JP2628990B2 - ベーン - Google Patents

ベーン

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    • F01CROTARY-PISTON OR OSCILLATING-PISTON MACHINES OR ENGINES
    • F01C21/00Component parts, details or accessories not provided for in groups F01C1/00 - F01C20/00
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はベーン型圧縮機のベーンに関する。本発明の
ベーンはロータリーベーン式コンプレッサ、ロータリー
ベーン式真空ポンプ、ロータリーベーン式オイルポンプ
等に利用することができる。
[従来の技術] 近年、小型軽量である利点からベーン型圧縮機が多く
用いられている。ここで第6図及び第7図を参照しなが
らベーン型圧縮機の一例の構成を説明する。この例のベ
ーン型圧縮機は、楕円状の貫通孔をもつ円筒状シリンダ
1と、このシリンダ1の両側に係止される第1サイドプ
レート2および第2サイドプレート3と、シリンダ1と
両サイドプレート2、3で形成される内部空間部位内に
回転自在に設けられたロータ4と、このロータ4と同一
軸芯に固定された駆動軸5と、ロータ4の外周より中心
部に駆動軸5と平行に形成された合計4個のスリット11
内に挿入された4個のベーン6と、両サイドプレート
2、3を覆う一対のフロントハウジング7およびリヤハ
ウジング8とよりなる。そして第1サイドプレート2と
フロントハウジング7との間に吸入室71が形成され、第
2サイドプレート3とリヤハウジング8との間には吐出
室81が形成されている。吸入室71は導入孔72より冷媒ガ
スの供給を受ける。一方吐出室81は導出孔82より圧縮さ
れた冷媒を送りだす。
駆動軸5は両サイドプレート2、3の軸孔中にプレー
ン軸受21、31を介して回転自在に保持されている。又駆
動軸5の一端は気密シール75を介してフロントハウジン
グ7の軸孔を貫通して突出し、その先端51に図示しない
電磁クラッチの従動部が固定されている。
4個のベーン6はロータ4の回転による遠心力及び高
圧の吐出室81より供給される高圧の潤滑油83によりシリ
ンダ1の内周面に接する方向に付勢される。このベーン
6は、その頂部表面がシリンダ1の内壁面と当接し気密
的に摺動する。又ベーン6の両端面は両サイドプレート
2、3の内壁面と当接し、気密的に摺動する。シリンダ
1、両サイドプレート2、3で囲まれた圧縮室Vはロー
タ4及び4個のベーン6で4つの圧縮室V1〜V4に分けら
れ、分けられた4個の圧縮室V1〜V4はロータ4の回転に
よりそれぞれその体積が連続的に増減する。第7図にお
いて、ロータ4が矢印方向に回転するにつれ、同図面
上、右方の圧縮室V1、V3はその体積が増大し、図面上下
方の圧縮室V2、V4は体積が減少する。圧縮室V1、V3はシ
リンダ1に設けられた吸入路12を通して吸入室71より冷
媒が供給される。一方圧縮室V2、V4は吐出孔13より弁15
を通り、さらに吐出路17を通って吐出室81に圧縮された
冷媒を吐出する。
従来かかるベーン型圧縮機においては、軽量化、シー
ル特性を向上させるために、ベーン型圧縮機を構成する
ベーン、シリンダ、サイドブロック、ロータ等を構成す
る金属材料及び形状等について種々の工夫がなされてい
る。例えば特開昭49−44305号公報には、ベーンの基材
を改善し、さらに表面処理を施し、耐摩耗性、機械的強
度、自己潤滑性を高めることが開示されている。又特開
昭57−157087号公報には、ベーン及びサイドブロックを
鉄系金属、ロータおよびシリンダをアルミニウム系金属
で構成し、シリンダの内面に鉄系金属よりなるライナー
を設けることが開示されている。又実開昭59−27101号
公報には、シリンダ、サイドブロック、ロータ、ベーン
をアルジル合金で構成し、ベーンと摺動する各部材の表
面に表面処理を施すことが開示されている。
[発明が解決しようとする問題点] ところでベーン型圧縮機においては、軽量化の要請か
らシリンダ、ロータ等はアルミニウム合金から形成され
る傾向にある。そして機械的強度、耐摩耗性を満足させ
る材料として、高珪素アルミニウム合金が好適であるこ
