ところで、例えば、スクロール圧縮機では、一般的に、渦巻の歯先先端は運転中の変形を考慮して初期隙間が開くように設定されている。これは、運転中に渦巻の歯先の一部が接触すると、歯先のほかの箇所に大きな隙間ができたり、スラスト軸受面が浮いて、機能を果たさなくなったり、可動スクロールが固定スクロールと他部品の間に挟み込まれたりして、損傷や性能低下などの問題が発生するためである。しかし、部品の加工公差や、幾何公差、組合せ公差による組立の具合や、渦巻内部の温度の上昇により、運転中に歯先の接触が起こることがある。この接触状態は、圧縮機を運転させ、固定スクロールもしくは可動スクロールの接触している方のスクロール側の歯先先端が摩耗していくことによって徐々に解消されていく(この現象を「なじみ」という)。つまり、可動スクロールや固定スクロールの硬度は高ければ高いほどよいというものではなく可及的早い時期に「なじみ」が起こるような硬度であって且つ運転中に十分な耐久性を発現することができるに足りる硬度である必要がある。なお、可動スクロールや固定スクロールの硬度が著しく高い場合、耐焼付き性に劣り、ポンプダウン運転(設置時の閉鎖弁の開き忘れや移設時の冷媒回収運転時に発生しやすい)や、ガス欠運転(冷媒の充填不足や配管からの漏れ等が起きた場合に生じる)時にスクロール圧縮機のラップにおいて歯先と歯底(特に中心部)に焼付きが生じ、圧縮機が故障して交換を余儀なくされるおそれがある。その一方、可動スクロールや固定スクロールの硬度が著しく低い場合、耐摩耗性に劣り、短時間の異常運転(ポンプダウン運転やガス欠運転など)で異常摩耗(数十μmオーダー)が発生し、通常運転時に渦巻部の先端の隙間が大きくなりすぎて性能が低下し、極端な場合にはガス漏れによる性能低下で吐出ガス温度が上昇しすぎて運転できなくなるおそれがある。また、一般に、可動スクロールや固定スクロールの渦巻部についてはエンドミル加工が必要となるため、硬度が著しく高いと工具寿命や切削抵抗が問題となりやすい。つまり、可動スクロールや固定スクロールは、機械加工を必要とする場合には、十分な被削性を確保できる硬度であって、かつ完成後に十分な耐久性を発現することができるに足りる硬度である必要がある。一方、可動スクロールや固定スクロールの硬度が著しく低いと、可動スクロールや固定スクロールの延性が大きくなりすぎるため、構成刃先ができやすく切り粉処理性が悪化するおそれがある。したがって、この点からも可動スクロールおよび固定スクロール等には適度な硬度が必要となる。
また、このような硬度の適切化については、スイング圧縮機のシリンダブロックとピストン、ロータリー圧縮機のシリンダブロックとローラーに対しても同様のことが言える。特に、スイング圧縮機ではシリンダブロックとピストンとが常に同じ位置で接触するため、シリンダブロックおよびピストンの硬度の適切化はスクロール圧縮機のスクロール部品の硬度の適切化と同等に重要である。
本発明の課題は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることのない摺動部品、およびそのような摺動部品を組み込んだ圧縮機を提供することにある。また、本発明の別の課題は、良好な被削性を示す圧縮機の摺動部品基体を提供することにある。
第1発明に係る圧縮機の摺動部品は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さく、少なくとも一部の硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い。なお、硬度の調整は、成形後の熱処理により実現可能である。なお、ここにいう「摺動部品」とは、圧縮機の摺動部品であって、例えば、スクロール圧縮機の可動スクロール、固定スクロール、軸受、回転軸(クランクシャフト)、自転防止部材、及びスライドブッシュ(スライドブロック)、並びに、スイング圧縮機やロータリー圧縮機のシリンダブロック、フロントヘッド、リアヘッド、ミドルプレート、及び回転軸(クランクシャフト)等である。なお、摺動部品の硬度がHRB90以下であると、摺動部品が耐摩耗性に劣り、短時間の異常運転(ポンプダウン運転やガス欠運転など)で異常摩耗(数十μmオーダー)が発生し、通常運転時に渦巻部の先端の隙間が大きくなりすぎて性能が低下し、極端な場合にはガス漏れによる性能低下で吐出ガス温度が上昇しすぎて運転できなくおそれがあり、また、摺動部品がスクロール部品である場合に引張強度向上による渦巻部の高引張強度化効果を十分に活かせないおそれがある。その一方、摺動部品の硬度がHRB100以上であると、摺動部品が耐焼付き性に劣り、摺動部品がスクロール部品である場合に異常運転(ポンプダウン運転やガス欠運転など)時に渦巻部に焼付きが生じ、圧縮機が故障して交換を余儀なくされるおそれがある。なお、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲は、基地組成中のフェライト面積率は50%から5%の範囲にほぼ相当する。また、その黒鉛面積率は6%から2%の範囲にほぼ相当する。また、このような圧縮機の摺動部品は、上記の鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に、その成形物を急冷して全体を白銑化させた後に熱処理に硬度が調整されることにより製造される。なお、このような圧縮機の摺動部品を半溶融ダイキャスト成形や半凝固ダイキャスト成形により成形する場合、その成形物は、ニアネットシェイプ化(製品の最終形状に近い形状とすること)することができる。一方、このような圧縮機の摺動部品を金型鋳造成形により成形する場合、その成形物は精密機械加工によって最終形状に整えられる必要がある。
ところで、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させた成形品は、熱処理することによって自由に引張強度を調整することができる。そして、この熱処理を経て製造される成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあることが判明している。ちなみに、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲は、引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。つまり、成形品の引張強度の管理は、測定しやすい硬度で代用することができることになる。また、摺動部品がスクロール部品である場合、渦巻部の設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができるというメリットもある。したがって、この圧縮機の摺動部品は、片状黒鉛鋳鉄のような摺動部品よりも高引張強度を示す。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてその摺動部品は十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。また、摺動部品が適度な硬度を示すため、摺動部品にキズが入りにくく、取り扱いが楽になるというメリットもある。以上、まとめると、この圧縮機の摺動部品は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。なお、この圧縮機の摺動部品は、上記のような成分を有する鉄が半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形された後に急冷されて全体が白銑化させられ、更にその後に熱処理されて製造されているので、各部肉厚の減少により小径化によるスラスト損失の低減や大容量化が可能となり、かつ、FC材と比較すると靭性に優れているため突発的な内圧上昇や異物噛み込みに対して損傷が発生しにくいし仮に損傷しても細かいゴミができにくく配管の洗浄が不要になるというメリット等を享受することができる。ちなみに、このような圧縮機は特に更新需要向けの圧縮機に向いていると言える。
第2発明に係る圧縮機の摺動部品は、第1発明に係る圧縮機の摺動部品であって、半溶融ダイキャスト成形により成形された後に急冷され、更にその後に熱処理されて製造される。
この圧縮機の摺動部品は、半溶融ダイキャスト成形により成形された後に急冷され、更にその後に熱処理されて製造される。このため、この摺動部品基体は、ニアネットシェイプ化されることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品は、機械加工費を削減可能で、より安価に製造することができる。
第3発明に係る圧縮機の摺動部品は、第1発明に係る圧縮機の摺動部品であって、金型鋳造成形により成形された後に急冷され、更にその後に熱処理されて製造される。
この圧縮機の摺動部品は、金型鋳造成形により成形された後に急冷され、更にその後に熱処理されて製造される。このため、成形工程中に必要とされる圧力が低くて済む。したがって、この圧縮機の摺動部品は、成形加工費が低くなり、より安価にすることができる。
第4発明に係る圧縮機の摺動部品は、第1発明から第3発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品であって、硬度がHRB90よりも高くHRB95よりも低い。なお、硬度がHRB90よりも高くHRB95よりも低い範囲は、基地組成中のフェライト面積率が50%より小さく25%より大きい範囲にほぼ相当する。また、その黒鉛面積率は6%より小さく3%より大きい範囲にほぼ相当する。
この圧縮機の摺動部品は、硬度がHRB90よりも高くHRB95よりも低い。このため、この圧縮機の摺動部品は、さらに良好な「なじみ」性を示すと共に異常運転時における焼付きの発生確率をさらに低減することができる。
第5発明に係る圧縮機の摺動部品は、第1発明から第4発明のいずれかに係る圧縮機の摺動部品であって、HRC50よりも高くHRC65よりも低い硬度を示す部分を含む。
この圧縮機の摺動部品は、HRC50よりも高くHRC65よりも低い硬度を示す部分を含む。このため、例えば、この圧縮機の摺動部品に、軸受け部など、特に硬度が求められる部分が存在する場合、その部分の硬度をHRC50よりも高くHRC65よりも低い硬度とすればその部分の摩耗を十分に抑制することができる。
第6発明に係る圧縮機の摺動部品基体は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さく、少なくとも一部の硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い。なお、ここにいう「摺動部品基体」とは、機械加工などを施して完成摺動部品を得る前の前駆体を意味する。なお、摺動部品基体の硬度がHRB90以下であると、摺動部品基体の機械加工時に構成刃先ができやすく切り粉処理性が悪化するおそれがある。その一方、摺動部品基体の硬度がHRB100以上であると、摺動部品基体の機械加工において刃具の摩耗や欠けなどの発生がしやすくなるため加工コストが増大するおそれがあり、また、切削抵抗が大きくなり切り込み深さや加工速度の制約からも加工コストが増大するおそれがある。なお、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲は、基地組成中のフェライト面積率は50%から5%の範囲にほぼ相当する。また、その黒鉛面積率は6%から2%の範囲にほぼ相当する。
上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させた成形品は、熱処理することによって自由に引張強度を調整することができる。そして、この熱処理を経て製造される成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあることが判明している。ちなみに、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲は、引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。つまり、成形品の引張強度の管理は、測定しやすい硬度で代用することができることになる。また、摺動部品基体がスクロール部品基体である場合、渦巻部の設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができるというメリットもある。したがって、この圧縮機の摺動部品基体は、片状黒鉛鋳鉄のような摺動部品基体よりも高引張強度を示す。また、本発明者の得た実験結果から、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させ、更にその後熱処理が施された摺動部品基体に機械加工を加えて摺動部品を完成させる場合には、摺動部品基体の硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にあると、良好な被削性を示すことが判明している。そして、被削性が良好であると、工具摩耗や工具の欠けが発生しにくくなって工具寿命が延び、かつ、構成刃先ができにくくなり切り粉の処理性が良好となるともに加工時間を短縮できるため加工コストが低減するというメリットを享受できる。また、摺動部品基体が適度な硬度を示すため、摺動部品基体にキズが入りにくく、取り扱いが楽になるというメリットもある。ちなみに、同引張強度のFCDに対して、硬度が低い(同じ硬度であれば引張強度が高い)ため、工具摩耗や加工時間に優れるにもかかわらず、高引張強度化できるとも言える。また、摺動部品基体を研削加工する場合、FC材と比べると表面粗度を小さくしやすいので、相手側の摺動部品(摺動部品が可動スクロールである場合は、オルダムリングやシールリング等)を攻撃しない。以上、まとめると、この圧縮機の摺動部品基体は、高引張強度であって、機械加工が必要な場合には良好な被削性を示す。
第7発明に係る圧縮機の摺動部品基体は、第6発明に係る圧縮機の摺動部品基体であって、硬度がHRB90よりも高くHRB95よりも低い。なお、硬度がHRB90よりも高くHRB95よりも低い範囲は、基地組成中のフェライト面積率が50%より小さく25%より大きい範囲にほぼ相当する。また、その黒鉛面積率は6%より小さく3%より大きい範囲にほぼ相当する。
