JP2007245234A - 圧縮機の摺動部品の製造方法および圧縮機 - Google Patents

圧縮機の摺動部品の製造方法および圧縮機 Download PDF

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【課題】本発明の課題は、「圧縮機の摺動部品基体をチクソキャスティング法により製造し、その摺動部品基体を超精密仕上げ加工して最終的な摺動部品を得る」という圧縮機の摺動部品の製造方法よりも低コストで圧縮機の摺動部品を製造することができる圧縮機の摺動部品の製造方法を提供することにある。
【解決手段】圧縮機の摺動部品の製造方法は、摺動部品基体製造工程、樹脂コーティング工程、および機械加工工程を備える。摺動部品基体製造工程では、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体25が、所定の型を用いて製造される。樹脂コーティング工程では、摺動部品基体に対して機械加工が施されることなく摺動部品基体上に部分的に又は全体的に樹脂コーティング層25aが設けられる。機械加工工程では、樹脂コーティング層のみが機械加工されて完成摺動部品17,23,24,26,39,60が得られる。
【選択図】図4

Description

本発明は、圧縮機の摺動部品の製造方法およびその製造方法によって製造される摺動部品が組み込まれる圧縮機に関する。
過去に「圧縮機の摺動部品基体をチクソキャスティング法により製造し、その摺動部品基体を超精密仕上げ加工して最終的な摺動部品を得る」という圧縮機の摺動部品の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。そして、この製造方法を採用すれば、砂型鋳造方法を採用するのに比べて原材料費や、機械加工費、工具消耗品代を低減することができる上、さらに研削廃材や加工廃液などの破棄物を低減することができると言われている。
特開2005−36693号公報
しかし、近年、圧縮機の摺動部品の製造コストの更なる低減化が求められている。
本発明の課題は、「圧縮機の摺動部品基体をチクソキャスティング法により製造し、その摺動部品基体を超精密仕上げ加工して最終的な摺動部品を得る」という圧縮機の摺動部品の製造方法よりも低コストで圧縮機の摺動部品を製造することができる圧縮機の摺動部品の製造方法を提供することにある。
第1発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、摺動部品基体製造工程、樹脂コーティング工程、および機械加工工程を備える。摺動部品基体製造工程では、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体が、所定の型を用いて製造される。樹脂コーティング工程では、摺動部品基体の一部または全部に対して機械加工が施されることなく摺動部品基体上に部分的に又は全体的に樹脂コーティング層が設けられる。なお、ここで、樹脂コーティングは、厚みが摺動部品基体の輪郭精度に加工代を足した値以上となるように設けられる。機械加工工程では、樹脂コーティング層のみが機械加工されて完成摺動部品が得られる。なお、ここにいう「圧縮機の摺動部品」とは、例えば、可動スクロール(特に、ベース部、渦巻ラップ部、軸受け部など)、固定スクロール(特にベース部、渦巻ラップ部など)、軸受、回転軸、自転防止部材、およびスライドブッシュ(スライドブロック)などである。また、ここにいう「機械加工」とは、例えば、切削加工などである。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体製造工程で、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体が、所定の型を用いて製造される。次いで、樹脂コーティング工程で、摺動部品基体の一部または全部に対して機械加工が施されることなく摺動部品基体上に部分的に又は全体的に樹脂コーティング層が設けられる。そして、機械加工工程で、樹脂コーティング層のみが機械加工されて完成摺動部品が得られる。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、チクソキャスティング法により製造した高硬度の摺動部品基体を超精密仕上げ加工するよりも短時間で仕上げ加工を行うことできる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法を採用すれば、機械加工費を低減することができる。また、摺動部材が高強度かつ高摺動性を兼ね備えることができるため、高圧冷媒、例えば、二酸化炭素などに対して特に有効となる。また、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、鉄製の摺動部品基体そのものを機械加工するのではなくそれよりも硬度が小さい樹脂を機械加工することになる。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法を採用すれば、工具消耗品代を低減することができる。この結果、この圧縮機の摺動部品の製造方法を採用すれば、「圧縮機の摺動部品基体をチクソキャスティング法により製造し、その摺動部品基体を超精密仕上げ加工して最終的な摺動部品を得る」という圧縮機の摺動部品の製造方法よりも低コストで圧縮機の摺動部品を製造することができる。また、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、チクソキャスティング法により製造した高硬度の摺動部品基体を仕上げ加工するのではなく硬度が低い樹脂部分のみを仕上げ加工する。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法を採用すれば、仕上げ加工精度(特に輪郭精度に代表される形状精度)を向上させることができる。したがって、摺動部品が可動スクロールや固定スクロールである場合、可動スクロールと固定スクロールとを噛み合わせたときの隙間を小さく設定することが可能になる。よって、この圧縮機の摺動部品の製造方法を採用すれば、ガス冷媒の漏れが低減され、その結果、従来よりも高効率な圧縮工程を実現することができる。さらに、樹脂は金属よりも弾性が大きいため、仮に摺動部品間での接触が発生しても、接触による衝撃が緩和されるため、騒音を低減することができる。
なお、本発明に係る摺動部品基体は、FC材から成る摺動部品基体と比較すると、形状精度(可動スクロールや固定スクロールの渦巻においては輪郭度)が著しく高い。例えば、摺動部品基体がFC材から成っているとその形状精度は1mm程度であり、摺動部品基体がチクソ材から成っているとその形状精度は0.1〜0.3mmとなる。このため、摺動部品基体がFC材から成っていると、樹脂コーティング層の膜厚が1mm以上必要であり、摺動部品基体上に樹脂コーティング層を設けるのは実質的に不可能であった。
また、本発明に係る摺動部品基体は引張強度が高いため、例えば、可動スクロールや固定スクロールの渦巻の肉厚を薄くした上で、樹脂コーティング層の膜厚も薄くできる。このため、この摺動部品の製造方法を利用すれば、渦巻を大型化せずに樹脂コーティングが可能となる。そして、これらの特性を活かして可動スクロールや固定スクロールの小径化を行えば、スラスト損失低減による高効率効果が得られる。また、これらの特性を活かして可動スクロールや固定スクロールの渦巻の歯厚を同じ外径サイズを維持したままで高くすれば、圧縮機の大容量化が可能となる。
また、本発明に係る製造方法により製造された摺動部品が組み込まれた圧縮機は、低温向け圧縮機としてや、冷媒にR410AやCO2を使用するなど、運転差圧や圧縮比が大きくなり圧縮内圧による荷重が大きくなりやすい圧縮機として実施する方が、より効果を発揮しやすい。さらに、低温用圧縮機では吸入ガス温度ならびに吸入圧力が低く吸入ガス密度が希薄になるため、十分な冷凍能力を発揮するために圧縮機の容量を大きくする必要があるが、このような場合にも有効である。
また、片状黒鉛鋳鉄から成る摺動部品基体に樹脂コーティング層を設けようとすると、強度の不足および素材の形状精度が悪いために可動スクロールや固定スクロールの歯厚が厚くなりすぎてしまう。このため、片状黒鉛鋳鉄から同じ容量の渦巻を作製しようとすると非常に大型化してしまい、現実的にはそのような可動スクロールや固定スクロールを作製することは不可能であった。
第2発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、摺動部品基体製造工程では、チクソキャスティング法(半溶融成形法)により摺動部品基体が製造される。なお、このチクソキャスティング法により摺動部品基体を製造する場合、ビレット表面の酸化スケールの巻込みや空気巻込みにより表面および内部に欠陥が発生しやすい。この欠陥を防止するために、摺動部品基体以外に湯口部及び湯溜り部を設ける必要があり、摺動部品基体は摺動部品基体以外を切削や切断などにより除去することで所望の形状を得ることができる。また、除去した部分は溶解し再びビレットとすることが可能であるので、廃棄物がほとんど発生しない。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体製造工程で、チクソキャスティング法により摺動部品基体が製造される。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、従来の砂型鋳造方法よりも精度良く摺動部品を製造することができる(ニアネットシェイプ加工が可能となる)。また、チクソキャスティング法により製造される半溶融成形鋳鉄からなる摺動部品基体は、含有炭素量が片状黒鉛鋳鉄より低い。鉄系素材では、炭素含有量の低下に伴い引張弾性率は向上するため、片状黒鉛鋳鉄より高い引張弾性率を有する。また、チクソキャスティング法の成形加工では急冷して全体がチル化した金属組織を得た後に黒鉛化の熱処理を施して析出黒鉛を得るため、析出黒鉛が球状に近い粒状を有する。また、鋳鉄は、析出物の球状化率の上昇に伴い引張強度および引張弾性率が向上する。このため、析出黒鉛が片状黒鉛鋳鉄より球状化率の高い粒状となる半溶融成形鋳鉄は、一般に、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率が高い。また、チクソキャスティング法により製造される摺動部品基体は、FCDのような延性・靭性を有するにも関わらずFCDに比べて被削性が良好である、摺動部品基体内の強度バラツキが小さい、熱処理方法を変更することにより強度や硬度を容易に調節することができる、微細な金属組織を有する、等の特徴を有する。また、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体がチクソキャスティング法により製造される半溶融成形鋳鉄から成る。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。また、チクソキャスティング法により製造される摺動部品基体の被削性は、硬度の上昇にともない悪化する。このため、摺動部品基体を機械加工する必要がある場合、熱処理によってその被削性を調節することができる。また、チクソキャスティング法により製造される摺動部品基体は、延性・靭性に優れる。このため、摺動部品が可動スクロールや固定スクロールである場合、例えば、圧縮機の運転中に吸入管から液冷媒が吸込まれるという突発的な内圧上昇が発生したときであっても、可動スクロールや固定スクロールのラップが割れにくくなる。仮に、ラップにひびや割れ等の損傷が発生しても、砕けて細かい破片が発生しないため、冷媒回路に多くの破片が流出することを抑えることができる。その結果、空調機器の更新需要に対して、工期短縮や費用削減の目的から既設配管を流用する製品に搭載される圧縮機においても、従来材料に比べて適した圧縮機を製造することができる。
第3発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、摺動部品基体製造工程では、レオキャスティング法(半凝固成形法)により摺動部品基体が製造される。なお、ここにいう「レオキャスティング法」とは、鉄素材を完全に融解させた後にその温度を下げていき、半凝固状態になったときに加圧しながら型に押し込むことにより成形する方法である。
この圧縮機の摺動部品の製造方法は、レオキャスティング法(半凝固成形法)により摺動部品基体が製造される。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、従来の砂型鋳造方法よりも精度良く摺動部品を製造することができる(ニアネットシェイプ加工が可能となる)。なお、レオキャスティング法により製造される半凝固成形鋳鉄からなる摺動部品基体は、含有炭素量が片状黒鉛鋳鉄より低い。鉄系素材では炭素含有量の低下に伴い引張弾性率は向上するため、この摺動部品基体は、片状黒鉛鋳鉄より高い引張弾性率を有する。また、レオキャスティング法の成形加工では急冷して全体がチル化した金属組織を得た後に黒鉛化の熱処理を施して析出黒鉛を得るため、析出黒鉛が球状に近い粒状を有する。また、鋳鉄は、析出物の球状化率の上昇に伴い引張強度および引張弾性率が向上する。このため、析出黒鉛が片状黒鉛鋳鉄より球状化率の高い粒状となる半凝固成形鋳鉄は、一般に、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率が高い。また、レオキャスティング法により製造される摺動部品基体は、チクソキャスティング法により製造される摺動部品基体と同様に、摺動部品基体内の強度バラツキが小さい、熱処理方法を変更することにより強度や硬度を容易に調節することができる、微細な金属組織を有する、等の特徴を有する。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体製造工程で、摺動部品基体がレオキャスティング法により製造される半凝固成形鋳鉄から成る。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。
