JP2007263104A - 圧縮機のスクロール部材およびそれを用いた圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 圧縮機1のスクロール部材26は、材料を成形型80に注入して成形される圧縮機1のスクロール部材26である。スクロール部材26は、平板状の鏡板26aと、ラップ26bとを備えている。ラップ26bは、鏡板26aに形成されている。ラップ26bは、渦巻き形状を有する。成形型80に対する抜き勾配は、ラップの巻き角に応じて変化している。
【選択図】図6
Description
少なくともラップが樹脂でコーティングされている。
以下、実施形態のスクロール部材から製造された固定スクロールおよび可動スクロールを用いた圧縮機について、高低圧ドーム型圧縮機1を例に挙げて説明する。
(1)ケーシング
ケーシング10は、略円筒状の胴部ケーシング部11と、胴部ケーシング部11の上端部に気密状に溶接される椀状の上壁部12と、胴部ケーシング部11の下端部に気密状に溶接される椀状の底壁部13とを有する。そして、このケーシング10には、主に、ガス冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構15と、スクロール圧縮機構15の下方に配置される駆動モータ16とが収容されている。このスクロール圧縮機構15と駆動モータ16とは、ケーシング10内を上下方向に延びるように配置される駆動軸17によって連結されている。そして、この結果、スクロール圧縮機構15と駆動モータ16との間には、間隙空間18が生じる。
スクロール圧縮機構15は、図1に示されるように、主に、ハウジング23と、ハウジング23の上方に密着して配置される固定スクロール124と、固定スクロール124に噛合する可動スクロール126とから構成されている。以下、このスクロール圧縮機構15の構成部品についてそれぞれ詳述していく。
固定スクロール124は、図1〜図3に示す素材である固定スクロール部材24の形状と同じく、主に、鏡板124aと、鏡板124aの下面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ124bとから構成されている。
可動スクロール126は、図1および図4、図5に示す素材である可動スクロール部材26の形状と同じく、主に、鏡板126aと、鏡板126aの上面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ126bと、鏡板126aの下面に形成された軸受部126cと、鏡板126aの両端部に形成される溝部26d(図5の可動スクロール部材26の溝部26d参照)とから構成されている。可動スクロール126は、アウタードライブの可動スクロールである。すなわち、可動スクロール126は、駆動軸17の外側に嵌合する軸受部26cを有している。
ハウジング23は、その外周面において周方向の全体に亘って胴部ケーシング部11に圧入固定されている。つまり、胴部ケーシング部11とハウジング23とは全周に亘って気密状に密着されている。このため、ケーシング10の内部は、ハウジング23下方の高圧空間28とハウジング23上方の低圧空間29とに区画されていることになる。また、このハウジング23には、上端面が固定スクロール部材24の下端面と密着するように、固定スクロール部材24がボルト38により締結固定されている。また、このハウジング23には、上面中央に凹設されたハウジング凹部31と、下面中央から下方に延設された軸受部32とが形成されている。そして、この軸受部32には、上下方向に貫通する軸受孔33が形成されており、この軸受孔33に駆動軸17が軸受34を介して回転自在に嵌入されている。
また、このスクロール圧縮機構15には、固定スクロール124とハウジング23とに亘り、連絡通路46が形成されている。この連絡通路46は、固定スクロール124に切欠形成されたスクロール側通路47と、ハウジング23に切欠形成されたハウジング側通路48とが連通するように形成されている。そして、連絡通路46の上端、即ちスクロール側通路47の上端は拡大凹部42に開口し、連絡通路46の下端、即ちハウジング側通路48の下端はハウジング23の下端面に開口している。つまり、このハウジング側通路48の下端開口により、連絡通路46の冷媒を間隙空間18に流出させる吐出口49が構成されていることになる。
オルダムリング39は、上述したように、可動スクロール126の自転運動を防止するための部材であって、ハウジング23に形成されるオルダム溝(図示せず)に嵌め込まれている。なお、このオルダム溝は、長円形状の溝であって、ハウジング23において互いに対向する位置に配設されている。
