JP2014189722A - 繊維強化プラスティックの積層基材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、繊維強化プラスチックの基材である積層基材、およびその製造方法に関するものである。
【解決手段】一方向に配向した複数の強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むプリプレグが、複数枚積層された積層基材であって、前記プリプレグ層は強化繊維を横切る方向に強化繊維を切断する深さの切込を有し、切込が直線状であって、切込と強化繊維のなす角度(θ)が5°以上、70°以下であり、切込により分断された強化繊維の長さが2種類以上あるプリプレグを含む積層基材により達成する。
【選択図】図1
【解決手段】一方向に配向した複数の強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むプリプレグが、複数枚積層された積層基材であって、前記プリプレグ層は強化繊維を横切る方向に強化繊維を切断する深さの切込を有し、切込が直線状であって、切込と強化繊維のなす角度(θ)が5°以上、70°以下であり、切込により分断された強化繊維の長さが2種類以上あるプリプレグを含む積層基材により達成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、スタンピング成形時の複雑な形状への賦形性に優れ、短時間で成形可能であり、かつ成形後の部品が構造材に適用可能な優れた力学物性、低ばらつき性を有することを特徴とする積層基材、およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、リブ、ボス等の3次元形状の成形に容易に追随し、構造部材として機械強度を維持し、例えば航空機部材、自動車部材、スポーツ用具等に好適に用いられる繊維強化プラスティックの中間基材である積層基材、およびその製造方法に関する。
繊維強化熱可塑性プラスティックの成形方法としては、プリプレグと称される連続した強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸せしめた基材を積層し、プレス等で加熱加圧することにより目的の形状に賦形するスタンピング成形が最も一般的に行われている。これにより得られた繊維強化プラスティックは、連続した強化繊維を用いているので優れた力学物性を有する。また連続した強化繊維は規則的に配列することで、必要とする力学物性に設計することが可能であり、力学物性のばらつきも小さい。しかしながら、連続した強化繊維であるゆえに3次元形状等の複雑な形状を形成することは難しく、主として平面形状に近い部材に限られる。
この問題を解決するために狭い幅のテープ状のプリプレグを一定の長さに切断したチップ状のプリプレグを平面上に分散させることにより、スタンピング成形性にすぐれた流動性のよいシートを得る方法が開示されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、一定幅と長さをもったチップ状のプリプレグを完全にランダムな方向に平板上へ配置することは極めて難しく、そのため同一シート内においても場所や向きによって力学物性が異なるという問題があった。
また、近年では生産効率の向上を目的に強化繊維を直接成形機のスクリュー部に送り込み、繊維の切断と分散を同時に行い、その後連続して射出成形や押出成形を行うD−LFT成形も行われている(例えば、非特許文献1)。この方法によると強化繊維は適当な長さに切断されているため流動が容易であり3次元形状等の複雑な形状にも追従可能となる。しかしながら、D−LFTはその切断および分散工程において繊維長のムラや繊維分布のムラを生じてしまうために、力学物性が低下し、あるいはその値のばらつきが大きくなってしまうという問題があった。
上述のような材料の欠点を埋めるべく、連続繊維と熱可塑性樹脂からなるプリプレグに切込を入れることにより、短時間成形が可能であり、成形時には優れた賦形性を示し、繊維強化プラスティックとしたときに優れた力学物性を発現するとされる積層基材が開示されている(例えば、特許文献2、3)。しかしながら、D−LFTと比較すると力学特性は高く、かつそのばらつきが小さくなるものの、構造材として適用するには十分な強度とは言えなかった。
また切込形状を最適化することにより上述の強度やそのばらつきを改良する方法が示されている(例えば,特許文献4、5、6)。しかしながらこの方法によると力学特性とばらつきの改良はみられるが、薄いリブやボス等の複雑な3次元形状への均一な流動性は不十分であった。また繊維方向に対して急峻な切込を多数配置する必要があり、カッティングプロッタで切断する場合には切込に有する時間が長大になる。また打ち抜きで切込を配置する場合には、打ち抜き刃の製造コストが膨大になるだけでなく、打ち抜く際に繊維方向に裂け目が生じやすく、隣接する切込間でシートの欠落が生じるという問題があった。
