JP2013209229A - 周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法 - Google Patents

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集 福村
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雄也 齋藤
Sumitaka Ito
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Abstract

【課題】周期表第13族金属窒化物結晶の液相成長法において生じる結晶成長速度の低下を抑制し、長時間安定的に結晶成長を進めることができる周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】液相成長法を利用した周期表第13族金属窒化物結晶の結晶成長過程において、液相に接する気相に水素含有ガスを導入して結晶成長を進める一方、結晶成長に使用した溶液又は融液(液相)について気液界面の面積が大きくなるように処理し、かかる処理を行った溶液又は融液を液相として再度結晶成長に利用することにより、結晶成長速度の低下を抑制し、長時間安定的に結晶成長を進めることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、液相成長法を利用した周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法に関する。
GaNに代表される周期表第13族金属窒化物半導体は、大きなバンドギャップを有し、さらにバンド間遷移が直接遷移型であることから、紫外、青色等の発光ダイオードや半導体レーザー等の比較的短波長側の発光素子として実用化されている。これらの素子は、同種の材料からなり、かつ転位密度の少ない高品質な基板を用いて製造されることが好ましく、このような基板となり得る周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法が盛んに研究されている。代表的な製造方法としては、ハライド気相成長法(HVPE法)や有機金属化学蒸着法(MOCVD法)等の気相成長法が一般的に知られているが、最近では品質向上及び経済性の観点等から、フラックス法等の液相成長法の検討も進められている。
フラックス法等の液相成長法では、液相中に窒素が溶解しにくい、もしくは原料となる窒素化合物が分解しやすい等の理由から、液相中の窒素濃度を十分に確保することが難しく、このような環境で結晶成長を行うと微細な結晶が形成したり、結晶にN欠陥が生じ易い傾向にある。従って、例えばアルカリ金属を添加したガリウムの合金融液を用いる結晶成長法においては、液相中の窒素濃度を確保するために、高圧条件が採用されている(特許文献1参照)。しかしながら、高圧条件を必要とする結晶成長法では、生産コストや安全性の観点で問題がある。
かかる問題に対処する技術として、例えばLi3GaN2等の周期表第13族金属元素及び周期表第13族金属元素以外の金属元素を含有する複合窒化物を用いる製造方法が提案され、比較的低圧条件で効率よく結晶成長を進めることが可能となっている(特許文献2参照)。
特開2005−306709号公報 特開2007−084422号公報
Li3GaN2等の周期表第13族金属元素及び周期表第13族金属元素以外の金属元素を含有する複合窒化物を原料として用いることにより、液相中の窒素濃度を十分に確保することが可能となる一方、新たな課題も浮き彫りとなっている。例えば、Li3GaN2を原料として用いてGaNを成長させる場合を例に挙げて説明すると、結晶成長は以下の反応式[1]に示される平衡反応によって進行し、結晶成長とともにLi3Nが副生成物として生成することになる。
Li3Nは液相に溶解し易いため、結晶成長の進行とともに液相中のLi3N濃度は上昇することになるが、反応式[1]からも明らかなように、Li3Nの濃度上昇に伴って結晶成長速度は徐々に低下することになり、最終的に平衡に達して結晶成長は停止することになる。
かかる課題に対して、本発明者らは液相に接する気相に水素(H2)等の水素含有ガス
を導入して、液相中に水素成分を溶解させることにより、Li3N等の副生成物を水素化して分解することができることを見出しているが(例えば、Li3Nのリチウムアミドへの分解反応は、下記反応式[2]に示される反応によって進行すると考えられる)、水素含有ガスを導入した場合であっても、結晶成長が長時間に及ぶ場合には、結晶成長速度が低下してしまう事象が生じていた。
即ち、本発明は周期表第13族金属窒化物結晶の液相成長法において生じる結晶成長速度の低下を抑制し、長時間安定的に結晶成長を進めることができる周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、液相成長法を利用した周期表第13族金属窒化物結晶の結晶成長過程において、液相に接する気相に水素含有ガスを導入して結晶成長を進める一方、結晶成長に使用した溶液又は融液(液相)について気液界面の面積が大きくなるように制御し、かかる処理を行った溶液又は融液を液相として再度結晶成長に利用することにより、長時間安定的に結晶成長を進めることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 原料及び溶媒を含む溶液又は融液を作製する工程と、前記溶液又は融液である液相並びに水素含有ガスを有する気相の存在下、前記液相中で周期表第13族金属窒化物結晶をエピタキシャル成長させる成長工程とを含む周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法であって、前記成長工程が、下記式(1)の条件を満たす正反応促進工程及び逆反応促進工程を含み、前記正反応促進工程に使用した前記溶液又は融液を前記逆反応促進工程に使用し、前記逆反応促進工程に使用した前記溶液又は融液を前記正反応促進工程で使用することを特徴とする周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
F/VF < SR/VR ・・・ (1)
(式(1)中、SFは正反応促進工程における前記液相と前記気相の気液界面の面積、VFは正反応促進工程における前記液相の体積を表し、SRは逆反応促進工程における前記液相と前記気相の気液界面の面積、VRは逆反応促進工程における前記液相の体積を表す。)
<2> 前記SR/VRが35m-1より大きい値である、<1>に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
<3> 前記逆反応促進工程が、管状部材を用いて前記液相にガスを吹き込む操作を含むものである、<1>又は<2>に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
<4> 液相に吹き込む前記ガスが、窒素含有ガス及び/又は不活性ガスを含むガスである、<3>に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
