JP2016169271A - 耐ドローダウン性が改良された炭素繊維樹脂複合材シート - Google Patents
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Abstract
【課題】 良好な成形加工性を持ちながら、作業性に優れ、外観が良好な炭素繊維樹脂複合材成形体が得られる炭素繊維樹脂複合材シートを提供することを課題とする。
【解決手段】
炭素繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)とからなる炭素繊維樹脂複合材シートにおいて、該熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃における該炭素繊維樹脂複合材シートの下記式(1)で表される動的粘弾性指標Rが、0.3〜1.0とすることにより課題を解決する。
R=G’(0.01)/G’(1.0) ・・・式(1)
G’(0.01):角周波数ω=0.01(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
G’(1.0):角周波数ω=1.0(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性
【選択図】 なし
【解決手段】
炭素繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)とからなる炭素繊維樹脂複合材シートにおいて、該熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃における該炭素繊維樹脂複合材シートの下記式(1)で表される動的粘弾性指標Rが、0.3〜1.0とすることにより課題を解決する。
R=G’(0.01)/G’(1.0) ・・・式(1)
G’(0.01):角周波数ω=0.01(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
G’(1.0):角周波数ω=1.0(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性
【選択図】 なし
Description
本発明は、炭素繊維樹脂複合材シート、及びそれを用いた成形体の製造方法、それから得られる成形体に関し、さらに詳しくは成形工程における耐ドロ−ダウン性が改良されたことで、作業性、並びに外観特性がきわめて良好となる炭素繊維樹脂複合材シートに関する。
長繊維の炭素繊維強化熱可塑性プラスチックの成形方法としては、スタンパブルシートと言われる成形前駆体を、IRヒーターなどで予備加熱したのちプレス等で加圧冷却することにより、目的の形状に賦形するスタンピング成形が最も一般的に行われている。これにより得られた炭素繊維強化プラスチックは、アスペクト比の大きな強化繊維を用いているので優れた力学物性を有する。
このような炭素繊維強化熱可塑性プラスチックのマトリクス樹脂としては、一般に使用される熱可塑性樹脂であれば、何でも使用可能であるが、特に成形性、耐薬品性、耐吸水性等の特性が要求される場合にポリオレフィン系樹脂を用いることが提案されている。また、より高い強度や耐熱性が要求される場合には、ポリアミド樹脂が好ましく用いられる。
これらの樹脂は、成形前駆体であるスタンパブルシートを製造する際に、炭素繊維束、または炭素繊維マットへの含浸性が良好なものが適しており、またスタンピング成形においても、流動性が良好なものの方が賦形性に優れることが知られている。このような炭素繊維、及び熱可塑性樹脂を用いた成形性良好な炭素繊維樹脂複合シートの製造方法はこれまでにもいくつかの提案があった。(例えば、特許文献1,2,3)
一方、含浸性、流動性に優れる樹脂をマトリクス樹脂としたスタンパブルシートは、予備加熱工程、及びそれに引き続くシートの移送工程においてドローダウン(垂れ落ち)が大きく発生するため、加熱中に破れたり、移送中、または金型にセットする際に皺や破れが発生するなどして、作業性や成形体外観を著しく悪化させるという問題があった。
一方、含浸性、流動性に優れる樹脂をマトリクス樹脂としたスタンパブルシートは、予備加熱工程、及びそれに引き続くシートの移送工程においてドローダウン(垂れ落ち)が大きく発生するため、加熱中に破れたり、移送中、または金型にセットする際に皺や破れが発生するなどして、作業性や成形体外観を著しく悪化させるという問題があった。
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであり、耐ドローダウン性が改良することにより、作業性に優れ、外観が良好な炭素繊維樹脂複合材成形体が得られる炭素繊維樹脂複合材シートを提供することを課題とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、炭素繊維樹脂複合材シートに特定の動的粘弾性率を有する熱可塑性樹脂を用いることにより解決できることを見出し、本発明を解決するに至った。即ち本発明の要旨は、以下の[1]〜[5]に存する。
[1] 炭素繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)とからなる炭素繊維樹脂複合材シートであり、該熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃における該炭素繊維樹脂複合材シートの下記式(1)で表される動的粘弾性指標Rが、0.3〜1.0である炭素繊維樹脂複合材シート。
R=G’(0.01)/G’(1.0) ・・・式(1)
G’(0.01):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=0.01(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
G’(1.0):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=1.0(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
R=G’(0.01)/G’(1.0) ・・・式(1)
G’(0.01):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=0.01(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
G’(1.0):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=1.0(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
[2] 一方向に引き揃えられた炭素繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)とからなるプリプレグを積層することよりなる、上記[1]に記載の炭素繊維樹脂複合材シート。
[3] 炭素繊維樹脂複合材シートを構成する熱可塑性樹脂の結晶融点+40°または当該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃における当該熱可塑性樹脂の溶融粘度η(Pa・s)を、炭素繊維(A)の平均単繊維繊度N(dtex)の自乗で除した下記式(2)で表される値Hが250以下である、上記[1]または[2]に記載の炭素繊維樹脂複合材シート。
H=η/N2 ・・・式(2)
H=η/N2 ・・・式(2)
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかに記載の炭素繊維樹脂複合材シートを、
1)熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度に加熱する工程、
2)加熱されたシートを軟化点以下の圧縮成形金型に移送する工程、
3)圧縮成形工程
を経て炭素繊維樹脂複合材成形体を得る成形方法。
1)熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度に加熱する工程、
2)加熱されたシートを軟化点以下の圧縮成形金型に移送する工程、
3)圧縮成形工程
を経て炭素繊維樹脂複合材成形体を得る成形方法。
[5] 上記[1]〜[3]のいずれかに記載の炭素繊維樹脂複合シートを圧縮成形することにより得られる、炭素繊維樹脂複合材成形体。