In−line compounding and molding of long−fiber reinforced thermoplastics(D−LFT):Insight into a rapid growing technology.ANTEC2004 Conference Proceedings p.3500
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、構造材に適用可能な曲げ強度や引張弾性率など優れた力学物性を有しながら、力学特性のばらつきが低く、さらに複雑な形状への賦形性に優れるので、短時間で成形可能である積層基材、およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、一方向に配向した複数の強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むプリプレグが、複数枚積層された積層基材であって、前記プリプレグ層は強化繊維を横切る方向に強化繊維を切断する深さの切込を有し、切込が直線状であって、切込と強化繊維のなす角度(θ)が5°以上、70°以下であり、切込により分断された強化繊維の長さが2種類以上あるプリプレグを含む積層基材により解決する。
本発明によれば、複雑な形状への賦形性に優れて短時間成形可能であり、かつ構造材に適用可能な曲げ強度や引張弾性率など優れた力学物性、その低ばらつき性を持つ積層基材、およびその製造方法を得ることができる。
本発明は、一方向に配向した複数の強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むプリプレグを複数枚積層した積層基材であって、前記プリプレグ層は、強化繊維を横切る方向に強化繊維を切断する深さの切込を有し、切込が直線状であって、切込と強化繊維のなす角度(θ)が5°以上、70°以下であり、切込により分断された強化繊維の長さが2種類以上あるプリプレグを含む積層基材である。
一般に積層基材に含まれる強化繊維の長さは、長いほど力学特性に優れるものの、スタンピング成形時の流動性は低下する。スタンピング成形時の流動性向上のためには、強化繊維をある長さに切断することが効果的であり、このことによりリブやボスといった複雑
な3次元形状にも流動する積層基材を得ることができる。しかしながら一般にランダム材とよばれる切断された強化繊維と樹脂組成物からなるスタンピング成形用の基材は力学特性にばらつきを生じるため、部品設計が困難であった。この解決策として切込を有したプリプレグを複数枚、積層し、力学特性が良好でそのばらつきが小さく、スタンピング成形時の流動性に優れる積層基材が提案されている。
な3次元形状にも流動する積層基材を得ることができる。しかしながら一般にランダム材とよばれる切断された強化繊維と樹脂組成物からなるスタンピング成形用の基材は力学特性にばらつきを生じるため、部品設計が困難であった。この解決策として切込を有したプリプレグを複数枚、積層し、力学特性が良好でそのばらつきが小さく、スタンピング成形時の流動性に優れる積層基材が提案されている。
スタンピング成形時の流動性は、繊維を切断する切込と強化繊維のなす角度θのみならず、1m2あたりの切込長さの総和laに依存する。θが大きいほど繊維間のせん断力が小さくなるために流動性が高く、laが大きいほどプリプレグ中の切断部分が多いため流動性が高くなる。平板のスタンピング成形の場合、θは15°以上が好ましく、laは10mが好ましい。さらにリブなど複雑形状のスタンピング成形の場合、θは30°以上が好ましく、laは20m以上が好ましい。
曲げ強度、曲げ弾性率に代表される力学物性は、繊維を切断する切込と強化繊維のなす角度θのみならず、1m2あたりの切込長さの総和laに依存する。切込と強化繊維のなす角度θが小さいほど機械物性が高いことが知られており(例えば特許文献6)、またlaが小さいほどプリプレグ中の切断部分が少ないために高い力学物性が得られる。例えば自動車の準構造部材に利用するためには、θが70°以下が好ましく、laは200m以下が好ましい。またさらに高い力学強度が求められる構造部材に用いるためには、θは60°以下が好ましく、laは150m以下が好ましい。
切込を施したプリプレグを製造する時間や製造コストは、繊維を切断する切込と強化繊維のなす角度θのみならず、1m2あたりの切込長さの総和laに大きく依存する。θが小さく、かつlaが大きい場合であって、カッティングプロッタで切断する場合には切込加工に有する時間が長大になる。また打ち抜きで切込を加工する場合には、打ち抜き刃の製造コストが膨大になるだけでなく、打ち抜く際に強化繊維方向に裂け目が生じやすく、隣接する切込間でシートの欠落が生じる。このためθは15°以上が好ましく、laは200m以下が好ましい。さらに切込加工後の積層工程を考慮すると、θは30°以上が好ましく、laは150m以下がさらに好ましい。
