JP2013116839A - 周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】反応容器中の液中成分の拡散速度の制御が可能となり、適切な結晶成長速度を実現できる、第13族金属窒化物結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】結晶成長において用いる反応容器5は、結晶成長室12、バッファ室11、および反応容器5を結晶成長室12とバッファ室11とに仕切る隔壁10を備えており、前記隔壁10に孔を設けることにより結晶成長速度を制御可能としている。前記反応容器5を加熱することにより、固体原料7であるLiClを溶融させて溶融塩9とし、攪拌翼保持棒8の先端に取り付けたGaN基板でもある攪拌翼6を反応容器5中の溶融塩9に浸漬し、回転させながら結晶を成長させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法に関し、より詳細には原料および溶媒を含む溶液または融液を用いて結晶を成長させる、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法に関する。
窒化ガリウムに代表される周期表第13族金属と窒素との化合物半導体結晶は、大きなバンドギャップを有し、またバンド間遷移が直接遷移型であることから、紫外、青色又は緑色等の発光ダイオード、半導体レーザー等の比較的短波長側の発光素子や、電子デバイス等の半導体デバイスの基板として有用な材料である。
第13族金属と窒素との化合物結晶を製造する方法としては気相で結晶成長させる方法、液相で結晶成長させる方法など、様々な方法が提案されている。このうち液相(溶液中または融液中)で結晶を成長させる方法としては、特許文献1〜3に記載の方法などが提案されており、各々において結晶成長速度の制御を行うための手法が提案されている。
より具体的には、特許文献1では、複合窒化物をイオン性溶媒に溶解させた溶液中でGaN結晶等を製造する方法が記載されている。この際に、溶液中の副生成物成分の濃度を調整することで、GaN等の結晶成長速度を制御することが提案されている。
特許文献2では、ナトリウムフラックス法によるGaN結晶などの製造方法が記載されており、成長容器内に配置された種結晶基板から結晶を均一に成長させるため、気相から溶解した窒素が基板に均一に届くように、種結晶基板の上部に板状部材を設置する方法が提案されている。
特許文献3では、ナトリウムフラックス法によるGaN結晶などの製造方法であって、じゃま板等を有する反応容器を揺動させることで、原料ガスと接する気液界面から原料液の内部に向かう流れを生じさせることにより、結晶成長速度を制御する方法が提案されている。
特開2008−201653号公報 特許第4647525号公報 特許第4189423号広報
GaNに代表される周期表第13族金属窒化物結晶の製造においては、結晶成長反応により副生成物が生成し、この副生成物の生成、または蓄積が、結晶成長を阻害する場合がある。このような場合、結晶成長速度を制御し継続的な結晶成長を行うには、生成する副生成物を成長場から除去する、すなわち、成長場における副生成物の濃度を制御する必要がある。
特許文献1においては、副生成物として生成するLi3Nの濃度制御のために、1)蒸発、2)反応、3)拡散、などの手段が開示されているが、これらの手段では実質的に周期表第13族金属窒化物結晶の成長速度を制御し難い問題点が存在する。例えば、蒸発による濃度制御の場合、Li3Nの蒸発速度が極めて遅いため、成長速度の制御は実質的に困難である。また、反応によりLi3Nを除去する場合、除去反応での生成物が結晶成長を阻害する場合は、反応によるLi3Nの濃度制御が本質的な成長速度制御法とはならな
い。また、成長場において機械的流動を行い、拡散によりLi3N濃度を調節する場合、流動が激しすぎると基板表面に自発核結晶が付着し、基板が多結晶化してしまう問題点がある。
本発明では、このような点を改善して、実質的に周期表第13族金属窒化物結晶の成長速度の制御が可能となる方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく検討の結果、結晶成長において用いる反応容器として、結晶成長室、バッファ室、および孔を有し、反応容器を結晶成長室とバッファ室とに仕切る隔壁、を備えたものを用いることで、該隔壁が有する孔の存在により結晶成長速度を制御可能となることを見出し、本発明を完成させた。
即ち本発明は以下のとおりである。
[1] 原料及び溶媒を含む溶液または融液を用いて結晶を成長させる結晶成長工程、を含む周期表第13族金属窒化物結晶を製造する製造方法であって、
前記結晶成長工程は、結晶成長室、バッファ室、および反応容器を結晶成長室とバッファ室とに仕切る隔壁、を備えた反応容器を用いて行われ、
前記隔壁は孔を有しており、
