が用いられ、ピストンリング材には金属
粉末、ガラス粉等を含有させた四フッ化エチレン(PT
FE)等の合成樹脂が用いられていた。しかし、シリン
ダボア及びピストンリングの耐摩耗性が十分ではなく、
効率が低下する等の問題があった。これらを改善するた
めに種々の提案がなされている。例えば、特開昭61−
265366号公報には、シリンダブロック材としてS
iを16〜20重量%含有したAl−Si系合金を用
い、ピストンリングを合成樹脂にすることが開示されて
いる。これは含有するSi量を多くして耐摩耗性を向上
させるものである。しかし、Si量を多くしても基地の
硬さ向上は得られない。また、Si晶はビッカース硬さ
で1000以上あるので、摺動時相手材のピストンリン
グを引掻き摩耗を促進させて、効率を低下させる。ま
た、空気調整装置の圧縮機では、冷媒としてR12,R
22等が用いられ、冷凍機油として鉱油が用いられてい
た。上記冷媒はいずれも塩素を含むフロンであり、この
塩素が特にAl材の耐摩耗、耐焼付性を向上する働きを
していた。また、冷凍機油に用いられている鉱油は圧力
粘度指数が高く、油膜の形成が比較的良好で耐摩耗性、
耐焼付性を向上せしめていた。
【0004】しかし、塩素を含有するフロンはオゾン層
の破壊等の環境問題から使用が制限されつつあり、代替
冷媒の開発が急がれている。これら代替冷媒は塩素を含
まないものであることが必要とされている。したがっ
て、塩素による耐摩耗性、耐焼付性の向上は望めない。
また、潤滑油として用いられている鉱油は現在開発され
ている代替冷媒に対して不溶性であり、潤滑油も合成油
に変更せざるを得ない。この合成油は圧力粘度指数が低
く、耐摩耗性、耐焼付性に問題が生ずる。さらに、現在
開発されている合成油は吸湿性があり、腐食の問題が生
ずる。すなわち、Al基地が表面に現われている状態で
は水分が腐食を促進する。したがって、従来よりも耐焼
付性、耐摩耗性、耐食性に優れた摺動部材の開発が望ま
れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記前者の従来技術は
境界潤滑あるいは無潤滑下での高速、高荷重時の使用に
おける配慮が十分なものではない。すなわち、前述した
ように陽極酸化処理は多孔質であり、表面は硬質なAl
23中に穴があいた状態となっており、高荷重下では相
手材である軟質な樹脂を削るような状態となり、樹脂側
の異状摩耗が生ずる。つまり、高荷重下では摺動面に油
膜が形成されにくく、油膜切れが生ずる。この状態でや
すりのような多孔質面でこすられるため、軟質な樹脂の
摩耗が大きくなる。また、高速摺動になると摺動面の温
度が上り、耐熱温度の低い樹脂は塑性流動あるいは炭化
し、異状摩耗の発生原因となる。上記のような多孔質の
陽極酸化層を有する面で摺動すると摩擦係数も大きくな
り、機械的損失も大となり、エネルギー損失も大きくな
る。
【0006】上記後者の従来技術は冷媒としてR12,
R22等の塩素を含むフロン及び潤滑油として鉱油を用
いた場合に対応できた技術であるが、塩素を含まない代
替冷媒であるR134a等と合成油を用いた場合、摺動
に対する配慮がなされておらず、例えば、シリンダブロ
ック材をSi含有量16〜18重量%としたAl合金を
用いても耐摩耗性、耐焼付性、耐食性は十分なものとは
言えない。すなわち、従来の冷媒は塩素を含むフロンが
用いられており、この塩素が活性な摺動面に作用して塩
化物が形成され、この塩化物が潤滑効果を高めていた。
しかし、代替冷媒には塩素が含まれておらず、塩素によ
る前記潤滑効果は望めない。
【0007】また、従来の潤滑油には鉱油が用いられて
おり、鉱油は圧力粘度指数が高く、摺動面に油膜が形成
され易かった。しかし、鉱油は代替フロンと相溶性がな
く、相溶性のある合成油を用いることを余儀なくされて
いる。この合成油は鉱油に比べ圧力粘度指数が低く、油
膜切れが生じ易い。また、合成油は鉱油に比し、吸湿性
が非常に大きく、飽和水分量は鉱油の数十ppmに比べ数
万ppmのオーダーになる。この水分による腐食及び潤滑
油の潤滑性低下を招く。すなわち、水分が活性な摺動面
に作用して摺動面が腐食され、腐食生成物が摺動によっ
て取り去られると再び活性面になり、活性な面は再び腐
食されるという繰返しの腐食摩耗が生じ、摩耗損傷が促
進される。また、潤滑油中に吸収された水分は潤滑効果
を低下させ、油膜が益々切れ易くなり摩耗が促進され
る。摩耗が進むにつれ、シリンダブロックのボアとピス
トンリングのギャップが大きくなり、圧縮効率が低下す
る。従って、シリンダボア及びピストンリングの摩耗量
は小さいものが望ましい。 本発明の目的は摩擦係数が
小さく、高速、高荷重下でも異状摩耗もない、耐摩耗性
に優れた組合せの摺動装置の提供及びこれを用いて機械
的損失の少ない、耐久性に優れた流体装置を提供するこ
とにある。
【0008】また本発明の目的はシリンダブロックのボ
ア及びピストンリングの最適な材料を組合せることによ
り、相手方の摩耗量を少なくして圧縮効率の低下を防
ぎ、かつ耐久性に優れた圧縮機及びその製造方法を提供
することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点を解
決するものであり、本発明を概略すれば、すべり、摩擦
を受ける一方の部材をAl系合金で構成し、表面を陽極
酸化層中の空隙部に金属を含浸せしめた表面層とした部
材とし、もう一方の部材を樹脂を主体とした表面層を有
する部材との組合せとした摺動装置であり、これらの部
材を流体機械に用いたことを特徴とする。さらに、もう
一つはすべり摩擦を受ける一方の部材をAl系合金で構
成し、表面を陽極酸化層中の空隙部に樹脂を含浸せしめ
た表面層とした部材とし、もう一方の部材を樹脂を主体
とした表面層を有する部材との組合せとした摺動装置で
あり、これらの部材を流体機械に用いたことを特徴とす
る。 摺動部材の組合せとしては、硬質な部材と軟質な
部材、硬質部材同志を組合せることが多く、本発明は前
者の部類に属する。このような組合せでは硬質側の面粗
さは極力小さくすることが望ましい。すなわち、硬質側
の面粗さが大きい場合には軟質側の部材を削る現象が起
る。したがって、摩耗量が多くなる。また、面粗さが大
きい場合には摩耗粉が凹部に溜り、この摩耗粉が相手材
と凝着を起し、摩耗が増大して異状摩耗の原因となる。
しかし、陽極酸化法は表面と直角方向に空隙が形成され
るのが特徴である。すなわち、硬質なAl23中に空隙
がある状態であり、その空隙も面と直角方向(深さ方
向)であるため、面を研摩しても空隙はなくならない。
したがって、表面に凹部のある状態で摺動するため、軟
質な樹脂は摩耗が大きくなる。また、陽極酸化層はAl
23で内部のAl系合金と熱膨張係数が異なるため、摺
動時の温度上昇によりクラックが生じて相手材の摩耗量
を増大させる。使用状態によっては陽極酸化層が剥離す
る場合もある。この摩耗量は荷重が大きくなる程増大す
る傾向を示す。摩耗を小さくするためには、表面の凹凸
をなくすことが望ましい。
【0010】本発明は上記問題点を解決するために、A
l系合金に陽極酸化層を形成すると共に、陽極酸化層中
の空隙部に金属あるいは樹脂を含浸して表面の凹凸をな
くし、合成樹脂との組合せでも相互の耐摩耗を向上せし
めるようにしたものである。
【0011】また上記目的を達成するため本発明は、1
つ又は複数個のボアを有するシリンダブロックの該ボア
内をピストンが往復運動して気体又は液体を圧縮する圧
縮機において、前記シリンダブロックは、Al系合金で
形成され、少なくとも該シリンダのボア内周面に陽極酸
化層が形成され、該陽極酸化層中の空隙部に金属が含浸
されて表面層が形成され、前記ピストンの該シリンダボ
ア内周面と摺動する面に合成樹脂面が設けられたもので
ある。
【0012】また、本発明は1つ又は複数個のボアを有
するシリンダブロックの該ボア内をピストンが往復運動
して気体又は液体を圧縮する圧縮機において、前記シリ
ンダブロックは、Al系合金で形成され、少なくとも該
シリンダのボア内周面に陽極酸化層が形成され、該陽極
酸化層中の空隙部に樹脂が含浸されて表面層が形成さ
れ、前記ピストンの該シリンダボア内周面と摺動する面
に合成樹脂面が設けられたものである。
【0013】前記圧縮機において、合成樹脂面は合成樹
脂を主体としたコーティング層であるもの、又は前記ピ
ストン外周面に設けられたリング溝に合成樹脂を主体と
する樹脂リングが嵌合されたものがよい。また、合成樹
脂面は合成樹脂を主成分とし、固体潤滑剤、炭素繊維、
金属粉のいずれか又はこれらが組合されて分散されてい
るものがよく、主体となる合成樹脂は四フッ化エチレン
又はポリエーテルエーテルケトンであるものがよい。
【0014】また、本発明は1つ又は複数個のボアを有
するシリンダブロックの該ボア内をピストンが往復運動
して気体又は液体を圧縮する圧縮機の製造方法におい
て、シリンダブロックの表面の形成は、陽極で重合する
低重合アクリル樹脂組成物を含む第1の電解液を用いて
陽極酸化層を形成する工程と、金属塩を含む第2の電解
液を用いて前記陽極酸化層中の空隙部に含浸した前記樹
脂を前記金属塩の金属で置換して金属を陽極酸化層の空
隙部に含浸させる工程を含むことを特徴とするものであ
る。
【0015】また、本発明は1つ又は複数個のボアを有
するシリンダブロックの該ボア内をピストンが往復運動
して気体又は液体を圧縮する圧縮機の製造方法におい
て、シリンダブロックの表面の形成は、陽極で重合する
低重合アクリル樹脂組成物を含む第1の電解液を用いて
陽極酸化層を形成する工程より成ることを特徴とするも
のである。
【0016】
【作用】前述したように、硬質な部材と軟質な部材との
組合せの摺動部材では、硬質な部材側の面粗さを小さく
することが望ましい。しかし、陽極酸化層は層中に面と
直角方向(深さ方向)の空隙が形成されていることが特
徴であり、この空隙を生かした使い方が種々提案、実用
化されている。しかしながら、前記のような摺動部材と
して用いた場合、逆にこの空隙が悪影響を及ぼす。特に
高荷重での摺動では影響が著しい。空隙は摺動面から見
ると凹部に相当するものであり、この空隙部に摩耗粉が
溜まり、この摩耗粉、特に相手材の摩耗粉の場合には、
相手材と同種材となるために凝着を起し、異状摩耗の原
因となる。したがって、この空隙をなくすことが重要と
なる。この空隙をなくす方法としては、液状の物質を塗
布し、余分なものを取除く方法あるいは真空含浸法等も
考えられるが、これらの方法では空隙の入口(表面近
傍)のみで空隙の底部まで充填することはできない。本
発明者等は種々検討した結果、電解法で行うことによ
り、空隙全体に充填できることがわかった。陽極酸化層
の空隙の大きさはÅオーダーであり、μオーダーの粒子
を含浸することは不可能である。電解液中に含浸する塩
化物を混合し、電解をかけてイオン化して空隙内に含浸
する方法により空隙底部まで充填することが可能とな
る。電解法で被処理物にバイアス電圧をかけることによ
ってイオン化した含浸物を強制的に空隙内に引き込むこ
とで空隙底部から入口まで充填できる。含浸する物質と
しては金属あるいはアクリル系樹脂が望ましい。相手の
摺動部材が樹脂を主成分として表面層の部材であり、金
属とは凝着しづらい。また、相手材の樹脂と異なったア
クリル系樹脂を含浸することにより凝着しづらいため、
耐摩耗性が良好となる。
【0017】次に、これら含浸の方法であるが、陽極で
重合する低重合アクリル組成物を含む酸性の電解液中に
被処理物を浸漬し、直流電源回路の陽極に接続し、アル
ミニウム電極を陰極として定電流を通電することによ
り、陽極酸化層中の空隙部にアクリル樹脂が含浸した表