本発明によれば、予備加熱工程から圧縮成形工程にいたるまでの成形作業性が著しく改良され、成形体外観に優れる炭素繊維樹脂複合材シートを得ることができる。
本発明の炭素繊維樹脂複合材成形体の製造方法ついて以下詳細に説明するが、本発明の趣旨に反しない限り、これらの内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の炭素繊維樹脂複合材シートは、炭素繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)とからなる炭素繊維樹脂複合シートであり、該樹脂(B)の結晶融点+40℃、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃における動的粘弾性指標Rが0.3〜1.0であることを特徴とする。ここで、
R=G’(0.01)/G’(1.0) ・・・式(1)
G’(0.01):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=0.01(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
G’(1.0):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=1.0(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
である。ここでいう結晶融点、またはガラス転移点とは、使用される熱可塑性樹脂が複数の樹脂を含み、結晶融点、またはガラス転移点が複数存在する場合は、それらのうち最も高い温度を該樹脂の結晶融点、またはガラス転移点とする。結晶融点、及びガラス転移点は示差走査熱量計(DSC)で公知の方法、即ち、室温から樹脂の熱分解温度以下の温度までを10℃/minの試験速度で測定し、結晶融解ピークの極値から結晶融点を、変曲点からガラス転移点が決定される。
R=G’(0.01)/G’(1.0) ・・・式(1)
G’(0.01):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=0.01(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
G’(1.0):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=1.0(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
である。ここでいう結晶融点、またはガラス転移点とは、使用される熱可塑性樹脂が複数の樹脂を含み、結晶融点、またはガラス転移点が複数存在する場合は、それらのうち最も高い温度を該樹脂の結晶融点、またはガラス転移点とする。結晶融点、及びガラス転移点は示差走査熱量計(DSC)で公知の方法、即ち、室温から樹脂の熱分解温度以下の温度までを10℃/minの試験速度で測定し、結晶融解ピークの極値から結晶融点を、変曲点からガラス転移点が決定される。
本発明者らは、動的粘弾性指標Rを0.3〜1.0の範囲とすることにより、シートを構成する熱可塑性樹脂が軟化点を超えて加熱されても、シート自体のドローダウンが有効に抑制され、さらに驚くべきことに、スタンピング成形時の流動性も全く損なわれないということを見出した。
一般に樹脂単独のレオロジー的性質としては、Rの値は0.0001〜0.001の範囲を取ることが多い。一方、粒子や繊維状物質(以下粒子等という)を含有する流体に関する研究によれば、粒子等が高濃度化すると粒子間の流体力学的相互作用により、角周波数ω<1(rad/sec)の領域における貯蔵弾性率G’に第2ゴム状平坦部と言われる領域が観察され、Rの値が上昇することが知られている。このような流体は、低歪速度領域において顕著な増粘挙動を示す、いわゆるチクソトロピー性流体となる。(参考文献:「日本レオロジー学会誌,5,110(1977)」)
本発明においてRの値を0.3〜1.0とすることにより、耐ドローダウン性が良好な性質を示すのは、上述のような流体力学的相互作用により、炭素繊維同士のすり抜けが適度に抑制された結果であると考えられる。
本発明においてRの値を0.3〜1.0とすることにより、耐ドローダウン性が良好な性質を示すのは、上述のような流体力学的相互作用により、炭素繊維同士のすり抜けが適度に抑制された結果であると考えられる。
以下、炭素繊維樹脂複合シートの構成について詳細に説明する。
<熱可塑性樹脂>
本発明においてマトリクス樹脂として使用される熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、AS樹脂、ABS樹脂などからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましいものとして挙げられる。コストと物性の兼ね合いからポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィドが好ましく用いられ、ポリアミド、ポリプロピレンが特に好ましい。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明においてマトリクス樹脂として使用される熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、AS樹脂、ABS樹脂などからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましいものとして挙げられる。コストと物性の兼ね合いからポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィドが好ましく用いられ、ポリアミド、ポリプロピレンが特に好ましい。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
<ポリアミド樹脂>
本発明に使用されるポリアミド樹脂は、特に限定されないが、結晶性ポリアミド樹脂であることが望ましい。耐熱性、加工特性などの観点から、結晶融点が160℃〜300℃のものが好ましく、特に200℃〜280℃が好ましく用いられる。融点が160℃未満の場合、耐熱性が低いことや剛性が低いことから好ましくなく、300℃を超えるとシートの製造上、及び成形体の製造上好ましくない。具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド9T,ポリアミド10T、ポリアミド11Tのようなホモポリマーや、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド66/10,ポリアミド66/12、ポリアミド6T/6,ポリアミド6T/66,ポリアミド6T/6I、ポリアミド66/6Iのような共重合体等があげられる。これらのポリアミド樹脂に使用される共重合成分は特に限定されない。共重合されるジアミン成分としては、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどが例示される。これらの中では、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミンが好ましい。また、共重合されるジカルボン酸成分としては、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−メチルテレフタル酸等が挙げられる。これらの中では、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸が好ましい。また6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、p−アミノメチル安息香酸などのアミノ酸や、ω―ラウロラクタムなどのラクタムなどが挙げられる。
