JP6255693B2 - 炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法 - Google Patents

炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法に関し、さらに詳しくは構造材に適用可能な優れた力学物性、低ばらつき性を有するとともに良好な外観特性を有する炭素繊維樹脂複合材成形体が得られる製造方法に関する。
繊維強化熱可塑性プラスチックの成形方法として、プリプレグと称される連続した強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸せしめた基材を積層し、プレス等で加熱加圧することにより、目的の形状に賦形するスタンピング成形が最も一般的に行われている。これにより得られた繊維強化プラスチックは、連続した強化繊維を用いているので優れた力学物性を有する。また、連続した強化繊維を規則的に配列することで、必要とする力学物性に設計することが可能であり、力学物性のばらつきも小さいことが知られている。
このようなプリプレグのマトリクス樹脂としては、一般に使用される熱可塑性樹脂であれば、何でも使用可能であるが、特に成形性、耐薬品性、耐吸水性等の特性が要求される場合にポリプロピレン系樹脂を用いることが提案されている。さらにポリプロピレン系樹脂を使用する場合に、樹脂と繊維との接着性を向上させるために酸変性ポリプロピレン樹脂を使用することが提案されている。
酸変性ポリプロピレン樹脂は、その製造過程において遊離の重合性有機酸残渣、過酸化物残渣などを含んでおり、通常、そのまま使用されるが、酸変性ポリプロピレン樹脂を含む積層材をスタンピング成形する際に、プレヒート工程、又はスタンピング成形の際に樹脂内部より流出するガス成分の影響により、成形体表面外観が悪化するという問題があった。
一方、揮発性ガス成分の含有量を抑制した酸変性ポリプロピレン樹脂を繊維強化プラスチックに応用する技術としては、(1)溶融法又は溶液法で変性処理された酸変性ポリプロピレン樹脂を溶媒中に溶解した後、再沈殿処理、及び洗浄処理を行いガラス繊維の表面処理に用いる方法(特許文献1参照)、(2)溶液法又は溶融法で高濃度に変性処理された酸変性ポリプロピレン樹脂を貧溶媒により懸濁条件下での洗浄処理を行ったのち、未変性ポリプロピレン樹脂に混合してガラス繊維、木粉等の充填材との接着強度を高める技術(特許文献1及び2参照)などが知られている。しかしながら、(1)の方法で酸変性ポリプロピレン樹脂を表面に付着させた繊維に未変性ポリプロピレン樹脂をマトリクス樹脂とした繊維強化樹脂は、強度の面で充分な性能を示さず、マトリクス樹脂中に酸変性ポリプロピレン樹脂を含有することが必要である。また、(2)の方法で高変性の酸変性ポリプロピレン樹脂を未変性ポリプロピレン樹脂に混合すると、酸変性ポリプロピレン樹脂と未変性ポリプロピレン樹脂とが相分離を起こすため、炭素繊維強化樹脂とした場合に充分な強度を示さないという問題があった。
なお、複合材料とした時の酸変性ポリプロピレン樹脂としての性能は、グラフト化した有機酸量で決定されることが報告されている(非特許文献1参照)。
特開2006−117839号公報 特開2009−114435号公報
高分子論文集,Vol.32,No.11,pp.645−652(1975)
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであり、構造材に適用可能な曲げ強度や引張弾性率など優れた力学物性を有しながら、力学特性のばらつきが低く、外観の良好な炭素繊維樹脂複合材成形体が得られる製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、
炭素繊維及び酸変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる炭素繊維樹脂複合材又はその積層体をスタンピング成形する成形工程を含む炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法において、
酸変性ポリオレフィン樹脂組成物が、下記(A)〜(C)の条件を全て満たすことを特徴とする、炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法により解決する。
(A)酸変性ポリオレフィン樹脂組成物のアセトン可溶分除去後の下記式(1)で表される赤外吸収スペクトル強度比が0.1〜1.2
(B)前記式(1)で表される赤外吸収スペクトル強度比について、アセトン可溶分除去後の値をアセトン可溶分の除去前の値で除した赤外吸光スペクトル強度比保持率が0.7〜1.0
(C)ASTM D−1238に準拠した、荷重:2.16kg、温度:230℃における樹脂の流動性指標MFRが10〜200g/10min
本発明によれば、構造材に適用可能な曲げ強度や引張弾性率など優れた力学物性、その低ばらつき性を持つ炭素繊維樹脂複合材成形体を得ることができる。
直線状の切込を表す概念図である。 直線状の中心線に沿った曲線状の切込を表す概念図である。 良外観の炭素繊維樹脂複合材成形体の表面写真及びその表面拡大写真である(図面代用写真)。 流出ガス成分により白化した炭素繊維樹脂複合材成形体の表面写真及びその表面拡大写真である(図面代用写真)。
本発明の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法ついて以下詳細に説明するが、本発明の趣旨に反しない限り、これらの内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、炭素繊維及び酸変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる炭素繊維樹脂複合材又はその積層体をスタンピング成形する成形工程(以下、「本発明に係る成型工程」と略す場合がある。)を含むものである。そして、酸変性ポリオレフィン樹脂組成物が、
下記(A)〜(C)の条件を全て満たすことを特徴とする。
(A)酸変性ポリオレフィン樹脂組成物のアセトン可溶分除去後の下記式(1)で表される赤外吸収スペクトル強度比が0.1〜1.2
(B)前記式(1)で表される赤外吸収スペクトル強度比について、アセトン可溶分除去後の値をアセトン可溶分の除去前の値で除した赤外吸光スペクトル強度比保持率が0.7〜1.0
(C)ASTM D−1238に準拠した、荷重:2.16kg、温度:230℃における樹脂の流動性指標MFRが10〜200g/10min
本発明者らは、炭素繊維樹脂複合材のマトリクス樹脂として用いる酸変性ポリプロピレン樹脂について、上記(A)〜(C)の条件を全て満たすものを選択して使用することにより、複合材表面の粗面化を防止することができるとともに、優れた力学特性を有する炭素繊維樹脂複合材成形体が得られることを見出した。これは、上記(A)〜(C)の条件を全て満たす酸変性ポリオレフィン樹脂組成物が、炭素繊維に対する良好な含浸性を示すとともに、スタンピング成形を行った際に成形体表面への揮散ガスの流出が抑制されるためであると考えられる。
以下、酸変性ポリオレフィン樹脂組成物、炭素繊維等の構成について詳細に説明する。
<酸変性ポリオレフィン樹脂組成物>
本発明において、「酸変性ポリオレフィン樹脂組成物」とは、有機酸をグラフト化したポリオレフィン樹脂を少なくとも含む組成物を意味する。
酸変性ポリオレフィン樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂の種類は特に限定されないが、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン−プロピレン共重合体、塩素化プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加体(SEPS)等が挙げられる。好ましくはプロピレン単独重合体又はプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体である。
酸変性ポリオレフィン樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂の分子量も、特に限定されないが、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定した、各々のポリオレフィンの検量線で換算した重量平均分子量Mwは、通常1000以上、好ましくは30000、より好ましくは50000であり、通常500000以下、好ましくは300000、より好ましくは250000、さらに好ましくは200000である。
