JP2012192645A - 成形品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とした繊維強化基材よりなり、加熱溶融した際に弾性回復性を有するプリプレグを用いたプレス成形で、熱可塑性樹脂の分解によるガスの発生を抑えた成形方法を提供する。
【解決手段】以下の工程A〜Eを順に経て成形品を得る。工程A:プリプレグを、そこに含浸された熱可塑性樹脂の融点よりも50℃高い温度で溶融しない樹脂フィルムでプリプレグ表面が露出しないように挟み込む工程。工程B:樹脂フィルムで挟まれたプリプレグを、ヒーター炉内に搬送し、プリプレグに含浸された熱可塑性樹脂を、その融点以上であって、かつ樹脂フィルムが溶融しない温度に加熱し、溶融させる工程。工程C:樹脂フィルムで挟まれたプリプレグから樹脂フィルムを除去したプリプレグを金型内に搬送、配置する工程。工程D:プリプレグを金型内で加圧冷却して成形品となす工程。工程E:金型から成形品を取り出す工程。
【選択図】なし

Description

本発明は、強化繊維基材に熱可塑性樹脂が含浸されてなる成形材料を用いた成形品の製造方法に関するものであり、特に、作業性に優れ、得られた成形品の力学特性、表面外観に対して優れる、強化繊維基材に熱可塑性樹脂が含浸されてなる成形材料を用いた成形品の製造方法に関するものである。
近年、金属材料のプレス成形にて製造されていた自動車、電気・電子機器、家電製品などの各種部品・部材に代表される産業用部品の、強化繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化複合材材料への代替が進んでいる。これは、該繊維強化複合材料が高い強度を有し、軽量であるためである。ここで、プレス成形とは、加工機械および型、工具等を用いて金属、プラスチック材料、セラミックス材料などに例示される各種材料に曲げ、剪断、圧縮等の変形を与え、成形、加工をおこなう方法である。また、プレス成形は、均一な製品を大量に生産できる特徴を有するため、高速化、高精度化、品質の安定化などの要求が高く、それらを実現するために作業性、成形性の向上に関する市場の要求は非常に高い。
特に、従来の強化繊維基材にマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を含浸してなる成形材料(以下、プリプレグと略記)を用いた成形方法において、遠赤外線ヒーターを代表とする加熱装置を用いて、マトリックス樹脂の溶融温度以上に加熱して軟化溶融状態にあるプリプレグを雌雄一対からなる金型間に供給し、次いでプレス成形して所望の形状の成形品を得るプレス成形方法は周知である。強化繊維基材が不連続であったり不織布状である場合、軟化溶融状態となった時、前記プリプレグ中の強化繊維は弾性回復により膨張する。膨張したプリプレグは熱分解が起こりやすくなり、分解ガスの発生が問題となったり、成形品の力学特性や外観が低下したりするため、樹脂の熱分解を抑え、簡便な手法により力学特性および外観に優れた成形品の製造法が求められている。
特許文献1には、複合体シートの表面を熱可塑性樹脂シートまたはフィルムで被覆し、プレス成形を行う成形品の製造方法が開示されている。当該発明は複合体シートを発泡させて強化繊維を均一に分散する技術であり、フィルムは複合体シートの分解を抑制する意図で使用されていない。また、樹脂を積極的に発泡させるプロセスであり、プレス成形時の分解ガスの完全な排出が難しく、成形品内部にボイドが残る事により、満足する力学特性が得られない事がある。さらに、樹脂が発泡する事により材料とガスとの接触面積が大きくなり、樹脂の分解が促進される事も力学特性の低下につながる。
特許文献2には、加熱時に2倍以上の厚さに膨張する繊維強化熱可塑性樹脂シート材の樹脂分解を抑制するために、加熱装置内を不活性ガスで置換する方法が開示されている。しかしながら、この方法では不活性ガスを発生する装置およびこれを充填可能な特殊な加熱装置が要求され、また排気ダクトの設置等、作業環境への配慮も必要となり、かつ設備も大掛かりになる。
特許文献3には、表層部に多量の酸化防止剤を含有する樹脂を使用することで、加熱時に樹脂の酸化劣化を抑制する繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造法が開示されている。しかしながら、酸化防止剤の効果は限定的であり、膨張率の大きい繊維強化熱可塑性樹脂を用いると、繊維強化熱可塑性樹脂がスポンジ状の形態となり、外気との接触面積が増えるために酸化分解を抑えきれず、加熱中の発煙や成形品強度の低下が避けられない。また、外観に影響する最外層に多量の酸化防止剤を含むため、成形品の外観にカスレやにじみが発生する事がある。
特許文献4には、最大エネルギー波長が1〜3μmであるヒーターを用いて繊維強化複合シートを加熱し、発泡および酸化による変色を回避する熱可塑性樹脂シートの加熱成形方法が開示されている。当該発明では、ヒーターの出力波長と樹脂の吸収波長の差を適切な範囲に調整することで、樹脂の外層での熱吸収を抑え、内部まで均一に加熱できるため、表面部の酸化が抑制される。また、特許文献5には、加熱手段として高周波誘導加熱装置を使用することで、材料表面の焦げを抑える繊維強化樹脂複合材料の製造方法が開示されている。しかしながら、熱により繊維強化熱可塑性樹脂が膨張する材料の場合、前述のように外気との接触により樹脂の酸化分解が促進されるため、分解ガスが発生したり成形品の強度が低下したりするという問題があった。
特公昭61−11778号公報 特開平7−132522号公報 特開平7−196822号公報 特開平7−276490号公報 特開2008−254437号公報