第4発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、摺動部品基体製造工程では、摺動部品基体がパーライト可鍛鋳鉄から成る。鉄系素材では、炭素含有量の低下に伴い引張弾性率は向上する。このため、含有炭素量が片状黒鉛鋳鉄より低いパーライト可鍛鋳鉄は、片状黒鉛鋳鉄より高い引張弾性率を有する。また、パーライト可鍛鋳鉄の成形加工では急冷して全体がチル化した金属組織を得た後に黒鉛化の熱処理を施して析出黒鉛を得るため、析出黒鉛が片状黒鉛鋳鉄より球状化率の高い球状に近い粒状を有する。また、鋳鉄は、析出物の球状化率の上昇に伴い引張強度および引張弾性率が向上する。したがって、パーライト可鍛鋳鉄は、一般に、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率が高い。また、パーライト可鍛鋳鉄は、FCDのような延性・靭性を有するにも関わらずFCDに比べて被削性が良好であり、チクソキャスティング法により製造される摺動部品基体と同様に熱処理方法を変更することにより強度や硬度を容易に調節することができる等の特徴を有する。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体製造工程で、摺動部品基体がパーライト可鍛鋳鉄から成る。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。
第5発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、摺動部品基体製造工程では、摺動部品基体が球状黒鉛鋳鉄から成る。なお、球状黒鉛鋳鉄の成形加工では、黒鉛球状化材となるマグネシウム等の元素を接種して析出黒鉛を得るため、析出黒鉛が片状黒鉛鋳鉄より球状化率の高い球状を有する。鋳鉄は、析出物の球状化率の上昇に伴い引張強度および引張弾性率が向上する。したがって、球状黒鉛鋳鉄では、一般に、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率が高い。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体製造工程で、摺動部品基体が球状黒鉛鋳鉄から成る。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。
第6発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、摺動部品基体製造工程では、摺動部品基体が球状炭化物鋳鉄から成る。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体製造工程で、摺動部品基体が球状炭化物鋳鉄から成る。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。ただし、球状炭化物鋳鉄は、片状黒鉛鋳鉄に比べて被削性に劣る。したがって、このように摺動部品基体を球状炭化物鋳鉄とする場合、湯口部や湯溜り部等を除去する以外は摺動部品基体全面に樹脂コーティングを施して摺動部品基体の機械加工部位を一切なくすようにするのが好ましい。
第7発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第6発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、摺動部品基体製造工程では、球状炭化物鋳鉄は、球状炭化バナジウム鋳鉄である。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体製造工程で、球状炭化物鋳鉄は、球状炭化バナジウム鋳鉄である。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。ただし、球状炭化バナジウム鋳鉄は、片状黒鉛鋳鉄に比べて被削性に劣る。したがって、このように摺動部品基体を球状炭化バナジウム鋳鉄とする場合、湯口部や湯溜り部等を除去する以外は摺動部品基体全面に樹脂コーティングを施して摺動部品基体の機械加工部位を一切なくすようにするのが好ましい。
第8発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第4発明から第7発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、摺動部品基体製造工程では、ロストワックス法により摺動部品基体が製造される。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体製造工程で、ロストワックス法により摺動部品基体が製造される。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、従来の砂型鋳造方法よりも精度良く摺動部品を製造することができる(ニアネットシェイプ加工が可能となる)。
第9発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、摺動部品基体製造工程では、摺動部品基体が鍛造により製造される。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体製造工程で、摺動部品基体が鍛造により製造される。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、従来の砂型鋳造方法よりも精度良く摺動部品を製造することができる(ニアネットシェイプ加工が可能となる)。また、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。
第10発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明から第9発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、摺動部品基体は、引張強度が600MPa以上である。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体は、引張強度が600MPa以上である。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、可動スクロールや固定スクロールの歯厚を大幅に薄くすることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング層を設けても可動スクロールや固定スクロールの渦巻径を小さくすることができる。その結果、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、同じ容量の渦巻を作製する場合、軸方向に作用するガス圧縮荷重が小さくスラスト軸受損失を低減した圧縮機を製造することができる。また、容量制御機構としてインバータ機(可変速機)に適用した場合は、可動スクロールを軽量小型にできるため、遠心力の影響を小さくでき、高速運転に適した構造を得ることができる。アンローダピストンによる容量制御機においても、高圧縮比運転時に容量制御を行った場合には、渦巻に発生する応力が通常運転時(フルロード時)よりも大きくなるが、強度が高くなっている上、靭性に富むため、渦巻に損傷などが発生する可能性を小さくすることができる。さらに、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、同じ外径サイズで歯高を高くして吸込み容積を増大させることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、圧縮機の大容量化が可能となる。
なお、実際の寿命設計では疲労強度の向上が重要となるが、引張強度が向上すれば、疲労強度も同様に向上している。このため、問題無く渦巻の歯厚を薄く設計することができる。
第11発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明から第10発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、表面処理工程をさらに備える。表面処理工程では、摺動部品基体の表面が粗面化される。なお、この表面処理工程は、摺動部品基体製造工程後、樹脂コーティング工程前に実施される。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、表面処理工程で、摺動部品基体の表面が粗面化される。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体と樹脂コーティング層との密着性をアンカー効果などにより向上させることができる。
第12発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第11発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、表面処理工程では、摺動部品基体の表面粗度(Rz)が5〜50μmとなるように摺動部品基体が表面処理される。なお、表面粗度(Rz)が5μm未満では十分なアンカー効果を得ることができず、表面粗度(Rz)が50μmよりも大きいと粗度を大きくすることによる効果が無いにも拘わらず樹脂の必要量が多くなり材料費の無駄に繋がるおそれがある。また、表面粗度(Rz)が50μmよりも大きいと、摺動部品基体の実質的な厚みが薄くなって摺動部品基体の強度が低下したり摺動部品基体の表面に大きな切り欠きが形成されやすくなりその切り欠きに応力が集中することによって摺動部品基体の破壊が起こりやすくなったりする等の欠点が生じる。なお、摺動部品基体がスクロール部材の基体である場合には、応力集中部、特に渦巻部の付け根などに切り欠きが多く形成されると摺動部品基体の破壊が起こる確率が高まってしまうという懸念がある。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、表面処理工程で、摺動部品基体の表面粗度(Rz)が5〜50μmとなるように摺動部品基体が表面処理される。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、十分なアンカー効果を得ることができるとともに樹脂の使用量を適正に保つことができる。
第13発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第11発明または第12発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、表面処理工程では、化成処理により摺動部品基体の表面が粗面化される。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、表面処理工程で、化成処理により摺動部品基体の表面が粗面化される。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体の表面を容易に粗面化することができる。
第14発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第11発明または第12発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、表面処理工程では、ブラスト処理により摺動部品基体の表面が粗面化される。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、表面処理工程で、ブラスト処理により摺動部品基体の表面が粗面化される。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体の表面を容易に粗面化することができる。
第15発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明から第14発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、樹脂コーティング工程では、スプレー塗装法により摺動部品基体上に樹脂コーティング層が設けられる。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング工程で、スプレー塗装法により摺動部品基体上に樹脂コーティング層が設けられる。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体上に容易に樹脂コーティング層を設けることができる。
第16発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第15発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、樹脂コーティング工程では、摺動部品基体が加熱されながら摺動部品基体上に樹脂コーティング層が設けられる。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング工程で、摺動部品基体が加熱されながら摺動部品基体上に樹脂コーティング層が設けられる。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング層を重ね塗りしても品質を保つことができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、厚い樹脂コーティング層を形成することができる。