上記の観点を総合すると、切込と強化繊維のなす角度(θ)は、通常5°以上、好ましくは15°以上、より好ましくは30°以上であり、通常70°以下、好ましくは60°以下、より好ましくは50°以下である。また、プリプレグ1m2あたりの切込長さの総和laは、好ましくは20m以上、より好ましくは30m以上、さらに好ましくは40m以上であり、好ましくは150m以下、より好ましくは120m以下、さらに好ましくは100m以下である。上記のような範囲であると、生産性、成形性と力学物性を兼ね備えた性能が確保される利点がある。
本発明において切込の形状は直線状である。切込が曲線であると、同一切込角度と同一繊維長でありながら、1m2あたりの切込長の総和laを大きくすることができるが、直線状であると生産効率向上の利点がある。
本発明において切込の平均切込長さは、特に制限されるものではないが、通常5mm以上、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上であり、通常200mm以下、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下である。また、各切込の長さは一定でも、或いはそれぞれ異なる長さであってもよいが、各種性能の均一性の観点から、切込の長さは一定であることが好ましい。
本発明において切込の分布形態は、特に制限されるものではないが、切込は同一直線状に規則正しく並んだパターンの繰り返しであることが好ましい。このような切込であると
、各種性能の均一性が得られる利点がある。なお、「同一直線状に規則正しく並んだパターンの繰り返し」とは、同一直線状に規則正しく配列した切込群が複数存在し、その切込群がそれぞれ平行に並んでいるパターンを意味する(例えば図1に示されるようなパターンが挙げられる)。
また、切込が同一直線状に規則正しく並んだパターンの繰り返しである場合、「切込長さS」と「隣り合った平行な切込同士の切込の長さ方向における位置ずれR」との関係(R/S)が、0<R/S<1であることが好ましく、0.4<R/S<0.6であることがより好ましい。このような切込であると、力学的性能が優れる利点がある。なお、隣り合った平行な切込同士の切込の長さ方向における位置ずれRとは、図1を参照すると6がこれに該当する。
、各種性能の均一性が得られる利点がある。なお、「同一直線状に規則正しく並んだパターンの繰り返し」とは、同一直線状に規則正しく配列した切込群が複数存在し、その切込群がそれぞれ平行に並んでいるパターンを意味する(例えば図1に示されるようなパターンが挙げられる)。
また、切込が同一直線状に規則正しく並んだパターンの繰り返しである場合、「切込長さS」と「隣り合った平行な切込同士の切込の長さ方向における位置ずれR」との関係(R/S)が、0<R/S<1であることが好ましく、0.4<R/S<0.6であることがより好ましい。このような切込であると、力学的性能が優れる利点がある。なお、隣り合った平行な切込同士の切込の長さ方向における位置ずれRとは、図1を参照すると6がこれに該当する。
本発明において切込は、強化繊維を切断するものであれば、プリプレグの厚さ方向の具体的な深さは特に制限されるものではないが、通常プリプレグの厚さに等しい。しかしながらプリプレグ厚さの10%以上、好ましくは50%以上のものでも効果が発現する。
また、切込の表面に対する角度も特に制限されるものではなく、通常表面に垂直であるが、垂線に対し角度を有する切断でも効果が発現する。
また、切込の表面に対する角度も特に制限されるものではなく、通常表面に垂直であるが、垂線に対し角度を有する切断でも効果が発現する。
本発明の積層基材に含まれるプリプレグに用いることができる強化繊維としては、強化繊維の種類は特に限定されず、無機繊維、有機繊維、金属繊維、またはこれらを組み合わせたハイブリッド構成の強化繊維が使用できる。無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維などが挙げられる。有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステルなどが挙げられる。金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維を挙げられ、また金属を被覆した炭素繊維でもよい。これらの中では、最終成形物の強度等の機械特性を考慮すると、炭素繊維が好ましい。また、強化繊維の平均繊維直径は、1〜50μmであることが好ましく、5〜20μmであることがさらに好ましい。また、炭素繊維の物性等も特に限定されないが、炭素繊維の単繊維繊度は、通常0.2dtex以上、好ましくは0.5dtex以上、より好ましくは0.6dtex以上であり、通常2.4dtex以下、好ましくは1.2tex以下、より好ましくは1.0dtex以下である。単繊維繊度が0.2dtex以上であると高粘度樹脂であっても、均一に分散するため曲げ強度、強度異方性の向上、成形性、成形外観が良好である。単繊維繊度が2.4dtex以下であると機械的強度が良好である。