酸変性に用いられる有機酸の種類としては、飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸、又はこれらの誘導体(無水物等)等が挙げられるが、不飽和カルボン酸若しくはこれらの誘導体が好ましい。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸等が挙げられるが、中でも無水マレイン酸が特に好ましい。
有機酸によるポリオレフィン樹脂の酸変性方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。具体的にはポリオレフィン樹脂に、有機酸とジクミルペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等の公知の有機過酸化物を添加し、溶融混練する方法が挙げられる。なお、ポリオレフィン樹脂を酸変性するほか、市販されている酸変性ポリオレフィン樹脂組成物を用いてもよく、例えば三菱化学株式会社製MODIC P958が好適なものとして例示することができる。
酸変性において添加する有機酸及び有機過酸化物の添加量は、上記(A)〜(C)の条件を全て満たすことができれば特に限定されないが、有機酸の添加量は、ポリオレフィン樹脂に対し通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上であり、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは5.0以下である。有機過酸化物の添加量は、ポリオレフィン樹脂に対し通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上であり、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは5.0以下である。
酸変性ポリオレフィン樹脂の酸変性度は特に限定されないが、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、通常1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
本発明の製造方法に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、下記(A)の条件を満たすことを特徴とする。
(A)酸変性ポリオレフィン樹脂組成物のアセトン可溶分除去後の下記式(1)で表される赤外吸収スペクトル強度比が0.1〜1.2
式(1)中の「1710cm−1のピーク面積」とは、具体的には1660cm−1における値から1730cm−1における値までの直線をベースラインとし、かかるベースラインと1660〜1730cm−1の範囲のスペクトル線によって囲まれる部分の面積を意味するものとする。また、「1780cm−1のピーク面積」とは、1760cm−1における値から1820cm−1における値までの直線をベースラインとし、かかるベースラインと1760〜1820cm−1の範囲のスペクトル線によって囲まれる部分の面積を意味するものとする。そして、「840cm−1のピーク面積」とは、820cm−1における値から880cm−1における値までの直線をベースラインとし、かかるベースラインと820〜880cm−1の範囲のスペクトル線によって囲まれる部分の面積を意味するものとする。
「1710cm−1のピーク面積」は、酸変性に用いた有機酸のカルボニル基に、「1780cm−1のピーク面積」は、酸変性に用いた有機酸無水物のカルボニル基に由来するものと考えられ、「840cm−1のピーク面積」は、ポリオレフィン樹脂に由来するものと考えられる。従って、式(1)で表される赤外吸収スペクトル強度比は、ポリオレフィン樹脂と付加された有機酸の量比を意味することになる。式(1)で表される赤外吸収スペクトル強度比が、0.1〜1.2の範囲内であると、炭素繊維に含浸させるマトリクス樹脂として好適な酸変性ポリオレフィン樹脂組成物となるのである。なお、赤外吸収スペクトル強度比は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上であり、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下である。
(A)の条件における赤外吸収スペクトル強度比は、「アセトン可溶分除去後」の酸変性ポリオレフィン樹脂組成物について、赤外吸収スペクトルを測定した結果であるが、酸変性ポリオレフィン樹脂組成物を常温でアセトンに接触させるものであれば、アセトンによる具体的な処理条件は特に限定されない。例えば、アセトン100g中に試料0.1gを常温で24時間浸漬し、その後、温風循環乾燥機で190℃、30分間熱処理をしてア
セトンを除去したものを、「アセトン可溶分除去後」の酸変性ポリオレフィン樹脂組成物とすることができる。
赤外吸収スペクトルの測定方法も公知の装置・条件を用いて適宜行うことができるが、例えば酸変性ポリプロピレン樹脂を、プレス成形(プレス温度:200℃)等を利用して厚さ0.2mm以下の薄膜にし、透過法FT−IR測定によって行うことが挙げられる。
(A)の条件を満たす酸変性ポリオレフィン樹脂組成物を得るためには、例えば以下の(a1)及び(a2)の少なくとも1つの観点を考慮することが好ましい。
(a1)酸変性に用いる有機酸の添加量
酸変性に用いる有機酸の添加量を増やすことによって、酸変性ポリオレフィン樹脂組成物のアセトン可溶分除去後の赤外吸収スペクトル強度比を大きくすることができる。
(a2)酸変性に用いる有機過酸化物の添加量
酸変性に用いる有機過酸化物の添加量を増やすことによって、酸変性ポリオレフィン樹脂組成物のアセトン可溶分除去後の赤外吸収スペクトル強度比を大きくすることができる。
本発明の製造方法に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、下記(B)の条件を満たすことを特徴とする。
(B)前記式(1)で表される赤外吸収スペクトル強度比について、アセトン可溶分除去後の値をアセトン可溶分の除去前の値で除した赤外吸光スペクトル強度比保持率が0.7〜1.0
「アセトン可溶分」とは、具体的には遊離した有機酸残渣、有機過酸化物残渣等が該当するものと考えられるが、樹脂中の有機酸残渣や有機過酸化物残渣は、スタンピング成形時の揮散ガス流出の原因となり、成形体表面の白化を引き起こす可能性がある。「アセトン可溶分除去後の値をアセトン可溶分の除去前の値で除した赤外吸光スペクトル強度比保持率」が0.7〜1.0の範囲内であると、有機酸残渣等が適度に除去されており、成形体表面の白化を防止することができるのである。なお、「アセトン可溶分除去後の値をアセトン可溶分の除去前の値で除した赤外吸光スペクトル強度比保持率」は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.75以上であり、上限はなく1.0に近いものほど好ましい。
(B)の条件を満たす酸変性ポリオレフィン樹脂組成物を得るためには、例えば以下の(b1)及び(b2)の少なくとも1つの観点を考慮することが好ましい。
(b1)溶融反応時の未反応物の除去
酸変性ポリオレフィン樹脂を溶融反応によって製造する際に、シリンダーに設けられたベント口より、減圧ポンプ等により未反応物を除去することにより、遊離した有機酸若しくはその残渣、又は有機過酸化物若しくはその残渣を低減させることができる。
(b2)反応後の未反応物の除去
製造された酸変性ポリオレフィンから、溶媒洗浄法、溶解再沈殿法、脱揮混練法、熱風乾燥法、及び希釈法などの中から選ばれる1つ以上の方法を組み合わせて未反応物を除去することができる。
本発明の製造方法に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、下記(C)の条件を満たすことを特徴とする。
(C)ASTM D−1238に準拠した、荷重:2.16kg、温度:230℃における樹脂の流動性指標MFRが10〜200g/10min
酸変性ポリプロピレン樹脂の流動性指標MFRが10g/10min未満であると、炭素繊維への含浸性が不十分となり、200g/10min超過であると、樹脂の分子量が低く、脆くなるため、マトリクス樹脂として適さないことになる。なお、流動性指標MFRは、好ましくは10g/10min以上、より好ましくは40g/10minであり、