第17発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第15発明または第16発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、樹脂コーティング工程では、摺動部品基体が回転させられながら摺動部品基体上に樹脂コーティング層が設けられる。なお、摺動部品基体が可動スクロールや固定スクロールのような複雑な形状を有する場合などでは、塗装ガンを傾けながら塗装を行うのが好ましい。このようにすれば、摺動部品基体が複雑な形状を有していても樹脂コーティング層の厚みを均一にすることができる。また、摺動部品基体が可動スクロールや固定スクロール等である場合、ラップの付け根部分にも均一な樹脂コーティング層を設けることができる。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング工程で、摺動部品基体が回転させられながら摺動部品基体上に樹脂コーティング層が設けられる。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体上に容易に樹脂コーティング層を設けることができる。
第18発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明から第14発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、樹脂コーティング工程では、射出成形法により摺動部品基体上に樹脂コーティング層が設けられる。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング工程で、射出成形法により摺動部品基体上に樹脂コーティング層が設けられる。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体上に容易に樹脂コーティング層を設けることができる。
第19発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明から第18発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、樹脂コーティング工程では、樹脂コーティング層の厚みが摺動部品基体の輪郭精度に加工代を足した値になるように樹脂コーティング層が摺動部品基体上に設けられる。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング工程で、樹脂コーティング層の厚みが摺動部品基体の輪郭精度に加工代を足した値になるように樹脂コーティング層が摺動部品基体上に設けられる。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、ほぼ確実に樹脂コーティング層のみを機械加工することができる。
第20発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明から第19発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、樹脂コーティング層は、エンジニアリングプラスチックから成る。なお、ここにいう「エンジニアリングプラスチック」には、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、強化ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂、およびエポキシ樹脂などが含まれる。ただし、これらのエンジニアリングプラスチックは、圧縮機に充填される冷媒の種類(フロン系冷媒、アンモニア、二酸化炭素、水、空気、炭化水素系冷媒など)によって適宜選択される。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング層の形成にエンジニアリングプラスチックが使用される。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品が高温下に曝される場合であっても摺動部品の信頼性を維持することができる。
第21発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第20発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、エンジニアリングプラスチックは、フッ素樹脂である。なお、ここにいう「フッ素樹脂」には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(ポリ四フッ化エチレン)(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などが含まれる。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング層の形成にフッ素樹脂が使用される。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、フッ素樹脂特有の低摩擦係数により、摺動部品に良好な摺動性を付与することができる。
第22発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第20発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、エンジニアリングプラスチックは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂である。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング層の形成にポリエーテルエーテルケトン樹脂が使用される。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品に良好な摺動性を付与することができる。
第23発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第20発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、エンジニアリングプラスチックは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂である。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング層の形成にポリフェニレンサルファイド樹脂が使用される。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品に良好な摺動性を付与することができる。
第24発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明から第23発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、樹脂コーティング層は、ナノインデンテーション法によって測定される硬度が0.1GPa以上である。樹脂の表面硬度は、通常、金属のそれよりも低いため機械加工しやすいが、表面硬度が0.1GPa未満となると柔ら過ぎて逆に機械加工しにくくからである。なお、ここにいう「ナノインデンテーション法」とは、例えば、神戸製鐵技報/Vol.52 No.2(Sep.2002)の74ページに紹介されている物質の表面硬度測定であって、具体的には先端形状がダイヤモンドチップから成る正三角錐(バーコビッチ型)の圧子を薄膜や材料の表面に押込み、そのときの圧子にかかる荷重と圧子の下の射影面積からその物質の表面硬度を求める方法である。また、この「ナノインデンテーション法」については、特許庁Webページに掲載されている標準技術集に詳しい(http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/spm/4_d_3_a.htm)。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、ナノインデンテーション法によって測定される樹脂コーティング層の表面硬度が0.1GPa以上である。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング層の機械加工を容易することができるとともに仕上げ精度をも向上させることができる。
第25発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第1発明から第24発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、摺動部品基体は、平板部および薄肉渦巻部を有する。薄肉渦巻部は、平板部の片側の板面である第1板面から第1板面と垂直な方向に向かって薄肉の渦巻き形状を保持しながら延びる。なお、この薄肉渦巻部の第1板面から突出端面までの距離の薄肉渦巻部の肉厚に対する比(渦巻のH/T)は、効率向上や大容量化、小型化の観点から10以上が好ましく、15以上がより好ましい。かかる場合、圧縮機を圧縮容量を維持したまま小径化できる。したがって、スラスト損失低減や圧縮機外径低減を達成することができる。また、かかる場合、可動スクロールや固定スクロールの外径を維持したまま圧縮機を大容量化できる。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体が、平板部および薄肉渦巻部を有する。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、可動スクロールあるいは固定スクロールを製造することができる。
第26発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第25発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、樹脂コーティング工程では、第1板面および薄肉渦巻部にのみ樹脂コーティング層が設けられる。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング工程で、第1板面および薄肉渦巻部にのみ樹脂コーティング層が設けられる。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、薄肉渦巻部のみの仕上げ精度を向上させることができる。
第27発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第25発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、樹脂コーティング工程では、薄肉渦巻部のうち第1板面と交差する曲面にのみ樹脂コーティング層が設けられる。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング工程で、薄肉渦巻部のうち第1板面と交差する曲面にのみ樹脂コーティング層が設けられる。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、薄肉渦巻部の側面のみの仕上げ精度を向上させることができる。
第28発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第25発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、摺動部品基体は、溝部をさらに有する。なお、溝部は、平板部に設けられる。また、ここにいう「溝部」とは、可動スクロールのオルダムキー溝などである。そして、樹脂コーティング工程では、少なくとも溝部に樹脂コーティング層が設けられる。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング工程で、少なくとも溝部に樹脂コーティング層が設けられる。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、溝部の摺動性を向上させることができる。
第29発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第25発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、摺動部品基体は、円筒部をさらに有する。円筒部は、第1板面の裏側の板面である第2板面から第2板面に垂直な方向に向かって円筒状に延びる。なお、ここにいう「円筒部」とは、可動スクロールの軸受け部などである。そして、樹脂コーティング工程では、少なくとも円筒部の内面に樹脂コーティング層が設けられる。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング工程で、少なくとも円筒部の内面に樹脂コーティング層が設けられる。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、円筒部の内面の摺動性を向上させることができる。特にフッ素樹脂を用いた場合には、摩擦係数が低い特徴を活かして、ジャーナル軸受損失を低減することができる。
