JP5935437B2 - 繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法 - Google Patents
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Description
このようなプリプレグは、予め加熱された状態で成形機に供給され、型に合わせて高速でプレスされて成形が行われる。
ここで、プリプレグシートの製造方法としては、例えば、炭素繊維の繊維束に熱可塑性樹脂などのマトリックス樹脂を含浸させたシートを得るために、繊維束とその繊維束に含浸させたマトリックス樹脂の加圧を、一対のローラーで行うとともに、このローラーのうち少なくとも一方のローラーをこれらの回転軸方向に移動させながら行う方法が開示されている(例えば、特許文献1)。この方法では、繊維束へのマトリックス樹脂の含浸量を高められるとともに、繊維束の拡幅量を向上させることができることが記載されている。
前記ホットスタンピング成形工程において、前記プリプレグの加圧成形が、前記ダイと前記プリプレグとの間に潤滑剤が存在する条件下で行われることを特徴とする、前記方法。
<2> 前記繊維が、炭素繊維である、<1>に記載の方法。
<3> 前記潤滑剤がシリコーン系潤滑剤またはフッ素系潤滑剤である、<1>または<2>に記載の方法。
<4> 前記熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグが、繊維方向が一方向に配向されているものである、<1>〜<3>のいずれかに記載の方法。
<5> 前記維強化熱可塑性樹脂プリプレグが、繊維方向がランダムに配向されている、<1>〜<3>のいずれかに記載の方法。
<6> 前記加圧が、0.1〜2MPaで行われる、<1>〜<5>のいずれかに記載の方法。
<7> 熱可塑性樹脂フィルム及び繊維シートを含む積層体を加熱及び加圧して熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグを作製する工程を含む、<1>〜<6>のいずれかに記載の方法。
前記熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグをホットスタンピング成形により加圧する際に、前記ダイと前記プリプレグとの間のに潤滑剤が存在する条件下で行うことを特徴とする。
上記方法を用いて得た繊維強化熱可塑性樹脂シートでは、繊維への熱可塑性樹脂の含浸が良好になることでシート内でのボイドを低減させることができる。その結果、繊維強化熱可塑性樹脂シートに求められる良好な曲げ強度や弾性率を達成することができる。
本発明に係る熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグ(以下、単にプリプレグともいう)は、熱可塑性樹脂からなる層を少なくとも二層有し、その層の間に強化繊維としての繊維束からなる層を有するものを用いることが好ましい。
あるいは、後述するフィルム状の熱可塑性樹脂とシート状の強化繊維からなる二層構造であってもよい。
また、得たい成形品の要求特性に応じて、難燃剤、耐候性改良剤、その他酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等を添加しておくこともできる。
上記の熱可塑性樹脂は、前記プリプレグを作製する際には、操作の簡便性から、厚さ10〜100μmのフィルム状のものを用いることが好ましい。
強化繊維としての繊維束としては、通常、目付が10〜1000g/m2のもので、ス
トランドを平面上に展開させたシート状のものを用いる。この繊維シートについては、通常、長繊維の方向が一方向に配向されたものや、ストランドを織布にしたものや、不織布を用いる。
シート状の強化繊維の厚さとしては、製品の十分な強度を確保する観点と、熱可塑性樹脂の十分な含浸を確保することを両立する観点から、通常、平均厚さとして10〜200μmである。
より具体的には、対を形成する熱可塑性樹脂フィルムを送り出す2つのロールから二層分のフィルムを送り出すとともに、繊維シートのロールから供給される繊維シートをその層間に挟み込ませ、熱可塑性樹脂フィルム−繊維シート−熱可塑性樹脂フィルムの三層構造、いわゆるサンドイッチ構造が構成された後に、加熱及び加圧する手段を経て前記プリプレグを作製することができる。加熱及び加圧する手段としては、公知のものを用いることができ、二個以上の熱ロールを利用したり、予熱装置と熱ロールの対を複数使用するなどの多段工程を要するものであってもよい。
ここで、熱可塑性樹脂からなる層は一層である必要はなく、繊維シートを挟む熱可塑性樹脂とは別の種類の熱可塑性樹脂からなるフィルムを、上記のような装置を用いてさらに積層させてもよい。
熱可塑性樹脂としてフィルム状のものを一層のみ使用し、シート状の強化繊維と二層のみの構成でプリプレグを作製する場合には、上記の三層構造のプリプレグを作製するための装置において、熱可塑性樹脂のフィルムを送り出すロールを一つにすればよい。
加圧時の圧力とはプレス力をプリプレグの初期面積(m2)で割った値とする。
