JP2017082210A - クロスプライ積層体および繊維強化プラスチックの製造方法 - Google Patents

クロスプライ積層体および繊維強化プラスチックの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ハンドレイアップに好適であり、繊維強化プラスチックとした場合、優れた力学特性を発現するプリプレグ積層体の提供。【解決手段】一方向に配向した強化繊維と樹脂を含む強化繊維の体積含有率Vfが45〜65%である複数枚のプリプレグよりなり、繊維方向が実質的に直角に交わるプリプレグを含むように構成されたクロスプライ積層体であって、各プリプレグは強化繊維を横切る複数の切込を有する実質的に全ての強化繊維が繊維長さ(L)10〜300mmである切込プリプレグ。【選択図】図1

Description

本発明は、強化繊維と樹脂とからなり、かつ複数の切込を有するプリプレグを積層したクロスプライ積層体であって、ハンドレイアップに好適なクロスプライ積層体に関する。
強化繊維と樹脂とからなる繊維強化プラスチックは、比強度、比弾性率が高く、力学特性に優れること、耐候性、耐薬品性などの高機能特性を有することなどから産業用途においても注目され、航空機、宇宙機、自動車、鉄道、船舶、電化製品、スポーツ等の構造用途に展開され、その需要は年々高まりつつある。ハンドレイアップは繊維強化プラスチックの成形法の一つであり、製品形状を有する型や、補修の必要な構造物に対して強化繊維をシート状に加工した繊維基材を手作業によって押し付けて形状を作り、繊維基材に含浸させた樹脂を固化させて繊維強化プラスチックを得る方法である。手作業であるため、必要な箇所を伸ばしながら繊維基材を型に押し付けて賦形することができ、複雑な形状へも高品位に成形できる。
ハンドレイアップには、樹脂の含浸されていない繊維基材を型に押し付けて賦形した後から粘度の低い樹脂を含浸させて固化させる方法(例えば特許文献1)と、繊維基材に予め樹脂が含浸されたプリプレグによって形状を作り固化させる方法(例えば特許文献2)とがある。前者はプリプレグ化工程を経ていない安価な繊維基材を用いて成形可能である。後者は良好な品質の成形品を得るのに有効な方法である。
特開2015−117442号公報 特開平8−25491号公報
しかし特許文献1に記載の方法は、ハンドレイアップ作業中に折れた強化繊維が飛散し作業環境が悪化する場合や、樹脂を含浸させる工程で強化繊維がうねる場合、樹脂が含浸しきらずにボイドが残る場合等がある。また特許文献2に記載の方法は、予め繊維基材に樹脂が含浸されたプリプレグを用いるため、プリプレグ自体のコストが高くなる問題がある。
プリプレグを用いたハンドレイアップには賦形性に優れた織構造を強化形態とした繊維基材(織物)に樹脂を含浸させたプリプレグを用いることが一般的である。一方で固化させた繊維強化プラスチックの力学特性としては、強化繊維の強化形態が織構造であるよりも、厚み方向のうねりがなく一方向に強化繊維が配向されている方が優れており、高い力学特性の望まれる製品へは一方向に強化繊維が配向されたプリプレグ(一方向プリプレグ)を用いて成形することが好ましい。しかし、一方向プリプレグは繊維方向へは高い剛性を有するため伸張させにくく、三次元形状を有する型へ沿わす際には、角部で強化繊維が突っ張るため形状追従が困難である。また、一方向プリプレグは非繊維方向へは樹脂のみで連結されており、非繊維方向へ引張り荷重が加わった際には割けてしまうため、ハンドレイアップには不向きである。繊維方向の角度を変えて複数枚積層した一方向プリプレグの積層体の場合、プリプレグの割けは軽減されるものの、角部での強化繊維の突っ張りを解消できず、3次元形状を有する型への形状追従は困難である。
そこで本発明の課題は、ハンドレイアップに好適であり、かつ繊維強化プラスチックとした場合に優れた力学特性を発現するプリプレグの積層体を提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のようなクロスプライ積層体積層体を提供する。すなわち、 一方向に配向した強化繊維と樹脂を含む強化繊維の体積含有率Vfが45〜65%である複数枚のプリプレグよりなり、繊維方向が実質的に直角に交わるプリプレグを含むように構成されたクロスプライ積層体であって、
各プリプレグは強化繊維を横切る複数の切込を有する実質的に全ての強化繊維が繊維長さ(L)10〜300mmである切込プリプレグであり、25℃環境下にて以下に示す引張特性1を満たすか、又は、60℃環境下にて以下に示す引張特性2を満たすクロスプライ積層体。
(引張特性1)クロスプライ積層体中のいずれかのプリプレグの繊維方向を0°とした場合に、クロスプライ積層体に対して0°方向へ1%の引張ひずみを加えたときにクロスプライ積層体の0°方向に発生する荷重を荷重1として、クロスプライ積層体に対して0°方向へ2%の引張ひずみを加えたときにクロスプライ積層体の0°方向に発生する荷重を荷重2とすると、荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5である。
(引張特性2)クロスプライ積層体中のいずれかのプリプレグの繊維方向を0°とした場合に、クロスプライ積層体に対して0°方向へ1%の引張ひずみを加えたときにクロスプライ積層体の0°方向に発生する荷重を荷重1として、クロスプライ積層体に対して0°方向へ2%の引張ひずみを加えたときにクロスプライ積層体の0°方向に発生する荷重を荷重2とすると、荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5である。
本発明によれば、ハンドレイアップに好適で、繊維強化プラスチックとした場合に優れた力学特性を発現するクロスプライ積層体を得られる。
クロスプライ積層体 プリプレグ上に抽出した小領域の一例を示す概念図である。 本発明のプリプレグの切込パターンの一例を示す概念図である。 本発明のプリプレグの切込パターンの一例を示す概念図である。 本発明のプリプレグの切込パターンの一例を示す概念図である。 実施例および比較例で適用した切込パターンである。 実施例1で用いた型の形状である。 実施例における、プリプレグ内の小領域抽出パターンである。 大型の賦形型である。
本発明者らは、ハンドレイアップに好適で、繊維強化プラスチックとした場合に優れた力学特性を発現する中間基材を得るために、一方向に配向した強化繊維と樹脂とを含み、強化繊維の体積含有率Vfが45〜65%のプリプレグを、強化繊維の配向方向(繊維方向)が実質的に直角方向に交わるように複数枚積層したクロスプライ積層体とし、かつ、プリプレグについて強化繊維を横切る複数の切込によって実質的に全ての強化繊維が繊維長さL=10〜300mmに分断された切込プリプレグとして、さらに後述する引張特性を有するクロスプライ積層体とすることで、かかる課題を解決することを究明したものである。
通常強化繊維の繊維方向は剛性が高く伸張させることが困難であるが、切込によって強化繊維を分断することで、プリプレグの繊維方向への伸張も可能とし、プリプレグを積層したクロスプライ積層体とすることで、各層のプリプレグに非繊維方向への荷重が加えられた場合にプリプレグが割けることを抑制する。繊維方向が実質的に直角に交わるように積層されたプリプレグが互いに拘束し合う構成は、縦糸と横糸が互いに拘束し合い、強化繊維の配向していない±45°方向に伸張可能であるため賦形性に優れる織物を模擬した構成となっており、織物と同等の賦形性が期待できるため、クロスプライに積層(繊維方向が実質的に直角に交わるように積層)することが好ましい。同じ大きさの正方形に切り出したプリプレグを90°回転させて積層するだけでよいため、積層が簡便である。なお繊維方向が実質的に直角とは、繊維方向が90°±10°の範囲内であることを指す。