第30発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第25発明から第29発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、薄肉渦巻部は、中心線を含み第1板面と直交する平面で切った時の歯の切断面が台形形状を呈する。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、薄肉渦巻部が、中心線を含み第1板面と直交する平面で切った時の歯の切断面が台形形状を呈する。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、型から摺動部品基体を抜きやすくさせることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、型の寿命を長くすることができ、コストを低減することができる。
第31発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、請求項30に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法であって、台形の底辺と斜辺となす角度、つまり抜き角度は、0.5°以上2°以下である。この角度が0.5°よりも小さい場合には型から摺動部品基体を離型する際にかかる型へのストレスが大きくなり型の変形(金型寿命の低下)を招くため型寿命が急速に縮まり、この角度が2°よりも大きい場合には型寿命の延長効果が十分に上がらない上に、圧縮室容量が減少する弊害の方の大きくなる(歯先の幅を等しくした場合)ためである。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、台形の底辺と斜辺となす角度が、0.5°以上2°以下である。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、型から摺動部品基体を抜きやすくさせることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、型の寿命を十分に長くすることができ、コストを低減することができる。
第32発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第25発明から第31発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、薄肉渦巻部の角部がR形状を呈する。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、薄肉渦巻部は、角部がR形状を呈する。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、型から摺動部品基体を抜きやすくさせることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、型の寿命を長くすることができ、コストを低減することができる。
第33発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第25発明から第32発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、薄肉渦巻部は、付け根部がR形状を呈する。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、薄肉渦巻部の付け根部がR形状を呈する。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、型から摺動部品基体を抜きやすくさせることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、型の寿命を長くすることができ、コストを低減することができる。
第34発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第32発明または第33発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、R形状の半径は、0.3mmよりも大きく薄肉渦巻部の角部側の先端の幅の半分未満である。このR形状の半径が0.3mm以下である場合には型寿命が急速に縮まり、このR形状の半径が薄肉渦巻部の角部側の先端の幅の半分以上である場合には歯先のシール面がなくなり薄肉渦巻部の先端でのガス漏れが増大することになるためである。
この圧縮機の摺動部品の製造方法では、R形状の半径が、0.3mm以上薄肉渦巻部の角部側の先端の幅の半分未満である。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、ガス漏れを有効に防止しつつ、型の寿命を十分に長くすることができ、コストを低減することができる。
第35発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第25発明から第34発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、平板部は、厚みが10mm以下である。
チクソキャスティング法により可動スクロールや固定スクロールの基体を製造する場合、通常、型の平板部に該当する箇所に湯口を設ける。かかる場合、平板部の肉厚が厚すぎると摺動部品基体製造工程において平板部に凝固収縮によるピンホールが発生しやすくなる。
しかし、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、平板部の厚みが10mm以下である。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体製造工程において平板部に凝固収縮によるピンホールが生じるのを有効に防止することができる。
第36発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第25発明から第35発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、平板部の厚みに対する薄肉渦巻部の肉厚の比は、0.2以上0.6以下である。この比が0.2未満である場合には薄肉渦巻部の強度が不十分になるおそれがあり、この比が0.6よりも大きい場合には摺動部品基体製造工程において空気の巻き込みが起こり摺動部品基体に欠陥が発生する確率が増すためである。
チクソキャスティング法により可動スクロールや固定スクロールの基体を製造する場合、通常、型の平板部に該当する箇所に湯口を設ける。かかる場合、渦巻部が分岐形状となり、摺動部品基体製造工程において空気の巻き込みが起こりやすくなる。
しかし、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、平板部の厚みに対する薄肉渦巻部の肉厚の比が、0.2以上0.6以下である。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、渦巻部が存在していても薄肉であるため、摺動部品基体製造工程において空気の巻き込みを有効に防止することができる。また、渦巻部に十分な強度を付与することができる。
第37発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、第29発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法であって、平板部の厚みに対する円筒部の肉厚の比は、0.3以上1.0未満である。この比が0.3未満である場合には円筒部の強度が不十分になるおそれがあり、この比が1.0以上である場合には摺動部品基体製造工程において空気の巻き込みが起こり摺動部品基体に欠陥が発生する確率が増すためである。
チクソキャスティング法により可動スクロールの基体を製造する場合、通常、型の平板部に該当する箇所に湯口を設ける。かかる場合、円筒部が分岐形状となり、摺動部品基体製造工程において空気の巻き込みが起こりやすくなる。
しかし、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、平板部の厚みに対する円筒部の肉厚の比が、0.3以上1.0未満である。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、円筒部が存在していても薄肉であるため、摺動部品基体製造工程において空気の巻き込みを有効に防止することができる。また、円筒部に十分な強度を付与することができる。
第38発明に係る圧縮機には、請求項1から37のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法により製造された摺動部品が組み込まれる。
このため、この圧縮機は、製造コストが低い。また、この圧縮機では、ガス冷媒の漏れが低減され、その結果、従来よりも高効率な圧縮工程が実現される。さらに、この圧縮機では、仮に摺動部品間での接触が発生しても、接触による衝撃が樹脂コーティング層によって緩和されるため、騒音を低減することができる。
第39発明に係る圧縮機は、第38発明に係る圧縮機であって、二酸化炭素を圧縮する。かかる場合のコーティング用の樹脂としては耐熱性が高く(特に給湯器用圧縮機で求められる)低分子のオリゴマーを溶出しくいフッ素樹脂や、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂などの樹脂が好ましい。
この圧縮機は、摺動部材が高強度かつ高摺動性を兼ね備えることができる。このため、この圧縮機は、二酸化炭素を冷媒とする場合に特に有効となる。
第1発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法を採用すれば、「圧縮機の摺動部品基体をチクソキャスティング法により製造し、その摺動部品基体を超精密仕上げ加工して最終的な摺動部品を得る」という圧縮機の摺動部品の製造方法よりも低コストで圧縮機の摺動部品を製造することができる。また、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、チクソキャスティング法により製造した高硬度の摺動部品基体を仕上げ加工するのではなく硬度が低い樹脂部分のみを仕上げ加工する。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法を採用すれば、仕上げ加工精度を向上させることができる。したがって、摺動部品が可動スクロールや固定スクロールである場合、可動スクロールと固定スクロールとを噛み合わせたときの隙間を小さく設定することが可能になる。よって、この圧縮機の摺動部品の製造方法を採用すれば、ガス冷媒の漏れが低減され、その結果、従来よりも高効率な圧縮工程を実現することができる。さらに、樹脂は金属よりも弾性が大きいため、仮に摺動部品間での接触が発生しても、接触による衝撃が緩和されるため、騒音を低減することができる。
第2発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、従来の砂型鋳造方法よりも精度良く摺動部品を製造することができる(ニアネットシェイプ加工が可能となる)。また、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。
第3発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、従来の砂型鋳造方法よりも精度良く摺動部品を製造することができる(ニアネットシェイプ加工が可能となる)。また、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。
第4発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。
第5発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。
第6発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。
第7発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。
第8発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、従来の砂型鋳造方法よりも精度良く摺動部品を製造することができる(ニアネットシェイプ加工が可能となる)。
第9発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、従来の砂型鋳造方法よりも精度良く摺動部品を製造することができる(ニアネットシェイプ加工が可能となる)。また、片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体をほぼ確実に得ることができる。
第10発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、可動スクロールや固定スクロールの歯厚を薄くし渦巻径を小さくすることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、軸方向に作用するガス圧縮荷重が小さくスラスト軸受損失を低減した圧縮機を製造することができる。また、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、同じ外径サイズで歯厚を高くして吸込み容積を増大させることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、圧縮機の大容量化が可能となる。
第11発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体と樹脂コーティング層との密着性をアンカー効果などにより向上させることができる。