本発明の積層基材に含まれるプリプレグには熱可塑性樹脂を用いることが必要である。すなわち、不連続な強化繊維を用いた繊維強化プラスティックの場合、強化繊維端部どうしを連結するように破壊するため、一般的に熱硬化性樹脂よりも靱性値が高い熱可塑性樹脂を用いることで、強度、特に衝撃性が向上する。さらに熱可塑性樹脂は化学反応を伴うことなく冷却固化して形状を決定するので、短時間成形が可能であり、生産性に優れる。このような熱可塑性樹脂としては、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、変性ポリオレフィン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ABS、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステルや、アクリロニトリルとスチレンの共重合体等を用いることができる。また、これらの混合物を用いてもよい。さらに、ナイロン6とナイロン66との共重合ナイロンのように共重合したものであってもよい。また、得たい成形品の要求特性に応じて、難燃剤、耐候性改良剤、その他酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等を添加しておくこともできる。
本発明の積層基材に含まれるプリプレグは、切込により強化繊維が分断されているもの
であるが、分断された強化繊維は、その長さが2種類以上あることを特徴とする。分断された強化繊維の長さが2種類以上であると、曲げ強度、曲げ弾性率などの力学物性及び流動性が特に優れる積層基材となる。
また、分断された強化繊維の長さLは、特に制限されるものではないが、力学特性と流動性の観点から、5mm以上、100mm以下が好ましい。特に十分な力学物性とスタンピング成形時のリブ等の薄肉部への流動を両立させるためには10mm以上50mm以下がさらに好ましい。
であるが、分断された強化繊維は、その長さが2種類以上あることを特徴とする。分断された強化繊維の長さが2種類以上であると、曲げ強度、曲げ弾性率などの力学物性及び流動性が特に優れる積層基材となる。
また、分断された強化繊維の長さLは、特に制限されるものではないが、力学特性と流動性の観点から、5mm以上、100mm以下が好ましい。特に十分な力学物性とスタンピング成形時のリブ等の薄肉部への流動を両立させるためには10mm以上50mm以下がさらに好ましい。
本発明の積層基材は、積層基材を構成するプリプレグは、前記の繊維を切断する切込と強化繊維のなす角度θと1m2あたりの切込長さの総和laの範囲を満たすものであれば、切込長さと切込の数の異なるプリプレグを積層してもよい。スタンピング成形時、ボスやリブなどの薄肉で三次元形状を有する部分にはθを大きく、かつlaを大きくすることが好ましい。逆に流動が二次元的で流動長が小さく、高い力学物性を必要とする部分には、θを小さく、かつlaを小さくすることが好ましい。
本発明の積層基材は、積層基材を構成する複数のプリプレグの間に、熱可塑性樹脂からなる層を積層することが、プレス時の流動性をさらに向上する点で好ましい。このような、熱可塑性樹脂からなる層としては、プリプレグに含まれる樹脂組成物と同一の樹脂組成物であるかもしくは、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、変性ポリオレフィン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ABS、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステルや、アクリロニトリルとスチレンの共重合体等などが好ましく用いることができる。
本発明の積層基材は、複数のプリプレグを強化繊維の方向が擬似等方となるように積層されていることが、プレス時の流動の異方性を小さくする点で好ましい。
本発明の積層基材は、プリプレグに含まれる強化繊維の方向が0°であるプリプレグと90°であるプリプレグが交互に積層されていることが、積層基材の強度の異方性を小さくする点で好ましい。なお、「プリプレグに含まれる強化繊維の方向が0°であるプリプレグと90°であるプリプレグが交互に積層されている」とは、即ち、強化繊維の方向がそれぞれ垂直になるようにプリプレグを交互に積層したものであることを意味する。
本発明の積層基材に含まれるプリプレグは、強化繊維の体積含有率Vfが55%以下であれば、十分な流動性を得ることができるので好ましい。Vfの値が低いほど流動性は向上するが、Vfの値が20%未満では構造材に必要な力学特性は得られない。流動性と力学特性の関係を鑑みると、20%以上55%以下が好ましい。かかるVf値は、JIS K7075に基づき測定できる。
