JP2013203654A - 周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】周期表第13族金属窒化物結晶の液相成長法において生じる副生成物の濃度を精密に調節することができる技術を確立し、長時間安定的に結晶成長を進めることができる周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】液相成長法を利用した周期表第13族金属窒化物結晶の結晶成長において、液相に接する気相に水素含有ガスを導入し、さらに気相における水素含有ガスの圧力を変化させながら(制御しながら)結晶成長させることにより、Li3N等の副生成物に関わる結晶成長速度の低下を抑制し、長時間安定的に結晶成長を進めることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、液相成長法を利用した周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法に関する。
GaNに代表される周期表第13族金属窒化物半導体は、大きなバンドギャップを有し、さらにバンド間遷移が直接遷移型であることから、紫外、青色等の発光ダイオードや半導体レーザー等の比較的短波長側の発光素子として実用化されている。これらの素子は、同種の材料からなり、かつ転位密度の少ない高品質な基板を用いて製造されることが好ましく、このような基板となり得る周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法が盛んに研究されている。代表的な製造方法としては、ハライド気相成長法(HVPE法)や有機金属化学蒸着法(MOCVD法)等の気相成長法が一般的に知られているが、最近では品質向上及び経済性の観点等から、フラックス法等の液相成長法の検討も進められている。
フラックス法等の液相成長法については、従来、得られる結晶にN欠陥が生じ易い、或いは微細な結晶が多数形成してしまうという課題があった。これは、液相中に窒素が溶解し難い、若しくは原料となる窒素化合物が分解しやすい等の理由から、液相中のN濃度がGa濃度に対して相対的に小さくなり易い傾向にあることや、窒素源を供給する気相との界面付近において局所的にN濃度(過飽和度)が上昇し易い傾向にあることに基づいている。従って、このような課題に対しては、窒素を液相中に保持するために高圧条件を採用したり(特許文献1参照)、界面付近のN濃度(過飽和度)が急激に上昇しないように、窒素源を含む気相の圧力を徐々に上昇させたりする方法が提案されている(特許文献2参照)。
一方、このような課題に対して、Li3GaN2等の複合窒化物を原料として用いることも提案されている(特許文献3参照)。Li3GaN2を液相中に溶解させることにより、GaN生成に必要なN濃度を十分に確保することができ、良質な周期表第13族金属窒化物結晶を効率よく製造することができることが報告されている。
特開2005−306709号公報 特開2004−168650号公報 特開2008−201653号公報
液相成長法を利用した周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法において、Li3GaN2等の周期表第13族金属元素及び周期表第13族金属元素以外の金属元素を含有する複合窒化物を原料として用いることにより、液相中のN濃度を十分に確保することが可能となる一方、かかる成長法における特有の課題も明らかとなっている。例えば、Li3GaN2を原料として用いてGaNを成長させる場合を例に挙げて説明すると、結晶成長は以下の反応式[1]に示される平衡反応によって進行し、結晶成長とともにLi3Nが副生成物として生成することになる。
Figure 2013203654
Li3Nは液相に溶解し易いため、結晶成長の進行とともに液相中のLi3N濃度は上昇
することになるが、反応式[1]からも明らかなように、Li3Nの濃度上昇に伴って結晶成長速度は徐々に低下することになり、最終的に平衡に達して結晶成長は停止することになる。従って、Li3Nのような副生成物が生じる液相成長法において長時間安定的に結晶成長を進めるためには、Li3N等の副生成物の濃度上昇を抑制する手段が必要になり、例えばLi3Nの場合、Li3N自体を蒸発させる方法やHCl等を供給してLi3Nを分解する方法等が報告されている。しかしながら、これらの方法ではLi3Nの濃度を精密に制御することは困難であり、また装置が煩雑となるため工業的な手法としては不向きである。
即ち、本発明は周期表第13族金属窒化物結晶の液相成長法において生じる副生成物の濃度を精密に調節することができる技術を確立し、長時間安定的に結晶成長を進めることができる周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、液相成長法を利用した周期表第13族金属窒化物結晶の結晶成長において、液相に接する気相に水素含有ガスを導入し、さらに気相における水素含有ガスの圧力を変化させながら(制御しながら)結晶成長を進めることにより、結晶成長速度の低下を抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 原料及び溶媒を含む溶液又は融液を作製する工程と、前記溶液又は融液である液相並びに気相の存在下、前記液相中で周期表第13族金属窒化物結晶をエピタキシャル成長させる成長工程とを含む、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法であって、前記気相が水素含有ガスを含み、前記成長工程において、前記気相における水素含有ガスの圧力PHを、下記式(1)を満たすように変化させることを特徴とする、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
Figure 2013203654
{式(1)中、PH,1は前記成長工程中の任意の時点における水素含有ガスの圧力を表す。PH,2は前記任意の時点から水素含有ガスの圧力が変化した後の任意の時点における水素含有ガスの圧力を表す。}
<2> 前記気相がさらに窒素含有ガスを含み、前記成長工程が、さらに前記気相における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力PH+Nについて下記式(2)を満たすものである、<1>に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
Figure 2013203654
{式(2)中、PH+N,1は前記PH,1と同一時点における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を表す。PH+N,2は前記PH,2と同一時点における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を表す。}
<3> 原料及び溶媒を含む溶液又は融液を作製する工程と、前記溶液又は融液である液相並びに気相の存在下、前記液相中で周期表第13族金属窒化物結晶をエピタキシャル成長させる成長工程とを含む、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法であって、前記気相が少なくとも水素含有ガス及び窒素含有ガスを含み、前記成長工程において、前記気相における窒素含有ガスの分圧PNを、下記式(3)を満たすように変化させることを特徴とする、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
Figure 2013203654
{式(3)中、PN,1は前記成長工程中の任意の時点における窒素含有ガスの分圧を表す。PN,2は前記任意の時点から窒素含有ガスの分圧が変化した後の任意の時点における窒素含有ガスの分圧を表す。}
<4> 前記成長工程が、さらに前記気相における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力PH+Nについて下記式(4)を満たすものである、<3>に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
Figure 2013203654
{式(4)中、PH+N,1は前記PN,1と同一時点における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を表す。PH+N,2は前記PN,2と同一時点における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を表す。}