面層が得られる。膜厚の調整は処理時間を調節すること
により、自由にコントロールできる。また、金属を含浸
する場合には、前述した低重合アクリル組成物を含む酸
性の第1の電解液中で、前記の陽極酸化層中の空隙部に
アクリル樹脂が含浸した陽極酸化層を形成した後、含浸
する塩化物を含む酸性の第2の電解液中で、被処理物と
カーボン電極を交流電源に接続して数十Vの電圧をかけ
ることにより、陽極酸化層中の空隙部に含浸したアクリ
ル樹脂と含浸金属が置換して金属が含浸される。このよ
うにして形成した樹脂あるいは金属が含浸された陽極酸
化層は密着性に優れ、摺動時におけるクラックの発生が
なく、剥離することもない摺動特性の優れたものとな
る。すなわち、空隙部に含浸物があるために、熱膨張に
よる変形が緩和されるためと考えられる。陽極酸化層中
に含浸する金属であるが、含浸可能な金属であれば限定
されないが、望ましくは摺動特性の優れた銀などが望ま
しい。これら陽極酸化層の厚さであるが、金属含浸の陽
極酸化層の場合は50μm以下が望ましい。50μm以
上になると摺動時の温度上昇によるクラックの発生がし
易くなる。好ましくは5〜10μmである。また、樹脂
含浸の陽極酸化層の場合は5〜50μmが望ましい。5
μm以下では含浸による摺動特性の効果が少なく、50
μm以上では摺動時にクラックが発生し易くなる。好ま
しくは20〜30μmである。
【0018】次に、前述した陽極酸化層の相手材となる
表面が樹脂を主体とした部材であるが、フッ素系樹脂、
イミド系樹脂、ケトン系樹脂等が望ましい。また、これ
ら樹脂の他に摺動特性を向上させるために、固体潤滑剤
を添加すると更に摺動特性を向上させることができる。
固体潤滑剤としてはPbやSn等の低融点金属あるいは
MoS2、グラファイト、BN等が望ましい。これらは
使用条件によって選定すればよい。これら樹脂の厚さで
あるが、部材全体が樹脂とした場合、樹脂は熱伝導性が
小さく、耐荷重性、耐熱温度が低いために耐焼付性、耐
摩耗性が十分でない。望ましくは熱伝導性の良好な金属
上に0.1〜1.0mm程度の厚さに接着させるとよい。樹
脂層を薄くすることにより、前記特性を向上させること
ができ、耐摩耗性、耐焼付性を更に向上させることがで
きる。
【0019】次に、これらの組合せの摺動部材を流体機
械に用いた場合、特に、空調機器用コンプレッサを例と
して述べる。空調機器用コンプレッサ用の冷媒として
は、Cl基を含むR12,R22等のフロンガスが用い
られ、潤滑油としては鉱油が用いられている。しかし、
Cl基含有のフロンガスはオゾン層破壊の点から、代替
冷媒であるR134a等のCl基を含まないガスを使用
せざるを得ない。従来用いられていたCl基を含むフロ
ンの場合、Cl基が活性な摺動面に作用して塩化物が形
成され、この塩化物が潤滑効果を高めていた。しかし、
代替冷媒にはCl基が含まれず、Cl基よる潤滑効果は
望めない。また、従来の潤滑油である鉱油は圧力粘度指
数が高く、摺動面に油膜が形成され易かった。しかし、
鉱油は代替フロンと相溶性がなく、相溶性のある合成油
を用いることを余儀なくされている。この合成油は鉱油
に比べ圧力粘度指数が低く、油膜の形成ができにくい等
がある。また、合成油は鉱油に比し、吸湿性が非常に大
きく、飽和水分量は鉱油の数十ppmに比べ数万ppmのオー
ダーになる。水分が混入することにより腐食という問題
が生じてくる。陽極酸化層の場合、Al23は耐食性が
あるが、母材に継る空隙があり、この空隙から母材が腐
食され、陽極酸化層の剥離が生ずるおそれがある。本発
明の摺動部材はAl系合金側は陽極酸化層の空隙が金属
あるいは樹脂が充填されており、一方は樹脂であり腐食
の心配はない。また、代替フロン及び合成油による潤滑
効果の低下も、本発明の場合には相手材が樹脂であり、
焼付き等の心配もない。
【0020】また、レシプロ型圧縮機はシリンダボア内
をピストンが往復運動して気体あるいは液体を吸入、圧
縮、吐出する構造になっている。シリンダボアの内周面
とピストン外周面とのギャップを小さくすれば、気密が
保たれ、ギャップからの漏れによる圧縮効率の低下がな
くなる。従って、シリンダボア内周面及びピストンリン
グ両部材の最適組合せにより摩耗を少なくすることが重
要である。
【0021】シリンダボア内周面の耐摩耗性を向上させ
るために種々提案がなされているが、従来のような組合
せでは十分ではない。例えば、カーエアコン等に用いら
れる代替フロン及び合成油の環境下では、従来のように
シリンダブロックを過共晶のAl−Si系合金として
も、Al基地中にSi晶が分散されたものであり、Al
基地はHV100〜150程度である。かつ、Al基地
表面に形成されている酸化物(Al23)は非常に薄
く、摺動時に簡単に摩滅され、その面は活性となり腐食
され易い。腐食が進行すると前述したように摩耗が促進
される。従って、Al基地を摺動面に露出させないこと
が望ましい。また、Al基地中に分散晶出しているSi
晶はHV1000程度の硬質粒子であり、このSi晶に
より相手材となる合成樹脂を摩耗させる。すなわち、S
i晶に比べて軟質で腐食あるいは摩耗され易いAl基地
は凹部となり、Si晶が表面に突出し、硬質なSi晶に
より相手材を引掻いて摩耗させる。一方、ピストンリン
グ材は代替フロン及び合成油に対する耐食性、並びに相
手材との潤滑性、耐摩耗性に優れた材質が望ましい。
【0022】本発明は上記の点を考慮して、シリンダを
Al合金で構成し、陽極酸化処理を施し、更に陽極酸化
層中の空隙部に金属あるいは樹脂を含浸した表面層と
し、ピストン外周面に合成樹脂を主成分としたコーティ
ング層を設けるか、ピストンリング溝に合成樹脂を主成
分としたリングを嵌合した組合せとしたものである。
【0023】
【実施例】
実施例1 Al系合金基材としてJIS6061合金を用い、溶体
化処理後、170℃で8hrの時効処理を行い、内径2
0mm、外径26mm、高さ15mmの円筒形摩耗試験片に加
工した。これらの試料を直流定電源回路の陽極に接続
し、アルミニウム電極を陰極として、電解液(硫酸:1
80g/l、溶存アルミニウム:5g/l、硫酸ニッケ
ル:5g/l、アクリル樹脂組成物:14g/l、残
部:水)中で、電解液を約2℃に保持しながら約1A/
dm2の電流密度の定電流を通電して陽極酸化層にアク
リル樹脂が含浸した試験片を作製した。一方、相手材で
ある樹脂側の試験片は、基材としてJISS20Cの
1.2mmの板材を用い、Cu−Sn合金を約0.2mmの厚
さに仮焼結し、仮焼結合金上にPTFE(ポリテトラフ
ルオロエチレン)中にPbを30体積%混合したもの、
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)及びPI(ポ
リイミド)中に炭素短繊維を約30重量%混合したもの
を約0.5mmの厚さになるように塗布、圧縮して焼結し
た。これらの試料を10mm×40mmに加工し、陽極酸化
層を形成したものを回転側、樹脂層を形成したものを固
定側試験とし、鈴木式摩耗試験機により、摩耗試験及び
耐焼付試験を行った。なお、比較材として硫酸電解液で
通常の硬質アルマイト処理の試験片を作製し、同様の試
験を行った。試験条件は摺動速度:1m/s、面圧:1
20kgf/cm2、潤滑油:冷凍機用オイル、試験時間:3
hrである。また、耐焼付試験は5分毎に20kgf/cm2
の荷重を増加し、摩擦係数の急激な増加を示した荷重を
焼付限界荷重として評価した。
【0024】図1は耐焼付性試験結果を示す。試料1〜
試料3は本発明の陽極酸化層中の空隙部にアクリル系樹
脂を含浸したものと樹脂を主体とした表面層を有する試
験片の組合せの摺動部材であり、試料1はPTFEとP
bを30体積%混合した樹脂、試料2はPEEK、試料
3はPIと炭素短繊維を約30重量%混合した樹脂を表
面層としたものである。試料4〜試料6は比較材である
従来の硬質アルマイトと樹脂との組合せであり、試料4
はPTFEとPbを約30体積%混合した表面を有する
試験片の組合せであり、試料5はPEEK、試料6はP
Iと炭素短繊維を30重量%混合した表面層とした試験
片の組合せである。図1を見ても明らかなように、本発
明の摺動部材はいずれの組合せにおいても、比較材であ
る硬質アルマイトと樹脂の組合せよりも焼付限界荷重が
高く、良好な組合せであることがわかる。
【0025】図2は摩耗試験結果であり、樹脂側の摩耗
量を示す。試験の組合せと番号は耐焼付試験と同様であ
る。本発明の組合せの摺動部材は図2からも明らかなよ
うに、従来の硬質アルマイトと樹脂の組合せに比し、い
ずれの組合せにおいても、摩耗量が極めて小さく、良好
な耐摩耗性を示すことがわかる。なお、相手材である陽
極酸化層中の空隙部にアクリル系樹脂を含浸した試料の
摩耗量はいずれも0.2μm以下、従来の硬質アルマイ
トとの組合せではいずれも1μm以上であった。従っ
て、本発明の組合せの摺動部材は、良好な摺動部材であ
ることがわかる。
【0026】実施例2 Al系合金基材としてJIS5056合金を用い、溶体
化処理(500℃×1hr、水冷)後、時効処理(17
0℃×8hr、空冷)を行い、内径20mm、外径26m
m、高さ15mmの円筒形摩耗試験片に加工した。これら
の試料を実施例1と同様の電解液、条件で陽極酸化処理
を行い、陽極酸化層中の空隙中にアクリル樹脂が含浸し
た陽極酸化層を形成した。次に、硫酸0.4g/l、ホ
ウ酸25g/l、銀塩15g/lの水溶液を電解液と
し、試料とカーボン電極を交流電源に接続して、電解液
を約10℃に保持しながら22Vの電圧で電解を行い、
陽極酸化層中の空隙に含浸されたアクリル樹脂と置換し
て銀を析出、含浸した。一方、相手材である樹脂側の試
験片は、実施例1と同じ裏金付の樹脂を用いた。なお、
比較材についても実施例1と同様の硫酸電解液中で処理
した硬質アルマイト試験片を用いた。これらの試験片を
鈴木式摩耗試験機により、摺動速度を4m/sにした他
は実施例1と同様の条件で耐焼付試験及び摩耗試験を行
った。
【0027】図3は耐焼付試験結果を示す。試料7〜試
料9は本発明の陽極酸化層中の空隙部に銀を含浸したも
のと樹脂を主体とした表面層を有する試験片の組合せの
摺動部材であり、試料7はPTFEにPbを30体積%
混合した樹脂、試料8はPEEK、試料9はPIに炭素
繊維を約30重量%混合した樹脂を表面層としたもので
ある。試料10〜試料12は比較材である硬質アルマイ
トとの組合せであり、試料10はPTFEにPbを30
体積%混合した樹脂、試料11はPEEK、試料12は
PIに炭素繊維を約30重量%混合した樹脂を表面層と
したものである。図3に示したごとく、本発明の組合せ
の摺動部材は耐焼付性に優れていることがわかる。
【0028】図4は摩耗試験結果であり、本発明の組合
せの摺動部材は比較材に比し、摩耗量が極めて少なく、
耐摩耗性に優れていることがわかる。
【0029】実施例3 本発明の組合せの摺動部材をコンプレッサに用いた一実
施例の要部断面図を図5に示す。図5において椀状のア
ルミ材からなるケーシング21内にスペーサ22が配置
されており、スペーサ22の回転板23との摺動面には
合成樹脂を主成分として表面層を有する実施例1で開示
した鋼板24が嵌合されており、Al系合金からなる回
転板23は表面に陽極酸化層中の空隙部に金属が含浸さ
れた表面層が形成されている。回転板23にはピストン
25の球部26が回転自在に保持されており、回転板2
3は回転軸27に嵌合されたセンタボール30に回転自
在に支承されている。また、軸方向に複数個の貫通穴3
1を有するシリンダブロック28が回転軸27に固定さ
れており、シリンダブロック28の貫通穴31内にピス