好ましくは200g/10min以下、より好ましくは150g/10min以下である。
(C)の条件を満たす酸変性ポリオレフィン樹脂組成物を得るためには、例えば以下の(c1)〜(c3)の少なくとも1つの観点を考慮することが好ましい。
(c1)ポリオレフィン樹脂の選択
酸変性ポリオレフィン樹脂組成物に用いるポリオレフィン樹脂について、MFRが大きいものを選択すると、酸変性ポリオレフィン樹脂組成物のMFRも大きくすることができる。
(c2)酸変性に用いる有機過酸化物の添加量
酸変性に用いる有機過酸化物の添加量を増やすことによって、酸変性ポリオレフィン樹脂組成物のMFRを大きくすることができる。
(c3)酸変性時の酸化防止剤の添加
酸変性時における過度のMFRの増大を抑制するために、有機過酸化物の添加時、またはそれ以降の任意の段階で公知の酸化防止剤を添加することも好ましく用いられる。
本発明の製造方法に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は、前述した酸変性ポリオレフィン樹脂のほか、未変性ポリオレフィン樹脂を含むものであってもよい。未変性ポリオレフィン樹脂を含む場合の未変性ポリプロピレン樹脂の含有率は特に限定されないが、通常0重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上であり、通常98重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。なお、未変性ポリオレフィン樹脂としては、前述したポリオレフィン樹脂が挙げられる。
また、製造する炭素繊維樹脂複合材成形体の用途に応じて、酸変性ポリオレフィン樹脂組成物には、難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等を添加しておくこともできる。
以下、本発明の製造方法に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法について、ポリプロピレンを用いた場合の具体例を挙げて説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
(溶融法)
ベント付き二軸押出し機に、ポリプロピレン、重合性有機酸(無水マレイン酸等)、及び有機過酸化物を投入し、従来公知の条件で溶融混練して酸変性ポリプロピレンを製造する。また、原料に酸化防止剤を適宜添加してもよい。ここで、原料の投入位置は、全原料を最上流のホッパーから投入する、有機過酸化物と酸化防止剤を下流のサイドフィーダーから分割投入する等、所望の酸変性度、MFRのものを得るために最適な組み合わせを選択しうる。
(溶液法)
ポリプロピレン単独重合体、無水マレイン酸、有機過酸化物を、オートクレーブ中でトルエン等の無反応性溶媒中に仕込み、有機過酸化物の分解温度まで昇温し、反応させる。溶液を冷却した後、メチルエチルケトン等の貧溶媒中に抜出し、析出した樹脂を濾過して溶媒と分離した後乾燥させる。
以下、本発明の製造方法に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂組成物の揮散成分の除去方法について、ポリプロピレンを用いた場合の具体例を挙げて説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
(溶解再沈殿法)
酸変性ポリプロピレン樹脂を溶解する溶媒(例:熱キシレン等)に溶解した後、貧溶媒中に放ち、濾別により樹脂と溶媒可溶分とを分離する。この後、この作業を複数回繰り返
してもよく、また、析出物を単に貧溶媒に浸漬して洗浄を複数回繰り返してもよい。
濾別した後、乾燥して所望の酸変性ポリプロピレン樹脂を得る。
(脱揮混練法)
酸変性ポリプロピレン樹脂をベント付き2軸押出機で溶融混練し、ベントを減圧(任意であるがゲージ圧<−0.03MPaとすることが望ましい)にすることで、揮散成分を除去し、押出機から出てくるストランドをカッティングして所望の酸変性ポリプロピレン樹脂ペレットを得る。
(希釈法)
酸変性ポリプロピレン樹脂を、その性能が損なわれない範囲内で、未変性ポリプロピレン樹脂と溶融混練し、所望の酸変性ポリプロピレン樹脂を得る。ここで、押出機として、前述のベント付き2軸押出機を用いてもよいし、ベントのない単軸押出機を用いてもよい。
(加熱乾燥法)
酸変性ポリプロピレン樹脂を、外気導入式の乾燥機内で熱風気流化、又は真空乾燥機内で減圧下に樹脂の融点以下の温度に加熱することで、揮散成分を除去して所望の樹脂を得る。外気導入式の場合、窒素等のイナートガスを用いてもよい。樹脂の劣化を抑制するためには、120℃以下、望ましくは100℃以下での加熱を選択する。
揮散成分の除去という観点からは、溶解再沈殿法が最も効果的であるが、生産性という観点からは加熱乾燥法、希釈法が好ましく用いられる。
<炭素繊維>
本発明の製造方法によって製造される炭素繊維樹脂複合材成形体は、炭素繊維を含むものであるが、無機繊維、有機繊維、金属繊維、又はこれらの組み合せたハイブリット構成の強化繊維を含むものであってもよい。
無機繊維としては、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステル等が挙げられる。
金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維を挙げられ、また金属を被覆した炭素繊維でもよい。
また、これらの平均繊維直径は、1〜50μmであることが好ましく、5〜20μmであることがさらに好ましい。なお、炭素繊維の平均単繊維繊度は、好ましくは0.5dtex以上、より好ましくは0.8dtex以上であり、好ましくは2.4dtex以下、より好ましくは2.2dtex以下である。
<炭素繊維樹脂複合材>
本発明の製造方法は、炭素繊維及び酸変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる炭素繊維樹脂複合材又はその積層体をスタンピング成形する成形工程を含むものであるが、成形前の炭素繊維樹脂複合材の調製方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。
例えば、フィルム状とした酸変性ポリオレフィン樹脂組成物を2枚準備し、その2枚の間に炭素繊維をシート状に並べた炭素繊維シートを挟み込み、加熱及び加圧を行うことにより得ることができる。より具体的には、2つのロールから酸変性ポリオレフィン樹脂組成物フィルム2枚を送り出すとともに、別のロールから供給される炭素繊維シートを2枚の酸変性ポリオレフィン樹脂組成物フィルムの間に挟み込ませ、加熱及び加圧することによって行う。加熱及び加圧する手段としては、公知のものを用いることができ、熱ロールを利用したり、予熱装置と熱ロールの対を複数使用したりするなどの多段階の工程を要す
るものであってもよい。ここで、フィルムを構成する酸変性ポリオレフィン樹脂組成物は1種類である必要はなく、別の種類の酸変性ポリオレフィン樹脂組成物からなるフィルムを、上記のような装置を用いてさらに積層させてもよい。
なお、加熱温度は、酸変性ポリオレフィン樹脂の種類にもよるが、通常、100〜400℃である。一方、圧力は、通常0.1〜10MPaである。この範囲であれば、炭素繊維の間に酸変性ポリオレフィン樹脂組成物を十分に含浸させることができる。
成形前の炭素繊維樹脂複合材の具体的な形態・物性等も特に限定されないが、炭素繊維樹脂複合材中の炭素繊維の体積含有率(Vf)は、通常10体積%以上、好ましくは15体積%以上、より好ましくは20体積%以上であり、通常55体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは45体積%以下である。炭素繊維の体積含有率(Vf)が55%以下であれば、十分な流動性を確保することができ、体積含有率(Vf)の値が低いほど流動性は向上するが、体積含有率(Vf)の値が10%未満では構造材に必要な力学特性は得られない。なお、炭素繊維の体積含有率(Vf)は、JIS K7075に準拠した方法により測定することができる。