この圧縮機の摺動部品基体は、硬度がHRB90よりも高くHRB95よりも低い。このため、この圧縮機の摺動部品は、さらに良好な被削性を示す。したがって、この圧縮機の摺動部品は、加工コストをさらに低く維持することができる。
第8発明に係る圧縮機のスクロール部品は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい圧縮機のスクロール部品であって、板部および渦巻部を備える。渦巻部は、板部の第1板面から第1板面に垂直な方向に向かって渦巻形状を保持しながら延びている。そして、少なくとも第1板面の部分の硬度と渦巻部の先端部の硬度とは、HRB90よりも高くHRB100よりも低い。
この圧縮機のスクロール部品は、上記のような成分を有する鉄が半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形された後に急冷されて全体を白銑化させられ、更にその後熱処理が施されて製造されている。このため、渦巻部の引張強度を十分に高めることができる。したがって、渦巻部の設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのスクロール部品は十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、この圧縮機のスクロール部品は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第9発明に係る圧縮機のスクロール部品は、第8発明に係る圧縮機のスクロール部品であって、インナードライブ用ピン軸部をさらに備える。インナードライブ用ピン軸部は、板部の第1板面の裏側の面である第2板面から立設される。そして、インナードライブ用ピン軸部は、表面硬度がHRC50よりも高くHRC65よりも低い。半溶融ダイキャスト成形法で成形した成形品は、焼入れ等の表面処理を施すことができる。必要であれば、局所的に焼入れすることで硬度をさらに向上させることもできる。ここでは、この特性を利用して、インナードライブ用ピン軸部のみの表面硬度をHRC50よりも高くHRC65よりも低くしている。なお、このような部分加熱(選択加熱)は高周波加熱などの手法により達成することができる。
ところで、アウタードライブ形状の可動スクロールでは、通常、クランク軸ピン軸部に焼入れをして硬度を向上させることで、耐摩耗性を向上させている。しかし、インナードライブタイプの場合は、このように選択的に硬度を向上させることは不可能であった。しかし、可動スクロールを半溶融ダイキャスト成形法により製造した場合、高周波加熱などの手法により、可動スクロールのピン軸を選択的に加熱することができる。このため、このスクロール部品は、ピン軸の耐摩耗性に優れている。
第10発明に係る圧縮機のスクロール部品は、第8発明または第9発明に係る圧縮機のスクロール部品であって、渦巻部は、第1板面からの高さが渦巻部の溝(谷の部分)幅の2倍以下である。
この圧縮機のスクロール部品では、渦巻部は、第1板面からの高さが渦巻部の溝幅の2倍以下である。このため、この圧縮機のスクロール部品は、機械加工前の取代が多くても比較的容易に機械加工を施すことができる。このため、この圧縮機のスクロール部品は、機械加工前の取代が多くてもかまわない。つまり、渦巻部のような複雑な形状部分に対応する金型部分に比較的大きな抜き勾配を設けてもかまわない。このようにすれば、金型の寿命を延ばすことができ、低い製造コストでスクロール部品を得ることができる。また、このスクロール部品が金型鋳造成形される場合、凝固時の熱収縮により容易に離型することができる。
第11発明に係る圧縮機のスクロール部品基体は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい圧縮機のスクロール部品基体であって、板部および渦巻部を備える。渦巻部は、板部の第1板面から第1板面に垂直な方向に向かって渦巻形状を保持しながら延びている。そして、少なくとも第1板面の部分の硬度と渦巻部の先端部の硬度とは、HRB90よりも高くHRB100よりも低い。
この圧縮機のスクロール部品基体は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、渦巻部の引張強度を十分に高めることができる。したがって、渦巻部の設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、スクロール部品基体を研削加工する場合、FC材から成るスクロール部品基体と比べると表面粗度を小さくしやすいので、このスクロール部品基体から相手側の摺動部品(例えば、オルダムリングやシールリング等)を攻撃しないスクロール部品を作製することができる。
第12発明に係るスイング圧縮機のシリンダブロックは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このスイング圧縮機のシリンダブロックは、少なくともシリンダ孔を形成する壁部の硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い。
このスイング圧縮機のシリンダブロックは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、シリンダブロックの引張強度を十分に高めることができる。したがって、シリンダブロックの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのシリンダブロックは十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、このスイング圧縮機のシリンダブロックは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第13発明に係るスイング圧縮機のシリンダブロックは、第12発明に係るスイング圧縮機のシリンダブロックであって、シリンダ孔と連通するブッシュ収容孔を備える。そして、ブッシュ収容孔を形成する壁部の硬度は、HRC50よりも高くHRC65よりも低い。
近年、冷凍機器メーカ等は、地球環境保護などの観点から冷凍機器などに充填する冷媒をCO2等の自然冷媒に切り換える傾向にある。このように、冷凍機器にCO2等の自然冷媒が充填されると、周知の通り、運転時に圧縮機内部が高圧化されることになる。そして、特に、スイング圧縮機では、このような運転中の圧縮機構部の高圧化に伴い、シリンダブロックに形成されるブッシュ収容孔付近部分の摩耗が著しくなるという問題があった。
しかし、このスイング圧縮機のシリンダブロックでは、ブッシュ収容孔を形成する壁部の硬度が、HRC50よりも高くHRC65よりも低い。このため、このスイング圧縮機のシリンダブロックは、ブッシュ収容孔を形成する壁部がFC材である従来の場合に比べて、著しく耐摩耗性に優れる。このため、このスイング圧縮機のシリンダブロックでは、ブッシュ収容孔付近部分の摩耗を十分に抑制することができる。
第14発明に係るスイング圧縮機のシリンダブロック基体は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このスイング圧縮機のシリンダブロック基体は、少なくともシリンダ孔を形成する壁部の硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い。
このスイング圧縮機のシリンダブロック基体は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、シリンダブロックの引張強度を十分に高めることができる。したがって、シリンダブロックの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、シリンダブロックの剛性も向上するため、ボルト締結によるシリンダのひずみが低減し、隙間がつまることで性能を向上させることができる。また、シリンダブロック基体を研削加工する場合、FC材から成るシリンダブロック基体と比べると表面粗度を小さくしやすいので、このシリンダブロック基体からピストンを攻撃しないシリンダブロックを作製することができる。
第15発明に係るロータリー圧縮機のシリンダブロックは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、ロータリー圧縮機のシリンダブロックは、少なくともシリンダ孔を形成する壁部の硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い。
このロータリー圧縮機のシリンダブロックは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、シリンダブロックの引張強度を十分に高めることができる。したがって、シリンダブロックの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのシリンダブロックは十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、このロータリー圧縮機のシリンダブロックは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第16発明に係るロータリー圧縮機のシリンダブロックは、第15発明に係るロータリー圧縮機のシリンダブロックであって、シリンダ孔と連通するベーン収容孔を備える。そして、ベーン収容孔を形成する壁部の硬度は、HRC50よりも高くHRC65よりも低い。
近年、冷凍機器メーカ等は、地球環境保護などの観点から冷凍機器などに充填する冷媒をCO2等の自然冷媒に切り換える傾向にある。このように、冷凍機器にCO2等の自然冷媒が充填されると、周知の通り、圧縮機内部は高圧化されることになる。そして、特に、ロータリー圧縮機では、このような高圧化に伴い、シリンダブロックに形成されるベーン収容孔付近部分の摩耗が著しくなるという問題があった。
しかし、このロータリー圧縮機のシリンダブロックでは、ベーン収容孔を形成する壁部の硬度が、HRC50よりも高くHRC65よりも低い。このため、このロータリー圧縮機のシリンダブロックは、ベーン収容孔を形成する壁部がFC材である従来の場合に比べて、著しく耐摩耗性に優れる。このため、このスイング圧縮機のシリンダブロックでは、ベーン収容孔付近部分の摩耗を十分に抑制することができる。
第17発明に係るロータリー圧縮機のシリンダブロック基体は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このロータリー圧縮機のシリンダブロック基体は、少なくともシリンダ孔を形成する壁部の硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い。
このロータリー圧縮機のシリンダブロック基体は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、シリンダブロックの引張強度を十分に高めることができる。したがって、シリンダブロックの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、シリンダブロック基体を研削加工する場合、FC材から成るシリンダブロック基体と比べると表面粗度を小さくしやすいので、このシリンダブロック基体からローラーを攻撃しないシリンダブロックを作製することができる。
第18発明に係る圧縮機の摺動部品は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さく、少なくとも一部のフェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい。
ところで、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させた成形品は、熱処理することによって自由に引張強度を調整することができる。そして、この熱処理を経て製造される成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度はフェライト面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、基地組成中のフェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。したがって、摺動部品がスクロール部品である場合、渦巻部の設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができるというメリットがある。したがって、この圧縮機の摺動部品は、片状黒鉛鋳鉄のような摺動部品よりも高引張強度を示す。また、本発明者の得た実験結果から、基地組成中のフェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい範囲は硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当するため、圧縮機運転時においてその摺動部品は十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。また、摺動部品が適度な硬度を示すため、摺動部品にキズが入りにくく取り扱いが楽になるというメリットもある。したがって、この圧縮機の摺動部品は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
なお、フェライト面積率は25%より大きく50%より小さい範囲であることがより好ましい。フェライト面積率が25%より大きく50%より小さい範囲は、硬度がHRB95よりも低くHRB90よりも高い範囲にほぼ相当する。このため、この圧縮機の摺動部品のフェライト面積率を25%より大きく50%より小さい範囲とした場合、この圧縮機の摺動部品は、さらに良好な「なじみ」性を示すと共に異常運転時における焼付きの発生確率をさらに低減することができる。また、この圧縮機の摺動部品が摺動部品基体である場合、その摺動部品基体は、さらに良好な被削性を示す。したがって、さほど大きな引張強度を必要としない場合、圧縮機の摺動部品基体のフェライト面積率を25%より大きく50%より小さい範囲とすることで、加工コストをさらに低く維持することができる。
