第1実施形態
図1は、本発明を適用可能な印刷システムの一例を示す模式図である。なお、図1や以下の図面では必要に応じて、装置各部の配置関係を明確にするために、Z軸を鉛直軸とするXYZ直交座標が併記されている。以下の説明では、各座標軸(の矢印)が向く方向を正方向とし、その反対方向を負方向とし、Z軸の正側を上側とし、Z軸の負側を下側として適宜取り扱う。
印刷システム100は、パーソナルコンピューター等の外部装置から受信した画像データに基づいて印刷データを生成するホスト装置200と、ホスト装置200から受信した印刷データに基づいて画像を印刷するプリンター300とを備える。このプリンター300は、その両端がロール状に巻かれた長尺な1枚のシートS(ウェブ)をロール・トゥ・ロール方式で搬送しつつ、シートSに対してインクジェット方式を用いて画像を印刷(画像を形成)するものである。
図1に示すように、プリンター300は、略直方体形状を有する本体ケース1を備える。本体ケース1内部には、シートSを巻いたロールR1からシートSを繰り出す繰出部2と、繰り出されたシートSにインクを噴射して印刷を行う印刷室3と、インクが付着したシートSを乾燥させる乾燥部4と、乾燥後のシートSをロールR2として巻き取る巻取部5とが配置されている。
より詳しくは、本体ケース1内は、XY平面に平行に(すなわち水平に)配置された平板状の基台6によってZ軸方向へ上下に区画されており、基台6の上側が印刷室3となっている。印刷室3内の略中央部では、プラテン30が基台6の上面に固定されている。プラテン30は矩形状を有しており、XY平面に平行なその上面によって、シートSを下側から支持する。そして、記録ユニット31が、プラテン30上に支持されたシートSに対して印刷を行う。
一方、基台6の下側には、繰出部2、乾燥部4および巻取部5が配置されている。繰出部2は、プラテン30に対してX軸負方向の下側(図1の左斜め下)に配置されており、回転自在な繰出軸21を備えている。そして、この繰出軸21にシートSがロール状に巻きつけられて、ロールR1が支持されている。一方、巻取部5は、プラテン30に対してX軸正方向の下側(図1の右斜め下)に配置されており、回転自在な巻取軸51を備えている。そして、この巻取軸51にシートSがロール状に巻き取られて、ロールR2が支持されている。また、乾燥部4は、X軸方向における繰出部2と巻取部5との間で、プラテン30の直下に配置されている。なお、乾燥部4は、繰出部2および巻取部5に対してはやや上側にある。
そして、シートSは、繰出部2から巻取部5へ向かう搬送経路Pcに沿って搬送されて、印刷室3と乾燥部4とを順番に通過する。具体的には、繰出部2が備える繰出軸21から繰り出されたシートSは、後述するコロナ処理ユニット8を経由して、印刷室3へと案内される。この印刷室3の内部には、2本のローラー72、73がシートSのX軸正方向にこの順に並んでいる。そして、印刷室3内に案内されたシートSは、これら2本のローラー72、73へ巻き掛けられる。ローラー72、73は、プラテン30を挟むようにしてX軸方向にまっすぐ並んで(すなわち水平に)配置されており、それぞれの頂部がプラテン30の上面(シートSを支持する面)と同一の高さとなるように位置調整されている。したがって、ローラー72に巻き掛けられたシートSは、ローラー73に到るまでの間、プラテン30の上面に摺接しつつ水平(X軸方向)に移動する。そして、ローラー73に巻き掛けられたシートSは、下へと案内される。
ローラー73の下側(基台6より下側)には、2本のローラー74、75がX軸負方向にこの順に並んでいる。ローラー74とローラー75とに巻き掛けられたシートSは、両ローラー74、75の間においてX軸方向に平行に(すなわち水平に)案内される。また、ローラー74、75の間には乾燥部4が配置されている。したがって、ローラー74に巻き掛けられたシートSは、X軸負方向に向きを変えるとともに、ローラー75に到るまでの間に乾燥部4の内部を通過する。ローラー75の下側では、2本のローラー76、77がX軸正方向にこの順に並んでいる。そして、ローラー76に巻き掛けられたシートSは、X軸正方向に向きを変えてローラー77に到る。また、ローラー77に巻き掛けられたシートSは、ローラー77のX軸正方向に配置された巻取部5の巻取軸51に巻き取られる。
このように、繰出部2から繰り出されたシートSは、印刷室3や乾燥部4を通過して巻取部5に巻き取られる。そして、このシートSに対して、印刷室3での印刷処理や乾燥部4の乾燥処理等の各種処理が施される。
印刷室3での印刷処理は、プラテン30の上側に配置された記録ユニット31により実行される。この記録ユニット31は、印刷室3内のX軸負方向の端部(図1の左端部)に配置されたインクカートリッジCRから図示しないインク供給機構によって供給されたインクを、インクジェット方式によりシートSに噴射して印刷を行う。具体的には、この記録ユニット31は、キャリッジ32と、キャリッジ32の下面に取り付けられた平板状の支持板33と、支持板33の下面に取り付けられた複数の記録ヘッド34とを備える。
図2は、記録ユニットの構成を部分的に示す平面図である。図2に示すように、支持板33の下面では、15個の記録ヘッド34がY軸方向に等ピッチで2行千鳥で並んでいる。これらの記録ヘッド34は、ノズル35からインクを噴射するものであり、互いに同一の構成を備えている。そこで以下では、1つの記録ヘッド34で代表して、その構成の詳細について説明する。
記録ヘッド34の下面では、複数(例えば180個)のノズル35がY軸方向に等ピッチで直線状に並んで1つのノズル列35Lが構成されるとともに、複数のノズル列35LがX軸方向に等ピッチで並んでいる。記録ヘッド34の下面で並ぶ複数のノズル列35Lは、互いに異なるインク色に対応しており、例えば8色のインクを用いた場合は、8列のノズル列35Lが記録ヘッド34の下面に並ぶ。そして、同じノズル列35Lに属するノズル35は互いに同じ色のインクを噴射する一方、異なるノズル列35Lに属するノズル35は互いに異なる色のインクを噴射する。なお、ノズル35は、インクの詰まった微細管に取り付けられたピエゾ素子に電圧を印加して変形させることで、インクを管外に噴射するピエゾ方式によるものである。