繊維方向が実質的に直角に交わるように複数枚積層したクロスプライ積層体について、積層する枚数は特に限定されず、例えば積層構成は[0/0/90/90]、[0/90]、[0/90]などでもでもよく、[0/90/0]など0°と90°の枚数が異なっても良い。異なる切込挿入方法(切込パターン)のプリプレグを積層したクロスプライ積層体でもよい。クロスプライ積層体は厚いほど伸張させにくくなるため、積層後の厚みは1mmより小さいのが好ましい。
なお、本発明において実質的に全ての強化繊維が繊維長さL=10〜300mmに分断されているとは、クロスプライ積層体中の各プリプレグにおいて、L=10〜300mmの範囲外の強化繊維の体積の合計が、該プリプレグの体積に対して0%以上10%以下であることを指す。
各プリプレグの強化繊維の体積含有率Vfは65%以下とすることで切込部の強化繊維のずれがおき、形状追従性を得ることができ、成形時に発生する表面の樹脂欠け抑制に十分な樹脂量を確保できる。かかる観点からVfは65%以下であることが好ましい。また、Vfは低いほど繊維方向への伸張効果が高くなるが、Vfが45%より小さくなると、構造材に必要な高力学特性が得られにくくなる。かかる観点からVfは45%以上であることが好ましい。
切込によって分断された強化繊維はLを300mm以下とすることにより、クロスプライ積層体の繊維方向において切込の存在確率を上げ、細かい凹凸への形状追従性向上を実現することができる。Lを10mm以上にすると、切込同士の距離が離れるため、そのようなプリプレグを用いて成形された繊維強化プラスチックに荷重が負荷された場合には、クラックが連結しにくく強度が高いものとなる。成形時における形状追従性と成形された繊維強化プラスチックの力学特性との関係を鑑みると、Lの好ましい範囲は10〜300mmである。より好ましいLの範囲は10〜100mm、さらに好ましくは15〜30mmである。
なお繊維長さLとは、図3に示すように、任意の切込と、強化繊維方向に最近接の切込(対になる切込)とにより分断される強化繊維の長さを指している。切込挿入時に強化繊維の逃げが発生することから、プリプレグへわざと長めの切込を挿入することもあり、大多数のLよりも短い繊維長さとなる強化繊維が該プリプレグ内に存在する場合もあるが、その体積割合は該プリプレグの体積の5%より小さいのがよい。また、各プリプレグにおいて切込挿入時の繊維方向の僅かなズレや、切込を挿入する装置の劣化等によって切込が挿入されない強化繊維や、Lが300mmを超える強化繊維が存在する場合があるが、その体積割合は該プリプレグの体積の5%より小さいのがよい。対となる切込によって実質的に全ての強化繊維が所定の繊維長さ範囲(10〜300mm)となることで、三次元形状への追従性、ブリッジング防止につながる。
本発明において、室温すなわち25℃環境下にてクロスプライ積層体中のいずれかの一枚のプリプレグの繊維方向を0°とした場合に、クロスプライ積層体に対して0°方向へ1%の引張ひずみを加えたときにクロスプライ積層体の0°方向に発生する荷重を荷重1として、25℃環境下にてクロスプライ積層体に対して0°方向へ2%の引張ひずみを加えたときにクロスプライ積層体の0°方向に発生する荷重を荷重2とすると、荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5(引張特性1)を満たすことが好ましい。
図1はプリプレグを2層積層させたクロスプライ積層体の概念図であり、上側のプリプレグの繊維方向を0°方向3としている。クロスプライ積層体をハンドレイアップにより型に押し付けて賦形する際、最も伸張させやすいのは45°方向5であるが、45°方向5のみを伸張させながら形づくるのは困難である。45°方向5よりも0°方向3に近い方向に伸張させながら賦形する際は0°方向3が伸張しやすいほど該角度で伸張しやすいため、クロスプライ積層体の0°方向3の伸張しやすさが、クロスプライ積層体の賦形しやすさの目安となる。45°方向5よりも90°方向に近い方向へ伸張させながら形づくる場合には、クロスプライ積層体のもう一枚のプリプレグの0°方向4の伸張しやすさが、クロスプライ積層体の賦形しやすさの目安となる。
なお、本発明のクロスプライ積層体は、クロスプライ積層体中のいずれか一つのプリプレグの繊維方向を0°とした場合に、前記引張特性(荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5)を満たすことが重要であり、例えば、上側のプリプレグの繊維方向を0°方向3とした場合に前記引張特性を満たしさえすれば、下側のプリプレグの繊維方向を0°方向とした場合(つまり上側のプリプレグの繊維方向の90°方向4を0°方向とした場合)に前記引張特性を満たさなかったとしても、その態様は本発明のクロスプライ積層体に含まれる。本発明のクロスプライ積層体において特に好ましくは、クロスプライ積層体のいずれか一つのプリプレグの繊維方向を0°とした場合に、0°方向および90°方向において前記引張特性(荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5)を満たす態様、つまりクロスプライ積層体中の全てのプリプレグについて、その繊維方向を0°とした場合に0°方向において前記引張特性(荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5)を満たす態様である。
ハンドレイアップ時に、プリプレグの0°方向は0°方向のひずみが1%以上伸張することが好ましいが、弾性変形で伸び続けると賦形後に収縮し形状が維持できない場合や、賦形に要する荷重も増大する場合があるため、クロスプライ積層体の0°方向の引張特性としては非線形性であり、徐々に弾性率が低下する特性を有することが好ましい。すなわち、荷重2<荷重1×1.5であることが好ましい。また、クロスプライ積層体の0°方向のひずみが2%以下で、一部の切込を起点としてクロスプライ積層体が分断される特性を有すると、賦形中にクロスプライ積層体が引きちぎれる場合があるため、クロスプライ積層体の0°方向の引張特性としては、0°方向のひずみが1〜2%の間で荷重が極端に低下しないことが好ましい。すなわち、荷重2>荷重1×0.5であることが好ましい。より好ましい引張特性の範囲は荷重1×0.7<荷重2<荷重1×1.3である。さらに、切込が挿入され、実質的に全ての強化繊維が切断されていても、荷重1がクロスプライ積層体の幅1mmあたり5N以上となるクロスプライ積層体が、クロスプライ積層体の剛性が高いため取り扱い性がよく、好ましい。一方で、荷重1が大きすぎると荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5を満たす場合でも、人力では伸びにくく、ハンドレイアップに適さない場合がある。したがって、荷重1はクロスプライ積層体の幅1mmあたり100N以下が好ましい。
荷重1、荷重2の測定には、クロスプライ積層体を短冊状に切り出した引張試験片を用いてもよく、引張ひずみの付与には引張試験機を用いても良い。ひずみは実施例に記載の非接触ひずみ測定器を用いた方法で測定できる。