トン25が嵌合されている。シリンダブロック28には
回転板23と同様に陽極酸化層中の空隙部に金属が含浸
された表面層が形成されている。このシリンダブロック
8の貫通穴の一端を防ぎ、かつ、圧縮された気体を吐出
する吐出穴が形成されたシリンダヘッド29が設置され
ている。シリンダヘッド19は実施例1で開示した表面
に合成樹脂を主成分とした表面層を有する鋼板で形成さ
れている。
【0030】次に、このコンプレッサの運転動作である
が、例えば内燃機関により回転軸27が回転すると回転
板23及びシリンダブロック28が回転し、シリンダの
貫通穴31内をピストン25が往復運動し、気体を吸
入、圧縮する。この時スペーサ22に嵌合された鋼板2
4と回転板23及びシリンダブロック28とシリンダヘ
ッド29は回転軸27の回転と同じ回転で摺動する。し
たがって、高速の摺動となり、かつ、気体を圧縮する圧
力が加わるため、高速、高荷重下の摺動となる。高速、
高荷重下では潤滑油が摺動面に十分供給されにくくな
り、境界潤滑あるいは無潤滑になる場合がある。したが
って、摺動面に自己潤滑性を有するものを用いることが
望ましい。本発明の場合には樹脂を主成分とし、固体潤
滑剤が表面層としているため境界潤滑あるいは無潤滑状
態に陥っても焼付の心配がない。
【0031】前述したコンプレッサをカーエアコンサイ
クルに組込み、耐久試験を行った。試験条件は回転数:
5500rpm、吐出ガス圧:29kgf/cm2、吸収側ガス
圧:2kgf/cm2、試験時間:200hr、潤滑油:ポリア
ルキレングリコール、冷媒:R134aである。なお、
比較のためシリンダブロック及び回転板に通常の陽極酸
化層を形成したものについても同様の条件で試験を行っ
た。第1表は試験後のシリンダブロック、シリンダヘッ
ド、回転板、スペーサの摩耗量を示す。第1表を見ても
明らかなように本発明の組合せとした場合の摩耗量は極
めて少なく、良好な組合せであることがわかる。また、
試験時の燃料消費量は比較試験に比べて約10%少なか
った。
【0032】以上、本発明の一実施例を記述したが、実
施例に限定するものではなく、エアコンプレッサ、油圧
ポンプ等広範囲に適用できるものである。
【0033】次に、本発明のレシプロ型の圧縮機及びそ
の製造方法の実施例について説明する。このレシプロ型
圧縮機はシリンダブロックをAl系合金とし、陽極酸化
層を形成し、表面を改質してAl基地を露出させないよ
うにすると共に、表面を硬化し、更に多孔質な陽極酸化
層の空隙部に金属あるいは樹脂を含浸して空隙をなく
し、耐食性を更に向上させた表面層とし、ピストンリン
グ材を合成樹脂を主成分とし、耐摩耗性、耐焼付性を向
上せしめるために各種添加剤を分散した材質としたもの
である。レシプロ型圧縮機は軽量化等からAl系合金が
用いられているが、前述したように代替冷媒、合成油使
用の圧縮機ではAl系合金部材の耐食性、耐摩耗性が不
足し、特に圧縮機の心臓部であるシリンダボアとピスト
ンリング間のギャップが大きくなり圧縮効率が低下す
る。本発明のレシプロ型圧縮機のシリンダボア及びピス
トンリングは耐摩耗性、耐食性、耐久性を兼ね備え、か
つシリンダとピストンリング間の摩擦係数を小さくでき
るので機械的損失が低減され、燃費向上にも寄与でき
る。
【0034】本発明のシリンダブロックに形成する陽極
酸化層であるが、陽極酸化層中の空隙には金属あるいは
樹脂が表面から深さ方向に充満されている。すなわち、
陽極酸化処理はAl材表面が硬いAl23に改質される
と共に処理層の深さ方向に微細な空隙が形成されるのが
特徴であり、本発明ではその空隙に金属あるいは樹脂が
処理層の底部から充満された状態になっている。従っ
て、表面は硬質なAl23中に金属あるいは樹脂が分散
された状態となる。従って、陽極酸化のままで組合され
た場合、この空隙が相手材である樹脂を削るので、樹脂
側に異状摩耗が生ずる。すなわち、Al23の硬質な多
孔質面でこすられるため、ヤスリで削るような状態とな
り、軟質な樹脂の摩耗が大きくなる。この現象は高荷
重、油膜切れが生ずる場合に顕著になる。このような場
合には当然のことながら、摩擦係数も大きくなり、機械
的損失が大となる。従って本発明のように、空隙中に金
属あるいは樹脂が含浸している場合には上記のような現
象は起らない。また、金属含浸の場合空隙中に金属が基
材まで含浸されているため、熱伝導性が良好となり、摩
擦熱を基材側へ早く逃がすことができ、摺動面の温度上
昇を少なくする効果もある。更に、通常の陽極酸化層の
場合には空隙が形成されたままの状態であるため、この
空隙から冷媒の副生成物である腐食液等が浸入し、基材
を腐食する。腐食が進行すると陽極酸化層の剥離にもつ
ながる。圧縮機等においては10年以上の耐久性が要求
され、劣化による信頼性が問題となる。本発明では空隙
に金属あるいは樹脂が充満されているため、腐食液等の
浸入がなく、腐食による剥離が生じない。
【0035】次に、陽極酸化層の形成方法であるが、被
処理物(シリンダブロック)を直流電源回路の陽極に接
続し、第1の電解液としてアクリル組成物を含む酸性の
電解液中に浸漬し、通電することにより、空隙中に樹脂
が含浸した陽極酸化層が得られる。また、空隙中に金属
を含浸する場合には、前記の第1の電解液で空隙中に樹
脂が含浸した陽極酸化層を形成した後、含浸したい金属
の金属塩を含む第2の電解液中に浸漬し、被処理物とカ
ーボン電極とを交流電源に接続、通電することにより、
空隙中に含浸された樹脂が取り除かれ、金属イオンが空
隙中に析出する。
【0036】金属を空隙中に含浸する方法としては無電
解による方法も考えられる。この方法は、あらかじめ陽
極酸化層を形成した被処理物を金属塩を含む無電解液中
に浸漬して空隙中に金属を含浸する方法である。しか
し、この方法では空隙の底部まで金属塩が浸入されず、
表面入口近傍のみの含浸になる。いわゆる棚吊り現象が
生ずる。本発明の場合は電解法であり、強制的に浸入さ
せるために空隙底部まで含浸できる。表面入口近傍の含
浸では摺動時に空隙から取りはずされたり、摩耗により
空隙が表面に現われるので含浸の効果がなくなる。本発
明の場合は空隙底部まで含浸されているため、上記のよ
うな現象は生じない。また、本発明の処理では、陽極酸
化層の形成及び空隙部への含浸処理温度は15℃以下で
あり、基材の変形はなく硬さ低下もない。さらに、本発
明の処理法によれば面粗さの変化もないので最終加工仕
上げ後に処理が出来、後加工の必要もないのでコスト面
からも有利である。
【0037】一方、気密保持のために塗布、焼付あるい
はピストンリング材の合成樹脂の種類としては、四フッ
化エチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン
(PEEK)等が望ましくこれらを混合したものでもよ
い。PTFE材は軟質であるため、耐摩耗性が十分でな
い。また、PEEK材もPTFEに比べれば硬い樹脂で
はあるが、所詮は樹脂であり硬さは低い。したがって、
樹脂中に炭素繊維、金属粉あるいは固体潤滑剤等を添加
して耐摩耗性の向上や摩擦係数の低減などを図ることが
望ましい。また、シリンダ材の該空隙に金属を含浸した
場合には、樹脂への添加剤としては金属粉以外の添加剤
が好ましい。含浸した金属と添加した金属と添加した金
属とが摺動時に接触し、凝縮等が生じ易く、摩擦係数が
大きくなるおそれがある。耐摩耗性を付与する添加剤と
しては、上記以外にもセラミックス粒子やガラス粉等も
効果があり、使用条件によってこれら樹脂の添加量、添
加剤の種類を選ぶ必要がある。
【0038】以下具体的に説明する。 実施例4 Al系合金基材としてJIS5083合金を用い、溶体
化処理後、170℃で10hrの時効処理を行い、直径3
0mm、高さ5mmの円板形摩耗試験片を作製した。これら
の試料を直流定電源回路の陽極に接続し、アルミニウム
電極を陰極として、電解液(硫酸:180g/l、溶存
アルミニウム:5g/l、硫酸ニッケル:5g/l、ア
クリル樹脂組成物:14g/l、残部:水)中で、電解
液を約3℃に保持しながら電流密度約1A/dm2の定
電流を通電して陽極酸化層にアクリル樹脂が含浸した試
験片を作成した。次に、この試験片を流酸0.4g/
l、ホウ酸25g/l、銀塩15g/lの水溶液を電解
液とし、試験片とカーボン電極を交流電源に接続して、
電解液を10℃に保持しながら20Vの電圧で電解を行
い、陽極酸化層中に含浸されたアクリル樹脂と置換して
空隙内に銀を析出、含浸して摩耗試験の固定側試験片に
供した。一方、相手材となる試験片は試料1がPTFE
(ポリテトラフルオロエチレン)中に炭素繊維を約30
体積%及びCaF2(フッ化カルシウム)を約2体積%
を混合した樹脂、試料2はPTFEにPb20体積%と
Cu−Sn合金粉を10体積%含有した樹脂、試料3は
PTFEに炭素繊維20体積%とMoS220体積%含
有した樹脂、試料4はPEEK(ポリエーテルエーテル
ケトン)にPb30体積%含有した樹脂、試料5はPE
EKにMoS2を30体積%含有した樹脂 試料6はPEEKに炭素繊維10体積%、Pb10体積
%、MoS210体積%を含有した樹脂、である。これ
らを内径20mm、外径25.6mm、高さ3mmに加工し、
SUS304製円筒冶具に接着剤で固定して摩耗試験の
回転側試験片とした。なお、比較材として固定側試験片
にB390合金(Al−17%Si)を用いた。
【0039】試験方法は鈴木式摩耗試験機に圧力容器を
取付け、圧力容器内に固定側試験片及び回転側試験片を
装着し、潤滑油とフロンの混合液を試験片の摺動面が埋
没されるまで封入して試験した。試験条件は摺動速度:
8m/s、面圧:10kg/cm2、試験時間:5hr、潤滑
油:冷凍機用合成油、フロン:R134a、潤滑油とフ
ロンの混合比:3:7である。なお、摩耗試験と同時に
摩擦係数も測定した。
【0040】表1は摩耗試験結果を示す。試験NoA〜F
は本発明の陽極酸化層中に銀を含浸したものと樹脂を主
体とした部材の組合せである。試験NoG〜Lは比較材で
あるB390合金と試料1〜6の組合せである。表1を
見ても明らかなように、本発明の組合せの場合は比較材
に比べて相対摩耗量(固定側と回転側のトータル摩耗
量)がいずれの組合せでも小さく、優れた組合せである
ことがわかる。表2は摩擦係数測定結果を示す。表2を
見ても明らかなように、本発明の組合せでは比較材の組
合せよりも摩擦係数が小さく、優れた摩擦特性を示して
いる。摩擦係数が小さいので、実機に用いた場合には機
械的損失が少なく、省エネルギーにも寄与できることが
容易に推察できる。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】実施例5 Al系合金基材としてJIS6061合金を用い、溶体
化処理後、170℃で10hrの時効処理を行い、直径3
0mm、高さ5mmの円板形摩耗試験片を作製した。これら
の試料を直流定電源回路の陽極に接続し、アルミニウム
電極を陰極として、電解液(硫酸:180g/l、溶存
アルミニウム:5g/l、硫酸ニッケル:5g/l、ア
クリル組成物:14g/l、残部:水)中で電解液を5
℃に保持しながら約1.5A/dm2の電流密度の定電流
を通電して陽極酸化層にアクリル樹脂が含浸した試験片
を作製した。これらの試験片を固定側試験片とし、実施
例4と同様の樹脂を主体とした回転側試験片と組合せて
摩耗試験を行った。試験条件は摺動速度:6m/s、面
圧:10kg/cm2、試験時間:10hr、潤滑油:冷凍機用
合成油、フロン:R134a、潤滑油とフロンの混合
比:2:8である。比較材としてB390合金との組合
せについても試験した。なお、実施例4と同様に摩耗係
数も測定した。