第19発明に係る圧縮機のスクロール部品は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい圧縮機のスクロール部品であって、板部および渦巻部を備える。渦巻部は、板部の第1板面から第1板面に垂直な方向に向かって渦巻形状を保持しながら延びている。そして、少なくとも第1板面の部分のフェライト面積率と渦巻部の先端部のフェライト面積率とは、5%よりも大きく50%よりも小さい。
この圧縮機のスクロール部品は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、渦巻部の引張強度を十分に高めることができる。したがって、渦巻部の設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させ、更にその後熱処理された成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度はフェライト面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、基地組成中のフェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのスクロール部品は十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、この圧縮機のスクロール部品は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第20発明に係るスイング圧縮機のシリンダブロックは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このスイング圧縮機のシリンダブロックは、少なくともシリンダ孔を形成する壁部のフェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい。
このスイング圧縮機のシリンダブロックは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、シリンダブロックの引張強度を十分に高めることができる。したがって、シリンダブロックの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させ、更にその後熱処理された成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度はフェライト面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、基地組成中のフェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのシリンダブロックは十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、このスイング圧縮機のシリンダブロックは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第21発明に係るロータリー圧縮機のシリンダブロックは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このロータリー圧縮機のシリンダブロックは、少なくともシリンダ孔を形成する壁部のフェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい。
このロータリー圧縮機のシリンダブロックは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、シリンダブロックの引張強度を十分に高めることができる。したがって、シリンダブロックの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させ、更にその後熱処理された成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度はフェライト面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、基地組成中のフェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのシリンダブロックは十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、このロータリー圧縮機のシリンダブロックは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第22発明に係る圧縮機の摺動部品は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さく、少なくとも一部の黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい。
ところで、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させた成形品は、熱処理することによって自由に引張強度を調整することができる。そして、この熱処理を経て製造される成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度は黒鉛面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。したがって、摺動部品がスクロール部品である場合、渦巻部の設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができるというメリットがある。したがって、この圧縮機の摺動部品は、片状黒鉛鋳鉄のような摺動部品よりも高引張強度を示す。また、本発明者の得た実験結果から、黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい範囲は硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当するため、圧縮機運転時においてその摺動部品は十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。また、摺動部品が適度な硬度を示すため、摺動部品にキズが入りにくく取り扱いが楽になるというメリットもある。したがって、この圧縮機の摺動部品は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
なお、黒鉛面積率は3%より大きく6%より小さい範囲であることがより好ましい。黒鉛面積率が3%より大きく6%より小さい範囲は、硬度がHRB95よりも低くHRB90よりも高い範囲にほぼ相当する。このため、この圧縮機の摺動部品の黒鉛面積率を3%より大きく6%より小さい範囲とした場合、この圧縮機の摺動部品は、さらに良好な「なじみ」性を示すと共に異常運転時における焼付きの発生確率をさらに低減することができる。また、この圧縮機の摺動部品が摺動部品基体である場合、この圧縮機の摺動部品は、さらに良好な被削性を示す。したがって、さほど大きな引張強度を必要としない場合、圧縮機の摺動部品基体の黒鉛面積率を3%より大きく6%より小さい範囲とすることで、加工コストをさらに低く維持することができる。
第23発明に係る圧縮機のスクロール部品は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい圧縮機のスクロール部品であって、板部および渦巻部を備える。渦巻部は、板部の第1板面から第1板面に垂直な方向に向かって渦巻形状を保持しながら延びている。少なくとも第1板面の部分の黒鉛面積率と渦巻部の先端部の黒鉛面積率とは、2%よりも大きく6%よりも小さい。
この圧縮機のスクロール部品は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、渦巻部の引張強度を十分に高めることができる。したがって、渦巻部の設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させ、更にその後熱処理された成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度は黒鉛面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのスクロール部品は十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、この圧縮機のスクロール部品は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第24発明に係るスイング圧縮機のシリンダブロックは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さく。そして、このスイング圧縮機のシリンダブロックは、少なくともシリンダ孔を形成する壁部の黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい。
このスイング圧縮機のシリンダブロックは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、シリンダブロックの引張強度を十分に高めることができる。したがって、シリンダブロックの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させ、更にその後熱処理された成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度は黒鉛面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのシリンダブロックは十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、このスイング圧縮機のシリンダブロックは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第25発明に係るロータリー圧縮機のシリンダブロックは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このロータリー圧縮機のシリンダブロックは、少なくともシリンダ孔を形成する壁部の黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい。
このロータリー圧縮機のシリンダブロックは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、シリンダブロックの引張強度を十分に高めることができる。したがって、シリンダブロックの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させ、更にその後熱処理された成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度は黒鉛面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのシリンダブロックは十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、このロータリー圧縮機のシリンダブロックは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第26発明に係る圧縮機には、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さく、少なくとも一部の硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い摺動部品が組み込まれている。
ところで、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させた成形品は、熱処理することによって自由に引張強度を調整することができる。そして、この熱処理を経て製造される成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあることが判明している。ちなみに、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲は、引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。つまり、成形品の引張強度の管理は、測定しやすい硬度で代用することができることになる。また、摺動部品がスクロール部品である場合、渦巻部の設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができるというメリットもある。したがって、この圧縮機では、片状黒鉛鋳鉄のような摺動部品よりも高引張強度の摺動部品を利用していることになる。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてその摺動部品は十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、この圧縮機では、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じるのを防止することができる。なお、この圧縮機では、摺動部品が炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さいので、各部肉厚の減少により小径化によるスラスト損失の低減や大容量化が可能となり、かつ、FC材と比較すると靭性に優れているため突発的な内圧上昇や異物噛み込みに対して損傷が発生しにくいし仮に損傷しても細かいゴミができにくく配管の洗浄が不要になるというメリット等を享受することができる。ちなみに、このような圧縮機は特に更新需要向けの圧縮機に向いていると言える。
第27発明に係る圧縮機には、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さく、少なくとも一部のフェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい摺動部品が組み込まれている。