<5> 原料及び溶媒を含む溶液又は融液を作製する工程と、前記溶液又は融液である液相並びに気相の存在下、前記液相中で周期表第13族金属窒化物結晶をエピタキシャル成長させる成長工程とを含む、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法であって、前記気相が少なくとも水素含有ガス及び窒素含有ガスを含み、前記成長工程において、前記気相における水素含有ガスの分圧PH及び/又は窒素含有ガスの分圧PNを、下記式(5)を満たすように変化させることを特徴とする、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
Figure 2013203654
{式(5)中、PH,1は前記成長工程中の任意の時点における水素含有ガスの分圧を、PN,1はPH,1と同一時点における窒素含有ガスの分圧を表す。PH,2は前記任意の時点から水素含有ガスの分圧及び/又は窒素含有ガスの分圧が変化した後の任意の時点における水素含有ガスの分圧を、PN,2はPH,2と同一時点における窒素含有ガスの分圧を表す。}
<6> 前記成長工程が、さらに前記気相における水素含有ガスの分圧PHについて下記式(6)を満たすものである、<5>に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
Figure 2013203654
<7> 前記水素含有ガスが水素ガスである、<1>乃至<6>の何れかに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
<8> 前記窒素含有ガスが窒素ガスである、<2>乃至<7>の何れかに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
<9> 前記原料が周期表第13族金属元素及び周期表第13族金属元素以外の金属元素を含有する複合金属窒化物である、<1>乃至<8>の何れかに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
<10> 前記溶媒が金属塩を主成分とする溶媒である、<1>乃至<9>の何れかに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
本発明によれば、Li3N等の副生成物に関わる結晶成長速度の低下を抑制し、長時間安定的に結晶成長を進めることができる周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法を提供
することができる。
水素含有ガス圧力PHの変化方法を表したグラフである。 本発明に係る成長工程に使用する装置の概念図である。 成長時間(総保持時間)と平均結晶成長速度の関係を示したグラフである。
本発明の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法について、以下詳細に説明するが、本発明の趣旨に反しない限り、これらの内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」を用いてあらわされる数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
<周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法>
本発明の第1の態様に係る周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法(以下、「本発明の第1の態様に係る製造方法」と略す場合がある。)は、「原料及び溶媒を含む溶液又は融液を作製する工程」と「溶液又は融液である液相並びに気相の存在下、液相中で周期表第13族金属窒化物結晶をエピタキシャル成長させる成長工程(以下、「成長工程」と略す場合がある。)」を含む、いわゆる液相成長法を利用した周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法であるが、液相に接する気相が水素含有ガスを含み、さらに気相における水素含有ガスの圧力が経時的に変化する条件下で結晶成長が行われることを特徴とする。
また、本発明の第2の態様に係る周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法(以下、「本発明の第2の態様に係る製造方法」と略す場合がある。)も同じく液相成長法を利用した周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法であるが、液相に接する気相が少なくとも水素含有ガス及び窒素含有ガスを含み、さらに気相における窒素含有ガスの分圧が経時的に変化する条件下で結晶成長が行われることを特徴とする。
さらに、本発明の第3の態様に係る周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法(以下、「本発明の第3の態様に係る製造方法」と略す場合がある。)も同じく液相成長法を利用した周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法であるが、液相に接する気相が少なくとも水素含有ガス及び窒素含有ガスを含み、さらに気相における水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比が経時的に変化する条件下で結晶成長が行われることを特徴とする。
前述のように、Li3GaN2を原料として用いてGaNを成長させる場合、結晶成長は反応式[1]に示される平衡反応によって進行し、結晶成長とともにLi3Nの濃度が上昇して、結晶成長速度は徐々に低下することになる。
Figure 2013203654
このような現象は、Li3GaN2を原料として用いる場合に限られず、周期表第13族金属窒化物結晶をメルトバック(再溶解)させるLi3Nに代表される周期表第1族金属窒化物(又は周期表第2族金属窒化物)等が副生成物として生じる成長法において広く当てはまることであり、長時間安定的に結晶成長を進めるためには、これらの副生成物の濃度上昇を抑制する手段が必要となる。但し、これらの副生成物の存在は、周期表第13族金属窒化物結晶の急激な生成を抑えることで雑晶の析出を抑制することや、液相中に窒素成分を適度に保持することで結晶の品質(低N欠陥、結晶性)を高める役割も果たしており、単にこれらの副生成物の濃度を低下させるだけでなく、適切な濃度に精密に調節することができる技術が、高品質な周期表第13族金属窒化物結晶を得るために必要である。
本発明者らは、副生成物の濃度を調節する手段について検討を重ねた結果、以下の(a)〜(d)の事実を明らかにしている。
(a)液相に接する気相に水素含有ガスを導入し、液相中に水素成分を溶解させることにより、Li3N等の副生成物を水素化して分解することができること。(例えば、水素成
分によるLi3Nの分解生成物としては、水素化リチウムが挙げられ、さらに気相及び/又は液相に窒素成分が存在している場合は、水素化リチウムの他にリチウムイミド、又はリチウムアミド等が分解生成物として挙げられる。)
(b)水素成分によるLi3N等の副生成物の分解反応は平衡反応によって進行するため、結晶成長が進み、リチウムアミド等の分解生成物の濃度が上昇して平衡組成に達すると、液相中に水素成分がそれ以上溶解しなくなり、Li3N等の副生成物の濃度上昇を抑えることができなくなること。(例えば、Li3Nのリチウムアミドへの分解反応は、下記反応式[2]に示される反応によって進行すると考えられる。)
Figure 2013203654
(c)結晶成長の進行とともに(経時的に)、リチウムアミド等の分解生成物の濃度が増加する方向に平衡組成を変化させるための何らかの操作を加えること(例えば、液相中の水素成分の濃度を高めるような操作)により、Li3N等の副生成物の濃度上昇を抑え、長時間安定的に結晶成長を進めることができること。
(d)気相における水素含有ガスの圧力を制御する操作が、分解生成物の濃度が増加する方向に平衡組成を変化させるための操作として有効(簡易的かつ精密な制御が可能)であること。
即ち、本発明者らは、液相に接する気相中に水素含有ガスを導入し、さらに水素含有ガスの圧力を経時的に変化させながら(制御しながら)結晶成長を進めることにより、結晶成長速度の低下を簡易的に抑制することができるとともに、結晶成長速度を精密に制御することができることを見出したのである。
また、本発明者らは、副生成物の濃度を調節する手段について検討を重ねた結果、気相が水素含有ガスに加えて窒素含有ガスをも含む場合には、以下の(e)〜(h)の事実を明らかにしている。
(e)前述のように、液相に接する気相に水素含有ガス及び窒素含有ガスを導入し、液相中に水素成分及び窒素成分を溶解させることにより、Li3N等の副生成物を水素化して分解することができること。(例えば、水素成分によるLi3Nの分解生成物としては、水素化リチウム、リチウムイミド、又はリチウムアミド等が挙げられる。)
(f)水素成分によるLi3N等の副生成物の分解反応は平衡反応によって進行するため、結晶成長が進み、リチウムアミド等の分解生成物の濃度が上昇して平衡組成に達すると、液相中に水素成分がそれ以上溶解しなくなり、Li3N等の副生成物の濃度上昇を抑えることができなくなること。(例えば、Li3Nのリチウムアミドへの分解反応は、下記反応式[2]に示される反応によって進行すると考えられる。)