第12発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、十分なアンカー効果を得ることができるとともに樹脂の使用量を適正に保つことができる。
第13発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体の表面を容易に粗面化することができる。
第14発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体の表面を容易に粗面化することができる。
第15発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体上に容易に樹脂コーティング層を設けることができる。
第16発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング層を品質良く重ね塗りことができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、厚い樹脂コーティング層を形成することができる。
第17発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体上に容易に樹脂コーティング層を設けることができる。
第18発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体上に容易に樹脂コーティング層を設けることができる。
第19発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、ほぼ確実に樹脂コーティング層のみを機械加工することができる。
第20発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品が高温下に曝される場合であっても摺動部品の信頼性を維持することができる。
第21発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品に良好な摺動性を付与することができる。
第22発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品に良好な摺動性を付与することができる。
第23発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品に良好な摺動性を付与することができる。
第24発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング層の機械加工を容易することができるとともに仕上げ精度をも向上させることができる。
第25発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、可動スクロールあるいは固定スクロールを製造することができる。
第26発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、薄肉渦巻部のみの仕上げ精度を向上させることができる。
第27発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、薄肉渦巻部の側面のみの仕上げ精度を向上させることができる。
第28発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、溝部の摺動性を向上させることができる。
第29発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、円筒部の内面の摺動性を向上させることができる。
第30発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、型から摺動部品基体を抜きやすくさせることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、型の寿命を長くすると共に摺動部材の欠陥発生を防止することができる。
第31発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、型から摺動部品基体を抜きやすくさせることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、型の寿命を長くすると共に摺動部材の欠陥発生を防止することができる。
第32発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、型から摺動部品基体を抜きやすくさせることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、型の寿命を長くすると共に摺動部材の欠陥発生を防止することができる。
第33発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、型から摺動部品基体を抜きやすくさせることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、型の寿命を長くすると共に摺動部材の欠陥発生を防止することができる。
第34発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、ガス漏れを有効に防止しつつ、型の寿命を十分に長くすることができ、コストを低減することができる。
第35発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、摺動部品基体製造工程において平板部に凝固収縮によるピンホールが生じるのを有効に防止することができる。
第36発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、薄肉渦巻部が存在していても摺動部品基体製造工程において空気の巻き込みを有効に防止することができる。また、渦巻部に十分な強度を付与することができる。
第37発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法では、円筒部が存在していても摺動部品基体製造工程において空気の巻き込みを有効に防止することができる。また、円筒部に十分な強度を付与することができる。
第38発明に係る圧縮機では、ガス冷媒の漏れが低減され、その結果、従来よりも高効率な圧縮工程が実現される。さらに、この圧縮機では、仮に摺動部品間での接触が発生しても、接触による衝撃が樹脂コーティング層によって緩和されるため、騒音を低減することができる。
第39発明に係る圧縮機は、摺動部材が高強度かつ高摺動性を兼ね備えることができる。このため、この圧縮機は、二酸化炭素を冷媒とする場合に特に有効となる。
本実施形態に係る高低圧ドーム型圧縮機1は、蒸発器や、凝縮器、膨張機構などと共に冷媒回路を構成し、その冷媒回路中のガス冷媒(例えば、フロン系冷媒や二酸化炭素などの自然冷媒など)を圧縮する役割を担うものであって、図1に示されるように、主に、縦長円筒状の密閉ドーム型のケーシング10、スクロール圧縮機構15、オルダムリング39、駆動モータ16、下部主軸受60、吸入管19、および吐出管20から構成されている。以下、この高低圧ドーム型圧縮機1の構成部品についてそれぞれ詳述していく。
〔高低圧ドーム型圧縮機の構成部品の詳細〕
(1)ケーシング
ケーシング10は、略円筒状の胴部ケーシング部11と、胴部ケーシング部11の上端部に気密状に溶接される椀状の上壁部12と、胴部ケーシング部11の下端部に気密状に溶接される椀状の底壁部13とを有する。そして、このケーシング10には、主に、ガス冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構15と、スクロール圧縮機構15の下方に配置される駆動モータ16とが収容されている。このスクロール圧縮機構15と駆動モータ16とは、ケーシング10内を上下方向に延びるように配置される駆動軸17によって連結されている。そして、この結果、スクロール圧縮機構15と駆動モータ16との間には、間隙空間18が生じる。
(2)スクロール圧縮機構
スクロール圧縮機構15は、図1に示されるように、主に、ハウジング23と、ハウジング23の上方に密着して配置される固定スクロール24と、固定スクロール24に噛合する可動スクロール26とから構成されている。以下、このスクロール圧縮機構15の構成部品についてそれぞれ詳述していく。
a)ハウジング
ハウジング23は、その外周面において周方向の全体に亘って胴部ケーシング部11に圧入固定されている。つまり、胴部ケーシング部11とハウジング23とは全周に亘って気密状に密着されている。このため、ケーシング10の内部は、ハウジング23下方の高圧空間28とハウジング23上方の低圧空間29とに区画されていることになる。また、このハウジング23には、上端面が固定スクロール24の下端面と密着するように、固定スクロール24がボルト38により締結固定されている。また、このハウジング23には、上面中央に凹設されたハウジング凹部31と、下面中央から下方に延設された軸受部32とが形成されている。そして、この軸受部32には、上下方向に貫通する軸受孔33が形成されており、この軸受孔33に駆動軸17が軸受34を介して回転自在に嵌入されている。
なお、本実施の形態において、このハウジング23は、新規かつ特殊な製造方法により製造される。この製造方法については、下記「摺動部品の製造方法」の欄で詳述する。
b)固定スクロール
固定スクロール24は、主に、鏡板24aと、鏡板24aの下面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ24bとから構成されている。なお、本実施の形態において、ラップ24bの角部および隅部は、可動スクロールのラップ26bの角部および隅部にフィットするR形状とされている。また、このラップ24bを設計中心を含む面で切った場合、ラップ24bの形状は、底辺と斜辺とがなす角度が1°である台形となっている。鏡板24aには、圧縮室40(後述)に連通する吐出通路41と、吐出通路41に連通する拡大凹部42とが形成されている。吐出通路41は、鏡板24aの中央部分において上下方向に延びるように形成されている。拡大凹部42は、鏡板24aの上面に凹設された水平方向に広がる凹部により構成されている。そして、固定スクロール24の上面には、この拡大凹部42を塞ぐように蓋体44がボルト44aにより締結固定されている。そして、拡大凹部42に蓋体44が覆い被せられることによりスクロール圧縮機構15の運転音を消音させる膨張室からなるマフラー空間45が形成されている。固定スクロール24と蓋体44とは、図示しないパッキンを介して密着させることによりシールされている。
なお、本実施の形態において、この固定スクロール24は、新規かつ特殊な製造方法により製造される。この製造方法については、下記「摺動部品の製造方法」の欄で詳述する。
c)可動スクロール
可動スクロール26は、主に、鏡板26aと、鏡板26aの上面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ26bと、鏡板26aの下面に形成された軸受部26cと、鏡板26aの両端部に形成される溝部26d(図3参照)とから構成されている。なお、本実施の形態において、ラップ26bの角部26eおよび隅部26fは、固定スクロールのラップ24bの角部および隅部にフィットするR形状とされている(図4参照)。また、このラップ26bを設計中心を含む面で切った場合、ラップ26bの形状は、底辺と斜辺とがなす角度が1°である台形となっている(図4参照)。そして、この可動スクロール26は、溝部にオルダムリング39(後述)が嵌め込まれることによりハウジング23に支持される。また、軸受部26cには駆動軸17の上端が嵌入される。可動スクロール26は、このようにスクロール圧縮機構15に組み込まれることによって駆動軸17の回転により自転することなくハウジング23内を公転する。そして、可動スクロール26のラップ26bは固定スクロール24のラップ24bに噛合させられており、両ラップ24b,26bの接触部の間には圧縮室40が形成されている。そして、この圧縮室40では、可動スクロール26の公転に伴い、両ラップ24b,26b間の容積が中心に向かって収縮する。本実施形態に係る高低圧ドーム型圧縮機1では、このようにしてガス冷媒を圧縮するようになっている。
なお、本実施の形態において、この可動スクロール26は、新規かつ特殊な製造方法により製造される。この製造方法については、下記「摺動部品の製造方法」の欄で詳述する。
d)その他
また、このスクロール圧縮機構15には、固定スクロール24とハウジング23とに亘り、連絡通路46が形成されている。この連絡通路46は、固定スクロール24に切欠形成されたスクロール側通路47と、ハウジング23に切欠形成されたハウジング側通路48とが連通するように形成されている。そして、連絡通路46の上端、即ちスクロール側通路47の上端は拡大凹部42に開口し、連絡通路46の下端、即ちハウジング側通路48の下端はハウジング23の下端面に開口している。つまり、このハウジング側通路48の下端開口により、連絡通路46の冷媒を間隙空間18に流出させる吐出口49が構成されていることになる。
(3)オルダムリング
オルダムリング39は、上述したように、可動スクロールの自転運動を防止するための部材であって、ハウジング23に形成されるオルダム溝(図示せず)に嵌め込まれている。なお、このオルダム溝は、長円形状の溝であって、ハウジング23において互いに対向する位置に配設されている。
(4)駆動モータ
駆動モータ16は、本実施の形態において直流モータであって、主に、ケーシング10の内壁面に固定された環状のステータ51と、ステータ51の内側に僅かな隙間(エアギャップ通路)をもって回転自在に収容されたロータ52とから構成されている。そして、この駆動モータ16は、ステータ51の上側に形成されているコイルエンド53の上端がハウジング23の軸受部32の下端とほぼ同じ高さ位置になるように配置されている。