この圧縮機では、摺動部品が炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、摺動部品がスクロール部品である場合、渦巻部の引張強度を十分に高めることができる。したがって、渦巻部の設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させ、更にその後熱処理された成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度はフェライト面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、基地組成中のフェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのスクロール部品は十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、この圧縮機は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第28発明に係る圧縮機には、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さく、少なくとも一部の黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい摺動部品が組み込まれている。
この圧縮機では、摺動部品が炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、摺動部品がスクロール部品である場合、渦巻部の引張強度を十分に高めることができる。したがって、渦巻部の設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させ、更にその後熱処理された成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度はフェライト面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのスクロール部品は十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、この圧縮機は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第29発明に係るスイング圧縮機のピストンは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このスイング圧縮機のピストンは、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い。
このスイング圧縮機のピストンは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、ピストンの引張強度を十分に高めることができる。したがって、ピストンの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのピストンは十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、このスイング圧縮機のピストンは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第30発明に係るスイング圧縮機のピストン基体は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このスイング圧縮機のピストン基体は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い。
このスイング圧縮機のピストン基体は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、ピストンの引張強度を十分に高めることができる。したがって、ピストンの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、ピストン基体を研削加工する場合、FC材から成るピストン基体と比べると表面粗度を小さくしやすいので、このピストン基体からシリンダブロックを攻撃しないピストンを作製することができる。
第31発明に係るスイング圧縮機のピストンは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このスイング圧縮機のピストンは、フェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい。
このスイング圧縮機のピストンは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、ピストンの引張強度を十分に高めることができる。したがって、ピストンの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させ、更にその後熱処理された成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度はフェライト面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、基地組成中のフェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのピストンは十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、このスイング圧縮機のピストンは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第32発明に係るスイング圧縮機のピストンは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このスイング圧縮機のピストンは、黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい。
このスイング圧縮機のピストンは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、ピストンの引張強度を十分に高めることができる。したがって、ピストンの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させ、更にその後熱処理された成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度は黒鉛面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのピストンは十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、このスイング圧縮機のピストンは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第33発明に係るロータリー圧縮機のローラーは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このロータリー圧縮機のローラーは、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い。
このロータリー圧縮機のローラーは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、ローラーの引張強度を十分に高めることができる。したがって、ローラーの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのローラーは十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、このロータリー圧縮機のローラーは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第34発明に係るロータリー圧縮機のローラー基体は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このロータリー圧縮機のローラー基体は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い。
このロータリー圧縮機のローラー基体は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、ローラーの引張強度を十分に高めることができる。したがって、ローラーの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、ローラー基体を研削加工する場合、FC材から成るローラー基体と比べると表面粗度を小さくしやすいので、このローラー基体からシリンダブロックを攻撃しないローラーを作製することができる。
第35発明に係るロータリー圧縮機のローラーは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このロータリー圧縮機のローラーは、フェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい。
このロータリー圧縮機のローラーは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、ローラーの引張強度を十分に高めることができる。したがって、ローラーの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させ、更にその後熱処理された成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度はフェライト面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、基地組成中のフェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのローラーは十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、このロータリー圧縮機のローラーは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第36発明に係るロータリー圧縮機のローラーは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。そして、このロータリー圧縮機のローラーは、黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい。
このロータリー圧縮機のローラーは、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さい。このため、ローラーの引張強度を十分に高めることができる。したがって、ローラーの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、上記のような成分を有する鉄を半溶融ダイキャスト成形や、半凝固ダイキャスト成形、金型鋳造成形した後に急冷して全体を白銑化させ、更にその後熱処理された成形品の引張強度はその硬度と比例関係にあり、また、その硬度は黒鉛面積率と所定の関係にあることが判明している。ちなみに、黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さい範囲は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にほぼ相当し、また、その引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてそのローラーは十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、このロータリー圧縮機のローラーは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第37発明に係る圧縮機は、第26発明から第28発明のいずれかに係る圧縮機であって、二酸化炭素(CO2)冷媒に対応可能である。
この圧縮機は、二酸化炭素(CO2)冷媒に対応可能である。このため、この圧縮機は、地球環境問題に貢献することができる。
第1発明に係る圧縮機の摺動部品は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。なお、この圧縮機の摺動部品は、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さいので、各部肉厚の減少により小径化によるスラスト損失の低減や大容量化が可能となり、かつ、FC材と比較すると靭性に優れているため突発的な内圧上昇や異物噛み込みに対して損傷が発生しにくいし仮に損傷しても細かいゴミができにくく配管の洗浄が不要になるというメリット等を享受することができる。ちなみに、このような圧縮機は特に更新需要向けの圧縮機に向いていると言える。
第2発明に係る圧縮機の摺動部品は、摺動部品基体がニアネットシェイプ化されることができる。したがって、この圧縮機の摺動部品は、機械加工費を削減可能で、より安価に製造することができる。
第3発明に係る圧縮機の摺動部品は、成形工程中に必要とされる圧力が低くて済む。したがって、この圧縮機の摺動部品は、成形加工費が低くなり、より安価にすることができる。
第4発明に係る圧縮機の摺動部品は、さらに良好な「なじみ」性を示すと共に異常運転時における焼付きの発生確率をさらに低減することができる。
第5発明に係る圧縮機の摺動部品では、軸受け部など、特に硬度が求められる部分が存在する場合、その部分の硬度をHRC50よりも高くHRC65よりも低い硬度とすればその部分の摩耗を十分に抑制することができる。
第6発明に係る圧縮機の摺動部品基体は、高引張強度であって、機械加工が必要な場合には良好な被削性を示す。
第7発明に係る圧縮機の摺動部品基体は、さらに良好な被削性を示す。したがって、この圧縮機の摺動部品は、加工コストをさらに低く維持することができる。
第8発明に係る圧縮機のスクロール部品は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第9発明に係る圧縮機のスクロール部品は、ピン軸の耐摩耗性に優れている。