上記のような操作を経ることで、積層体に存在する強化繊維内に熱可塑性樹脂が含浸するようになる。
上記熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグは、市販されているものを用いてもよい。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法(以下、単に本発明の製造方法ともいう)では、上述した熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグをホットスタンピング成形を行わせる材料として用いる。上記プリプレグについては、繊維が一方向に配向されているものを用いることができる。
これを縦横比が、例えば100:1〜1:100となるようにカットしたものを用い、
繊維の配向方向を揃えて後述するダイに積層させることで、ホットスタンピング成形を経た後も繊維の配向性を維持することができる。これによれば、連続繊維が一方向に配向した、いわゆるユニダイレクション(UD)シートとなる。ダイに積層させる際には、プリプレグが2〜100層積層されるように配置することが好ましい。
ランダムシートを作製する際に用いる上記プリプレグの小片としては、繊維が一方向に配向されているプリプレグを縦横比が、通常10:1〜10:1となるようにカットされたものを用いることができる。
これをホットスタンピング成形時に、ダイの平面上に、繊維の配向方向がランダムになるように分散して積層させることで、上記のようにホットスタンピング成形後の繊維強化熱可塑性樹脂シート(以下、単に本発明にかかるシートともいう)において、強化繊維がランダムに配向されたものを得ることができる。
ダイに積層させる際には、プリプレグが2〜100層積層されるように配置することが好ましい。
また、前記カットされたプリプレグの形状は、生産効率の観点から四角形であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、繊維強化熱可塑性樹脂シートにおける繊維方向を一方向に揃えることさえできれば、多角形のものや、辺の一部に曲線を有するものであってもよい。
前記加熱については、前記プリプレグに用いられている熱可塑性樹脂の種類にもよるが、通常100〜400℃、好ましくは150〜350℃で加熱する。
加熱に関しては、予備加熱を行ってもよい。予備加熱については、前記プリプレグに用いられている熱可塑性樹脂の種類にもよるが、通常150〜400℃、好ましくは200〜380℃で加熱する。
前記加圧については、後述するように本発明の製造方法ではダイと上記プリプレグとの間に潤滑剤が存在する条件下で加圧することから、通常の繊維強化熱可塑性樹脂シートの作製時の加圧に用いられる圧力よりも低い圧力で足りる。
圧力としては、好ましくは0.1〜10MPaであり、より好ましくは0.2〜2MPaである。この圧力については、プレス力をプリプレグの初期面積(m2)で割った値と
する。
この圧力は、本発明の製造方法によれば、0.2〜1.0MPaの範囲まで下げてもよい。プリプレグの加圧及び加熱を潤滑剤の存在下で行うことで、従来のような高い圧力をかける必要がないためである。
一方、冷却時間は、通常0.5〜30分である。
上記ホットスタンピング成形を経た本発明にかかる繊維強化熱可塑性樹脂シートの厚さは0.5〜10mmとなる。
条件下で上記プロプレグを加圧する。
前記潤滑剤が存在する条件下で加圧を行うことで、潤滑剤の作用により、前記加熱及び加圧時に上記プリプレグ内の繊維の流動性を高めることができる。これにより、ホットスタンピング成形を経て得られるシートにおいて、繊維内及び繊維と熱可塑性樹脂の間におけるボイドを低減させることができる。
本発明で用いる潤滑剤は、従来離型剤として知られるものとは異なり、潤滑剤として動粘度が十分に高いものを用いる他、ダイと上記プリプレグの間に存在させる際に、離型剤として用いるよりも、潤滑剤として用いる方が多量を要する。例えば、プリプレグの単位面積(cm2)あたりに用いられる潤滑剤の量は、好ましくは0.001〜1g、より好
ましくは0.01〜0.1gである。
シリコーン系潤滑剤としては、高温環境で用いることができる耐熱性のものが好ましく用いられる。より具体的には、メチルフェニルシリコーンオイルやジメチルシリコーンオイルのようなシリコーンオイルを挙げることができ、市販されているものを好ましく用いることができる。これらのオイルの動粘度は500〜100,000cStであることが好ましく、1000〜10000cStであることがより好ましい。
フッ素系潤滑剤としては、高温環境で用いることができる耐熱性のものが好ましく用いられる。そのようなものの具体例としては、パーフルオロポリエーテルオイルや三フッ化塩化エチレンの重合物(動粘度が500〜100,000cSt)のようなフッ素オイルを用いることができる。フッ素オイルの好ましい動粘度としては、100〜1000cStである。
なお、潤滑剤の動粘度の測定は、JIS K 2283に準じて行うことができる。
上記潤滑剤は、ホットスタンピング成形に供される上記プリプレグの片側若しくは両側の表面上、前記ダイの片側もしくは両側の表面上または上記プリプレグ及びダイの双方の片側若しくは両側の表面上に、潤滑剤塗布装置などの適当な手段によって供給されてもよいし、予めダイの表面上に塗布しておいてもよい。