図1に戻って説明を続ける。上述のように構成された記録ユニット31のキャリッジ32は、支持板33および記録ヘッド34と一体的に移動自在となっている。具体的には、印刷室3内には、X軸方向に延びる第1ガイドレール36が設けられており、キャリッジ32は、第1CRモーターMx(図3)の駆動力を受けると、第1ガイドレール36に沿ってX軸方向に移動する。さらに、印刷室3内には、Y軸方向に延びる第2ガイドレール(図示省略)が設けられており、キャリッジ32は、第2CRモーターMy(図3)の駆動力を受けると、第2ガイドレールに沿ってY軸方向に移動する。
そして、プラテン30の上面で停止するシートSに対して、記録ユニット31のキャリッジ32をXY面内で二次元的に移動させて、印刷が実行される。具体的には、記録ユニット31は、キャリッジ32をX軸方向(主走査方向)に移動させつつ記録ヘッド34の各ノズル35からシートSにインクを噴射する動作(主走査)を実行する。この主走査では、1つのノズルが噴射するインクにより形成されたX軸方向に延びる1ライン分の画像(ライン画像)が、Y軸方向に間隔を空けつつ複数並んで、二次元の画像が印刷される。そして、この主走査と、キャリッジ32をY軸方向(副走査方向)に移動させる副走査とが交互に実行されて、複数回の主走査が実行される(ラテラルスキャン方式)。
つまり、記録ユニット31は1回の主走査を完了すると、副走査を行なってキャリッジ32をY軸方向に移動させる。続いて、記録ユニット31は、この副走査によって移動した位置から、キャリッジ32をX軸方向(の先程の主走査とは反対向き)に移動させる。これによって、先程の主走査により既に形成された複数のライン画像それぞれの間に、新たな主走査によるライン画像が形成される。そして、これら主走査と副走査とが交互に実行される。つまり、このプリンター300では、キャリッジ32をX軸方向に移動させつつノズル35からインクを噴射して、複数のライン画像から成る中間生成画像を形成する動作(主走査)を、Y軸方向への位置を変えながら(副走査)、複数回数実行することで、中間生成画像を重ね合わせた画像が形成される。
このように、複数回の主走査を実行することで、1回の印刷が実行される。ここで、1回の主走査を「パス」と称することとし、複数回のパスにより実行される1回の印刷を「フレーム」と称することとする。また、1回のパスでシートSに形成される中間生成画像を「1パス画像」と称することとする。
このような主走査と副走査を交互に繰り返して行う理由は、解像度を向上させるためである。つまり、M回のパスを実行して、M個の1パス画像を重ね合わせることで、1パス画像のM倍の解像度を有する1フレーム分の画像を得ることが可能となる。そこで、記録ユニット31は、印刷すべき画像の解像度に応じた回数のパスを実行して1フレームの印刷を実行する。ちなみに、キャリッジ32は、X軸方向に往復移動可能である。そこで、記録ユニット31は、キャリッジ32の往路および復路のそれぞれでパスを実行することで、複数のパスを効率的に実行している。
上述のような1フレームの印刷は、シートSをX軸方向に間欠的に移動させながら繰り返し実行される。具体的には、プラテン30の上面のほぼ全域にわたる所定範囲が印刷領域となっている。そして、この印刷領域のX軸方向への長さに対応する距離(間欠搬送距離)を単位として、シートSをX軸方向へ間欠的に搬送するとともに、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止するシートSに対して1フレームの印刷が行われる。具体的に言えば、プラテン30に停止するシートSに1フレームの印刷が終わると、シートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送されて、シートSの未印刷の面がプラテン30に停止する。続いて、この未印刷面に新たに1フレームの印刷が実行され、これが完了すると、再びシートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送される。そして、これら一連の動作が繰り返し実行される。
なお、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止しているシートSを平坦に保つために、プラテン30は、その上面に停止しているシートSを吸引する機構を備える。具体的には、プラテン30の上面には、図示しない多数の吸引孔が開口するとともに、プラテン30の下面には、吸引部37が取り付けられている。そして、吸引部37が動作することで、プラテン30の上面の吸引孔に負圧が発生して、シートSがプラテン30の上面に吸引される。そして、吸引部37は、印刷のためにシートSがプラテン30上に停止している間は、シートSを吸引することで、シートSを平坦に保つ一方、印刷が終了すると、シートSの吸引を止めて、シートSのスムーズな搬送を可能とする。
さらに、プラテン30の下面には、ヒーター38が取り付けられている。このヒーター38は、プラテン30を所定温度(例えば45度)に加熱するものである。これにより、シートSは、記録ヘッド34から印刷処理を受けるのと並行して、プラテン30の熱によって1次乾燥されることとなる。そして、この1次乾燥により、シートSに着弾したインクの乾燥が促進される。
こうして、プラテン30の上面において、1フレームの印刷を受けるとともに1次乾燥されたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って移動して乾燥部4へ到達する。この乾燥部4は、乾燥用に加熱した空気により、シートSに着弾したインクを完全に乾燥させる乾燥処理を実行する。そして、この乾燥処理を受けたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って巻取部5に到達して、ロールR2として巻き取られる。