前記反応容器に備えた隔壁が孔を有することで結晶成長速度を制御可能とすることを特徴とする、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[2] 前記反応容器は、複数の隔壁を備えることで複数の結晶成長室またはバッファ室を形成することを特徴とする、[1]に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[3] 前記隔壁は、隔壁表面の孔の面積A(m2)と隔壁の厚さL(m)の比A/L(m)が、2.0×10-4以上、2.0×10-1以下であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[4] 前記隔壁は、前記結晶成長室に存在する溶液または融液の単位重量当たりの、隔壁表面の孔の面積Aと隔壁の厚さLの比A/L(m/g)が5.0×10-6以上、5.0×10-3以下であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[5] 前記隔壁は、隔壁の表面積S(m2)に対する隔壁表面の孔の面積A(m2)の割合A/S×100が0.03%以上、30%以下であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[6] 前記結晶成長工程において、結晶成長開始から20時間経過時までの成長室の単位塩量当たりの平均結晶析出速度が0.35mg/(g・hr)以上、18mg/(g・hr)以下であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[7] 前記結晶成長工程において、結晶成長開始から20時間経過時における、前記成長室とバッファ室での副生成物の濃度差ΔC(mol/m3)が34mol/m3以上、970mol/m3以下であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[8] 前記反応容器に備える隔壁は、結晶成長工程において溶液または融液を反応容器に充填した状態において、気液界面と略平行または略垂直に配置することを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[9] 前記溶液または融液は、イオン性溶媒であることを特徴とする、[1]〜[8]のいずれかに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[10] 第13族金属窒化物結晶の原料として、ガリウムおよびリチウムの複合窒化物原料を用いることを特徴とする、[1]〜[9]のいずれかに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
本発明の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法によると、反応容器中の液中成分の拡散速度の制御が可能となり、適切な周期表第13族金属窒化物結晶成長速度を実現できる。
比較例1で用いた従来の方法による、GaN結晶の製造装置の一例を示す模式図である。 実施例1で用いたGaN結晶製造装置を示す模式図である。 本発明の別の実施態様を実施するGaN結晶製造装置を示す模式図である。 本発明の別の実施態様を実施するGaN結晶製造装置を示す模式図である。 本発明の別の実施態様を実施するGaN結晶製造装置を示す模式図である。 本発明の実施例で行った実施例、比較例、およびシミュレーションの結果を示すグラフである。 本発明の実施例で行ったシミュレーションの結果を示すグラフである。
本発明の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法について、以下詳細に説明する。構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づきされることがあるが、本発明はそのような実施態様にのみ限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」を用いてあらわされる数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(溶液または融液)
本発明の周期表第13族金属窒化物結晶(以下、第13族窒化物結晶ともいう)の製造方法は、原料及び溶媒を含む溶液または融液を用いて結晶を成長させる結晶成長工程、を含む第13族金属窒化物結晶を製造する製造方法である。本発明における結晶成長工程は、原料及び溶媒を含む溶液または融液を用いて結晶を成長させる工程である。
なお、本発明で用いる溶媒は、成長条件下において液体として存在し得るものであり、超臨界流体は含まれない。溶媒としては、常温常圧(25℃、100kPa)下で液体又は固体であるものを用いることが好ましい。
溶液または融液としては、アルカリ金属を含むものであることが好ましく、アルカリ金属を主成分として含むものであることがより好ましい。なお、「主成分として含む」とは、重量%濃度で10%以上含むことを意味する。
アルカリ金属としては、Li、Na、K、Csなどが挙げられ、結晶成長工程で用いる溶液または融液は、これらのアルカリ金属成分を含むものであることが好ましいが、シードへのエピタキシャル成長を阻害しないものであれば特にその種類は制限されない。
結晶成長に溶液又は融液を用いる場合には、用いる溶媒としては生成する第13族金属窒化物結晶が実質的に不溶であり、原料化合物が溶解することが必要となる。ここで、実質的に不溶とは、結晶成長温度(例えば760℃)において、溶解度が0.001重量%以下であることを意味し、溶解するとは溶解度が0.01重量%以上であることを意味する。溶解度の観点から、結晶成長に用いる溶媒は、イオン性溶媒であることが好ましく、具体的には、溶融塩としては、LiCl、KCl、NaCl、CsCl、LiBr、KBr、CsBr、LiF、KF、NaF、LiI、NaI、または、これらの塩の組み合わせからできる共晶塩であることが好ましい。
溶融塩に水等の不純物が含まれている場合には、反応性気体を吹き込んで予め溶融塩を精製しておくことが好ましい。反応性気体としては、例えば塩化水素、ヨウ化水素、臭化
水素、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、塩素、臭素、ヨウ素等を上げることができる。
(原料)
