JP2013202969A - 繊維強化熱可塑性樹脂ランダムシート及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性樹脂と繊維からなるチョップドストランド・プリプレグの、繊維方向がランダムに積層された積層物を加熱及び加圧成形してなる繊維強化熱可塑性樹脂ランダムシートであって、前記チョップドストランド・プリプレグの繊維軸方向の代表長さ(A)が5〜20mmであり、繊維軸直角方向の長さ(B)が10〜30mmであることを特徴とするランダムシート。
【選択図】なし
Description
そのような繊維強化熱可塑性樹脂材料で形成されるシート等の成形体には、熱可塑性樹脂含浸繊維チョップドストランド・プリプレグ(以下、単にチョップドストランド・プリプレグと記す)を用いたものがある。チョップドストランド・プリプレグとは、マトリックスとする熱可塑性樹脂中に、ストランド(繊維束)が一方向に配列している状態で繊維が存在する熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグ(以下、単にプリプレグとも記す)を、例えば25〜50mm程度の繊維長に切断した小片をいう。このチョップドストランド・プリプレグを積層させて加熱・加圧(ホットスタンピング)成形すると、成形時の流動性が良好となるため、種々の複雑な形状に成形することができる。また、成形時にチョップドストランド・プリプレグを繊維方向がランダムになるように積層することにより、そのシートの物性について等方性を付与することができる。そのため、チョップドストランド・プリプレグを用いた繊維強化熱可塑性樹脂ランダムシートは好適な材料とされている。
かかる問題点について、これまでにシートの強度や弾性率の向上を企図して、チョップドストランド・プリプレグの繊維重量含有率(Wf)や繊維長を調整したガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート(特許文献1、2)や、チョップドストランド・プリプレグの繊維体積含有率(Vf)、繊維長、厚みを調整した炭素繊維強化熱可塑性樹脂シート(特許文献3、4)が開示されている。しかしながら、優れた物性と成形時の流動性とを両立する等方性の繊維強化熱可塑性樹脂ランダムシートとしては、不十分なものであった。また、これまでにチョップドストランド・プリプレグの幅に着目した例はなかった。
るチョップドストランド・プリプレグの繊維軸方向の代表長さと繊維軸直角方向長さに着目し、これらを適切な範囲とすることにより、上記の課題を解決できることを見出した。
[1]熱可塑性樹脂と繊維からなるチョップドストランド・プリプレグの、繊維方向がランダムに積層された積層物を加熱及び加圧成形してなる繊維強化熱可塑性樹脂ランダムシートであって、前記チョップドストランド・プリプレグの繊維軸方向の代表長さ(A)が5〜20mmであり、繊維軸直角方向の長さ(B)が10〜30mmであることを特徴とするランダムシート。
[2]A≦Bである、[1]に記載のランダムシート。
[3]前記チョップドストランド・プリプレグの繊維体積含有率(Vf)が30〜50%である、[1]または[2]に記載のランダムシート。
[4]前記繊維が炭素繊維である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のランダムシート。
[5]繊維強化熱可塑性樹脂ランダムシートの製造方法であって、熱可塑性樹脂と繊維からなり、繊維軸方向の代表長さ(A)が5〜20mmであり、繊維軸直角方向の長さ(B)が10〜30mmであるチョップドストランド・プリプレグを作製する工程と、前記チョップドストランド・プリプレグを前記繊維方向がランダムになるように積層して積層物を作製する工程と、前記積層物を加熱及び加圧してシートを成形する工程とを含む方法。[6]A≦Bである、[5]に記載の製造方法。
[7]前記チョップドストランド・プリプレグの繊維体積含有率(Vf)が30〜50%である、[5]または[6]に記載の製造方法。
[8]前記繊維が炭素繊維である、[5]〜[7]のいずれか一項に記載の製造方法。