Figure 2013203654
(g)結晶成長の進行とともに(経時的に)、リチウムアミド等の分解生成物の濃度が増加する方向に平衡組成を変化させるための何らかの操作を加えること(例えば、液相中の窒素成分の濃度を高めるような操作)により、Li3N等の副生成物の濃度上昇を抑え、長時間安定的に結晶成長を進めることができること。
(h)気相における窒素含有ガスの分圧を制御する操作が、分解生成物の濃度が増加する方向に平衡組成を変化させるための操作として有効(簡易的かつ精密な制御が可能)であること。窒素含有ガスの分圧を制御する操作を行う場合には、(d)に記載されているような水素含有ガスの圧力を制御する操作を行わなくとも、分解生成物の濃度が増加する方向に平衡組成を変化させるための操作として有効であること。
即ち、本発明者らは、液相に接する気相中に水素含有ガス及び窒素含有ガスを導入し、さらに窒素含有ガスの分圧を経時的に変化させながら(制御しながら)結晶成長を進める
ことにより、結晶成長速度の低下を簡易的に抑制することができるとともに、結晶成長速度を精密に制御することができることを見出したのである。
一方で、本発明者らは、副生成物の濃度を調節する手段について検討を重ねた結果、気相が水素含有ガスに加えて窒素含有ガスをも含む場合には、以下の(i)〜(l)の事実を明らかにしている。
(i)前述のように、液相に接する気相に水素含有ガス及び窒素含有ガスを導入し、液相中に水素成分及び窒素成分を溶解させることにより、Li3N等の副生成物を水素化して分解することができること。(例えば、水素成分によるLi3Nの分解生成物としては、水素化リチウム、リチウムイミド、又はリチウムアミド等が挙げられる。)
(j)水素成分によるLi3N等の副生成物の分解反応は平衡反応によって進行するため、結晶成長が進み、リチウムアミド等の分解生成物の濃度が上昇して平衡組成に達すると、液相中に水素成分がそれ以上溶解しなくなり、Li3N等の副生成物の濃度上昇を抑えることができなくなること。(例えば、Li3Nのリチウムアミドへの分解反応は、下記反応式[3]に示される反応によって進行すると考えられる。)
Figure 2013203654
(k)結晶成長の進行とともに(経時的に)、リチウムアミド等の分解生成物の濃度が増加する方向に平衡組成を変化させるために、例えば、液相中の水素成分の濃度を、窒素成分の濃度に比して高めるような操作を行なうことにより、より効果的にLi3N等の副生成物の濃度上昇を抑え、長時間安定的に結晶成長を進めることができること。
(l)気相における水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比を制御する操作が、液相中の水素成分の濃度と窒素成分の濃度の比を、分解生成物の濃度が増加する方向により効果的に変化させるための操作として有効(簡易的かつ精密な制御が可能)であること。即ち、上記反応式[3]における平衡定数Kが下記式のように表されるとき、水素含有ガスの分圧増加の方が、窒素含有ガスの分圧増加よりも、分解生成物の濃度増加により効果的に働くこと。
K=[LiNH23/{[Li3N]・(PH3・PN
即ち、本発明者らは、液相に接する気相中に水素含有ガス及び窒素含有ガスを導入し、さらに水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比を経時的に変化させながら(制御しながら)結晶成長を進めることにより、結晶成長速度の低下を簡易的に抑制することができるとともに、結晶成長速度を精密に制御することができることを見出したのである。
なお、本発明において「原料及び溶媒を含む溶液又は融液を作製する工程」の「溶液又は融液」と、成長工程における「溶液又は融液」と必ずしも同一のものを意図するものではない。溶液又は融液を作製する工程における「溶液又は融液」は、成長工程に使用するために作製されるが、成長工程における「溶液又は融液」には、エピタキシャル成長の反応によって生じた副生成物等が含まれる場合があり、初期(エピタキシャル成長開始前)の組成と同一とは限らないためである。
また、本発明における「圧力」は、気相がガスとして水素含有ガスのみを含む場合には圧力計等から得られた全圧の実測値を意味し、気相がガスとして水素含有ガス以外のガスをも含む場合には前記全圧の実測値に、気相中に含まれるガスの物質量比を乗じて見積もった値(すなわち分圧)を意味するものとする。気相中に含まれるガスの物質量比は、例えばガスクロマトグラフィー等を用いて測定するほか、気相にガスを導入して気相中のガス組成を管理する場合には、導入ガスの物質量比(混合比)で代用することができるものとする。
本発明の第1の態様に係る製造方法は、成長工程において気相の水素含有ガスの圧力PHを、下記式(1)を満たすように変化させることを特徴とする。
Figure 2013203654
{式(1)中、PH,1は成長工程中の任意の時点における水素含有ガスの圧力を表す。PH,2は前記任意の時点から水素含有ガスの圧力が変化した後の任意の時点における水素含有ガスの圧力を表す。}
かかる態様における成長工程は、即ち、水素含有ガスの圧力を経時的に高めながら結晶成長を進める工程であることを意味する。結晶成長の進行とともに、水素含有ガスの圧力が高くなるように制御することにより、Li3N等の副生成物の濃度上昇を抑え、結晶成長速度の低下を抑制することができる。なお、かかる態様において、気相は水素含有ガス以外のガスを必ずしも含む必要はない。
かかる態様における成長工程は、気相の水素含有ガスの圧力PHを、式(1)を満たすように変化させるものであれば、かかる圧力の具体的な変化方法は特に限定されず、図1の(1a)に示されるように段階的に変化するものであっても、或いは図1の(1b)に示されるように連続的に変化するものであってもよい。また、単位時間当たりの水素含有ガスの圧力の平均変化量も特に限定されないが、(ΔPH/Δt)として、通常0.00001atm/hr以上、好ましくは0.0001atm/hr以上、より好ましくは0.001atm/hr以上であり、通常5atm/hr以下、好ましくは0.5atm/hr以下、より好ましくは0.1atm/hr以下である。
また、水素含有ガスの圧力が図1の(1a)に示されるように段階的に変化する場合の変化の間隔は、Li3N等の分解生成物の濃度が平衡組成に到達しない間隔であれば、特に限定されず適宜設定することができるが、通常1000hr以下、好ましくは100hr以下、より好ましくは10hr以下である。上記範囲内であると、結晶成長速度の低下を効果的に抑制することができるとともに、雑晶の析出等を抑制することができる。
なお、かかる態様における成長工程は、PH,2/PH,1≧2となる時点を含むことが好ましく、PH,2/PH,1≧5となる時点を含むことがより好ましく、PH,2/PH,1≧10となる時点を含むことがさらに好ましい。
また、気相がさらに窒素含有ガスを含む場合には、前記気相における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力PH+Nが下記式(2)を満たすことが好ましい。
Figure 2013203654
式(2)を満たす成長工程は、即ち、水素含有ガスの圧力を経時的に高めつつ水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を維持しながら結晶成長を進める工程、又は水素含有ガスの圧力とともに、水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を経時的に高めながら結晶成長を進める工程であることを意味する。水素含有ガスの圧力が高くなるように制御する際に、窒素含有ガスの圧力が低くなり過ぎない、つまり、水素含有ガスの圧力と窒素含有ガスの圧力の合計圧力が維持される程度にその低下を留めておくよう制御することにより、Li3N等の副生成物の濃度上昇を抑え、結晶成長速度の低下を抑制することができる。また、水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力が高くなるように水素含有ガスの圧力及び/又は窒素含有ガスの圧力を制御することにより、Li3N等の副生成物の濃度上昇をより効果的に抑え、結晶成長速度の低下を抑制することができる。
なお、水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を高める制御としては、以下のものが挙げられる。
(A)水素含有ガスの圧力を上昇させ、かつ、窒素含有ガスの圧力を上昇させる制御(PH,1<PH,2、PN,1<PN,2)。
(B)水素含有ガスの圧力を上昇させ、かつ、窒素含有ガスの圧力を維持させる制御(PH,1<PH,2、PN,1=PN,2)。