本発明に使用されるポリアミド樹脂は、特に限定されないが、結晶性ポリアミド樹脂であることが望ましい。耐熱性、加工特性などの観点から、結晶融点が160℃〜300℃のものが好ましく、特に200℃〜280℃が好ましく用いられる。融点が160℃未満の場合、耐熱性が低いことや剛性が低いことから好ましくなく、300℃を超えるとシートの製造上、及び成形体の製造上好ましくない。具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド9T,ポリアミド10T、ポリアミド11Tのようなホモポリマーや、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド66/10,ポリアミド66/12、ポリアミド6T/6,ポリアミド6T/66,ポリアミド6T/6I、ポリアミド66/6Iのような共重合体等があげられる。これらのポリアミド樹脂に使用される共重合成分は特に限定されない。共重合されるジアミン成分としては、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどが例示される。これらの中では、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミンが好ましい。また、共重合されるジカルボン酸成分としては、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−メチルテレフタル酸等が挙げられる。これらの中では、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸が好ましい。また6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、p−アミノメチル安息香酸などのアミノ酸や、ω―ラウロラクタムなどのラクタムなどが挙げられる。
これらの中で、好ましいホモポリマーとしてはポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6が、好ましい結晶性共重合体としては、ポリアミド6/66、ポリアミド66/6、ポリアミド66/6I,ポリアミド6T/6,ポリアミド6T/66などが上げられる。特に、コスト面からポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6を主として含むことが好ましい。
これらのポリアミドは単独で用いても良いし、2種以上のポリアミドを混合して用いても良い。2種以上のポリアミドを混合する場合、予め溶融混練することでポリアミド間のアミド交換反応を起こさせることにより、共重合と同様の効果、即ち結晶性の抑制、靱性の付与などの効果を得ることができる。
ポリアミド樹脂の溶融粘度は、樹脂の結晶融点+40℃の温度において、10〜1000(Pa・s)のものが好ましく用いられる。50〜500(Pa・s)がさらに好ましく、70〜300(Pa・s)が特に好ましい。
溶融粘度が10(Pa・s)未満であるとマトリクス樹脂の機械的強度が低く、炭素繊維樹脂複合材料の機械的強度が低下する。溶融粘度が1000(Pa・s)超過であると、炭素繊維樹脂複合材シートを製造する際に、炭素繊維に対する樹脂の含浸性が悪化するために炭素繊維樹脂複合材料の機械的性質が劣るものとなる。
<ポリプロピレン系樹脂>
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、結晶性ポリプロピレンが好ましく用いられる。結晶性ポリプロピレン成分は、プロピレンの単独重合体であることが物性上好ましいが、プロピレンに少量の他のコモノマーを共重合することによって得られる結晶性の重合体であってもよい。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、結晶性ポリプロピレンが好ましく用いられる。結晶性ポリプロピレン成分は、プロピレンの単独重合体であることが物性上好ましいが、プロピレンに少量の他のコモノマーを共重合することによって得られる結晶性の重合体であってもよい。
ポリプロピレン成分の結晶性は、アイソタクチック指数(沸騰n−ヘプタン抽出による不溶分)として、90%以上、好ましくは95〜100%である。結晶性が小さいと機械的強度、特に曲げ弾性率が劣るものとなる。
上記コモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどのプロピレン以外のα−オレフィン、スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニル化合物等を挙げることができる。これらは2種以上が共重合されていてもよい。
プロピレンにコモノマーを共重合する際のコモノマーの量としては、適宜選択できるものであるが、例えば、ポリプロピレン成分の全質量を基準として3質量%以下程度を使用する。コモノマーの含有量がこの程度であれば、結晶性が著しく損なわれることはない。
ポリプロピレン系樹脂の溶融粘度は、樹脂の結晶融点+40℃の温度において、20〜2000(Pa・s)のものが好ましく用いられる。50〜1500(Pa・s)がさらに好ましく、70〜600(Pa・s)が特に好ましい。
溶融粘度が20(Pa・s)未満であるとマトリクス樹脂の機械的強度が低く、炭素繊維樹脂複合材料の機械的強度が低下する。溶融粘度が2000(Pa・s)超過であると、炭素繊維樹脂複合材シートを製造する際に、炭素繊維に対する樹脂の含浸性が悪化するために炭素繊維樹脂複合材料の機械的性質が劣るものとなる。
また、本発明では、炭素繊維とポリプロピレン系樹脂の接着性を改善するために、ポリプロピレン系樹脂に有機酸をグラフト重合することによって得られる酸変性ポリプロピレン樹脂を含むことが好ましく、酸変性ポリプロピレンを単独で用いてもよい。
有機酸によるポリオレフィン系樹脂の酸変性方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。具体的にはポリオレフィン樹脂に、有機酸とジクミルペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等の公知の有機過酸化物を添加し、溶融混練する方法が挙げられる。
酸変性において添加する有機酸及び有機過酸化物の添加量は特に限定されないが、有機酸の添加量は、ポリオレフィン樹脂に対し通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上であり、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは5.0以下である。有機過酸化物の添加量は、ポリオレフィン樹脂に対し通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上であり、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは5.0以下である。
酸変性ポリオレフィン樹脂の酸変性度は特に限定されないが、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、通常1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
酸変性度は、公知の赤外吸収スペクトル法を用いて測定される。
<炭素繊維>
本発明の製造方法によって製造される炭素繊維樹脂複合材成形体は、炭素繊維を含むものであるが、無機繊維、有機繊維、金属繊維、又はこれらを組み合せたハイブリット構成の強化繊維を含むものであってもよい。
本発明の製造方法によって製造される炭素繊維樹脂複合材成形体は、炭素繊維を含むものであるが、無機繊維、有機繊維、金属繊維、又はこれらを組み合せたハイブリット構成の強化繊維を含むものであってもよい。
無機繊維としては、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステル等が挙げられる。
金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維を挙げられ、また金属を被覆した炭素繊維でもよい。
また、これらの平均繊維直径は、1〜50μmであることが好ましく、5〜20μmであることがさらに好ましい。なお、炭素繊維の平均単繊維繊度は、好ましくは0.5dtex以上、より好ましくは0.6dtex以上であり、好ましくは3.0dtex以下、より好ましくは2.5dtex以下である。
<炭素繊維樹脂複合材>
本発明の製造方法は、炭素繊維及び熱可塑性樹脂からなる炭素繊維樹脂複合材をスタンピング成形する成形工程を含むものであるが、成形前の炭素繊維樹脂複合材の調製方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。
本発明の製造方法は、炭素繊維及び熱可塑性樹脂からなる炭素繊維樹脂複合材をスタンピング成形する成形工程を含むものであるが、成形前の炭素繊維樹脂複合材の調製方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。