本発明の積層基材に含まれるプリプレグは、切込を有するため、分断されるプリプレグの厚みが大きいほど強度が低下する傾向であり、構造材に適用することを前提とするならば、プリプレグの厚さは200μm以下とするのがよい。一方厚みが50μm未満ではプリプレグの取り扱いが難しく積層基材とするために積層するプリプレグの数が非常に多くなるので、生産性が著しく悪化する。よって生産性の観点から50μm以上200μm以下であることが好ましい。
本発明の積層基材に用いることができるプリプレグは、プリプレグどうしが接着されていることが、取扱いを容易にする点で好ましい。なお、プリプレグどうしの接着方法は特
に制限されるものではなく、公知の方法を適宜採用することができ、例えば熱溶着、振動溶着、熱プレス、及び加熱ロールプレスを用いて接着することが好ましい。
に制限されるものではなく、公知の方法を適宜採用することができ、例えば熱溶着、振動溶着、熱プレス、及び加熱ロールプレスを用いて接着することが好ましい。
以下に本発明の積層基材に用いることができるプリプレグの製造方法の一態様を説明するが、本発明はこれによって特に制限されるものではない。
本発明の積層基材に用いることができるプリプレグは、例えばフィルム状とした熱可塑性樹脂を二枚準備し、その二枚の間に強化繊維をシート状に並べた強化繊維シートを挟み込み、加熱及び加圧を行うことにより得ることができる。より具体的には、2枚の熱可塑性樹脂からなるフィルムを送り出す、2つのロールから二枚のフィルムを送り出すとともに、強化繊維シートのロールから供給される強化繊維シートを二枚のフィルムの間に挟み込ませた後に、加熱及び加圧する。加熱及び加圧する手段としては、公知のものを用いることができ、二個以上の熱ロールを利用したり、予熱装置と熱ロールの対を複数使用したりするなどの多段階の工程を要するものであってもよい。ここで、フィルムを構成する熱可塑性樹脂は一種類ある必要はなく、別の種類の熱可塑性樹脂からなるフィルムを、上記のような装置を用いてさらに積層させてもよい。
上記加熱温度は、熱可塑性樹脂の種類にもよるが、通常、100〜400℃であることが好ましい。一方、加圧時の圧力は、通常0.1〜10MPaであることが好ましい。この範囲であれば、プリプレグに含まれる強化繊維の間に、熱可塑性樹脂を含浸させることができるので好ましい。また、本発明の積層基材に用いることができるプリプレグは、市販されているプリプレグを用いることもできる。
本発明の積層基材に用いることができるプリプレグは、レーザーマーカー、カッティングプロッタや打抜型等を利用して切込を入れることにより得ることができるが、前記切込がレーザーマーカーを用いて施されたものであると、複雑な切込を高速に加工できるという効果があるので好ましく、また、前記切込がカッティングプロッタを用いて施されたものであると、2m以上の大判のプリプレグ層を加工できるという効果があるので好ましい。さらに、前記切込が抜型を用いて施されたものであると、高速に加工が可能であるという効果があるので好ましい。
次工程では、上記のようにして得られたプリプレグを強化繊維の方向が擬似等方、または交互積層になるよう積層して積層基材を作製する。この際取扱いの容易さから超音波溶着機(日本エマソン社製、製品名:2000LPt)でスポット溶接して積層基材とすることもできる。また、本発明の積層基材は、プリプレグを8〜96層となるように積層することが好ましい。
次工程では、上記のようにして得られた積層基材を加熱及び加圧(ホットスタンピング)して一体化した積層基材を成形する。この工程は、通常の装置、例えば加熱プレス機を用いて行うことができ、その際に用いる金型については、所望の形状を有するものを用いることができる。金型の材質についても、ホットスタンピング成形で通常用いられるものを採用することができ、金属製のいわゆる金型を用いることができる。具体的に本工程は、例えば前記積層基材を金型内に配置して、加熱及び加圧することにより行うことができる。
前記加熱においては、積層基材に含まれる熱可塑性樹脂の種類にもよるが、100〜400℃で加熱することが好ましく、さらに好ましくは150〜350℃で加熱することが好ましい。また、前記加熱に先立って、予備加熱を行ってもよい。予備加熱については、通常150〜400℃、好ましくは200〜380℃で加熱することが好ましい。
前記加圧において積層基材にかける圧力としては、好ましくは0.1〜10MPaであり、より好ましくは0.2〜2MPaである。この圧力については、プレス力を積層基材の面積で除した値とする。
上記加熱及び加圧する時間は、0.1〜30分間であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜10分間である。また、加熱及び加圧の後に設ける冷却時間は、0.5〜30分間であることが好ましい。
上記ホットスタンピング成形を経た本発明にかかる一体化した積層基材の厚さは、0.5〜10mmであることが好ましい。
上記ホットスタンピング成形を経た本発明にかかる一体化した積層基材の厚さは、0.5〜10mmであることが好ましい。