ここで、Aは4×チョップドストランド・プリプレグの面積/チョップドストランド・プリプレグの周辺長で算出される。例えば、チョップドストランド・プリプレグの形状が長方形の場合、一方の辺の長さをL、他方の辺の長さをWとすると、A=4LW/2(L+W)となる。また、例えばチョップドストランド・プリプレグの形状が円形の場合、直径をLとするとA=Lとなる。
ここで、Bはチョップドストランド・プリプレグの繊維軸に直角方向の最大長さを指し、通常には小片のいわゆる「幅」であり「厚み方向の長さ」ではない。例えば、チョップドストランド・プリプレグの形状が多角形の場合、その平面上で測った繊維軸に直角方向の長さの最大値がBとなる。また、例えばチョップドストランド・プリプレグの形状が円形の場合、直径をLとするとB=Lとなる。
また、A:Bは1:1〜1:6であることが、シート成形時の流動性向上と破壊強度とを両立させる観点から好ましい。
また、得たい成形品の要求特性に応じて、難燃剤、耐候性改良剤、その他酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等を添加しておくこともできる。
上記の熱可塑性樹脂は、後述する熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグの作製における操作の簡便性から、厚さ10〜100μmのフィルム状のものを用いることが好ましい。
強化繊維としての繊維束としては、通常、目付けが10〜1000g/m2のもので、
ストランドを平面上に展開させたシート状のものを用いる。本発明において繊維シートを用いる場合は、長繊維の方向が一方向に配向されたものを用いる。
シート状の強化繊維の厚さとしては、製品の十分な強度を確保する観点と、熱可塑性樹脂の十分な含浸を確保することを両立する観点から、通常、平均厚さとして10〜200μmである。
チョップドストランド・プリプレグまたはプリプレグは、例えば、直接溶融した熱可塑性樹脂に強化繊維のストランドを含浸させる方法、粉体状またはフィルム状の熱可塑性樹脂を溶融してこれに強化繊維のストランドを含浸させる方法など、周知の方法を適宜採用して製造することができる。
まず、上述した熱可塑性樹脂の形態として例えば前述したフィルム状のものを二層分準備し、その二層の間に上述した繊維束で構成される繊維シートを挟み込み、加熱及び加圧を行う工程を経て積層体とする。より具体的には、対を形成する熱可塑性樹脂フィルムを送り出す2つのロールから二層分のフィルムを送り出すとともに、繊維シートのロールから供給される繊維シートをその層間に挟み込ませ、熱可塑性樹脂フィルム−繊維シート−熱可塑性樹脂フィルムの三層構造、いわゆるサンドイッチ構造が構成された後に、加熱及び加圧する。加熱及び加圧する手段としては、公知のものを用いることができ、二個以上の熱ロールを利用したり、予熱装置と熱ロールの対を複数使用したりするなどの多段階の工程を要するものであってもよい。
ここで、熱可塑性樹脂からなる層は一層である必要はなく、繊維シートを挟む熱可塑性樹脂とは別の種類の熱可塑性樹脂からなるフィルムを、上記のような装置を用いてさらに積層させてもよい。
上記加熱温度は、熱可塑性樹脂の種類にもよるが、通常、100〜400℃である。一方、加圧時の圧力は、通常0.1〜10MPaである。
上記のような操作を経ることで、積層体にストランドが一方向に配列している状態で存在する強化繊維内に、熱可塑性樹脂が含浸し、熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグとなる。
上記熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグは、市販されているものを用いてもよい。
上記熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグの厚さは、取り扱いやすく高強度を維持する観点から、通常、厚さは50〜500μmである。
本発明にかかるチョップドストランド・プリプレグにおいて繊維体積含有率(Vf)は、ランダムシートの破壊強度を大きくする観点から20〜50%であることが好ましく、より好ましくは30〜50%である。かかるVf値は、JIS K7075に基づき測定できる。