例えば、フィルム状とした熱可塑性樹脂を2枚準備し、その2枚の間に炭素繊維をシート状に並べた炭素繊維シートを挟み込み、加熱及び加圧を行うことにより得ることができる。より具体的には、2つのロールから熱可塑性樹脂フィルム2枚を送り出すとともに、別のロールから供給される炭素繊維シートを2枚の熱可塑性樹脂フィルムの間に挟み込ませ、加熱及び加圧することによって行う。加熱及び加圧する手段としては、公知のものを用いることができ、熱ロールを利用したり、予熱装置と熱ロールの対を複数使用したりするなどの多段階の工程を要するものであってもよい。ここで、フィルムを構成する熱可塑性樹脂は1種類である必要はなく、別の種類の熱可塑性樹脂からなるフィルムを、上記のような装置を用いてさらに積層させてもよい。
また、ロールを用いずに、通常使用される熱プレス機に樹脂フィルムと炭素繊維を供して加熱圧縮してもよい。
なお、加熱温度は、熱可塑性樹脂の種類にもよるが、通常、100〜400℃である。一方、圧力は、通常0.1〜10MPaである。この圧力については、プレス力を炭素繊維シートの面積で除した値とする。この範囲であれば、炭素繊維の間に熱可塑性樹脂を十分に含浸させることができる。
成形前の炭素繊維樹脂複合材の具体的な形態・物性等も特に限定されないが、炭素繊維樹脂複合材中の炭素繊維の体積含有率(Vf)は、通常10体積%以上、好ましくは15体積%以上、より好ましくは20体積%以上であり、通常55体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは45体積%以下である。炭素繊維の体積含有率(Vf)が55%以下であれば、十分な流動性を確保することができ、体積含有率(Vf)の値が低いほど流動性は向上するが、体積含有率(Vf)の値が10%未満では構造材に必要な力学特性は得られない。なお、炭素繊維の体積含有率(Vf)は、JIS K7075に準拠した方法により測定することができる。
このようにして得られた厚さ50〜200μmのシート状炭素繊維複合材プリプレグを積層することで、炭素繊維複合材シートを得ることができるが、この際、繊維の配向軸を任意に組み合わせることで、強度・弾性率の異方性を制御することができる。
等方的な力学特性の炭素繊維複合材シートを得るためには、例えばシートを繊維軸に沿ってスリッティングしたのち任意の長さに切断し、得られた微小片をランダムに積層させて加熱圧着する方法を取ることができる。この際、スリッティングの幅としては、2〜50(mm)が好ましい。更に好ましくは4〜30(mm)である。スリッティング幅が2(mm)未満であると炭素繊維複合材シートの成形性が悪化するとともに、積層させる際に嵩高くなり生産性が悪化する。スリッティング幅が50(mm)超過であると、炭素繊維複合材シートの力学強度のばらつきが大きくなり、好ましくない。
また、等方的な力学特性の炭素繊維複合材シートを得るためには、一方向に引き揃えられたプリプレグに、炭素繊維を断ち切るための切込を入れ、繊維方向が平面を等分割するように積層させる方法を取ることも好ましく用いられる。例えば、繊維軸を[0°,90°]として積層すれば平面を2分割できる。繊維軸を[0°,60°,120°]として積層すれば平面を3分割できる。4分割する場合は[0°,45°,90°,135°]とすればよく、6分割する場合は[0°,30°,60°,90°,120°,150°]とすればよい。
プリプレグに入れる切込みは、繊維に対して任意の角度を持たせることができるが、流動性、及び機械的強度のバランスから、繊維方向に対して30乃至60°の角度とすることが望ましい。切込みは連続なものでも不連続なものでもよい。
一般に炭素繊維樹脂複合材に含まれる炭素繊維の長さは、長いほど力学特性に優れるものの、スタンピング成形時の流動性は低下する。スタンピング成形時の流動性向上のためには、炭素繊維をある長さに切断することが効果的であり、このことによりリブやボスといった複雑な3次元形状にも流動する炭素繊維樹脂複合材を得ることができる。なお、「炭素繊維を断ち切るための切込」とは、炭素繊維を断ち切る深さを有し、さらに炭素繊維の配向方向とは異なる方向に伸びる切込であることを意味する。
炭素繊維樹脂複合材が炭素繊維を断ち切る切込を有する場合、断ち切られた炭素繊維の長さは特に限定されないが、通常10mm以上、好ましくは15以上、より好ましくは20mm以上であり、通常50mm以下、好ましくは45mm以下、より好ましくは40mm以下である。上記範囲内であれば、十分な力学物性とスタンピング成形時のリブ等の薄肉部への流動を両立させることができる。
さらには、1方向に引き揃えられたプリプレグを用いず、ランダムに絡み合わされた炭素繊維で形成されたウェブに、樹脂を溶融含浸させることでシートを製造することでも機械的特性が等方的なシートを製造しうる。ただし、このような方法で得られたシートは単独では成形性が悪く、適宜切込みを入れたものを積層して使用することが好ましい。
本発明の炭素繊維複合材シートはマトリクス樹脂の結晶融点+40℃、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃における動的粘弾性指標Rが0.3〜1.0であることが必要である。ここで、Rは以下の式で定義される。
R=G’(0.01)/G’(1.0) ・・・式(1)
G’(0.01):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=0.01(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
G’(1.0):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=1.0(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
R=G’(0.01)/G’(1.0) ・・・式(1)
G’(0.01):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=0.01(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
G’(1.0):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=1.0(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
Rが0.3未満であると、炭素繊維複合成形体を成形する際に、予備加熱工程、及びそれに引き続くシートの移送工程においてドローダウン(垂れ落ち)が大きく発生するため、加熱中に破れたり、移送中、または金型にセットする際に皺や破れが発生するなどして、作業性や成形体外観を著しく悪化させることになる。
Rが0.3〜1.0となるシートを得る方法としては、1)炭素繊維複合材シートを製造する際に、シートの投影面積が原料となるプリプレグの投影面積の1.5倍以上に流動するように熱プレスする方法、2)プリプレグを構成する炭素繊維とマトリクス樹脂の組み合わせとして、樹脂の溶融粘度η(Pa・s)を炭素繊維の繊度N(dtex)の自乗で除した値Hが3以上、250以下となるものを選ぶ方法などがあげられる。Hの値が3未満では、炭素繊維樹脂複合材料の機械的強度が低下して好ましくない。またHが250超過であると、所望の特性のシートを得るために上記1)に記載のような特別な工夫が必要となる。
H=η/N2 ・・・式(2)
H=η/N2 ・・・式(2)
これらの方法で得られた炭素繊維樹脂複合材シートは、炭素繊維含量の少ない樹脂−rich層が大きな連続相を形成することがないため、溶融時の形状保持力が強く耐ドローダウン性に優れる一方で、プリプレグ内における炭素繊維の繊維配向と垂直な方向への展開性には何ら干渉しないため、スタンピング成形時には優れた成形性を示すものと考えられる。
これらの方法で得られた等方、または疑似等方の炭素繊維樹脂複合材シートは、単独で用いても良いし、1種以上のシートを組み合わせて使用しても良い。
また、炭素繊維樹脂複合材シートを積層させる場合、シートの間に樹脂組成物層、あるいは樹脂−フィラー複合材層、発泡樹脂層などを挟んでも耐ドローダウン性が損なわれることはない。
積層体における炭素繊維樹脂複合材同士は、取扱いが容易になるという観点から、接着されていることが好ましい。炭素繊維樹脂複合材同士の接着方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができるが、具体的には、熱溶着、振動溶着、熱プレス、又は加熱ロールプレスを用いることが好ましい。例えば、超音波溶着機(日本エマソン株式会社製、製品名:2000LPt)を好適に利用することができる。