【0044】表3は摩耗試験結果を示す。表3を見ても
明らかなように、本発明の組合せは比較材の組合せに比
し、相対摩耗量が小さく、耐摩耗性に優れていることが
わかる。表4は摩擦係数測定結果を示す。表4に示すよ
うに、本発明の組合せは比較材の組合せのいずれよりも
摩擦係数が小さく、摩擦特性に優れていることがわか
る。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】実施例6 本発明の組合せをカーエアコン用可変容量片斜板式コン
プレッサに用いて耐久試験を行った一実施例の要部断面
図を図6に示す。このコンプレッサは電磁クラッチの作
動によりシャフト1が回転し、このシャフトに取付けら
れたドライブプレート2及びジャーナル3が、シャフト
1とともに回転して揺動運動をする。ジャーナル3とピ
ストンサポート4はスラストベアリング5を介して連結
されており、ジャーナル3の揺動運動がピストンサポー
ト4の往復運動に変換される。ピストンサポート4には
コンロッド6を介してピストン7が取り付けられてお
り、ピストン7には合成樹脂を主成分とした(PTFE
+30体積%炭素繊維+2体積%CaF2)本発明の組
合せの片方であるピストンリング8が取付けられてい
る。このピストン7がシリンダ9のボア10内を往復運
動して冷媒を吸入、圧縮、吐出する。シリンダボア10
の内周面には本発明の組合せの片方である陽極酸化層中
の空隙部に金属(銀)が含浸された表面層になってい
る。このコンプレッサをカーエアコンサイクルに組込
み、耐久試験を行った。
【0048】試験条件は回転数:5500rpm、吐出ガ
ス圧:30kgf/cm2、吸入側ガス圧:2kgf/cm2、試験
時間:500hr、潤滑油:ポリアレキレングリコール、
冷媒:R134aである。なお、比較のためシリンダに
B390合金及びピストンリング材にPTFE+30体
積%炭素繊維+2体積%CaF2の組合せについても同
様の試験を行った。
【0049】表5は試験開始後1hr時と500hr時の体
積効率と全断熱効率を示す。体積効率はシリンダボアの
理論容積と吐出量の比率であり、シリンダボアとピスト
ンリング間にギャップが生ずると体積効率は低下する。
全断熱効率は回転エネルギーを熱エネルギーに変換し、
コンプレッサの冷却エネルギーへの寄与率であり、シリ
ンダボアとピストンリング間にギャップが生ずると全断
熱効率も低下する。したがって、これらはコンプレッサ
の耐久性の目安になるものであり、低下の少ないものが
耐久性に優れる。表5にでも明らかなように、本発明の
組合せを組込んだコンプレッサは、体積効率及び全断熱
効率ともに低下が少なく、耐久性に優れる。なお、試験
時における燃料消費量は比較材の組合せの場合よりも約
10%少なかった。なお、シリンダ材に陽極酸化層に樹
脂を含浸したものについても行ったが、前記金属(銀)
を含浸させた場合とほぼ同様な結果が得られた。
【0050】以上、本発明の一実施例を記述したが、本
実施例に限定されるものではなく、レシプロ型コンプレ
ッサのみならずコンプレッサーの摺動部全体に適用でき
る。
【0051】
【表5】
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、Al合金からなる部材
は硬質な陽極酸化層中の空隙部に金属又は樹脂が含浸さ
れており、空隙がなく、熱膨張差によるクラックの発生
がなく、陽極酸化層の剥離もない。従って、相手材への
攻撃性が少なく、軟質な樹脂を相手材としても摩耗係数
が小さく、摩耗も極めて少なく押えることができる。ま
た、摩擦係数が小さいため、機械的損失が少なく、省エ
ネルギーにも寄与できる。さらに、陽極酸化層中の空隙
部に金属を含浸した場合は、含浸した金属が熱伝達をス
ムーズに行う役割を果し、摩耗熱を基材へ逃がすため、
摩擦面の温度を下げる効果もある。また、陽極酸化層中
の空隙が金属又は樹脂で充満されているため、基材の腐
食も防止できる。
【0053】本発明によれば、シリンダボア及びピスト
ンリング間の摩耗量が極めて小さく、コンプレッサの耐
久性が著しく向上し、摩擦係数も小さく、省エネルギー
にも寄与できる。また、シリンダの表面処理温度が低い
ことから、材質変化や変形もなく、処理により表面粗さ
の変化もないため、後加工の必要がない。さらに、処理
により硬い表面層となるので、シリンダボアの傷付が少
なく、組立て時の作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の摺動部材の組合せである陽極酸化層中
に樹脂を含浸した表面層を有するAl合金と各種樹脂及
び比較材の耐焼付試験結果を示す図である。
【図2】本発明の摺動部材の組合せである陽極酸化層中
に樹脂を含浸した表面層を有するAl合金と各種樹脂及
び比較材の摩耗試験結果を示す図である。
【図3】本発明の摺動部材の組合せである陽極酸化層中
に金属を含浸した表面層を有するAl合金と各種樹脂及
び比較材の耐焼付試験結果を示す図である。
【図4】本発明の摺動部材の組合せである陽極酸化層中
に金属を含浸した表面層を有するAl合金と各種樹脂及
び比較材の摩耗試験結果を示す図である。
【図5】本発明の組合せの摺動部材をコンプレッサに用
いた一実施例の要部断面図である。
【図6】本発明の組合せを用いて耐久試験を行ったカー
エアコン用片斜板コンプレッサの要部断面図である。
【符号の説明】
1 シャフト 2 ドライブプレート 3 ジャーナル 4 ピストンサポート 5 スラストベアリング 6 コンロッド 7 ピストン 8 ピストンリング 9 シリンダ 10 シリンダボア 21 ケーシング 22 スペーサ 23 回転板 24 樹脂層を形成した鋼板 25 ピストン 26 球部 27 回転軸 28 シリンダブロック 29 シリンダヘッド 30 センターボール 31 貫通穴
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年12月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 摺動装置、流体装置、圧縮機及びそ
の製造方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は部材同志がすべり、摩擦
を受ける摺動装置に係り、特に流体機械等に用いて好適
な摺動装置、流体装置、更にシリンダボア内をピストン
が往復運動して気体あるいは液体を圧縮する圧縮機及び
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】各種機械等においては部材同志がすべ
り、摩擦を受ける部材が多く用いられている。したがっ
て、その部材の使用条件に応じて好適な材料が使用さ
れ、かつ、提案もなされている。使用条件によって材料
の組合せも様々であることから、提案も多種多様であ
る。近年、機械の軽量化が望まれており、摺動部材にも
Al系合金が多く用いられるようになり、Al合金の表
面処理等の提案も多い。例えば、実開平1−80822
号にはAl軸に陽極酸化処理(アルマイト処理)を施こ
し、この軸を合成樹脂のベアリングで支承した軸受装置
が提案されている。この提案は軸とベアリングの組合せ
であり、軸受の場合は比較的潤滑状態の良好な使い方が
多く、使用に耐えられるものと思われる。特にジャーナ
ル荷重を受ける軸受では流体潤滑になり易い。しかし、
スラスト荷重を受ける場合は境界潤滑になり易く、異状
摩耗が生じ易い。特に、陽極酸化層は硬質で多孔質なた
め、軟質な樹脂を攻撃し易いという欠点がある。また、
摺動時の熱により陽極酸化層にクラックが生じ易い。し
たがって、境界潤滑状態あるいは無潤滑状態になった場
合に樹脂側の異状摩が生ずるおそれがある。特に、高
速、高荷重の摺動においては、その傾向が高くなる。
【0003】また従来、レシプロ型圧縮機のシリンダブ
ロック材にはSiを12重量%程度含有したAl−Si
系合金の鋳造材が用いられ、ピストンリング材には金属
粉末、ガラス粉等を含有させた四フッ化エチレン(PT
FE)等の合成樹脂が用いられていた。しかし、シリン
ダボア及びピストンリングの耐摩耗性が十分ではなく、
効率が低下する等の問題があった。これらを改善するた
めに種々の提案がなされている。例えば、特開昭61−
265366号公報には、シリンダブロック材としてS
iを16〜20重量%含有したAl−Si系合金を用
い、ピストンリングを合成樹脂にすることが開示されて
いる。これは含有するSi量を多くして耐摩耗性を向上
させるものである。しかし、Si量を多くしても基地の
硬さ向上は得られない。また、Si晶はビッカース硬さ
で1000以上あるので、摺動時相手材のピストンリン
グを引掻き摩耗を促進させて、効率を低下させる。ま
た、空気調整装置の圧縮機では、冷媒としてR12,R
22等が用いられ、冷凍機油として鉱油が用いられてい
た。上記冷媒はいずれも塩素を含むフロンであり、この
塩素が特にAl材の耐摩耗、耐焼付性を向上する働きを
していた。また、冷凍機油に用いられている鉱油は圧力
粘度指数が高く、油膜の形成が比較的良好で耐摩耗性、
耐焼付性を向上せしめていた。
【0004】しかし、塩素を含有するフロンはオゾン層
の破壊等の環境問題から使用が制限されつつあり、代替
冷媒の開発が急がれている。これら代替冷媒は塩素を含
まないものであることが必要とされている。したがっ
て、塩素による耐摩耗性、耐焼付性の向上は望めない。
また、潤滑油として用いられている鉱油は現在開発され
ている代替冷媒に対して不溶性であり、潤滑油も合成油
に変更せざるを得ない。この合成油は圧力粘度指数が低
く、耐摩耗性、耐焼付性に問題が生ずる。さらに、現在
開発されている合成油は吸湿性があり、腐食の問題が生
ずる。すなわち、Al基地が表面に現われている状態で
は水分が腐食を促進する。したがって、従来よりも耐焼
付性、耐摩耗性、耐食性に優れた摺動部材の開発が望ま
れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記前者の従来技術は
境界潤滑あるいは無潤滑下での高速、高荷重時の使用に
おける配慮が十分なものではない。すなわち、前述した
ように陽極酸化処理は多孔質であり、表面は硬質なAl
23中に穴があいた状態となっており、高荷重下では相
手材である軟質な樹脂を削るような状態となり、樹脂側
の異状摩耗が生ずる。つまり、高荷重下では摺動面に油
膜が形成されにくく、油膜切れが生ずる。この状態でや
すりのような多孔質面でこすられるため、軟質な樹脂の
摩耗が大きくなる。また、高速摺動になると摺動面の温
度が上り、耐熱温度の低い樹脂は塑性流動あるいは炭化
し、異状摩耗の発生原因となる。上記のような多孔質の
陽極酸化層を有する面で摺動すると摩擦係数も大きくな
り、機械的損失も大となり、エネルギー損失も大きくな
る。
【0006】上記後者の従来技術は冷媒としてR12,
R22等の塩素を含むフロン及び潤滑油として鉱油を用
いた場合に対応できた技術であるが、塩素を含まない代
替冷媒であるR134a等と合成油を用いた場合、摺動
に対する配慮がなされておらず、例えば、シリンダブロ
ック材をSi含有量16〜18重量%としたAl合金を
用いても耐摩耗性、耐焼付性、耐食性は十分なものとは
言えない。すなわち、従来の冷媒は塩素を含むフロンが
用いられており、この塩素が活性な摺動面に作用して塩
化物が形成され、この塩化物が潤滑効果を高めていた。
しかし、代替冷媒には塩素が含まれておらず、塩素によ
る前記潤滑効果は望めない。
【0007】また、従来の潤滑油には鉱油が用いられて
おり、鉱油は圧力粘度指数が高く、摺動面に油膜が形成
され易かった。しかし、鉱油は代替フロンと相溶性がな