<5> 前記逆反応促進工程がさらに下記式(2)の条件を満たす工程である、<3>又は<4>に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
R 3・hR 3/DR・VR 3≧1×10-6[m2/s3] ・・・(2)
(式(2)中、FRは液相に吹き込む前記ガスの流量、hRは前記管状部材の開口部の液面から測った深さ、DRは前記管状部材の開口部の直径又は円相当径、VRは前記液相の体積を表す。)
<6> 液相に吹き込む前記ガスの気泡の粒径が1cmより小さいものである、<3>乃至<5>の何れかに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
<7> 前記FRが1cm3/minよりも大きい値である、<5>又は<6>に記載の周期表第13族窒化物結晶の製造方法。
<8> 前記hRと液相の液深LRの比(hR/LR)が0.1より大きい値である、<5>乃至<7>の何れかに記載の周期表第13族窒化物結晶の製造方法。
<9> 前記溶液又は融液が、周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素を含むものである、<1>乃至<8>の何れかに記載の周期表第13族窒化物結晶の製造方法。
<10> 前記成長工程が、周期表第13族金属元素と周期表第13族金属元素以外の金属元素とを含有する複合窒化物を原料として用いるものである、<1>乃至<9>の何れかに記載の周期表第13族窒化物結晶の製造方法。
本発明によれば、長時間安定的に結晶成長を進めることができる周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法を提供することができる。
本発明に係る成長工程に使用する装置の概念図である。 実施例1及び2において使用した装置の概念図である。 比較例において使用した装置の概念図である。 O、M、および無次元数であるレイノルズ数Reとの相関を示す線図である。 M、Re、CDとの相関を示す線図である。
本発明の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法について、以下詳細に説明するが、本発明の趣旨に反しない限り、これらの内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」を用いてあらわされる数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
<周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法>
本発明の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、「原料及び溶媒を含む溶液又は融液を作製する工程」と「液相中で周期表第13族金属窒化物結晶をエピタキシャル成長させる成長工程(以下、「本発明に係る成長工程」と略す場合がある。)」を含む、いわゆる液相成長法を利用した周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法である。そして、本発明に係る成長工程は、下記式(1)の条件を満たす正反応促進工程及び逆反応促進工程を含み、正反応促進工程に使用した溶液又は融液を逆反応促進工程に使用し、逆反応促進工程に使用した溶液又は融液を正反応促進工程で使用することを特徴とする。
F/VF < SR/VR ・・・ (1)
(式(1)中、SFは正反応促進工程における気液界面の面積、VFは正反応促進工程における液相の体積を表し、SRは逆反応促進工程における気液界面の面積、VRは逆反応促進工程における液相の体積を表す。)
なお、本発明において「成長工程」とは、工程中のいずれかの段階においてエピタキシャル成長している工程を意味し、必ずしも、全成長工程中において常にエピタキシャル成長している工程には限られないことものとする。
前述のように、Li3GaN2等を原料として用いてGaNを成長させる場合、結晶成長は反応式[1]に示される平衡反応によって進行し、結晶成長とともにLi3Nの濃度が上昇して、結晶成長速度は徐々に低下することになる。
このような現象は、Li3GaN2を原料として用いる場合に限られず、周期表第13族
金属窒化物結晶をメルトバック(再溶解)させるLi3N等の周期表第1族金属窒化物(又は周期表第2族金属窒化物)が副生成物として生じる成長法において広く当てはまることである。従って、長時間安定的に結晶成長を進めるためには、これらの副生成物の濃度上昇を抑制する、即ち反応式[1]における正反応(Li3GaN2→GaN+Li3N)を促進する手段が必要となる。但し、これらの副生成物の存在は、周期表第13族金属窒化物結晶の急激な生成を抑え、雑晶の産生の抑制や結晶性を高める役割も果たしており、単にこれらの副生成物の濃度を低下させるだけでなく、適切な濃度に精密に調節することができる技術が、高品質な周期表第13族金属窒化物結晶を得るために必要である。
かかる課題に対して、本発明者らは液相に接する気相に水素(H2)等の水素含有ガス(気体の水素含有分子)を導入して、液相中に水素成分を溶解させることにより、Li3N等の副生成物を水素化して分解することができることを見出している(例えば、水素成分によるLi3Nの分解物としては、水素化リチウム、リチウムイミド、又はリチウムアミド等が挙げられる。Li3Nのリチウムアミドへの分解反応は、下記反応式[2]に示される反応によって進行すると考えられ、かかる反応もまた平衡反応である。)。かかる操作は、反応式[1]及び[2]における正反応(Li3GaN2→GaN+Li3N、Li3N+3H2+N2→3LiNH2)を促進する操作として極めて有効(簡易的かつ精密な制御が可能)である。
水素含有ガスを導入することによって、反応式[1]及び[2]における正反応(Li3GaN2→GaN+Li3N、Li3N+3H2+N2→3LiNH2)を促進することが可能となったが、それでもなお結晶成長が長時間に及ぶ場合には、結晶成長速度が低下することを本発明者らは明らかとしている。これは、リチウムイミドやリチウムアミド等のLi3N等の分解物の濃度上昇によって、結局は溶解したLi3GaN2の分解反応(つまりGaN析出反応)が鈍化するためであると考えられる。
そこで本発明者らは、液相に接する気相に水素含有ガスを含むガスを導入して結晶成長を進める(正反応を促進する)一方、結晶成長に使用した溶液又は融液(液相)について単位液量あたりの気液界面の面積が大きくなるように処理し、液相中のリチウムアミド等の水素成分の濃度を低下させて、反応式[1]及び[2]における逆反応(Li3GaN2←GaN+Li3N、Li3N+3H2+N2←3LiNH2)を促進することにより、結晶成長に好適な組成に溶液又は融液(液相)を再生させることができることを見出した。かかる処理を行った溶液又は融液(液相)を再度結晶成長に利用することにより、結晶成長工程全体として良好な結晶成長速度を確保することができる。なお、反応式[1]からも明らかなように、反応式[1]及び[2]における逆反応を促進させると、生成したGaNはメルトバック(再溶解)することになるが、通常液相中には目的とする結晶(例えば、種結晶(シード)上に形成した結晶)以外の結晶塊(多くは雑晶)が多量に析出しているため、これらの結晶塊をGaN源として利用することができる。これは目的とする結晶以外の結晶塊を原料に再利用することになるため、原料の利用効率の観点からも好ましい方法であると言える。