駆動モータ16は、実施形態において直流モータであって、主に、ケーシング10の内壁面に固定された環状のステータ51と、ステータ51の内側に僅かな隙間(エアギャップ通路)をもって回転自在に収容されたロータ52とから構成されている。そして、この駆動モータ16は、ステータ51の上側に形成されているコイルエンド53の上端がハウジング23の軸受部32の下端とほぼ同じ高さ位置になるように配置されている。
下部主軸受60は、駆動モータ16の下方の下部空間に配設されている。この下部主軸受60は、胴部ケーシング部11に固定されるとともに駆動軸17の下端側軸受を構成し、駆動軸17を支持している。
吸入管19は、冷媒回路の冷媒をスクロール圧縮機構15に導くためのものであって、ケーシング10の上壁部12に気密状に嵌入されている。吸入管19は、低圧空間29を上下方向に貫通すると共に、内端部が固定スクロール124に嵌入されている。
吐出管20は、ケーシング10内の冷媒をケーシング10外に吐出させるためのものであって、ケーシング10の胴部ケーシング部11に気密状に嵌入されている。そして、この吐出管20は、上下方向に延びる円筒形状に形成されハウジング23の下端部に固定される内端部36を有している。なお、吐出管20の内端開口、即ち流入口は、下方に向かって開口されている。
実施形態に係る高低圧ドーム型圧縮機1において、駆動軸17、ハウジング23、固定スクロール部材24、可動スクロール部材26、オルダムリング39、および下部主軸受60は摺動部品であり、実施形態では、ハウジング23、固定スクロール部材24、可動スクロール部材26、および下部主軸受60の摺動部品が下記製造方法により製造される。
a)鉄素材
実施形態に係る鉄素材としては、C:2.3〜2.4wt%、Si:1.95〜2.05wt%、Mn:0.6〜0.7wt%、P:<0.035wt%、S:<0.04wt%、Cr:0.00〜0.50wt%、Ni:0.50〜1.00wt%が添加されているビレットが採用される。なお、ここにいう重量割合は全量に対する割合である。また、ここに「ビレット」とは、一端、上記成分の鉄素材が溶融炉において溶融された後に、連続鋳造装置により円柱形状等に成形された最終成形前の素材を意味する。なお、ここで、CおよびSiの含有量は、引張強度および引張弾性率が片状黒鉛鋳鉄より高くなること、および複雑な形状の摺動部品基体を成形するのに適切な流動性を備えていることの両方を満足するように決定される。また、Niの含有量は、金属組織の靭性を向上させて成形時の表面クラックを防止するのに適切な金属組成を構成するように決定されている。
半溶融成形法の一種であるチクソキャスティング工程では、固定スクロール部材24および可動スクロール部材26をチクソキャスティングにより成形する。
つぎに、高低圧ドーム型圧縮機1の運転動作について簡単に説明する。まず、駆動モータ16が駆動されると、駆動軸17が回転し、可動スクロール126が自転することなく公転運転を行う。すると、低圧のガス冷媒が、吸入管19を通って圧縮室40の周縁側から圧縮室40に吸引され、圧縮室40の容積変化に伴って圧縮され、高圧のガス冷媒となる。そして、この高圧のガス冷媒は、圧縮室40の中央部から吐出穴41を通ってマフラー空間45へ吐出され、その後、連絡通路46、スクロール側通路47、ハウジング側通路48、吐出口49を通って間隙空間18へ流出し、案内板58と胴部ケーシング部11の内面との間を下側に向かって流れる。そして、このガス冷媒は、案内板58と胴部ケーシング部11の内面との間を下側に向かって流れる際に、一部が分流して案内板58と駆動モータ16との間を円周方向に流れる。なお、このとき、ガス冷媒に混入している潤滑油が分離される。一方、分流したガス冷媒の他部は、モータ冷却通路55を下側に向かって流れ、モータ下部空間にまで流れた後、反転してステータ51とロータ52との間のエアギャップ通路、または連絡通路46に対向する側(図1における左側)のモータ冷却通路55を上方に向かって流れる。その後、案内板58を通過したガス冷媒と、エアギャップ通路又はモータ冷却通路55を流れてきたガス冷媒とは、間隙空間18で合流して吐出管20の内端部36から吐出管20に流入し、ケーシング10外に吐出される。そして、ケーシング10外に吐出されたガス冷媒は、冷媒回路を循環した後、再度吸入管19を通ってスクロール圧縮機構15に吸入されて圧縮される。
(1)