成形前の炭素繊維樹脂複合材は、厚さ50〜200μmのシート状であることが好ましく、厚さは60μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることがさらに好ましい。また、厚さは150μm以下であることがより好まし100μm以下であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、炭素繊維への樹脂の含浸性と生産性のバランス上好ましい。
炭素繊維樹脂複合材は、炭素繊維が一方向に配向したものであることが好ましい。炭素繊維が一方向に配向したものであると、力学特性にばらつきを生じ難くなる。
炭素繊維樹脂複合材が、炭素繊維が一方向に配向したものである場合、炭素繊維樹脂複合材は炭素繊維を断ち切るための切込を有することが好ましい。一般に炭素繊維樹脂複合材に含まれる炭素繊維の長さは、長いほど力学特性に優れるものの、スタンピング成形時の流動性は低下する。スタンピング成形時の流動性向上のためには、炭素繊維をある長さに切断することが効果的であり、このことによりリブやボスといった複雑な3次元形状にも流動する炭素繊維樹脂複合材を得ることができる。なお、「炭素繊維を断ち切るための切込」とは、炭素繊維を断ち切る深さを有し、さらに炭素繊維の配向方向とは異なる方向に伸びる切込であることを意味する。
スタンピング成形時の流動性は、切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度(θ)のみならず、1mあたりの切込長の総和(la)に依存する。θが大きいほど繊維間のせん断力が小さくなるために流動性が高く、laが大きいほど炭素繊維樹脂複合材中の切断部分が多いため流動性が高くなる。平板のスタンピング成形の場合、θは25°以上が好ましく、laは10m/mが好ましい。さらにリブなど複雑形状のスタンピング成形の場合、θは30°以上が好ましく、laは20m/m以上が好ましい。
曲げ強度、曲げ弾性率に代表される力学物性は、切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度(θ)のみならず、1mあたりの切込長の総和(la)に依存する。θが小さいほど機械物性が高いことが知られており、またlaが小さいほど炭素繊維樹脂複合材中の切断部分が少ないために高い力学物性が得られる。例えば自動車の準構造部材に利用するためには、θが60°以下が好ましく、laは200m/m以下が好ましい。またさらに高い力学強度が求められる構造部材に用いるためには、θは60°以下が好ましく、laは150m/m以下が好ましい。
切込を施した炭素繊維樹脂複合材を製造する時間や製造コストは、切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度(θ)のみならず、1mあたりの切込長の総和(la)に大きく依存する。θが小さく、かつlaが大きい場合であって、カッティングプロッタで切断する場合には切込加工に有する時間が長大になる。また打ち抜きで切込を加工する場合には、打ち抜き刃の製造コストが膨大になるだけでなく、打ち抜く際に強化繊維方向に裂け目が生じやすく、隣接する切込間でシートの欠落が生じる。このため、θは30°以上が好ましく、laは200m/m以下が好ましい。さらに切込加工後の積層工程を考慮すると、θは30°以上が好ましく、laは150m/m以下がさらに好ましい。
切込の形状は特に限定されず、例えば図1に示されるような直線状のほか、図2に示されるような直線状の中心線に沿った曲線状であってもよい。
切込が直線状である場合、切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度(θ)は、通常30°以上、好ましくは35°以上、さらに好ましくは40°以上であり、通常60°以下、好ましくは55°以下、さらに好ましくは50°以下である。また、炭素繊維樹脂複合材1mあたりの切込長の総和(la)は、通常20m/m以上、好ましくは25m/m以上、さらに好ましくは30m/m以上であり、通常150m/m以下、好ましくは100m/m以下、さらに好ましくは80m/m以下である。
切込が直線状の中心線に沿った曲線状である場合、切込曲線をその中心線に投影した投影線に重なりがない形状であることが好ましい。「切込曲線をその中心線に投影した投影線に重なりがない形状」としては、例えば中心線をx軸とした場合、y=sinxで表せるサインカーブ状が挙げられる。
また、切込が直線状の中心線に沿った曲線状である場合、中心線の方向と炭素繊維の配向方向とのなす角度(θ)は、通常30°以上、好ましくは35°以上、さらに好ましくは40°以上であり、通常60°以下、好ましくは55°以下、さらに好ましくは50°以下である。また、炭素繊維樹脂複合材1mあたりの切込長の総和(la)は、通常20m/m以上、好ましくは25m/m以上、さらに好ましくは30m/m以上であり、通常150m/m以下、好ましくは100m/m以下、さらに好ましくは80m/m以下である。
切込の深さ(炭素繊維樹脂複合材の厚さ方向)は特に限定されないが、通常炭素繊維樹脂複合材の厚さの90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の深さであり、100%切り込まれたものも好ましく使用される。
また、切込の表面に対する角度も特に限定されないが、通常80°以上、好ましくは85°以上であり、最も好ましくは90°である。
このような切込であると、強化繊維を切断できるとともに、炭素繊維樹脂複合材の力学物性を十分に確保することができる。
切込の形成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができるが、具体的にはレーザーマーカー、カッティングプロッタ、打抜型等が挙げられえる。レーザーマーカーを用いると複雑な切込を高速に形成することができ、カッティングプロッタを用いると2m以上の大判の炭素繊維樹脂複合材を加工でき、打抜型を用いると高速に形成することができるという効果がある。
炭素繊維樹脂複合材が炭素繊維を断ち切る切込を有する場合、断ち切られた炭素繊維の長さは特に限定されないが、通常10mm以上、好ましくは15以上、より好ましくは20mm以上であり、通常50mm以下、好ましくは45mm以下、より好ましくは40mm以下である。上記範囲内であれば、十分な力学物性とスタンピング成形時のリブ等の薄肉部への流動を両立させることができる。
<積層体>
本発明の製造方法は、炭素繊維及び酸変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる炭素繊維樹脂複合材又はその積層体をスタンピング成形する成形工程を含むものであるが、積層体は前述した炭素繊維樹脂複合材を積層したものであれば、積層する炭素繊維樹脂複合材の数は限定されない。炭素繊維樹脂複合材の数は、通常2枚以上、好ましくは4枚以上、より好ましくは8枚以上であり、通常200枚以下、好ましくは150枚以下、より好ましくは100枚以下である。
また、積層体における炭素繊維複合材の積層方法も特に限定されない。例えば、積層する炭素繊維樹脂複合材の炭素繊維が一方向に配向したものである場合、炭素繊維の配向が直角となるように交互に積層したものであると、強度の異方性を小さくことができる。一方、炭素繊維の配向が擬似等方となるように積層したものであるとプレス時の流動の異方性を小さくすることができる。
積層体は、前述した炭素繊維樹脂複合材を含むものであれば、その他の層を含むものであってもよく、例えば熱可塑性樹脂からなる層を含むことが好ましく、特に炭素繊維樹脂複合材の間に熱可塑性樹脂からなる層を積層することが好ましい。熱可塑性樹脂からなる層を積層することが、プレス時の流動性をさらに向上する。熱可塑性樹脂としては、炭素繊維樹脂複合材に含まれるマトリクス樹脂と同種のもの、又はポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、変性ポリオレフィン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ABS、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステル、アクリロニトリルとスチレンの共重合体等が好ましく用いることができる。
積層体における炭素繊維樹脂複合材同士は、取扱いが容易になる観点から、接着されていることが好ましい。炭素繊維樹脂複合材同士の接着方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができるが、具体的には、熱溶着、振動溶着、熱プレス、又は加熱ロールプレスを用いることが好ましい。例えば、超音波溶着機(日本エマソン株式会社製、製品名:2000LPt)を好適に利用することができる。