第10発明に係る圧縮機のスクロール部品は、機械加工前の取代が多くても比較的容易に機械加工を施すことができる。このため、この圧縮機のスクロール部品は、機械加工前の取代が多くてもかまわない。つまり、渦巻部のような複雑な形状部分に対応する金型部分に比較的大きな抜き勾配を設けてもかまわない。このようにすれば、金型の寿命を延ばすことができ、低い製造コストでスクロール部品を得ることができる。また、このスクロール部品が金型鋳造成形される場合、凝固時の熱収縮により容易に離型することができる。
第11発明に係る圧縮機のスクロール部品基体からは、相手側の摺動部品(例えば、オルダムリングやシールリング等)を攻撃しないスクロール部品を作製することができる。
第12発明に係るスイング圧縮機のシリンダブロックは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第13発明に係るスイング圧縮機のシリンダブロックは、ブッシュ収容孔を形成する壁部がFC材である従来の場合に比べて、著しく耐摩耗性に優れる。このため、このスイング圧縮機のシリンダブロックでは、ブッシュ収容孔付近部分の摩耗を十分に抑制することができる。
第14発明に係るスイング圧縮機のシリンダブロック基体は、引張強度を十分に高めることができる。したがって、シリンダブロックの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、シリンダブロックの剛性も向上するため、ボルト締結によるシリンダのひずみが低減し、隙間がつまることで性能を向上させることができる。また、シリンダブロック基体を研削加工する場合、FC材から成るシリンダブロック基体と比べると表面粗度を小さくしやすいので、このシリンダブロック基体から、ピストンを攻撃しないシリンダブロックを作製することができる。
第15発明に係るロータリー圧縮機のシリンダブロックは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第16発明に係るロータリー圧縮機のシリンダブロックは、ベーン収容孔を形成する壁部がFC材である従来の場合に比べて、著しく耐摩耗性に優れる。このため、このスイング圧縮機のシリンダブロックでは、ベーン収容孔付近部分の摩耗を十分に抑制することができる。
第17発明に係るロータリー圧縮機のシリンダブロック基体は、引張強度を十分に高めることができる。したがって、シリンダブロックの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、シリンダブロック基体を研削加工する場合、FC材から成るシリンダブロック基体と比べると表面粗度を小さくしやすいので、このシリンダブロック基体からローラーを攻撃しないシリンダブロックを作製することができる。
第18発明に係る圧縮機の摺動部品は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第19発明に係る圧縮機のスクロール部品は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第20発明に係るスイング圧縮機のシリンダブロックは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第21発明に係るロータリー圧縮機のシリンダブロックは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第22発明に係る圧縮機の摺動部品は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第23発明に係る圧縮機のスクロール部品は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第24発明に係るスイング圧縮機のシリンダブロックは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第25発明に係るロータリー圧縮機のシリンダブロックは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第26発明に係る圧縮機では、片状黒鉛鋳鉄のような摺動部品よりも高引張強度の摺動部品を利用していることになる。また、本発明者の得た実験結果から、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低い範囲にある場合、圧縮機運転時においてその摺動部品は十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないことが明らかにされている。このため、この圧縮機では、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じるのを防止することができる。なお、この圧縮機では、炭素含有量が2.0wt%〜2.7wt%であり、ケイ素含有量が1.0wt%〜3.0wt%であり、残部が不可避不純物を含む鉄から成ると共に黒鉛が片状黒鉛鋳鉄の片状黒鉛よりも小さいので、各部肉厚の減少により小径化によるスラスト損失の低減や大容量化が可能となり、かつ、FC材と比較すると靭性に優れているため突発的な内圧上昇や異物噛み込みに対して損傷が発生しにくいし仮に損傷しても細かいゴミができにくく配管の洗浄が不要になるというメリット等を享受することができる。
第27発明に係る圧縮機は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第28発明に係る圧縮機は、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第29発明に係るスイング圧縮機のピストンは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第30発明に係るスイング圧縮機のピストン基体は、引張強度を十分に高めることができる。したがって、ピストンの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、ピストン基体を研削加工する場合、FC材から成るピストン基体と比べると表面粗度を小さくしやすいので、このピストン基体からシリンダブロックを攻撃しないピストンを作製することができる。
第31発明に係るスイング圧縮機のピストンは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第32発明に係るスイング圧縮機のピストンは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第33発明に係るロータリー圧縮機のローラーは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第34発明に係るロータリー圧縮機のローラー基体は、引張強度を十分に高めることができる。したがって、ローラーの設計自由度が大幅に向上し、小径化や大容量化することができる。また、ローラー基体を研削加工する場合、FC材から成るローラー基体と比べると表面粗度を小さくしやすいので、このローラー基体からシリンダブロックを攻撃しないローラーを作製することができる。
第35発明に係るロータリー圧縮機のローラーは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第36発明に係るロータリー圧縮機のローラーは、高引張強度であって、運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない。
第37発明に係る圧縮機は、地球環境問題に貢献することができる。
<第1実施形態>
第1実施形態に係る高低圧ドーム型スクロール圧縮機1は、蒸発器や、凝縮器、膨張機構などと共に冷媒回路を構成し、その冷媒回路中のガス冷媒を圧縮する役割を担うものであって、図1に示されるように、主に、縦長円筒状の密閉ドーム型のケーシング10、スクロール圧縮機構15、オルダムリング39、駆動モータ16、下部主軸受60、吸入管19、および吐出管20から構成されている。以下、この高低圧ドーム型スクロール圧縮機1の構成部品についてそれぞれ詳述していく。
〔高低圧ドーム型スクロール圧縮機の構成部品の詳細〕
(1)ケーシング
ケーシング10は、略円筒状の胴部ケーシング部11と、胴部ケーシング部11の上端部に気密状に溶接される椀状の上壁部12と、胴部ケーシング部11の下端部に気密状に溶接される椀状の底壁部13とを有する。そして、このケーシング10には、主に、ガス冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構15と、スクロール圧縮機構15の下方に配置される駆動モータ16とが収容されている。このスクロール圧縮機構15と駆動モータ16とは、ケーシング10内を上下方向に延びるように配置されるクランク軸17によって連結されている。そして、この結果、スクロール圧縮機構15と駆動モータ16との間には、間隙空間18が生じる。
(2)スクロール圧縮機構
スクロール圧縮機構15は、図1に示されるように、主に、ハウジング23と、ハウジング23の上方に密着して配置される固定スクロール24と、固定スクロール24に噛合する可動スクロール26とから構成されている。以下、このスクロール圧縮機構15の構成部品についてそれぞれ詳述していく。
a)ハウジング
ハウジング23は、その外周面において周方向の全体に亘って胴部ケーシング部11に圧入固定されている。つまり、胴部ケーシング部11とハウジング23とは全周に亘って気密状に密着されている。このため、ケーシング10の内部は、ハウジング23下方の高圧空間28とハウジング23上方の低圧空間29とに区画されていることになる。また、このハウジング23には、上端面が固定スクロール24の下端面と密着するように、固定スクロール24がボルト38により締結固定されている。また、このハウジング23には、上面中央に凹設されたハウジング凹部31と、下面中央から下方に延設された軸受部32とが形成されている。そして、この軸受部32には、上下方向に貫通する軸受孔33が形成されており、この軸受孔33にクランク軸17が軸受34を介して回転自在に嵌入されている。
なお、本実施の形態において、このハウジング23は、新規かつ特殊な製造方法により製造される。この製造方法については、下記「摺動部品の製造方法」の欄で詳述する。
b)固定スクロール
固定スクロール24は、主に、鏡板24aと、鏡板24aの下面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ24bとから構成されている。鏡板24aには、圧縮室40(後述)に連通する吐出通路41と、吐出通路41に連通する拡大凹部42とが形成されている。吐出通路41は、鏡板24aの中央部分において上下方向に延びるように形成されている。拡大凹部42は、鏡板24aの上面に凹設された水平方向に広がる凹部により構成されている。そして、固定スクロール24の上面には、この拡大凹部42を塞ぐように蓋体44がボルト44aにより締結固定されている。そして、拡大凹部42に蓋体44が覆い被せられることによりスクロール圧縮機構15の運転音を消音させる膨張室からなるマフラー空間45が形成されている。固定スクロール24と蓋体44とは、図示しないパッキンを介して密着させることによりシールされている。
なお、本実施の形態において、この固定スクロール24は、新規かつ特殊な製造方法により製造される。この製造方法については、下記「摺動部品の製造方法」の欄で詳述する。
c)可動スクロール
可動スクロール26は、図1〜図4に示されるように、主に、鏡板26aと、鏡板26aの上面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ26bと、鏡板26aの下面に形成された軸受部26cと、鏡板26aの両端部に形成される溝部26dとから構成されている。そして、この可動スクロール26は、溝部にオルダムリング39(後述)が嵌め込まれることによりハウジング23に支持される。また、軸受部26cにはクランク軸17の上端が嵌入される。可動スクロール26は、このようにスクロール圧縮機構15に組み込まれることによってクランク軸17の回転により自転することなくハウジング23内を公転する。そして、可動スクロール26のラップ26bは固定スクロール24のラップ24bに噛合させられており、両ラップ24b,26bの接触部の間には圧縮室40が形成されている。そして、この圧縮室40では、可動スクロール26の公転に伴い、両ラップ24b,26b間の容積が中心に向かって収縮する。本実施形態に係る高低圧ドーム型スクロール圧縮機1では、このようにしてガス冷媒を圧縮するようになっている。
なお、本実施の形態において、この可動スクロール26は、新規かつ特殊な製造方法により製造される。この製造方法については、下記「摺動部品の製造方法」の欄で詳述する。
d)その他
また、このスクロール圧縮機構15には、固定スクロール24とハウジング23とに亘り、連絡通路46が形成されている。この連絡通路46は、固定スクロール24に切欠形成されたスクロール側通路47と、ハウジング23に切欠形成されたハウジング側通路48とが連通するように形成されている。そして、連絡通路46の上端、即ちスクロール側通路47の上端は拡大凹部42に開口し、連絡通路46の下端、即ちハウジング側通路48の下端はハウジング23の下端面に開口している。つまり、このハウジング側通路48の下端開口により、連絡通路46の冷媒を間隙空間18に流出させる吐出口49が構成されていることになる。
(3)オルダムリング
オルダムリング39は、上述したように、可動スクロールの自転運動を防止するための部材であって、ハウジング23に形成されるオルダム溝(図示せず)に嵌め込まれている。なお、このオルダム溝は、長円形状の溝であって、ハウジング23において互いに対向する位置に配設されている。
(4)駆動モータ
駆動モータ16は、本実施の形態において直流モータであって、主に、ケーシング10の内壁面に固定された環状のステータ51と、ステータ51の内側に僅かな隙間(エアギャップ通路)をもって回転自在に収容されたローター52とから構成されている。そして、この駆動モータ16は、ステータ51の上側に形成されているコイルエンド53の上端がハウジング23の軸受部32の下端とほぼ同じ高さ位置になるように配置されている。