なお、前記加熱及び加圧は、金型と上記積層基材との間に潤滑剤が存在する条件下で行ってもよい。潤滑剤の作用により、前記加熱及び加圧時に上記積層基材を構成するプリプレグに含まれる強化繊維の流動性が高まるため、強化繊維の間への熱可塑性樹脂の含浸を高まるとともに、得られる積層基材において強化繊維の間及び強化繊維と熱可塑性樹脂の間におけるボイドを低減させることができるからである。
前記潤滑剤としては、例えばシリコーン系潤滑剤やフッ素系潤滑剤を用いることができる。また、これらの混合物を用いてもよい。シリコーン系潤滑剤としては、高温環境で用いることができる耐熱性のものが好ましく用いられる。より具体的には、メチルフェニルシリコーンオイルやジメチルシリコーンオイルのようなシリコーンオイルを挙げることができ、市販されているものを好ましく用いることができる。フッ素系潤滑剤としては、高温環境で用いることができる耐熱性のものが好ましく用いられる。そのようなものの具体例としては、パーフルオロポリエーテルオイルや三フッ化塩化エチレンの低重合物(重量平均分子量500〜1300)のようなフッ素オイルを用いることができる。
上記潤滑剤は、上記積層基材の片側若しくは両側の表面上、前記金型の片側もしくは両側の表面上または上記積層基材及び金型の双方の片側若しくは両側の表面上に、潤滑剤塗布装置などの適当な手段によって供給されてもよいし、予め金型の表面上に塗布しておいてもよい。中でも積層基材の両側の表面に潤滑剤が供給される態様が好ましい。
(プレスによる流動性の評価)
本発明の積層基材は、成形時の流動性が良好であるため、種々の複雑な形状に成形することができる。かかる流動性は、例えば、積層基材を加熱及び加圧した場合に、加熱及び加圧後の厚みが加熱及び加圧前の厚みに比して小さくなっている程度が大きいことにより評価することができる。具体的には、例えば、加熱および加圧して一体化した厚さ2mmの積層基材を78mm角に切り出した後に2枚重ね、あらかじめ230℃に加温したヒーター内で10分間保持し、その後すぐに145℃に加熱した小型プレス(東洋精機社製、製品名:ミニテストプレスMP−2FH)に移して挟み、10MPa、60秒条件でプレスした場合に、プレス前の厚みをプレス後の厚みで除した値が大きいほど流動性に優れるとする。本発明の積層基材の流動性は、通常2.0以上、好ましくは2.5以上である。
本発明の積層基材は、成形時の流動性が良好であるため、種々の複雑な形状に成形することができる。かかる流動性は、例えば、積層基材を加熱及び加圧した場合に、加熱及び加圧後の厚みが加熱及び加圧前の厚みに比して小さくなっている程度が大きいことにより評価することができる。具体的には、例えば、加熱および加圧して一体化した厚さ2mmの積層基材を78mm角に切り出した後に2枚重ね、あらかじめ230℃に加温したヒーター内で10分間保持し、その後すぐに145℃に加熱した小型プレス(東洋精機社製、製品名:ミニテストプレスMP−2FH)に移して挟み、10MPa、60秒条件でプレスした場合に、プレス前の厚みをプレス後の厚みで除した値が大きいほど流動性に優れるとする。本発明の積層基材の流動性は、通常2.0以上、好ましくは2.5以上である。
また、本発明の加熱および加圧して一体化した積層基材は、破壊強度(曲げ強度)に優れる。かかる曲げ強度は、JIS K7074に基づいて測定することができる。本発明の積層基材の曲げ強度は、通常250MPa以上、好ましくは300MPa以上である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の発明に限定されるものではない。
(実施例1)
炭素繊維(三菱レイヨン製、製品名:パイロフィルTR−50S15L)を、強化繊維の方向が一方向となるように平面状に引き揃えて目付が72.0g/m2である強化繊維シートとした。この強化繊維シートの両面を、酸変性ポリプロピレン樹脂製のフィルム(酸変性ポリプロピレン樹脂:三菱化学製、製品名:モディックP958、目付:36.4g/m2)で挟み、カレンダロールに通して、熱可塑性樹脂を強化繊維シートに含浸し、繊維体積含有率(Vf)が33%、厚さが、0.12mmのプリプレグを得た。
炭素繊維(三菱レイヨン製、製品名:パイロフィルTR−50S15L)を、強化繊維の方向が一方向となるように平面状に引き揃えて目付が72.0g/m2である強化繊維シートとした。この強化繊維シートの両面を、酸変性ポリプロピレン樹脂製のフィルム(酸変性ポリプロピレン樹脂:三菱化学製、製品名:モディックP958、目付:36.4g/m2)で挟み、カレンダロールに通して、熱可塑性樹脂を強化繊維シートに含浸し、繊維体積含有率(Vf)が33%、厚さが、0.12mmのプリプレグを得た。