く、相溶性のある合成油を用いることを余儀なくされて
いる。この合成油は鉱油に比べ圧力粘度指数が低く、油
膜切れが生じ易い。また、合成油は鉱油に比し、吸湿性
が非常に大きく、飽和水分量は鉱油の数十ppmに比べ数
万ppmのオーダーになる。この水分による腐食及び潤滑
油の潤滑性低下を招く。すなわち、水分が活性な摺動面
に作用して摺動面が腐食され、腐食生成物が摺動によっ
て取り去られると再び活性面になり、活性な面は再び腐
食されるという繰返しの腐食摩耗が生じ、摩耗損傷が促
進される。また、潤滑油中に吸収された水分は潤滑効果
を低下させ、油膜が益々切れ易くなり摩耗が促進され
る。摩耗が進むにつれ、シリンダブロックのボアとピス
トンリングのギャップが大きくなり、圧縮効率が低下す
る。従って、シリンダボア及びピストンリングの摩耗量
は小さいものが望ましい。 本発明の目的は摩擦係数が
小さく、高速、高荷重下でも異状摩耗もない、耐摩耗性
に優れた組合せの摺動装置の提供及びこれを用いて機械
的損失の少ない、耐久性に優れた流体装置を提供するこ
とにある。
【0008】また本発明の目的はシリンダブロックのボ
ア及びピストンリングの最適な材料を組合せることによ
り、両部材の摩耗量を少なくして圧縮効率の低下を防
ぎ、かつ耐久性に優れた圧縮機及びその製造方法を提供
することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点を解
決するものであり、本発明を概略すれば、すべり、摩擦
を受ける一方の部材をAl系合金で構成し、表面を陽極
酸化層中の空隙部に金属を含浸せしめた表面層とした部
材とし、もう一方の部材を樹脂を主体とした表面層を有
する部材との組合せとした摺動装置であり、これらの部
材を流体機械に用いたことを特徴とする。さらに、もう
一つはすべり摩擦を受ける一方の部材をAl系合金で構
成し、表面を陽極酸化層中の空隙部に樹脂を含浸せしめ
た表面層とした部材とし、もう一方の部材を樹脂を主体
とした表面層を有する部材との組合せとした摺動装置で
あり、これらの部材を流体機械に用いたことを特徴とす
る。
【0010】摺動部材の組合せとしては、硬質な部材と
軟質な部材、硬質部材同志を組合せることが多く、本発
明は前者の部類に属する。このような組合せでは硬質側
の面粗さは極力小さくすることが望ましい。すなわち、
硬質側の面粗さが大きい場合には軟質側の部材を削る現
象が起る。したがって、摩耗量が多くなる。また、面粗
さが大きい場合には摩耗粉が凹部に溜り、この摩耗粉が
相手材と凝着を起し、摩耗が増大して異状摩耗の原因と
なる。しかし、陽極酸化法は表面と直角方向に空隙が形
成されるのが特徴である。すなわち、硬質なAl23
に空隙がある状態であり、その空隙も面と直角方向(深
さ方向)であるため、面を研摩しても空隙はなくならな
い。したがって、表面に凹部のある状態で摺動するた
め、軟質な樹脂は摩耗が大きくなる。また、陽極酸化層
はAl23で内部のAl系合金と熱膨張係数が異なるた
め、摺動時の温度上昇によりクラックが生じて相手材の
摩耗量を増大させる。使用状態によっては陽極酸化層が
剥離する場合もある。この摩耗量は荷重が大きくなる程
増大する傾向を示す。摩耗を小さくするためには、表面
の凹凸をなくすことが望ましい。
【0011】本発明は上記問題点を解決するために、A
l系合金に陽極酸化層を形成すると共に、陽極酸化層中
の空隙部に金属あるいは樹脂を含浸して表面の凹凸をな
くし、合成樹脂との組合せでも相互の耐摩耗を向上せ
しめるようにしたものである。
【0012】また上記目的を達成するため本発明は、1
つ又は複数個のボアを有するシリンダブロックの該ボア
内をピストンが往復運動して気体又は液体を圧縮する圧
縮機において、前記シリンダブロックは、Al系合金で
形成され、少なくとも該シリンダのボア内周面に陽極酸
化層が形成され、該陽極酸化層中の空隙部に金属が含浸
されて表面層が形成され、前記ピストンの該シリンダボ
ア内周面と摺動する面に合成樹脂面が設けられたもので
ある。
【0013】また、本発明は1つ又は複数個のボアを有
するシリンダブロックの該ボア内をピストンが往復運動
して気体又は液体を圧縮する圧縮機において、前記シリ
ンダブロックは、Al系合金で形成され、少なくとも該
シリンダのボア内周面に陽極酸化層が形成され、該陽極
酸化層中の空隙部に樹脂が含浸されて表面層が形成さ
れ、前記ピストンの該シリンダボア内周面と摺動する面
に合成樹脂面が設けられたものである。
【0014】前記圧縮機において、合成樹脂面は合成樹
脂を主体としたコーティング層であるもの、又は前記ピ
ストン外周面に設けられたリング溝に合成樹脂を主体と
する樹脂リングが嵌合されたものがよい。また、合成樹
脂面は合成樹脂を主成分とし、固体潤滑剤、炭素繊維、
金属粉のいずれか又はこれらが組合されて分散されてい
るものがよく、主体となる合成樹脂は四フッ化エチレン
又はポリエーテルエーテルケトンであるものがよい。
【0015】また、本発明は1つ又は複数個のボアを有
するシリンダブロックの該ボア内をピストンが往復運動
して気体又は液体を圧縮する圧縮機の製造方法におい
て、シリンダブロックの表面の形成は、陽極で重合する
低重合アクリル樹脂組成物を含む第1の電解液を用いて
陽極酸化層を形成する工程と、金属塩を含む第2の電解
液を用いて前記陽極酸化層中の空隙部に含浸した前記樹
脂を前記金属塩の金属で置換して金属を陽極酸化層の空
隙部に含浸させる工程を含むことを特徴とするものであ
る。
【0016】また、本発明は1つ又は複数個のボアを有
するシリンダブロックの該ボア内をピストンが往復運動
して気体又は液体を圧縮する圧縮機の製造方法におい
て、シリンダブロックの表面の形成は、陽極で重合する
低重合アクリル樹脂組成物を含む第1の電解液を用いて
陽極酸化層を形成する工程より成ることを特徴とするも
のである。
【0017】
【作用】前述したように、硬質な部材と軟質な部材との
組合せの摺動部材では、硬質な部材側の面粗さを小さく
することが望ましい。しかし、陽極酸化層は層中に面と
直角方向(深さ方向)の空隙が形成されていることが特
徴であり、この空隙を生かした使い方が種々提案、実用
化されている。しかしながら、前記のような摺動部材と
して用いた場合、逆にこの空隙が悪影響を及ぼす。特に
高荷重での摺動では影響が著しい。空隙は摺動面から見
ると凹部に相当するものであり、この空隙部に摩耗粉が
溜まり、この摩耗粉、特に相手材の摩耗粉の場合には、
相手材と同種材となるために凝着を起し、異状摩耗の原
因となる。したがって、この空隙をなくすことが重要と
なる。この空隙をなくす方法としては、液状の物質を塗
布し、余分なものを取除く方法あるいは真空含浸法等も
考えられるが、これらの方法では空隙の入口(表面近
傍)のみで空隙の底部まで充填することはできない。本
発明者等は種々検討した結果、電解法で行うことによ
り、空隙全体に充填できることがわかった。陽極酸化層
の空隙の大きさはÅオーダーであり、μオーダーの粒子
を含浸することは不可能である。電解液中に含浸する塩
化物を混合し、電解をかけてイオン化して空隙内に含浸
する方法により空隙底部まで充填することが可能とな
る。電解法で被処理物にバイアス電圧をかけることによ
ってイオン化した含浸物を強制的に空隙内に引き込むこ
とで空隙底部から入口まで充填できる。含浸する物質と
しては金属あるいはアクリル系樹脂が望ましい。相手の
摺動部材が樹脂を主成分として表面層の部材であり、金
属とは凝着しづらい。また、相手材の樹脂と異なったア
クリル系樹脂を含浸することにより凝着しづらいため、
耐摩耗性が良好となる。
【0018】次に、これら含浸の方法であるが、陽極で
重合する低重合アクリル組成物を含む酸性の電解液中に
被処理物を浸漬し、直流電源回路の陽極に接続し、アル
ミニウム電極を陰極として定電流を通電することによ
り、陽極酸化層中の空隙部にアクリル樹脂が含浸した表
面層が得られる。膜厚の調整は処理時間を調節すること
により、自由にコントロールできる。また、金属を含浸
する場合には、前述した低重合アクリル組成物を含む酸
性の第1の電解液中で、前記の陽極酸化層中の空隙部に
アクリル樹脂が含浸した陽極酸化層を形成した後、含浸
する塩化物を含む酸性の第2の電解液中で、被処理物と
カーボン電極を交流電源に接続して数十Vの電圧をかけ
ることにより、陽極酸化層中の空隙部に含浸したアクリ
ル樹脂と含浸金属が置換して金属が含浸される。このよ
うにして形成した樹脂あるいは金属が含浸された陽極酸
化層は密着性に優れ、摺動時におけるクラックの発生が
なく、剥離することもない摺動特性の優れたものとな
る。すなわち、空隙部に含浸物があるために、熱膨張に
よる変形が緩和されるためと考えられる。陽極酸化層中
に含浸する金属であるが、含浸可能な金属であれば限定
されないが、望ましくは摺動特性の優れた銀などが望ま
しい。これら陽極酸化層の厚さであるが、金属含浸の陽
極酸化層の場合は50μm以下が望ましい。50μm以
上になると摺動時の温度上昇によるクラックの発生がし
易くなる。好ましくは5〜10μmである。また、樹脂
含浸の陽極酸化層の場合は5〜50μmが望ましい。5
μm以下では含浸による摺動特性の効果が少なく、50
μm以上では摺動時にクラックが発生し易くなる。好ま
しくは20〜30μmである。
【0019】次に、前述した陽極酸化層の相手材となる
表面が樹脂を主体とした部材であるが、フッ素系樹脂、
イミド系樹脂、ケトン系樹脂等が望ましい。また、これ
ら樹脂の他に摺動特性を向上させるために、固体潤滑剤
を添加すると更に摺動特性を向上させることができる。
固体潤滑剤としてはPbやSn等の低融点金属あるいは
MoS2、グラファイト、BN等が望ましい。これらは
使用条件によって選定すればよい。これら樹脂の厚さで
あるが、部材全体が樹脂とした場合、樹脂は熱伝導性が
小さく、耐荷重性、耐熱温度が低いために耐焼付性、耐
摩耗性が十分でない。望ましくは熱伝導性の良好な金属
上に0.1〜1.0mm程度の厚さに接着させるとよい。樹
脂層を薄くすることにより、前記特性を向上させること
ができ、耐摩耗性、耐焼付性を更に向上させることがで
きる。
【0020】次に、これらの組合せの摺動部材を流体機
械に用いた場合、特に、空調機器用コンプレッサを例と
して述べる。空調機器用コンプレッサ用の冷媒として
は、Cl基を含むR12,R22等のフロンガスが用い
られ、潤滑油としては鉱油が用いられている。しかし、
Cl基含有のフロンガスはオゾン層破壊の点から、代替
冷媒であるR134a等のCl基を含まないガスを使用
せざるを得ない。従来用いられていたCl基を含むフロ
ンの場合、Cl基が活性な摺動面に作用して塩化物が形
成され、この塩化物が潤滑効果を高めていた。しかし、
代替冷媒にはCl基が含まれず、Cl基よる潤滑効果
は望めない。また、従来の潤滑油である鉱油は圧力粘度
指数が高く、摺動面に油膜が形成され易かった。しか
し、鉱油は代替フロンと相溶性がなく、相溶性のある合
成油を用いることを余儀なくされている。この合成油は
鉱油に比べ圧力粘度指数が低く、油膜の形成ができにく
い等がある。また、合成油は鉱油に比し、吸湿性が非常
に大きく、飽和水分量は鉱油の数十ppmに比べ数万ppmの
オーダーになる。水分が混入することにより腐食という
問題が生じてくる。陽極酸化層の場合、Al23は耐食
性があるが、母材に継る空隙があり、この空隙から母材
が腐食され、陽極酸化層の剥離が生ずるおそれがある。
本発明の摺動部材はAl系合金側は陽極酸化層の空隙が
金属あるいは樹脂が充填されており、一方は樹脂であり
腐食の心配はない。また、代替フロン及び合成油による