以上のようにして、記録ユニット31および乾燥部4によって、シートSに対して印刷・乾燥処理が施される。また、プリンター300は、上述した記録ユニット31や乾燥部4ほかに、コロナ処理ユニット8やメンテナンスユニット9といった機能部を備える。続いて、これらの構成および動作の詳細について説明する。
コロナ処理ユニット8は、搬送経路Pcにおける繰出軸21のロールR1とローラー72(プラテン30)の間に配置されており、コロナ処理機80とシート逆送機構82とで構成される。コロナ処理機80は、シートSの表面に対向するコロナ放電電極801と、コロナ放電電極801を覆う電極カバー802とを有する。一方、シート逆送機構82は、シートSを裏面から巻き掛けてコロナ処理機80に対向するアースローラー821と、アースローラー821に対して搬送経路Pcの上下流側それぞれでシートSを表面から巻き掛ける揺動ローラー822、823とを有する。そして、シートSは、コロナ処理機80に対向する処理位置Ap(換言すれば、アースローラー821に巻き掛けられた位置)でコロナ処理を受ける。
また、シート逆送機構82は回転支持軸824を有している。この回転支持軸824は、その両端に揺動ローラー822、823を回転自在に支持しつつ、揺動ローラー822、823の中間位置を回転軸C824として回転可能になっている。したがって、後に詳述するように、回転支持軸824を適宜回転させることで、コロナ処理機80の処理位置Apに対して、シートSを相対移動させることが可能となっている。
そして、コロナ放電電極801が放電バイアス発生部84(図3)に接続される一方、アースローラー821が接地されている。したがって、放電バイアス発生部84からコロナ放電電極801に放電バイアスが印加されると、コロナ放電電極801とアースローラー821との間にコロナ放電が発生して、処理位置ApにあるシートSの表面にコロナ処理(表面改質処理)が実行される。こうして、コロナ放電によるエネルギーがシートS表面に与えられて、シートS表面が改質され、シートSのインクに対する濡れ性が向上する。そして、かかるコロナ処理を受けたシートSがプラテン30に供給されて、記録ユニット31による印刷処理を受ける。ちなみに、このような構成を具備するコロナ処理機80は、コロナ処理の実行に伴って発熱するといった性質を有する。
メンテナンスユニット9は、プラテン30からX軸負方向に外れた位置に設けられており、非印刷時にホームポジション(メンテナンスユニットの直上位置)に退避する記録ヘッド34に対してメンテナンスを行う。このメンテナンスユニット9は、15個の記録ヘッド34に対して一対一の対応関係で設けられた15個のキャップ91と、キャップ91を昇降する昇降部93とを有する。
このメンテナンスユニット9で実行されるメンテナンスとしては、キャッピング、クリーニングおよびワイピングがある。キャッピングは、昇降部93によりキャップ91を上昇させて、ホームポジションにある記録ヘッド34をキャップ91で覆う処理である。このキャッピングにより、記録ヘッド34が有するノズル35内でインクの粘性が増大するのを抑制することができる。また、クリーニングは、記録ヘッド34をキャッピングした状態で、キャップ91内に負圧を発生させることにより、ノズル35から強制的にインクを排出する処理である。このクリーニングにより、粘性が増大したインクやインク中の気泡等をノズル35から除去することができる。ワイピングは、記録ヘッド34においてノズル35の開口が並ぶ面(ノズル開口形成面)を、図示しないワイパーにより拭く処理である。このワイピングにより、記録ヘッド34のノズル開口形成面からインクを拭き取ることができる。
以上が、印刷システム100が備える装置構成の概要である。続いて、上述した図1に図3を加えて、図1の印刷システムが備える電気的構成について詳述する。ここで、図3は、図1の印刷システムが備える電気的構成を模式的に示すブロック図である。
上述したとおり、印刷システム100は、プリンター300のほか、これを制御するホスト装置200を備える。このホスト装置200は、例えばパーソナルコンピューターにより構成されており、プリンター300の動作を制御するプリンタードライバー210を内蔵するほか、プリンター300との通信機能を司る転送制御部220を備える。なお、プリンタードライバー210は、ホスト装置200の備えるCPU(Central Processing Unit)がプリンタードライバー210用のプログラムを実行することで構築される。
また、ホスト装置200は、プリンタードライバー用のプログラムが記憶されたメディア230にアクセスして、当該プログラムを読み出すメディア駆動部240を備える。このメディア230としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等の種々のメディアを用いることができる。
さらに、ホスト装置200は、作業者とのインターフェースとして、液晶ディスプレイ等で構成されるモニター250と、キーボードやマウス等で構成される操作部260とを備える。なお、タッチパネル式のディスプレイをモニター250として用いて、このモニター250のタッチパネルで操作部260を構成しても良い。モニター250には、印刷対象の画像のほかにメニュー画面が表示されている。したがって、作業者は、モニター250を確認しつつ操作部260を操作することで、メニュー画面から印刷設定画面を開いて、印刷媒体の種類、印刷媒体のサイズ、印刷品質、版数等の各種の印刷条件を設定することができる。