本発明の第13族金属窒化物結晶を成長させるための原料としては、その種類は特段に限定されるものではなく、また、固体、液体、気体のいかなる形態であってもよく限定されるものではない。GaN結晶が目的物である場合には、たとえば、ガリウムとアルカリ金属の複合窒化物を用いることが好ましく、具体的にはLi3GaN2が挙げられる。複合窒化物以外においては、金属Ga、GaNを用いることができ、併せてN2ガス、NH3ガスなどを適宜用いることができる。
原料にLi3GaN2を用いる場合、その製造方法は特段限定されず、例えば次のように製造することができる。Li3GaN2は、GaNとLi3Nを約700℃で反応させるか(方法A)、あるいはGa−Li合金を窒素雰囲気中で600〜800℃で加熱処理する(方法B)ことによって合成することができる。また、イオン性溶媒中でGaNとLi3Nを反応させて合成することもできる。この方法では複合窒化物は生成した際に既にイオン性溶媒に溶解した溶液または融液となっているため、この溶液または融液の温度を低下させる手法により複合窒化物とイオン性溶媒が混合した固体が得られる。この混合固体を結晶成長の原料として用いると、複合窒化物とイオン性溶媒の両者を別々に結晶成長装置に投入する場合に比べて、均一な溶液または融液を得やすい利点がある。また、別の方法として、Li金属、Ga−Li合金をターゲットとして、窒素プラズマによる反応性スパッターを行い、Li−N、Ga−Li−Nの混合組成アモルファス膜を作り、これをLi3GaN2の代用とすることもできる。この場合は薄膜状の結晶を作るのに好都合であるばかりでなく、化学的には合成が困難な材料系でも作製が可能という長所がある。
(反応容器)
本発明で用いる反応容器は、本発明の製造方法における反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、熱的および化学的に安定な金属、酸化物、窒化物、炭化物を主成分とする反応容器であることが好ましい。周期表第4〜6族元素(Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W)、Sc、Y、Ni、Pdから選ばれる少なくとも1種を含む金属であることが好ましい。特に、周期表第4族元素(Ti、Zr、Hf)を含む金属であることが好適であり、好ましくはTiを用いる場合である。また、反応容器の材質は、加工性や機械的耐久性に富む材質であることが好ましく90重量%以上が前記第4族元素である金属を用いることがより好ましい。さらに好ましくは、99重量%以上が前記第4族元素である金属を用いることである。さらに、これらの反応容器の表面は、周期表第4族元素の窒化物からなることが好ましく、以下に説明する窒化処理方法によってあらかじめ窒化物を形成することが好適である。Li3GaN2以外の複合窒化物についても、上記のLi3GaN2に類する方法により作製することができる。
窒化処理方法は表面に形成される窒化物が安定であれば特に限定はないが、例えば反応容器の部材を700℃以上の窒素雰囲気下において加熱保持することで、部材表面に安定な窒化膜を形成することができる。
更には、高温下でアルカリ金属窒化物やアルカリ土類金属窒化物を窒化剤として使用して部材表面を窒化することも可能であり、好ましくはアルカリ金属ハロゲン化物やアルカリ土類金属ハロゲン化物と前記アルカリ金属窒化物やアルカリ土類金属窒化物との混合融液中に保持することで、安定な窒化膜を形成することができる。また、実際に結晶成長を行なう条件と同様の条件下に部材を保持することで、簡便に窒化処理を行なうこともできる。
(結晶)
本発明の製造方法により得られる第13族金属窒化物としては、GaN、AlN、InN、AlGaN、GaInNなどがあげられる。
(シード)
本発明において溶液を用いて第13族金属窒化物を結晶成長させる際には、第13族金属窒化物結晶または基板を結晶成長のためのシード(種結晶)として用いることが好ましい。シードの形状は特に制限されず、平板状であっても、棒状であってもよい。また、ホモエピタキシャル成長用のシードであってもよいし、ヘテロエピタキシャル成長用のシードであってもよい。具体的には、気相成長させたGaN、InGaN、AlGaN等の13族金属窒化物のシードを挙げることができる。また、サファイア、シリカ、ZnO、BeO等の金属酸化物や、SiC、Si等の珪素含有物や、GaAs等の気相成長等で基板として用いられる材料を挙げることもできる。これらのシードの材料は、本発明で成長させる第13族金属窒化物結晶の格子定数にできるだけ近いものを選択することが好ましい。棒状のシードを用いる場合には、最初にシード部分で成長させ、次いで水平方向にも結晶成長を行いながら、垂直方向に結晶成長を行うことによってバルク状の結晶を作製することもできる。
また、極性面をもつウルツ構造のGaN等をシードに使う場合は、N極性面に溶融塩中でエピタキシャル成長を行うと、扇状に成長面積が増加し、小さなシードから大きな面積の結晶を製造することができるので、好ましい。メルトバックを防いで効率よく結晶成長させるためには、シードの表面粗さ(Ra)は5nm以下であることが好ましく、1nm以下であることがより好ましく、0.5nm以下であることがさらに好ましい。
(雰囲気)
本発明では反応雰囲気として気相に窒素以外の気相成分を含む系においても実施することが可能であり、例えばアルゴン雰囲気中で実施することができる。アルゴンは窒素に比べて酸素の混入を抑え易く、アルゴン雰囲気下で結晶成長を行うことで結晶への酸素の混入を低減させることができる。なお、反応雰囲気とは、溶融塩中に溶解させた溶液を含む反応容器の周囲の気相成分を意味している。また、Li3GaN2を原料として用いる場合は、窒素雰囲気下に水素を含ませることが好ましい。GaN成長に伴い生成するLi3Nは気相から溶融塩中に取り込まれた水素と反応し、最終的な副生成物としてアミドを形成する。このアミドについても上記隔壁を用いることで濃度制御が可能であるため、成長速度制御が可能である。