(C)水素含有ガスの圧力を上昇させ、かつ、水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力が上昇する程度に窒素含有ガスの圧力を下降させる制御((PH,2−PH,1)>(PN,1−PN,2))。
操作の簡便性の観点から、(A)又は(B)の制御が特に好ましい。
本発明の第2の態様に係る製造方法は、成長工程において気相の窒素含有ガスの分圧PNを、下記式(3)を満たすように変化させることを特徴とする(気相は少なくとも水素含有ガス及び窒素含有ガスを含む)。
Figure 2013203654
{式(3)中、PN,1は前記成長工程中の任意の時点における窒素含有ガスの分圧を表す。PN,2は前記任意の時点から窒素含有ガスの分圧が変化した後の任意の時点における窒素含有ガスの分圧を表す。}
かかる態様における成長工程は、即ち、窒素含有ガスの分圧を経時的に高めながら結晶成長を進める工程であることを意味する。結晶成長の進行とともに、窒素含有ガスの分圧が高くなるように制御することにより、Li3N等の副生成物の濃度上昇を抑え、結晶成長速度の低下を抑制することができる。
かかる態様における成長工程は、気相の窒素含有ガスの分圧PNを、式(3)を満たすように変化させるものであれば、窒素含有ガスの分圧の具体的な変化方法は特に限定されず、前述の態様と同様に段階的に変化するものであっても、或いは連続的に変化するものであってもよい。また、単位時間当たりの窒素含有ガスの分圧の平均変化量も特に限定されないが、(ΔPN/Δt)として、通常0.00001atm/hr以上、好ましくは0.0001atm/hr以上、より好ましくは0.001atm/hr以上であり、通常5atm/hr以下、好ましくは0.5atm/hr以下、より好ましくは0.1atm/hr以下である。
また、窒素含有ガスの分圧(PN)が段階的に変化する場合の変化の間隔は、Li3N等の分解生成物の濃度が平衡組成に到達しない間隔であれば、特に限定されず適宜決めることができるが、通常1000hr以下、好ましくは100hr以下、より好ましくは10hr以下である。上記範囲内であると、結晶成長速度の低下を効果的に抑制することができるとともに、雑晶の析出等を抑制することができる。
なお、かかる態様における成長工程は、PN,2/PN,1≧2となる時点を含むことが好ましく、PN,2/PN,1≧5となる時点を含むことがより好ましく、PN,2/PN,1≧10となる時点を含むことがさらに好ましい。
また、気相における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力PH+Nが下記式(4)を満たすことが好ましい。
Figure 2013203654
式(4)を満たす成長工程は、即ち、窒素含有ガスの圧力を経時的に高めつつ水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を維持しながら結晶成長を進める工程、又は窒素含有ガスの圧力とともに、水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を経時的に高めながら結晶成長を進める工程であることを意味する。窒素含有ガスの圧力が高くなるように制御する際に、水素含有ガスの圧力が低くなり過ぎない、つまり、水素含有ガスの圧力と窒素含有ガスの圧力の合計圧力が維持される程度にその低下を留めておくよう制御することにより、Li3N等の副生成物の濃度上昇を抑え、結晶成長速度の低下を抑制することができる。また、水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力が高くなるように水素含有ガスの圧力及び/又は窒素含有ガスの圧力を制御することにより、Li3N等の副生成物の濃度上昇をより効果的に抑え、結晶成長速度の低下を抑制することができる。
なお、水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を高める制御としては、以下のものが挙げられる。
(A)窒素含有ガスの圧力を上昇させ、かつ、水素含有ガスの圧力を上昇させる制御(PN,1<PN,2、PH,1<PH,2)。
(B)窒素含有ガスの圧力を上昇させ、かつ、水素含有ガスの圧力を維持させる制御(PN,1<PN,2、PH,1=PH,2)。
(C)窒素含有ガスの圧力を上昇させ、かつ、水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力が上昇する程度に水素含有ガスの圧力を下降させる制御((PN,2−PN,1)>(PH,1−PH,2))。
操作の簡便性の観点から、(A)又は(B)の制御が特に好ましい。
本発明の第3の態様に係る製造方法は、成長工程において気相の水素含有ガスの分圧PH及び/又は窒素含有ガスの分圧PNを、下記式(5)を満たすように変化させることを特徴とする(気相は少なくとも水素含有ガス及び窒素含有ガスを含む)。
Figure 2013203654
{式(5)中、PH,1は前記成長工程中の任意の時点における水素含有ガスの分圧を、PN,1はPH,1と同一時点における窒素含有ガスの分圧を表す。PH,2は前記任意の時点から水素含有ガスの分圧及び/又は窒素含有ガスの分圧を変化させた後の任意の時点における水素含有ガスの分圧を、PN,2はPH,2と同一時点における窒素含有ガスの分圧を表す。}
かかる態様における成長工程は、気相の水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比(PH/PN)を、式(5)を満たすように変化させるものであれば、水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比(PH/PN)の具体的な変化方法は特に限定されず、前述の態様と同様に段階的に変化するものであっても、或いは連続的に変化するものであってもよい。また、単位時間当たりの水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比の平均変化量も特に限定されないが、{Δ(PH/PN)/Δt}として、通常0.00001hr-1以上、好ましくは0.0001hr-1以上、より好ましくは0.001hr-1以上であり、通常100hr-1以下、好ましくは20hr-1以下、より好ましくは5hr-1以下である。
また、気相の水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比(PH/PN)が段階的に変化する場合の変化の間隔は、Li3N等の分解生成物の濃度が平衡組成に到達しない間隔であれば、特に限定されず適宜決めることができるが、通常1000hr以下、好ましくは100hr以下、より好ましくは10hr以下である。上記範囲内であると、結晶成長速度の低下を効果的に抑制することができるとともに、雑晶の析出等を抑制することができる。
なお、かかる態様における成長工程は、{(PH,2/PN,2)/(PH,1/PN,1)}≧2となる時点を含むことが好ましく、{(PH,2/PN,2)/(PH,1/PN,1)}≧5となる時点を含むことがより好ましく、(PH,2/PN,2)/(PH,1/PN,1)}≧10となる時点を含むことがさらに好ましい。
かかる態様における成長工程は、即ち、水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比(PH/PN)を経時的に高めながら結晶成長を進める工程であること意味する。水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比(PH/PN)が高くなるように水素含有ガスの圧力及び/又は窒素含有ガスの圧力を制御することにより、Li3N等の副生成物の濃度上昇を抑え、結晶成長速度の低下をより効果的に抑制することができる。なお、気相の水
素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比(PH/PN)を高める制御としては、以下のものが挙げられる。
(A)水素含有ガスの圧力を上昇させ、かつ、窒素含有ガスの圧力を下降させる制御(PH,1<PH,2、PN,1>PN,2)。
(B)水素含有ガスの圧力を上昇させ、かつ、窒素含有ガスの圧力を維持させる制御(PH,1<PH,2、PN,1=PN,2)。
(C)水素含有ガスの圧力を上昇させ、かつ、気相の水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比が上昇する程度に窒素含有ガスの圧力を上昇させる制御(PH,2/PH,1>PN,2/PN,1)。
操作の簡便性の観点から、(A)又は(B)の制御が特に好ましい。
また、気相の水素含有ガスの分圧PHを、下記式(6)を満たすように変化させることが好ましい。
Figure 2013203654