印刷媒体(すなわちシートS)の種類は、紙系とフィルム系に大別される。具体例を挙げると、紙系には上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙等があり、フィルム系には合成紙、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)等がある。印刷媒体のサイズとしては、シートSの幅(Y軸方向の幅)が設定される。印刷品質は、印刷する解像度に応じて用意された複数の印刷モードから1つの印刷モードを選択することで、設定することができる。例を挙げれば次のとおりである。つまり、上記プリンター300では、1フレームで実行されるパスの数を変えることで解像度を変化できる。そこで、1フレームで実行されるパスの数が異なる複数の印刷モードを用意しておき、印刷する解像度に応じたパス数の印刷モードを選択できるように構成すれば良い。これにより、選択した印刷モードのパス数に応じた解像度で印刷を実行することができる。なお、印刷モードに代えて解像度を直接入力することで、印刷品質を設定するように構成しても良い。版数は、印刷媒体の同一エリアに複数の版(画像)を重ねて印刷する際に設定されるものであり、具体的には、重ねて印刷する版の数が設定される。ちなみに、複数の版が設定されている場合は、モニター250に版毎の画像を表示することができる。
そして、プリンタードライバー210は、上述のような、モニター250の表示や、操作部260からの入力の処理を制御するホスト制御部211を備える。つまり、ホスト制御部211は、メニュー画面や印刷設定画面等の各種画面をモニター250表示させるともに、各種画面において操作部260から入力された内容に応じた処理を行う。これにより、ホスト制御部211は、作業者からの入力に応じてプリンター300を制御するために必要な制御信号を生成する。
また、プリンタードライバー210は、外部装置から受信した画像データに対して画像処理を施して、印刷データを生成する画像処理部213を備える。具体的には、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理等といった画像処理が実行される。
そして、ホスト制御部211で生成された制御信号や、画像処理部213で生成された印刷データは転送制御部220を介して、プリンター300の本体ケース1内に設けられたプリンター制御部400に転送される。この転送制御部220は、プリンター制御部400との間で双方向のシリアル通信が可能となっており、プリンター制御部400に制御信号や印刷データを転送するとともに、その応答信号をプリンター制御部400から受信してホスト制御部211に送信する。
プリンター制御部400は、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とを備える。ヘッドコントローラー410は、プリンタードライバー210から送信されてきた印刷データに基づいて、記録ヘッド34を制御する機能を司る。具体的には、ヘッドコントローラー410は、記録ヘッド34のノズル35からのインク噴射を、印刷データに基づいて制御する。この際、ノズル35からインクを噴射するタイミングは、キャリッジ32のX軸方向への移動に基づいて制御される。つまり、印刷室3内には、キャリッジ32のX軸方向の位置を検出するリニアエンコーダーE32が設けられている。そして、ヘッドコントローラー410は、リニアエンコーダーE32の出力を参照することで、キャリッジ32のX軸方向への移動に応じたタイミングで、ノズル35からインクを噴射させる。
一方、メカコントローラー420は、シートSの間欠搬送やキャリッジ32の駆動を制御する機能を主として司る。具体的には、メカコントローラー420は、繰出部2、ローラー71〜77および巻取部5で構成されるシート搬送系を駆動する搬送モーターMsを、搬送モーターMsの回転を検出するエンコーダーEmcの出力に基づいて制御して、シートSの間欠搬送を実行する。また、メカコントローラー420は、第1CRモーターMxを制御することで、主走査のためのX軸方向への移動をキャリッジ32に実行させるとともに、第2CRモーターMxを制御することで、副走査のためのY軸方向への移動をキャリッジ32に実行させる。
そして、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とが同期を取りつつ、これらの制御を適宜実行することで、間欠搬送されるシートSに対して、解像度に応じた回数のパスが実行されて、1フレーム分の印刷が実行される。これにより、所望の解像度を有する1フレーム分の画像がシートSに印刷される。
また、メカコントローラー420は、印刷処理のための上記制御のほかに種々の制御を実行できる。具体的には、メカコントローラー420は、電源スイッチSWのオン/オフを検出して、電源スイッチSWがオンした場合には、プリンター300の各部の起動処理を実行する。また、メカコントローラー420は、プラテン30上面の温度を検出する温度センサーS30の出力に基づいて、ヒーター38をフィードバック制御したり、乾燥部4の内部の温度を検出する温度センサーS4の出力に基づいて、乾燥部4をフィードバック制御したりといった温度制御を実行する。さらに、メカコントローラー420は、吸引部37を制御してプラテン30の吸引孔に発生する負圧を調整したり、メンテナンスユニット9を制御して所定のメンテナンスを実行したりといった各動作を実行可能である。特に、後に説明するように、この実施形態のメカコントローラー420は、シート逆送機構82および放電バイアス発生部84を制御して、シートSへの表面改質処理を実行する。
以上が、図1の印刷システムが備える電気的構成の概要である。続いては、第1実施形態で実行される印刷動作の詳細について説明する。なお、上述したとおり、プリンター300には、シートSに表面改質処理(コロナ処理)を実行するコロナ処理ユニット8が設けられている。そして、プリンター300で実行される印刷動作では、シートSへの表面改質処理が適宜実行される。そこで、以下では、コロナ処理ユニットの動作(図4)について説明してから、プリンター300で実行される印刷動作(図5)について説明する。
図4は、第1実施形態でのコロナ処理ユニットを模式的に示した側面図である。上述したとおり、コロナ処理ユニット8は、コロナ処理機80とシート逆送機構82とを有する。そして、シート逆送機構82の回転支持軸824を適宜回転させることで、コロナ処理機80の処理位置Apに対してシートSを相対移動させることが可能となっている。具体的には図4に示すように、回転支持軸824は、回転角度が角度θ(+)の状態と回転角度が角度θ(-)の状態とを取ることができる。そして、回転支持軸824の回転角度が角度θ(+)から角度θ(-)へ切り換わると、処理位置Apより搬送経路Pcの下流側のシートSの一部が、処理位置Apより搬送経路Pcの上流側に移動する。