<成型工程>
本発明の製造方法は、炭素繊維及び酸変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる炭素繊維樹脂複合材又はその積層体をスタンピング成形する成形工程を含むものであるが、スタンピング成形を行うための装置や具体的条件等は特に限定されず、公知の内容を適宜することができる。
例えば、加熱プレス機に所望の形状を有する金型を配置して、実施することができる。金型の材質も特に限定されず、スタンピング成形で用いられるものを採用することができ、金属製のいわゆる金型を用いることができる。
本発明に係る成型工程の加熱条件は、酸変性ポリオレフィン樹脂の種類等によって適宜選択されるべきものであるが、100〜400℃が好ましく、150〜350℃がより好ましい。また、加熱に先立って、予備加熱を行ってもよい。予備加熱の温度は、通常150〜400℃、好ましくは200〜380℃である。
本発明に係る成型工程の加圧条件は、好ましくは0.1〜10MPaであり、より好ましくは0.2〜2MPaである。この圧力については、プレス力を積層体の面積で除した値とする。
本発明に係る成型工程の成形時間(加熱及び加圧している時間)は、0.1〜30分間であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜10分間である。また、成形後の冷却時間は、0.5〜30分間であることが好ましい。
なお、成形後の炭素繊維樹脂複合材成形体の厚さは、0.5〜10mmであることが好ましい。
本発明に係る成型工程は、金型と炭素繊維樹脂複合材(積層体)との間に潤滑剤を塗布した上で実施されてもよい。潤滑剤の作用により、炭素繊維樹脂複合材に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂組成物の流動性が高まるため、炭素繊維の間への酸変性ポリオレフィン樹脂組成物の含浸が高まるとともに、炭素繊維同士との間及び炭素繊維と酸変性ポリオ
レフィン樹脂組成物との間に発生するボイドを低減することができる。
潤滑剤は、炭素繊維樹脂複合材(積層体)の片側若しくは両側の表面上、金型の片側若しくは両側の表面上、又は炭素繊維樹脂複合材(積層体)及び金型の双方の片側若しくは両側の表面上に、潤滑剤塗布装置等を利用して供給してもよく、予め金型の表面上に塗布しておいてもよい。中でも炭素繊維樹脂複合材(積層体)の両側の表面に潤滑剤が供給される態様が好ましい。
潤滑剤の種類としては、例えばシリコーン系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、又はこれらの混合物が挙げられる。シリコーン系潤滑剤としては、高温環境で用いることができる耐熱性のものが好ましく用いられる。より具体的には、メチルフェニルシリコーンオイルやジメチルシリコーンオイルのようなシリコーンオイルを挙げることができ、市販されているものを好ましく用いることができる。フッ素系潤滑剤としては、高温環境で用いることができる耐熱性のものが好ましく用いられる。そのようなものの具体例としては、パーフルオロポリエーテルオイルや三フッ化塩化エチレンの低重合物(重量平均分子量500〜1300)のようなフッ素オイルを用いることができる。
本発明の製造方法によって得られる炭素繊維樹脂複合材成形体は、破壊強度(曲げ強度)に優れる。かかる曲げ強度は、JIS K7074に基づいて測定することができる。本発明の製造方法によって得られる炭素繊維樹脂複合材成形体の曲げ強度は、通常250MPa以上、好ましくは300MPa以上である。
以下、実施例により本発明の具体的態様を詳細に説明するが、本発明が実施例の態様のみに限定されないことは言うまでもない。
(赤外吸光スペクトル強度比の測定)
酸変性ポリプロピレン樹脂を200℃で薄膜(厚さ0.2mm以下)にプレス成形し、赤外吸光スペクトルを測定した。赤外吸光スペクトルの測定には、サーモサイエンティフィック社製Nicolet Magna550に検出器としてDTGS検出器を装着して、分解能4.0cm−1で透過法FT−IR測定を行った。得られた吸収ピークのうち、(a)820〜880cm−1のピーク面積(以下、「840cm−1のピーク面積」と略す場合がある。)をポリプロピレン量の基準として、
(b)1660〜1730cm−1のピーク面積(以下、「1710cm−1のピーク面積」と略す場合がある。)、及び1760〜1820cm−1のピーク面積(以下、「1780cm−1のピーク面積」と略す場合がある。)の合計を添加された無水マレイン酸残基、遊離の無水マレイン酸残渣、及び有機過酸化物残渣の指標として、(b)を(a)で割った値を赤外吸光スペクトル強度比とした。
即ち、下記式(1)によって算出される値である。
(酸変性ポリオレフィン樹脂組成物のアセトン可溶分除去)
酸変性ポリプロピレン樹脂を200℃で薄膜(厚さ0.2mm以下)にプレス成形し、この試料片0.1gを、常温でアセトン100g中に24時間浸漬し、試料片中の遊離の無水マレイン酸残渣、及び有機化酸化物残渣を除去した。その後、190℃の温風循環乾燥機で30分間熱処理をしてアセトンを除去した。
(赤外吸光スペクトル強度比保持率)
前述の「酸変性ポリオレフィン樹脂組成物のアセトン可溶分除去」を行った後の試験片
について「赤外吸光スペクトル強度比の測定」を行って得られた値を、アセトン可溶分の除去前の試験片について「赤外吸光スペクトル強度比の測定」を行って得られた値で除して、赤外吸光スペクトル強度比保持率を得た。
(流動性指標MFRの測定)
ASTM D−1238に準拠して、荷重:2.16kg、温度:230℃で測定した。
(酸変性ポリオレフィン樹脂組成物)
(a)m−PP1:三菱化学株式会社製 製品名:MODIC P958
(b)m−PP2:三菱化学株式会社製 製品名:MODIC P958を80℃、16
時間外気導入式熱風乾燥機で乾燥した。
(c)m−PP3:日本ポリプロ株式会社製SA06GA 75質量部と上記m−PP2 25質量部とをベント付き2軸押出機(日本製鋼所株式会社製TEX30SST−42BW−7V)を用いて、シリンダー温度180〜200℃、スクリュー回転数=200rpm、押し出し量=15kg/hrで溶融混練することにより製造した。
得られた樹脂組成物のストランドは、ペレタイザーによりペレット化した。
(d)m−PP4:未変性ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製SA06GA、MFR=60g/10min)90質量部と上記酸変性ポリプロピレン樹脂m−PP2
10質量部とをベント付き2軸押出機(日本製鋼所株式会社製TEX30SST−42BW−7V)を用いて、シリンダー温度180〜200℃、スクリュー回転数=200rpm、押し出し量=15kg/hrで溶融混練することにより製造した。
得られた樹脂組成物のストランドは、ペレタイザーによりペレット化した。
(e)m−PP5:未変性ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製EA9、MFR=0.5g/10min)50質量部と上記酸変性ポリプロピレン樹脂m−PP2 50
質量部とをベント付き2軸押出機(日本製鋼所株式会社製TEX30SST−42BW−7V)を用いて、シリンダー温度180〜200℃、スクリュー回転数=200rpm、押し出し量=15kg/hrで溶融混練することにより製造した。
得られた樹脂組成物のストランドは、ペレタイザーによりペレット化した。
(f)m−PP6:未変性ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製EA9、MFR=0.5g/10min)100質量部に酸性分として無水マレイン酸2質量部、有機過酸化物としてジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(アルケマ吉富株式会社製 ルペロックスF90P)2質量部を、ベント付き2軸押出機(日本製鋼所株式会社製TEX30SST−42BW−7V)を用いて、シリンダー温度170℃、スクリュー回転数=300rpm、押し出し量=15kg/hrで溶融混練することにより製造した。