とが判明し、このようなアルミニウム合金の利用が検討
されている。
この高珪素アルミニウム合金は、初晶珪素及び共晶珪
素が散在しており、その硬度は1300〜1500Hvと非常に硬
くなっている。ところが従来使用されているベーンはほ
とんどが鉄系金属より形成されており、SUJ2焼入れ鋼等
を用いてもその硬度は650〜800Hvと低い。従ってこのベ
ーンを高珪素アルミニウム合金製ロータ等と組合せた場
合には摩耗が多くなってクリアランスが増大し、又珪素
粒が脱落しこれが研磨材となってロータの摩耗をも促進
する結果となる。更に面荒れのため摩擦係数が増大し、
発熱量が大きくなって焼付に至るとういう不具合があ
る。
又硬度増大の目的としてベーンに各種表面処理を行う
ことも検討されている。例えば浸炭焼入れ、窒化処理等
の処理法があるが、得られる硬度は精々800Hvと低いも
のである。又CVD法、PVD法等によりベーン表面にTiCな
どの薄膜を形成する方法も知られており、この方法によ
れば1300〜3800Hvと高い硬度の薄膜が得られる。ところ
でベーンは表面の真直度が必要である。しかし上記薄膜
形成法では処理時に歪が生じるために、ベーンの仕上げ
加工が必要であるが、得られる薄膜は10μm以下と薄い
ため加工時に薄膜が削られて内部が表出する場合が多
い。
更に、ロータエッジ部での油切れが生じ易いという不
具合もある。
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたものであ
り、表面硬度が高く潤滑性能に優れたベーンを提供する
ことを目的とする。
[問題点を解決するための手段] 本発明のベーンは、高珪素アルミニウム合金製の相手
材と摺動するベーンであって、鉄系金属よりなる基板
と、 基板の少なくとも一部表面に浸ボロン処理を施すこと
により形成され硬度1200〜1850Hvのボロン硬化層とから
なり、ボロン硬化層は表面平滑な摺動平面と摺動平面に
開口するミクロ孔部とを有し、表面粗さがRz0.2〜1.2μ
mであることを特徴とする。
基板は鉄系金属であれば等に制限されず、その材質は
コスト、強度等必要とする条件により種々選択すること
ができる。例えばS45C鋼、S55C鋼、SUJ鋼、SKS鋼、SKD
鋼等の材料から形成することができる。
ベーンとしての材料の材質としては一般に下記のごと
きものが要求される。
(1)珪素粒による研削を避けるため、硬度は高珪素ア
ルミニウム合金中の珪素の硬度とほぼ同等かそれ以上で
あること。
(2)摺動面がアルミニウムに対して耐焼付性に優れ、
摩擦係数が低いこと。
(3)上記の性質を具備した緻密な仕上げ面が得られる
こと。
(4)更に製作が容易なこと。(硬度を上げた後複雑な
加工がない) そして上記要求を満足するものとして、鋼材を母材と
したものにボロンを浸透拡散させる浸ボロン処理を施し
たものが最適であることが究明された。
ボロン硬化層は基板の少なくとも一部表面に形成され
るが、少なくともロータと摺接する表面に設けることが
望ましい。勿論ベーン全面に設けることもできる。
このボロン硬化層は基板表面に浸ボロン処理を施すこ
とにより形成されたものであり、その硬度は1200〜1850
Hvである。硬度が1200Hv以下では耐摩耗性に劣り、1850
Hvより高くすることは浸ボロン処理では一般に困難であ
る。
浸ボロン処理を施す方法には、ホウ砂(Na2B4O7)に
炭化珪素または炭化ホウ素等を10〜40%加え、800〜110
0℃の温度とした溶融塩浴に数時間浸漬する液体法、ホ
ウ砂又はホウ砂と炭化珪素、ホウ砂と塩化ナトリウム等
を混合し、800〜1100℃の温度とした溶融塩浴中で基板
を陰極として数時間電解を行う電解法、又は炭化ホウ素
及び炭素に炭化珪素、四弗化ホウ素カリウム等を添加し
た粉体又は粒状体の中に基板を埋めて所定時間、所定温
度で加熱する固体法等がある。なかでも固体法で行うこ
とが望ましい。固体法によれば他の方法に比べ100μm
以上と厚いボロン硬化層が得られる。従って仕上げ加工
時のとりしろが確保でき、かつ仕上げ加工後のボロン硬
化層の厚みも十分確保することができる。
本発明のベーン表面にはボロン硬化層を有するので、
その表面を鏡面仕上げとしても従来に比して摩擦抵抗を
小さくすることができる。しかしボロン硬化層は表面平
滑な摺動表面とその摺動表面に開口するミクロ孔部とを
有し、表面粗さがRz0.2〜1.2μmであることが望まし
く、Rz0.6〜0.8μmであることがより望ましい。このよ