本発明に係る成長工程は、正反応促進工程及び逆反応促進工程を含むことを特徴とするが、以下、正反応促進工程及び逆反応促進工程について詳細に説明する。
正反応促進工程とは反応式[1]及び[2]における正反応(Li3GaN2→GaN+Li3N、Li3N+3H2+N2→3LiNH2)を促進することを目的として条件設定を行う工程であり、具体的には水素含有ガスを有する気相の存在下、かかる気相に接する液相中で周期表第13族金属窒化物結晶をエピタキシャル成長させる工程である。一方、逆反応促進工程とは反応式[1]及び[2]における逆反応(Li3GaN2←GaN+Li3N、Li3N+3H2+N2←3LiNH2)を促進することを目的として条件設定を行う
工程であり、具体的には気液界面の面積と液相の体積の比(S/V)が式(1)の条件を満たすように、即ち、気液界面の面積と液相の体積の比(S/V)が正反応促進工程よりも大きくなるように制御する工程である。気液界面の面積と液相の体積の比(S/V)を正反応促進工程よりも大きくなるように制御することにより、液相中のリチウムアミド等の水素成分の濃度を低下させることができる。従って、逆反応促進工程は、言い換えれば気液界面の面積と液相の体積の比(S/V)を正反応促進工程よりも高めて、液相中の水素成分の濃度を低下させる工程であると言える。
また、「成長工程が、(中略)正反応促進工程及び逆反応促進工程を含み」とは、周期表第13族金属窒化物結晶をエピタキシャル成長させる結晶成長過程において、正反応促進工程と逆反応促進工程をそれぞれ複数回実施してもよいことを意味するものとする。さらに正反応促進工程と逆反応促進工程は、それぞれ経時的に独立して実施する必要はなく、正反応促進工程と逆反応促進工程を同時並行で実施してもよいものとする。
さらに、「正反応促進工程に使用した溶液又は融液を逆反応促進工程に使用し、逆反応促進工程に使用した溶液又は融液を正反応促進工程で使用する」とは、具体的には以下の(a)及び(b)のような態様が挙げられる。
(a)正反応促進工程と逆反応促進工程を交互に実施する成長工程
(b)正反応促進工程と逆反応促進工程を同時並行で実施する成長工程
(a)の態様としては、例えば水素含有ガスを有する気相の存在下、かかる気相に接する液相中で結晶成長を一定時間進めた後、気液界面の面積が大きくなるように液相にガスを吹き込む操作等を一定時間行い、かかる操作を停止して結晶成長を再開する、といったように正反応促進工程と逆反応促進工程を交互に実施するものが挙げられる。かかる態様は、1つの反応系内で簡易的に実施することができるため、操作性の観点において優れる方法である。なお、かかる態様における正反応促進工程と逆反応促進工程の各実施時間はその他の条件等に応じて適宜設定されるべきものであるが、正反応促進工程の実施時間は、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましく10時間以上であり、通常300時間以下、好ましくは100時間以下、より好ましくは50時間以下である。また、逆反応促進工程の実施時間は、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましく10時間以上であり、通常300時間以下、好ましくは100時間以下、より好ましくは50時間以下である。上記範囲内であると、正反応促進工程と逆反応促進工程の実施時間のバランスを保つことができ、成長工程全体として良好な結晶速度を確保することができる。
また、かかる態様においては、正反応促進工程から逆反応促進工程に移行する際に、目的とする結晶、例えば結晶層が形成した種結晶を液相から引き上げる等して、目的とする結晶のメルトバック(再溶解)を防止する処置を講じることが好ましい。かかる処置によって、結晶成長の後退を防止できるとともに、液相に析出した目的外の結晶塊を原料として再利用することができ、原料の利用効率の観点からも好ましい。
(b)の態様としては、例えば結晶成長を一定時間進めた溶液又は融液(液相)の一部を、分離された別の容器又は室に移し、そこで気液界面の面積が大きくなるように液相にガスを吹き込む操作等を一定時間行い、再度結晶成長が進む容器又は室に戻して結晶成長に再利用する、といったように正反応促進工程と逆反応促進工程を別の容器又は室で、同時並行で実施するものが挙げられる。かかる態様は、正反応、即ち結晶成長を停止させる必要がなく、結晶成長の効率性の観点において優れる方法である。
本発明に係る成長工程は、水素含有ガス(気体の水素含有分子)を有する気相の存在下、かかる気相に接する液相中で周期表第13族金属窒化物結晶をエピタキシャル成長させる工程であるが、水素含有ガスの種類は特に限定されない。具体的なものとしては水素ガス(H2)、アンモニアガス(NH3)等が挙げられる。この中でも特に水素ガス(H2)が特に好ましい。水素ガス(H2)であると、高温下においても分解することがなく、ガス組成の制御がしやすいという利点がある。また、かかる気相は、水素含有ガス以外のガス
を有することが好ましく、窒素含有ガス(気体の窒素含有分子)及び/又は不活性ガスを有することがより好ましい。水素含有ガス以外のガスとしては、窒素ガス(N2)、アルゴンガス(Ar)等が挙げられるが、特に窒素ガス(N2)が好ましい。窒素ガス(N2)であると、適度に液相中のLi3N等の副生成物濃度を保持することができるため、急激な反応の進行による雑晶の析出が抑制でき、かつ低N欠陥の結晶が得られるという利点がある。
さらに気相中の水素含有ガスの濃度は特に限定されないが、例えば水素ガス(H2)の場合、通常0.001mol%以上、好ましくは0.1mol%以上、より好ましくは1mol%以上であり、通常99.9mol%以下、好ましくは99mol%以下、より好ましくは90mol%以下である。水素含有ガス以外のガスの濃度も特に限定されないが、例えば窒素ガス(N2)を含む場合は、通常0.1mol%以上、好ましくは1mol%以上、より好ましくは10mol%以上であり、通常100mol%以下、好ましくは99.9mol%以下、より好ましくは99mol%以下である。
本発明に係る正反応促進工程及び逆反応促進工程は、気液界面の面積と液相の体積の比(S/V)が下記式(1)の条件を満たす関係にある。
F/VF < SR/VR ・・・ (1)
(式(1)中、SFは正反応促進工程における気液界面の面積、VFは正反応促進工程における液相の体積を表し、SRは逆反応促進工程における気液界面の面積、VRは逆反応促進工程における液相の体積を表す。)
中でも、SR/VRの値は、SF/VFの値の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、5倍以上であることがさらに好ましく、10倍以上であることが特に好ましく、また、1000倍以下であることが好ましく、100倍以下であることがより好ましい。下限値未満の場合には、単位液量あたりの気液界面の面積を所定量に設定することができず、結晶成長に好適な液相を十分に再生することができない傾向がある。上限値超過の場合には、気相を介して液相中に不純物が混入しやすくなり、後の正反応促進工程において得られる結晶の品質が悪くなる傾向がある。