潤滑効果の低下も、本発明の場合には相手材が樹脂であ
り、焼付き等の心配もない。
【0021】また、レシプロ型圧縮機はシリンダボア内
をピストンが往復運動して気体あるいは液体を吸入、圧
縮、吐出する構造になっている。シリンダボアの内周面
とピストン外周面とのギャップを小さくすれば、気密が
保たれ、ギャップからの漏れによる圧縮効率の低下がな
くなる。従って、シリンダボア内周面及びピストンリン
グ両部材の最適組合せにより摩耗を少なくすることが重
要である。
【0022】シリンダボア内周面の耐摩耗性を向上させ
るために種々提案がなされているが、従来のような組合
せでは十分ではない。例えば、カーエアコン等に用いら
れる代替フロン及び合成油の環境下では、従来のように
シリンダブロックを過共晶のAl−Si系合金として
も、Al基地中にSi晶が分散されたものであり、Al
基地はHV100〜150程度である。かつ、Al基地
表面に形成されている酸化物(Al23)は非常に薄
く、摺動時に簡単に摩滅され、その面は活性となり腐食
され易い。腐食が進行すると前述したように摩耗が促進
される。従って、Al基地を摺動面に露出させないこと
が望ましい。また、Al基地中に分散晶出しているSi
晶はHV1000程度の硬質粒子であり、このSi晶に
より相手材となる合成樹脂を摩耗させる。すなわち、S
i晶に比べて軟質で腐食あるいは摩耗され易いAl基地
は凹部となり、Si晶が表面に突出し、硬質なSi晶に
より相手材を引掻いて摩耗させる。一方、ピストンリン
グ材は代替フロン及び合成油に対する耐食性、並びに相
手材との潤滑性、耐摩耗性に優れた材質が望ましい。
【0023】本発明は上記の点を考慮して、シリンダを
Al合金で構成し、陽極酸化処理を施し、更に陽極酸化
層中の空隙部に金属あるいは樹脂を含浸した表面層と
し、ピストン外周面に合成樹脂を主成分としたコーティ
ング層を設けるか、ピストンリング溝に合成樹脂を主成
分としたリングを嵌合した組合せとしたものである。
【0024】次に、本発明のレシプロ型の圧縮機及びそ
の製造方法について説明する。このレシプロ型圧縮機は
シリンダブロックをAl系合金とし、陽極酸化層を形成
し、表面を改質してAl基地を露出させないようにする
と共に、表面を硬化し、更に多孔質な陽極酸化層の空隙
部に金属あるいは樹脂を含浸して空隙をなくし、耐食性
を更に向上させた表面層とし、ピストンリング材を合成
樹脂を主成分とし、耐摩耗性、耐焼付性を向上せしめる
ために各種添加剤を分散した材質としたものである。レ
シプロ型圧縮機は軽量化等からAl系合金が用いられて
いるが、前述したように代替冷媒、合成油使用の圧縮機
ではAl系合金部材の耐食性、耐摩耗性が不足し、特に
圧縮機の心臓部であるシリンダボアとピストンリング間
のギャップが大きくなり圧縮効率が低下する。本発明の
レシプロ型圧縮機のシリンダボア及びピストンリングは
耐摩耗性、耐食性、耐久性を兼ね備え、かつシリンダと
ピストンリング間の摩擦係数を小さくできるので機械的
損失が低減され、燃費向上にも寄与できる。
【0025】本発明のシリンダブロックに形成する陽極
酸化層であるが、陽極酸化層中の空隙には金属あるいは
樹脂が表面から深さ方向に充満されている。すなわち、
陽極酸化処理はAl材表面が硬いAl23に改質される
と共に処理層の深さ方向に微細な空隙が形成されるのが
特徴であり、本発明ではその空隙に金属あるいは樹脂が
処理層の底部から充満された状態になっている。従っ
て、表面は硬質なAl2 3中に金属あるいは樹脂が分散
された状態となる。従って、陽極酸化のままで組合され
た場合、この空隙が相手材である樹脂を削るので、樹脂
側に異状摩耗が生ずる。すなわち、Al23の硬質な多
孔質面でこすられるため、ヤスリで削るような状態とな
り、軟質な樹脂の摩耗が大きくなる。この現象は高荷
重、油膜切れが生ずる場合に顕著になる。このような場
合には当然のことながら、摩擦係数も大きくなり、機械
的損失が大となる。従って本発明のように、空隙中に金
属あるいは樹脂が含浸している場合には上記のような現
象は起らない。また、金属含浸の場合空隙中に金属が基
材まで含浸されているため、熱伝導性が良好となり、摩
擦熱を基材側へ早く逃がすことができ、摺動面の温度上
昇を少なくする効果もある。更に、通常の陽極酸化層の
場合には空隙が形成されたままの状態であるため、この
空隙から冷媒の副生成物である腐食液等が浸入し、基材
を腐食する。腐食が進行すると陽極酸化層の剥離にもつ
ながる。圧縮機等においては10年以上の耐久性が要求
され、劣化による信頼性が問題となる。本発明では空隙
に金属あるいは樹脂が充満されているため、腐食液等の
浸入がなく、腐食による剥離が生じない。
【0026】次に、陽極酸化層の形成方法であるが、被
処理物(シリンダブロック)を直流電源回路の陽極に接
続し、第1の電解液としてアクリル組成物を含む酸性の
電解液中に浸漬し、通電することにより、空隙中に樹脂
が含浸した陽極酸化層が得られる。また、空隙中に金属
を含浸する場合には、前記の第1の電解液で空隙中に樹
脂が含浸した陽極酸化層を形成した後、含浸したい金属
の金属塩を含む第2の電解液中に浸漬し、被処理物とカ
ーボン電極とを交流電源に接続、通電することにより、
空隙中に含浸された樹脂が取り除かれ、金属イオンが空
隙中に析出する。
【0027】金属を空隙中に含浸する方法としては無電
解による方法も考えられる。この方法は、あらかじめ陽
極酸化層を形成した被処理物を金属塩を含む無電解液中
に浸漬して空隙中に金属を含浸する方法である。しか
し、この方法では空隙の底部まで金属塩が浸入されず、
表面入口近傍のみの含浸になる。いわゆる棚吊り現象が
生ずる。本発明の場合は電解法であり、強制的に浸入さ
せるために空隙底部まで含浸できる。表面入口近傍の含
浸では摺動時に空隙から取りはずされたり、摩耗により
空隙が表面に現われるので含浸の効果がなくなる。本発
明の場合は空隙底部まで含浸されているため、上記のよ
うな現象は生じない。また、本発明の処理では、陽極酸
化層の形成及び空隙部への含浸処理温度は15℃以下で
あり、基材の変形はなく硬さ低下もない。さらに、本発
明の処理法によれば面粗さの変化もないので最終加工仕
上げ後に処理が出来、後加工の必要もないのでコスト面
からも有利である。
【0028】一方、気密保持のために塗布、焼付あるい
はピストンリング材の合成樹脂の種類としては、四フッ
化エチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン
(PEEK)等が望ましくこれらを混合したものでもよ
い。PTFE材は軟質であるため、耐摩耗性が十分でな
い。また、PEEK材もPTFEに比べれば硬い樹脂で
はあるが、所詮は樹脂であり硬さは低い。したがって、
樹脂中に炭素繊維、金属粉あるいは固体潤滑剤等を添加
して耐摩耗性の向上や摩擦係数の低減などを図ることが
望ましい。また、シリンダ材の該空隙に金属を含浸した
場合には、樹脂への添加剤としては金属粉以外の添加剤
が好ましい。含浸した金属と添加した金属と添加した金
属とが摺動時に接触し、凝縮等が生じ易く、摩擦係数が
大きくなるおそれがある。耐摩耗性を付与する添加剤と
しては、上記以外にもセラミックス粒子やガラス粉等も
効果があり、使用条件によってこれら樹脂の添加量、添
加剤の種類を選ぶ必要がある
【0029】
【実施例】 実施例1 Al系合金基材としてJIS6061合金を用い、溶体
化処理後、170℃で8hrの時効処理を行い、内径2
0mm、外径26mm、高さ15mmの円筒形摩耗試験片に加
工した。これらの試料を直流定電源回路の陽極に接続
し、アルミニウム電極を陰極として、電解液(硫酸:1
80g/l、溶存アルミニウム:5g/l、硫酸ニッケ
ル:5g/l、アクリル樹脂組成物:14g/l、残
部:水)中で、電解液を約2℃に保持しながら約1A/
dm2の電流密度の定電流を通電して陽極酸化層にアク
リル樹脂が含浸した試験片を作製した。一方、相手材で
ある樹脂側の試験片は、基材としてJISS20Cの
1.2mmの板材を用い、Cu−Sn合金を約0.2mmの厚
さに仮焼結し、仮焼結合金上にPTFE(ポリテトラフ
ルオロエチレン)中にPbを30体積%混合したもの、
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)及びPI(ポ
リイミド)中に炭素短繊維を約30重量%混合したもの
を約0.5mmの厚さになるように塗布、圧縮して焼結し
た。これらの試料を10mm×40mmに加工し、陽極酸化
層を形成したものを回転側、樹脂層を形成したものを固
定側試験とし、鈴木式摩耗試験機により、摩耗試験及び
耐焼付試験を行った。なお、比較材として硫酸電解液で
通常の硬質アルマイト処理の試験片を作製し、同様の試
験を行った。試験条件は摺動速度:1m/s、面圧:1
20kgf/cm2、潤滑油:冷凍機用オイル、試験時間:3
hrである。また、耐焼付試験は5分毎に20kgf/cm2
の荷重を増加し、摩擦係数の急激な増加を示した荷重を
焼付限界荷重として評価した。
【0030】図1は耐焼付性試験結果を示す。試料1〜
試料3は本発明の陽極酸化層中の空隙部にアクリル系樹
脂を含浸したものと樹脂を主体とした表面層を有する試
験片の組合せの摺動部材であり、試料1はPTFEとP
bを30体積%混合した樹脂、試料2はPEEK、試料
3はPIと炭素短繊維を約30重量%混合した樹脂を表
面層としたものである。試料4〜試料6は比較材である
従来の硬質アルマイトと樹脂との組合せであり、試料4
はPTFEとPbを約30体積%混合した表面を有する
試験片の組合せであり、試料5はPEEK、試料6はP
Iと炭素短繊維を30重量%混合した表面層とした試験
片の組合せである。図1を見ても明らかなように、本発
明の摺動部材はいずれの組合せにおいても、比較材であ
る硬質アルマイトと樹脂の組合せよりも焼付限界荷重が
高く、良好な組合せであることがわかる。
【0031】図2は摩耗試験結果であり、樹脂側の摩耗
量を示す。試験の組合せと番号は耐焼付試験と同様であ
る。本発明の組合せの摺動部材は図2からも明らかなよ
うに、従来の硬質アルマイトと樹脂の組合せに比し、い
ずれの組合せにおいても、摩耗量が極めて小さく、良好
な耐摩耗性を示すことがわかる。なお、相手材である陽
極酸化層中の空隙部にアクリル系樹脂を含浸した試料の
摩耗量はいずれも0.2μm以下、従来の硬質アルマイ
トとの組合せではいずれも1μm以上であった。従っ
て、本発明の組合せの摺動部材は、良好な摺動部材であ
ることがわかる。
【0032】実施例2 Al系合金基材としてJIS5056合金を用い、溶体
化処理(500℃×1hr、水冷)後、時効処理(17
0℃×8hr、空冷)を行い、内径20mm、外径26m
m、高さ15mmの円筒形摩耗試験片に加工した。これら
の試料を実施例1と同様の電解液、条件で陽極酸化処理
を行い、陽極酸化層中の空隙中にアクリル樹脂が含浸し
た陽極酸化層を形成した。次に、硫酸0.4g/l、ホ
ウ酸25g/l、銀塩15g/lの水溶液を電解液と
し、試料とカーボン電極を交流電源に接続して、電解液
を約10℃に保持しながら22Vの電圧で電解を行い、
陽極酸化層中の空隙に含浸されたアクリル樹脂と置換し
て銀を析出、含浸した。一方、相手材である樹脂側の試
験片は、実施例1と同じ裏金付の樹脂を用いた。なお、
比較材についても実施例1と同様の硫酸電解液中で処理
した硬質アルマイト試験片を用いた。これらの試験片を
鈴木式摩耗試験機により、摺動速度を4m/sにした他
は実施例1と同様の条件で耐焼付試験及び摩耗試験を行
った。
【0033】図3は耐焼付試験結果を示す。試料7〜試