従来の技術的背景に鑑み、本発明の目的は、繊維強化基材に熱可塑性樹脂を含浸されてなるプリプレグであって、加熱により軟化溶融させることで、強化繊維の弾性回復により膨張するプリプレグを用いたプレス成形において、マトリックス樹脂たる熱可塑性樹脂の分解によるガスの発生を抑え、力学特性および外観に優れた成形品を簡便に得る方法を提供するものである。
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。すなわち、
(1)強化繊維基材に熱可塑性樹脂が含浸されてなり、無加圧状態で加熱溶融した場合に膨張するプリプレグを、以下の工程(A)〜(E)を順に経ることにより成形して成形品を得る、成形品の製造方法。
工程(A):プリプレグを、そこに含浸された熱可塑性樹脂の融点よりも50℃高い温度で溶融しない樹脂フィルムでプリプレグ表面が露出しないように挟み込む工程
工程(B):樹脂フィルムで挟まれたプリプレグを、ヒーター炉内に搬送し、プリプレグに含浸された熱可塑性樹脂を、その融点以上であって、かつ樹脂フィルムが溶融しない温度に加熱し、溶融させる工程。
工程(C):樹脂フィルムで挟まれたプリプレグから樹脂フィルムを除去したプリプレグを金型内に搬送、配置する工程。
工程(D):プリプレグを金型内で加圧冷却して成形品となす工程。
工程(E):金型から成形品を取り出す工程。
(2)前記強化繊維基材を構成する繊維が、炭素繊維またはガラス繊維である、前記(1)に記載の成形品の製造方法。
(3)前記強化繊維基材を構成する繊維が、炭素繊維である、前記(1)または(2)に記載の成形品の製造方法。
(4)前記プリプレグは強化繊維基材の体積割合が、5体積%以上50体積%以下である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の成形品の製造方法。
(5)前記プリプレグに含浸された熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、ポリアミドまたはポリフェニレンスルフィドである、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の成形品の製造方法。
(6)前記樹脂フィルムが、ポリイミドまたはフッ素樹脂のフィルムである、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の成形品の製造方法。
(7)樹脂フィルムは、プリプレグの面積よりも10%以上大きい面積を有する、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の成形品の製造方法、
である。
本発明の成形品の製造方法は、無加圧状態で加熱溶融した場合に膨張するプリプレグを用いても、プレス成形をおこなう際に、フィルムにより外気とプリプレグが遮断されるため、樹脂の分解が抑制される。その結果、分解ガスの発生が低減し、分解ガスの発生によるボイドの形成が抑制されるため、成形品の力学特性が向上する。また、成形材料たるプリプレグの最表面層に熱分解を押さえるための別材料を施す必要がないため、材料本来の美麗な外観を得ることができ、これらは自動車、電気・電子機器、家電製品などの各種部品・部材、ケーシングに極めて有用である。さらに、成形装置自体に、不活性ガスの供給など、特殊な付帯設備を要求しないため、現状使用の設備を改良することなく使用でき、簡便かつ経済的である。
本発明は、強化繊維基材に熱可塑性樹脂が含浸されてなり、無加圧状態で加熱溶融した場合に膨張するプリプレグを用いて、簡便な装置で分解ガスの発生を抑え、力学特性および外観に優れる成形品を製造する方法である。まず、プリプレグの構成要素について説明した後、成形方法について説明する。
本発明におけるプリプレグとは、強化繊維基材に熱可塑性樹脂を含浸させて製造されるシート状の材料である。強化繊維基材はテープ、シート、マット、布帛、ウェブ状、一方向に引き揃えた長繊維、トウ、織物、ニット、組み紐、および10mm未満の長さにチョップした短繊維のいずれの形態をとってもよい。
強化繊維基材は、連続繊維を用いて形成されたものであっても、不連続繊維を用いて形成されたものであってもよいが、成形加工の容易さの観点から不連続繊維を用いて形成されたものが好ましい。不連続繊維としては、連続した繊維をカットしたチョップド繊維が好ましい。
強化繊維基材は、チョップド繊維束を分散させて繊維の配向をランダム化させた、ウェブ状強化繊維基材の形態であってもよい。ウェブ状強化繊維基材としては例えば、乾式法および湿式法で得られるものが挙げられ、いずれを用いてもよい。強化繊維基材の好ましい形態としては、不連続繊維で構成される形態が例示され、より好ましい形態としては、不連続繊維で構成されるウェブ状繊維基材が例示できる。
強化繊維基材を構成する繊維の繊維長は、1mm〜10mmであることが好ましく、2mm〜8mmであることがより好ましい。この範囲であると、繊維基材の結束性を維持できるため加工しやすく、かつ繊維が一定範囲流動できるため、プレス成形等で複雑形状の成形が可能である。繊維長は、カッター等でカットすることにより調整可能である。
プリプレグに含まれる強化繊維基材の繊維の繊維長の測定方法は、例えば次のようにして測定することができる。まず、プリプレグを構成する繊維と樹脂を分離する。分離する方法としては、例えばプリプレグの一部を切り出し、溶媒などを用いて結着している樹脂を溶解させ、その後濾過等により繊維を分離して測定する方法、プリプレグの一部を切り出して加熱し(例えば500℃、2時間)、熱可塑性樹脂を焼き飛ばして繊維を分離して測定する方法、が挙げられる。次に分離された繊維の繊維長を測定する。測定する方法としては、例えば、分離された繊維の一部(例えば400本)を無作為に抽出し、顕微鏡(光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡)で長さを10μm単位まで測定し、その平均値を繊維長とする方法が挙げられる。