本発明では、クロスプライ積層体のいずれかのプリプレグの繊維方向を0°とした場合に、クロスプライ積層体に対して0°方向へ2%の引張ひずみを加えた時に、クロスプライ積層体の面積に占める切込開口部の合計の面積(切込開口部の面積率という)が、0%以上1%以下であることが、繊維強化プラスチックの表面品位の観点から好ましい。切込開口部には、樹脂が流動して充填される場合や、樹脂が充填されない場合は隣接層が見える場合がある。いずれの場合も、切込開口部は強化繊維が含まれる箇所とは色が異なって見えるため、繊維強化プラスチックとした際に表面品位を損なわすことが多い。
本発明において切込開口部は、クロスプライ積層体あるいは繊維強化プラスチックの表面において、表面から10cm以上50cm以下の距離から撮影したデジタル画像を画像処理によって二値化した際に、切込と切込以外の箇所を分離できる開口部を指す。
クロスプライ積層体における切込開口部の面積率が0%以上1%以下の場合は、切込開口部が目視では認識されにくく、固化後の繊維強化プラスチックの表面品位が良好となる。2%の引張ひずみを与えた場合でも、切込開口部の面積率が0%以上1%以下の場合は、一つ一つの切込の開口が小さい場合や、繊維長が長い場合など切込の存在確立が低い場合等が挙げられる。切込に隣接する強化繊維束の流入によって1%以下の開口とすることが可能である。さらに好ましい切込開口部の面積率は0.8%以下である。
本発明におけるクロスプライ積層体は、60℃の温度下にて、クロスプライ積層体中のいずれかの一枚のプリプレグの繊維方向を0°とした場合に、クロスプライ積層体に対して0°方向へ1%の引張ひずみを加えたときにクロスプライ積層体の0°方向に発生する荷重を荷重1として、60℃環境下にてクロスプライ積層体に対して0°方向へ2%の引張ひずみを加えたときにクロスプライ積層体の0°方向に発生する荷重を荷重2とすると、荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5(引張特性2)を満たすクロスプライ積層体であっても良い。室温での賦形が困難であっても、ドライヤーなどの加熱手段によって加熱しながら賦形する際に、60℃環境下にて荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5を満たすことで、賦形しやすく、賦形後には形状が固定されやすい。好ましくは、荷重1×0.7<荷重2<荷重1×1.3である。
さらに、60℃の温度下であっても、クロスプライ積層体のいずれかのプリプレグの繊維方向を0°とした場合に、クロスプライ積層体に対して0°方向へ2%の引張ひずみを加えた時に、クロスプライ積層体の面積に占める切込開口部の合計の面積(切込開口部の面積率という)が、0%以上1%以下であることが、繊維強化プラスチックの表面品位の観点から好ましい。さらに好ましい切込開口部の面積率は0.8%以下である。
なお、引張荷重付与時のクロスプライ積層体における切込開口部の面積率については実施例に記載の方法にて、引張試験中のクロスプライ積層体を撮影した後、画像処理によって測定することができる。なお、クロスプライ積層体の0°方向へ2%の引張ひずみを加える過程において急激な荷重低下が生じ、荷重2<荷重1×0.5となる場合は、強化繊維のうねりが発生し、表面品位は損なわれる。
本発明のクロスプライ積層体におけるプリプレグの好ましい実施態様として、プリプレグ中の複数の切込が、高密度かつ均質に配置されていることが好ましい。具体的には、プリプレグ内において任意に選択される10個の直径10mmの円形の小領域内に含まれる切込の個数を母集団とした場合に、母集団の平均値が10以上かつ変動係数が20%以内の切込プリプレグである(以下、母集団の平均値が10以上の状態を高密度、変動係数が20%以内の状態を均質という)。高密度かつ均質に切込が存在することで、手作業で賦形する際、クロスプライ積層体の任意の箇所を均質に伸張させることができ、取り扱い性が向上する。
図2はプリプレグ1に直径10mmの小領域8を10箇所抽出した様子を示している。小領域は、小領域が重ならない程度に密に抽出することが好ましいが、プリプレグが小領域を10個全て重ならずに含むのに十分なサイズでなければ、小領域同士が重なっていても良い。
小領域内に含まれる切込みの個数とは、小領域内に存在する切込と、小領域の輪郭に一部が接触する切込の合計数とする。なお、平均値と変動係数は、10個の小領域内の切込数をni(i=1〜10)とすると、それぞれ式1、式2で計算される。
Figure 2017082210
Figure 2017082210
切込の個数は高密度であるほど、三次元形状への追従性が向上し、プリプレグの変形時に一つ一つの切込の開口が小さくなるため、ハンドレイアップ時に引きちぎれにくく、繊維強化プラスチックとした際に、良好な表面品位を得ることができる。また、全体として切込によって分断される強化繊維の数が同じであっても、繊維強化プラスチックとした際に負荷が与えられた場合、切込が大きい場合は切込周辺の応力集中が大きくなるが、細かいほど応力集中が軽減され、力学特性が向上する。したがって、小領域内に含まれる切込の個数を、10個の小領域においてカウントし母集団とした際に、母集団は平均値が10以上であることが好ましい。さらに好ましくは15個以上である。小領域内で同一の強化繊維が複数の切込によって分断されていてもよいが、強化繊維の繊維長さLが10mmより小さい場合、固化後の力学特性が低下する場合があるため、小領域内では同一の強化繊維が複数の切込みによって分断されていないことがより好ましい。母集団の平均値が50より大きい場合、小領域内で同一強化繊維が複数の切込によって分断される可能性が高くなるため、母集団の平均値は50以下であることが好ましい。一方、均質に切込が分布しているほど、ハンドレイアップ時に均質にクロスプライ積層体を伸張させながら形状追従させることができ、プリプレグ変形時に一つ一つの切込の開口のバラツキが小さくなるため、繊維強化プラスチックとした際に安定した力学特性を発現する。したがって、母集団の変動係数は20%以下が好ましい。さらに好ましくは15%以下である。ここで小領域の抽出方法としては、図2に示すように、小領域同士が比較的近くに存在するように抽出することが好ましい。抽出パターンによって前記変動係数が変動する場合もあるが、その場合は5回抽出パターンを変えて測定し、4回以上前記変動係数が20%以下であれば、本発明の態様を満たすとみなす。
比較的小さな切込を挿入する概念は既に国際公開WO2008/099670号パンフレットに記載されているが、例えば当該国際公開のパンフレットの図2に記載の切込パターンを拡大縮小して前記母集団の平均値が10以上となるようにした場合、強化繊維の繊維長さは10mm以下とならざるを得ず、強化繊維の繊維長さを10mmとした場合には、前記母集団の平均値は5以下と、切込の分布の密度は小さくなる。