料9は本発明の陽極酸化層中の空隙部に銀を含浸したも
のと樹脂を主体とした表面層を有する試験片の組合せの
摺動部材であり、試料7はPTFEにPbを30体積%
混合した樹脂、試料8はPEEK、試料9はPIに炭素
繊維を約30重量%混合した樹脂を表面層としたもので
ある。試料10〜試料12は比較材である硬質アルマイ
トとの組合せであり、試料10はPTFEにPbを30
体積%混合した樹脂、試料11はPEEK、試料12は
PIに炭素繊維を約30重量%混合した樹脂を表面層と
したものである。図3に示したごとく、本発明の組合せ
の摺動部材は耐焼付性に優れていることがわかる。
【0034】図4は摩耗試験結果であり、本発明の組合
せの摺動部材は比較材に比し、摩耗量が極めて少なく、
耐摩耗性に優れていることがわかる。
【0035】実施例3 本発明の組合せの摺動部材をコンプレッサに用いた一実
施例の要部断面図を図5に示す。図5において椀状のア
ルミ材からなるケーシング21内にスペーサ22が配置
されており、スペーサ22の回転板23との摺動面には
合成樹脂を主成分として表面層を有する実施例1で開示
した鋼板24が嵌合されており、Al系合金からなる回
転板23は表面に陽極酸化層中の空隙部に金属が含浸さ
れた表面層が形成されている。回転板23にはピストン
25の球部26が回転自在に保持されており、回転板2
3は回転軸27に嵌合されたセンタボール30に回転自
在に支承されている。また、軸方向に複数個の貫通穴3
1を有するシリンダブロック28が回転軸27に固定さ
れており、シリンダブロック28の貫通穴31内にピス
トン25が嵌合されている。シリンダブロック28には
回転板23と同様に陽極酸化層中の空隙部に金属が含浸
された表面層が形成されている。このシリンダブロック
8の貫通穴の一端を防ぎ、かつ、圧縮された気体を吐出
する吐出穴が形成されたシリンダヘッド29が設置され
ている。シリンダヘッド19は実施例1で開示した表面
に合成樹脂を主成分とした表面層を有する鋼板で形成さ
れている。
【0036】次に、このコンプレッサの運転動作である
が、例えば内燃機関により回転軸27が回転すると回転
板23及びシリンダブロック28が回転し、シリンダの
貫通穴31内をピストン25が往復運動し、気体を吸
入、圧縮する。この時スペーサ22に嵌合された鋼板2
4と回転板23及びシリンダブロック28とシリンダヘ
ッド29は回転軸27の回転と同じ回転で摺動する。し
たがって、高速の摺動となり、かつ、気体を圧縮する圧
力が加わるため、高速、高荷重下の摺動となる。高速、
高荷重下では潤滑油が摺動面に十分供給されにくくな
り、境界潤滑あるいは無潤滑になる場合がある。したが
って、摺動面に自己潤滑性を有するものを用いることが
望ましい。本発明の場合には樹脂を主成分とし、固体潤
滑剤が表面層としているため境界潤滑あるいは無潤滑状
態に陥っても焼付の心配がない。
【0037】前述したコンプレッサをカーエアコンサイ
クルに組込み、耐久試験を行った。試験条件は回転数:
5500rpm、吐出ガス圧:29kgf/cm2、吸収側ガス
圧:2kgf/cm2、試験時間:200hr、潤滑油:ポリア
ルキレングリコール、冷媒:R134aである。なお、
比較のためシリンダブロック及び回転板に通常の陽極酸
化層を形成したものについても同様の条件で試験を行っ
た。耐久試験後、解体して、各部品の摩耗量を測定した
結果、本発明の組合せでの摩耗量は、シリンダブロック
0.2μm、シリンダヘッド1.0μm、回転板0.3
μm、スペーサ1.2μmであった。一方、比較材の組
合せではシリンダブロック1.8μm、シリンダヘッド
5.0μm、回転板2.3μm、スペーサ7.5μmで
あった。これらの結果からも明らかなように、本発明の
組合せとした場合には比較材に比し、組み合わせた相方
の部品とも摩耗量が少なく、良好な組合せであることが
わかる。以上、本発明の一実施例を記述したが、実施例
に限定するものではなく、エアコンプレッサ、油圧ポン
プ等広範囲に適用できるものである。
【0038】施例4 Al系合金基材としてJIS5083合金を用い、溶体
化処理後、170℃で10hrの時効処理を行い、直径3
0mm、高さ5mmの円板形摩耗試験片を作製した。これら
の試料を直流定電源回路の陽極に接続し、アルミニウム
電極を陰極として、電解液(硫酸:180g/l、溶存
アルミニウム:5g/l、硫酸ニッケル:5g/l、ア
クリル樹脂組成物:14g/l、残部:水)中で、電解
液を約3℃に保持しながら電流密度約1A/dm2の定
電流を通電して陽極酸化層にアクリル樹脂が含浸した試
験片を作成した。次に、この試験片を流酸0.4g/
l、ホウ酸25g/l、銀塩15g/lの水溶液を電解
液とし、試験片とカーボン電極を交流電源に接続して、
電解液を10℃に保持しながら20Vの電圧で電解を行
い、陽極酸化層中に含浸されたアクリル樹脂と置換して
空隙内に銀を析出、含浸して摩耗試験の固定側試験片に
供した。一方、相手材となる試験片は試料1がPTFE
(ポリテトラフルオロエチレン)中に炭素繊維を約30
体積%及びCaF2(フッ化カルシウム)を約2体積%
を混合した樹脂、試料2はPTFEにPb20体積%と
Cu−Sn合金粉を10体積%含有した樹脂、試料3は
PTFEに炭素繊維20体積%とMoS220体積%含
有した樹脂、試料4はPEEK(ポリエーテルエーテル
ケトン)にPb30体積%含有した樹脂、試料5はPE
EKにMoS2を30体積%含有した樹脂 試料6はPEEKに炭素繊維10体積%、Pb10体積
%、MoS210体積%を含有した樹脂、である。これ
らを内径20mm、外径25.6mm、高さ3mmに加工し、
SUS304製円筒冶具に接着剤で固定して摩耗試験の
回転側試験片とした。なお、比較材として固定側試験片
にB390合金(Al−17%Si)を用いた。
【0039】試験方法は鈴木式摩耗試験機に圧力容器を
取付け、圧力容器内に固定側試験片及び回転側試験片を
装着し、潤滑油とフロンの混合液を試験片の摺動面が埋
没されるまで封入して試験した。試験条件は摺動速度:
8m/s、面圧:10kg/cm2、試験時間:5hr、潤滑
油:冷凍機用合成油、フロン:R134a、潤滑油とフ
ロンの混合比:3:7である。なお、摩耗試験と同時に
摩擦係数も測定した。
【0040】表1は摩耗試験結果を示す。試験NoA〜F
は本発明の陽極酸化層中に銀を含浸したものと樹脂を主
体とした部材の組合せである。試験NoG〜Lは比較材で
あるB390合金と試料1〜6の組合せである。表1を
見ても明らかなように、本発明の組合せの場合は比較材
に比べて相対摩耗量(固定側と回転側のトータル摩耗
量)がいずれの組合せでも小さく、優れた組合せである
ことがわかる。表2は摩擦係数測定結果を示す。表2を
見ても明らかなように、本発明の組合せでは比較材の組
合せよりも摩擦係数が小さく、優れた摩擦特性を示して
いる。摩擦係数が小さいので、実機に用いた場合には機
械的損失が少なく、省エネルギーにも寄与できることが
容易に推察できる。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】実施例5 Al系合金基材としてJIS6061合金を用い、溶体
化処理後、170℃で10hrの時効処理を行い、直径3
0mm、高さ5mmの円板形摩耗試験片を作製した。これら
の試料を直流定電源回路の陽極に接続し、アルミニウム
電極を陰極として、電解液(硫酸:180g/l、溶存
アルミニウム:5g/l、硫酸ニッケル:5g/l、ア
クリル組成物:14g/l、残部:水)中で電解液を5
℃に保持しながら約1.5A/dm2の電流密度の定電流
を通電して陽極酸化層にアクリル樹脂が含浸した試験片
を作製した。これらの試験片を固定側試験片とし、実施
例4と同様の樹脂を主体とした回転側試験片と組合せて
摩耗試験を行った。試験条件は摺動速度:6m/s、面
圧:10kg/cm2、試験時間:10hr、潤滑油:冷凍機用
合成油、フロン:R134a、潤滑油とフロンの混合
比:2:8である。比較材としてB390合金との組合
せについても試験した。なお、実施例4と同様に摩耗係
数も測定した。
【0044】表3は摩耗試験結果を示す。表3を見ても
明らかなように、本発明の組合せは比較材の組合せに比
し、相対摩耗量が小さく、耐摩耗性に優れていることが
わかる。表4は摩擦係数測定結果を示す。表4に示すよ
うに、本発明の組合せは比較材の組合せのいずれよりも
摩擦係数が小さく、摩擦特性に優れていることがわか
る。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】実施例6 本発明の組合せをカーエアコン用可変容量片斜板式コン
プレッサに用いて耐久試験を行った一実施例の要部断面
図を図6に示す。このコンプレッサは電磁クラッチの作
動によりシャフト1が回転し、このシャフトに取付けら
れたドライブプレート2及びジャーナル3が、シャフト
1とともに回転して揺動運動をする。ジャーナル3とピ
ストンサポート4はスラストベアリング5を介して連結
されており、ジャーナル3の揺動運動がピストンサポー
ト4の往復運動に変換される。ピストンサポート4には
コンロッド6を介してピストン7が取り付けられてお
り、ピストン7には合成樹脂を主成分とした(PTFE
+30体積%炭素繊維+2体積%CaF2)本発明の組
合せの片方であるピストンリング8が取付けられてい
る。このピストン7がシリンダ9のボア10内を往復運
動して冷媒を吸入、圧縮、吐出する。シリンダボア10
の内周面には本発明の組合せの片方である陽極酸化層中
の空隙部に金属(銀)が含浸された表面層になってい
る。このコンプレッサをカーエアコンサイクルに組込
み、耐久試験を行った。
【0048】試験条件は回転数:5500rpm、吐出ガ
ス圧:30kgf/cm2、吸入側ガス圧:2kgf/cm2、試験
時間:500hr、潤滑油:ポリアレキレングリコール、
冷媒:R134aである。なお、比較のためシリンダに
B390合金及びピストンリング材にPTFE+30体
積%炭素繊維+2体積%CaF2の組合せについても同
様の試験を行った。
【0049】表5は試験開始後1hr時と500hr時の体
積効率と全断熱効率を示す。体積効率はシリンダボアの
理論容積と吐出量の比率であり、シリンダボアとピスト
ンリング間にギャップが生ずると体積効率は低下する。
全断熱効率は回転エネルギーを熱エネルギーに変換し、
コンプレッサの冷却エネルギーへの寄与率であり、シリ
ンダボアとピストンリング間にギャップが生ずると全断
熱効率も低下する。したがって、これらはコンプレッサ
の耐久性の目安になるものであり、低下の少ないものが
耐久性に優れる。表5にでも明らかなように、本発明の
組合せを組込んだコンプレッサは、体積効率及び全断熱
効率ともに低下が少なく、耐久性に優れる。なお、試験
時における燃料消費量は比較材の組合せの場合よりも約
10%少なかった。なお、シリンダ材に陽極酸化層に樹
脂を含浸したものについても行ったが、前記金属(銀)
を含浸させた場合とほぼ同様な結果が得られた。
【0050】以上、本発明の一実施例を記述したが、本
実施例に限定されるものではなく、レシプロ型コンプレ
ッサのみならずコンプレッサーの摺動部全体に適用でき
る。
【0051】
【表5】
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、Al合金からなる部材
は硬質な陽極酸化層中の空隙部に金属又は樹脂が含浸さ
れており、空隙がなく、熱膨張差によるクラックの発生
がなく、陽極酸化層の剥離もない。従って、相手材への
攻撃性が少なく、軟質な樹脂を相手材としても摩耗係数
が小さく、摩耗も極めて少なく押えることができる。ま