本発明において強化繊維基材に用いられる強化繊維としては特に制限はなく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維、天然繊維、鉱物繊維などが使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。中でも、比強度および比剛性に優れ軽量化効果の高い炭素繊維と、力学特性と経済性のバランスに優れるガラス繊維が好ましく、特に炭素繊維が好ましい。
強化繊維として炭素繊維を用いる場合、例えばポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系など各種の炭素繊維が使用できるが、得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維が好ましい。これらの炭素繊維は、市販品として入手可能である。また、サイジング剤への付着性を高め均一な皮膜を形成させるために、炭素繊維には表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、液相中での薬液酸化、電解酸化、気相酸化等の処理が挙げられるが、電解酸化が、簡便かつ強度低下が抑えられるために好ましい。電解酸化においては、電解処理液中で炭素繊維を陽極として酸化処理を行う。電解処理液は特に限定されないが、硫酸、硝酸等の無機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基を有する化合物の溶液(例えば水溶液)、および、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等の無機塩の溶液(例えば水溶液)が挙げられる。
強化繊維として炭素繊維を用いる場合、通常炭素繊維の単繊維(フィラメント)が集束された形態で使用される。通常フィラメント数は、1,000〜60,000本程度である。炭素繊維の取り扱い性および開繊性の観点から、3,000〜40,000本が好ましい。より好ましくは6,000〜24,000である。炭素繊維(フィラメント)の直径は、3μm〜15μmが好ましく、より好ましくは5μm〜10μmである。炭素繊維はサイジング剤で処理されていてもよい。
本発明においてプリプレグを構成するためマトリックス樹脂として強化繊維基材に含浸される熱可塑性樹脂としては、例えば「ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などのポリアリーレンスルフィド、」などの結晶性樹脂、「スチレン系樹脂の他、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)」などの非晶性樹脂、その他、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、およびアクリロニトリル系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体および変性体等から選ばれる熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いても、複数種混合してポリマーアロイとしても良い。中でも、成形品の軽量性および力学特性の観点から、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィドが好ましく用いられ、特にポリプロピレンまたはポリアミドが好ましい。
前記熱可塑性樹脂には、発明の目的を損なわない範囲で充填材、導電性付与材、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、滑剤、離型剤、相溶化剤、分散剤、結晶核剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、発泡剤、抗菌剤、制振剤、防臭剤、摺動性改質剤、および帯電防止剤等が添加されてマトリックス樹脂とされていても良い。
本発明で用いるプリプレグにおいて、強化繊維基材の体積割合は、力学特性と成形性を両立する観点から、プリプレグ全体(100体積%)に対して、5体積%以上50体積%以下であることが好ましく、より好ましくは10体積%以上40体積%以下である。この範囲であると、樹脂の含浸性が良好でボイドが少なく力学特性に優れ、かつプリプレグが適度な流動性を持つため、形状賦形性にも優れたプリプレグとすることができる。
ウェブ状強化繊維基材は、強化繊維束(強化繊維により構成される繊維束)を、必要に応じて所望の長さに切断後、例えば湿式法あるいは乾式法で分散させることで製造できる。乾式法とは強化繊維束の分散を空気中で行う方法である。湿式法とは強化繊維束の分散を水中で行う方法である。乾式法では、開繊バーを設ける方法やさらに開繊バーを振動させる方法、さらにカードの目を細かくする方法や、カードの回転速度を調整する方法などが例示できる。湿式法でも、強化繊維を分散させる際の攪拌条件を調整する方法、濃度を希薄化する方法、溶液粘度を調整する方法、分散液を移送させる際に渦流を抑制する方法などが例示できる。これらの方法は、特に限定されるものではなく、強化繊維基材の状態を確認しながら、その他の製造条件を制御することでも達成できる。