また、国際公開WO2008/099670号パンフレットの第1図(A)に代表される多くの既存の切込パターンでは、図3(a)(文献を特定しないときは本明細書の図である。以下同じ)に示すように、強化繊維の長さLに対して、隣接する切込を、Lの半分の長さL/2ずらして、断続的な切込としている。このような切込パターンの場合、切込の長さが短く、繊維長さが長いほど、強化繊維の配向方向にL/2おきに存在する直線状に切込が存在しやすくなり、前記母集団のばらつきが大きくなる。このような場合、切込開口が前記直線上に集中し、開口が顕著に現れる。図3(b)のように、隣接する切込をL/2ではなく、L/5やL/6といった、細かい周期でずらすことで、プリプレグ中により切込が均等に分布した切込パターンを有する切込プリプレグとなり、当該切込プリプレグが伸張する際に、伸張箇所が偏ることなく、均質な変形が可能となり、一つ一つの切込の開口が抑制される(以降、切込が均等に分布した切込パターンのことを均質な切込パターンと記す場合もある)。さらに、図3(b)のように、隣り合う切込を階段状にずらすのではなく、図3(c)のようにずらしてもよい。図3(c)はL/10の周期で切込がずれているが、切込によって分断された強化繊維束で、隣り合う強化繊維束の端部同士(例えば図3(c)中の切込s1と切込s2)の距離は、2L/5となっており、図3(b)のL/5よりも長くなっている。隣り合う強化繊維束の端部同士の距離が長いことで、き裂進展や切込開口の連鎖を抑制する効果があり、力学特性・表面品位ともに向上する。図3(a)の場合、隣り合う強化繊維束の端部同士の距離はL/2と長いが、強化繊維束を挟んだ2つの切込同士の距離も近いため、その2つの切込開口による応力集中部が重なりやすく、力学特性としても好ましくない。
プリプレグ中の複数の切込が、図3の列9に示すような断続的な直線を複数形成し、該複数の断続的な直線が平行に挿入されていてもよい。ここで、複数の切込が断続的な直線を形成するとは、複数の切込を結ぶことで直線となり、これらの切込が同一直線状に存在することを指す。なお本発明において、複数の切込が同一直線状に存在するとは、切込を延長した直線と対象となる切込同士の最も近接する点同士を結んだ直線との角度が全て1°以内であることを指す。同一直線状に複数の切込が存在する場合、ミシン目の回転丸刃を一直線上に転がすことで切込を挿入したり、レーザー加工用のパルスレーザーを一直線上に高速で走査したりすることでパルス周期に対応する切込を挿入するなど、生産性の高い切込挿入法を適用できる。
さらに、本発明のクロスプライ積層体におけるプリプレグの好ましい実施態様として、プリプレグ中の複数の切込が、断続的な直線を複数形成し、該断続的な直線を形成する複数の切込が、実質的に同一の長さYであり、該断続的な直線を形成する複数の切込について、近接する切込間距離(以下、同一直線上の切込間距離という)がYの3倍より大きいものが挙げられる。上記のように、切込によって分断された隣り合う強化繊維同士が、L/2ずれている場合は、切込の長さYに対して、同一直線上の近接する切込間距離もYとなるが、L/3以下の周期でずらすことで、同一直線上の切込間距離がYの3倍以上となる。同一直線上に切込が存在する場合は、切込起因の損傷が切込の延長線上に発生する可能性があるので、特に近接する距離が近いほどクラックが連結しやすい。従って同一直線状の切込同士の距離をできるだけ離すことでクラック連結が抑制され、繊維強化プラスチックとした際の強度が向上する。また、同一直線上の切込間距離が近い場合は、ハンドレイアップ時に切込開口が連鎖し、切込が断続的な直線の模様として認識されやすくなる一方、切込同士の距離が離れていることで模様として認識されることがなくなり、表面品位に優れるものとなる。なお本発明においては、プリプレグ中の複数の切込が断続的な直線を複数形成し、該断続的な直線を形成する複数の切込が実質的に同一の長さYであり、該断続的な直線を形成する複数の切込について近接する切込間距離がYの3倍より大きいプリプレグを少なくとも1つ有することが好ましく、特に好ましくは全てのプリプレグについて複数の切込が断続的な直線を複数形成し、該断続的な直線を形成する複数の切込が実質的に同一の長さYであり、該断続的な直線を形成する複数の切込について近接する切込間距離がYの3倍より大きいも態様である。
本発明のクロスプライ積層体において、プリプレグ中の切込を、そのプリプレグ中の強化繊維の直角方向に投影した場合の投影長さWsが30μm〜1.5mmの範囲内であることが好ましい。Wsを小さくすることにより、一つ一つの切込により分断される強化繊維の量が減り、強度向上が見込まれる。特に、Wsを1.5mm以下とすることで、大きな強度向上が見込まれる。一方で、Wsが30μmより小さい場合、切込位置の制御が難しく、対となる切込によって全ての強化繊維を所定の長さ以下とするのが難しく、賦形時に形状追従性低下を招く場合がある。ここで、“切込を強化繊維の直角方向に投影した投影長さWs”とは、図4、5に示すように、プリプレグの面内において、切込を強化繊維の直角方向(強化繊維に対して直角方向7)を投影面として、切込から該投影面に直角(繊維配向方向6)に投影した際の長さを指す。なお本発明においては、プリプレグ中の強化繊維の直角方向に投影した場合の投影長さWsが30μm〜1.5mmとなるプリプレグを少なくとも1つ有することが好ましく、特に好ましくは全てのプリプレグの投影長さWsが30μm〜1.5mmとなった態様である。
本発明のクロスプライ積層体において、プリプレグ中の切込と強化繊維とのなす角をθとしたとき、θの絶対値が2〜25°の範囲内であることが好ましい。切込角度が斜めであることにより、切込の長さYの大きさに対して、Wsを小さくすることができるため、Wsが1.5mm以下という極小の切込を工業的に安定して設けることができ、また積層時に連続切込によりプリプレグがばらばらになり難く、プリプレグとしての取り扱い性にも優れる。特にθの絶対値が25°以下であることで力学特性、中でも引張強度の向上が著しく、かかる観点からθの絶対値は15°以下がより好ましい。一方、θの絶対値は2°より小さいと切込を安定して入れることが難しくなる。すなわち、強化繊維に対して切込が寝てくると、切込を入れる際、強化繊維が刃から逃げやすく、切込の位置精度を担保しながら挿入することが難しくなる。かかる観点からは、θの絶対値が5°以上であることがより好ましい。なお本発明においては、プリプレグ中の切込と強化繊維とのなす角をθとしたときのθの絶対値が2〜25°となるプリプレグを少なくとも1つ有することが好ましく、特に好ましくは全てのプリプレグのθの絶対値が2〜25°となった態様である。
本発明のクロスプライ積層体におけるプリプレグの別の好ましい切込パターンとしては、図4に示すように、プリプレグ中の複数の切込が断続的な直線を形成し、該切込と強化繊維とのなす角をθとしたとき、θの絶対値が実質的に同一であり、θが正の角となる切込の数(正切込)とθが負の角となる切込(負切込)の数が略同数であるものが挙げられる。ここでθの絶対値が実質的に同一とは、全ての切込における角度θの絶対値が、全ての切込における角度θの絶対値から求めた平均値の±1°以内であることをいう。さらに正切込の数と負切込の数が略同数とは、θが正となる切込の数とθが負となる切込の数が略同数であることを意味する。そして、θが正となる切込の数とθが負となる切込の数が略同数とは、数を基準とした百分率で示した時に正切込の数と負切込の数がいずれも45%以上55%以下であることをいう(以下同じ)。得られたプリプレグを積層する際、斜め切込が一方向の角度のみの場合には、クロスプライ積層体作製時に2枚のプリプレグの切込の方向が近くなる場合がある。2枚のプリプレグの切込の方向が近くなると、切込同士が重なる場合や、クロスプライ積層体の伸張しやすさに異方性が生じる場合がある。したがって、繊維方向からの切込の傾きの絶対値が実質的に同一であり、正切込と負切込が略同数となる切込パターンであることが好ましい。なお本発明においては、プリプレグ中の複数の切込が断続的な直線を形成し、該切込と強化繊維とのなす角をθとしたとき、θの絶対値が実質的に同一であり、θが正の角となる切込の数とθが負の角となる切込の数が略同数となるプリプレグを少なくとも1つ有することが好ましく、特に好ましくは全てのプリプレグについて複数の切込が断続的な直線を形成し、該切込と強化繊維とのなす角をθとしたときθの絶対値が実質的に同一であり、θが正の角となる切込の数とθが負の角となる切込の数が略同数となる態様である。