<成型工程>
本発明の製造方法は、炭素繊維及び熱可塑性樹脂からなる炭素繊維樹脂複合材シートをスタンピング成形する成形工程を含むものであるが、スタンピング成形を行うための装置や具体的条件等は特に限定されず、公知の内容を適宜実施することができる。
本発明の製造方法は、炭素繊維及び熱可塑性樹脂からなる炭素繊維樹脂複合材シートをスタンピング成形する成形工程を含むものであるが、スタンピング成形を行うための装置や具体的条件等は特に限定されず、公知の内容を適宜実施することができる。
例えば、加熱プレス機に所望の形状を有する金型を配置して、実施することができる。金型の材質も特に限定されず、スタンピング成形で用いられるものを採用することができ、金属製のいわゆる金型を用いることができる。
本発明に係る成型工程の加熱条件は、熱可塑性樹脂の種類等によって適宜選択されるべきものであるが、100〜400℃が好ましく、150〜350℃がより好ましい。また、加熱に先立って、予備加熱を行ってもよい。予備加熱の温度は、通常150〜400℃、好ましくは200〜380℃である。
本発明に係る成型工程の加圧条件は、好ましくは0.1〜10MPaであり、より好ましくは0.2〜2MPaである。この圧力については、プレス力を積層体の面積で除した値とする。
本発明に係る成型工程の成形時間(加熱及び加圧している時間)は、0.1〜30分間であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜10分間である。また、成形後の冷却時間は、0.5〜30分間であることが好ましい。
なお、成形後の炭素繊維樹脂複合材成形体の厚さは、0.5〜10mmであることが好ましい。
本発明に係る成型工程は、金型と炭素繊維樹脂複合材(積層体)との間に潤滑剤を塗布した上で実施されてもよい。潤滑剤の作用により、炭素繊維樹脂複合材に含まれる熱可塑性樹脂の流動性が高まるため、炭素繊維の間への熱可塑性樹脂の含浸が高まるとともに、炭素繊維同士との間及び炭素繊維と熱可塑性樹脂との間に発生するボイドを低減することができる。
潤滑剤は、炭素繊維樹脂複合材(積層体)の片側若しくは両側の表面上、金型の片側若しくは両側の表面上、又は炭素繊維樹脂複合材(積層体)及び金型の双方の片側若しくは両側の表面上に、潤滑剤塗布装置等を利用して供給してもよく、予め金型の表面上に塗布しておいてもよい。中でも炭素繊維樹脂複合材シートの両側の表面に潤滑剤が供給される態様が好ましい。
潤滑剤の種類としては、例えばシリコーン系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、又はこれらの混合物が挙げられる。シリコーン系潤滑剤としては、高温環境で用いることができる耐熱性のものが好ましく用いられる。より具体的には、メチルフェニルシリコーンオイルやジメチルシリコーンオイルのようなシリコーンオイルを挙げることができ、市販されているものを好ましく用いることができる。フッ素系潤滑剤としては、高温環境で用いることができる耐熱性のものが好ましく用いられる。そのようなものの具体例としては、パーフルオロポリエーテルオイルや三フッ化塩化エチレンの低重合物(重量平均分子量500〜1300)のようなフッ素オイルを用いることができる。
本発明の製造方法によって得られる炭素繊維樹脂複合材は、破壊強度(曲げ強度)に優れる。かかる曲げ強度は、JIS K7074に基づいて測定することができる。本発明の製造方法によって得られる炭素繊維樹脂複合材成形体の曲げ強度は、通常250MPa以上、好ましくは300MPa以上である。
以下、実施例により本発明の具体的態様を詳細に説明するが、本発明が実施例の態様のみに限定されないことは言うまでもない。
<原料>
<<炭素繊維(A)>>
炭素繊維1(平均単繊維繊度:0.7dtex、真円度:0.95、フィラメント数:15000本、ストランド強度:500kgf/mm2、ストランド弾性率:24.5tonf/mm2)
炭素繊維2(平均単繊維繊度:1.4dtex、真円度:0.82、フィラメント数:28000本、ストランド強度:414kgf/mm2、ストランド弾性率:24.5tonf/mm2)
<<熱可塑性樹脂組成物(B)>>
変性ポリプロピレン1 (溶融粘度=424Pa・s,酸変性度=0.26質量%)
変性ポリプロピレン2 (溶融粘度=572Pa・s,酸変性度=0.20質量%)
変性ポリプロピレン3 (溶融粘度=196Pa・s,酸変性度=0.53質量%)
ポリアミド樹脂 (宇部興産(株)社製 製品名:UBEナイロン 1013B,溶融粘度=148Pa・s)
<物性評価>
(樹脂の溶融粘度)
マトリクス樹脂を厚さ1mmにプレス成型し、打ち抜き刃で直径25mmφの粘弾性測定用試験片を作成した。この試験片を樹脂の軟化点(結晶性樹脂においては結晶融点)より40℃高い温度に温度調整された回転式粘度計に装填し、動的粘弾性を角周波数ω=100(rad/sec)から0.1(rad/sec)まで、歪量=5〜20%で測定した。測定装置には、ARES100FRTN1(TAインスツルメント・ジャパン(株)製)を用い、測定治具には直径25mmφのパラレルプレートを使用した。得られた動的粘弾性データの角周波数ω=1.0(rad/sec)における複素粘性率を樹脂の溶融粘度とした。測定時に試料に印加する歪量は、測定トルクが装置トランスデューサーのダイナミックレンジに入るように、適宜調整した
(耐ドローダウン性の評価)
得られた平板状の炭素繊維樹脂複合材から、長さ70mm、幅15mmの短冊状試験片を切り出した。この試験片の一方を樹脂の結晶融点+40℃、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃の温度に温度調整されたオイルバス中に50mm浸漬し、他方を10gfの力で牽引したさいの、試験片の変形量をレーザー変位計で計測した。試料がオイルバスに浸漬されてから50秒後〜100秒後の間の時間に対する変位量の変化率を1次回帰式の係数から求め、この値の絶対値を変形速度(mm/sec)とした。変形速度が0.1(mm/sec)超過のものは、予備加熱中または成形機への移送中にシートが大きくドローダウンするため作業性が悪い。
<<炭素繊維(A)>>
炭素繊維1(平均単繊維繊度:0.7dtex、真円度:0.95、フィラメント数:15000本、ストランド強度:500kgf/mm2、ストランド弾性率:24.5tonf/mm2)
炭素繊維2(平均単繊維繊度:1.4dtex、真円度:0.82、フィラメント数:28000本、ストランド強度:414kgf/mm2、ストランド弾性率:24.5tonf/mm2)
<<熱可塑性樹脂組成物(B)>>
変性ポリプロピレン1 (溶融粘度=424Pa・s,酸変性度=0.26質量%)
変性ポリプロピレン2 (溶融粘度=572Pa・s,酸変性度=0.20質量%)
変性ポリプロピレン3 (溶融粘度=196Pa・s,酸変性度=0.53質量%)
ポリアミド樹脂 (宇部興産(株)社製 製品名:UBEナイロン 1013B,溶融粘度=148Pa・s)
<物性評価>
(樹脂の溶融粘度)
マトリクス樹脂を厚さ1mmにプレス成型し、打ち抜き刃で直径25mmφの粘弾性測定用試験片を作成した。この試験片を樹脂の軟化点(結晶性樹脂においては結晶融点)より40℃高い温度に温度調整された回転式粘度計に装填し、動的粘弾性を角周波数ω=100(rad/sec)から0.1(rad/sec)まで、歪量=5〜20%で測定した。測定装置には、ARES100FRTN1(TAインスツルメント・ジャパン(株)製)を用い、測定治具には直径25mmφのパラレルプレートを使用した。得られた動的粘弾性データの角周波数ω=1.0(rad/sec)における複素粘性率を樹脂の溶融粘度とした。測定時に試料に印加する歪量は、測定トルクが装置トランスデューサーのダイナミックレンジに入るように、適宜調整した
(耐ドローダウン性の評価)
得られた平板状の炭素繊維樹脂複合材から、長さ70mm、幅15mmの短冊状試験片を切り出した。この試験片の一方を樹脂の結晶融点+40℃、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃の温度に温度調整されたオイルバス中に50mm浸漬し、他方を10gfの力で牽引したさいの、試験片の変形量をレーザー変位計で計測した。試料がオイルバスに浸漬されてから50秒後〜100秒後の間の時間に対する変位量の変化率を1次回帰式の係数から求め、この値の絶対値を変形速度(mm/sec)とした。変形速度が0.1(mm/sec)超過のものは、予備加熱中または成形機への移送中にシートが大きくドローダウンするため作業性が悪い。