繊維を結束させ、強化繊維基材の取り扱い性を向上させるために、強化繊維基材にはバインダーを付与してもよい。バインダーは強化繊維基材と樹脂組成物との間に介在し、両者を連結する役割を担う。バインダーの種類に特に制限はないが、通常例えば、アクリル系重合体、ビニル系重合体、ポリウレタン、ポリアミドあるいはポリエステルなどの熱可塑樹脂が挙げられる。バインダーの付着量は、強化繊維基材の炭素繊維の結束性維持と、樹脂組成物と強化繊維との接着性への干渉の観点から、強化繊維基材100質量%に対し、1〜10質量%であることが好ましい。
本発明で用いるプリプレグは、強化繊維基材にマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂を含浸させる(複合化)ことにより得られる。熱可塑性樹脂の含浸は、通常加圧および/または加熱条件下行う。加圧の条件は、0.1MPa以上40MPa以下であることが好ましく、基材の厚みや目付けにより適宜調節される。加熱温度は170〜320℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは180〜320℃の範囲であり、使用されるマトリックス樹脂により適宜設定される。加圧および加熱は、通常、マトリックス樹脂を強化繊維基材に接触させた状態で行う。例えば、マトリックス樹脂(例えば、布帛、不織布、フィルム等の形態のマトリックス樹脂)と強化繊維基材を積層し、両面から加圧および/または加熱を行う方法が挙げられる。加熱および加圧の方法としては、例えば、裁断されたシート状原料を用いて、通常のプレス装置を用いてバッチ式に行う方法、ロール状の原料を用いてダブルベルトプレスにより連続的に行う方法が挙げられる。加圧および/または加熱処理により強化繊維基材にマトリックス樹脂を含浸させた後、圧力を加えた状態で冷却し、樹脂を固化させることで、プリプレグを得ることができる。
プリプレグの厚さは、原料シートの目付けや、積層枚数により適宜に調節できる。プリプレグの取り扱い性および含浸・冷却工程のプロセス性の観点から、0.1mm〜5mmであることが好ましい。より好ましくは、0.2mm〜4mmである。
本発明は、無加圧状態で加熱溶融した場合に膨張するプリプレグに適用することにより、その効果を奏するものである。特に、無加圧状態で、含浸されている熱可塑性樹脂の融点以上にプリプレグを加熱し、熱可塑性樹脂が溶融した状態で、プリプレグの厚みが5〜15倍に膨張するプリプレグに適している。
本発明で用いられる成形は、加工機械および型、工具等を用いて金属、プラスチック材料、セラミックス材料などに例示される各種材料に曲げ、剪断、圧縮等の変形を与えて成形品を得る方法であり、一般にプレス成形と呼ばれるものである。その成形形態として絞り、深絞り、フランジ、コールゲート、エッジカーリング、型打ちなどが例示される。また、プレス成形の方法としては、型を用いて成形をおこなう金型プレス法、ラバープレス法(静水圧成形法)押出し成形法などが例示される。上記プレス成形の方法のなかでも、成形圧力、温度の自由度の観点から、金属製の型を用いて成形をおこなう金型プレス法を好ましく用いることができる。金型プレス成形方法のなかでも、プリプレグを、そこに含浸された熱可塑性樹脂の溶融温度以上に、遠赤外線ヒーター、加熱板、高温オーブン、誘電加熱などに例示される加熱装置で加熱して、熱可塑性樹脂を溶融、軟化させた状態で、成形型の下面となる型の上に配置し、次いで型を閉じて型締をおこない、その後、加圧冷却する方法、いわゆるコールドプレス法(スタンピングプレス法)に分類される。かかる成形方法では、既存のプレス成形用の設備として普及している遠赤外線ヒーターをもちいて加熱工程を行い、その後、プリプレグを人手、または搬送装置をもちいて金型まで搬送を行い、ついで、熱可塑性樹脂の固化温度以下の温度に温度調節された金型により型締めし、成形品を得ることができるため、経済性、作業性に優れる。
ここで、本発明では、工程(A)として、プリプレグを、そこに含浸させた熱可塑性樹脂の融点よりも50℃以上高い温度で溶解しない樹脂フィルムでプリプレグの表面が露出しないように挟み込む工程を採用する。ついで、工程(B)として、樹脂フィルムで挟まれたプリプレグを、ヒーター炉内に搬送し、プリプレグに含浸された熱可塑性樹脂を、その融点以上であって、かつ樹脂フィルムが溶融しない温度に加熱し、溶融させる工程を経た後、工程(C)として、樹脂フィルムで挟まれたプリプレグから樹脂フィルムを除去したプリプレグを金型内に搬送、配置する工程、次いで、工程(D)として、プリプレグを金型内で加圧冷却して成形品となす工程、工程(E)として金型から成形品を取り出す工程(いわゆる脱型工程)を順に経て成形品を製造する。
工程(A)で、プリプレグは、そこに含浸させた熱可塑性樹脂の融点よりも50℃以上高い温度で溶解しない樹脂フィルムでプリプレグの表面が露出しないように挟み込まれているので、工程(B)で、樹脂フィルムで挟まれたプリプレグを、ヒーター炉内に搬送し、プリプレグに含浸された熱可塑性樹脂を、その融点以上であって、かつ樹脂フィルムが溶融しない温度に加熱し、溶融させても、樹脂フィルムにより外気とプリプレグが遮断されるため、樹脂の分解が抑制され、 その結果、分解ガスの発生が低減し、工程(C)で、樹脂フィルムで挟まれたプリプレグから樹脂フィルムを除去したプリプレグを金型内に搬送、配置し、工程(D)で、プリプレグを金型内で加圧冷却して成形品となした後、工程(E)で脱型して得られる成形品は、分解ガスの発生によるボイドの形成が抑制されるため、成形品の力学特性が向上する。工程(A)で、プリプレグは、その表面が樹脂フィルムで露出しないように挟み込まれていれば、プリプレグの側面が露出していても本発明の効果は得られる。