(温度、圧力)
また、第13族金属窒化物結晶を析出させるための反応温度は、通常200〜1000℃であり、好ましくは400〜850℃、さらに好ましくは、600〜800℃である。複合窒化物を原料として用いる場合は、複合窒化物を溶融塩に溶解させて用いるため、複合窒化物の融点より低温で用いることが可能になっている。第13族金属窒化物結晶を析出させるための反応容器内の圧力は、通常10MPa以下であり、好ましくは3MPa以下、さらに好ましくは0.3MPa以下、より好ましくは0.11MPa以下である。
(隔壁)
本発明の結晶成長工程は、結晶成長室、バッファ室、および反応容器を結晶成長室とバッファ室とに仕切る隔壁、を備えた反応容器を用いて行われる。そして、隔壁は孔を有しており、該孔を有することで結晶成長速度を制御可能とすることを特徴とする。
溶液または融液中における結晶成長では、溶液または融液中の結晶原料が種結晶を成長させるが、十分な大きさかつ十分な品質の結晶を製造するためには、結晶成長の場においての結晶成長速度を制御することが重要である。特許文献1では、このような課題に対して、副生成物を取り除くことで課題解決を図っている。そしてそのための手段として1)
蒸発、2)分解反応、3)拡散、が例示されている。
本発明では、結晶成長工程において用いる反応容器を、結晶成長室、バッファ室、および反応容器を結晶成長室とバッファ室とに仕切る隔壁、を備えたものとし、該隔壁が孔を有することで結晶成長速度を制御可能となることを見出したものである。以下、GaN結晶を溶液中で製造する場合を代表例としてそのメカニズムについて説明する。
GaN結晶を溶液中で製造する場合であって、原料化合物としてガリウムおよびリチウムの複合窒化物(Li3GaN2)を用い、溶媒としてLiClを用いた場合、副生成物としてLi3Nが生じる。まず、この反応について説明する。
溶液中のLi3GaN2複合窒化物(Li3GaN2複合窒化物は、Li3Nと錯塩を作り溶解すると考えられる)は、溶液中の下地基板表面に到達することで、下記式(a)に示す平衡反応により結晶成長が進行する。
Figure 2013116839
また、溶液と接触する気相に存在する水素及び窒素が、直接又は溶液中に溶解して、上記式(a)で生成したLi3Nを水素化及び/又は窒化し、水素化リチウム、リチウムイミド、又はリチウムアミドを生成させる。例えばリチウムアミド(LiNH2)は、下記式(b)に示される反応によって生成する。窒化ガリウム結晶近傍のLi3N濃度の上昇は、成長速度の低下を招き、また急激なLi3N濃度の低下も急激なGaN生成に繋がり、雑晶の発生や結晶性の低下を招く。水素及び窒素は成長速度を適度に調節する役割を果たす。なお、水素化リチウム、リチウムイミド、リチウムアミドが生成する反応は何れも平衡反応であり、水素及び窒素の濃度によってLi3N濃度を調節することができる。
Figure 2013116839
このような副生成物の生成、蓄積は、成長反応を阻害するため、成長速度を低下、または、停止を招く。本発明の製造方法では、反応容器を結晶成長室、バッファ室、および反応容器を結晶成長室とバッファ室とに仕切る隔壁、を備えたものとし、該隔壁が孔を有することで副生成物が結晶成長室およびバッファ室の間を行き来可能となる。そのため、結晶成長室内の副生成物濃度が上昇して反応が平衡に達する前に、副生成物がその濃度が低いバッファ室に移動することで、結晶成長室における副生成物濃度を制御し、GaN結晶の成長速度を制御可能となる。
なお、Li3GaN2を原料としてGaN結晶成長に用いた場合の副生成物の一例としてLi3Nを挙げたが、上記の隔壁を用いた成長速度の制御は、Li3Nだけに限定されるものではない。Li3Nと他の物質との反応により生成し、液中に蓄積することでGaNの結晶成長を阻害するいかなる副生成物においても適応できる。例えば、成長雰囲気に水素を含有する場合、Li3Nと水素が反応してリチウムアミドが生成、蓄積する。上記隔壁を用いる手法により、成長室のリチウムアミドの濃度制御を行うことで、成長速度制御を行うことが可能である。
このように、反応容器を結晶成長室およびバッファ室に区分しその仕切りに孔を有する隔壁を用い、上記副生成物の濃度差を両室間で設け、両室間の溶液または融液の流通量を
制御することで、結晶成長速度が制御可能となる。
また、上記手法は副生成物の濃度制御だけでなく、成長室への原料供給速度を制御することで、結晶成長速度を制御することも可能である。この場合は、隔壁を用いてバッファ室に原料が溶解した高濃度溶液を設置すればよい。
反応容器中に隔壁を備える反応容器を用いる方法は、特許文献1〜3などにおいて従来知られていた。しかしながら、本発明のように、孔を有する隔壁を用いる技術思想は開示されておらず、また、従来知られている隔壁は、溶液中における副生成物の濃度の制御を目的としたものではない。特許文献1では、液全体の流動を制御するため、攪拌羽が生じさせた対流を循環させることを目的として隔壁が用いられており、本発明のように濃度制御を目的としていない。特許文献2では、気相から溶解した窒素成分が中央から局所的に流出し、下に設置してある複数枚の基板が不均一に成長してしまうことを防ぐために、穴の開いていない板状部材を用いており、孔を有する本発明の隔壁とは異なるばかりか、本発明のように孔を有する隔壁を用いた場合には発明が成立しない。特許文献3では、気相から溶解した窒素成分が基板に供給されるよう、気液界面から基板への対流を生じさせるためにじゃま板が用いられている。そのため、孔を有する本発明の隔壁とは異なり、また本発明のように濃度制御を目的とするものではない。