実施形態における固定スクロール部材24および可動スクロール部材26では、ラップ24b、26bにおける成形型に対する抜き勾配がラップ24b、26bの巻き角に応じて変化しているので、強度や品質に応じてラップ形状が決められ、素材の無駄をなくすことが可能である。
実施形態における固定スクロール部材24および可動スクロール部材26は、ラップ24b、26bの渦巻き形状が、ラップ24b、26bの中心に近い巻き始めの部分P0、Q0における抜き勾配が外側の巻き終わりの部分P4、Q4の抜き勾配よりも大きくなっている。したがって、固定スクロール部材24および可動スクロール部材26をチクソキャスティングにより成形する際に、離型時の渦巻きの中心付近における金型にかかるストレスが小さくなる。その結果、金型の寿命を長くすることが可能になる。
また、実施形態では、チクソキャスティング等の半溶融成形法によって、固定スクロール部材24および可動スクロール部材26を成形しており、成形型を用いた他の成形法(例えば、鋳造など)と比較して、金型にかかる圧力が高くなるが、ラップ24b、26bの中心に近い巻き始めの部分P0、Q0における抜き勾配が大きくなっているので、チクソキャスティングの場合でも金型の変形を抑制して金型の長寿命化が可能になる。
また、実施形態では、チクソキャスティングにおける金型の変形を抑制することができるので、成形される固定スクロール部材24および可動スクロール部材26の割れの発生も抑制することが可能である。
さらに、実施形態では、金型の長寿命化が可能になるので、金型にかかる費用を低減でき、それに関連して、固定スクロール部材24および可動スクロール部材26の製造コストを低減することが可能になる。
また、実施形態では、固定スクロール部材24および可動スクロール部材26のラップ24b、26bの中心に近い巻き始めの部分P0、Q0における抜き勾配が外側の巻き終わりの部分P4、Q4の抜き勾配よりも大きくなっているので、ラップ24b、26bの中心部における抜き勾配を大きくしても、ラップ全体におけるニアネットシェイプ化(すなわち、最終形状に近い成形)に対する弊害を小さくすることが可能である。
さらに、実施形態では、ラップ24b、26bにおける巻き始めから巻き終りにかけて抜き勾配が連続的に徐々に変化するように設定されているので(図8参照)、離型時の渦巻きの中心付近における金型にかかるストレスが小さくなり、金型の寿命を長くすることが可能になる。
さらに、実施形態では、高低圧ドーム型圧縮機1が冷媒としてCO2を使用しているので、高負荷となる高圧冷媒で特に有効である。
(A)
上記実施形態では、固定スクロール部材24および可動スクロール部材26のラップ24b、26bにおける巻き始めから巻き終りにかけて抜き勾配が連続的に徐々に変化するように設定されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の変形例として、図9のグラフに示されるように、ラップ24b、26bの巻き角αに対する抜き勾配θの変化を、巻き始めに近い範囲では抜き勾配θの減少度合いが大きくなるように設定し、巻き終わりに近い範囲では抜き勾配θの減少度合いが小さくなるように設定してもよい(なお、抜き勾配θの最大値は2度、最小値は0.5度である)。この場合も、固定スクロール部材24および可動スクロール部材26をチクソキャスティングにより成形する際に、離型時の渦巻きの中心付近における金型にかかるストレスが小さくなり、金型の寿命が長くなる。
また、本発明のさらに変形例として、図10のグラフに示されるように、ラップ24b、26bの巻き角αに対する抜き勾配θの変化を、巻き始めから巻き終わりにかけて抜き勾配θを段階的に減少していくように設定してもよい(なお、抜き勾配θの最大値は2度、最小値は0.5度である)。この場合も、固定スクロール部材24および可動スクロール部材26をチクソキャスティングにより成形する際に、離型時の渦巻きの中心付近における金型にかかるストレスが小さくなり、金型の寿命が長くなる。また、ラップ24b、26bの個々の巻き角αの範囲における抜き勾配θの設定が容易になる。
また、本発明のさらに変形例として、図11のグラフに示されるように、ラップ24b、26bの巻き角αに対する抜き勾配θの変化を、巻き始めに近い所定の巻き角αの範囲の抜き勾配θを最大値(2度)に設定し、その他の角度範囲における抜き勾配θを最小値(0.5度)に設定している。この場合も、固定スクロール部材24および可動スクロール部材26をチクソキャスティングにより成形する際に、離型時の渦巻きの中心付近における金型にかかるストレスが小さくなり、金型の寿命が長くなる。また、ラップ24b、26bの全体におけるニアネットシェイプ化に対する弊害をさらに小さくすることが可能である。