樹脂フィルムとしては、工程(B)において、プリプレグに含浸された熱可塑性樹脂を溶融させるため加熱する温度で溶融しなければ、かかる温度を越える融点を有する熱可塑性樹脂や、融点を有しないような樹脂も用いることができる。かかる樹脂フィルムとしては、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、全芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)などのフィルムを例示することができる。さらに、この中でも高い融点を有することから、熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂などのフィルムが好ましい。とりわけ、高い耐熱性を有する観点からは、オリイミド(熱硬化性ポリイミドまたは熱可塑性ポリイミド)のフィルム、高い離型性を有するという観点からは、フッ素樹脂のフィルムが好ましく挙げられる。樹脂フィルムには、本発明の目的を阻害しない範囲で、各種添加剤が含まれていても良い。
フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン等、及びこれらの混合物が挙げられる。さらにフッ素樹脂として、より好ましくは、高い融点を有するテトラフルオロエチレン重合体及びこれらの混合物が挙げられる。
ここで、本発明に用いる樹脂フィルムの融点(融解温度)の測定方法について記述する。一般的な測定方法として、融点は、示差走査熱量計((株)島津製作所製、DSC−50)を用い、JISK7121−1987に準拠して測定することができる。この装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との混合物の融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。試料はアルミニウム製パンに入れ、サンプルの入ったアルミニウム製パンと対照用の空のアルミニウム製パンとをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行う。測定により得られたDSC曲線の吸熱部におけるピークトップをもって融点とする。
工程(A)において、樹脂フィルムの面積は、プリプレグの表面が露出しないように挟み込むことができる程度の面積を有していればよいが、プリプレグの面積よりも10%以上大きい面積、すなわちプリプレグの面積の110%以上の面積を有することが、樹脂の酸化を防止し、樹脂の分解を抑制する効果を得ることが十分にできることから好ましい。すなわち、樹脂フィルムはプリプレグの表裏面および側面を完全に覆うことができる構成となっていることが好ましく、より好ましくは、作業の簡便さの観点からプリプレグの面積より100%以上大きい面積、すなわちプリプレグの面積の2倍以上の面積を有する樹脂フィルムを用いることである。ちなみに上述した樹脂フィルムは市販品として入手することが可能である。
本発明において、 工程(C)におけるプリプレグの搬送方法は、人手による搬送、搬送機構を備えた装置(例えばロボット)による搬送などが例示できる。搬送の精度といった観点からは搬送機構を備えた装置を用いることが好ましい。また、工程(C)における、樹脂フィルムで挟まれたプリプレグから樹脂フィルムを除去する工程においても、人手や予め搬送装置自体に樹脂フィルムを除去する機構を備えたものをもちいることが出来る。さらには、各工程間にプリプレグを適正な位置に配置する工程や、金型を清掃する工程、脱型した成形品を搬送する工程、さらには、得られた成形品にトリミング、穴あけ等に代表される後加工を実施する工程を付加することも作業性向上や生産性、生産精度の観点から好ましく様態として挙げられる。
このようにして本発明より得られる成形品は、優れた力学特性、表面外観など、産業用途に必要とされる特性を有することから、自動車、電気・電子機器、家電製品、航空機などの各種部品・部材、ケーシングを好ましい用途として挙げることができる。
以下、実施例によって、本発明について具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を制限するものではない。
(参考例1)
ポリアクリロニトリルを主成分とする重合体から紡糸、焼成処理を行い、総フィラメント数12000本の炭素繊維連続束を得た。この炭素繊維連続束の特性は次の通りであった。
単位長さ当たりの質量:1.7g/m
比重:1.8g/cm
引張強度:4.0GPa
引張弾性率:235GPa。
(参考例2)
強化繊維として、参考例1で得られた炭素繊維連続束を、カートリッジカッターで切断し、繊維長6.4mmのチョップド糸を得た。界面活性剤(和光純薬工業(株)社製、“n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム”(製品名)の1.5wt%水溶液100リットルを攪拌し、予め泡立てた分散液を作製した。この分散液に、得られたチョップド糸100gを投入し、10分間撹拌した後、長さ1000mm×幅1000mmの抄紙面を有する抄紙機に流し込み、吸引により脱水し、次に、150℃の温度で2時間乾燥して、炭素繊維からなる不織布(以下CFと略す)を得た。
(参考例3)
強化繊維として、ガラス繊維(セントラル硝子(株)社製、“ERS2310−253A”)を、カートリッジカッターで切断し、繊維長6.4mmのチョップド糸を得た。界面活性剤(和光純薬工業(株)社製、“n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム”(製品名)の1.5wt%水溶液100リットルを攪拌し、予め泡立てた分散液を作製した。この分散液に、得られたチョップド糸100gを投入し、10分間撹拌した後、長さ1000mm×幅1000mmの抄紙面を有する抄紙機に流し込み、吸引により脱水し、次に、150℃の温度で2時間乾燥して、ガラス繊維からなる不織布(以下GFと略す)を得た。