また、アモノサーマル法による製造方法では、反応装置に隔壁を用いたものが既に知られているが、本発明と比較して用いる流体の性質が大きく異なり、また、本発明において用いる隔壁とはその役割や目的が大きく異なる。
まず、アモノサーマル法においては超臨界流体を用いるが、本発明においては溶液または融液を用いることから、両流体間での拡散係数が大きく異なる。具体的には、超臨界流体では拡散係数が2.0×10-3〜2.0×10-4(cm2/s)であるが、本発明の溶液または融液を用いる方法では1.0×10-4〜1.0×10-6(cm2/s)であり、およそ1〜2オーダー異なる。このようにアモノサーマル法による製造方法と、溶液または融液を用いた製造方法とでは、結晶成長の場に存在する流体の性質が大きく異なり、性質が大きく異なることから当然制御についても大きく異なるものである。
また、アモノサーマル法においては、隔壁の上下で温度差を作成するために、隔壁により流体の流動を制限するが、本発明の溶液または融液を用いる方法では、隔壁の上下で濃度差を作成するために、隔壁により流体の流動を制限する。このように、アモノサーマル法による製造方法と、本発明の溶液または融液を用いる製造方法とでは、隔壁の役割や目的が大きく異なるものである。
結晶成長工程において用いる反応容器において、結晶成長室とバッファ室の容量の割合は特段限定されない。また、結晶成長室とバッファ室を仕切る隔壁の配置についても特段限定されず、どのように配置されても良いが、反応容器に溶液または融液を充填した状態において、気液界面と略平行または略垂直に配置することが好ましい。また、隔壁を複数用いて、反応容器内に複数の結晶成長室またはバッファ室を備えることで、原料濃度および副生成物濃度を独立に制御が可能となり好ましい。
本発明の隔壁は、結晶成長室とバッファ室とを仕切り、孔を有することで結晶成長速度を制御可能とするものである。孔を有することで結晶成長速度を制御可能となれば、孔の大きさや数などは特段限定されないが、結晶成長速度をより詳細に制御するために、隔壁表面の孔の面積A(m2)と隔壁の厚さL(m)の比A/L(m)を特定の値とすることが好ましい。本発明においては、隔壁表面の孔の面積A(m2)と隔壁の厚さL(m)の比A/L(m)が、2.0×10-4以上、2.0×10-1以下であることが好ましく、1.0×10-3以上、1.0×10-1以下であることがより好ましい。
また、隔壁の表面積S(m2)に対する隔壁表面の孔の面積A(m2)の割合A/S×1
00が0.03%以上、50%以下であることが好ましく、1%以上、30%以下であることがより好ましい。上記隔壁の表面積Sは、結晶成長室またはバッファ室に存在する溶液または融液と接触する面の一方を意味する。なお、隔壁の大きさを反応容器の径と同じ大きさとすることで反応容器を結晶成長室およびバッファ室に仕切ることが一般的ではあるが、隔壁の大きさが反応容器の径よりも小さい場合には、反応容器の径の面積を隔壁の表面積Sとみなして、上記A/S×100の値を算出する。なお、隔壁表面の孔の面積Aとは、前記隔壁の表面積Sのうち、孔が占める面積のことを意味する。
また、反応容器中の結晶成長室に存在する溶液または融液の単位重量当たりの、隔壁表面の孔の面積Aと隔壁の厚さLの比A/L(m/g)が5.0×10-6以上、5.0×10-3以下であることが好ましく、3×10-5以上、3×10-3以下であることがより好ましい。
また、結晶成長開始から20時間経過時までの成長室の単位塩量当たりの平均結晶析出速度が0.35mg/(g・hr)以上、18mg/(g・hr)以下であることが好ましく、1mg/g・hr以上、5mg/g・hr以下であることが好ましい。
また、結晶成長開始から20時間経過時における、前記成長室とバッファ室での副生成物の濃度差ΔC(mol/m3)が34mol/m3以上、970mol/m3以下であることが好ましく、200mol/m3以上、800mol/m3以下であることが好ましい。
なお、これらのパラメータについては、実施例の考察においてその技術的意義を説明する。
(実施形態)
以下、本発明の製造方法に用いる製造装置について、図を用いて説明する。原料としてガリウムおよびリチウムの複合窒化物(Li3GaN2)を用い、溶媒(溶融塩)としてLiClを用いたGaN結晶の製造方法を代表例として説明するが、本発明はこのような実施態様にのみ限定されないことは言うまでもない。
図1は、反応容器中に隔壁を有しない、従来技術における典型的な製造装置の模式図である。図1の製造装置は、反応容器5がバッフル板(隔壁)10を備えていない装置である。保持棒8に保持されたGaN基板(シード)は撹拌翼6の役割も担い、保持棒8および撹拌翼6を回転することで溶融塩9を撹拌する。この撹拌により固体原料7が溶融し、GaN基板上に結晶が成長する。
反応容器5において撹拌翼6を回転することで、固体原料7であるLi3GaN2が溶融塩9であるLiCl中で反応し、GaN基板上にGaN結晶が成長する。そして、反応容器中にはGaN析出に伴い副生成物が蓄積する。このような反応装置を用いた場合、成長開始から短時間(20時間程度)で副生成物が成長室内で飽和し(平衡濃度に達し)、それ以降はGaN析出が起こらなくなる。このような状況においてはGaN析出速度が極めて早いため、成長するGaN結晶の品質が悪くなる場合がある。また、継続的な成長を行うことができないために大型結晶の育成が困難となる問題があった。