た、摩擦係数が小さいため、機械的損失が少なく、省エ
ネルギーにも寄与できる。さらに、陽極酸化層中の空隙
部に金属を含浸した場合は、含浸した金属が熱伝達をス
ムーズに行う役割を果し、摩耗熱を基材へ逃がすため、
摩擦面の温度を下げる効果もある。また、陽極酸化層中
の空隙が金属又は樹脂で充満されているため、基材の腐
食も防止できる。
【0053】本発明によれば、シリンダボア及びピスト
ンリング間の摩耗量が極めて小さく、コンプレッサの耐
久性が著しく向上し、摩擦係数も小さく、省エネルギー
にも寄与できる。また、シリンダの表面処理温度が低い
ことから、材質変化や変形もなく、処理により表面粗さ
の変化もないため、後加工の必要がない。さらに、処理
により硬い表面層となるので、シリンダボアの傷付が少
なく、組立て時の作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の摺動部材の組合せである陽極酸化層中
に樹脂を含浸した表面層を有するAl合金と各種樹脂及
び比較材の耐焼付試験結果を示す図である。
【図2】本発明の摺動部材の組合せである陽極酸化層中
に樹脂を含浸した表面層を有するAl合金と各種樹脂及
び比較材の摩耗試験結果を示す図である。
【図3】本発明の摺動部材の組合せである陽極酸化層中
に金属を含浸した表面層を有するAl合金と各種樹脂及
び比較材の耐焼付試験結果を示す図である。
【図4】本発明の摺動部材の組合せである陽極酸化層中
に金属を含浸した表面層を有するAl合金と各種樹脂及
び比較材の摩耗試験結果を示す図である。
【図5】本発明の組合せの摺動部材をコンプレッサに用
いた一実施例の要部断面図である。
【図6】本発明の組合せを用いて耐久試験を行ったカー
エアコン用片斜板コンプレッサの要部断面図である。
【符号の説明】 1 シャフト 2 ドライブプレート 3 ジャーナル 4 ピストンサポート 5 スラストベアリング 6 コンロッド 7 ピストン 8 ピストンリング 9 シリンダ 10 シリンダボア 21 ケーシング 22 スペーサ 23 回転板 24 樹脂層を形成した鋼板 25 ピストン 26 球部 27 回転軸 28 シリンダブロック 29 シリンダヘッド 30 センターボール 31 貫通穴
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 和彦 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社日 立製作所日立研究所内 (72)発明者 三谷 稔 千葉県市原市八幡北町3丁目4番地の3 創研加工株式会社内

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 部材同志がお互いにすべり、摩擦を受け
    る摺動装置において、どちらか一方の部材を少なくとも
    表面が合成樹脂を主成分とした面からなる部材とし、も
    う一方の部材をAl系合金で構成し、前記Al系合金の
    少なくとも、すべり、摩擦を受ける面に陽極酸化層が形
    成され、該陽極酸化層の空隙部に金属が含浸された表面
    層を有する部材との組合せとしたことを特徴とする摺動
    装置。
  2. 【請求項2】 部材同志がお互いにすべり、どちらか一
    方の部材を少なくとも表面が合成樹脂を主成分とした面
    からなる部材とし、もう一方の部材をAl系合金で構成
    し、摩擦を受ける摺動装置の製造方法において、Al系
    合金部材の表面処理層を形成する方法は、陽極で重合す
    る低重合アクリル樹脂組成物を含む酸性の第1の電解液
    を用いて陽極酸化層を形成する工程と、金属塩を含む第
    2の電解液を用い、該陽極酸化層中の空隙部に含浸せし
    められた樹脂と金属を置換して金属を含浸させる工程を
    含むことを特徴とする摺動装置の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1において、表面に合成樹脂を有
    する部材は合成樹脂を主成分とし、固体潤滑剤を含有す
    ることを特徴とする摺動装置。
  4. 【請求項4】 請求項1又は3において、Al系合金部
    材の表面処理層の厚さが50μm以下であることを特徴
    とする摺動装置。
  5. 【請求項5】 請求項1,3又は4において、前記合成
    樹脂層は下地材に金属を用い、合成樹脂層の厚さが1mm
    以下であることを特徴とする摺動装置。
  6. 【請求項6】 部材同志がお互いにすべり、摩擦を受け
    る摺動装置において、どちらか一方の部材を少なくとも
    表面が合成樹脂を主成分とした面からなる部材とし、も
    う一方の部材をAl系合金で構成し、前記Al系合金の
    少なくとも、すべり、摩擦を受ける面に陽極酸化層が形
    成され、該陽極酸化層の空隙部にアクリル系樹脂が含浸
    された表面層を有する部材との組合せとしたことを特徴
    とする摺動装置。
  7. 【請求項7】 部材同志がお互いにすべり、どちらか一
    方の部材を少なくとも表面が合成樹脂を主成分とした面
    からなる部材とし、もう一方の部材をAl系合金で構成
    し、摩擦を受ける摺動装置の製造方法において、Al系
    合金部材の表面処理層を形成する方法が、陽極で重合す
    る低重合アクリル樹脂組成物を含む酸性の電解液を用
    い、陽極酸化層の形成と該陽極酸化層中の空隙部に樹脂
    含浸する工程を一工程で行うことを特徴とする摺動装置
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項6において、表面に合成樹脂を有
    する部材がアクリル系樹脂以外の合成樹脂を主成分と
    し、固体潤滑剤が含有されていることを特徴とする摺動
    装置。
  9. 【請求項9】 請求項6において、Al系合金部材の表
    面処理層の厚さが5〜50μmであることを特徴とする
    摺動装置。
  10. 【請求項10】 請求項6において、前記合成樹脂層は
    下地材に金属を用い、合成樹脂層の厚さが1mm以下であ
    ることを特徴とする摺動装置。
  11. 【請求項11】 固定子に軸承された回転軸に固定され
    たシリンダブロックに複数個の貫通穴を設け、該シリン
    ダブロックの開放端面を密閉するシリンダヘッドと、前
    記シリンダブロックの貫通穴にそれぞれピストンを配置
    し、該ピストンの他端を前記シリンダブロックに対向し
    て配置された回転板に回転自在に保持し、該回転板を支
    えるスペーサを配置してピストン駆動部を形成し、前記
    シリンダブロックを回転することにより、前記ピストン
    が往復運動し、作動流体を吸入、圧縮、吐出する流体装
    置において、前記シリンダブロック及び前記回転板をA
    l系合金で構成し、前記シリンダブロック及び前記回転
    板の表面に陽極酸化被膜を形成し、さらに、該陽極酸化
    被膜の空隙部に金属が含浸された表面層を形成し、前記
    シリンダヘッド及び前記スペーサの表面が合成樹脂を主
    体とする表面層とし、前記シリンダブロックと前記シリ
    ンダヘッド及び前記回転板と前記スペーサとが摺動する
    ように構成したことを特徴とする流体装置。
  12. 【請求項12】 固定子に軸承された回転軸に固定され
    たシリンダブロックに複数個の貫通穴を設け、該シリン
    ダブロックの開放端面を密閉するシリンダヘッドと、前
    記シリンダブロックの貫通穴にそれぞれピストンを配置
    し、該ピストンの他端を前記シリンダブロックに対向し
    て配置された回転板に回転自在に保持し、該回転板を支
    えるスペーサを配置してピストン駆動部を形成し、前記
    シリンダブロックを回転することにより、前記ピストン
    が往復運動し、作動流体を吸入、圧縮、吐出する流体装
    置において、前記シリンダブロック及び回転板をAl系
    合金で構成し、前記シリンダブロック及び回転板の表面
    に陽極酸化被膜中の空隙部にアクリル系樹脂が含浸され
    た表面層を形成し、前記シリンダヘッド及び前記スペー
    サの表面が合成樹脂を主体とする表面層とし、前記シリ
    ンダブロックと前記シリンダヘッド及び前記回転板と前
    記スペーサとが摺動するように構成したことを特徴とす
    る流体装置。
  13. 【請求項13】 1つ又は複数個のボアを有するシリン
    ダブロックの該ボア内をピストンが往復運動して気体又
    は液体を圧縮する圧縮機において、前記シリンダブロッ
    クは、Al系合金で形成され、少なくとも該シリンダの
    ボア内周面に陽極酸化層が形成され、該陽極酸化層中の
    空隙部に金属が含浸されて表面層が形成され、前記ピス
    トンの該シリンダボア内周面と摺動する面に合成樹脂面
    が設けられたことを特徴とする圧縮機。
  14. 【請求項14】 1つ又は複数個のボアを有するシリン
    ダブロックの該ボア内をピストンが往復運動して気体又
    は液体を圧縮する圧縮機において、前記シリンダブロッ
    クは、Al系合金で形成され、少なくとも該シリンダの
    ボア内周面に陽極酸化層が形成され、該陽極酸化層中の
    空隙部に樹脂が含浸されて表面層が形成され、前記ピス
    トンの該シリンダボア内周面と摺動する面に合成樹脂面
    が設けられたことを特徴とする圧縮機。
  15. 【請求項15】 請求項13又は14において、合成樹
    脂面は合成樹脂を主体としたコーティング層であること
    を特徴とする圧縮機。
  16. 【請求項16】 請求項13又は14において、合成樹
    脂面は前記ピストン外周面に設けられたリング溝に合成
    樹脂を主体とする樹脂リングが嵌合されたものであるこ
    とを特徴とする圧縮機。
  17. 【請求項17】 請求項13〜16のいずれかにおい
    て、合成樹脂面は合成樹脂を主成分とし、固体潤滑剤、
    炭素繊維、金属粉のいずれか又はこれらが組合されて分
    散されていることを特徴とする圧縮機。
  18. 【請求項18】 請求項13〜17のいずれかにおい
    て、主体となる合成樹脂は四フッ化エチレン又はポリエ
    ーテルエーテルケトンであることを特徴とする圧縮機。
  19. 【請求項19】 1つ又は複数個のボアを有するシリン
    ダブロックの該ボア内をピストンが往復運動して気体又
    は液体を圧縮する圧縮機の製造方法において、シリンダ
    ブロックの表面の形成は、陽極で重合する低重合アクリ
    ル樹脂組成物を含む第1の電解液を用いて陽極酸化層を
    形成する工程と、金属塩を含む第2の電解液を用いて前
    記陽極酸化層中の空隙部に含浸した前記樹脂を前記金属
    塩の金属で置換して金属を陽極酸化層の空隙部に含浸さ
    せる工程を含むことを特徴とする圧縮機の製造方法。
  20. 【請求項20】 1つ又は複数個のボアを有するシリン
    ダブロックの該ボア内をピストンが往復運動して気体又
    は液体を圧縮する圧縮機の製造方法において、シリンダ
    ブロックの表面の形成は、陽極で重合する低重合アクリ
    ル樹脂組成物を含む第1の電解液を用いて陽極酸化層を
    形成する工程より成ることを特徴とする圧縮機の製造方
    法。
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