(参考例4)
ホモポリプロピレン (プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”J105G)54質量%、酸変性ポリプロピレン (三井化学(株)製“アドマー”QB510)45質量%、および酸化防止剤(チバ・ジャパン(株)社製、IRGANOX B 215)1質量%をドライブレンドしたものを、JSW製TEX−30α型2軸押出機を用い、バレル温度200℃、回転数150rpmの条件で、混練したものを押し出し冷却後、切断し、樹脂ペレットを得た。得られたペレット90gを200℃、面圧3MPaでプレスし、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.1mmのポリプロピレンフィルム(以下PPと略す)を得た。
(参考例5)
ホモポリプロピレン (プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”J105G)50質量%、酸変性ポリプロピレン (三井化学(株)製“アドマー”QB510)45質量%、および酸化防止剤(チバ・ジャパン(株)社製、IRGANOX B 215)5質量%をドライブレンドしたものを、JSW製TEX−30α型2軸押出機を用い、バレル温度200℃、回転数150rpmの条件で、混練したものを押し出し冷却後、切断し、樹脂ペレットを得た。得られたペレット90gを200℃、面圧3MPaでプレスし、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.1mmのポリプロピレンフィルム(以下PP2と略す)を得た。
(参考例6)
ポリアミド6樹脂(東レ(株)社製、“アミラン”CM1017(登録商標))130gを、240℃、面圧3MPaでプレスし、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.12mmのポリアミドフィルム(以下、NYと略す)を得た。
(参考例7)
ポリフェニレンスルフィド樹脂(東レ(株)社製、“トレリナ”A900(登録商標))154gを、320℃、面圧3MPaでプレスし、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.12mmのポリフェニレンスルフィドフィルム(以下、PPSと略す)を得た。
(参考例8)
参考例4で得られたPPを参考例2で得られたCF1枚の両面に1枚ずつ積層し、[PP/CF/PP]の構成のシートとした。また、離型シートとしてテフロン(登録商標)シート(厚さ1mm)を用い、該シートを[テフロンシート/PP/CF/PP/テフロンシート]の構成で挟み込むように配置した。ついで、200℃の温度に加熱された上下の熱盤面から構成される油圧式プレス機の熱盤面間に配置し、5MPaでプレスした。次に、30℃の温度に温度制御された冷却盤間に配置し、5MPaで冷却プレスし、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.26mmの強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料(プリプレグ)を得た。
(参考例9)
参考例4で得られたPPに代えて、参考例5で得られたPP2を用い、加熱時の上下の熱盤面の温度を200℃に変更した以外は、参考例8と同様の操作をおこない、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.26mmの強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料(プリプレグ)を得た。
(参考例10)
参考例4で得られたPPに代えて、参考例6で得られたNYを用い、加熱時の上下の熱盤面の温度を230℃に変更した以外は、参考例8と同様の操作をおこない、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.29mmの強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料(プリプレグ)を得た。
(参考例11)
参考例4で得られたPPに代えて、参考例7で得られたPPSを用い、加熱時の上下の熱盤面の温度を320℃に変更した以外は、参考例8と同様の操作をおこない、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.29mmの強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料(プリプレグ)を得た。
(参考例12)
参考例4で得られたPPを参考例3で得られたGF1枚の両面に1枚ずつ挟み込み、[PP/GF/PP]の構成のシートとした。また、離型シートとしてテフロン(登録商標)シート(厚さ1mm)を用い、該シートを[テフロンシート/PP/CF/PP/テフロンシート]の構成で挟み込むように配置した。ついで、200℃の温度に加熱された上下の熱盤面から構成される油圧式プレス機の熱盤面間に配置し、5MPaでプレスした。次に、30℃の温度に温度制御された冷却盤間に配置し、5MPaで冷却プレスし、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.24mmの強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料(プリプレグ)を得た。
(参考例13)