これにより、ホットスタンピング成形時の加熱及び加圧によって、上記プリプレグ内の繊維に流動性が付与される。これにより、熱可塑性樹脂の繊維束内への含浸を高めることができるとともに、成形前のプリプレグに存在していた繊維と熱可塑性樹脂の界面におけるボイドを低減できる。
上記の態様の中では、上記ダイの両側の表面に潤滑剤が予め塗布される態様が好ましい。
炭素繊維TR50S−15L−AD(三菱レイヨン社製)からなる長繊維を一方向に配向した目付け98g/m2の炭素繊維ストランドのシート状物の両面に、変性ポリプロピ
レン(以下、PPともいう)フィルム(モディックP958、三菱化学社製、目付け36g/m2)を配置し、シート状物をフィルムで挟んだサンドイッチ状の積層体を得た。こ
の積層体を260℃に加熱した金属ロールを通して、変性PPフィルムをシート状物に溶融含浸させた。得られた炭素熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグ(以下、樹脂含浸シート状物ともいう)の厚さは0.11〜0.13mmであった。繊維含有率は50重量%であった。
上記で得られた樹脂含浸シート状物を50mm角にカットした40gを、あらかじめ金型表面にジメチルシリコーンオイル(信越シリコーンKF−965−1−10000CS、信越化学社製)を塗布した120mm角の金型内に繊維配向をそろえて積層した。その金型を210℃に加熱した小型加熱プレス(ミニテストプレスMP−2FH、東洋精機社製)に挟んで5分間予備加熱を行った後に、プリプレグに対する圧力0.7MPa(油圧3MPa)でプレスし10分間保持した。その後20℃に保持した小型プレス(ミニテストプレス、東洋精機社製)に金型を挟み、プリプレグに対する圧力1.2MPa(油圧5MPa)で10分間保持し、厚さ2mmの炭素繊維強化熱可塑性樹脂シートを得た。
金型表面にジメチルシリコーンオイルを塗布しなかったこと以外は実施例1と同様の手順で炭素繊維強化熱可塑性樹脂シートを得た。
上記で得られた樹脂含浸シート状物を、幅24mmにスリットした後、ロータリー式のカッターを用いて、長さ30mmにカットして、チョップドプリプレグを得た。このチョップドプリプレグ40gを、あらかじめ金型表面にジメチルシリコーンオイル(信越シリコーンKF−965−1−10000CS、信越化学社製)を塗布した120mm角の金型内に繊維配向がランダムになるように積層した。その金型を210℃に加熱した小型加熱プレス(ミニテストプレスMP−2FH、東洋精機社製)に挟んで5分間予備加熱を行った後に、プリプレグに対する圧力0.7MPa(油圧3MPa)でプレスし10分間保持した。その後20℃に保持した小型プレス(ミニテストプレス、東洋精機社製)に金型を挟み、プリプレグに対する圧力1.2MPa(油圧5MPa)で10分間保持し、厚さ2mmの繊維強化熱可塑性樹脂シートを得た。得られたシートは機械的物性が実質的に等方性のものであった。
金型表面にジメチルシリコーンオイルを塗布しなかったこと以外は実施例2と同様の手順で繊維強化熱可塑性樹脂シートを得た。
曲げ強度と曲げ弾性率の測定はJIS K7017に従って測定した。またCV値とは、相対的な散らばりを表す指標(変動係数)であり、(標準偏差/測定値の平均値)×100(%)で表される値であり、この値が小さいほどサンプル間の物性のばらつきが小さいことを示している。測定数は各サンプル5点とした。
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグを加圧成形するためのダイを用いるホットスタンピング成形工程を含む繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法であって、
前記ホットスタンピング成形工程において、前記プリプレグの加圧成形が、前記ダイと前記プリプレグとの間に潤滑剤が存在する条件下で行われることを特徴とする、前記方法。 - 前記繊維が、炭素繊維である、請求項1に記載の方法。
- 前記潤滑剤がシリコーン系潤滑剤またはフッ素系潤滑剤である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグが、繊維方向が一方向に配向されているものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記維強化熱可塑性樹脂プリプレグが、繊維方向がランダムに配向されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記加圧が、0.1〜2MPaで行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 熱可塑性樹脂フィルム及び繊維シートを含む積層体を加熱及び加圧して熱可塑性樹脂含浸繊維プリプレグを作製する工程を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
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