(シートの動的粘弾性測定)
得られた平板状の炭素繊維樹脂複合材から直径25mmφの粘弾性測定用試験片を切り出した。この試験片を樹脂の結晶融点+40℃、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃の温度に温度調整された回転式粘度計に装填し、動的粘弾性を角周波数ω=100(rad/sec)から0.01(rad/sec)まで、歪量=5%で測定した。測定装置にはARES100FRTN1(TAインスツルメント・ジャパン(株)製)を用い、測定治具にはパラレルプレートを使用した。得られた動的粘弾性データの中から、角周波数ω=0.01(rad/sec)における貯蔵弾性率G’の値と角周波数ω=1.0(rad/sec)における値との比を取り、動的粘弾性指標Rとした。
R=G’(ω=0.01[red/sec])/G’(ω=1.0[red/sec])
得られた平板状の炭素繊維樹脂複合材から直径25mmφの粘弾性測定用試験片を切り出した。この試験片を樹脂の結晶融点+40℃、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃の温度に温度調整された回転式粘度計に装填し、動的粘弾性を角周波数ω=100(rad/sec)から0.01(rad/sec)まで、歪量=5%で測定した。測定装置にはARES100FRTN1(TAインスツルメント・ジャパン(株)製)を用い、測定治具にはパラレルプレートを使用した。得られた動的粘弾性データの中から、角周波数ω=0.01(rad/sec)における貯蔵弾性率G’の値と角周波数ω=1.0(rad/sec)における値との比を取り、動的粘弾性指標Rとした。
R=G’(ω=0.01[red/sec])/G’(ω=1.0[red/sec])
(シートの流動性)
得られた積層基材より、たて78mm、よこ78mmの板状物を2枚切り出した。その板状物を2枚重ねて、ミニテストプレス(東洋精機製、製品名:MP−2FH)を用いて樹脂の結晶融点+40℃、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃の温度に温度調整された加熱プレス中で10分間加熱後、樹脂の結晶融点、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点より40℃低い温度に温度調整された冷却プレス中で10MPaの条件で60秒間プレスした。プレス成形前後での厚みを測定し、初期厚みを最終厚みで除すことにより流動性の評価指標Fとした。F<1.8は流動性不良(×)、F=1.8〜2.2は流動性可(△)、F>2.2は流動性良好(○)である。
流動性指標F=[試験後の試料厚み(mm)]/[初期試料厚み(mm)]
得られた積層基材より、たて78mm、よこ78mmの板状物を2枚切り出した。その板状物を2枚重ねて、ミニテストプレス(東洋精機製、製品名:MP−2FH)を用いて樹脂の結晶融点+40℃、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃の温度に温度調整された加熱プレス中で10分間加熱後、樹脂の結晶融点、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点より40℃低い温度に温度調整された冷却プレス中で10MPaの条件で60秒間プレスした。プレス成形前後での厚みを測定し、初期厚みを最終厚みで除すことにより流動性の評価指標Fとした。F<1.8は流動性不良(×)、F=1.8〜2.2は流動性可(△)、F>2.2は流動性良好(○)である。
流動性指標F=[試験後の試料厚み(mm)]/[初期試料厚み(mm)]
(曲げ試験物性の評価)
得られた平板状の炭素繊維樹脂複合材から、長さ100mm、幅25mmの曲げ強度試験片を切り出した。切り出した曲げ試験片は、JIS K−7074に規定する試験方法に従い、室温環境下で、標点間距離を80mmとし、クロスヘッド速度5.0mm/分で3点曲げ試験を行って強度と弾性率を測定した。試験機としてはインストロン万能試験機4465型を用いた。得られた測定値のそれぞれn=4の平均値を曲げ強度および曲げ弾性率として記録した。
得られた平板状の炭素繊維樹脂複合材から、長さ100mm、幅25mmの曲げ強度試験片を切り出した。切り出した曲げ試験片は、JIS K−7074に規定する試験方法に従い、室温環境下で、標点間距離を80mmとし、クロスヘッド速度5.0mm/分で3点曲げ試験を行って強度と弾性率を測定した。試験機としてはインストロン万能試験機4465型を用いた。得られた測定値のそれぞれn=4の平均値を曲げ強度および曲げ弾性率として記録した。
<炭素繊維熱可塑性樹脂複合材の製造方法>
<<樹脂フィルムの製造>>
原料の変性ポリプロピレン1は、アイ・ケイ・ジー(株)製PMS30−32に、幅350mmのT−ダイを装着して押し出し、(株)GSIクレオス製シート冷却巻取り装置705−FA082を用いて厚さ約40μmの樹脂組成物フィルム−1とした。
<<樹脂フィルムの製造>>
原料の変性ポリプロピレン1は、アイ・ケイ・ジー(株)製PMS30−32に、幅350mmのT−ダイを装着して押し出し、(株)GSIクレオス製シート冷却巻取り装置705−FA082を用いて厚さ約40μmの樹脂組成物フィルム−1とした。
同様に、変性ポリプロピレン樹脂2から樹脂フィルム−2を、変性ポリプロピレン3から樹脂フィルム−3を、ポリアミド樹脂から樹脂フィルム−4を得た。
<プリプレグの製造>
ドラムワインド方式にて、炭素繊維1を用いて繊維目付を71g/m2に調整した炭素繊維シートを作製した後、この炭素繊維シートに適度に張力を掛け、炭素繊維シートの両面から前記樹脂フィルム−1、フッ素樹脂製フィルム(日東電工(株)社製、製品名:ニトフロンフィルム970−4UL)、アルミ製の平板の順に挟み、加熱冷却二段プレスの加熱盤で230℃、5分、20kPa、冷却盤で5分、30kPaの条件で繊維含有率33vol%、厚み0.13mmを有する炭素繊維熱可塑性樹脂プリプレグPPG−1を得た。
ドラムワインド方式にて、炭素繊維1を用いて繊維目付を71g/m2に調整した炭素繊維シートを作製した後、この炭素繊維シートに適度に張力を掛け、炭素繊維シートの両面から前記樹脂フィルム−1、フッ素樹脂製フィルム(日東電工(株)社製、製品名:ニトフロンフィルム970−4UL)、アルミ製の平板の順に挟み、加熱冷却二段プレスの加熱盤で230℃、5分、20kPa、冷却盤で5分、30kPaの条件で繊維含有率33vol%、厚み0.13mmを有する炭素繊維熱可塑性樹脂プリプレグPPG−1を得た。
同様に、炭素繊維2を用いて繊維目付を98g/m2に調整し、樹脂フィルム−2を用いて繊維含有率42vol%を有する炭素繊維熱可塑性樹脂プリプレグPPG−2を得た。
樹脂フィルム−3、樹脂フィルム−4をそれぞれ用いた以外はPPG−2と同様の条件で、繊維含有率43vol%を有する炭素繊維熱可塑性樹脂プリプレグPPG−3、PPG−4をそれぞれ得た。
同様に、炭素繊維1を用いて繊維目付を98g/m2に調整し、樹脂フィルム−1を用いて繊維含有率41vol%を有する炭素繊維熱可塑性樹脂プリプレグPPG−5を得た。
樹脂フィルム4を用い、加熱冷却二段プレスの加熱盤の条件を260℃、10分に変更した以外はPPG−1と同様にして繊維含有率33vol%を有する炭素繊維熱可塑性樹脂プリプレグPPG−6を得た。
(実施例1)
炭素繊維熱可塑性樹脂プリプレグPPG−1をカッティングプロッター(レザック社製、製品名:L−2500)を用いて、繊維となす角度θの絶対値が45゜、強化繊維の繊維長Lが25mm、切込み長さlが42mmになるように切込みを入れ、212mm角に切り出して、切込入りプリプレグを得た。
炭素繊維熱可塑性樹脂プリプレグPPG−1をカッティングプロッター(レザック社製、製品名:L−2500)を用いて、繊維となす角度θの絶対値が45゜、強化繊維の繊維長Lが25mm、切込み長さlが42mmになるように切込みを入れ、212mm角に切り出して、切込入りプリプレグを得た。
この切込入りプリプレグ基材を積層構成が繰り返し回数n=4の[0/45/90/−45]nsであり、切込みの方向が[−45/0/45/90]nsとなる様に積層し、日本エマソン(株)社製超音波溶着機2000LPtを用いて四隅をスポット溶着させて、切込入りプリプレグ積層材を得た。