つまり、回転角度が角度θ(+)から角度θ(-)へ切り換わると、ロールR1から処理位置Apにある揺動ローラー822は、シートSを上側から巻き掛けつつ下降する。これに対して、処理位置Apからローラー72(プラテン30)の間にある揺動ローラー823は、シートSを上側から巻き掛けつつ上昇する。その結果、処理位置Apより搬送経路Pcの下流側にあったシートSが、ロールR1から処理位置Apの間に移動する。より詳細に説明すると次の通りである。
処理位置Apより搬送経路の上流側のシートSの長さと下流側のシートSの長さを次のように定義する。
上流側バッファー量Lu:ロールR1から処理位置ApまでのシートSの長さ。
下流側バッファー量Ld:処理位置Apからプラテン30までのシートSの長さ。
また、回転支持軸824の各回転状態での上流側・下流側のバッファー量Lu、Ldを次のように定義する。
バッファー量Lu(+):回転角度が角度θ(+)の際における上流側バッファー量Lu。
バッファー量Lu(-):回転角度が角度θ(-)の際における上流側バッファー量Lu。
バッファー量Ld(+):回転角度が角度θ(+)の際における上流側バッファー量Ld。
バッファー量Ld(-):回転角度が角度θ(-)の際における上流側バッファー量Ld。
そして、処理位置Apの搬送経路Pcの上流側と下流側の間におけるシートSの移動量をΔSとすると、概ね次の関係式
Lu(+)−Lu(-)=−{Ld(+)−Ld(-)}=ΔS
が成立する。つまり、回転支持軸824の回転角度が角度θ(+)から角度θ(-)に切り換わることで、上流側バッファー量Luが移動量ΔSだけ増加する一方、下流側バッファー量Ldが移動量ΔSだけ減少する。すなわち、処理位置Apの搬送経路Pcの下流側にあった移動量ΔSに相当する長さのシートSが、ロールR1から処理位置Apの間に移動することとなる。
こうして、回転支持軸824の回転角度を角度θ(+)から角度θ(-)へ切り換えることで、処理位置Apに対してシートSを搬送経路Pcの上流側に移動量ΔSだけ相対移動させることができる(シート逆送処理)。また、上記説明から理解できるように、回転支持軸824回転角度を角度θ(-)から角度θ(+)へ切り換えた場合には、処理位置Apに対してシートSを搬送経路Pcの下流側に移動量ΔSだけ相対移動させることができる。以上が、コロナ処理ユニットの動作の詳細である。続いては、プリンター300で実行される印刷動作について説明する。
図5は、第1実施形態で実行される印刷動作の一例を示すタイミングチャートである。なお、以下の説明では、ローラー72および繰出軸21の回転方向を示すために、「正方向」あるいは「逆方向」という表現を用いる。この際、「正方向」とは、シートSを搬送経路Pcの上流側から下流側に向けて搬送する回転方向を示し、「負方向」とは、シートSを搬送経路Pcの下流側から上流側に向けて搬送する回転方向を示すものとする。
上述したとおり、プリンター300では、プラテン30の上面に間欠的にシートSを搬送しつつ、プラテン30の上面で停止中のシートSの表面に対して印刷が実行される。そこで、印刷動作においては、シートSの間欠搬送を制御するための搬送指令がメカコントローラー420から出力される。具体的には、図5に示す例では、時刻t1〜t2の間と時刻t3〜t4の間は、搬送指令が出力される一方、時刻t2〜t3の間は、搬送指令が出力されない(図5の「搬送指令」のグラフ)。
そして、搬送指令が出力される間は、ローラー72(駆動ローラー)が正方向(図1の時計回り方向)に回転して、搬送経路Pcの上流側からプラテン30にシートSを搬送する。また、ローラー72の回転に応じて、繰出軸21も正方向(図1時計の時計回り方向)に回転して、搬送経路Pcの上流側からコロナ処理ユニット8を介してローラー72にシートSを搬送する。これによって、ローラー72がプラテン30に搬送するシートSが、繰出軸21のロールR1から繰り出されてローラー72に供給される。一方、搬送指令が出力されない間は、ローラー72および繰出軸21は、回転を停止して、プラテン30へのシートSの搬送を停止する。
また、このようにして間欠搬送されるシートSは、コロナ処理ユニット8の処理位置Apを間欠的に通過する(図5の「シート通過状況」のグラフ)。具体的には、図5に示す例では、時刻t1〜t2の間と時刻t3〜t4の間は、シートSが処理位置Apを通過する一方、時刻t2〜t3の間は、シートSが処理位置Apにおいて停止している。つまり、通過期間Tp(時刻t1〜t2の間と時刻t3〜t4の間)は、シートSは搬送経路Pcの下流側へ向けて処理位置Apを通過する一方、停止期間Ts(時刻t2〜t3の間)は、シートSは処理位置Apで停止する(搬送工程)。
そして、メカコントローラー420は、シートSが処理位置Apを通過するタイミングに応じて、コロナ処理機80のオン・オフを制御する放電指令を放電バイアス発生部84に与える。具体的には、メカコントローラー420は、シートSの通過期間Tpに放電指令を放電バイアス発生部84に出力する一方、シートSの停止期間Tsには放電指令を出力しない。そして、放電バイアス発生部84がこの放電指令に応じて出力する放電バイアスを受けて、コロナ処理機80がコロナ放電を実行する。
なお、図5の「放電状況」のグラフに示すように、コロナ処理機80のコロナ放電は、シートSの通過期間Tpの開始から一定の遅延時間dを経てから放電を開始し、シートSの通過期間Tpの終了とともに終了する。このように、シートSの通過期間Tpの開始からコロナ放電の立ち上がりまでには、時間差dが生じる。したがって、シートSの通過期間Tpの開始から遅延時間dの間に処理位置Apを通過したシートSに対しては、表面改質処理が実行されない。そして、コロナ放電の立ち上がりからシートSの通過期間Tpが終了するまでの間に処理位置Apを通過したシートSに対してのみ、表面改質処理(コロナ処理)が実行される(表面改質工程)。