また、本発明のさらに他の変形例として、スクロール部材の表面を樹脂でコーティングして固定スクロール124および可動スクロール126を製造してもよい。例えば、図12に示されるように可動スクロール部材26の表面全体を樹脂Rでコーティングして可動スクロール126を製造することによって、圧縮機1で圧縮されるガス冷媒の漏れが低減されるとともに騒音を低減することが可能になる。なお、可動スクロール部材26の少なくともラップ26bを樹脂Rでコーティングすればガス冷媒の漏れ低減および騒音低減が可能である。
実施形態では、チクソキャスティングなどの半溶融成形法によって圧縮機のスクロール部材を製造しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明では材料を成形型に注入して成形される圧縮機のスクロール部材であれば、成形型の寿命を延ばすことが可能である。本発明のさらに他の変形例として、例えば、金属材料の高温の湯を成形型に注入することによって鋳造されるスクロール部材の場合でも、スクロール部材のラップの中心に近い巻き始めの部分における抜き勾配を外側の巻き終わりの部分の抜き勾配よりも大きくすることによって、成形型の寿命を延ばすことが可能である。
(F)
上記実施形態では、固定スクロール部材24および可動スクロール部材26は、ラップ24b、26bの渦巻き形状が、ラップ24b、26bの中心に近い巻き始めの部分P0、Q0における抜き勾配が外側の巻き終わりの部分P4、Q4の抜き勾配よりも大きくなっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、外側の抜き勾配を大きくしてもよい。
17 駆動軸
24 固定スクロール部材
24a 鏡板
24b ラップ
26 可動スクロール部材
26a 鏡板
26b ラップ
41 吐出穴
80 金型
82a ラップ成形部分
124 固定スクロール
126 可動スクロール
Claims (8)
- 材料を成形型に注入して成形される圧縮機(1)のスクロール部材(24、26)であって、
平板状の鏡板(24a、26a)と、
前記鏡板(24a、26a)に形成された渦巻き形状を有するラップ(24b、26b)であって、前記ラップにおける前記成形型に対する抜き勾配が前記ラップ(24b、26b)の巻き角に応じて変化しているラップ(24b、26b)と
を備えている圧縮機(1)のスクロール部材(24、26)。 - 材料を成形型に注入して成形される圧縮機(1)のスクロール部材(24、26)であって、
平板状の鏡板(24a、26a)と、
前記鏡板(24a、26a)に形成され、中心に近い巻き始めの部分における前記成形型に対する抜き勾配が外側の巻き終わりの部分の抜き勾配よりも大きい渦巻き形状を有するラップ(24b、26b)と
を備えている請求項1に記載の圧縮機(1)のスクロール部材(24、26)。 - 材料を成形型に注入して成形される圧縮機(1)のスクロール部材(24、26)であって、
平板状の鏡板(24a、26a)と、
前記鏡板(24a、26a)に形成され、外側の巻き終わりの部分における前記成形型に対する抜き勾配が中心に近い巻き始めの部分の抜き勾配よりも大きい渦巻き形状を有するラップ(24b、26b)と
を備えている請求項1に記載の圧縮機(1)のスクロール部材(24、26)。 - 前記ラップ(24b、26b)は、巻き始めから巻き終りにかけて前記抜き勾配が連続的に徐々に変化するように設定されている、
請求項2または3に記載の圧縮機(1)のスクロール部材(24、26)。 - 前記ラップ(24b、26b)は、巻き始めから巻き終りにかけて前記抜き勾配が段階的に変化するように設定されている、
請求項2または3に記載の圧縮機(1)のスクロール部材(24、26)。 - 前記ラップ(24b、26b)は、巻き始めと巻き終りとの間のうちの所定の角度範囲において、前記抜き勾配を他の角度範囲における抜き勾配よりも大きくなるように設定されている、
請求項2または3に記載の圧縮機(1)のスクロール部材(24、26)。 - 少なくとも前記ラップ(24b、26b)が樹脂でコーティングされている、
請求項2または3に記載の圧縮機(1)のスクロール部材(24、26)。 - 請求項1から7のいずれかに記載のスクロール部材(24、26)を備えている圧縮機(1)であって、
冷媒にCO2を使用している圧縮機(1)。
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