ステータ51には、ティース部に銅線が巻回されており、上方および下方にコイルエンド53が形成されている。また、ステータ51の外周面には、ステータ51の上端面から下端面に亘り且つ周方向に所定間隔をおいて複数個所に切欠形成されているコアカット部が設けられている。そして、このコアカット部により、胴部ケーシング部11とステータ51との間に上下方向に延びるモータ冷却通路55が形成されている。
ロータ52は、上下方向に延びるように胴部ケーシング部11の軸心に配置された駆動軸17を介してスクロール圧縮機構15の可動スクロール26に駆動連結されている。また、連絡通路46の吐出口49を流出した冷媒をモータ冷却通路55に案内する案内板58が、間隙空間18に配設されている。
(5)下部主軸受
下部主軸受60は、駆動モータ16の下方の下部空間に配設されている。この下部主軸受60は、胴部ケーシング部11に固定されるとともに駆動軸17の下端側軸受を構成し、駆動軸17を支持している。
なお、本実施の形態において、この下部主軸受60は、新規かつ特殊な製造方法により製造される。この製造方法については、下記「摺動部品の製造方法」の欄で詳述する。
(6)吸入管
吸入管19は、冷媒回路の冷媒をスクロール圧縮機構15に導くためのものであって、ケーシング10の上壁部12に気密状に嵌入されている。吸入管19は、低圧空間29を上下方向に貫通すると共に、内端部が固定スクロール24に嵌入されている。
(7)吐出管
吐出管20は、ケーシング10内の冷媒をケーシング10外に吐出させるためのものであって、ケーシング10の胴部ケーシング部11に気密状に嵌入されている。そして、この吐出管20は、上下方向に延びる円筒形状に形成されハウジング23の下端部に固定される内端部36を有している。なお、吐出管20の内端開口、即ち流入口は、下方に向かって開口されている。
〔摺動部品の製造方法〕
本実施の形態に係る高低圧ドーム型圧縮機1において、駆動軸17、ハウジング23、固定スクロール24、可動スクロール26、オルダムリング39、および下部主軸受60は摺動部品であり、本実施の形態では、ハウジング23、固定スクロール24、可動スクロール26、および下部主軸受60の摺動部品が下記製造方法により製造される。
(1)原材料
a)鉄素材
本実施の形態に係る鉄素材としては、C:2.3〜2.4wt%、Si:1.95〜2.05wt%、Mn:0.6〜0.7wt%、P:<0.035wt%、S:<0.04wt%、Cr:0.00〜0.50wt%、Ni:0.50〜1.00wt%が添加されているビレットが採用される。なお、ここにいう重量割合は全量に対する割合である。また、ここに「ビレット」とは、一端、上記成分の鉄素材が溶融炉において溶融された後に、連続鋳造装置により円柱形状等に成形された最終成形前の素材を意味する。なお、ここで、CおよびSiの含有量は、引張強度および引張弾性率が片状黒鉛鋳鉄より高くなること、および複雑な形状の摺動部品基体を成形するのに適切な流動性を備えていることの両方を満足するように決定される。また、Niの含有量は、金属組織の靭性を向上させて成型時の表面クラックを防止するのに適切な金属組成を構成するように決定されている。
b)樹脂コーティング液
本実施の形態に係る樹脂コーティング液としては、ポリアミドイミド樹脂溶液にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂の粉末が混合されているPAI/PTFEコーティング液が採用される。
(2)製造工程
本実施の形態に係る摺動部品は、チクソキャスティング工程、表面処理工程、樹脂コーティング工程、および最終仕上げ工程を経て製造される。以下、各工程について詳述する。
a)チクソキャスティング工程
チクソキャスティング工程では、先ず、ビレットを高周波加熱することにより半溶融状態とする。次いで、その半溶融状態のビレットを所定の金型に注入する際に、ダイキャストマシンで所定圧力を加えながらビレットを所望の形状に成形し摺動部品基体を得る。そして、摺動部品基体を金型から取り出して急冷させると、その摺動部品基体の金属組織は、全体的に白銑化したものとなる。その後、この摺動部品基体を熱処理すると、この摺動部品基体の金属組織は、白銑化組織からパーライト/フェライト基地、粒状黒鉛から成る金属組織へと変化する。なお、この白銑化組織の黒鉛化、パーライト化については熱処理温度、保持時間、冷却速度などを調節することにより調節することができる。例えば、Honda R&D Technical Review の Vol.14 No.1 の論文「鉄の半溶融成形技術の研究」にあるように、950℃で60分保持した後に0.05〜0.10℃/secの冷却速度で炉中にて徐冷することにより、500MPa〜700MPa程度の引張強度、150〜200程度のブリネル硬度を有する金属組織を得ることができる。このような金属組織はフェライト中心であるために軟らかく被削性に優れるが、機械加工時に構成刃先を形成して刃具寿命を低下させる可能性がある。また、1000℃で60分保持した後に空冷し、さらに最初の温度より少し低い温度で所定時間保持した後に空冷することにより、600MPa〜900MPa程度の引張強度、200〜250程度のブリネル硬度を有する金属組織を得ることができる。このような金属組織において、片状黒鉛鋳鉄と同等の硬度を有するものは、片状黒鉛鋳鉄と同等の被削性を有し、同等の延性・靭性を有する球状黒鉛鋳鉄と比較すると被削性に優れている。また、1000℃で60分保持した後に油冷し、さらに最初の温度より少し低い温度で所定時間保持した後に空冷することにより、800MPa〜1300MPa程度の引張強度、250〜350程度のブリネル硬度を有する金属組織を得ることができる。このような金属組織はパーライト中心であるために硬く、被削性に劣るが、耐摩耗性に優れている。ただし、硬すぎることによる摺動相手材への攻撃性を有する可能性がある。
なお、本実施の形態において、摺動部品基体の引張強度は600MPa以上とされている。
b)表面処理工程
表面処理工程では、リン酸亜鉛パーカ処理により摺動部品基体の表面が粗面化される。なお、本実施の形態において、目標表面粗度(Rz)は5〜50μmとされている。
なお、本実施の形態において、表面粗度は、JIS B0651に従って測定されている。また、このとき、触針として先端Rが2μmであり先端テーパ角度が60°のものを採用した。
c)樹脂コーティング工程
樹脂コーティング工程では、摺動部品基体が設計中心を中心として回転されながら摺動部品基体上にスプレー塗装法によりPAI/PTFEコーティング液が塗布される。なお、このとき、溶剤の除去を行う目的で摺動部品基体を90℃程度で加熱しながら塗装を行い、その後90℃程度での予備乾燥を30分程度行う。1回の塗装で塗布可能な膜厚は、数十μm程度なので、必要な膜厚に応じてこの工程を複数回繰返すことで、摺動部品基体上に多層被膜が形成される。所望の膜厚になったところで、最後に200℃程度の温度で焼成し必要な硬度を確保する。なお、焼成中に、樹脂内に残留した溶剤が発泡して塗装膜が破壊されたり、多層膜の膜間密着度が低下して摩耗やはがれが発生したりすることがある。これらの不具合を防ぐために、摺動部品基体の加熱温度や、予備乾燥時の温度および時間を調整する必要がある。基本的には、温度を上げすぎると層間密着度が悪化するが、下げすぎると発泡が発生する。予備乾燥時間については、短すぎると溶剤が抜け切らずに発泡し、長すぎると溶剤が抜けすぎて膜間の密着度が悪化する。なお、この多層被膜の表面硬度はナノインデンテーション法によって測定され、本実施の形態では、0.1GPa以上のものが合格品とされる。焼成条件は、具体的には段階的なものが好ましく、例えば、120℃x40分→150℃x40分→220℃x40分→280℃x40分の条件が好ましい。
d)最終仕上げ工程
最終仕上げ工程では、摺動部品基体上に形成された多層被膜が機械加工されて摺動部品の完成となる。
(3)最終摺動部品の概要
ここでは、可動スクロール26および固定スクロール24を例にとって最終的な摺動部品の概要について説明する。
この可動スクロール26は、図4に示されるように、主に、可動スクロール基体25と、樹脂コーティング層25aとから形成されている。可動スクロール基体25は、可動スクロール26と相似の関係にあり、可動スクロール26よりも若干小さく作られている。そして、この可動スクロール基体25では、鏡板26aに相当する部分の厚みが8mmとされ、鏡板26aに相当する部分の厚みに対するラップ26bに相当する部分の肉厚の比が0.4(つまり、ラップ26bに相当する部分の肉厚は3.2mmである)とされ、鏡板26aに相当する部分の厚みに対する軸受部26cに相当する部分の肉厚の比が0.5(つまり、軸受部26cに相当する部分の肉厚は4mmである)とされ、ラップ26bの肉厚に対するラップ26bに相当する部分の高さの比が15(つまり、ラップ26bに相当する部分の高さは48mmである)とされている。また、この可動スクロール基体25では、可動スクロール26と同様に、ラップ26bに相当する部分の角部25bおよび隅部25cがR形状とされている。なお、このRの半径は、0.5mmとされている。また、ラップ26bに相当する部分を設計中心を含む面で切った場合、可動スクロール26のラップ26bと同様に、ラップ26bに相当する部分の形状は、底辺と斜辺とがなす角度が1°である台形となっている。
一方、固定スクロール24は、主に、固定スクロール基体(図示せず)と、樹脂コーティング層(図示せず)とから形成されている。固定スクロール基体は、固定スクロール24と相似の関係にあり、固定スクロール24よりも若干小さく作られている。そして、この固定スクロール基体では、鏡板24aに相当する部分の厚みが8mmとされ、鏡板24aに相当する部分の厚みに対するラップ24bに相当する部分の肉厚の比が0.4(つまり、ラップ24bの肉厚は3.2mmである)とされ、ラップ24bに相当する部分の肉厚に対するラップ24bに相当する部分の高さの比が15(つまり、ラップ24bに相当する部分の高さは48mmである)とされている。また、この固定スクロール基体では、固定スクロール24と同様に、ラップ24bに相当する部分の角部(図示せず)および隅部(図示せず)がR形状とされている。なお、このRの半径は、0.5mmとされている。また、ラップ24bに相当する部分を設計中心を含む面で切った場合、固定スクロール24のラップ24bと同様に、ラップ24bに相当する部分の形状は、底辺と斜辺とがなす角度が1°である台形となっている。
〔高低圧ドーム型圧縮機の運転動作〕
駆動モータ16が駆動されると、駆動軸17が回転し、可動スクロールが自転することなく公転運転を行う。すると、低圧のガス冷媒が、吸入管19を通って圧縮室40の周縁側から圧縮室40に吸引され、圧縮室40の容積変化に伴って圧縮され、高圧のガス冷媒となる。そして、この高圧のガス冷媒は、圧縮室40の中央部から吐出通路41を通ってマフラー空間45へ吐出され、その後、連絡通路46、スクロール側通路47、ハウジング側通路48、吐出口49を通って間隙空間18へ流出し、案内板58と胴部ケーシング部11の内面との間を下側に向かって流れる。そして、このガス冷媒は、案内板58と胴部ケーシング部11の内面との間を下側に向かって流れる際に、一部が分流して案内板58と駆動モータ16との間を円周方向に流れる。なお、このとき、ガス冷媒に混入している潤滑油が分離される。一方、分流したガス冷媒の他部は、モータ冷却通路55を下側に向かって流れ、モータ下部空間にまで流れた後、反転してステータ51とロータ52との間のエアギャップ通路、または連絡通路46に対向する側(図1における左側)のモータ冷却通路55を上方に向かって流れる。その後、案内板58を通過したガス冷媒と、エアギャップ通路又はモータ冷却通路55を流れてきたガス冷媒とは、間隙空間18で合流して吐出管20の内端部36から吐出管20に流入し、ケーシング10外に吐出される。そして、ケーシング10外に吐出されたガス冷媒は、冷媒回路を循環した後、再度吸入管19を通ってスクロール圧縮機構15に吸入されて圧縮される。
〔高低圧ドーム型圧縮機の特徴〕
(1)
本実施の形態では、ハウジング23、固定スクロール24、可動スクロール26、および下部主軸受60の摺動部品が、チクソキャスティング工程、表面処理工程、樹脂コーティング工程、および最終仕上げ工程を経て製造される。このため、この本実施の形態に係る摺動部品の製造方法では、チクソキャスティング法により製造した高硬度の摺動部品基体を超精密仕上げ加工するよりも短時間で仕上げ加工を行うことできる。したがって、この摺動部品の製造方法を採用すれば、機械加工費を低減することができる。また、この摺動部品の製造方法では、チクソキャスティング法により製造した高硬度の摺動部品基体を機械加工するのではなくそれよりも硬度が小さい樹脂を機械加工することになる。このため、この摺動部品の製造方法を採用すれば、工具消耗品代を低減することができる。この結果、この摺動部品の製造方法を採用すれば、「圧縮機の摺動部品基体をチクソキャスティング法により製造し、その摺動部品基体を超精密仕上げ加工して最終的な摺動部品を得る」という圧縮機の摺動部品の製造方法よりも低コストで圧縮機の摺動部品を製造することができる。また、この摺動部品の製造方法では、チクソキャスティング法により製造した高硬度の摺動部品基体を仕上げ加工するのではなく硬度が低い樹脂部分のみを仕上げ加工する。このため、摺動部品の製造方法を採用すれば、仕上げ加工精度を向上させることができる。
(2)