得られた樹脂組成物のストランドは、ペレタイザーによりペレット化し、オートクレーブ中で樹脂量に対して6倍量のアセトン/n−ヘプタン等量混合溶媒に85℃、2時間浸漬した後、アセトン洗浄した。更に樹脂量に対して10倍量のアセトンに常温で12時間浸漬した後樹脂を分離し、130℃で6時間乾燥することで製造した。
(g)m−PP7:酸成分である無水マレイン酸の添加量を0.7質量部、有機過酸化物であるジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンの添加量を1質量部にした以外は、m−PP6と同様の操作を行い製造した。
酸変性ポリオレフィン樹脂組成物m−PP1〜m−PP8の「アセトン可溶分の除去前の赤外吸光スペクトル強度比」、「アセトン可溶分除去後の赤外吸光スペクトル強度比」、「赤外吸光スペクトル強度比保持率」、「流動性指標MFR」を表1に示す。
(実施例1)
炭素繊維(三菱レイヨン製、製品名:パイロフィルTR−50S15L)を、炭素繊維の方向が一方向となるように平面状に引き揃えて、目付が72.0g/mである炭素繊維シートとした。この炭素繊維シートの両面を、酸変性ポリプロピレン樹脂製のフィルム(酸変性ポリプロピレン樹脂:m−PP2、目付:36.4g/m)で挟み、カレンダロール(温度:230℃)を複数回通して、酸変性ポリプロピレン樹脂を炭素繊維シートに含浸し、繊維体積含有率(Vf)が33%、厚さが、0.12mmのプリプレグ(炭素繊維樹脂複合材)を得た。
得られたプリプレグを、300mm角に切り出し、カッティングプロッタ(レザック製、製品名:L−2500)を用いて図1に示すように一定間隔で切込を入れた。その際、シートの端部より5mm内側部分を除き、炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=20.0mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=30°の切込加工を施した。この際1mあたりの切込長の総和la=80.0mであった。
またシート一枚を切込加工する時間を測定して、切込加工時間と定義した。
このようにして得られた切込入りプリプレグ16層を疑似等方([0/45/90/−45]s2)に重ね、超音波溶着機(日本エマソン株式会社製、製品名:2000LPt)でスポット溶接して積層体を作製した。
このようにして得たられた積層体を300mm角で深さ1.5mmの印籠金型内に配置して加熱し、圧縮成形機(神藤金属工業所製、製品名:SFA−50HH0)を用いて、高温側プレスにて220℃、油圧指示0MPaの条件で7分間保持し、次いで同一温度にて油圧指示2MPa(プレス圧0.55MPa)の条件で7分間保持後、金型を冷却プレスに移動させ、30℃,油圧指示5MPa(プレス圧1.38MPa)にて3分間保持することで成形品を得た。
得られた成形品は、炭素繊維のうねりがなく、その端部まで炭素繊維が均等に流動しており、ソリもなく、良好な平滑性を保っていた。
(成形外観の判定)
成形品の上下両面を目視で観察し、成形品表面に連続した1cm以上の白化領域が認められるものは外観不良(×)とし、顕著な白化が認められないものを良好(○)とした

本実施例の成形品は、良好(○)であった。
得られた成形品から、長さ100mm,幅25mmの曲げ強度試験片を切り出した。JIS K−7074に規定する試験方法に従い、万能試験機(インストロン社製、製品名:4465型)を用いて、標点間距離を80mmとし、クロスヘッド速度5.0mm/分で3点曲げ試験を行った。測定した試験片の数はn=6とし、その全平均値を曲げ強度とした。
得られた成形品から、縦78mm、横78mmの板状物を2枚切り出した。その板状物を2枚重ねて、ミニテストプレス(東洋精機製、製品名:MP−2FH)を用いて230℃で10分間加熱後、145℃、10MPa条件で60秒間プレスした。プレス成形前後での厚みを測定し、初期厚みを最終厚みで除すことにより流動性の評価とした。
実施例1の評価結果を表2に示す。実施例1の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間ともに良好であった。
(実施例2)
炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=40.0mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=30°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=80.0mであった。
評価結果を表2に示す。実施例2の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間ともに良好であった。
(実施例3)
炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=60.0mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=30°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=80.0mであった。
評価結果を表2に示す。実施例3の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間ともに良好であった。
(実施例4)
炭素繊維の長さL=37.5mm一定、平均切込長l=40.0mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=30°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=53.3mであった。
評価結果を表2に示す。実施例4の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間ともに良好であった。
(比較例1)
酸変性ポリプロピレン樹脂としてm−PP1を用い、炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=86.4mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=10°の切込加工を施した。
しかしながらカッティングプロッタでは刃が滑り、切込加工を施すことができなかった。
(比較例2)
酸変性ポリプロピレン樹脂としてm−PP1を用い、炭素繊維の長さL=25.0mm
一定、平均切込長l=77.3mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=15°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=154.5mであった。
評価結果を表2に示す。比較例2の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、加工時間は良好であったが、外観が不良であり、流動性が不十分であった。
(比較例3)
酸変性ポリプロピレン樹脂としてm−PP1を用い、炭素繊維の長さL=12.5mm一定、平均切込長l=40.0mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=30°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=160.0mであった。
評価結果を表2に示す。比較例3の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性は良好であったが、外観が不良であり、加工時間が長大であった。
(実施例5)
炭素繊維の長さL=12.5mm一定、平均切込長l=28.3mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=45°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=113.1mであった。
評価結果を表2に示す。実施例5の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間ともに良好であった。
(実施例6)
炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=14.1mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=45°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=56.6mであった。