一方で、SRの値は、SFの値よりも大きいことが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることがさらに好ましく、5倍以上であることがよりさらに好ましく、10倍以上であることが特に好ましく、また、1000倍以下であることが好ましく、100倍以下であることがより好ましい。下限値未満の場合には、気液界面の面積を所定量に設定することができず、結晶成長に好適な液相を十分に再生することができない傾向がある。上限値超過の場合には、気相を介して液相中に不純物が混入しやすくなり、後の正反応促進工程において得られる結晶の品質が悪くなる傾向がある。
なお、本発明における気液界面の面積の数値(SF、SR)は、測定が容易である場合には実測値を表すこととし、後述の液相中へのガス吹き込み(バブリング)操作等により測定が困難である場合には計算により算出した理論値を代用してもよいものとする。例えば、円筒形容器に液相を保持し、あるガス流量にて液相中へガス吹き込み操作を行なう場合、気液界面の面積の総和Sは近似的には円筒形容器の断面積(水平方向)と気泡の総表面積との和として表されるので後述する気泡の粒径の理論値RBを用いると、以下のよう計算される。
(円筒形容器断面積:A、液相に定常的に滞留している気泡の数:N、気泡の表面積:SB、円筒形容器の内径:DC
ここで、液相に定常的に滞留している気泡の数Nは気泡の上昇速度vBを用いて以下のように計算される。
(液相に吹き込むガス流量:FR、管状部材の開口部の液面から測った深さ:hR
気泡の上昇速度vBについては、一般的に用いられる終端速度式を適用すると、液相および吹き込みガスの物性値(密度)を用いて以下のように算出することができる。
(重力加速度:g、液相の密度:ρl、吹き込みガスの密度:ρg、抵抗係数:CD
以上の関係式より、気液界面の面積の総和Sは以下のように纏められる。
抵抗係数CDは、一般的に知られているような無次元数との相関を表す線図から求めることができる。例えば、まず無次元数であるエトベス数EO、モルトン数Mを下記式から算出し、図4に示すようなEO、M、および無次元数であるレイノルズ数Reとの相関を示す線図からReを求め、さらに図5に示すようなM、Re、CDとの相関を示す線図から抵抗係数CDの値を求めることができる。

(σ:液相の表面張力、μl:液相の粘度)
また、気液界面の面積と液相の体積の比、即ちSF/VFとSR/VRの値は、式(1)の関係にあれば、具体的数値は特に限定されないが、SF/VFは通常1m-1以上、好ましくは3m-1以上、より好ましくは5m-1以上であり、通常100m-1以下、好ましくは50m-1以下、より好ましくは35m-1以下である。一方、SR/VRは通常35m-1より大きく、好ましくは50m-1以上、より好ましくは100m-1以上であり、通常1000m-1以下、好ましくは500m-1以下、より好ましくは300m-1以下である。
さらに、SF及びSR並びにVF及びVRの具体的数値も特に限定されないが、SFは通常0.00001m2以上、好ましくは0.00005m2以上、より好ましくは0.0001m2以上であり、通常100m2以下、好ましくは50m2以下、より好ましくは30m2以下である。SRは通常0.0003m2以上、好ましくは0.0005m2以上、より好ましくは0.001m2以上であり、通常1000m2以下、好ましくは500m2以下、より好ましくは300m2以下である。VFは通常0.00001m3以上、好ましくは0.00005m3以上、より好ましくは0.0001m3以上であり、通常1m3以下、好ましくは0.5m3以下、より好ましくは0.3m3以下である。VRは通常0.00001m3以上、好ましくは0.00005m3以上、より好ましくは0.0001m3以上であり、通常1m3以下、好ましくは0.5m3以下、より好ましくは0.3m2以下である。上記範囲であると、成長工程全体として良好な初期結晶成長速度を確保することができる。
本発明に係る正反応促進工程は、水素含有ガスを有する気相の存在下、かかる気相に接する液相中で結晶成長させる工程であれば、その他の条件等については特に限定されないが、気相に水素含有ガスを含むガスを導入しながら行う工程であることが好ましい。なお、水素含有ガスを含むガスの具体的な種類も特に限定されないが、前述した水素含有ガス、及び水素含有ガス以外のガスの混合ガスが挙げられる。導入するガスの流量は、ガスの種類やその他の条件に応じて適宜設定されるべきものであるが、常温常圧に換算した量で、通常0.1cm3/min以上、好ましくは1cm3/min以上、より好ましくは10cm3/min以上であり、通常10000cm3/min以下、好ましくは5000cm3/min以下、より好ましくは1000cm3/min以下である。上記範囲であると、良好な初期結晶成長速度を確保することができる。
本発明に係る逆反応促進工程は、気液界面の面積と液相の体積の比(S/V)が式(1)の条件を満たす関係にある、即ち、気液界面の面積と液相の体積の比(S/V)が正反応促進工程よりも大きくなるように処理する工程であるが、気液界面の面積と液相の体積の比(S/V)を大きくするための具体的操作は特に限定されない。例えば、液相を撹拌する操作、液相を移し替える操作、液相をノズル等を用いて液滴にする(アトマイズ)操作、液相にガスを吹き込む操作等が挙げられるが、液相にガスを吹き込む操作が簡便かつ効果的であるため好ましい。なお、これらの操作は1種類に限られず、同一又は異なる操作を複数回実施してもよい。
液相にガスを吹き込む操作は、例えば管状部材を用いて行うことができる。管状部材とは、反応系の外からガスを取り込み、そのガスを液相に吹き込むことができる管状の形状を有するものを示すが、具体的形状は特に限定されない。但し、液相にガスを吹き込むための開口部の直径又は円相当径(DR)、管状部材の開口部の液面から測った深さ(hR)については、後述する式(2)の条件を満たすように設定することが好ましいため、かかる設定が行えるような全体形状であることが好ましい。
また、管状部材の材質は、結晶成長に悪影響を与えないものであれば特に限定されないが、熱的および化学的に安定な金属、酸化物、窒化物、炭化物等を主成分とすることが好ましい。具体的には、周期表第4族金属元素(Ti、Zr、Hf)を含む金属であることが好ましく、Tiを含む金属であることがより好ましい。また、反応容器の材質は、加工性や機械的耐久性に富む材質であることが好ましく、90質量%以上が前記第4族金属元素である金属を用いることがより好ましく、99質量%以上が前記第4族金属元素である金属を用いることがさらに好ましい。さらにこれらの反応容器の表面は、周期表第4族金属元素の窒化物からなることが好ましく、後述するような窒化処理方法によってあらかじめ窒化物を形成することが好適である。
液相に吹き込むガスの種類は特に限定されないが、窒素含有ガス(気体の窒素含有分子)及び/又は不活性ガスを含むガスであることが好ましい。具体的なガスとしては、窒素ガス(N2)、アルゴンガス(Ar)等が挙げられるが、特に窒素ガス(N2)が好ましい(液相に吹き込むガスの流量等については後述することとする)。