式(6)を満たす態様における成長工程は、即ち、水素含有ガスの分圧とともに、水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比(PH/PN)を経時的に高めながら結晶成長を進める工程であることを意味する。水素含有ガスの分圧が高くなるように水素含有ガスの分圧を制御することにより、Li3N等の副生成物の濃度上昇をより効果的に抑え、結晶成長速度の低下を抑制することができる。
なお、かかる態様における成長工程は、PH,2/PH,1≧2となる時点を含むことが好ましく、PH,2/PH,1≧5となる時点を含むことがより好ましく、PH,2/PH,1≧10倍となる時点を含むことがさらに好ましい。
また、気相における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力PH+Nが下記式(7)を満たすことが好ましい。
Figure 2013203654
式(7)を満たす態様における成長工程は、即ち、水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比(PH/PN)を経時的に高めつつ水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を維持しながら結晶成長を進める工程、又は水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比(PH/PN)とともに、水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を経時的に高めながら結晶成長を進める工程であることを意味する。水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比(PH/PN)が高くなるように制御する際に、窒素含有ガスの圧力が低くなり過ぎない、つまり、水素含有ガスの圧力と窒素含有ガスの圧力の合計圧力が維持される程度にその低下を留めておくよう制御することにより、Li3N等の副生成物の濃度上昇を抑え、結晶成長速度の低下を抑制することができる。また、水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力が高くなるように水素含有ガスの圧力及び/又は窒素含有ガスの圧力を制御することにより、Li3N等の副生成物の濃度上昇をより効果的に抑え、結晶成長速度の低下を抑制することができる。
なお、水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を高める制御としては、以下のものが挙げられる。
(A)水素含有ガスの圧力を上昇させ、かつ、窒素含有ガスの圧力を上昇させる制御(PH,1<PH,2、PN,1<PN,2)。
(B)水素含有ガスの圧力を上昇させ、かつ、窒素含有ガスの圧力を維持させる制御(PH,1<PH,2、PN,1=PN,2)。
(C)水素含有ガスの圧力を上昇させ、かつ、水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力が上昇する程度に窒素含有ガスの圧力を下降させる制御((PH,2−PH,1)>(PN,1−PN
,2))。
操作の簡便性の観点から、(A)又は(B)の制御が特に好ましい。
なお、第3の態様は、反応式[2]や[3]等で表されるLi3N等の分解生成物の生成反応式において、上述のように原料として水素及び窒素が用いられる場合に用いることもできるが、原料として水素が用いられ、かつ、生成物として窒素が生成される場合にも好適に用いることができる。
本発明の第1の態様に係る成長工程は、気相の水素含有ガスの圧力PHが、式(1)を満たすように変化するものであれば、その他については特に限定されない。但し、成長工程における初期の気相の水素含有ガスの圧力としては、通常0.0001atm以上、好ましくは0.001atm以上、より好ましくは0.005atm以上であり、通常500atm以下、好ましくは50atm以下、より好ましくは5atm以下である。上記範囲内であると、初期の成長速度として良好な結晶成長速度を確保することができる。また、気相に窒素含有ガスを含む場合には、成長工程における初期の気相の水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力としては、通常0.01atm以上、好ましくは0.1atm以上、より好ましくは0.5atm以上であり、通常1000atm以下、好ましくは100atm以下、より好ましくは10atm以下である。
一方で、本発明の第2の態様に係る成長工程は、気相の窒素含有ガスの分圧PNが、式(3)を満たすように変化するものであれば、その他については特に限定されない。但し、成長工程における初期の気相の窒素含有ガスの分圧としては、通常0.0001atm以上、好ましくは0.001atm以上、より好ましくは0.005atm以上であり、通常500atm以下、好ましくは50atm以下、より好ましくは5atm以下である。上記範囲内であると、初期の成長速度として良好な結晶成長速度を確保することができる。また、成長工程における初期の気相の水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力としては、通常0.01atm以上、好ましくは0.1atm以上、より好ましくは0.5atm以上であり、通常1000atm以下、好ましくは100atm以下、より好ましくは10atm以下である。
さらに、本発明の第3の態様に係る成長工程は、気相の水素含有ガスの分圧と窒素含有ガスの分圧との比(PH/PN)が、式(5)を満たすように変化するものであれば、その他については特に限定されない。但し、成長工程における初期の気相の水素含有ガスの分圧としては、通常0.0001atm以上、好ましくは0.001atm以上、より好ましくは0.005atm以上であり、通常500atm以下、好ましくは50atm以下、より好ましくは5atm以下である。上記範囲内であると、初期の成長速度として良好な結晶成長速度を確保することができる。また、成長工程における初期の気相の窒素含有ガスの分圧としては、通常0.0001atm以上、好ましくは0.001atm以上、より好ましくは0.005atm以上であり、通常500atm以下、好ましくは50atm以下、より好ましくは5atm以下である。さらに、成長工程における初期の気相の水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力としては、通常0.01atm以上、好ましくは0.1atm以上、より好ましくは0.5atm以上であり、通常1000atm以下、好ましくは100atm以下、より好ましくは10atm以下である。
本発明に係る成長工程は、液相に接する気相に気体の水素含有分子(水素含有ガス)が含まれることを特徴としているが、水素含有ガスは水素元素を含む分子のガスであればその種類は特に限定されず、具体的なものとして水素ガス(H2)、アンモニアガス(NH3)等が挙げられる。この中でも特に水素ガス(H2)が好ましい。水素ガス(H2)であると、高温下においても分解することがなく、分圧制御がしやすいという利点がある。
また、液相に接する気相に気体の窒素含有分子(窒素含有ガス)が含まれている場合、窒素含有ガスは窒素元素を含む分子のガスであればその種類は特に限定されず、具体的なものとして窒素ガス(N2)等が挙げられる。なお、アンモニアガス(NH3)のように水素元素及び窒素元素を含むガスにおいては、1分子中の水素原子の数が、1分子中の窒素
原子の数以上の場合には、本発明における水素含有ガスとして機能し、1分子中の水素原子の数が、1分子中の窒素原子の数未満の場合には、本発明における窒素含有ガスとして機能する。なお、窒素含有ガスの中でも、窒素ガスを用いることが好ましい。窒素ガス(N2)であると、適度に液相中のLi3N等の副生成物濃度を保持することができるため、雑晶の析出が抑制でき、かつ低N欠陥の結晶が得られるという利点がある。
さらに、液相に接する気相に水素含有ガスおよび窒素含有ガス以外のガスが含まれていてもよく、具体的には、アルゴンガス(Ar)などの不活性ガスが挙げられる。
本発明に係る成長工程は、気相の水素含有ガス及び/又は窒素含有ガスの圧力を変化させながら結晶成長を進めることを特徴とするが、気相の水素含有ガス及び/又は窒素含有ガスの圧力の制御方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用して制御することができる。例えば、水素含有ガスの分圧は、水素含有ガスと水素含有ガス以外のガスを気相中に導入し、水素含有ガスと水素含有ガス以外のガスの物質量比(混合比)で調節する方法が挙げられる。具体的には、ガス導入管から気相中に水素含有ガスと水素含有ガス以外のガスを逐次導入し、ガス排気管から気相中のガスを逐次排気する流通系とすることによって、気相中のガス組成を導入するガスの物質量比(混合比)で調節することができる。一方、窒素含有ガスの分圧は、窒素含有ガスと窒素含有ガス以外のガスを気相中に導入し、窒素含有ガスと窒素含有ガス以外のガスの物質量比(混合比)で調節する方法が挙げられる。