図2は、反応容器中に隔壁を有する、本発明における典型的な製造装置の模式図である。図2において反応容器5は、孔を有するバッフル板10により結晶成長室11とバッファ室12に区分されている。図1に示す製造装置と同様に反応容器5の結晶成長室11において固体原料7であるLi3GaN2が溶融塩9であるLiCl中で反応し、GaN基板上にGaN結晶が成長する。ここで、結晶成長室とバッファ室は、バッフル板10が有する孔を介して溶融塩9が行き来可能となっていることから、結晶成長室11に蓄積された副生成物は、バッフル板10の孔を介して、濃度拡散によりバッファ層12に拡散され、結晶成長室11中の副生成物濃度は低下する。
このようにバッフル板10が孔を有することで結晶成長室11に蓄積された副生成物がバッファ室12に拡散されることから、バッフル板を備えない図1の製造装置を用いた場合と比較して、溶融塩9中の副生成物が飽和するまでの時間が長くなり、GaN析出速度を抑制することができる。加えて、バッフル板が有する孔の面積やバッフル板の厚みを調整することで、容易に結晶成長室11からバッファ室12への副生成物の拡散速度を制御することが可能となり、GaN結晶の成長速度も容易に制御することができる。
したがって、バッフル板10を反応装置内に導入することで、長い時間をかけた継続的な結晶成長をすることが可能となり、高品質の大型結晶を得ることが可能となる。
図3〜図5は、反応容器中5に備えるバッフル板10の配置位置を変化させた、本発明の製造方法に用いる製造装置の別態様を示す。
図3では、図2においてバッフル板10の上方に配置した固体原料7を、バッフル板10の下方に配置した態様である。このような態様の場合には、バッファ室12中に存在する固体原料7からの溶解成分の、結晶成長室11への供給を制御することができるため、結果としてGaN析出速度を制御することができる。
図4では、図3において撹拌翼(GaN基板)6の下方に配置したバッフル板10を撹拌翼(GaN基板)6の上方に配置した態様である。このような態様の場合には、バッファ室12中に存在する気相からの溶解成分の、結晶成長室11への供給を制御することができるため、結果としてGaN析出速度を制御することができる。
図5は、バッフル板10を複数用いた態様である。撹拌翼(GaN基板)6を挟むようにバッフル板10を配置することで、反応容器5中に複数のバッファ室12を設けた態様である。このような態様の場合には、下方のバッファ室12中に存在する固体原料7からの溶解成分の、結晶成長室11への供給と、上方のバッファ室12中に存在する気相からの溶解成分の、結晶成長室11への供給とを、独立に制御することができるため、結果としてGaN析出速度を制御することができる。
以下、実施例と比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、以下の実施例に示す具体的な形態にのみ限定的に解釈されることはない。
<バッフル板の孔面積及び厚みの変化によるGaN析出速度への影響のシミュレーション>
シミュレーションを行うために、実施例に則して結晶成長室で以下の可逆反応を仮定した。より具体的には、実施例における反応と同様に、原料である1モルのLi3GaN2から1モルのGaN結晶および3モルの副生成物であるLiNH2が生成する反応を仮定してシミュレーションを行った。
原料 ⇔ GaN + 3(副生成物)
図2に示す製造装置(反応容器中、上部が結晶成長室、下部がバッファ室)を想定し、結晶成長室で生成した副生成物はバッフル板の孔を通り、濃度拡散により結晶成長室からバッファ室へ流出すると仮定する。また、各部屋の副生成物濃度は常に均一であると仮定する。
副生成物の濃度を用いた正反応の反応速度をR(mol/m3/s)、逆反応(副生成物濃度の一次反応を仮定)の速度係数をk(/s)、副生成物の拡散係数をD(m2/s)、バッフル板の開口面積をA(m2)、板厚をL(m)、成長室と別室の塩量をV1(m3)、V2(m3)とおくと、成長室と別室の副生成物の濃度(C1、C2)の時間変化、及び、GaN析出総量は以下の式(1)〜(3)で表すことができる。
Figure 2013116839
Figure 2013116839
Figure 2013116839
結晶成長室、バッファ室の初期副生成物の濃度を0と設定し、式(1)、(2)を差分化することで、各時間における成長室と別室の濃度C1、C2を求め、これらを用いて式(3)からGaN析出総量を計算した(図6)。また、各時間における成長室と別室の副生成物の濃度差(ΔC=C1−C2)を計算した(図7)。ただし、図7のバッフル板なしの条件イでは、バッファ室が存在しないため、常時ΔC=0とし、A/L=∞とした。
計算するに当たり、用いたパラメータを下記表に示す。正反応の反応速度をR(mol/m3/s)、逆反応(副生成物濃度の一次反応)の速度係数をk(/s)は、バッフル板を用いない比較例の実験結果をよく再現するような妥当値を設定し、各々の計算に用いた。シミュレーション結果を表1に示す。
Figure 2013116839
<実施例1>
(仕込み)
実施例における製造装置は、図2に示す構成を有するものを用いた。
窒化処理を施したTi製の反応容器5(外径34mm、内径26mm、高さ200mm)の中に、同様に窒化処理を施したTi製のバッフル板10(開口面積 15.7mm2、厚み1mm)を設置して、固体のLi3GaN2 4.5gを入れた。次いで、溶媒として68gのLiClを入れた。図2に示すように、バッフル板の上部を、原料を含む結晶成長室、下部をバッファ室とし、結晶成長室とバッファ室の塩量比を1:1とした。
次にTi製の反応容器5を石英製反応管4内にセットし、石英製反応管のガス導入口1およびガス排気口2を閉状態にした。これらの操作は全てArボックス中で行った。
(結晶成長)
次に、石英製反応管4をArボックスから取り出し、電気炉3にセットした。この石英製反応管4にガス導入管をつなぎ、導入管中を減圧にした後、石英製反応管のガス導入口1を開いて石英製反応管4内を減圧にした。