液相にガスを吹き込む操作は、管状部材の開口部を液相から離して吹き込むものであっても、或いは管状部材の開口部を液相中に浸し、吹き込むガスによって液相中に気泡を発生させる(バブリングする)ものであってもよい。気液界面の面積と液相の体積の比(S/V)を効果的に高めることができる観点から、管状部材の開口部を液相中に浸し、吹き込むガスによって液相中に気泡を発生させる(バブリングする)ことが好ましい。また、気泡を発生させる(バブリングする)場合、気泡の粒径は1cmよりも小さくなるようにすることが好ましく、5mm以下になるようにすることがより好ましく、3mm以下になるようにすることがさらに好ましい。なお、本発明において気泡の粒径は、測定が容易で
ある場合には実測値を表すこととし、測定が困難である場合には計算により算出した理論値を代用してもよいものとする。気泡の粒径の理論値は、例えば以下の方法によって算出することができる。
開口部から気泡が発生し開口部から完全に離れる間、気泡に働く浮力と、開口部と気泡の接点に働く張力との力の釣り合いをとると下記式が成り立ち、気泡の粒径を算出することができる。

(管状部材開口部の径:DR、液相の表面張力:σ、重力加速度:g、液相と吹き込みガスの密度差:Δρ、気泡の粒径:RB
本発明に係る逆反応促進工程において、管状部材の開口部を液相中に浸し、吹き込むガスによって液相中に気泡を発生させる(バブリングする)場合、さらに下記式(2)の条件を満たすように設定することが好ましい。
R 3・hR 3/(DR・VR 3)≧1×10-6[m2/s3] ・・・(2)
(式(2)中、FRは液相に吹き込むガスの流量、hRは管状部材の開口部の液面から測った深さ、DRは管状部材の開口部の直径又は円相当径、VRは前記液相の体積を表す。)
式(2)の条件を満たすように設定することにより、気液界面の面積と液相の体積の比(S/V)を効果的に高めることができることができる。
R 3・hR 3/DR・VR 3の値は、式(2)の関係にあれば、具体的数値は特に限定されないが、好ましくは5×10-52/s3以上、より好ましくは1×10-42/s3以上であり、通常10m2/s3以下、好ましくは1m2/s3以下、より好ましくは0.1m2/s3以下である。
また、FR、hR、及びDRの具体的数値も特に限定されないが、FRは標準状態(25℃、1atm)において通常1cm3/minより大きく、好ましくは10cm3/min以上、より好ましくは100cm3/min以上であり、通常1000cm3/min以下、好ましくは750cm3/min以下、より好ましくは500cm3/min以下である。DRは通常0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上であり、通常50mm以下、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下である。上記範囲であると、成長工程全体として良好な初期結晶成長速度を確保することができる。
また、逆反応促進工程において、管状部材の開口部を液相中に浸し、吹き込むガスによって液相中に気泡を発生させる(バブリングする)場合、管状部材の開口部の液面から測った深さhRと液相の液深LR(hR/LR)の比は、0.05より大きい値であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.2以上であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、気液界面の面積と液相の体積の比(S/V)を効果的に高めることができることができる。
以下、本発明に係る成長工程のその他の条件について説明するに当たり、成長工程に使用する装置の概念図(図1)を参照するが、本発明の趣旨に反しない限り、これらの内容に限定されるものではない。
図1の装置は、ガス導入管110及びガス排気管106が取り付けられており、さらに
反応容器104が設置されている反応管105、及びかかる反応管を加熱するための電気炉111を備える構造である。反応容器104に原料102と液相として用いる溶液又は融液102を導入し、シード(種結晶)保持具108を利用することによって、種結晶100を溶液又は融液102内に設置することができる。
[原料]
本発明の製造方法に使用する原料は、目的とする周期表第13族金属窒化物結晶に応じて適宜設定することができるが、例えば、前述したLi3GaN2複合金属窒化物のように、周期表第13族金属元素及び周期表第13族金属元素以外の金属元素を含有する複合金属窒化物が好ましい。周期表第13族金属元素以外の金属元素の具体的種類は特に限定されないが、周期表第1族金属元素、周期表第2族金属元素等が挙げられる。即ち、周期表第13族金属元素と周期表第13族金属元素以外の金属元素とを含有する複合窒化物としては、Li3GaN2、Ca3Ga24、Ba3Ga24、Mg3GaN3等の周期表第13族金属元素と周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素とを含有する複合窒化物が挙げられる。なお、周期表第13族金属元素と周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素とを含有する複合窒化物は、例えば周期表第13族金属窒化物粉体と周期表第1族金属及び/又は周期表第2族金属窒化物粉体(例えばLi3N、Ca32)とを混合した後、加熱する方法(固相反応);周期表第13族金属元素と周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素とを含む合金を作製し、窒素雰囲気中で加熱する方法;等により調製することができる。例えばLi3GaN2は、Ga−Li合金を窒素雰囲気中で600〜800℃で加熱処理することによって作製することができる。
周期表第13族金属元素と周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素とを含有する複合窒化物以外の原料としては、周期表第13族金属窒化物そのものを用いることができる。その他に、例えば周期表第13族金属元素と周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素との合金からなるターゲットを用い、反応性スパッター法によって窒素プラズマと反応させて合成した混合窒化物膜を挙げることもできる。かかる混合窒化物膜は、化学的に合成が難しいような窒化物を用いる場合に好適である。
原料が成長工程における条件下で固体である場合には、かかる固体原料は溶媒に完全に溶解している必要はない。一部が溶解せずに反応容器内に存在する場合であっても、結晶成長により消費された分が、随時、溶媒中に供給されることとなる。また、溶媒に対する原料の設置量は、特に限定されず目的に応じて適宜設定することができるが、液相に対して、通常2質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、連続生産のための効率性を高めることができ、さらに反応容器内のスペースを確保できる。