本発明のクロスプライ積層体におけるプリプレグの好ましい実施態様として、図4に示すように、プリプレグに挿入された任意の1つの切込Aに着目したとき、該切込と近接する切込のうち、θの正負が同一である切込Bよりも、最短距離が近いθの正負が異なる切込Cが4つ以上存在するものが挙げられる。三次元形状追従時にプリプレグの切込挿入部は、切込角度と繊維方向との関係で強化繊維端部の動きが決まるため、近接する切込同士は同形状、逆方向の角度であることで、マクロに見た場合、成形後の面内の等方性が担保される。なお、切込Aに着目したときに、該切込と近接する切込のうち、θの正負が同一である切込Bよりも、最短距離が近いθの正負が異なる切込Cの数は4つ以上が好ましく、特に好ましくは4つである。さらに、複数の切込が、断続的な直線を形成し、該断続的な直線を形成する複数の切込が、実質的に同一の長さYであり、該断続的な直線を形成する複数の切込について、近接する切込間距離(以下、同一直線上の切込間距離という)がYの3倍より大きく、かつプリプレグに挿入された任意の1つの切込Aに着目したとき、該切込と近接する切込のうち、θの正負が同一である切込Bよりも、最短距離が近いθの正負が異なる切込Cが4つ以上存在する場合、正切込と負切込がより均質に配置されやすく、三次元形状追従性、表面品位、力学特性の観点から好ましい。なお本発明においては、プリプレグに挿入された任意の切込Aと近接する切込のうち、θの正負が同一である切込Bよりも最短距離が近いθの正負が異なる切込Cが4つ以上存在するプリプレグを少なくとも1つ有することが好ましく、特に好ましくは全てのプリプレグについて挿入された任意の切込Aと近接する切込のうち、θの正負が同一である切込Bよりも最短距離が近いθの正負が異なる切込Cが4つ以上存在する態様である。
さらに、本発明のクロスプライ積層体におけるプリプレグの好ましい実施態様として、図5に示すように、プリプレグ中の複数の切込が直線かつ実質的に同一の長さYで挿入され、近接する切込同士の最短距離が切込の長さYよりも長いものが挙げられる。ここで実質的に同一の長さとは、全ての切込長さが、全ての切込長さの平均値の±5%の差以内であることをいう(以下同じ)。力学特性の観点から、強化繊維の不連続点である切込同士がクラックにより連結された際、繊維強化プラスチックは破壊する。面内の切込同士の距離を離した切込パターンとすることで、少なくとも同一面内でのクラック連結を抑制する効果があり、強度が向上する。近接する切込同士の最短距離は、より好ましくはYの1.2倍以上である。一方で、最近接する切込同士の距離に上限は特にないが、プリプレグに高密度な切込を付与するにあたり、最近接する切込同士の距離が切込長さYの10倍以上とすることは容易ではない。
高密度に切込が分布する切込プリプレグにおいては、三次元形状への追従性は向上し、一つ一つの切込が小さいことによる力学特性の向上が見込めるが、切込同士の距離が近い場合よりも切込同士が離れている方が力学特性はさらに向上する。したがって、密に切込を挿入した場合には、切込同士の距離を空けた切込パターン、すなわち近接する切込同士の最短距離を、切込長さYより大きくすることが力学特性向上のために特に重要となる。高密度に切込が分布する場合に限らず、θの絶対値が小さくなるほど、力学特性の向上が見込める一方、切込同士が近くなり、切込で発生した損傷が連結しやすく力学特性が低下する懸念もある。しかし、実質的に同一の長さYであり、近接する切込同士の最短距離がYよりも長くすることで、切込が強化繊維の配向方向に対して直角な場合と比較して、さらなる力学特性の向上が見込める。切込が高密度の場合は、特に、力学特性の向上と共に、切込開口の抑制による表面品位の向上が見込める。国際公開WO2008/099670号パンフレットに代表されるように、強化繊維に対して斜めに切込を挿入することは知られた技術であるが、当該国際公開のパンフレットの図2(f)や図12のように、隣接する切込が強化繊維の繊維長さLに対してL/2ずれたような切込パターンでは、Lが長く切込の長さが小さい場合には、図3(a)に示した現象と同様に、均質な切込パターンは実現できず、切込プリプレグの伸張時には切込が密な箇所が伸張しやすくなり、繊維強化プラスチックとした場合も切込同士が近くに存在するため、切込同士が連結しやすく、力学特性の低下を招く場合がある。図3(b)や図3(c)のような均質な切込配置に斜めの切込を適用することで、斜めに切込を挿入することによる力学特性向上の効果をより効果的に発現できる。なお本発明においては、プリプレグ中の複数の切込が直線かつ実質的に同一の長さYで挿入され、近接する切込同士の最短距離が切込の長さYよりも長いプリプレグを少なくとも1つ有することが好ましく、特に好ましくは全てのプリプレグについて複数の切込が直線かつ実質的に同一の長さYで挿入され、近接する切込同士の最短距離が切込の長さYよりも長い態様である。
本発明で一方向に配向した強化繊維に含浸させる樹脂は特に限定されず、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリスルフォン、ABS、ポリエステル、アクリル、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、液晶ポリマー、塩ビ、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、シリコーンなどが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の変形および2種以上のブレンドの樹脂を用いることもできる。また、これらの熱硬化性樹脂は熱により自己硬化する樹脂であってもよいし、硬化剤や硬化促進剤等を含むものであってもよい。好ましくは、熱硬化性樹脂である。樹脂が熱硬化性樹脂であるプリプレグは室温においてタック性を有しているため、プリプレグを積層した際、上下のプリプレグは粘着により容易に一体化される。プリプレグを積層した後、真空引き等の加圧手段により粘着を強化してもよい。また、熱硬化性樹脂は未硬化では柔らかく、プリプレグを手作業で賦形させるのに適している。
樹脂を熱可塑性樹脂とする場合には、プリプレグのタック性がなく常温で積層して一体化することができないため、プリプレグをプレス成形など加熱と加圧手段を備えた方法により一体化させてクロスプライ積層体を作製するのがよい。
本発明に用いる強化繊維は特に限定されず、ガラス繊維、ケブラー繊維、炭素繊維、グラファイト繊維またはボロン繊維等であってもよい。この内、比強度および比弾性率の観点からは、炭素繊維が好ましい。
本発明におけるクロスプライ積層体の好ましい態様として、面積が0.5m以上であることが好ましい。さらに好ましくは0.8m以上である。一方、現実的なクロスプライ積層体の面積の最大値は5mである。通常、積層していないプリプレグは面積が大きくなるほど、たわみやすく、成形時に型に配置する際、シワが発生しやすくなる。クロスプライ積層体とすることで、剛性を向上させ、面積が0.5m以上であっても、型に配置する際にはシワが発生しにくくなる。また、面積の大きいクロスプライ積層体を作製する際に、複数枚の切込プリプレグをつないで1層とする場合がある。クロスプライ積層体とすることで、つなぎ目が存在しても、もう片方の層によって担持され、つなぎ目がばらけることなく、取り扱い性が向上する。つなぎ目は、強化繊維に平行な直線状とすることが、クロスプライ積層体を固化した繊維強化プラスチックの力学特性維持のために好ましい。