そこで、この実施形態では、コロナ放電の立ち上がりの遅れに拘わらず、表面改質処理の不足する領域を少なく抑えるために、メカコントローラー420はシート逆送機構82にシート逆送処理を適宜実行させる。つまり、シートSの停止期間Tsのうちの所定時間Tb(図5の例では、停止期間Tsの開始から所定時間Tb)の間、回転支持軸824を角度θ(+)から角度θ(-)まで回転させて、シート逆送処理が実行される(相対移動工程)。
これによって、この停止期間Ts(t2〜t3)に続く通過期間Tp(t3〜t4)で実行されるシートSへの表面改質処理に先立って、処理位置Apに対して搬送経路Pcの上流側にシートSが移動量ΔSだけ移動される。その結果、この停止期間Ts(t2〜t3)の前の通過期間Tp(t1〜t2)で表面改質処理を受けたシートSの一部(移動量ΔSに相当する部分)が、処理位置Apに対して搬送経路Pcの上流側に移動する。したがって、続いて実行される通過期間Tp(t3〜t4)では、通過期間Tpの開始から所定時間ΔTは、既に表面改質処理を受けたシートSが処理位置Apを通過する。よって、通過期間Tpからコロナ放電の立ち上がりが遅延時間dだけ遅れても、表面改質処理が不十分となるシートSの量を抑制することができる。
特に、時間ΔTが遅延時間d以上となるように、シート逆送処理での移動量ΔSを設定しておけば、表面改質処理が不十分となるシートSの発生をほぼ完全に抑制することができる。ちなみに、コロナ放電の立ち上がりの遅延時間dは、実験的に予め求めることができる。具体的には、放電指令が発生してから、シートSの表面改質に必要なエネルギーの放電が開始するまでの期間を遅延時間dとして求めれば良い。また、この遅延時間dの間に処理位置Apを通過するシートSの量は、遅延時間dにシートSの通過速度を乗ずることで求められる。したがって、こうして求めたシートSの通過量以上に移動量ΔSを設定しておけば、既に表面改質処理を受けたシートSが処理位置Apを通過する所定時間ΔTが終了するまでに、コロナ放電の立ち上げを完了することができ、表面改質処理が不十分となるシートSの発生をほぼ完全に抑制することができる。
なお、このようなシート逆送処理は、シートSが処理位置Apで停止する停止期間Tsの度に実行される。したがって、シート逆送処理のために回転支持軸824を角度θ(-)まで回転させた際には、次のシート逆送処理に備えて、回転支持軸824を角度θ(+)にまで戻しておく必要がある。そこで、この実施形態では、シートSが処理位置Apを通過する通過期間Tpのうちの所定時間Tf(図5の例では、通過期間Tpの開始から所定時間Tf)の間、回転支持軸824を角度θ(-)から角度θ(+)まで回転させて、次に実行されるシート逆送処理に備えている。
以上に説明したように、第1実施形態によれば、シートSを搬送経路Pcの下流側へ向けて間欠的に搬送しつつ、プラテン30の上で停止中のシートSにインクを噴射して画像を記録する。また、放電指令に応じて表面改質処理を実行するコロナ処理機80が設けられており、搬送経路Pcにおいてプラテン30より上流側の処理位置ApでシートSに表面改質処理が実行可能となっている。そこで、この実施形態は、シートSを処理位置Apに通過させつつ、コロナ処理機80(に接続された放電バイアス発生部84)に放電指令を適宜与えることで、シートSへの表面改質処理を実行している。
具体的には、プラテン30へのシートSの間欠搬送に応じて、搬送経路Pcの上流側から処理位置ApへシートSが間欠搬送されることで、シートSが処理位置Apを間欠的に通過する。そして、処理位置Apへの間欠搬送に伴ってシートSが処理位置Apを通過する通過期間Tpに、放電指令が放電バイアス発生部84に与えられて、処理位置Apを通過するシートSに表面改質処理が実行される。この際、通過期間Apが開始して(すなわち、シートSが処理位置Apを通過しはじめて)、直ちにコロナ処理機80が表面改質処理を始動できない場合には、表面改質処理の不足した領域がシートSに多量に生じるおそれがあった。
これに対して、この実施形態では、処理位置Apに対してシートSを搬送経路Pcの上流側に相対移動させるシート逆送処理が、通過期間Tpの開始前に予め実行される。そのため、通過期間Tpが開始する際には、既に表面改質処理の施された領域が処理位置Apに対して搬送経路Pcの上流側に相対移動されている。したがって、通過期間Tpの開始から暫くは、既に表面改質処理の施された領域が処理位置Apを通過するため、通過期間Tpの開始から表面改質処理の始動が遅れた場合であっても、表面改質処理の不足領域を少なく抑えることが可能になっている。
特にこの実施形態では、通過期間Tpの開始からコロナ放電の立ち上がりまでの遅延時間dに処理位置Apを通過するシートSの通過量以上に、移動量ΔSを大きく設定している。その結果、既に表面改質処理を受けたシートSが処理位置Apを通過する所定時間ΔTが終了するまでに、コロナ放電の立ち上げを完了することができ、表面改質処理が不十分となるシートSの発生をほぼ完全に抑制することが可能となっている。
ちなみに、上述のようなシート逆送処理は、繰出軸21を逆方向に回転させて、ロールR1にシートSを巻き戻すことで実行しても構わない。ただし、ロールに巻き戻されるシートSの量は、繰出軸21の回転量の他にロールR1の径にも依存する。したがって、シート逆送処理におけるシートSの移動量ΔSを管理したい場合(例えば上述のように遅延時間dに処理位置Apを通過するシートSの通過量以上に、移動量ΔSを設定したい場合)には、ロール径を参照しつつ繰出軸21の回転量を制御する必要が生じることとなる。
これに対して、この実施形態では、シート逆送機構82は、ロールR1からコロナ処理機80(処理位置Ap)までのシートSの長さである上流側バッファー量Luを調整する揺動ローラー822と、コロナ処理機80(処理位置Ap)からプラテン30までのシートSの長さである下流側バッファー量Ldが設けられている。そして、下流バッファー量Ldを移動量ΔSだけ減少させつつ上流側バッファー量Luを移動量ΔSだけ増加させることで、シート逆送機構が実行される。