[溶媒]
本発明に係る成長工程において、液相(溶液又は融液)に使用する溶媒は特に限定されないが、金属塩を主成分として含むものが好ましい。金属塩の含有量は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。特に金属塩を融解した溶融塩を溶媒として用いることが好ましい。
金属塩の種類は、結晶成長を阻害しないものであれば特に限定されないが、Li、Na、K等の周期表第1族金属及び/又はMg、Ca、Sr等の周期表第2族金属のハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩、イオウ化物等を挙げることができる。具体的には、LiCl、KCl、NaCl、CaCl2、BaCl2、CsCl、LiBr、KBr、CsBr、LiF、KF、NaF、LiI、NaI、CaI2、BaI2等の金属ハロゲン化物が好ましく、LiCl、KCl、NaCl、CsCl、CaCl2、BaCl2がより好ましい。金属塩の種類は1種類に限定されず、複数種類の金属塩を適宜組み合わせて用いてもよい。なかでも、ハロゲン化リチウムとこれ以外の金属塩を併用することがより好ましい。ハロゲン化リチウムの含有率は金属塩の全体量に対して30%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましい。
また、周期表第13族金属元素と周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素とを含有する複合窒化物の溶解度を増加させるために、例えばLi3N、Ca32、Mg32、Sr32、Ba32などの周期表第1族金属元素又は周期表第2族金属元素の窒化物等が溶媒に含まれていることが好ましい。
金属塩は、一般的に吸湿性が強いため、多くの水分を含んでいる。そのため、使用する溶媒は予め精製しておくことが好ましい。精製方法は特に限定されないが、例えば特開2007−084422号に記載されている装置を用い、溶媒に反応性気体を吹き込む方法が挙げられる。例えば、常温で固体の金属塩を溶媒とする場合には、加熱して融解し、塩化水素、ヨウ化水素、臭化水素、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、塩素、臭素、又はヨウ素等の反応性気体を吹き込みバブリングすることによって水分等の不純物を取り除くことができる。塩化物の溶融塩に対しては、特に塩化水素を用いることが好ましい。
[種結晶(シード)]
本発明に係る成長工程において、液相には工業的に十分なサイズの結晶を得るために種結晶を設置することが好ましい。種結晶はGaN、InGaN、AlGaN等の目的とする周期表第13族金属窒化物結晶と同種のものを用いるほか、サファイア、ZnO、BeO等の金属酸化物、SiC、Si等の珪素含有物、又はGaAs等を用いることができる。本発明で成長させる周期表第13族金属窒化物結晶との整合性を考えると、最も好ましいのは周期表第13族金属窒化物結晶である。種結晶の形状も特に制限されず、平板状であっても、棒状であってもよい。棒状の種結晶を用いる場合には、最初に種結晶部分で成長させ、次いで水平方向にも結晶成長を行いながら、垂直方向に結晶成長を行うことによってバルク状の結晶を作製することもできる。種結晶上に効率よく周期表第13族金属元素を成長させるためには、種結晶周辺に雑晶を成長させたり、付着させたりしないことが好ましい。雑晶とは種結晶上以外に成長する粒子径の小さい結晶であり、雑晶が種結晶付近に存在すると液相中の周期表第13族金属窒化物成分を種結晶上の成長と雑晶の成長で分け合うことになり、種結晶上の周期表第13族金属窒化物結晶の成長速度が十分に得られない。
[反応容器]
液相を保持するために用いる反応容器の形態は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定することができる。また、反応容器の材質は、本発明の製造方法における反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、熱的および化学的に安定な金属、酸化物、窒化物、炭化物等を主成分とすることが好ましい。具体的には、周期表第4族金属元素(Ti、Zr、Hf)を含む金属であることが好ましく、Tiを含む金属であることがより好ましい。また、反応容器の材質は、加工性や機械的耐久性に富む材質であることが好ましく、90質量%以上が前記第4族金属元素である金属を用いることがより好ましく、99質量%以上が前記第4族金属元素である金属を用いることがさらに好ましい。さらにこれらの反応容器の表面は、周期表第4族金属元素の窒化物からなることが好ましく、後述するような窒化処理方法によってあらかじめ窒化物を形成することが好適である。
[部材の窒化処理方法]
前述した反応容器のほか成長工程に使用する部材、例えば撹拌翼、シード(種結晶)保持棒、シード(種結晶)保持台、バッフル、ガス導入管、バルブ、前述した管状部材等に
ついては、以下に説明する窒化処理を行って、溶液又は融液に接触する表面に強固かつ安定な窒化物を形成しておくことが好ましい。加工性や機械的耐久性を保つために、窒化物を窒化膜の形態で形成してもよい。
窒化処理方法は表面に形成される窒化物が安定であれば特に限定はないが、例えば前記反応容器の部材を700℃以上の窒素雰囲気下において加熱保持することで、前記部材表面に安定な窒化膜を形成することができる。
更には、高温下でアルカリ金属窒化物やアルカリ土類金属窒化物を窒化剤として使用して前記部材表面を窒化することも可能であり、好ましくはアルカリ金属ハロゲン化物やアルカリ土類金属ハロゲン化物と前記アルカリ金属窒化物やアルカリ土類金属窒化物との混合融液中に保持することで、安定な窒化膜を形成することができる。また、実際に結晶成長を行なう条件と同様の条件下に部材を保持することで、簡便に窒化処理を行なうこともできる。
[温度・圧力・その他の条件]
成長工程における温度条件は、通常200℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは600℃以上であり、また、通常1000℃以下、好ましくは850℃以下、より好ましくは800℃以下である。
また、成長工程の圧力条件は、製造装置が簡便になり工業的に有利に製造できることから、通常10MPa以下であり、好ましくは3MPa以下、さらに好ましくは0.3MPa以下、より好ましくは0.11MPa以下であって、通常0.01MPa以上、好ましくは0.09MPa以上である。
結晶成長の成長速度は、上記温度、圧力等によって調節することが可能であり、特に限定されるものではないが、通常0.1μm/h〜1000μm/hの範囲であり、1μm/h以上が好ましく、10μm/h以上がより好ましく、100μm/h以上であることがさらに好ましい。
また、原料を液相内に均一に分布させるために、液相を攪拌することが望ましい。攪拌方法は特に限定されないが、種結晶を回転させて攪拌する方法、攪拌翼を入れ回転させて攪拌させる方法、送液ポンプで攪拌する方法等が挙げられる。