気相中にガスを逐次導入する場合の流量は、ガスの種類や反応装置の内容積、その他の結晶成長条件に応じて適宜設定されるべきものであるが、常温常圧に換算した量で、通常0.0001L/min以上、好ましくは0.001L/min以上、より好ましくは0.01L/min以上であり、通常10L/min以下、好ましくは5L/min以下、より好ましくは1L/min以下である。上記範囲内であると、水素含有ガスの圧力を制御し易くなる。
以下、本発明に係る成長工程のその他の条件について説明するに当たり、成長工程に使用する装置の概念図(図2)を参照するが、本発明の趣旨に反しない限り、これらの内容に限定されるものではない。
図2の装置は、ガス導入管110及びガス排気管106が取り付けられており、さらに反応容器104が設置されている反応管105、及びかかる反応管を加熱するための電気炉111を備える構造である。反応容器104に原料101と液相として用いる溶液又は融液102を導入し、種結晶保持具108を利用することによって、種結晶100を溶液又は融液102内に設置することができる。
本発明に係る成長工程は、気相の水素含有ガス及び/又は窒素含有ガスの圧力を変化させながら結晶成長を進めることを特徴とするが、気相の水素含有ガス及び/又は窒素含有ガスの圧力は、ガス導入管110及び/又はガス排気管106に設置されている調節弁(レギュレーター)107及び109を利用し、導入するガスの量を調節することによって制御することができる。
[原料]
本発明の製造方法に使用する原料は、目的とする第13族窒化物結晶に応じて適宜設定することができるが、例えば、前述したLi3GaN2複合金属窒化物のように、周期表第13族金属元素及び周期表第13族金属元素以外の金属元素を含有する複合金属窒化物が好ましい。周期表第13族金属元素以外の金属元素の具体的種類は特に限定されないが、周期表第1族金属元素、周期表第2族金属元素等が挙げられる。即ち、周期表第13族金属元素と周期表第13族金属元素以外の金属元素とを含有する複合窒化物としては、Li3GaN2、Ca3Ga24、Ba3Ga24、Mg3GaN3等の周期表第13族金属元素と周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素とを含有する複合窒化物が挙げら
れる。なお、周期表第13族金属元素と周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素とを含有する複合窒化物は、例えば周期表第13族金属窒化物粉体と周期表第1族金属及び/又は周期表第2族金属窒化物粉体(例えばLi3N、Ca32)とを混合した後、加熱する方法(固相反応);周期表第13族金属元素と周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素とを含む合金を作製し、窒素雰囲気中で加熱する方法;等により調製することができる。例えばLi3GaN2は、Ga−Li合金を窒素雰囲気中で600〜800℃で加熱処理することによって作製することができる。
周期表第13族金属元素と周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素とを含有する複合窒化物以外の原料としては、周期表第13族金属窒化物そのものを用いることができる。その他に、例えば周期表第13族金属元素と周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素との合金からなるターゲットを用い、反応性スパッター法によって窒素プラズマと反応させて合成した混合窒化物膜を挙げることもできる。かかる混合窒化物膜は、化学的に合成が難しいような窒化物を用いる場合に好適である。
原料が成長工程における条件下で固体である場合には、かかる固体原料は溶媒に完全に溶解している必要はない。一部が溶解せずに反応容器内に存在する場合であっても、結晶成長により消費された分が、随時、溶媒中に供給されることとなる。また、溶媒に対する原料の設置量は、特に限定されず目的に応じて適宜設定することができるが、液相に対して、通常2質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、連続生産のための効率性を高めることができ、さらに反応容器内のスペースを確保できる。
[溶媒]
本発明に係る成長工程において、液相(溶液又は融液)に使用する溶媒は特に限定されないが、金属塩を主成分として含むものが好ましい。金属塩の含有量は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。特に金属塩を融解した溶融塩を溶媒として用いることが好ましい。
金属塩の種類は、結晶成長を阻害しないものであれば特に限定されないが、Li、Na、K等の周期表第1族金属及び/又はMg、Ca、Sr等の周期表第2族金属のハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩、イオウ化物等を挙げることができる。具体的には、LiCl、KCl、NaCl、CaCl2、BaCl2、CsCl、LiBr、KBr、CsBr、LiF、KF、NaF、LiI、NaI、CaI2、BaI2等の金属ハロゲン化物が好ましく、LiCl、KCl、NaCl、CsCl、CaCl2、BaCl2がより好ましい。金属塩の種類は1種類に限定されず、複数種類の金属塩を適宜組み合わせて用いてもよい。なかでも、ハロゲン化リチウムとこれ以外の金属塩を併用することがより好ましい。ハロゲン化リチウムの含有率は金属塩の全体量に対して30%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましい。
また、周期表第13族金属元素と周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素とを含有する複合窒化物の溶解度を増加させるために、例えばLi3N、Ca32、Mg32、Sr32、Ba32などの周期表第1族金属元素又は周期表第2族金属元素の窒化物等が溶媒に含まれていることが好ましい。
金属塩は、一般的に吸湿性が強いため、多くの水分を含んでいる。そのため、使用する溶媒は予め精製しておくことが好ましい。精製方法は特に限定されないが、例えば特開2007−084422号に記載されている装置を用い、溶媒に反応性気体を吹き込む方法が挙げられる。例えば、常温で固体の金属塩を溶媒とする場合には、加熱して融解し、塩化水素、ヨウ化水素、臭化水素、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、塩素、臭素、又はヨウ素等の反応性気体を吹き込みバブリングすることによって水分等の不純物を取り除くことができる。塩化物の溶融塩に対しては、特に塩化水素を用いることが好ましい。
[種結晶(下地基板)]
本発明に係る成長工程において、液相には工業的に十分なサイズの結晶を得るために種結晶を設置することが好ましい。種結晶はGaN、InGaN、AlGaN等の目的とする周期表第13族金属窒化物結晶と同種のものを用いるほか、サファイア、ZnO、BeO等の金属酸化物、SiC、Si等の珪素含有物、又はGaAs等を用いることができる。本発明で成長させる周期表第13族金属窒化物結晶との整合性を考えると、最も好ましいのは周期表第13族金属窒化物結晶である。種結晶の形状も特に制限されず、平板状であっても、棒状であってもよい。棒状の種結晶を用いる場合には、最初に種結晶部分で成長させ、次いで水平方向にも結晶成長を行いながら、垂直方向に結晶成長を行うことによってバルク状の結晶を作製することもできる。種結晶上に効率よく周期表第13族金属元素を成長させるためには、種結晶周辺に雑晶を成長させたり、付着させたりしないことが好ましい。雑晶とは種結晶上以外に成長する粒子径の小さい結晶であり、雑晶が種結晶付近に存在すると液相中の周期表第13族金属窒化物成分を種結晶上の成長と雑晶の成長で分け合うことになり、種結晶上の周期表第13族金属窒化物結晶の成長速度が十分に得られない。
[反応容器]
液相を保持するために用いる反応容器の形態は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定することができる。また、反応容器の材質は、本発明の製造方法における反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、熱的および化学的に安定な金属、酸化物、窒化物、炭化物等を主成分とすることが好ましい。具体的には、周期表第4族金属元素(Ti、Zr、Hf)を含む金属であることが好ましく、Tiを含む金属であることがより好ましい。また、反応容器の材質は、加工性や機械的耐久性に富む材質であることが好ましく、90質量%以上が前記第4族金属元素である金属を用いることがより好ましく、99質量%以上が前記第4族金属元素である金属を用いることがさらに好ましい。さらにこれらの反応容器の表面は、周期表第4族金属元素の窒化物からなることが好ましく、後述するような窒化処理方法によってあらかじめ窒化物を形成することが好適である。