得られたプリプレグを、300mm角に切り出し、カッティングプロッタ(レザック製、製品名:L−2500)を用いて図1に示すように一定間隔で切込を入れた。その際、シートの端部より5mm内側部分を除き、強化繊維の長さが2種類(L1=37.5mm、L2=18.75mm)、平均切込長l=40.0mm、切込と強化繊維のなす角度θ=30°、切込長さSと隣り合った平行な切込同士の切込の長さ方向における位置ずれRとの関係(R/S)が0.5、切込深さがプリプレグ厚となるように切込加工を施した。この際1m2あたりの切込長の総和la=71.0mであった。
またシート一枚を切込加工する時間を測定して、切込加工時間と定義した。
またシート一枚を切込加工する時間を測定して、切込加工時間と定義した。
このようにして得られた切込16層を擬似等方([0/45/90/−45]s2)に重ね、超音波溶着機(日本エマソン社製、製品名:2000LPt)でスポット溶接して積層基材を作製した。
このようにして得た積層基材を300mm角で深さ1.5mmの印籠金型内に配置して加熱し圧縮成形機(神藤金属工業所製、製品名:SFA−50HH0)を用いて、高温側プレスにて220℃、油圧指示0MPaの条件で7分間保持し、次いで同一温度にて油圧指示2MPa(プレス圧0.55MPa)の条件で7分間保持後、金型を冷却プレスに移動させ、30℃,油圧指示5MPa(プレス圧1.38MPa)にて3分間保持することで成形品を得た。
得られた積層基材は、強化繊維のうねりがなく、その端部まで強化繊維が均等に流動しており、ソリもなく、良好な外観と平滑性を保っていた。
得られた積層基材から、長さ100mm,幅25mmの曲げ強度試験片を切り出した。JIS K−7074に規定する試験方法に従い、万能試験機(インストロン社製、製品名:4465型)を用いて、標点間距離を80mmとし、クロスヘッド速度5.0mm/分で3点曲げ試験を行った。測定した試験片の数はn=6とし、その全平均値を曲げ強度とした。
得られた積層基材より、たて78mm、よこ78mmの板状物を2枚切り出した。その板状物を2枚重ねて、ミニテストプレス(東洋精機製、製品名:MP−2FH)を用いて230℃で10分間加熱後、145℃、10MPa条件で60秒間プレスした。プレス成形前後での厚みを測定し、初期厚みを最終厚みで除すことにより流動性の評価とした。評価結果(曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間)を表1に示す。
(比較例1)
強化繊維の長さL=28.1mm一定、平均切込長l=40.0mmになるよう、繊維を切断する切込と強化繊維のなす角度θ=30°の切込加工(図2に示すような一定間隔の切込)を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層基材とその成形品を作製し、評価をおこなった。この際、切込長さSと隣り合った平行な切込同士の切込の長さ方向における位置ずれRとの関係(R/S)が0、1m2あたりの切込長の総和la=71.0mであった。評価結果(曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間)を表1に示す。
強化繊維の長さL=28.1mm一定、平均切込長l=40.0mmになるよう、繊維を切断する切込と強化繊維のなす角度θ=30°の切込加工(図2に示すような一定間隔の切込)を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層基材とその成形品を作製し、評価をおこなった。この際、切込長さSと隣り合った平行な切込同士の切込の長さ方向における位置ずれRとの関係(R/S)が0、1m2あたりの切込長の総和la=71.0mであった。評価結果(曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間)を表1に示す。
表1から、切込が直線状であって、切込と強化繊維のなす角度(θ)が5°以上、60°以下であり、切込により分断された強化繊維の長さが2種類以上あるプリプレグを含む積層基材は、曲げ強度、曲げ弾性率などの力学物性及び流動性に特に優れることが明らかである。
本発明によって得られる積層基材は、軽量で力学特性に優れており、電気・電子機器部品、土木・建築用部品、自動車・二輪車用部品、航空機用部品等の各種用途に用いることができる。
1 プリプレグ
2 切込
3 強化繊維配向方向
4 切込と強化繊維のなす角度(θ)
5 切込の長さ
6 隣り合った平行な切込同士の切込の長さ方向における位置ずれR
2 切込
3 強化繊維配向方向
4 切込と強化繊維のなす角度(θ)
5 切込の長さ
6 隣り合った平行な切込同士の切込の長さ方向における位置ずれR
Claims (27)
- 一方向に配向した強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むプリプレグを複数枚積層した積層基材であって、
前記プリプレグは、強化繊維を横切る方向に強化繊維を切断する深さの切込を有し、前記切込が直線状であって、切込と強化繊維のなす角度(θ)が5°以上、70°以下であり、切込により分断された強化繊維の長さが2種類以上あるプリプレグを含む積層基材。 - 前記切込の長さが一定である、請求項1に記載の積層基材。