こうして得られた切込入りプリプレグ積層材を300mm角で深さ1.5mmの印籠金型内に配置して、200℃まで加熱した後、多段プレス機(神藤金属工業所製圧縮成形機、製品名:SFA−50HH0)で220℃の盤面で0.55MPaの圧力で7分間加熱・加圧後、同一の圧力で室温まで冷却し、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の2倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.1mmであった。
得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。なお、試験片の切り出しに際しては、プリプレグ積層基材を配置した部分の近傍を選択することで、機械的強度、並びに流動特性の異方性の影響を排除した。
(実施例2)
プリプレグの切り出しサイズを150mm角にし、積層構成の繰り返し回数n=8とした以外は実施例1と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の4倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.1mmであった。得られた複合材について物性測定を行い、結果を表2に記した。
プリプレグの切り出しサイズを150mm角にし、積層構成の繰り返し回数n=8とした以外は実施例1と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の4倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.1mmであった。得られた複合材について物性測定を行い、結果を表2に記した。
(実施例3)
プリプレグの切り出しサイズを100mm角にし、積層構成の繰り返し回数n=18とした以外は実施例1と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の9倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.1mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
プリプレグの切り出しサイズを100mm角にし、積層構成の繰り返し回数n=18とした以外は実施例1と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の9倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.1mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
(比較例1)
プリプレグの切り出しサイズを300mm角にし、積層構成の繰り返し回数n=2とした以外は実施例1と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の1倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.1mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
プリプレグの切り出しサイズを300mm角にし、積層構成の繰り返し回数n=2とした以外は実施例1と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の1倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.1mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
(比較例2)
プリプレグの切り出しサイズを254mm角にし、積層構成の繰り返し回数n=3とした以外は実施例1と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の1.4倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.2mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
プリプレグの切り出しサイズを254mm角にし、積層構成の繰り返し回数n=3とした以外は実施例1と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の1.4倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.2mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
(実施例4)
上記で得られたPPG−2を、幅8mmにスリットした後、裁断機を用いて、長さ30mmに裁断し、チョップドプリプレグを得た。得られたチョップドプリプレグ63gを鋼鉄製の成型型(内部形状:120mm×200mm×15mm)の中に、繊維配向がランダムになるように堆積させた。
上記で得られたPPG−2を、幅8mmにスリットした後、裁断機を用いて、長さ30mmに裁断し、チョップドプリプレグを得た。得られたチョップドプリプレグ63gを鋼鉄製の成型型(内部形状:120mm×200mm×15mm)の中に、繊維配向がランダムになるように堆積させた。
前記チョップドプリプレグを堆積させた成型型を、盤温280℃に予め加熱させた加熱冷却二段プレス機(神藤金属工業所社製、F−37)に投入し金型の内温が210℃になるまで予熱を行った。続いて、圧力2.0MPaで7分間加熱プレスを行った後、圧力4.0MPaで冷却プレスを行い、繊維がランダムに配向した炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
(実施例5)
使用したプリプレグをPPG−3に変えた以外は実施例4と同様にして、繊維がランダムに配向した炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
使用したプリプレグをPPG−3に変えた以外は実施例4と同様にして、繊維がランダムに配向した炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
(実施例6)
使用したプリプレグをPPG−4に変えた以外は実施例4と同様にして、繊維がランダムに配向した炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、43に記した。
使用したプリプレグをPPG−4に変えた以外は実施例4と同様にして、繊維がランダムに配向した炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、43に記した。
(比較例3)
使用したプリプレグをPPG−5に変えた以外は実施例4と同様にして、繊維がランダムに配向した炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
使用したプリプレグをPPG−5に変えた以外は実施例4と同様にして、繊維がランダムに配向した炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
(実施例7)
プリプレグをPPG−6とし、予備加熱温度を240℃、多段プレス機の盤面温度を250℃とした以外は実施例1と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の2倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.1mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
プリプレグをPPG−6とし、予備加熱温度を240℃、多段プレス機の盤面温度を250℃とした以外は実施例1と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の2倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.1mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
(実施例8)