[部材の窒化処理方法]
前述した反応容器のほか成長工程に使用する部材、例えば撹拌翼、種結晶保持棒、種結晶保持台、バッフル、ガス導入管、バルブ等については、以下に説明する窒化処理を行って、溶液又は融液に接触する表面に強固かつ安定な窒化物を形成しておくことが好ましい。加工性や機械的耐久性を保つために、窒化物を窒化膜の形態で形成してもよい。
窒化処理方法は表面に形成される窒化物が安定であれば特に限定はないが、例えば前記反応容器の部材を700℃以上の窒素雰囲気下において加熱保持することで、前記部材表面に安定な窒化膜を形成することができる。
更には、高温下でアルカリ金属窒化物やアルカリ土類金属窒化物を窒化剤として使用して前記部材表面を窒化することも可能であり、好ましくはアルカリ金属ハロゲン化物やアルカリ土類金属ハロゲン化物と前記アルカリ金属窒化物やアルカリ土類金属窒化物との混合融液中に保持することで、安定な窒化膜を形成することができる。また、実際に結晶成長を行なう条件と同様の条件下に部材を保持することで、簡便に窒化処理を行なうこともできる。
[温度・圧力・その他の条件]
成長工程における温度条件は、通常200℃以上、好ましくは400℃以上、より好ま
しくは600℃以上であり、また、通常1000℃以下、好ましくは850℃以下、より好ましくは800℃以下である。
結晶成長の成長速度は、上記温度、圧力等によって調節することが可能であり、特に限定されるものではないが、通常0.1μm/h〜1000μm/hの範囲であり、1μm/h以上が好ましく、10μm/h以上がより好ましく、100μm/h以上であることがさらに好ましい。
また、原料を液相内に均一に分布させるために、液相を攪拌することが望ましい。攪拌方法は特に限定されないが、種結晶を回転させて攪拌する方法、攪拌翼を入れ回転させて攪拌させる方法、ガスで液相をバブリングする方法、送液ポンプで攪拌する方法等が挙げられる。
本発明に係る成長工程についてのその他の条件は特に限定されず、フラックス法等の液相成長法に用いられる手法を適宜採用して、本発明の成長工程に適用してもよい。具体的には、フラックス法で主に用いられている温度差(Gradient Transport)法、徐冷(Slow Cooling)法、温度サイクル(Temperature
Cycling)法、るつぼ加速回転(Accelerated Crucible Rotation)法、トップシード(Top−Seeded Solution Growth)法、溶媒移動法及びその変形である溶媒移動浮遊帯域(Traveling−Solvent Floating−Zone)法並びに蒸発法等、さらにはこれらの方法を任意に組み合わせた方法が挙げられる。
本発明の製造方法は、「原料及び溶媒を含む溶液又は融液を作製する工程」を含むものであるが、これは前述した成長工程の前段階として、エピタキシャル成長に使用する液相用の溶液又は融液を調製する工程を意味する。例えば、原料を溶媒に溶かす操作、又は溶媒となる化合物が常温で固体である場合、加熱等を行って融液を調整する操作も、溶液又は融液を作製する工程に含まれる。ただし、原料及び溶媒を含む溶液又は融液とは、原料が溶媒に完全に溶解されている必要はなく、固体原料が分散又は固形物として溶液中に存在する不均一系であってもよい。また、かかる工程は、成長工程に使用する図2の装置内で行うことができる。例えば、反応容器104内に原料及び溶媒となる化合物を入れておき、電気炉111で反応管105を加熱することによって、溶液又は融液102を作製することが挙げられる。
本発明の製造方法は前述した工程のほか、得られた結晶を目的の大きさにするスライスするスライス工程、表面を研磨する表面研磨工程等が含まれてもよい。スライス工程としては、具体的にはワイヤースライス、内周刃スライス等が挙げられ、表面研磨工程としては、例えばダイヤモンド砥粒等の砥粒を用いて表面を研磨する操作、CMP(chemical mechanical polishing)、機械研磨後RIEでダメージ層エッチングする操作が挙げられる。
本発明の製造方法によって製造される周期表第13族金属窒化物結晶の種類は、周期表第13族金属元素を含む窒化物結晶であれば特に限定されないが、例えば、GaN、AlN、InN等の1種類の周期表第13族金属元素からなる窒化物のほかに、GaInN、AlGaN等の2種類以上の周期表第13族金属元素からなる混晶が挙げられる。
本発明の製造方法によって製造される周期表第13族金属窒化物結晶は、さまざまな用途に用いることができる。特に紫外〜青色の発光ダイオード又は半導体レーザー等の比較的短波長側の発光素子、及び緑色〜赤色の比較的長波長側の発光素子を製造するための基板として、さらに電子デバイス等の半導体デバイスの基板としても有用である。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例>
気相に水素含有ガスを供給し、かつ水素含有ガスの分圧を経時的に増加させながら、種結晶上へのGaN結晶成長を実施した実験について、以下、図2を参照して説明する。
(1)Arボックス内にて、Ti製反応容器104(外径34mm、内径30mm、高さ200mm)に、GaN結晶成長の原料101であるLi3GaN2 10.5g、及び溶媒102としてLiCl 105gを順次投入した。
(2)Ti製反応容器104を石英製反応管105に入れ、タングステン(W)製の種結晶保持棒108に、Ta製のワイヤー103を用いてGaN種結晶100(面指数20−21、縦5mm×横10mm、厚み325μm)を結び付けたものを、石英製反応管内105に差し込んだ後、石英製反応管105をArボックスから取り出した。
(3)石英製反応管105を電気炉111に固定した後、真空ポンプを用いてガス導入管110を通して石英製反応管内を1.3×10-4atm未満の減圧状態とした。
(4)調節弁109を開き、ガス導入管110からH2濃度5vol%のH2/N2混合ガスを導入して石英製反応管内を復圧した後、調節弁107を開き、ガス排気管106を介して、H2/N2混合ガスを0.1L/minで流通させた。
(5)電気炉111を用いて、Ti製反応容器104の内温が室温から750℃になるまで1時間かけて昇温しLiClを溶融させ、750℃でさらに2時間保持した後、種結晶100を溶液中に入れて種結晶上でのGaN結晶成長を開始した。その際に、種結晶保持棒108を介して種結晶100を100rpmの速度で回転させた。
(6)流通しているH2/N2混合ガスのH2濃度を5vol%(気相の全圧:1atm、H2の分圧:0.05atm、N2の分圧:0.95atm)としたまま24時間保持した後、H2濃度を10vol%(気相の全圧:1atm、H2の分圧:0.10atm、N2の分圧:0.90atm)に増加させて24時間保持し、その後H2濃度を20vol%(気相の全圧:1atm、H2の分圧:0.20atm、N2の分圧:0.80atm)に増加させて24時間保持し、さらにH2濃度を40vol%(気相の全圧:1atm、H2の分圧:0.40atm、N2の分圧:0.60atm)にまで増加させて21時間保持し、計93時間のGaN結晶成長を行った(混合ガス流通量は常に0.1L/min)。(7)結晶成長後、GaN結晶が成長した種結晶100を溶液から抜き出し、流通ガスをN2ガス0.1L/minに切替え、電気炉111による加熱を停止してから、石英製反応管105を自然冷却した。
(8)種結晶保持棒108を石英反応管内から抜き出しTa製ワイヤー103を切り取って種結晶100を取り出した後、種結晶100の表面に付着したLiClを温水で溶かしてから純水で洗浄し、これを乾燥させた。
乾燥後の種結晶100の質量を測定したところ、+34.7mgの質量増加が認められ、溶液中での総保持時間93時間での平均結晶成長速度は31.3μm/dayであり、30μm/day以上の結晶成長速度が長時間維持されていたことが確認された。なお、成長時間(総保持時間)と平均結晶成長速度の関係を示したグラフを図3に示す。
<比較例1>
気相に一定分圧の水素含有ガスを供給しながら、種結晶上へのGaN結晶成長を実施した実験について、以下の比較例にて説明する。
結晶成長中に流通しているH2/N2混合ガスのH2濃度を常に10vol%(気相の全圧:1atm、H2の分圧:0.10atm、N2の分圧:0.90atm)で一定とし、かつ、以下の条件(本対比実験の効果を確認する上で本質的な差ではない)とした以外は
、実施例と同様の操作・条件にして、GaNの結晶成長を行った。
条件:
・原料101としてLi3GaN2 4.5g、溶媒102としてLiCl 107gを使用・種結晶100の面指数が10−10
・内温750℃に到達後、1時間保持してから種結晶100を溶液に入れ、750℃にて21時間保持