評価結果を表2に示す。実施例6の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間ともに良好であった。
(実施例7)
炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=28.3mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=45°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=56.6mであった。
評価結果を表2に示す。実施例7の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間ともに良好であった。
(実施例8)
炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=42.4mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=45°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=56.6mであった。
評価結果を表2に示す。実施例8の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間ともに良好であった。
(実施例9)
炭素繊維の長さL=37.5mm一定、平均切込長l=28.3mmになるように、繊
維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=45°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=37.7mであった。
評価結果を表2に示す。実施例9の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間ともに良好であった。
(実施例10)
炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=23.1mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=60°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=46.2mであった。
評価結果を表2に示す。実施例10の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間ともに良好であった。
(比較例4)
酸変性ポリプロピレン樹脂としてm−PP1を用い、炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=20.0mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=90°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=40.0mであった。
評価結果を表2に示す。比較例4の成形品は、流動性と加工時間は良好であったが、外観が不良であり、曲げ強度と曲げ弾性率が低かった。
(実施例11)
炭素繊維の長さL=50.0mm一定、平均切込長l=42.4mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=45°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=28.3mであった。
評価結果を表2に示す。実施例11の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間ともに良好であった。
(比較例5)
酸変性ポリプロピレン樹脂としてm−PP1を用い、炭素繊維の長さL=100.0mm一定、平均切込長l=42.4mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=45°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=14.1mであった。
評価結果を表2に示す。比較例5の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、加工時間ともに良好であったが、外観と流動性が不十分であった。
(実施例12)
炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=42.4mmになるよう、炭素繊維に対する角度θ=30°のX軸に対して、y=sin(0.5X)mmとしたサインカーブ状の切込加工を施した(図2)以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=84.9mであった。
評価結果を表2に示す。実施例12の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間、外観ともに良好であった。
(実施例13)
炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=34.6mmになるよう、強化繊維に対する角度θ=45°のX軸に対して、y=2.0sin(0.5X)mmとしたサインカーブ状の切込加工を施した(図2)以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=69.2mであった。
評価結果を表2に示す。実施例13の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間、外観ともに良好であった。
(実施例14)
切込加工をレーザーマーカー(パナソニック電工SUNX社製、製品名:LP−S500)で行い、炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=42.4mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=45°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=56.6mであった。
評価結果を表2に示す。実施例14の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間、外観ともに良好であった。
(実施例15)
切込加工を特別に作製した抜型と圧縮成形機(神藤金属工業所製、製品名:SFA−50HH0)で行い、炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=42.4mmになるように、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=45°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=56.6mであった。
評価結果を表2に示す。実施例15の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間、外観ともに良好であった。
(実施例16)
一方向に炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:パイロフィルTR−50S15L)を平面状に引き揃えて、目付が78.0g/mとなる炭素繊維シートとし、炭素繊維シートの両面を、酸変性ポリプロピレン樹脂m−PP2からなる目付が36.4g/mのフィルムで挟み、カレンダロールを複数回通して、酸変性ポリプロピレン樹脂を炭素繊維シートに含浸し、繊維体積含有率(Vf)が35%、厚さが、0.12mmのプリプレグを得た。
このプリプレグを炭素繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=42.4mmになるよう、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=45°の切込加工を施した以外は、実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=56.6mであった。
評価結果を表2に示す。実施例16の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、流動性、加工時間、外観ともに良好であった。