本発明のクロスプライ積層体は、平板状のまま金型にセットしてプレス成形してもよいし、クロスプライ積層体を型に押し付けてプリフォームとし、続いて該プリフォームを固化することで繊維強化プラスチックとして製造してもよい。本発明のクロスプライ積層体は強化繊維の配向方向にも伸張することが可能であるため、両面型によるプレス成形など、圧力の高い成形を行う際は、プリフォームは完全に型に追従していなくてもよい。クロスプライ積層体を丁寧に凹凸に沿わせるためには長い時間を要するが、型の表面に対して、完全に追従させなくとも、圧力に寄って型に形状追従可能であり、プリフォーム作製時間も短くなる。型の表面に対して完全に追従させないとは、型に接しているプリフォームの面積が、型の表面積の90%以下であることを示す。プリフォームは手作業(ハンドレイアップ)により型に押し付けられて製造されてもよく、ロボットなどを用いて型に押し付けられてもよい。クロスプライ積層体を細かい凹凸への追従させる際、手作業による賦形では、シワの発生する箇所を確認しながら、伸張させる箇所を限定して、精度よく追従させることができる。クロスプライ積層体を複数枚、角度を変えて重ねて積層してもよい。プリフォームを固化させる際には、型とバグフィルムとの間にプリフォームを配置して密閉空間とし、密閉空間を真空引きして大気圧との差圧でプリプレグ積層体を加圧しながら加熱して、オートクレーブによりさらに圧縮加熱気体によって成形してもよいし、オーブンや接触加熱により真空ポンプを用いて大気圧との差圧による加圧のみで固化させて成形してもよい。あるいは、プリフォームを型で挟み、プレス成形によって固化してもよい。
クロスプライ積層体を型に押し付ける際、クロスプライ積層体を加熱する工程を含むことも好ましい。つまりクロスプライ積層体を型に押し付ける際に、ドライヤーやヒーター等の加熱手段によってクロスプライ積層体を柔らかくする工程を含んでいてもよい。型自体が加熱されるものであってもよい。クロスプライ積層体を加熱することでプリプレグが軟化し、形状追従性が高くなる場合がある。加熱する温度は、クロスプライ積層体の形状が崩れてしまわない程度がよく、樹脂粘度が50Pa・s以上を保つ温度がよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の発明に限定されるものではない。
本実施例において、クロスプライ積層体の作製、クロスプライ積層体の引張特性測定、切込開口部の面積率の測定、ハンドレイアップ時の形状追従性評価、繊維強化プラスチックの表面品位測定、力学特性測定は下記方法に従って実施した。
<クロスプライ積層体の作製>
“トレカ”(商標登録)プリプレグシートP3052S−15(強化繊維:T700S、熱硬化性樹脂:2500、強化繊維の体積含有率:56%、片面離型紙を積層)に切込を挿入し、300mm×300mmに切り出し、離型紙の積層されていない面を繊維方向が直角になるように貼りあわせた。切込はシリンダーに刃を配置したローラーカッターにより、プリプレグの全体にわたって挿入した。貼りあわせたクロスプライ積層体を、30分間真空引きし、2枚のプリプレグの密着を高め、クロスプライ積層体を得た。
<クロスプライ積層体の引張特性測定および切込開口部の面積率測定>
クロスプライ積層体から、クロスプライ積層体の1枚のプリプレグの繊維方向が長手方向(この繊維方向を0°とする)となるように、50mm×250mmのプリプレグ引張試験片を切り出した。25℃環境下にてプリプレグ引張試験片の両端を50mmずつ掴み、スパン間150mmとして引張試験機を用いてプリプレグ引張試験片に引張荷重を加えた。引張ひずみはプリプレグ引張試験片の0°側表面中央に50mm離してマーキングした2つの点の距離を、プリプレグ引張試験片の0°側と対面させた非接触ひずみ計を用いて追うことで測定した。0°方向の引張ひずみが1%時の荷重を荷重1、引張ひずみが2%時の荷重を荷重2として記録した。
引張ひずみ付与中は、プリプレグ引張試験片の0°側とデジタルカメラを非接触ひずみ計と重ならないように30cm離して対面させ、デジタルカメラとの対面側以外は光を遮断するカーテンで覆い、デジタルカメラとの対面側からプリプレグ引張試験片を照らす照明を設置し、0°方向の引張ひずみが2%時のプリプレグ引張試験片のデジタル画像を取得した。デジタル画像から試験片の中央部25mm×25mmの領域に相当するデジタル画像を500×500ピクセルで切り出し、切込に該当するピクセルを1、切込以外の箇所を0となるように二値化し、切込に該当するピクセル数の、切り出したデジタル画像の総ピクセル数における割合から切込開口部の面積率を取得した。
<ハンドレイアップ時の形状追従性評価>
図7に示す型に25℃環境下にてクロスプライ積層体を沿わせた。型の底面各辺とクロスプライ積層体の繊維方向を合わせ、一つの角にクロスプライ積層体を押し付け、クロスプライ積層体の45°方向に伸張させる際に、側面に生じるシワを伸張させながら、該角に沿うように賦形した。残りの3つの角に対しても同様に沿わせ、クロスプライ積層体を型に沿う箱型に賦形したプリフォームとした。表1では賦形に要した労力を以下の3段階にわけた。
A:クロスプライ積層体がどの方向にも伸張させやすく、シワなく箱型に賦形できた。
B:クロスプライ積層体が一部のびにくい箇所があったものの、シワなく箱型に賦形できた。
C:クロスプライ積層体が伸びにくく、箱型に賦形した際にシワが残った。
<成形された繊維強化プラスチック(成形品)の表面品位>
金型の平滑さに表面品位が影響される転写面でない面の品位を確認するために、前記図7の型にクロスプライ積層体を押し当てて作製したプリフォームを、型に押し当てたまま、0.1℃/分で130℃まで昇温させ固化させ、繊維強化プラスチックを製造した。表1では得られた繊維強化プラスチックの表面品位を以下の5段階に分けた。
A:切込の存在がほとんど認識できずシワが発生していないもの
B:切込の開口は少ないものの切込の存在が認識され、シワが発生していないもの
C:切込が開口しているがシワが発生していないもの
D:シワが発生しているもの
<繊維強化プラスチックの力学特性>
繊維強化プラスチックの力学特性としては、ハンドレイアップ後の試験片から安定して力学特性を得られる試験片を切り出すことが困難であった。そこで、350mm×350mmの型を用いて300mm×300mmのクロスプライ積層体にプレス機により3MPaの面圧を加えて伸張させ、350mm×350mmの繊維強化プラスチックのプレス成形品を得た。プレス成形時の温度は130℃で、温度と面圧を保持したまま90分後に加圧・加熱を停止し、室温に放置して冷却した後に脱型した。
得られた繊維強化プラスチックから繊維方向が長手方向となるように25mm×250mmに切り出した引張試験片を用いて力学特性を測定し、成形品の力学特性として引張弾性率と引張強度を得た。ただし、積層構成はクロスプライ積層体を4枚、角度を変えて積層させ、プリプレグの積層構成が[+45/−45/0/90]sとなるように積層し、0°方向を引張試験片の長手方向とした。試験はASTM D3039(2008)に基づくものとする。測定した試験片の数は各水準5本とし、引張弾性率および引張強度の平均値を代表値として算出した。