このような構成では、コロナ処理機80(処理位置Ap)より搬送経路Pcの下流側のシートSを移動量ΔSだけ減らす代わりに、コロナ処理機80(処理位置Ap)より搬送経路Pcの上流側のシートSを移動量ΔSだけ増やすことで、シート逆送処理が実行される。これによって、ロールR1にシートSを巻き戻すこと無く、コロナ処理機80に対してシートSを搬送経路Pcの上流側に当該移動量ΔSだけ相対移動させることができる。その結果、シート逆送処理におけるシートSの移動量ΔSを管理する場合であっても、特にロールR1の径を参照する必要がなく、当該管理を簡便に行なうことが可能となっている。
特に、この実施形態のシート逆送機構82では、シートSを挟んでコロナ処理機80に対向しつつ、シートSを裏面から巻き掛けるアースローラー821が設けられており、揺動ローラー822、823は、アースローラー821を挟んでシートSを表面から巻き掛ける。そして、これら揺動ローラー822は、それぞれの中間位置を回転軸C824として回転する回転支持軸824の両端に支持されている。
このような構成では、回転支持軸824を回転させることで、揺動ローラー822、823をシーソーのように動かして、コロナ処理機80を挟んで搬送経路Pcの上流側から下流側へとシートSを移動させることができる。したがって、回転支持軸824を回転させるだけで、簡便にシート逆送処理を実行することができ、好適と言える。
第2実施形態
第1実施形態では、シートSを移動させることで、処理位置Apに対してシートSを相対移動させていた。しかしながら、処理位置Apを移動させることで、処理位置Apに対してシートSを相対移動させても良い。そこで、第2実施形態のコロナ処理ユニット8は、コロナ処理機80を搬送経路Pcの下流側に移動させることで、処理位置Apを搬送経路の下流側に移動させて、処理位置Apに対してシートSを相対移動させている。
続いては、この第2実施形態について詳述するが、第2実施形態が第1実施形態と異なるのは、主としてコロナ処理ユニット8の構成および動作であるので、以下ではこの差異部分を中心に説明を行なうこととし、その他の部分については相等符号を付して適宜説明を省略する。なお、第1実施形態と共通する構成を具備することで、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が奏されることは言うまでもない。
図6は、第2実施形態でのコロナ処理ユニットを模式的に示した側面図である。このコロナ処理ユニット8は、コロナ処理機80の他に、シートSを裏面から巻き掛けてコロナ処理機80に対向するアースローラー841と、アースローラー841の上下流側でシートSの表面を巻き掛けるローラー842、843とを有する。そして、放電バイアス発生部84からコロナ放電電極801に放電バイアスが印加されると、コロナ放電電極801とアースローラー821との間にコロナ放電が発生して、処理位置ApにあるシートSの表面にコロナ処理(表面改質処理)が実行される。
この実施形態では、コロナ処理機80およびアースローラー841のそれぞれが、X軸方向に対して移動自在に構成されており、具体的には、X軸方向に正側の位置X(+)と負側X(-)との間で移動自在になっている。そして、コロナ処理ユニット8は、図6に示す状態1〜3の各状態を必要に応じて取ることが可能となっている。状態1では、コロナ処理機80およびアースローラー841はいずれも位置X(-)に存在し、互いに対向して位置X(-)に処理位置Apを形成する。状態2では、コロナ処理機80は位置X(-)に存在し、アースローラー841は位置X(+)に存在する。この状態では、シートSはコロナ処理機80に対してX軸正方向に離間し、処理位置Apは形成されない。状態3では、コロナ処理機80およびアースローラー841はいずれも位置X(+)に存在し、互いに対向して位置X(+)に処理位置Apを形成する。このように、この実施形態では、状態1から状態3へとコロナ処理機80の状態を遷移させて、処理位置ApをX軸正方向に移動させることができ、その結果、処理位置ApをシートSに対して搬送経路Pcの下流側に移動させることができる(処理位置移動処理)。
図7は、第2実施形態で実行される印刷動作の一例を示すタイミングチャートである。なお、同図において、搬送指令、シート通過状況、放電指令および放電状況の各グラフで示す動作は、第1実施形態で示した図5のそれらと同様である。ただし、シートSの停止期間Tsにおいて、第1実施形態ではシート逆送処理が実行されていたのに対して、第2実施形態では処理位置移動処理が実行される。具体的には次のとおりである。
停止期間Tsの開始時点(すなわち通過期間Tpの終了時点)では、コロナ処理機80およびアースローラー841はいずれも位置X(-)に存在し、コロナ処理ユニット8は状態1にある。そして、シートSの停止期間Tsの間に、コロナ処理ユニット8は、この状態1から状態2を経由して状態3へと遷移する。つまり、シートSの停止期間Tsのうちの所定時間Tb1(図7の例では、停止期間Tsの開始から所定時間Tb1)をかけて、アースローラー841は位置X(-)から位置X(+)へ移動する。こうして、コロナ処理ユニット8は、シートSとコロナ処理機80との距離が状態1と比較して離れた状態2へと遷移する。さらに、シートSの停止期間Tsでは、この状態2への遷移が完了して時間Tcを経過すると、所定時間Tb2(図7の例では、停止期間Tsの終了前の所定時間Tb2)をかけて、コロナ処理機80が位置X(-)から位置(+)へ移動する(状態3)。こうして、停止期間Tsでは、処理位置Apが、シートSに対して搬送経路の下流側へと移動量ΔSだけ移動する(相対移動工程)。