次に電気炉の加熱を開始し、Ti製の反応容器5の内部が室温から750℃になるまで1時間で昇温し、LiClを溶融させて溶融塩とし、該溶融塩に固体原料7であるLi3GaN2が溶解した溶液を形成した。その後、水素窒素混合ガス(水素10vоl%)で大気圧まで復圧し、石英製反応管4内を水素窒素混合ガス雰囲気とした。その後、石英製反応管4のガス排気口2を開き、水素窒素混合ガス(水素10vоl%)を100sccmで流通させた(実験終了まで流通させ続けた)。
750℃で2.5時間保持した後、攪拌翼保持棒8の先端に取り付けた攪拌翼6を反応容器5中の溶液9に浸漬し、攪拌翼を100rpmにて回転させて結晶成長を開始した。750℃にて13時間結晶成長させた後、攪拌翼6を溶液9から引き上げてから炉の加熱を止め、石英製反応管4を徐冷した。
(回収)
Ti製の反応容器を温水に投入し、凝固したLiCl塩を溶解させて、析出したGaN結晶を回収した。回収したGaN結晶を塩酸、及び、純水で洗浄し、充分に乾燥させてから秤量したところ、重量は704mg(単位塩量当たりのGaN析出量は10.4mg/g)であった。
<実施例2>
実施例1と同様の手順で仕込み、昇温を行った。昇温後、1.5時間保持した後に、攪拌翼を反応容器5中の液に浸漬した。攪拌翼を100rpmで回転させて63時間結晶成長させた後、攪拌翼6を溶液9から引き上げてから炉の加熱を止め、石英製反応管4を徐冷した。以下、実施例1と同様の手順で塩中のGaN結晶を回収、秤量したところ、重量は1080mg(単位塩量当たりのGaN析出量は15.9mg/g)であった。
<実施例3>
(仕込み)
窒化処理を施したTi製のバッフル板10(開口面積 0.2mm2、厚み1mm)、固体のLi3GaN2 4.5g、溶媒としてLiClを99g用い、結晶成長室とバッファ室の塩量比を1:1.5として、実施例1と同様の手順で仕込みを行った。
(結晶成長)
次に、石英製反応管4をArボックスから取り出し、電気炉3にセットした。この石英製反応管4にガス導入管をつなぎ、導入管中を減圧にした後、石英製反応管のガス導入口1を開いて石英製反応管4内を減圧にした。その後、窒素で大気圧まで復圧し、石英製反応管4のガス排気口2を開き、窒素ガスを100sccmで流通させた。
次に電気炉の加熱を開始し、Ti製の反応容器5の内部が室温から750℃になるまで1時間で昇温し、LiClを溶融させて溶融塩とし、該溶融塩に原料7であるLi3GaN2が溶解して溶液を形成した。溶解後、石英製反応管4のガス排気口2を閉じ、石英製反応管のガス導入口1を開いて石英製反応管4内を減圧にした。その後、水素窒素混合ガス(水素10vol%)で大気圧まで復圧し、石英製反応管4のガス排気口2を開いて、水素窒素混合ガス(水素10vol%)を100sccmで流通させた(実験終了まで流
通させ続けた)。
750℃で1.5時間保持した後、攪拌翼保持棒8の先端に取り付けた攪拌翼6を反応容器5中の溶液9に浸漬し、攪拌翼を100rpmにて回転させて結晶成長を開始した。750℃にて30時間結晶成長させた後、攪拌翼6を溶液9から引き上げてから炉の加熱を止め、石英製反応管4を徐冷した。
(回収)
実施例1と同様の手順で析出したGaN結晶を回収、秤量したところ、重量は683mg(単位塩量当たりのGaN析出量は6.9mg/g)であった。
<比較例1>
(仕込み)
窒化処理を施したTi製の反応容器5(外径34mm、内径30mm、高さ200mm)の中に、固体のLi3GaN2 1.44gを入れた。次いで、溶媒として14.4gのLiClを入れた。次にTi製の反応容器5を石英製反応管4内にセットし、石英製反応管のガス導入口1およびガス排気口2を閉状態にした。これらの操作は全てArボックス中で行った。
(結晶成長)
次に、石英製反応管4をArボックスから取り出し、電気炉3にセットした。この石英製反応管4にガス導入管をつなぎ、導入管中を減圧にした後、石英製反応管のガス導入口1を開いて石英製反応管4内を減圧にした。その後、水素窒素混合ガス(水素10vol%)で大気圧まで復圧し、石英製反応管4内を水素窒素混合ガス雰囲気とした。その後、石英製反応管4のガス排気口2を開き、水素窒素混合ガス(水素10vol%)を100sccmで流通させた(実験終了まで流通させ続けた)。
次に電気炉の加熱を開始し、Ti製の反応容器5の内部が室温から750℃になるまで1時間で昇温し、LiClを溶融させて溶融塩とし、該溶融塩に原料7であるLi3GaN2が溶解して溶液を形成した。
750℃で2時間保持した後、攪拌翼保持棒8の先端に取り付けた攪拌翼6を反応容器5中の溶液9に浸漬し、攪拌翼を100rpmにて回転させて結晶成長を開始した。750℃にて20時間結晶成長させた後、攪拌翼6を溶液9から引き上げてから炉の加熱を止め、石英製反応管4を徐冷した。
(回収)
実施例1と同様の手順で析出したGaN結晶を回収、秤量したところ、重量は266mg(単位塩量当たりのGaN析出量は18.5mg/g)であった。
<比較例2>
固体のLi3GaN2 1.44g、LiClを15gを用いて、比較例1と同様の条件で仕込みを行い、電気炉に反応石英管をセットした後、750℃まで1時間で昇温した。その後、1時間保持し、攪拌翼保持棒8の先端に取り付けた攪拌翼6を反応容器5中の溶液9に浸漬し、攪拌翼を100rpmにて回転させて結晶成長を開始した。750℃にて76時間結晶成長させた後、攪拌翼6を溶液9から引き上げてから炉の加熱を止め、石英製反応管4を徐冷した。
その後、実施例1と同様の手順で析出したGaN結晶を回収、秤量したところ、重量は290mg(単位塩量当たりのGaN析出量は19.3mg/g)であった。
(シミュレーションを利用した実施例、比較例における結果の解釈)