本発明に係る成長工程についてのその他の条件は特に限定されず、フラックス法等の液相成長法に用いられる手法を適宜採用して、本発明の成長工程に適用してもよい。具体的には、フラックス法で主に用いられている温度差(Gradient Transport)法、徐冷(Slow Cooling)法、温度サイクル(Temperature
Cycling)法、るつぼ加速回転(Accelerated Crucible Rotation)法、トップシード(Top−Seeded Solution Growth)法、溶媒移動法及びその変形である溶媒移動浮遊帯域(Traveling−Solvent Floating−Zone)法並びに蒸発法等、さらにはこれらの方法を任意に組み合わせた方法が挙げられる。
本発明の製造方法は、「原料及び溶媒を含む溶液又は融液を作製する工程」を含むものであるが、これは前述した成長工程の前段階として、エピタキシャル成長に使用する液相用の溶液又は融液を調製する工程を意味する。例えば、原料を溶媒に溶かす操作、又は溶媒となる化合物が常温で固体である場合、加熱等を行って融液を調整する操作も、溶液又は融液を作製する工程に含まれる。ただし、原料及び溶媒を含む溶液又は融液とは、原料が溶媒に完全に溶解されている必要はなく、固体原料が分散又は固形物として溶液中に存在する不均一系であってもよい。また、かかる工程は、成長工程に使用する図1の装置内で行うことができる。例えば、反応容器104内に原料及び溶媒となる化合物を入れておき、電気炉111で反応管105を加熱することによって、溶液又は融液102を作製す
ることが挙げられる。
本発明の製造方法は前述した工程のほか、得られた結晶を目的の大きさにするスライスするスライス工程、表面を研磨する表面研磨工程等が含まれてもよい。スライス工程としては、具体的にはワイヤースライス、内周刃スライス等が挙げられ、表面研磨工程としては、例えばダイヤモンド砥粒等の砥粒を用いて表面を研磨する操作、CMP(chemical mechanical polishing)、機械研磨後RIEでダメージ層エッチングする操作が挙げられる。
本発明の製造方法によって製造する周期表第13族金属窒化物結晶の種類は、周期表第13族金属元素を含む窒化物結晶であれば特に限定されないが、例えば、GaN、AlN、InN等の1種類の周期表第13族金属元素からなる窒化物のほかに、GaInN、AlGaN等の2種類以上の周期表第13族金属元素からなる混晶が挙げられる。
本発明の製造方法によって製造される周期表第13族金属窒化物結晶は、さまざまな用途に用いることができる。特に紫外〜青色の発光ダイオード又は半導体レーザー等の比較的短波長側の発光素子、及び緑色〜赤色の比較的長波長側の発光素子を製造するための基板として、さらに電子デバイス等の半導体デバイスの基板としても有用である。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1及び2を説明するに当たり、図2の装置の概念図を参照する。
(1)Arボックス中において、窒化処理済みのTi製反応容器104(内径30mm、外径34mm、高さ200mm)中に固体のLi3GaN2 4.5gを入れ、続いてLiCl 45gを、炭化タングステン製乳鉢でよく粉砕混合してからTi製反応容器104に入れた。固体のLi3GaN2は、篩を使用して750μm以上、2mm未満の粒径のものを選んで使用した。
(2)Ti製反応容器104を石英製反応管105内にセットし、石英製反応管のガス導入口110およびガス排気口106を閉状態にした。
(3)石英製反応管105をArボックスから取り出し、電気炉111にセットした。石英製反応管105にガス導入管をつなぎ、導入管中を減圧にした後、さらに石英製反応管のガス導入口110を開いて石英製反応管105内を減圧してからH2 10vol%のH2/N2混合ガスで復圧し、石英製反応管105内をH210vol%のH2/N2混合ガス雰囲気とした。その後、石英製反応管のガス排気口106を開き、H2/N2混合ガスを流量計設定値100cm3/min(標準状態25℃、1atmにおける値)で流通させた。
(4)電気炉の加熱を開始し、Ti製反応容器104の内部が室温から750℃になるまで1時間で昇温し、金属塩であるLiClを溶融させた。750℃で13時間保持した後、液相をサンプリングした。
(5)ガスをN2ガスに切り替え、先端に直径2mm(DR)の開口部を有するTi製吹き込み管を液深45mm(LR)である液相102中に底から3mmの高さに吹込み管開口部が位置するように挿入し(hR=42mm)、N2ガスを流量計設定値100cm3/min(標準状態25℃、1atmにおける値、FR)で液相102中へ吹き込んだ。吹込み管の開口部の径とN2ガス流量から、気泡の粒径は約5mmであると算出できる(段落[0022]に記載の方法で算出)。また、式(2)に示したFR 3・hR 3/DR・VR 3の値は0.00024m2/s3である。
(6)N2ガスの吹き込み開始から、2、4、8、23.1、45.6時間経過時に、液
相をサンプリングし、これらをN2ガス吹込み開始前にサンプリングした液相と合わせてイオンクロマトグラフィーを用いて、N濃度を分析したところ、N濃度は0.86wt%(N2ガス吹込み開始前)、0.40wt%(2時間後)、0.31wt%(4時間後)、0.29wt%(8時間後)、0.18wt%(23.1時間後)、0.14wt%(45.6時間後)であった。
ここで、後述の参考例で示唆される通り、液相中に溶解している原料およびLi3N由来のN濃度(平衡濃度)は、合計して0.015wt%程度で一定であることから、上記0.02wt%以上のN濃度変化は反応式[2]で示されるリチウムアミド由来のN濃度の変化であり、N2ガスの吹き込みにより、再生反応(逆反応)が進行したことがわかる(正反応が促進されることによりリチウムアミドの濃度が上昇して、N濃度が0.02wt%以上に上昇する一方、逆反応が促進されることによりリチウムアミドの濃度が減少して、N濃度が0.02wt%未満に減少すると考えられる)。
(7)液相中のN濃度の結果を、下記式(3)に当てはめて、逆反応速度定数(N濃度低下速度定数)を算出したところ、0.0046sec-1であった。
ln[N]=−k・t ・・・(3)
(式(3)中、[N]は液相中のN濃度、tはN2ガスの吹き込み開始からの時間、kは逆反応速度定数を表す。)
なお、正反応促進工程における気液界面の面積SF、および液相の体積VFはそれぞれ0.0007m2、0.000032m3であり、気液界面の面積と液相の体積の比(SF/VF)は23m-1であった。また、逆反応促進工程における気液界面の面積SR、および液相の体積VRはそれぞれ0.0025m2、0.000032m3であり、気液界面の面積と液相の体積の比(SR/VR)は、N2ガスを液相中に吹き込むにより、79m-1となった。再生反応が後述の比較例よりも促進されていたことが明らかである。なお、実施例1におけるSF、VF、VRは実測値を、SRは段落[0016]に記載の方法(下記式)に当てはめて算出した数値である。
<実施例2>
金属塩であるLiClを溶融させ、750℃で14時間保持した後、液相をサンプリングしたこと、N2ガスを流量計設定値500cm3/min(標準状態25℃、1atmにおける値)で液相102中へ吹き込ませたこと(式(2)に示したFR 3・hR 3/DR・VR 3の値は0.030m2/s3)、最初のサンプリングの後N2ガスの液相への吹き込みを開始した後、2、4、8.1、20.1時間経過時に、液相をサンプリングしたことを除き、実施例1と同様の方法で実施した。