ステータ51には、ティース部に銅線が巻回されており、上方および下方にコイルエンド53が形成されている。また、ステータ51の外周面には、ステータ51の上端面から下端面に亘り且つ周方向に所定間隔をおいて複数個所に切欠形成されているコアカット部が設けられている。そして、このコアカット部により、胴部ケーシング部11とステータ51との間に上下方向に延びるモータ冷却通路55が形成されている。
ローター52は、上下方向に延びるように胴部ケーシング部11の軸心に配置されたクランク軸17を介してスクロール圧縮機構15の可動スクロール26に駆動連結されている。また、連絡通路46の吐出口49を流出した冷媒をモータ冷却通路55に案内する案内板58が、間隙空間18に配設されている。
(5)下部主軸受
下部主軸受60は、駆動モータ16の下方の下部空間に配設されている。この下部主軸受60は、胴部ケーシング部11に固定されるとともにクランク軸17の下端側軸受を構成し、クランク軸17を支持している。
なお、本実施の形態において、この下部主軸受60は、新規かつ特殊な製造方法により製造される。この製造方法については、下記「摺動部品の製造方法」の欄で詳述する。
(6)吸入管
吸入管19は、冷媒回路の冷媒をスクロール圧縮機構15に導くためのものであって、ケーシング10の上壁部12に気密状に嵌入されている。吸入管19は、低圧空間29を上下方向に貫通すると共に、内端部が固定スクロール24に嵌入されている。
(7)吐出管
吐出管20は、ケーシング10内の冷媒をケーシング10外に吐出させるためのものであって、ケーシング10の胴部ケーシング部11に気密状に嵌入されている。そして、この吐出管20は、上下方向に延びる円筒形状に形成されハウジング23の下端部に固定される内端部36を有している。なお、吐出管20の内端開口、即ち流入口は、下方に向かって開口されている。
〔摺動部品の製造方法〕
本実施の形態に係る高低圧ドーム型スクロール圧縮機1において、クランク軸17、ハウジング23、固定スクロール24、可動スクロール26、オルダムリング39、および下部主軸受60は摺動部品であり、本実施の形態では、ハウジング23、固定スクロール24、可動スクロール26、および下部主軸受60の摺動部品が下記製造方法により製造される。
(1)原材料
本実施の形態において上記摺動部品の原材料となる鉄素材としては、C:2.3〜2.4wt%、Si:1.95〜2.05wt%、Mn:0.6〜0.7wt%、P:<0.035wt%、S:<0.04wt%、Cr:0.00〜0.50wt%、Ni:0.50〜1.00wt%が添加されているビレットが採用される。なお、ここにいう重量割合は全量に対する割合である。また、ここに「ビレット」とは、一端、上記成分の鉄素材が溶融炉において溶融された後に、連続鋳造装置により円柱形状等に成形された最終成形前の素材を意味する。なお、ここで、CおよびSiの含有量は、引張強度および引張弾性率が片状黒鉛鋳鉄より高くなること、および複雑な形状の摺動部品基体を成形するのに適切な流動性を備えていることの両方を満足するように決定される。また、Niの含有量は、金属組織の靭性を向上させて成形時の表面クラックを防止するのに適切な金属組成を構成するように決定されている。
(2)製造工程
本実施の形態に係る摺動部品は、半溶融ダイキャスト成形工程、熱処理工程、および最終仕上げ工程を経て製造される。以下、各工程について詳述する。
a)半溶融ダイキャスト成形工程
半溶融ダイキャスト成形工程では、先ず、ビレットを高周波加熱することにより半溶融状態とする。次いで、その半溶融状態のビレットを所定の金型に注入する際に、ダイキャストマシンで所定圧力を加えながらビレットを所望の形状に成形し摺動部品基体を得る。そして、摺動部品基体を金型から取り出して急冷させると、その摺動部品基体の金属組織は、全体的に白銑化したものとなる。なお、摺動部品基体は最終的に得られる摺動部品よりも若干大きく、この摺動部品基体は、後の最終仕上げ工程において加工代が取り除かれて最終的な摺動部品となる。
b)熱処理工程
熱処理工程では、半溶融ダイキャスト成形工程後の摺動部品基体が熱処理される。この熱処理工程において、摺動部品基体の金属組織は、白銑化組織からパーライト/フェライト基地、粒状黒鉛から成る金属組織へと変化する。なお、この白銑化組織の黒鉛化、パーライト化については熱処理温度、保持時間、冷却速度などを調節することにより調節することができる。例えば、Honda R&D Technical Review の Vol.14 No.1 の論文「鉄の半溶融成形技術の研究」にあるように、950℃で60分保持した後に0.05〜0.10℃/secの冷却速度で炉中にて徐冷することにより、500MPa〜700MPa程度の引張強度、HB150(HRB81(SAE J 417硬さ換算表からの換算値))〜HB200(HRB96(SAE J 417硬さ換算表からの換算値))程度の硬度を有する金属組織を得ることができる。このような金属組織はフェライト中心であるために軟らかく被削性に優れるが、機械加工時に構成刃先を形成して刃具寿命を低下させる可能性がある。また、1000℃で60分保持した後に空冷し、さらに最初の温度より少し低い温度で所定時間保持した後に空冷することにより、600MPa〜900MPa程度の引張強度、HB200(HRB96(SAE J 417硬さ換算表からの換算値))〜HB250(HRB105,HRC26(SAE J 417硬さ換算表からの換算値、なおHRB105は試験タイプの有効な実用範囲を超えるため参考値である))程度の硬度を有する金属組織を得ることができる。このような金属組織において、片状黒鉛鋳鉄と同等の硬度を有するものは、片状黒鉛鋳鉄と同等の被削性を有し、同等の延性・靭性を有する球状黒鉛鋳鉄と比較すると被削性に優れている。また、1000℃で60分保持した後に油冷し、さらに最初の温度より少し低い温度で所定時間保持した後に空冷することにより、800MPa〜1300MPa程度の引張強度、HB250(HRB105,HRC26(SAE J 417硬さ換算表からの換算値、なおHRB105は試験タイプの有効な実用範囲を超えるため参考値である))〜HB350(HRB122,HRC41(SAE J 417硬さ換算表からの換算値、なおHRB122は試験タイプの有効な実用範囲を超えるため参考値である))程度の硬度を有する金属組織を得ることができる。このような金属組織はパーライト中心であるために硬く、被削性に劣るが、耐摩耗性に優れている。ただし、硬すぎることによる摺動相手材への攻撃性を有する可能性がある。
なお、本実施の形態において、この熱処理工程では、摺動部品基体の硬度がHRB90(HB176(SAE J 417硬さ換算表からの換算値))よりも高くHRB100(HB219(SAE J 417硬さ換算表からの換算値))よりも低くなるような条件下で熱処理される。なお、摺動部品基体が半溶融ダイキャスト成形法により製造される場合、摺動部品基体の硬度はその摺動部品基体の引張強度と比例関係になることが明らかとなっているので、このときの摺動部品基体の引張強度は600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。
c)最終仕上げ工程
最終仕上げ工程では、摺動部品基体が機械加工されて摺動部品の完成となる。なお、摺動部品基体が可動スクロール基体や固定スクロール基体である場合、渦巻部はエンドミル加工される。
〔試験結果〕
(1)耐摩耗性試験および「なじみ」性試験
先ず、半溶融ダイキャスト法によって作製した素材から図9に示されるようなピン形状のテストピース412aおよびディスク形状のテストピース412bを作製し、その半溶融ダイキャスト法によって作製した素材の熱処理条件を種々変化させることによって硬度の異なるテストピース412a,412bを作製した。そして、それぞれのテストピース412a,412bを、図9に示されるようなピン/ディスク試験装置401にセットして、容器410内に貯められているR410A冷媒とエーテル油(100℃)との混合液416中、平均摺動速度2.0m/s及び一定面圧荷重20MPaの条件下でホルダ413にセットされているピン形状のテストピース412aをディスク状のテストピース412bと2時間摺動させたときの摩耗量を測定した。なお、このときの面圧は、下側のシャフト411bに負荷する荷重によって調整されている。また、上側のローターシャフト411aと容器410との間にはメカニカルシール414が施されている。また、このときの摩耗量はピン摩耗量とディスク摩耗深さとの合計値とした。
この実験から得られたデータを図5に示される棒グラフにまとめた。グラフの向かって左側のエリアには、半溶融ダイキャスト成形法によって製造されたテストピース(以下、半溶融ダイキャスト成形テストピースという)の硬度と摩耗量の関係が示されている。また、グラフの向かって右側のエリアには、参考として、従来素材であるFC250のテストピース(以下、FC250テストピースという)の硬度と摩耗量が示されている。なお、このFC250のテストピースは、従来の圧縮機において、良好な「なじみ」性を示す硬度(HRB101.0)を有する。また、この硬度を示すFC250テストピースの基地組織には95%以上のパーライト組織が含まれている。
ここで、左側のエリアを見てみると、半溶融ダイキャスト成形テストピースの硬度とその摩耗量とは、ほぼ比例関係にあることがわかる。また、各半溶融ダイキャスト成形テストピースとFC250テストピースとを比較すると、HRB103.7の硬度を有する半溶融ダイキャスト成形テストピースはFC250テストピースよりも著しく摩耗量が少なく、HRB98.0の硬度を有する半溶融ダイキャスト成形テストピースはFC250テストピースとほぼ同等の摩耗量となり、HRB87.4の硬度を有する半溶融ダイキャスト成形テストピースはFC250テストピースよりも著しく摩耗量が多いことがわかる。つまり、HRB98.0の半溶融ダイキャスト成形テストピースがHRB100以上のFC250テストピースと同等の「なじみ」性を有していることが分かる。これは、摩耗という現象が硬度のみならず基地組織にも依存することを示唆している。つまり、硬度が同等であったとしても基地組織に占めるパーライト組織の割合が高い場合には、その成形品は「なじみ」性に劣るということである。そして、ここで、良好な「なじみ」性を実現できる硬度は、経験的に、5μmよりも大きく13μmよりも小さい摩耗量を有する硬度である。このため、半溶融ダイキャスト成形テストピースでは、硬度がHRB90よりも大きくHRB100よりも小さいものが「なじみ性」に優れる。なお、これは、図6に示される半溶融ダイキャスト成形品のなじみ曲線でも支持される。図6から明らかなように、HRB100以上では十分になじむまでに100時間を要しているが、HRB100以下では十数時間でほぼ完全になじんでいる。
(2)耐焼付き性試験
先ず、半溶融ダイキャスト法によって作製した素材から図9に示されるようなピン形状のテストピース412aおよびディスク形状のテストピース412bを作製し、その半溶融ダイキャスト法によって作製した素材の熱処理条件を種々変化させることによって硬度の異なるテストピース412a,412bを作製した。そして、それぞれのテストピース412a,412bを、図9に示されるようなピン/ディスク試験装置401にセットして、容器410内に貯められているR410A冷媒とエーテル油(100℃)との混合液416中、平均摺動速度2.0m/sの条件下、15.6MPaずつステップ荷重(面圧)を印加し、トルク検出器415により摩擦トルクが急増した時点を焼付き発生時点とし、そのときの面圧を焼付き発生面圧とした。なお、このときの面圧は、下側のシャフト411bに負荷する荷重によって調整されている。また、上側のローターシャフト411aと容器410との間にはメカニカルシール414が施されている。
この実験から得られたデータを図7に示される棒グラフにまとめた。このグラフには、半溶融ダイキャスト成形法によって製造されたテストピース(以下、半溶融ダイキャスト成形テストピースという)の硬度と焼付き発生面圧との関係が示されている。
図7から明らかなように、半溶融ダイキャスト成形テストピースの硬度がHRB98.0とHRB103.8との間のところで、焼付き発生面圧が著しく低下している。つまり、これは半溶融ダイキャスト成形テストピースの硬度がHRB100以上になると、焼付きが生じやすくなることを示している。つまり、半溶融ダイキャスト成形法を利用して可動スクロールや固定スクロールを製造する場合、圧縮機の異常運転時の可動スクロールや固定スクロールの焼付きを防止するためには、可動スクロールや固定スクロールの硬度をHRB100未満とする必要がある。
(3)延性試験
図8には、半溶融ダイキャスト成形法によって製造された成形品の硬度と引張伸びとの関係を示した。なお、引張伸びは、JIS Z2241に示される試験方法に従って測定した。また、この引張試験において、テストピースの形状は、JIS Z2201に示される4号もしくは5号試験片の形状とした。
図8から明らかなように、半溶融ダイキャスト成形法により製造される成形品(以下、半溶融ダイキャスト成形品という)において、その硬度と伸びは逆比例の関係にある。そして、従来のFC250やFCD600の成形品(以下、従来成形品という)と比較した場合、半溶融ダイキャスト成形品は従来成形品に比べて著しく高い延性を示すことがわかる。なお、ここで、半溶融ダイキャスト成形品の場合、引張伸びが14%以上になると機械加工において構成刃先ができやすく切り粉処理性が悪化する事実があり、引張伸びが8%以下となると割れが生じた場合(半溶融ダイキャスト成形品が可動スクロールや固定スクロールである場合、液バック(液圧縮)による割れが考えられる)に細かいゴミが出やすくなるという事実があり、延性向上によるこの防止効果を十分に享受できないという事実がある。このため、半溶融ダイキャスト成形品は理想的には8%よりもおおきく14%よりも小さい引張伸びを有するのが好ましい。したがって、半溶融ダイキャスト成形品の硬度は、HRB90よりも大きくHRB100よりも小さいのが理想的である。
(4)切削性試験