結晶成長後の種結晶100の質量を測定したところ、+8.1mgの質量増加が認められ、溶液中での保持時間21時間での平均結晶成長速度は28.7μm/dayであり、後述の参考例で示す結晶成長初期の成長速度(52.9μm/day)が、保持時間21時間の時点で既に維持されておらず、結晶成長速度が大きく低下していることが確認された。なお、成長時間(総保持時間)と平均結晶成長速度の関係を示したグラフを図3に示す。
<比較例2>
結晶成長中に流通しているH2/N2混合ガスのH2濃度を常に10vol%(気相の全圧:1atm、H2の分圧:0.10atm、N2の分圧:0.90atm)で一定とし、かつ、以下の条件(本対比実験の効果を確認する上で本質的な差ではない)とした以外は、実施例と同様の操作・条件にして、GaNの結晶成長を行った。
条件:
・原料101としてLi3GaN2 6.0g、溶媒102としてLiCl 105gを使用・種結晶100の面指数が10−10
・内温750℃に到達後、2時間保持してから種結晶100を溶液に入れ、750℃にて37時間保持
結晶成長後の種結晶100の質量を測定したところ、+5.2mgの質量増加が認められ、溶液中での保持時間37時間での平均結晶成長速度は11.7μm/dayであり、比較例1で示した保持時間21時間以降も結晶成長は生じていないことが確認された。なお、成長時間(総保持時間)と平均結晶成長速度の関係を示したグラフを図3に示す。
<参考例>
(実施例、比較例1、2と同等の条件下における結晶成長初期の成長速度を把握するための実験)
結晶成長中に流通しているH2/N2混合ガスのH2濃度を常に10vol%(気相の全圧:1atm、H2の分圧:0.10atm、N2の分圧:0.90atm)で一定とし、かつ、以下の条件(本対比実験の効果を確認する上で本質的な差ではない)とした以外は、実施例と同様の操作・条件にして、GaNの結晶成長を行った。
条件:
・原料101としてLi3GaN2 4.5g、溶媒102としてLiCl 105gを使用・種結晶100の面指数が10−10
・内温750℃に到達後、1.5時間保持してから種結晶100を溶液に入れ、750℃にて13時間保持
結晶成長後の種結晶100の質量を測定したところ、+9.5mgの質量増加が認められ、溶液中での保持時間13時間での平均結晶成長速度は52.9μm/dayであることが確認された。なお、成長時間(総保持時間)と平均結晶成長速度の関係を示したグラフを図3に示す。
図3より、水素含有ガスを含む気相の存在下で、水素含有ガスの分圧を変化させながら結晶成長を進めることにより、結晶成長速度の低下を抑制することができることが明らか
である。
100 種結晶(GaN)
101 原料(Li3GaN2
102 液相(溶液又は融液 LiCl)
103 ワイヤー
104 反応容器
105 反応管
106 ガス排気管
107 調節弁
108 種結晶保持具
109 調節弁
110 ガス導入管
111 電気炉

Claims (10)

  1. 原料及び溶媒を含む溶液又は融液を作製する工程と、前記溶液又は融液である液相並びに気相の存在下、前記液相中で周期表第13族金属窒化物結晶をエピタキシャル成長させる成長工程とを含む、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法であって、
    前記気相が水素含有ガスを含み、
    前記成長工程において、前記気相における水素含有ガスの圧力PHを、下記式(1)を満たすように変化させることを特徴とする、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
    Figure 2013203654
    {式(1)中、PH,1は前記成長工程中の任意の時点における水素含有ガスの圧力を表す。PH,2は前記任意の時点から水素含有ガスの圧力が変化した後の任意の時点における水素含有ガスの圧力を表す。}
  2. 前記気相がさらに窒素含有ガスを含み、
    前記成長工程が、さらに前記気相における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力PH+Nについて下記式(2)を満たすものである、請求項1に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
    Figure 2013203654
    {式(2)中、PH+N,1は前記PH,1と同一時点における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を表す。PH+N,2は前記PH,2と同一時点における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を表す。}
  3. 原料及び溶媒を含む溶液又は融液を作製する工程と、前記溶液又は融液である液相並びに気相の存在下、前記液相中で周期表第13族金属窒化物結晶をエピタキシャル成長させる成長工程とを含む、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法であって、
    前記気相が少なくとも水素含有ガス及び窒素含有ガスを含み、
    前記成長工程において、前記気相における窒素含有ガスの分圧PNを、下記式(3)を満たすように変化させることを特徴とする、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
    Figure 2013203654
    {式(3)中、PN,1は前記成長工程中の任意の時点における窒素含有ガスの分圧を表す。PN,2は前記任意の時点から窒素含有ガスの分圧が変化した後の任意の時点における窒素含有ガスの分圧を表す。}
  4. 前記成長工程が、さらに前記気相における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力PH+Nについて下記式(4)を満たすものである、請求項3に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
    Figure 2013203654
    {式(4)中、PH+N,1は前記PN,1と同一時点における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を表す。PH+N,2は前記PN,2と同一時点における水素含有ガスと窒素含有ガスの合計圧力を表す。}
  5. 原料及び溶媒を含む溶液又は融液を作製する工程と、前記溶液又は融液である液相並びに気相の存在下、前記液相中で周期表第13族金属窒化物結晶をエピタキシャル成長させる成長工程とを含む、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法であって、
    前記気相が少なくとも水素含有ガス及び窒素含有ガスを含み、
    前記成長工程において、前記気相における水素含有ガスの分圧PH及び/又は窒素含有ガスの分圧PNを、下記式(5)を満たすように変化させることを特徴とする、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
    Figure 2013203654
    {式(5)中、PH,1は前記成長工程中の任意の時点における水素含有ガスの分圧を、PN,1はPH,1と同一時点における窒素含有ガスの分圧を表す。PH,2は前記任意の時点から水素含有ガスの分圧及び/又は窒素含有ガスの分圧が変化した後の任意の時点における水素含有ガスの分圧を、PN,2はPH,2と同一時点における窒素含有ガスの分圧を表す。}
  6. 前記成長工程が、さらに前記気相における水素含有ガスの分圧PHについて下記式(6)を満たすものである、請求項5に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
    Figure 2013203654
  7. 前記水素含有ガスが水素ガスである、請求項1乃至6の何れか1項に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  8. 前記窒素含有ガスが窒素ガスである、請求項2乃至7の何れか1項に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  9. 前記原料が周期表第13族金属元素及び周期表第13族金属元素以外の金属元素を含有する複合金属窒化物である、請求項1乃至8の何れか1項に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  10. 前記溶媒が金属塩を主成分とする溶媒である、請求項1乃至9の何れか1項に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
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