(実施例1)
切込プリプレグの切込パターンを、図6(a)に示す、分断された強化繊維の長さLは24mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは1mm、強化繊維と切込のなす角度θが25°であった。 切込によって分断された強化繊維束は、隣接する強化繊維束に対して、強化繊維長さLの1/4ずれて配置されていた。
クロスプライ積層体の引張特性としては荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5を満たしていた。引張ひずみ2%時には切込が大きく開口していた。ハンドレイアップによる形状追従性は良好で、シワ無く賦形できた。成形された繊維強化プラスチックの表面品位としては、表面に切込の開口が見られた。
(実施例2)
切込プリプレグの切込パターンを、図6(b)に示す、切込パターンとし、クロスプライ積層体を作製した。任意の切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断していなかった。切込は実質的に同一の長さY=1mmであり、近接する切込同士の最短距離は1.5mmでYの1.5倍であった。分断された強化繊維の長さは20mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは0.34mmであった。強化繊維の配向方向と切込とがなす角は20°であった。切込によって分断された強化繊維束は、隣接する強化繊維束に対して、強化繊維長さLの2/5ずれて配置されていた。複数の切込が断続的な直線を形成し、断続的な直線を形成する複数の切込について、近接する切込間距離はYの22倍であった。図8のように六方細密配置された小領域を抽出し切込の分布を測定したところ、母集団の平均値は12.4、変動係数は10.9%であった。
クロスプライ積層体の引張特性としては荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5を満たしていた。引張ひずみ2%時には切込の開口が見られたが、実施例1よりも開口面積は小さかった。ハンドレイアップによる形状追従性は若干伸ばしにくい箇所があったものの、シワ無く賦形できた。成形された繊維強化プラスチックの表面品位としては、表面に切込の開口が見られた。
(実施例3)
切込プリプレグの切込パターンを、図6(c)に示す、切込パターンとし、クロスプライ積層体を作製した。切込は実質的に同一の長さY=1mmであり、近接する切込同士の最短距離は1.4mmでYの1.4倍であった。分断された強化繊維の長さは12mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは0.64mmであった。強化繊維の配向方向と切込とがなす角θの絶対値は40°でありθが正である正切込とθが負である負切込を略同数含んでいた。正切込・負切込がともに複数の切込が断続的な直線を形成し、断続的な直線を形成する複数の切込について、近接する切込間距離は正切込ではYの7倍、負切込ではYの13倍であった。図8のように六方細密配置された小領域を抽出し切込の分布を測定したところ、母集団の平均値は10.9、変動係数は10.4%であった。
クロスプライ積層体の引張特性としては荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5を満たしていた。引張ひずみ2%時には切込が若干開口していた。ハンドレイアップによる形状追従性は良好で、シワ無く賦形できた。成形された繊維強化プラスチックの表面品位としては、表面に切込の開口が若干見えた。
(実施例4)
切込プリプレグの切込パターンを、図6(d)に示す、切込パターンとし、クロスプライ積層体を作製した。任意の切込と、当該切込に最近接する別の切込とは、同一の強化繊維を分断していなかった。切込は実質的に同一の長さY=1mmであり、最近接する切込同士の距離は1.5mmでYの1.5倍であった。分断された強化繊維の長さは20mm、切込を強化繊維の配向方向に直角な平面に投影した投影長さWsは0.34mmであった。強化繊維の配向方向と切込とがなす角θの絶対値は20°でありθが正である正切込とθが負である負切込を略同数含んでいた。正切込・負切込がともに複数の切込が断続的な直線を形成し、断続的な直線を形成する複数の切込について、近接する切込間距離は正切込ではYの3.4倍、負切込ではYの24.3倍であった。さらに、プリプレグに挿入された任意の切込Aと近接する切込のうち、θの正負が同一である切込Bよりも最短距離が近いθの正負が異なる切込Cが4つ存在していた。図8のように六方細密配置された小領域を抽出し切込の分布を測定したところ、母集団の平均値は11.3、変動係数は7.9%であった。
クロスプライ積層体の引張特性としては荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5を満たしていた。引張ひずみ2%時には切込の開口はほとんど見えなかった。ハンドレイアップによる形状追従性は良好で、シワ無く賦形できた。成形された繊維強化プラスチックの表面品位としては、表面に切込の開口がほとんど見られなかった。
(実施例5)
実施例4と同じ切込プリプレグを用いて、クロスプライ積層体の積層構成を[0/90/90/0]とした。クロスプライ積層体の引張特性としては、荷重1が3340N、荷重2が4320Nと、荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5を満たしていたが、室温での賦形は困難であった。ドライヤーを用いて加熱したところ、形状追従性が良好となり、シワなく型に沿わせることができた。クロスプライ積層体の引張特性を60℃環境下で測定したところ、荷重1が52N、荷重2が45Nであった。
(実施例6)
実施例4と同じ切込プリプレグを用いて、1000m×1000mのクロスプライ積層体を作製した。元々切込プリプレグは500mm幅であったが、強化繊維の配向方向が長手方向となるように1000mm×500mmの切込プリプレグを切り出し、2枚ずつ貼り合わせて2枚の1000mm×1000mmの切込プリプレグとし、さらに強化繊維の配向方向が直交するように積層し、1000mm×1000mmのクロスプライ積層体とした。積層後、真空引きにより、積層した層間の密着を強めた。1つの層が2枚の切込プリプレグで構成されているにもかかわらず、もう1つの層によって支えられ、取り扱い性は良好であった。
作製した切込プリプレグを図9(a)の形状を有する型に賦形し、プリフォームを得た。20分程度要したが、図9(b)のように、精度よく凹凸形状に賦形することができた。プリフォームを両面型で挟み、130℃、90分で硬化させて繊維強化プラスチックを得た。得られた繊維強化プラスチックは切込開口がほとんど見えず、良好な表面品位であった。
(実施例7)
クロスプライ積層体を型に完全に沿わせず、図9(c)のように一部型から浮いた状態に賦形する以外は実施例6と同様にプリフォームを得た。賦形時間は5分と、実施例6よりも速かった。プリフォームを両面型で挟み、130℃、90分で硬化させて繊維強化プラスチックを得た。得られた繊維強化プラスチックはプリフォームの時点では型から浮いていた箇所も凹凸に追従しており、切込開口がほとんど見えず、良好な表面品位であった。
(比較例1)
切込の入っていないプリプレグを2枚、繊維方向が直角になるように積層したプリプレグ積層体を作製した。