図10には、半溶融ダイキャスト成形法によって製造された成形品の切込み量と切削抵抗力の関係を示した。なお、この切削性試験は、切削刃としてエンドミルを用い、ドライ条件下で、エンドミルの回転速度を6000rpm、送り速度を1800mm/min−0.05/刃と設定し、ダウンカット方式で行った。また、このときの半溶融ダイキャスト成形品の硬度はHRB98であり、リファレンスのFC250成形品の硬度はHRB101であった。
図10から明らかなように、半溶融ダイキャスト成形品では、FC250成形品と同様に、切込み量が大きくなると切削抵抗力が比例的に増加するが、その絶対値はFC250成形品よりも小さくなる。
(5)刃具摩耗試験
図16には、半溶融ダイキャスト成形法によって製造された成形品の刃具摩耗量の比較を示した。なお、この刃具摩耗試験は、切削性試験と同様に、切削刃としてエンドミルを用い、ドライ条件下で、エンドミルの回転速度を8000rpm、送り速度を1920mm/min−0.04/刃と設定し、ダウンカット方式で行った。また、図16中のデータは棒の上方に記載されている切削距離まで刃具を回転させたときの値である。また、このときの半溶融ダイキャスト成形品の硬度はHRB93〜95およびHRB98〜100であり、リファレンスのFC250成形品の硬度はHRB101であった。
図16から明らかなように、硬度93〜95の半溶融ダイキャスト成形品とFC250成形品とを比較すると、硬度93〜95の半溶融ダイキャスト成形品の方がFC250成形品よりも切削距離が長いにも関わらず両者の刃具摩耗量は外周刃、底刃ともにぼぼ同じである。したがって、硬度93〜95の半溶融ダイキャスト成形品はFC250成形品と同等かそれよりも優れた被削性を有する。また、硬度93〜95の半溶融ダイキャストと硬度98〜100の半溶融ダイキャスト成形品とを比較すると、硬度93〜95の半溶融ダイキャスト成形品の方が硬度98〜100の半溶融ダイキャスト成形品よりも切削距離が長いにも関わらず底刃の摩耗量が少ない。すわなち、硬度93〜95の半溶融ダイキャスト成形品は、硬度98〜100の半溶融ダイキャスト成形品よりも著しく被削性に優れている。
〔高低圧ドーム型スクロール圧縮機の運転動作〕
駆動モータ16が駆動されると、クランク軸17が回転し、可動スクロールが自転することなく公転運転を行う。すると、低圧のガス冷媒が、吸入管19を通って圧縮室40の周縁側から圧縮室40に吸引され、圧縮室40の容積変化に伴って圧縮され、高圧のガス冷媒となる。そして、この高圧のガス冷媒は、圧縮室40の中央部から吐出通路41を通ってマフラー空間45へ吐出され、その後、連絡通路46、スクロール側通路47、ハウジング側通路48、吐出口49を通って間隙空間18へ流出し、案内板58と胴部ケーシング部11の内面との間を下側に向かって流れる。そして、このガス冷媒は、案内板58と胴部ケーシング部11の内面との間を下側に向かって流れる際に、一部が分流して案内板58と駆動モータ16との間を円周方向に流れる。なお、このとき、ガス冷媒に混入している潤滑油が分離される。一方、分流したガス冷媒の他部は、モータ冷却通路55を下側に向かって流れ、モータ下部空間にまで流れた後、反転してステータ51とローター52との間のエアギャップ通路、または連絡通路46に対向する側(図1における左側)のモータ冷却通路55を上方に向かって流れる。その後、案内板58を通過したガス冷媒と、エアギャップ通路又はモータ冷却通路55を流れてきたガス冷媒とは、間隙空間18で合流して吐出管20の内端部36から吐出管20に流入し、ケーシング10外に吐出される。そして、ケーシング10外に吐出されたガス冷媒は、冷媒回路を循環した後、再度吸入管19を通ってスクロール圧縮機構15に吸入されて圧縮される。
〔高低圧ドーム型スクロール圧縮機の特徴〕
(1)
第1実施形態では、可動スクロール26および固定スクロール24が半溶融ダイキャスト成形工程および熱処理工程を経て製造される。このため、従来の砂型鋳造方法により製造される片状黒鉛鋳鉄製の可動スクロールや固定スクロールよりも高引張強度かつ高硬度の可動スクロールや固定スクロールを容易に得ることができる。
(2)
第1実施形態では、可動スクロール基体および固定スクロール基体が半溶融ダイキャスト成形工程および熱処理工程を経て製造され、その硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも小さくなるように調整される。そして、このとき、可動スクロール基体および固定スクロール基体の引張強度は、600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法を採用すれば、可動スクロール26及び固定スクロール24の鏡板24a,26aや渦巻部24b,26bを薄肉化することができる。したがって、スクロール圧縮機1を小径化することができ、引いてはスラスト損失の低減や大容量化が可能となる。また、アンローダピストンによる容量制御機においても、高圧縮比運転時に容量制御を行った場合には、渦巻に発生する応力が通常運転時(フルロード時)よりも大きくなるが、強度が高くなっている上、靭性に富むため、渦巻に損傷などが発生する可能性を小さくすることができる。また、このような可動スクロール26及び固定スクロール24は、FC材と比較すると靭性に優れているため、突発的な内圧上昇や異物噛み込みに対して損傷が発生しにくい。仮に損傷しても細かいゴミができにくく配管の洗浄が不要になる。また、砂型鋳造方法により製造される片状黒鉛鋳鉄のような可動スクロール基体や固定スクロール基体を機械加工して最終的な可動スクロールや固定スクロールとする場合、通常、加工による歪みを除去するため、可動スクロール基体や固定スクロール基体を何度か掴み代えている。しかし、このような引張強度が高い可動スクロール基体や固定スクロール基体を機械加工する場合、加工による歪みを心配する必要がない。したがって、本製造方法を採用すれば、この掴み代えにかかっているコストを削減する
ことができる。
(3)
半溶融ダイキャスト成形法により製造された摺動部品が熱処理される場合、その摺動部品の引張強度はその硬度と比例関係にあることが判明している。したがって、本発明の実施の形態に係る摺動部品については、硬度を測定するだけで引張強度を保証することができる。
(4)
第1実施形態の熱処理工程では、可動スクロール基体および固定スクロール基体の硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低くなるような熱処理が行われる。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法を採用すると、圧縮機運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがない可動スクロール26および固定スクロール24を製造することができる。また、硬度がこの範囲である場合、可動スクロール基体および固定スクロール基体の被削性が良好になるとともに可動スクロール基体および固定スクロール基体にキズが入りにくく取り扱いが楽になる。このため、工具摩耗や工具の欠けが発生しにくくなって工具寿命が延び、かつ、構成刃先ができにくくなり切り粉の処理性が良好となるともに加工時間を短縮できるため加工コストが低減する。ちなみに、同引張強度のFCDに対して、硬度が低い(同じ硬度であれば引張強度が高い)ため、工具摩耗や加工時間に優れるにもかかわらず、高引張強度化できるとも言える。また、FC材と比べると表面粗度を小さくしやすいので、可動スクロール26が、オルダムリング39やシールリング(図示せず)等を攻撃するおそれがなくなる。
〔変形例〕
(A)
第1実施形態では密閉型の高低圧ドーム型スクロール圧縮機1が採用されたが、圧縮機は、高圧ドーム型の圧縮機であっても低圧ドーム型の圧縮機であってもよい。また、半密閉形や開放型の圧縮機であってもよい。
(B)
第1実施形態に係るスクロール圧縮機1ではスクロール圧縮機構15が採用されたが、圧縮機構は、ロータリー圧縮機構や、レシプロ圧縮機構、スクリュー圧縮機構などであってもよい。また、スクロール圧縮機構15は、両歯や共回りタイプのスクロールであってもよい。
(C)
第1実施形態では鉄素材としてC:2.3〜2.4wt%、Si:1.95〜2.05wt%、Mn:0.6〜0.7wt%、P:<0.035wt%、S:<0.04wt%、Cr:0.00〜0.50wt%、Ni:0.50〜1.00wt%が添加されているビレットが採用されたが、鉄素材の元素割合は、本発明の趣旨を損ねない限り、任意に決定することができる。
(D)
第1実施形態では自転防止機構としてオルダムリング39が採用されているが、自転防止機構としてピン、ボールカップリング、クランク等、いかなる機構が採用されてもよい。
(E)
第1実施形態ではスクロール圧縮機1が冷媒回路内で用いられる場合を例に挙げたが、用途に付いては空調用に限定するものではなく、単体もしくはシステムに組込まれて用いられる圧縮機や送風機、過給機、ポンプなどであってもよい。
(F)
第1実施形態に係るスクロール圧縮機1には潤滑油が存在したが、オイルレス若しくはオイルフリー(油があってもなくてもよい)タイプの圧縮機、送風機、過給機、ポンプであってもよい。
(G)
第1実施形態ではハウジング23、固定スクロール24、可動スクロール26、および下部主軸受60の摺動部品が半溶融ダイキャスト成形工程、熱処理工程、および最終仕上げ工程を経て製造されたが、クランク軸17やオルダムリング39などを同様の工程を経て製造してもよい。
(H)
第1実施形態ではハウジング23、固定スクロール24、可動スクロール26、および下部主軸受60の摺動部品が半溶融ダイキャスト成形工程、熱処理工程、および最終仕上げ工程を経て製造されたが、クランク軸17、ハウジング23、固定スクロール24、可動スクロール26、オルダムリング39、および下部主軸受60のうち少なくとも1つが同工程を経て製造されてもよい。
(I)
第1実施形態に係る高低圧ドーム型スクロール圧縮機1は、アウタードライブ形式のスクロール圧縮機であったが、本発明に係るスクロール圧縮機はインナードライブ形式のスクロール圧縮機であってもよい。また、かかる場合、熱処理工程後に、可動スクロールのインナードライブ用ピン軸部を高周波加熱などの処方により選択的に加熱してその表面硬度をHRC50よりも高くHRC65よりも低くなるようにしてもよい。このようにすれば、インナードライブ用ピン軸部の耐摩耗性を大きく向上させることができる。
(J)
第1実施形態では、摺動部品基体が最終仕上げ工程を経て最終的な摺動部品とされたが、半溶融ダイキャスト成形工程においてほぼ完成品に近いニアネットシェイプ化が可能な場合は、最終仕上げ工程を省略してもよい。
(K)
第1実施形態の熱処理工程では、摺動部品基体の全部を熱処理したが、摺動部品基体が可動スクロール26や固定スクロール24である場合は、耐焼付き性や、耐摩耗性、なじみ性に対して重要となる箇所である鏡板側の表面(スラスト表面)部分とラップ24b,26bの先端部のみ、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低くするようにしてもよいし、フェライト面積率が5%よりも大きく50%よりも小さくなるようにしてもよいし、黒鉛面積率が2%よりも大きく6%よりも小さくなるようにしてもよい。
(L)
第1実施形態に係る摺動部品は半溶融ダイキャスト成形工程、熱処理工程及び最終仕上げ工程を経て製造されたが、このような摺動部品は金型鋳造成形工程、熱処理工程及び最終仕上げ工程を経て製造されてもかまわない。なお、原材料は同一である。
金型鋳造成形工程では、図17に示されるように、固定型302及び可動型301によって構成される鋳型空間303に、高温をかけられることにより液体状とされた原材料が押し流される。そして、この後、固定型302及び可動型301を介して鋳型空間303内の液体状の原材料が急冷される。すると、鋳型空間303内の液体状の原材料は、凝固して固体状の成形物310となる。なお、このとき、この成形物310は、熱収縮する。このため、この成形物310は容易に離型することができる。そして、この後、この固体状の成形物310の不要部分が切断される(以下、この切断されてできた成形物310を予備成形物301aという)。次に、熱処理工程において、予備成形物301aが熱処理され、その硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低く調整される。なお、このとき、目標硬度をHRB90〜HRB95の範囲としてもよい。そして、最終仕上げ工程において、熱処理工程を終えた予備成形物301aが精密機械加工されて、最終製品310bとなる。なお、本変形例において、熱処理工程及び最終仕上げ工程は、第1実施形態に係る熱処理工程及び最終仕上げ工程と同様に行われる。
<第2実施形態>
第2実施形態に係るスイング圧縮機101は、図11に示されるように、2シリンダタイプのスイング圧縮機であって、主に、縦長円筒状の密閉ドーム型のケーシング110、スイング圧縮機構115、駆動モータ116、吸入管119、吐出管120、およびマフラー160から構成されている。なお、このスイング圧縮機101には、ケーシング110にアキュームレータ(気液分離器)210が取り付けられている。以下、このスイング圧縮機101の構成部品についてそれぞれ詳述していく。
〔スイング圧縮機の構成部品の詳細〕
(1)ケーシング
ケーシング110は、略円筒状の胴部ケーシング部111と、胴部ケーシング部111の上端部に気密状に溶接される椀状の上壁部112と、胴部ケーシング部111の下端部に気密状に溶接される椀状の底壁部113とを有する。そして、このケーシング110には、主に、ガス冷媒を圧縮するスイング圧縮機構115と、スイング圧縮機構115の上方に配置される駆動モータ116とが収容されている。このスイング圧縮機構115と駆動モータ116とは、ケーシング110内を上下方向に延びるように配置されるクランク軸117によって連結されている。
(2)スイング圧縮機構