また、本発明にかかるチョップドストランド・プリプレグにおいて繊維重量含有率(Wf)は、ランダムシートの破壊強度を大きくする観点から、30〜60%であることが好ましい。かかるWf値は、JIS K7052に基づき測定できる。
ンダムになるように積層して積層物を作製する。繊維方向をランダムにすることにより、得られるシートに等方性が付与される。繊維方向がランダムになるようにチョップドストランド・プリプレグを積層させる方法としては、例えば、チョップドストランド・プリプレグを高い位置から自然落下させて、ベルトコンベアー上を流れる容器や金型のダイに堆積させる方法や、落下経路にエアーを吹き込んで気流を生じさせる方法や、落下経路に邪魔板を取り付ける方法、蓄積したチョップドストランド・プリプレグを攪拌した後にダイ上に配置する方法などを適宜採用できる。
上記積層物においては、チョップドストランド・プリプレグの積層数が2〜100層となることが好ましい。
前記加熱においては、前記熱可塑性樹脂の種類にもよるが、通常100〜400℃、好ましくは150〜350℃で加熱する。
加熱に関しては、予備加熱を行ってもよい。予備加熱については、前記プリプレグに用いられている熱可塑性樹脂の種類にもよるが、通常150〜400℃、好ましくは200〜380℃で加熱する。
前記加圧において積層物にかける圧力としては、好ましくは0.1〜10MPaであり、より好ましくは0.2〜2MPaである。この圧力については、プレス力をチョップドストランド・プリプレグの積層物の初期面積で除した値とする。
上記加熱及び加圧する時間は、通常0.1〜30分間、好ましくは0.5〜10分間である。また、加熱及び加圧の後に設ける冷却時間は、通常0.5〜30分間である。
上記ホットスタンピング成形を経た本発明にかかる繊維強化熱可塑性樹脂シートの厚さは、通常0.5〜10mmとなる。
前記潤滑剤としては、例えばシリコーン系潤滑剤やフッ素系潤滑剤を用いることができる。また、これらの混合物を用いてもよい。
シリコーン系潤滑剤としては、高温環境で用いることができる耐熱性のものが好ましく用いられる。より具体的には、メチルフェニルシリコーンオイルやジメチルシリコーンオイルのようなシリコーンオイルを挙げることができ、市販されているものを好ましく用いることができる。
フッ素系潤滑剤としては、高温環境で用いることができる耐熱性のものが好ましく用いられる。そのようなものの具体例としては、パーフルオロポリエーテルオイルや三フッ化塩化エチレンの低重合物(重量平均分子量500〜1300)のようなフッ素オイルを用いることができる。
上記潤滑剤は、上記積層物の片側若しくは両側の表面上、前記ダイの片側もしくは両側の表面上または上記プリプレグ及びダイの双方の片側若しくは両側の表面上に、潤滑剤塗布装置などの適当な手段によって供給されてもよいし、予めダイの表面上に塗布しておいてもよい。
上記の態様の中では、上記ダイの両側の表面に潤滑剤が塗布される態様が好ましい。
さらに、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂ランダムシートは、前記曲げ強度のばらつきが小さく、すなわち等方性を有する。ここで、CV値とは相対的な散らばりを表す指標(変動係数)であり、この値が小さいほど測定点間の物性のばらつきが小さい、すなわち等方性を有することを示す。かかるCV値は、例えばサンプルについて5点の曲げ強度を測定し、CV値(%)=(標準偏差/測定値の平均値)×100により算出することができる。本発明の繊維強化熱可塑性樹脂ランダムシートのCV値は、通常20%以下、好ましくは10%以下である。
炭素繊維TR50S−15L−AD(三菱レイヨン社製)からなる長繊維を一方向に配向した目付け98g/m2の炭素繊維ストランドのシート状物の両面に、変性ポリプロピ
レン(以下、PPともいう)フィルム(モディックP958、三菱化学社製、目付け36g/m2)を配置し、シート状物をフィルムで挟んだサンドイッチ状の積層体を得た。こ
の積層体を260℃に加熱した金属ロールを通すことにより1MPaの圧力をかけて、変性PPフィルムをシート状物に溶融含浸させた。得られた熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグ1の厚さは0.11〜0.13mmであった。繊維体積含有率は40%であった。