うにすればミクロ孔部が油溜り部として機能し、潤滑性
能を一層向上させることができる。このミクロ孔部を形
成するには、第2図に示すようにまず砥粒等によりボロ
ン硬化層表面をラッピングして荒らし、次いで第1図に
示すようにダイヤモンドラップ等によりラップ面の上面
だけを削りとって面積率60〜95%、望ましくは85〜95%
の摺動平面を形成する。このようにして摺動平面201と
ミクロ孔部202とを形成することができる。なおその表
面粗さはRz0.2〜1.2μmであることが望ましい。この値
が0.2μmより小さくなると油溜り部としての機能が低
下し潤滑性能がその分小さくなる。又1.2μmより大き
くなると摺動平面が少なくなることにより摩擦抵抗が大
きくなって焼付等が生じ易くなる。なお基板に焼入れ処
理をして硬度を高めることができる。又この焼入れ処理
を浸ボロン処理の徐冷の際、基材に焼入れが入るSKS、S
KD等の合金鋼を用いれば、表面を浸ボロン処理すると同
時に内部も硬くすることができ、工数を増すことなく機
械的強度を向上させることができる。
[発明の作用及び効果] 本発明のベーンは基板の少なくとも一部表面に1200〜
1850Hvのボロン硬化層をもつ。従って高珪素アルミニウ
ム合金からなるロータに使用した場合には、そのロータ
と略同等以上の硬度を有するため耐摩耗性に優れてい
る。又ボロン硬化層にミクロ孔部を形成すれば、潤滑油
がミクロ孔部内に保持されてミクロ孔部は油溜り部とし
て機能するので、潤滑性能に特に優れるようになる。
従って本発明のベーンを用いたベーン型圧縮機では、
ベーンの耐摩耗性に優れ、かつロータ、シリンダの摩耗
を防止することができるので寿命が長くかつ焼付が防止
される。
[実施例] 以下実施例により具体的に説明する。
(ベーンの製造) S45C鋼を材料とし、研削加工により第3図に示す直方
体形状のベーン基板100を製造した。
次に上記基板を炭化ホウ素及び炭素に、炭化珪素及び
四弗化ホウ素カリウム等を添加した粉体の中に埋めて3
〜10時間、800〜1000℃に加熱する固体法により浸ボロ
ン処理を施した。この浸ボロン処理により基板全表面
に、外層は約30μmのホウ化第1鉄(FeB)、内層は約7
0μmのホウ化第2鉄(Fe2B)の2層からなるボロン硬
化層200(約100μm)を形成させた。このボロン硬化層
200の各々の硬度は1500〜1850Hv、1200〜1600Hvであっ
た。
次に第2図に示すようにボロン硬化層200をもつ基板1
00の表裏面をGC砥粒で3〜5分間ラッピングし、続いて
第1図に示すようにダイヤモンドラップにより約1分間
ラッピングして、約1700Hvのホウ化第1鉄と約1400Hvの
ホウ化第2鉄とが表出した摺動平面201を形成した。得
られたベーンはミクロ孔部202を有し、表面粗さがRz0.6
〜0.8μmであった。
(性能試験1) 得られた実施例のベーンの動摩擦係数を測定し結果を
第4図に示す。なお試験はスラストテスターを用い、表
面粗さRz0.8〜2.0μmの相手材にパッド給油しながら荷
重10kgf、滑り速度5〜15m/sの条件で行った。又滑り速
度15m/sで60分間摺動させたときの摩擦力のパターンを
測定し、結果を第5図に示す。
(性能試験2) 得られたベーンを第6図および第7図に示す圧縮機に
装着し、運転した。圧縮機の構成は従来の技術で詳細に
説明したので省略する。
ベーンとロータとの摺動条件は、第8図に示す低圧側
圧力W1の最大値は132kgf/40mm、高圧側圧力W2の最大値
は57kgf/40mm、摺動速度は0〜1.0m/sである。なおロー
タの材質には珪素約11%を含むアルミニウム合金が用い
られている。
試験後のベーン及びロータの摩耗深さを20点について
測定し結果を第11図に示す。又試験後のベーンの形状を
2点について観察し第9図に示す。
更に試験前後のベーン表面粗さを低圧側表面で2点に
ついて測定し結果を第10図に示す。
(従来例) SUJ−2焼入鋼を用い浸ボロン処理を行わないこと、
及び表面を鏡面加工としたこと以外は実施例と同様にベ
ーンを製造した。このベーンの表面硬度は700〜800Hvで
あり、表面粗さはRz0.8μm以下である。
得られたベーンについて実施例と同様に性能試験を行
い、結果をそれぞれ第4図、第5図、第9図、第10図お
よび表に示す。
(評価) 第4図より本発明のベーンは従来のベーンに比べ動摩