スイング圧縮機構115は、図11および図13に示されるように、主に、クランク軸117と、ピストン121と、ブッシュ122と、フロントヘッド123と、第1シリンダブロック124と、ミドルプレート125と、第2シリンダブロック126と、リアヘッド127とから構成されている。なお、本実施の形態において、フロントヘッド123、第1シリンダブロック124、ミドルプレート125、第2シリンダブロック126、及びリヤヘッド127は、複数本のボルト190によって一体に締結されている。また、本実施の形態において、このスイング圧縮機構115はケーシング110の底部に貯められている潤滑油Lに浸漬されており、スイング圧縮機構115には、潤滑油Lが差圧給油されるようになっている。以下、このスイング圧縮機構115の構成部品についてそれぞれ詳述していく。
a)第1シリンダブロック
第1シリンダブロック124には、図12に示されるように、シリンダ孔124a、吸入孔124b、吐出路124c、ブッシュ収容孔124d、およびブレード収容孔124eが形成されている。シリンダ孔124aは、図11および図12に示されるように、板厚方向に沿って貫通する円柱状の孔である。吸入孔124bは、外周壁面からシリンダ孔124aに貫通している。吐出路124cは、シリンダ孔124aを形作る円筒部の内周側の一部が切り欠かれることによって形成されている。ブッシュ収容孔124dは、板厚方向に沿って貫通する孔であって、板厚方向に沿って見た場合において吸入孔124bと吐出路124cとの間に配置されている。ブレード収容孔124eは、板厚方向に沿って貫通する孔であって、ブッシュ収容孔124dと連通している。
そして、この第1シリンダブロック124は、シリンダ孔124aにクランク軸117の偏心軸部117aおよびピストン121のローラー部121aが収容され、ブッシュ収容孔124dにピストン121のブレード部121bおよびブッシュ122が収容され、ブレード収容孔124eにピストン121のブレード部121bが収容された状態で吐出路124cがフロントヘッド123側を向くようにしてフロントヘッド123とミドルプレート125とに嵌合される(図13参照)。この結果、スイング圧縮機構115には第1シリンダ室Rc1が形成され、この第1シリンダ室Rc1はピストン121によって吸入孔124bと連通する吸入室と、吐出路124cと連通する吐出室とに区画されることになる。
b)第2シリンダブロック
第2シリンダブロック126には、第1シリンダブロック124と同様、図12に示されるように、シリンダ孔126a、吸入孔126b、吐出路126c、ブッシュ収容孔126d、およびブレード収容孔126eが形成されている。シリンダ孔126aは、図11および図12に示されるように、板厚方向に沿って貫通する円柱状の孔である。吸入孔126bは、外周壁面からシリンダ孔126aに貫通している。吐出路126cは、シリンダ孔126aを形作る円筒部の内周側の一部が切り欠かれることによって形成されている。ブッシュ収容孔126dは、板厚方向に沿って貫通する孔であって、板厚方向に沿って見た場合において吸入孔126bと吐出路126cとの間に配置されている。ブレード収容孔126eは、板厚方向に沿って貫通する孔であって、ブッシュ収容孔126dと連通している。
そして、この第2シリンダブロック126は、シリンダ孔126aにクランク軸117の偏心軸部117bおよびピストン121のローラー部121aが収容され、ブッシュ収容孔126dにピストン121のブレード部121bおよびブッシュ122が収容され、ブレード収容孔126eにピストン121のブレード部121bが収容された状態で吐出路126cがリアヘッド127側を向くようにしてリアヘッド127とミドルプレート125とに嵌合される(図13参照)。この結果、スイング圧縮機構115には第2シリンダ室Rc2が形成され、この第2シリンダ室Rc2はピストン121によって吸入孔126bと連通する吸入室と、吐出路126cと連通する吐出室とに区画されることになる。
c)クランク軸
クランク軸117には、一方の端部に2つの偏心軸部117a,117bが設けられている。なお、この2つの偏心軸部117a,117bは、互いの偏心軸がクランク軸117の中心軸を挟んで対向するように形成されている。また、このクランク軸117は、偏心軸部117a,117bが設けられていない側が駆動モータ116のローター152に固定されている。
d)ピストン
ピストン121は、略円筒状のローラー部121aと、ローラー部121aの径方向外側に突出するブレード部121bとを有する。なお、ローラー部121aは、クランク軸117の偏心軸部117a,117bに嵌合された状態でシリンダブロック124,126のシリンダ孔124a,126aに挿入される。これにより、ローラー部121aは、クランク軸117が回転すると、クランク軸117の回転軸を中心とした公転運動を行う。また、ブレード部121bは、ブッシュ収容孔124d、126dおよびブレード収容孔124e,126eに収容される。これによりブレード部121bは、揺動すると同時に長手方向に沿って進退運動を行うことになる。
e)ブッシュ
ブッシュ122は、略半円柱状の部材であって、ピストン121のブレード部121bを挟み込むようにしてブッシュ収容孔124d,126dに収容される。
f)フロントヘッド
フロントヘッド123は、第1シリンダブロック124の吐出路124c側を覆う部材であって、ケーシング110に嵌合されている。このフロントヘッド123には軸受部123aが形成されており、この軸受部123aにはクランク軸117が挿入される。また、このフロントヘッド123には、第1シリンダブロック124に形成された吐出路124cを通って流れてくる冷媒ガスを吐出管120に導くための開口123bが形成されている。そして、この開口123bは、冷媒ガスの逆流を防止するための吐出弁(図示せず)により閉塞されたり開放されたりする。
g)リアヘッド
リアヘッド127は、第2シリンダブロック126の吐出路126c側を覆う。このリアヘッド127には軸受部127aが形成されており、この軸受部127aにはクランク軸117が挿入される。また、このリアヘッド127には、第2シリンダブロック126に形成された吐出路126cを通って流れてくる冷媒ガスを吐出管120に導くための開口(図示せず)が形成されている。そして、この開口は、冷媒ガスの逆流を防止するための吐出弁(図示せず)により閉塞されたり開放されたりする。
h)ミドルプレート
ミドルプレート125は、第1シリンダブロック124と第2シリンダブロック126との間に配置され、第1シリンダ室Rc1と第2シリンダ室Rc2とを区画する。
(3)駆動モータ
駆動モータ116は、本実施の形態において直流モータであって、主に、ケーシング110の内壁面に固定された環状のステータ151と、ステータ151の内側に僅かな隙間(エアギャップ通路)をもって回転自在に収容されたロータ152とから構成されている。
ステータ151には、ティース部(図示せず)に銅線が巻回されており、上方および下方にコイルエンド153が形成されている。また、ステータ151の外周面には、ステータ151の上端面から下端面に亘り且つ周方向に所定間隔をおいて複数個所に切欠形成されているコアカット部(図示せず)が設けられている。
ロータ152には、回転軸に沿うようにクランク軸117が固定されている。
(4)吸入管
吸入管119は、ケーシング110を貫通するように設けられており、一端が第1シリンダブロック124および第2シリンダブロック126に形成される吸入孔124b,126bに嵌め込まれており、他端がアキュームレータ210に嵌め込まれている。
(5)吐出管
吐出管120は、ケーシング110の上壁部112を貫通するように設けられている。
(6)マフラー
マフラー160は、冷媒ガスの吐出音を消音するためのものであって、フロントヘッド123に取り付けられている。
〔摺動部品の製造方法〕
本実施の形態に係るスイング圧縮機101において、ピストン121は、第1実施形態の摺動部品の製造方法と同様の製造方法で製造される。なお、このとき、熱処理工程では、ピストン121は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低くなるような条件下で熱処理される。
また、本実施の形態に係るスイング圧縮機101において、シリンダブロック124,126は、第1実施形態の摺動部品の製造方法と同様の製造方法で製造された後、ブッシュ収容孔124d,126dに高周波加熱器が挿入され、ブッシュ収容孔124d,126d周辺の部分の硬度がHRC50よりも高くHRC65よりも低くなるようにシリンダブロック124,126に焼入れ処理が施される。なお、焼入れ処理前のシリンダブロック124,126は、硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低くなるような条件下で熱処理される。なお、最終仕上げ工程は最後に行われる。
なお、ピストン121及びシリンダブロック124,126は、第1実施形態の変形例(L)に記載される製造方法に従って製造されてもかまわない。
〔スイング圧縮機の運転動作〕
駆動モータ116が駆動されると、偏心軸部117a,117bがクランク軸117周りに偏心回転して、この偏心軸部117a,117bに嵌合されたローラー部121aが、外周面をシリンダ室Rc1,Rc2の内周面に接して公転する。そして、ローラー部121aがシリンダ室Rc1,Rc2内で公転するに伴って、ブレード部121bは両側面をブッシュ122によって保持されながら進退動する。そうすると、吸入口119から低圧の冷媒ガスが吸入室に吸入されて、吐出室で圧縮されて高圧にされた後、吐出路124c,126cから高圧の冷媒ガスが吐出される。
〔スイング圧縮機の特徴〕
(1)
第2実施形態では、シリンダブロック124,126およびピストン121が半溶融ダイキャスト成形工程および熱処理工程を経て製造される。このため、従来の砂型鋳造方法により製造される片状黒鉛鋳鉄製のシリンダブロックやピストンよりも高引張強度かつ高剛性のシリンダブロックやピストンを容易に得ることができる(熱処理を施すことによりFC250より高強度・高剛性となるため)。
(2)
第2実施形態では、シリンダブロック124,126およびピストン121が半溶融ダイキャスト成形工程および熱処理工程を経て製造され、その硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも小さくなるように調整される。そして、このとき、シリンダブロック124,126およびピストン121は、600MPaから900MPaの範囲にほぼ相当する。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法を採用すれば、シリンダブロック124,126およびピストン121を薄肉化することができる。したがって、スイング圧縮機101を小径化することができ、引いてはシリンダブロック124,126やピストン121の摩耗の低減や圧縮容量の大容量化が可能となる。
(3)
第2実施形態の熱処理工程では、シリンダブロック基体およびピストン基体の硬度がHRB90よりも高くHRB100よりも低くなるような熱処理が行われる。このため、この圧縮機の摺動部品の製造方法を採用すると、圧縮機運転時において十分な耐久性を発現することができ、かつ、可及的早い時期に「なじみ」が起こりやすく、かつ、異常運転時において焼付きが生じることがないシリンダブロック124,126およびピストン121を製造することができる。また、硬度がこの範囲である場合、シリンダブロック基体およびピストン基体の被削性が良好になるとともにシリンダブロック基体およびピストン基体にキズが入りにくく取り扱いが楽になる。このため、工具摩耗や工具の欠けが発生しにくくなって工具寿命が延び、かつ、構成刃先ができにくくなり切り粉の処理性が良好となるともに加工時間を短縮できるため加工コストが低減する。ちなみに、同引張強度のFCDに対して、硬度が低い(同じ硬度であれば引張強度が高い)ため、工具摩耗や加工時間に優れるにもかかわらず、高引張強度化できるとも言える。
(4)
第2実施形態では、シリンダブロック124,126が半溶融ダイキャスト成形工程および熱処理工程を経て製造された後、さらにブッシュ収容孔124d,126dに高周波加熱器が挿入され、ブッシュ収容孔124d,126d周辺の部分の硬度がHRC50よりも高くHRC65よりも低くなるように焼入れ処理が施される。このため、CO2等の自然冷媒が吸入されてもブッシュ収容孔124d,126d周辺の部分の摩耗が抑制される。
〔変形例〕
(A)
第2実施形態では、スイング圧縮機101のシリンダブロック124,126およびピストン121の硬度がHRB90よりも大きくHRB100よりも小さくなるようにシリンダブロック124,126およびピストン121が熱処理された後、ブッシュ収容孔124d,126dに高周波加熱器が挿入され、ブッシュ収容孔124d,126d周辺の部分の硬度がHRC50よりも高くHRC65よりも低くなるように焼入れ処理が施された。ここで、このような硬度調節技術を図15に示されるようなロータリー圧縮機201のシリンダブロック224やローラー221に適用してもよい。つまり、ロータリー圧縮機201のシリンダブロック224およびローラー221の硬度がHRB90よりも大きくHRB100よりも小さくなるようにシリンダブロック224およびローラー221が熱処理された後、ベーン収容孔224dに高周波加熱器が挿入され、ベーン収容孔224d周辺の部分の硬度がHRC50よりも高くHRC65よりも低くなるようにシリンダブロック224に焼入れ処理が施されてもよいということである(図14参照)。また、ベーン222が同様の方法で製造されてもよい。なお、図14および図15において、符号224aはシリンダ孔を示し、符号224cは吐出路を示し、符号224bは吸入孔を示し、符号217はクランク軸を示し、符号217aはクランク軸の偏心軸部を示し、符号223はスプリングを示し、符号Rc3はシリンダ室を示している。
なお、ローラー221及びシリンダブロック224は、第1実施形態の変形例(L)に記載される製造方法に従って製造されてもかまわない。
(B)
第2実施形態に係るスイング圧縮機101は2シリンダタイプのスイング圧縮機であったが、1シリンダタイプのスイング圧縮機であってもよい。
(C)
第2実施形態に係るスイング圧縮機では、シリンダブロック124,126およびピストン121が半溶融ダイキャスト成形工程および熱処理工程を経て製造されたが、さらにクランクシャフト117や、フロントヘッド123、リアヘッド127、ミドルプレート125等の摺動部品が同様の工程を経て製造されてもよい。