また、用いる炭素繊維ストランドの目付けを123g/m2とした以外は、同様の操作
を行い、繊維体積含有率は50%の熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグ2を得た。
上記で得られた熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグ1及び2をそれぞれ、幅5、10、15、20又は30mmで繊維方向にスリットした後、ロータリー式のカッターを用いて、繊維方向の長さ5、10、15、20又は30mmにカットして、種々の大きさのチョップドストランド・プリプレグを得た。各大きさのチョップドストランド・プリプレグ40gを、120mm角の金型内に繊維方向がランダムになるように積層した。その金型を210℃に加熱した小型加熱プレス(ミニテストプレスMP−2FH、東洋精機社製)に挟んで5分間予備加熱を行った後に、油圧3MPaでプレスし10分間保持した。その後20℃に保持した小型プレス(ミニテストプレス、東洋精機社製)に金型を挟み、油圧5MPaで10分間保持し、厚さ2mmの繊維強化熱可塑性樹脂ランダムシートを得た。なお
、上記圧力は、プレス力をチョップドストランド・プリプレグの積層物の初期面積で除した値である。
上記で得られた各繊維強化熱可塑性樹脂ランダムシートについて、流動性及び曲げ強度を評価した。
流動性の評価は、52mm角に切り出した厚み2mmのランダムシートを2枚重ね、あらかじめ230℃に加温したヒーター内で5分間保持し、その後すぐに145℃に加熱した小型プレス(ミニテストプレスMP−2FH、東洋精機社製)に移して挟み、油圧2MPaで30秒プレスした。そしてプレス前の厚みをプレス後の厚みで除した値を流動性の指標とし、2段階(○:2以上、×:2未満)で評価した。
曲げ強度の測定はJIS K7017に従い、各サンプルについて5点の測定数とした。また曲げ強度の測定値についてCV値をCV値(%)=(標準偏差/測定値の平均値)×100により算出した。曲げ強度について、3段階(○:300MPa以上、△:200MPPa以上300MPa未満、×:200MPa未満)で評価した。また、CV値について、2段階(○:20%以下、×:20%超)で評価した。
総合評価として、流動性○、曲げ強度○、CV値○のものを優良(◎)とした。流動性○、曲げ強度△、CV値○のものを良(○)とした。
繊維体積含有率40及び50%の各結果を、表1及び2に示す。
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂と繊維からなるチョップドストランド・プリプレグの、繊維方向がランダムに積層された積層物を加熱及び加圧成形してなる繊維強化熱可塑性樹脂ランダムシートであって、
前記チョップドストランド・プリプレグの繊維軸方向の代表長さ(A)が5〜20mmであり、繊維軸直角方向の長さ(B)が10〜30mmであることを特徴とするランダムシート。 - A≦Bである、請求項1に記載のランダムシート。
- 前記チョップドストランド・プリプレグの繊維体積含有率(Vf)が30〜50%である、請求項1または2に記載のランダムシート。
- 前記繊維が炭素繊維である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のランダムシート。
- 繊維強化熱可塑性樹脂ランダムシートの製造方法であって、
熱可塑性樹脂と繊維からなり、繊維軸方向の代表長さ(A)が5〜20mmであり、繊維軸直角方向の長さ(B)が10〜30mmであるチョップドストランド・プリプレグを作製する工程と、
前記チョップドストランド・プリプレグを前記繊維方向がランダムになるように積層して積層物を作製する工程と、
前記積層物を加熱及び加圧してシートを成形する工程とを含む方法。 - A≦Bである、請求項5に記載の製造方法。
- 前記チョップドストランド・プリプレグの繊維体積含有率(Vf)が30〜50%である、請求項5または6に記載の製造方法。
- 前記繊維が炭素繊維である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
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