擦係数が小さい。また第5図より本発明のベーンは摩擦
力の振れ幅がほとんど無く安定していることがわかる。
又第11図および第9図より、本発明のベーンは圧縮機
に装着した実用においても耐摩耗性に優れ、ロータの摩
耗量も少なくなっている。更に第10図からも明らかなご
とく、従来例はテスト後の表面粗さが摩耗による面荒れ
により極度に大きくなっている。これに対し本発明のベ
ーンは圧縮機の運転前後の表面粗さの変化が小さく、耐
摩耗性に優れていることが明らかである。
(試験例) 実施例と同様のベーン基板に対し、浸ボロン処理時間
を可変することにより硬度Hv=900〜1850の間で種々異
ならせたこと以外は実施例と同様にして、ボロン硬化層
200をもつものを複数種類形成した。なお、Hv>1850と
することは、実施例で用いた浸ボロン処理では困難であ
った。また比較のために、ボロン硬化層を形成せず焼入
れにより硬化層を形成したものも複数種類用意した。焼
入れしたものでは硬度Hv<900であり、硬度はボロン硬
化層に及ばない。
それぞれのベーンについて性能試験2と同様にして試
験し、ベーンとロータの摩耗深さを測定した。結果を第
12図に示す。
第12図より、硬度Hvが1200以上であればベーン、ロー
タとも摩耗深さが極めて小さいことが明らかである。
また、上記で形成されたボロン硬化層の硬度Hv=1400
のベーンについて、ラッピングに用いた砥粒の径を異な
らせたこと以外は実施例と同様にしてラッピングしてミ
クロ孔部を形成し、表面粗さRz=0〜2.5μmの間で種
々のベーンを形成した。
そしてスラストテスターを用い、速度V=15m/sの条
件にてそれぞれのベーンについて動摩擦係数を測定し
た。結果を第13図に示す。
第13図より、表面粗さがRz=0.2〜1.2μmの間にあれ
ば極めて低い動摩擦係数を示していることがわかる。
即ち本発明のベーンは耐摩耗性に優れ、かつ相手材と
してのロータの摩耗が防止されているので、ベーン型圧
縮機としての実用上の寿命を著しく長くすることがで
き、又焼付きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のベーンの要部断面図である。第2図は
ボロン硬化層をラッピングした状態を示す断面図であ
る。第3図はベーン基体の斜視図である。第4図は滑り
速度と動摩擦係数の関係を示すグラフである。第5図は
摩擦力のパターンを示す線図である。第6図および第7
図は一例のベーン型圧縮機にかかわる図であり、第6図
は軸方向の断面図、第7図は第6図の圧縮機の軸方向と
直角な方向の断面図である。第8図はロータとベーンと
の摩耗位置を示す説明図である。第9図はベーンの摩耗
程度を示す説明図である。第10図は試験前後のベーンの
表面粗さを示すグラフである。第11図は磨耗深さの測定
結果を示す線図である。第12図はベーンの表面硬度と摩
耗深さの関係を示すグラフであり、第13図はベーンの表
面粗さと動摩擦係数の関係を示すグラフである。 1……シリンダ 2……第1サイドプレート 3……第2サイドプレート、4……ロータ 5……駆動軸、6……ベーン 7……フロントハウジング、8……リヤハウジング 100……基板、200……ボロン硬化層 201……摺動平面、202……ミクロ孔部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 二村 憲一朗 豊田市緑ヶ丘3丁目65番地 大豊工業株 式会社内 (72)発明者 鈴木 新一 刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会社豊 田自動織機製作所内 (56)参考文献 特開 昭61−46486(JP,A) 実開 昭60−23282(JP,U)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高珪素アルミニウム合金製の相手材と摺動
    するベーンであって、 鉄系金属よりなる基板と、該基板の少なくとも一部表面
    に浸ボロン処理を施すことにより形成され硬度1200〜18
    50Hvのボロン硬化層とからなり、該ボロン硬化層は表面
    平滑な摺動平面と該摺動平面に開口するミクロ孔部とを
    有し、表面粗さがRz0.2〜1.2μmであることを特徴とす
    るベーン。
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