サンプリングした液相中のN濃度をイオンクロマトグラフィーにより分析したところ、N濃度は0.84wt%(N2ガス吹込み開始前)、0.24wt%(2時間後)、0.19wt%(4時間後)、0.16wt%(8.1時間後)、0.14wt%(20.1時間後)であった。
液相中のN濃度の結果を、上記式(3)に当てはめて、逆反応速度定数(N濃度低下速度定数)を算出したところ、0.0070sec-1であった。
実施例1と同様に、正反応促進工程における気液界面の面積SF、液相の体積VF、およびそれらの比(SF/VF)は、それぞれ0.0007m2、0.000032m3、23m-1である。また、逆反応促進工程における気液界面の面積SR、および液相の体積VRはそれぞれ0.0082m2、0.000032m3であり、気液界面の面積と液相の体積の比(SR/VR)は、N2ガスを液相中に吹き込むにより、262m-1となった。なお、実施
例1と同様にSF、VF、VRは実測値を、SRは段落[0016]に記載の方法に当てはめて算出した数値である。
R 3・hR 3/(DR・VR 3)の値(N2ガス流量)がより大きいことで、実施例1より速い速度で再生反応(逆反応)が進行したことが明らかである。
<参考例>
LiClを10g溶融させLi3GaN2を1g添加し、745℃下で始めからN2ガスを100cm3/minで流通させて(つまりH2ガスは一度も流通させず)加熱保持し、20、70時間経過後に液相をサンプリングしたことを除いて、実施例1と同様の手法にて液相内のN濃度を確認する実験を実施した。
サンプリングした液相中のN濃度をイオンクロマトグラフィーにより分析したところ、N濃度は0.014wt%(20時間経過後)、0.016wt%(70時間経過後)であり、長時間0.015wt%程度で一定であった。
<比較例>
図3の装置の概念図に示されるように、金属塩であるLiClを溶融させ、750℃で15.5時間保持した後液相をサンプリングしたこと、液相中ではなく気相中にN2ガスを流量計設定値100cm3/min(標準状態25℃、1atmにおける値)で流通させたこと、N2ガス流通開始後2、4、8、29.5、120時間経過時に液相をサンプリングしたことを除き、実施例1と同様の方法で実施した。なお、成長工程にわたって、気液界面の面積は0.0007m2、液相の体積は0.000032m3で維持した。
サンプリングした液相中のN濃度をイオンクロマトグラフィーにより分析したところ、N濃度は0.732wt%(N2ガス流通開始前)、0.635wt%(2時間後)、0.537wt%(4時間後)、0.459wt%(8時間後)、0.249wt%(29.5時間後)、0.159wt%(120時間後)であった。
液相中のN濃度の結果を、上記式(3)に当てはめて、逆反応速度定数(N濃度低下速度定数)を算出したところ、0.00068sec-1であった。
2ガスを液相中に吹き込まなかったことにより、正反応促進工程と逆反応促進工程における気液界面の面積と液相の体積の比(23m-1)は同一であるが、再生反応(逆反応)の進行が遅いことが明らかである。
表1の結果から、逆反応促進工程を含むことにより、液相を再生できることが明らかである。
100 種結晶(シード、GaN)
101 原料(Li3GaN2
102 液相(溶液又は融液 LiCl)
103 ワイヤー
104 反応容器
105 反応管
106 ガス排気管
107 調節弁
108 シード(種結晶)保持具
109 調節弁
110 ガス導入管
111 電気炉
112 管状部材
113 気泡

Claims (10)

  1. 原料及び溶媒を含む溶液又は融液を作製する工程と、前記溶液又は融液である液相並びに水素含有ガスを有する気相の存在下、前記液相中で周期表第13族金属窒化物結晶をエピタキシャル成長させる成長工程とを含む周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法であって、
    前記成長工程が、下記式(1)の条件を満たす正反応促進工程及び逆反応促進工程を含み、
    前記正反応促進工程に使用した前記溶液又は融液を前記逆反応促進工程に使用し、前記逆反応促進工程に使用した前記溶液又は融液を前記正反応促進工程で使用することを特徴とする周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
    F/VF < SR/VR ・・・ (1)
    (式(1)中、SFは正反応促進工程における前記液相と前記気相の気液界面の面積、VFは正反応促進工程における前記液相の体積を表し、SRは逆反応促進工程における前記液相と前記気相の気液界面の面積、VRは逆反応促進工程における前記液相の体積を表す。)
  2. 前記SR/VRが35m-1より大きい値である、請求項1に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  3. 前記逆反応促進工程が、管状部材を用いて前記液相にガスを吹き込む操作を含むものである、請求項1又は2に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  4. 液相に吹き込む前記ガスが、窒素含有ガス及び/又は不活性ガスを含むガスである、請求項3に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  5. 前記逆反応促進工程がさらに下記式(2)の条件を満たす工程である、請求項3又は4に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
    R 3・hR 3/DR・VR 3≧1×10-6[m2/s3] ・・・(2)
    (式(2)中、FRは液相に吹き込む前記ガスの流量、hRは前記管状部材の開口部の液面から測った深さ、DRは前記管状部材の開口部の直径又は円相当径、VRは前記液相の体積を表す。)
  6. 液相に吹き込む前記ガスの気泡の粒径が1cmより小さいものである、請求項3乃至5の何れか1項に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  7. 前記FRが1cm3/minよりも大きい値である、請求項5又は6に記載の周期表第13族窒化物結晶の製造方法。
  8. 前記hRと液相の液深LRの比(hR/LR)が0.05より大きい値である、請求項5乃至7の何れか1項に記載の周期表第13族窒化物結晶の製造方法。
  9. 前記溶液又は融液が、周期表第1族金属元素及び/又は周期表第2族金属元素を含むものである、請求項1乃至8の何れか1項に記載の周期表第13族窒化物結晶の製造方法。
  10. 前記成長工程が、周期表第13族金属元素と周期表第13族金属元素以外の金属元素とを含有する複合窒化物を原料として用いるものである、請求項1乃至9の何れか1項に記載の周期表第13族窒化物結晶の製造方法。
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