比較例では、約20時間程度でGaN析出が停止している(図6の比較例1、2)のに対し、バッフル板(A/L=1.6×10-2 m)を用いると、平均的なGaN析出速度
を抑制できるため、GaN析出反応を80時間以上に継続できる(図6の実施例1、2)。バッフル板のA/L値を変えることで、GaN析出反応時間とGaN析出速度(結晶成長の過飽和度)を容易に制御できる。適切なA/L値を用いて基板成長を行った場合は、バッフル板を用いない場合と比較して高品質な大型結晶を得ることができる。
シミュレーションから明らかなように、バッフル板がA/L=2×10-1mの時は、バッフル板を通る副生成物の流通量が多すぎるため、バッフル板を配置した効果が弱まる。したがって、好ましいバッフル板の拡散量としては、A/Lが2×10-1m以下である。
バッフル板がA/L=2×10-4mの時は、バッフル板を通る流通量が少なすぎるため、成長室でのみGaN析出反応がおきる傾向にあり、バッフル板を配置した効果が弱まる(図6の実施例3)。したがって、好ましいバッフル板の拡散量としては、A/Lが2×10-4m以上である。
上記の最適な範囲2×10-4m以上2×10-1m以下は、実験、及び、シミュレーションで用いた成長室の塩量(およそ40g)を仮定した場合である。A/Lは、拡散量を示す指標であるため、成長室の塩量によって、その最適な範囲は異なってくる。例えば、成長室の塩量が2倍になった場合、副生成物の蓄積量も2倍となるため、除去速度を一定に保つには、拡散量、すなわち、A/L値も2倍となる必要がある。したがって、成長室の単位塩量当たりの拡散量A/L [単位:m/g]を指標とすることがより好ましく、その最適な範囲は、おおよそ5×10-6以上、5×10-3以下となる。
上記の好ましいA/L値範囲2×10-4m〜2×10-1mを用いた場合、成長開始から20時間経過時までの単位塩量当たりの平均GaN析出速度は、0.35mg/(g・hr)以上、18mg/(g・hr)以下となることが明らかである(図6参照)。
上記の好ましいA/L値範囲2×10-4m〜2×10-1mとなるバッフル板を用いた場合、成長開始から20時間経過時点での成長室と別室の副生成物の濃度差ΔC(mol/m3)で表すと、34molm3以上、970mol/m3以下となる(図7参照)。
1 ガス導入口
2 ガス排気口
3 電気炉
4 反応管
5 反応容器
6 撹拌翼兼GaN基板
7 固体原料
8 保持棒
9 溶融塩
10 バッフル板
11 バッファ室
12 結晶成長室

Claims (10)

  1. 原料及び溶媒を含む溶液または融液を用いて結晶を成長させる結晶成長工程、を含む周期表第13族金属窒化物結晶を製造する製造方法であって、
    前記結晶成長工程は、結晶成長室、バッファ室、および反応容器を結晶成長室とバッファ室とに仕切る隔壁、を備えた反応容器を用いて行われ、
    前記隔壁は孔を有しており、
    前記反応容器に備えた隔壁が孔を有することで結晶成長速度を制御可能とすることを特徴とする、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  2. 前記反応容器は、複数の隔壁を備えることで複数の結晶成長室またはバッファ室を形成することを特徴とする、請求項1に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  3. 前記隔壁は、隔壁表面の孔の面積A(m2)と隔壁の厚さL(m)の比A/L(m)が、2.0×10-4以上、2.0×10-1以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  4. 前記隔壁は、前記結晶成長室に存在する溶液または融液の単位重量当たりの、隔壁表面の孔の面積Aと隔壁の厚さLの比A/L(m/g)が5.0×10-6以上、5.0×10-3以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  5. 前記隔壁は、隔壁の表面積S(m2)に対する隔壁表面の孔の面積A(m2)の割合A/S×100が0.03%以上、30%以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  6. 前記結晶成長工程において、結晶成長開始から20時間経過時までの成長室の単位塩量当たりの平均結晶析出速度が0.35mg/(g・hr)以上、18mg/(g・hr)以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  7. 前記結晶成長工程において、結晶成長開始から20時間経過時における、前記成長室とバッファ室での副生成物の濃度差ΔC(mol/m3)が34mol/m3以上、970mol/m3以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  8. 前記反応容器に備える隔壁は、結晶成長工程において溶液または融液を反応容器に充填した状態において、気液界面と略平行または略垂直に配置することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  9. 前記溶媒は、イオン性溶媒であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  10. 周期表第13族金属窒化物結晶の原料として、ガリウムおよびリチウムの複合窒化物原料を用いることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
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