参考例4で得られたPPを参考例2で得られたCF2枚の両面に1枚ずつ挟み込み、[PP/CF/CF/PP]の構成のシートとした。また、離型シートとしてテフロン(登録商標)シート(厚さ1mm)を用い、該シートを [テフロンシート/PP/CF/CF/PP/テフロンシート]の構成で挟み込むように配置した。ついで、200℃の温度に加熱された上下の熱盤面から構成される油圧式プレス機の熱盤面間に配置し、5MPaでプレスした。次に、30℃の温度に温度制御された冷却盤間に配置し、5MPaで冷却プレスし、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.31mmの強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料(プリプレグ)を得た。
ここで、実施例、比較例により得られる成形品の評価基準を以下に記す。
[加熱後の膨脹倍率]
プリプレグにおける加熱後の膨脹倍率は、以下の手順(1)〜(3)により測定される。なお全ての厚み測定は、ノギス(ミツトヨ(株)社製、デジタルノギス“CD−67S20PS”(商品名))にて測定した。
(1)室温(23℃)での、プリプレグの1枚当たりの厚み(t1)を測定し、次式により加熱前の繊維強化熱可塑性樹脂の厚み(t0)を算出する。(t1)×積層枚数=(t0)。
(2)加熱炉から取り出した後、溶融軟化しているプリプレグを空気中にて冷却した後の厚みを測定する(t2)。
(3)加熱後のプリプレグの膨脹倍率(t3)を次式にて算出する。(t2/t0)×100=t3。
[分解ガスの発生]
実施例、比較例で作製したプリプレグ(200×200mm)を遠赤外線ヒーター炉に設置し、発煙、またはプリプレグをはさんだフィルムに樹脂の分解に伴う液滴が付着しはじめるまでの時間を測定し、分解開始時間とした。各水準につき5回の試験を行い、平均値を分解開始時間として採用した。
分解開始時間は、以下の基準により判断した。
A:10分以上
B:7分以上、10分未満
C:5分未満
[成形品の曲げ強度]
成形品から試験片を切り出し、ISO178法(1993)に従い曲げ強度を測定した。試験片は、任意の1方向について切り出して試験片を作製した。測定数はn=5とし、全ての測定値の平均値を曲げ強度とした。測定装置としては、インストロン・ジャパン(株)製“インストロン(登録商標)”5565型万能材料試験機を使用した。
[成形品の表面外観]
成形品を目視により、表面外観の良否を以下の基準により判断した。
A:カスレ状の跡が無く、さらに表面光沢があり優れた成形品の表面外観である。
B:成形品の一部にカスレ状の跡が見られる。
C:成形品の大部分にカスレ状の跡が見られる。
(実施例1)
参考例8で得たプリプレグを長さ200mm、幅200mmのサイズに裁断し、必要枚数である15層の積層を実施(以下シート材と略す)したものを1セット用意した。
その後、該シート材の表裏面にポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)社製、“カプトン200V“(商品名)、厚み0.05mm品)を、長さ300mm、幅300mmのサイズに裁断し、該シート材の表裏面に挟み込み、該シート材が露出しない様に配置した。
上記、ポリイミドフィルムを配置したシート材をガイシ温度230℃に設定した遠赤外線ヒーター(日本ガイシ(株)社製、“インフラスタインヒーター”)に、該シート材を投入し、厚み方向の中心が210℃になるまで加熱した。
ついで、該シート材の1セットからポリイミドフィルムを手で引き剥がすことで取り除き、金型キャビティ表面の温度を100℃に温調した平板形状金型に収まるように配置した。その後、直ちに20mm/秒の速度で対応するもう一方の型を降下させ、型締をおこなった。その後、この状態を維持するように50秒間加圧、冷却し、その後成形型を開いて、成形品を得た。
上記とは別に、遠赤外線ヒーターに1セットの該シート材を投入し、[分解ガスの発生]評価を行った。その後、[加熱後の膨脹倍率]評価を行うため、厚み測定を実施した。
(実施例2)
実施例1において、プリプレグを参考例10で得たプリプレグに変更し、加熱工程における遠赤外線ヒーターのガイシ温度を250℃に設定して、投入された該シート材の厚み方向の中心が230℃になるまで加熱するよう変更した以外は、実施例1と同様の方法でプレス成形および評価をおこない、成形品を得るとともに評価に供した。
(実施例3)
実施例1において、ポリイミドフィルムをフッ素系樹脂フィルム((株)ニチアス社製、“ナフロンPTFEテープ、TOMBO No.9001”(商品名)、厚み0.05mm品)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で加熱、プレス成形および評価をおこない、成形品を得るとともに評価に供した。
(実施例4)
実施例1において、プリプレグを参考例13で得たプリプレグに変更した以外は、実施例1と同様の方法で加熱、プレス成形および評価をおこない、成形品を得るとともに評価に供した。
(実施例5)
実施例1において、プリプレグを参考例12で得たプリプレグに変更した以外は、実施例1と同様の方法でプレス成形および評価をおこない、成形品を得るとともに評価に供した。
(実施例6)
実施例1において、プリプレグを参考例11で得たプリプレグに変更し、加熱工程における遠赤外線ヒーターのガイシ温度を310℃に設定して、投入された該シート材の厚み方向の中心が300℃になるまで加熱するよう変更した以外は、実施例1と同様の方法でプレス成形および評価をおこない、成形品を得るとともに評価に供した。
(実施例7)