本実施の形態に係る高低圧ドーム型圧縮機1では、固定スクロール24および可動スクロール26が、チクソキャスティング工程、表面処理工程、樹脂コーティング工程、および最終仕上げ工程を経て製造される。また、摺動部品基体の強度は引張強度が600MPa以上とされている。このため、本実施の形態では、固定スクロール24や可動スクロール26の歯厚を薄くして渦巻径を小さくすることができる。したがって、本実施の形態では、可動スクロール26の軸方向に作用するガス圧縮荷重を小さくすることができる。この結果、本実施の形態では、スラスト軸受損失を有効に低減することができる。また、本実施の形態では、同じ外径サイズを維持したままで可動スクロール26および固定スクロール24の歯高を高くして吸込み容積を増大させることができる。このため、本実施の形態では、圧縮機1の大容量化を実現することができる。
(3)
本実施の形態に係る摺動部品の製造方法では、表面処理工程で、摺動部品基体の表面粗度(Rz)が5〜50μmとなるように摺動部品基体が化成処理される。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法では、十分なアンカー効果を得ることができるとともに樹脂の使用量を適正に保つことができる。
(4)
本実施の形態に係る摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング工程で、摺動部品基体が設計中心を中心として回転されながら摺動部品基体上にスプレー塗装法によりPAI/PTFEコーティング液が塗布される。このため、この摺動部品の製造方法では、摺動部品基体上に容易に樹脂コーティング層25aを設けることができる。
(5)
本実施の形態に係る摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング層25aの形成にポリアミドイミド樹脂およびポリテトラフルオロエチレン樹脂が使用される。このため、本実施の形態に係る高低圧ドーム型圧縮機1では、摺動部品が高温下に曝される場合であっても摺動部品の信頼性を維持することができると同時に、摺動部材に良好な摺動性が付与される。
(6)
本実施の形態に係る摺動部品の製造方法では、樹脂コーティング工程において、表面硬度が、ナノインデンテーション法によって測定され、0.1GPa以上のものが合格品とされる。このため、本実施の形態では、最終仕上げ工程に行われる樹脂コーティング層25aの機械加工を容易することができるとともに仕上げ精度をも向上させることができる。
(7)
本実施の形態に係る可動スクロール26の溝部26dには、樹脂コーティング層25aが設けられる。このため、この溝部26dとオルダムリング39との摺動性が向上する。
(8)
本実施の形態に係る可動スクロール26の軸受部26cには、樹脂コーティング層25aが設けられる。このため、この軸受部26cと駆動軸17との摺動性が向上する。
(9)
本実施の形態では、可動スクロール基体25のうち可動スクロール26のラップ26bに相当する部分を設計中心を含む面で切った場合、可動スクロール26のラップ26bと同様に、ラップ26bの形状は、底辺と斜辺とがなす角度が1°である台形となっている。このため、このチクソキャスティング工程では、金型から可動スクロール基体25を抜きやすくなっている。したがって、本実施の形態では、可動スクロール基体25の金型の寿命を長くすることができる。
(10)
本実施の形態では、可動スクロール基体25のうち可動スクロール26のラップ26bに相当する部分の角部25bおよび隅部25cがR形状とされている。このため、このチクソキャスティング工程では、金型から可動スクロール基体25を抜きやすくなっている。したがって、本実施の形態では、可動スクロール基体25の金型の寿命を長くすることができる。また、この可動スクロール基体25では、そのRの半径が0.5mmとされている。このため、可動スクロール26の先端部には、肉厚方向に2.2mmの平坦部が確保されることになり、固定スクロール24のスラスト面とのシール性を有効に確保することができ、ガス漏れを有効に防止することができる。
(11)
本実施の形態では、固定スクロール基体のうち固定スクロール24のラップ24bに相当する部分の角部および隅部がR形状とされている。このため、このチクソキャスティング工程では、金型から固定スクロール基体を抜きやすくなっている。したがって、本実施の形態では、固定スクロール基体の金型の寿命を長くすることができる。また、この固定スクロール基体では、そのRの半径が0.5mmとされている。このため、固定スクロール24の先端部には、肉厚方向に2.2mmの平坦部が確保されることになり、可動スクロール26のスラスト面とのシール性を有効に確保することができ、ガス漏れを有効に防止することができる。
(12)
本実施の形態では、可動スクロール基体25のうち可動スクロール26の鏡板26aに相当する部分の厚みおよび固定スクロール基体のうち固定スクロール24の鏡板24aに相当する部分の厚みが8mmとされている。このため、可動スクロール基体25および固定スクロール基体では、鏡板24a,26aに凝固収縮によるピンホールが生じるのを有効に防止することができる。
(13)
本実施の形態では、可動スクロール基体25および固定スクロール基体において、鏡板24a,26aに相当する部分の厚みに対するラップ24b,26bに相当する部分の肉厚の比が0.4とされている。このため、可動スクロール基体25および固定スクロール基体のチクソキャスティング工程において空気の巻き込みを有効に防止することができる。
(14)
本実施の形態では、鏡板26aに相当する部分の厚みに対する軸受部26cに相当する部分の肉厚の比が0.5とされている。このため、可動スクロール基体25のチクソキャスティング工程において空気の巻き込みを有効に防止することができる。
〔変形例〕
(A)
先の実施の形態では密閉型の高低圧ドーム型圧縮機1が採用されたが、圧縮機は、高圧ドーム型の圧縮機であっても低圧ドーム型の圧縮機であってもよい。また、半密閉形や開放型の圧縮機であってもよい。
(B)
先の実施の形態に係る圧縮機1ではスクロール圧縮機構15が採用されたが、圧縮機構は、ロータリー圧縮機構や、レシプロ圧縮機構、スクリュー圧縮機構などであってもよい。また、スクロール圧縮機構15は、両歯や共回りタイプのスクロールであってもよい。
(C)
先の実施の形態では摺動部品基体がチクソキャスティング法により製造されたが、摺動部品基体は、パーライト可鍛鋳鉄から成っていてもよい。
(D)
先の実施の形態では摺動部品基体がチクソキャスティング法により製造されたが、摺動部品基体は、レオキャスティング法(半凝固成形法)によって製造されてもよい。
(E)
先の実施の形態では摺動部品基体がチクソキャスティング法により製造されたが、摺動部品基体は、球状黒鉛鋳鉄から成っていてもよい。
(F)
先の実施の形態では摺動部品基体がチクソキャスティング法により製造されたが、摺動部品基体は、球状炭化バナジウム鋳鉄などの球状炭化物鋳鉄から成っていてもよい。ただし、球状炭化バナジウム鋳鉄は、片状黒鉛鋳鉄に比べて被削性に劣る。したがって、このように摺動部品基体を球状炭化バナジウム鋳鉄とする場合、湯口部や湯溜り部等を除去する以外は摺動部品基体全面に樹脂コーティングを施して摺動部品基体の機械加工部位を一切なくすようにするのが好ましい。
(G)
先の実施の形態では摺動部品基体がチクソキャスティング法により製造されたが、摺動部品基体は、ロストワックス法により製造されてもよい。
(H)
先の実施の形態では摺動部品基体の表面がリン酸亜鉛パーカ処理により粗面化されたが、摺動部品基体の表面は、ブラスト処理により粗面化されてもよい。
(I)
先の実施の形態では、スプレー塗装法により摺動部品基体上に樹脂コーティング層25aが形成されたが、射出成形法により摺動部品基体上に樹脂コーティング層25aが設けられてもよい。
(J)
先の実施の形態では、スプレー塗装法により摺動部品基体上に樹脂コーティング層25aが形成されたが、ディスペンサー塗装やロールコート法により摺動部品基体上に樹脂コーティング層25aが設けられてもよい。
(K)
先の実施の形態では、コーティング樹脂として、ポリアミドイミド樹脂およびポリテトラフルオロエチレンが採用されたが、これに代えて、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、強化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂、およびエポキシ樹脂などが採用されてもかまわない。なお、これらは単独で採用されてもよいしブレンド物の一成分として採用されてもよい。
(L)
先の実施の形態では、コーティング樹脂中のフッ素樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン樹脂が採用されたが、これに代えて、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などが採用されてもかまわない。なお、これらは単独で採用されてもよいしブレンド物の一成分として採用されてもよい。
(M)
先の実施の形態ではハウジング23および下部主軸受60の全部に樹脂コーティング層25aが設けられたが、ハウジング23の軸受孔33の孔壁および下部主軸受60の下部軸受部62の壁のみに樹脂コーティング層25aが設けられるようにしてもかまわない。
(N)
先の実施の形態では固定スクロール24および可動スクロール24の両方に樹脂コーティング層25aが設けられたが、いずれか一方のみに樹脂コーティング層25aが付与されてもよい。
(O)
先の実施の形態では可動スクロール26の全部に樹脂コーティング層25aが設けられたが、樹脂コーティング層25aは、可動スクロール基体25の鏡板26aに相当する部分のラップ形成面と可動スクロール基体25のラップ26bに相当する部分とにのみ設けられてもよい。なお、かかる場合、可動スクロール基体25は可動スクロール26と相似形の関係になく、鏡板26aに相当する部分の軸受部形成側、軸受部26cに相当する部分、溝部26dに相当する部分等は最終仕上げ形状にほぼ近い形状に成形される。また、かかる場合、軸受部26cや溝部26dには機械加工が施される。また、かかる場合、駆動軸17の上部に樹脂コーティング層25aを設けるのが望ましい。
(P)
先の実施の形態では可動スクロール26の全部に樹脂コーティング層25aが設けられたが、樹脂コーティング層25aは、可動スクロール26のラップ26bに相当する部分の側面にのみ設けられてもよい。なお、かかる場合、可動スクロール基体25は可動スクロール26と相似形の関係になく、鏡板26aに相当する部分、軸受部26cに相当する部分、溝部26dに相当する部分等は最終仕上げ形状にほぼ近い形状に成形される。また、かかる場合、軸受部26cや溝部26dには機械加工が施される。また、かかる場合、駆動軸17の上部に樹脂コーティング層25aを設けるのが望ましい。
(Q)
先の実施の形態では固定スクロール24の全部に樹脂コーティング層25aが設けられたが、樹脂コーティング層25aは、固定スクロール24の鏡板24aのラップ24b形成面とラップ24bとにのみ設けられてもよい。
(R)
先の実施の形態では固定スクロール24の全部に樹脂コーティング層25aが設けられたが、樹脂コーティング層25aは、固定スクロール24のラップ24bの側面にのみ設けられてもよい。
(S)
先の実施の形態ではハウジング23、固定スクロール24、可動スクロール26、および下部主軸受60の摺動部品がチクソキャスティング工程、表面処理工程、樹脂コーティング工程、および最終仕上げ工程を経て製造されたが、駆動軸17やオルダムリング39などを同様の工程を経て製造してもよい。
(T)
先の実施の形態に係る可動スクロール26ではラップ26bを設計中心を含む面で切った場合、ラップ26bの形状が底辺と斜辺とがなす角度が1°である台形となっていたが、その形状は、底辺と斜辺とがなす角度が0.5〜2°である台形となっていてもよい。
(U)
先の実施の形態に係る固定スクロール24ではラップ24bを設計中心を含む面で切った場合、ラップ24bの形状が底辺と斜辺とがなす角度が1°である台形となっていたが、その形状は、底辺と斜辺とがなす角度が0.5〜2°である台形となっていてもよい。
(V)
先の実施の形態ではハウジング23、固定スクロール24、可動スクロール26、および下部主軸受60の摺動部品がチクソキャスティング工程、表面処理工程、樹脂コーティング工程、および最終仕上げ工程を経て製造されたが、駆動軸17、ハウジング23、固定スクロール24、可動スクロール26、オルダムリング39、および下部主軸受60のうち少なくとも1つが同工程を経て製造されてもよい。
(W)
先の実施の形態では鉄素材としてC:2.3〜2.4wt%、Si:1.95〜2.05wt%、Mn:0.6〜0.7wt%、P:<0.035wt%、S:<0.04wt%、Cr:0.00〜0.50wt%、Ni:0.50〜1.00wt%が添加されているビレットが採用されたが、鉄素材の元素割合は、本発明の趣旨を損ねない限り、任意に決定することができる。
(X)
先の実施形態では自転防止機構としてオルダムリングが採用されているが、自転防止機構としてピン、ボールカップリング、クランク等、いかなる機構が採用されてもよい。
(Y)
先の実施の形態では圧縮機1が冷媒回路内で用いられる場合を例に挙げたが、用途に付いては空調用に限定するものではなく、単体もしくはシステムに組込まれて用いられる圧縮機や送風機、過給機、ポンプなどであってもよい。
(Z)
先の実施の形態に係る圧縮機1には潤滑油が存在したが、オイルレス若しくはオイルフリー(油があってもなくてもよい)タイプの圧縮機、送風機、過給機、ポンプであってもよい。