- 前記切込が同一直線状に規則正しく並んだパターンの繰り返しである、請求項1又は2に記載の積層基材
- 切込長さSと隣り合った平行な切込同士の切込の長さ方向における位置ずれRとが、0<R/S<1の関係を満たすものである、請求項3に記載の積層基材。
- 切込の長さSと隣り合った平行な切込同士の切込の長さ方向における位置ずれRとが、0.4<R/S<0.6の関係を満たすものである、請求項4に記載の積層基材。
- 切込と強化繊維のなす角度(θ)が、30°以上、60°以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層基材
- プリプレグ1m2あたりの切込長さの総和が、20m以上、150m以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層基材
- 切込により分断された強化繊維の長さが、10mm以上、50mm以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層基材。
- 前記強化繊維が炭素繊維である、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層基材。
- 前記強化繊維の平均単繊維繊度が、0.5dtex以上、2.4dtex以下の炭素繊維である、請求項9に記載の積層基材。
- 前記積層基材が、熱可塑性樹脂からなる層をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層基材。
- 前記積層基材を構成する複数のプリプレグが、プリプレグに含まれる強化繊維の方向が擬似等方となるように積層されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の積層基材。
- 前記積層基材を構成する複数のプリプレグが、プリプレグに含まれる強化繊維の方向が0°であるプリプレグと90°であるプリプレグが交互に積層された、請求項1から11のいずれか一項に記載の積層基材。
- 前記積層基材を構成するプリプレグに含まれる強化繊維の体積含有率が、20体積%以上、55体積%以下である、請求項1から13のいずれか一項に記載の積層基材。
- 前記積層基材を構成するプリプレグの厚さが50μm以上、200μm以下である、請求項1から14のいずれか一項に記載の積層基材。
- 前記積層基材を構成するプリプレグどうしが接着されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の積層基材。
- 前記切込がレーザーマーカーを用いて施されたものである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の積層基材。
- 前記切込がカッティングプロッタを用いて施されたものである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の積層基材。
- 前記切込が打抜型を用いて施されたものである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の積層基材。
- 一方向に配向した強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むプリプレグを複数枚積層した積層基材の製造方法であって、
前記強化繊維を横切る方向に強化繊維を切断する深さを有し、下記(a)〜(c)の条件を満たす切込を形成する工程を含むことを特徴とする、積層基材の製造方法。
(a)直線状である。
(b)切込と強化繊維のなす角度(θ)が5°以上、70°以下である。
(c)切込により分断された強化繊維の長さが2種類以上ある。 - 前記切込がレーザーマーカーを用いて形成されたものである、請求項20に記載の積層基材の製造方法。
- 前記切込がカッティングプロッタを用いて形成されたものである、請求項20に記載の積層基材の製造方法。
- 前記切込が打抜型を用いて形成されたものである、請求項20に記載の積層基材の製造方法。
- 前記積層基材を構成するプリプレグどうしを熱溶着で接着する工程を含む、請求項20〜23のいずれか一項に記載の積層基材の製造方法。
- 前記積層基材を構成するプリプレグどうしを振動溶着で接着する工程を含む、請求項20〜23のいずれか一項に記載の積層基材の製造方法。
- 前記積層基材を構成するプリプレグどうしを熱プレスで接着する工程を含む、請求項20〜23のいずれか一項に記載の積層基材の製造方法。
- 前記積層基材を構成するプリプレグどうしを加熱ロールプレスで接着する工程を含む、請求項20〜23のいずれか一項に記載の積層基材の製造方法。
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