プリプレグ積層体の引張特性としては引張ひずみ2%に達する前に破断し急激な荷重低下が生じ、荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5を満たさなかった。ハンドレイアップによる形状追従性は、繊維方向に伸びにくく、シワを消すことができなかった。
(比較例2)
プリプレグへの切込パターンを、図6(e)に示す、切込パターンとし、クロスプライ積層体を作製した。強化繊維を直角に横切る方向へ複数の切込が設けられており、切込を強化繊維の直角方向に投影した投影長さWsが切込の長さYと等しく1mmであり、繊維長さLが24mmの強化繊維に分断されている。図8のように六方細密配置された小領域を抽出し切込の分布を測定したところ、母集団の平均値は3.7、変動係数は38.3%であった。
クロスプライ積層体の引張特性としては引張ひずみ2%に達する前に破断し急激な荷重低下が生じ、荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5を満たさなかった。そのため、切込開口面積率を測定することが不可能であった。ハンドレイアップによる形状追従性は、繊維方向に伸びにくく、シワを消すことができなかった。成形された繊維強化プラスチックの表面品位としては、表面に切込の開口が見られた。
(比較例3)
強化繊維の強化形態が織り構造である織物プリプレグF6343B−05(強化繊維:T300B−3000、樹脂:2500)を用いてハンドレイアップによる形状追従性を測定した。ハンドレイアップによる形状追従性は良好であり、シワなく箱型に賦形できた。
(比較例4)
クロスプライ積層体ではなく、積層されていない切込プリプレグを用いて図9の型へ賦形した。切込プリプレグの幅は1000mm×500mmなので、2枚の切込プリプレグを独立して賦形しようとしたが、賦形する前に切込プリプレグにシワが入り、そのシワを消すことができず、賦形を断念した。
Figure 2017082210
切込と強化繊維のなす角θを、表においては切込角θと記す。
1:プリプレグ
2:切込
3:クロスプライ積層体の0°方向
4:クロスプライ積層体の90°方向
5:クロスプライ積層体の45°方向
6:プリプレグの繊維方向
7:プリプレグの強化繊維に対して直角方向
8:直径10mmの小領域
9:複数の切込によって形成された断続的な直線
10:断続的な斜め切込(繊維方向に対して正の角度)
11:断続的な斜め切込(繊維方向に対して負の角度)
12:プリフォーム

Claims (14)

  1. 一方向に配向した強化繊維と樹脂を含む強化繊維の体積含有率Vfが45〜65%である複数枚のプリプレグよりなり、繊維方向が実質的に直角に交わるプリプレグを含むように構成されたクロスプライ積層体であって、
    各プリプレグは強化繊維を横切る複数の切込を有する実質的に全ての強化繊維が繊維長さ(L)10〜300mmである切込プリプレグであり、25℃環境下にて以下に示す引張特性1を満たすか、又は、60℃環境下にて以下に示す引張特性2を満たすクロスプライ積層体。
    (引張特性1)クロスプライ積層体中のいずれかのプリプレグの繊維方向を0°とした場合に、クロスプライ積層体に対して0°方向へ1%の引張ひずみを加えたときにクロスプライ積層体の0°方向に発生する荷重を荷重1として、クロスプライ積層体に対して0°方向へ2%の引張ひずみを加えたときにクロスプライ積層体の0°方向に発生する荷重を荷重2とすると、荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5である。
    (引張特性2)クロスプライ積層体中のいずれかのプリプレグの繊維方向を0°とした場合に、クロスプライ積層体に対して0°方向へ1%の引張ひずみを加えたときにクロスプライ積層体の0°方向に発生する荷重を荷重1として、クロスプライ積層体に対して0°方向へ2%の引張ひずみを加えたときにクロスプライ積層体の0°方向に発生する荷重を荷重2とすると、荷重1×0.5<荷重2<荷重1×1.5である。
  2. 25℃環境下において、クロスプライ積層体中のいずれかのプリプレグの繊維方向を0°とした場合に、クロスプライ積層体に対して0°方向へ2%の引張ひずみを加えたときに、クロスプライ積層体の面積に占める切込開口部の合計の面積(切込開口部の面積率)が、0%以上1%以下であるか、
    60℃環境下において、クロスプライ積層体中のいずれかのプリプレグの繊維方向を0°とした場合に、クロスプライ積層体に対して0°方向へ2%の引張ひずみを加えたときに、クロスプライ積層体の面積に占める切込開口部の合計の面積(切込開口部の面積率)が、0%以上1%以下である、請求項1に記載のクロスプライ積層体。
  3. 前記プリプレグ内から任意に選択される、10個の直径10mmの円形の小領域内に含まれる切込の個数を母集団とした場合に、母集団の平均値が10以上、かつ変動係数が20%以内である、請求項1または2に記載のクロスプライ積層体。
  4. 前記プリプレグ中の複数の切込が、断続的な直線を形成し、
    該断続的な直線を形成する複数の切込が、実質的に同一の長さYであり、
    該断続的な直線を形成する複数の切込について、近接する切込間距離がYの3倍より大きい、請求項1〜3のいずれかに記載のクロスプライ積層体。
  5. 前記プリプレグ中の切込を、そのプリプレグ中の強化繊維の直角方向に投影した場合の投影長さWsが、30μm〜1.5mmである、請求項1〜4のいずれかに記載のクロスプライ積層体。
  6. 前記プリプレグ中の切込と強化繊維とのなす角をθとしたとき、θの絶対値が2〜25°である、請求項1〜5のいずれかに記載のクロスプライ積層体。
  7. 前記プリプレグ中の複数の切込が、断続的な直線を形成し、
    該切込と強化繊維とのなす角をθとしたとき、θの絶対値が実質的に同一であり、
    θが正となる切込の数とθが負となる切込の数が略同数である、請求項1〜6のいずれかに記載のクロスプライ積層体。
  8. 前記プリプレグが、プリプレグに挿入された任意の切込Aと近接する切込のうち、θの正負が同一である切込Bよりも最短距離が近いθの正負が異なる切込Cが4つ以上存在する、請求項7に記載のクロスプライ積層体。
  9. 前記プリプレグ中の複数の切込が、直線かつ実質的に同一の長さYであり、
    近接する切込同士の最短距離が、切込の長さYよりも長い、請求項1〜8のいずれかに記載のクロスプライ積層体。
  10. 前記樹脂が熱硬化性樹脂である請求項1〜9のいずれかに記載のクロスプライ積層体。
  11. 面積が0.5m以上の請求項1〜10のいずれかに記載のクロスプライ積層体。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載のクロスプライ積層体を、型に押し付けてプリフォームとし、続いて該プリフォームを固化することを特徴とする、繊維強化プラスチックの製造方法。
  13. クロスプライ積層体を型に押し付ける際にクロスプライ積層体を加熱する工程を含む、請求項12に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  14. 型に押し付ける方法が手作業である、請求項12または13に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
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