(α)
先の実施の形態に係る可動スクロール基体25では、鏡板26aに相当する部分の厚みが8mmとされていたが、鏡板26aに相当する部分の厚みは、要求される強度から導き出される厚み以上10mm以下であればよい。
(β)
先の実施の形態に係る固定スクロール基体では、鏡板24aに相当する部分の厚みが8mmとされていたが、鏡板24aに相当する部分の厚みは要求される強度から導き出される厚み以上10mm以下であればよい。
(γ)
先の実施の形態に係る可動スクロール基体25では、Rの半径が0.5mmとされていたが、Rの半径は0.3mmよりも大きくラップ26bに相当する部分の肉厚の半分(つまり、1.6mm)未満であればよい。
(δ)
先の実施の形態に係る固定スクロール基体では、Rの半径が0.5mmとされていたが、Rの半径は0.3mmよりも大きくラップ24bに相当する部分の肉厚の半分(つまり、1.6mm)未満であればよい。
(ε)
先の実施の形態に係る可動スクロール基体25では、鏡板26aに相当する部分の厚みに対するラップ26bに相当する部分の肉厚の比が0.4とされていたが、この比は、0.2以上0.6以下であればよい。
(ζ)
先の実施の形態に係る固定スクロール基体では、鏡板24aに相当する部分の厚みに対するラップ24bに相当する部分の肉厚の比が0.4とされていたが、この比は、0.2以上0.6以下であればよい。
(η)
先の実施の形態に係る可動スクロール基体25では、鏡板26aに相当する部分の厚みに対する軸受部26cに相当する部分の肉厚の比が0.5とされていたが、この比は、0.3以上1.0未満であればよい。
本発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法を採用すれば、「圧縮機の摺動部品基体をチクソキャスティング法により製造し、その摺動部品基体を超精密仕上げ加工して最終的な摺動部品を得る」という圧縮機の摺動部品の製造方法よりも低コストで圧縮機の摺動部品を製造することができるので、本発明に係る圧縮機の摺動部品の製造方法は、低コストであって高効率な圧縮機構を有する圧縮機の製造方法として有用である。
本発明の実施の形態に係る高低圧ドーム型圧縮機の縦断面図である。 本発明の実施の形態に係る高低圧ドーム型圧縮機に採用される可動スクロールの上面図である。 本発明の実施の形態に係る高低圧ドーム型圧縮機に採用される可動スクロールの底面図である。 本発明の実施の形態に係る高低圧ドーム型圧縮機に採用される可動スクロールを設計中心線を含む面で切った時の縦断面図である。
符号の説明
17 駆動軸(完成摺動部品)
23 ハウジング(完成摺動部品)
24 固定スクロール(完成摺動部品)
25 可動スクロール基体(摺動部品基体)
25a 樹脂コーティング層
25b 角部
25c 隅部(付け根部)
26 可動スクロール(完成摺動部品)
39 オルダムリング(完成摺動部品)
60 下部主軸受(完成摺動部品)
24a,26a 鏡板(平板部)
24b,26b ラップ(薄肉渦巻部)
26c 軸受部(円筒部)
26d 溝部

Claims (39)

  1. 片状黒鉛鋳鉄よりも引張強度および引張弾性率の少なくとも一方が高い鉄製の摺動部品基体(25)を所定の型を用いて製造する摺動部品基体製造工程と、
    前記摺動部品基体の一部または全部に対して機械加工を施すことなく前記摺動部品基体上に部分的に又は全体的に樹脂コーティング層(25a)を設ける樹脂コーティング工程と、
    前記樹脂コーティング層のみを機械加工して完成摺動部品(17,23,24,26,39,60)を得る機械加工工程と、
    を備える、圧縮機の摺動部品の製造方法。
  2. 前記摺動部品基体製造工程では、チクソキャスティング法(半溶融成形法)により前記摺動部品基体が製造される、
    請求項1に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  3. 前記摺動部品基体製造工程では、レオキャスティング法(半凝固成形法)により前記摺動部品基体が製造される、
    請求項1に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  4. 前記摺動部品基体製造工程では、前記摺動部品基体がパーライト可鍛鋳鉄から成る、
    請求項1に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  5. 前記摺動部品基体製造工程では、前記摺動部品基体が球状黒鉛鋳鉄から成る、
    請求項1に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  6. 前記摺動部品基体製造工程では、前記摺動部品基体が球状炭化物鋳鉄から成る、
    請求項1に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  7. 前記摺動部品基体製造工程では、前記球状炭化物鋳鉄は、球状炭化バナジウム鋳鉄である、
    請求項6に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  8. 前記摺動部品基体製造工程では、ロストワックス法により前記摺動部品基体が製造される、
    請求項4から7のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  9. 前記摺動部品基体製造工程では、前記摺動部品基体が鍛造により製造される、
    請求項1に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  10. 前記摺動部品基体は、引張強度が600MPa以上である、
    請求項1から9のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  11. 前記摺動部品基体の表面を粗面化する表面処理工程をさらに備える、
    請求項1から10のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  12. 前記表面処理工程では、前記摺動部品基体の表面粗度(Rz)が5〜50μmとなるように前記摺動部品基体が表面処理される、
    請求項11に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  13. 前記表面処理工程では、化成処理により前記摺動部品基体の表面が粗面化される、
    請求項11または12に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  14. 前記表面処理工程では、ブラスト処理により前記摺動部品基体の表面が粗面化される、
    請求項11または12に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  15. 前記樹脂コーティング工程では、スプレー塗装法により前記摺動部品基体上に樹脂コーティング層が設けられる、
    請求項1から14のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  16. 前記樹脂コーティング工程では、前記摺動部品基体が加熱されながら前記摺動部品基体上に樹脂コーティング層が設けられる、
    請求項15に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  17. 前記樹脂コーティング工程では、前記摺動部品基体が回転させられながら前記摺動部品基体上に樹脂コーティング層が設けられる、
    請求項15または16に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  18. 前記樹脂コーティング工程では、射出成形法により前記摺動部品基体上に樹脂コーティング層が設けられる、
    請求項1から14のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  19. 前記樹脂コーティング工程では、前記樹脂コーティング層の厚みが前記摺動部品基体の輪郭精度に加工代を足した値になるように前記樹脂コーティング層が設けられる、
    請求項1から18のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  20. 前記樹脂コーティング層は、エンジニアリングプラスチックから成る、
    請求項1から19のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  21. 前記エンジニアリングプラスチックは、フッ素樹脂である、
    請求項20に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  22. 前記エンジニアリングプラスチックは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂である、
    請求項20に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  23. 前記エンジニアリングプラスチックは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂である、
    請求項20に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  24. 前記樹脂コーティング層は、ナノインデンテーション法によって測定される硬度が0.1GPa以上である、
    請求項1から23に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  25. 前記摺動部品基体は、平板部(24a,26a)と、平板部の片側の板面である第1板面から前記第1板面と垂直な方向に向かって薄肉の渦巻き形状を保持しながら延びる薄肉渦巻部(24b,26b)とを有する、
    請求項1から24のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  26. 前記樹脂コーティング工程では、前記第1板面および前記薄肉渦巻部にのみ樹脂コーティング層が設けられる、
    請求項25に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  27. 前記樹脂コーティング工程では、前記薄肉渦巻部のうち前記第1板面と交差する曲面にのみ樹脂コーティング層が設けられる、
    請求項25に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  28. 前記摺動部品基体は、前記平板部に設けられる溝部(26d)をさらに有し、
    前記樹脂コーティング工程では、少なくとも前記溝部に樹脂コーティング層が設けられる、
    請求項25に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  29. 前記摺動部品基体は、前記第1板面の裏側の板面である第2板面から前記第2板面に垂直な方向に向かって円筒状に延びる円筒部(26c)をさらに有し、
    前記樹脂コーティング工程では、少なくとも円筒部の内面に樹脂コーティング層が設けられる、
    請求項25に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  30. 前記薄肉渦巻部は、中心線を含み第1板面と直交する平面で切った時の歯の切断面が台形形状を呈する、
    請求項25から29のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  31. 前記台形の底辺と斜辺となす角度は、0.5°以上2°以下である、
    請求項30に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  32. 前記薄肉渦巻部は、角部(25b)がR形状を呈する、
    請求項25から31のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  33. 前記薄肉渦巻部は、付け根部(25c)がR形状を呈する、
    請求項25から32のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  34. 前記R形状の半径は、0.3mmよりも大きく前記薄肉渦巻部の角部側の先端の幅の半分未満である、
    請求項32または33に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  35. 前記平板部は、厚みが10mm以下である、
    請求項25から34のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  36. 前記平板部の厚みに対する前記薄肉渦巻部の肉厚の比は、0.2以上0.6以下である、
    請求項25から35のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  37. 前記平板部の厚みに対する前記円筒部の肉厚の比は、0.3以上1.0未満である、
    請求項29に記載の圧縮機の摺動部品の製造方法。
  38. 請求項1から37のいずれかに記載の圧縮機の摺動部品の製造方法により製造された摺動部品が組み込まれる圧縮機。
  39. 二酸化炭素を圧縮する、
    請求項38に記載の圧縮機。
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