実施例1において、用いるポリイミドフィルムの裁断サイズを210mm×210mmの大きさに変更した以外は、実施例1と同様の方法でプレス成形および評価をおこない、成形品を得るとともに評価に供した。
(比較例1)
実施例1において、ポリイミドフィルムを用いないように変更した以外は、実施例1と同様の方法で加熱、プレス成形および評価をおこない、成形品を得るとともに評価に供した。
(比較例2)
実施例2において、ポリイミドフィルムを用いないように変更した以外は、実施例2と同様の方法で加熱、プレス成形および評価をおこない、成形品を得るとともに評価に供した。
(比較例3)
実施例5において、ポリイミドフィルムを用いないように変更した以外は、実施例5と同様の方法で加熱、プレス成形および評価をおこない、成形品を得るとともに評価に供した。
(比較例4)
実施例1において、ポリイミドフィルムを、シート材の表裏面が長さ150mm、幅150mmの広さが露出する様に配置した以外は、実施例1と同様の方法で加熱、プレス成形および評価をおこない、成形品を得るとともに評価に供した。
(比較例5)
比較例1において、プリプレグを参考例9で得たプリプレグに変更した以外は、比較例1と同様の方法でプレス成形および評価をおこない、成形品を得るとともに評価に供した。
上記の実施例1〜7と比較例1〜5から、下記のことが明らかである。実施例1〜4、6、7は、比較例1、2、4と比べ、プリプレグを加熱完了後、取り出し時に確認されたマトリックス樹脂の酸化分解による分解ガスの発生が無く、作業性に優れる結果であった、さらに、プレス成形により得られた成形品を評価したところ、曲げ特性、表面外観にその効果が反映され、優れた成形品を得ることが出来ていることを確認した。さらに炭素繊維を用いた成形品はガラス繊維を用いた成形品より、各種特性(とりわけ、力学特性に優れる)ことを確認した。これは、本発明の加熱方法によりプリプレグが加熱中に空気雰囲気下へ暴露されることを抑制できたためであると考えられる。また、付記すると実施例5および比較例3から、膨脹倍率の小さいガラス繊維を用いたものでも一定の効果は得られるものの、その効果の幅が狭いことが確認された。これは、強化繊維にもちいたガラス繊維の繊維径が炭素繊維に対し、太いため(ガラス繊維、15μmに対し、炭素繊維、7μm)、膨脹時の表面積がもとより小さいためと考えられる。さらにガラス繊維は炭素繊維と比較し、繊維自体の弾性率、強度が低いことから加熱溶融時に強化繊維の弾性回復によるプリプレグの膨張が小さいこと挙げられる。また、ガラス繊維に対し熱伝導性に優れる炭素繊維は、プリプレグ中の熱の伝わりが早いため、加熱工程に対しては有利であるが、上述の加熱による繊維強化基材の膨張と相まって、マトリックス樹脂が高温かつ酸素雰囲気下にさらされる時間が長いとも考えられる。そのことから、比較例5から酸化防止剤を多量添加したのみでは本発明の目的である樹脂の酸化分解を押さえることはできなかった。
しかしながら、本発明によれば、従来法ではマトリックス樹脂の分解による表面外観の悪化、作業環境の悪化、により成形が困難であることに加え、成形品の曲げ特性も本発明の実施例と比較し劣るものとなることが確認された。
Figure 2012192645
従来法とは異なり、本発明は、繊維強化基材と熱可塑性樹脂からなるプリプレグを加熱軟化溶融させることで、該強化繊維の弾性回復により膨張する該プリプレグのプレス成形において、マトリックス樹脂の熱分解を抑え、簡便な手法により力学特性および外観に優れた成形品の製造法を提供できるため、各種産業用途、またその作業現場に適応した成形方法を提供することが出来る。

Claims (7)

  1. 強化繊維基材に熱可塑性樹脂が含浸されてなり、無加圧状態で加熱溶融した場合に膨張するプリプレグを、以下の工程(A)〜(E)を順に経ることにより成形して成形品を得る、成形品の製造方法。
    工程(A):プリプレグを、そこに含浸された熱可塑性樹脂の融点よりも50℃高い温度で溶融しない樹脂フィルムでプリプレグ表面が露出しないように挟み込む工程
    工程(B):樹脂フィルムで挟まれたプリプレグを、ヒーター炉内に搬送し、プリプレグに含浸された熱可塑性樹脂を、その融点以上であって、かつ樹脂フィルムが溶融しない温度に加熱し、溶融させる工程。
    工程(C):樹脂フィルムで挟まれたプリプレグから樹脂フィルムを除去したプリプレグを金型内に搬送、配置する工程。
    工程(D):プリプレグを金型内で加圧冷却して成形品となす工程。
    工程(E):金型から成形品を取り出す工程。
  2. 前記強化繊維基材を構成する繊維が、炭素繊維またはガラス繊維である、請求項1記載の成形品の製造方法。
  3. 前記強化繊維基材を構成する繊維が、炭素繊維である、請求項1または2に記載の成形品の製造方法。
  4. 前記プリプレグは強化繊維基材の体積割合が、5体積%以上50体積%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の成形品の製造方法。
  5. 前記プリプレグに含浸された熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、ポリアミドまたはポリフェニレンスルフィドである、請求項1〜4のいずれかに記載の成形品の製造方法。
  6. 前記樹脂フィルムが、ポリイミドまたはフッ素樹脂のフィルムである、請求項1〜5のいずれかに記載の成形品の製造方法。
  7. 樹脂フィルムは、プリプレグの面積よりも10%以上大きい面積を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の成形品の製造方法。
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