(比較例6)
一方向に炭素繊維(三菱レイヨン製、製品名:パイロフィルTR−50S15L)を平面状に引き揃えて目付が93.0g/mとなる炭素繊維シートとし、炭素繊維シートの片面を、酸変性ポリプロピレン樹脂m−PP1(三菱化学株式会社製、製品名:MODIC P958)からなる目付が36.4g/mのフィルムとをあわせ、カレンダロール
を複数回通して、酸変性ポリプロピレン樹脂を炭素繊維シートに含浸し、繊維体積含有率(Vf)が56%、厚さが、0.09mmのプリプレグを得た。
このプリプレグを強化繊維の長さL=25.0mm一定、平均切込長l=42.4mmになるよう、繊維を切断する切込方向と炭素繊維の配向方向のなす角度θ=45°の切込加工を施し、24層を疑似等方([0/45/90/−45]s3)に積層した以外は、
実施例1と同様の方法で積層体とその成形品を作製し、評価を行った。この際1mあたりの切込長の総和la=56.6mであった。
評価結果を表2に示す。比較例6の成形品は、曲げ強度、曲げ弾性率、加工時間ともに良好であったが、外観と流動性が不十分であった。
(実施例17)
酸変性ポリプロピレン樹脂としてm−PP3を用いた以外は実施例1と同様の試験を行った。
機械的特性、及び流動性は良好であり、外観評価結果も良好(○)であった。
(比較例7)
酸変性ポリプロピレン樹脂としてm−PP1を用いた以外は実施例1と同様の試験を行った。
機械的特性、及び流動性は実施例1と同様に良好であったが、積層体表面が白化しており、外観評価結果は不良(×)であった。
(比較例8)
酸変性ポリプロピレン樹脂としてm−PP6を用いた以外は実施例1と同様の試験を行った。
流動性、及び機械的特性は実施例1と同様に良好であったが、外観評価結果は不良(×)であった。酸変性量が高すぎるため、積層体が吸湿したものと思われる。
(比較例9)
酸変性ポリプロピレン樹脂としてm−PP4を用いた以外は実施例1と同様の試験を行った。
流動性、及び外観評価結果は実施例1と同様に良好であったが、機械的特性は不良であった。
(比較例10)
酸変性ポリプロピレン樹脂としてm−PP5を用いて実施例1と同様にプリプレグを作製しようとしたが、樹脂が炭素繊維束の中に浸潤せず、プリプレグが作製できなかった。
(比較例11)
酸変性ポリプロピレン樹脂としてm−PP7を用いて実施例1と同様の評価を行おうとしたが、樹脂粘度が低すぎてフィルムを製膜できなかった。また、樹脂自体が非常に脆く、高強度材料のマトリクス樹脂としては不適であると判断した。
本発明によって得られる炭素繊維樹脂複合材成形体は、軽量で力学特性に優れており、電気・電子機器部品、土木・建築用部品、自動車・二輪車用部品、航空機用部品等の各種用途に用いることができる。
1 炭素繊維樹脂複合材
2 一方向に配向した炭素繊維
3 直線状の切込
4 炭素繊維の配向方向
5 切込方向と炭素繊維の配向方向とのなす角度
6 切込長
7 切込によって断ち切られた炭素繊維の長さ
8 直線状の中心線に沿った曲線状の切込
9 曲線状の切込の中心線
10 中心線の方向と炭素繊維の配向方向とのなす角度

Claims (13)

  1. 炭素繊維及び酸変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる炭素繊維樹脂複合材又はその積層体をスタンピング成形する成形工程を含む炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法において、
    前記酸変性ポリオレフィン樹脂組成物が、下記(A)〜(C)の条件を全て満たすことを特徴とする、炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法。
    (A)酸変性ポリオレフィン樹脂組成物のアセトン可溶分除去後の下記式(1)で表される赤外吸収スペクトル強度比が0.1〜1.2
    (B)前記式(1)で表される赤外吸収スペクトル強度比について、アセトン可溶分除去後の値をアセトン可溶分の除去前の値で除した赤外吸光スペクトル強度比保持率が0.7〜1.0
    (C)ASTM D−1238に準拠した、荷重:2.16kg、温度:230℃における樹脂の流動性指標MFRが10〜200g/10min
  2. 前記炭素繊維樹脂複合材中の炭素繊維の体積含有率が、20〜55体積%である、請求項1に記載の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法。
  3. 前記酸変性ポリオレフィン樹脂組成物が、未変性ポリオレフィン樹脂を含むものであり、酸変性ポリオレフィン樹脂組成物中の未変性ポリオレフィン樹脂の含有率が0〜98重量%である、請求項1又は2に記載の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法。
  4. 前記炭素繊維樹脂複合材が、厚さ50〜200μmのシート状である、請求項1乃至3の何れか1項に記載の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法。
  5. 前記炭素繊維樹脂複合材が、炭素繊維が一方向に配向したものである、請求項1乃至4の何れか1項に記載の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法。
  6. 前記炭素繊維樹脂複合材が、炭素繊維を断ち切るための直線状の切込を有するものであり、前記切込が下記(a)及び(b)の条件を満たすものである、請求項5に記載の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法。
    (a)切込方向と炭素繊維の配向方向とのなす角度が30°〜60°
    (b)炭素繊維樹脂複合材1mあたりの切込長の総和が20〜150m
  7. 前記炭素繊維樹脂複合材が、炭素繊維を断ち切るための直線状の中心線に沿った曲線状の切込を有するものであり、前記切込が下記(a’)〜(c’)の条件を全て満たすものである、請求項5に記載の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法。
    (a’)切込曲線をその中心線に投影した投影線に重なりがないこと
    (b’)中心線の方向と炭素繊維の配向方向とのなす角度が30°〜60°
    (c’)炭素繊維樹脂複合材1mあたりの切込長の総和が20〜150m
  8. 前記切込が、レーザーマーカー、カッティングプロッタ及び打抜型からなる群より選ばれる1種以上を用いて施されたものである、請求項6又は7に記載の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法。
  9. 前記切込によって断ち切られた炭素繊維の長さが10〜50mmである、請求項6乃至
    8の何れか1項に記載の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法。
  10. 前記積層体が、炭素繊維が一方向に配向した2以上の炭素繊維樹脂複合材を含むものであり、炭素繊維同士の配向方向が直角となるように交互に前記炭素繊維樹脂複合材を積層したものである、請求項1乃至9の何れか1項に記載の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法。
  11. 前記積層体が、炭素繊維が一方向に配向した2以上の炭素繊維樹脂複合材を含むものであり、炭素繊維同士の配向方向が擬似等方となるように前記炭素繊維樹脂複合材を積層したものである、請求項1乃至9の何れか1項に記載の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法。
  12. 前記積層体が、熱可塑性樹脂からなる層を含む、請求項1乃至11の何れか1項に記載の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法。
  13. 前記積層体における炭素繊維樹脂複合材同士が、熱溶着、振動溶着、熱プレス、及び加熱ロールプレスからなる群より選ばれる1種以上を用いて接着されている、請求項1乃至12の何れか1項に記載の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法。
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