プリプレグの切り出しサイズを150mm角にし、積層構成の繰り返し回数n=8とした以外は実施例7と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の4倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.1mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
プリプレグの切り出しサイズを150mm角にし、積層構成の繰り返し回数n=8とした以外は実施例7と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の4倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.1mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
(比較例4)
プリプレグの切り出しサイズを300mm角にし、積層構成の繰り返し回数n=2とした以外は実施例7と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の1倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.1mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
プリプレグの切り出しサイズを300mm角にし、積層構成の繰り返し回数n=2とした以外は実施例7と同様にして、投影面積が切込入りプリプレグ積層基材の面積の1倍となる炭素繊維樹脂複合材を得た。得られた複合材の厚みは約2.1mmであった。得られた複合材の製造条件を表2に、特性評価結果を表3、4に記した。
<成形試験例>
(予備加熱工程)
得られた炭素繊維樹脂複合材シートを、太さ10mmφ、長さ1,000mmの鉄製の棒を間隔100mmでフォーク状に配置した治具上に保持し、赤外ヒーターを用いた予備加熱機中に保持する。
(予備加熱工程)
得られた炭素繊維樹脂複合材シートを、太さ10mmφ、長さ1,000mmの鉄製の棒を間隔100mmでフォーク状に配置した治具上に保持し、赤外ヒーターを用いた予備加熱機中に保持する。
シート表面温度を非接触式温度センサーで計測し、表面温度が樹脂の結晶融点より60℃高い温度に達するまで加熱を行う。
(移送工程)
加熱が終了したシートを、保持している治具ごと樹脂の結晶融点より20℃低い温度に温度調整された冷却プレス機の金型中に移送する。
加熱が終了したシートを、保持している治具ごと樹脂の結晶融点より20℃低い温度に温度調整された冷却プレス機の金型中に移送する。
(圧縮成形工程)
シートを金型内に100mm間隔で突き出しているエジェクターピン上に置き、シートを保持していたフォーク状の治具を抜き取り、エジェクターピンを金型と連動させて収めながら金型を閉じ、1〜5分間加圧下でシートを冷却し、所望の炭素繊維樹脂複合材成形体を得る。
シートを金型内に100mm間隔で突き出しているエジェクターピン上に置き、シートを保持していたフォーク状の治具を抜き取り、エジェクターピンを金型と連動させて収めながら金型を閉じ、1〜5分間加圧下でシートを冷却し、所望の炭素繊維樹脂複合材成形体を得る。
(作業性、並びに成形体外観の評価)
本発明の実施例に記載のシートは、いずれもシートのドローダウンが小さいため、運搬に支障がなく作業性が良好であるとともに、エジェクターピンでの皺の発生も抑えられ、良好な外観の成形体が得られる。
本発明の実施例に記載のシートは、いずれもシートのドローダウンが小さいため、運搬に支障がなく作業性が良好であるとともに、エジェクターピンでの皺の発生も抑えられ、良好な外観の成形体が得られる。
本発明の比較例に記載のシートは、予備加熱工程や移送工程で大きくドローダウンして、シートが破れたり冷却プレス機の金型への装填が不可能となり、作業性が悪いかまたは作業の継続が困難となる。また、冷却金型に装填した後にエジェクターピンによる突き破りが生じたり、皺が発生するなどして良外観の成形体が得られない。
Claims (5)
- 炭素繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)とからなる炭素繊維樹脂複合材シートであり、該熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃、または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃における該炭素繊維樹脂複合材シートの下記式(1)で表される動的粘弾性指標Rが、0.3〜1.0である炭素繊維樹脂複合材シート。
R=G’(0.01)/G’(1.0) ・・・式(1)
G’(0.01):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=0.01(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率
G’(1.0):前記熱可塑性樹脂(B)の結晶融点+40℃または該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃、かつ角周波数ω=1.0(rad/sec)における該炭素繊維樹脂複合材シートの貯蔵弾性率 - 一方向に引き揃えられた炭素繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)とからなるプリプレグを積層することよりなる、請求項1に記載の炭素繊維樹脂複合材シート。
- 炭素繊維樹脂複合材シートを構成する熱可塑性樹脂の結晶融点+40°または当該熱可塑性樹脂が融点を有さない非晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点+40℃における当該熱可塑性樹脂の溶融粘度η(Pa・s)を、炭素繊維(A)の平均単繊維繊度N(dtex)の自乗で除した下記式(2)で表される値Hが250以下である、請求項1または2に記載の炭素繊維樹脂複合材シート。
H=η/N2 ・・・式(2) - 請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維樹脂複合材シートを、
1)熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度に加熱する工程、
2)加熱されたシートを軟化点以下の圧縮成形金型に移送する工程、
3)圧縮成形工程
を経て炭素繊維樹脂複合材成形体を得る成形方法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維樹脂複合シートを圧縮成形することにより得られる、炭素繊維樹脂複合材成形体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015048907A JP2016169271A (ja) | 2015-03-12 | 2015-03-12 | 耐ドローダウン性が改良された炭素繊維樹脂複合材シート |
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JP2015048907A JP2016169271A (ja) | 2015-03-12 | 2015-03-12 | 耐ドローダウン性が改良された炭素繊維樹脂複合材シート |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2017073161A1 (ja) * | 2015-10-30 | 2017-05-04 | 住友化学株式会社 | 成形体の製造方法 |
JP2021008568A (ja) * | 2019-07-01 | 2021-01-28 | 大日本印刷株式会社 | 熱溶着性フィルム、積層体、加飾成形体の製造方法、及び加飾成形体 |
-
2015
- 2015-03-12 JP JP2015048907A patent/JP2016169271A/ja active Pending
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JP7404675B2 (ja) | 2019-07-01 | 2023-12-26 | 大日本印刷株式会社 | 熱溶着性フィルム、積層体、加飾成形体の製造方法、及び加飾成形体 |
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