これによって、この停止期間Ts(t2〜t3)に続く通過期間Tp(t3〜t4)で実行されるシートSへの表面改質処理に先立って、処理位置Apに対して搬送経路Pcの上流側にシートSが移動量ΔSだけ相対移動される。その結果、この停止期間Ts(t2〜t3)の前の通過期間Tp(t1〜t2)で表面改質処理を受けたシートSの一部(移動量ΔSに相当する部分)が、処理位置Apに対して搬送経路Pcの上流側に移動する。したがって、続いて実行される通過期間Tp(t3〜t4)では、通過期間Tpの開始から所定時間ΔTは、既に表面改質処理を受けたシートSが処理位置Apを通過する。よって、通過期間Tpからコロナ放電の立ち上がりが遅延時間dだけ遅れても、表面改質処理が不十分となるシートSの量を抑制することができる。また、この実施形態においても、時間ΔTが遅延時間dよりも長くなるように、処理位置移動処理での移動量ΔSを設定しておけば、表面改質処理が不十分となるシートSの発生をほぼ完全に抑制することができる。
なお、このような処理位置移動処理は、シートSが処理位置Apで停止する停止期間Tsの度に実行される。したがって、処理位置移動処理のために処理位置Apを位置X(+)まで移動させた際には、次の処理位置移動処理に備えて、処理位置Apを位置X(-)にまで戻しておく必要がある。そこで、この実施形態では、シートSが処理位置Apを通過する通過期間Tpのうちの所定時間Tf(図7の例では、通過期間Tpの開始から所定時間Tf)をかけて、コロナ処理機80およびアースローラー841のそれぞれを互いに対向させたまま位置X(+)から位置X(-)に移動させることで、処理位置ApをX(+)から位置X(-)にまで戻して、次に実行される処理位置移動処理に備えている。
以上に説明したように、第2実施形態では、コロナ処理機80の処理位置ApをシートSに対して搬送経路Pcの下流側に相対移動させる処理位置移動処理が、通過期間Tpの開始前に予め実行される。そのため、通過期間Tpが開始する際には、既に表面改質処理の施された領域が処理位置Apに対して搬送経路Pcの上流側に相対移動されることとなる。したがって、通過期間Tpの開始から暫くは、既に表面改質処理の施された領域が処理位置Apを通過するため、通過期間Tpの開始から表面改質処理の始動が遅れた場合であっても、表面改質処理の不足領域を少なく抑えることが可能になっている。
また、この実施形態では、通過期間Tpが終了するとアースローラー841を搬送経路Pcの下流側に移動させて、コロナ処理機80とシートSとの距離が離される(状態2)。そして、この状態2から時間Tcが経過してから、コロナ処理機80をアースローラー841と対向する位置にまで移動させることで、処理位置移動処理が実行される。
このように、通過期間Tpの終了に伴ってコロナ処理機80とシートSとの距離を離すことで、表面改質処理の実行に伴い温度の上昇したコロナ処理機80を、シートSからある程度離れた場所で冷却することができる。そして、このようにコロナ処理機80の冷却を行ってから、コロナ処理機80をアースローラー841に対向する位置まで移動させることで、コロナ処理機から発せられる熱がシートSに与える影響を緩和することができる。
その他
以上のように、プリンター300が本発明の「画像記録装置」に相当し、シートSが本発明の「記録媒体」に相当し、搬送経路Pcが本発明の「搬送経路」に相当し、インクが本発明の「液体」に相当し、プラテン30が本発明の「支持部材」に相当し、記録ヘッド34が本発明の「記録ヘッド」に相当し、繰出部2、ローラー71〜77および巻取部5で構成されるシート搬送系が本発明の「搬送部」に相当し、コロナ処理機80と放電バイアス発生部84が協働して「表面改質機」として機能し、処理位置Apが本発明の「処理位置」に相当し、メカコントローラー420が本発明の「制御部」に相当し、放電指令が本発明の「処理実行信号」に相当する。また、第1実施形態では、シート逆送機構82が本発明の「相対移動機構」に相当し、シート逆送処理が本発明の「相対移動処理」に相当し、通過期間Tpが本発明の「通過期間」に相当する。また、第2実施形態では、コロナ処理機80およびアースローラー821が本発明の「相対移動機構」に相当し、処理位置移動処理が本発明の「相対移動処理」に相当し、上流側バッファー量Luが本発明の「第1バッファー量」に相当し、揺動ローラー822が本発明の「第1調整部材(ローラー)」に相当し、下流側バッファー量Ldが本発明の「第2バッファー量」に相当し、揺動ローラー823が本発明の「第2調製部材(ローラー)」に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、処理位置Apに対してシートSを搬送経路Pcの上流側に移動させる相対移動処理を、シート逆送処理や処理位置移動処理によって実行していた。しかしながら、例えば、繰出軸21を逆方向に回転させて、ロールR1にシートSを巻き戻すことで、相対移動処理を実行しても良い。
また、シート逆送処理や処理位置移動処理の実行タイミングについても、上述の内容から適宜変更することができる。一例を挙げれば、第1実施形態では、停止期間Tsの開始と同じタイミングでシート逆送処理が開始されていた。しかしながら、停止期間Tsから時間をおいてシート逆送処理を開始するように構成しても良い。
また、シートSを搬送する搬送系の構成についても、種々の変形が可能である。そこで、例えば、特開2009−292129号公報のような昇降ローラーを、コロナ処理ユニット8とローラー72の間に設けておき、1回の搬送でローラー72がプラテン30に供給する量のシートSを、コロナ処理ユニット8とローラー72の間に予め繰り出して蓄えるる(バッファーする)ように構成しても良い。この場合には、図5、図7に示したように、搬送指令の出力タイミングとシートSが処理位置Apを通過するタイミングとを一致させる必要は必ずしもない。したがって、搬送指令に伴うプラテン30へのシートSの供給と、処理位置ApへのシートSの通過とを、互いに異なるタイミングや速度で実行することができる。これによって、シートSをプラテン30に間欠搬送する動作と、シートSを処理位置Apに間欠的に通過させる動作とを、それぞれに適切なタイミングで実行することができる。
また、上記実施形態では、既に表面改質処理を受けたシートSが処理位置Apを通過する時間ΔTが遅延時間d以上に設定されている。しかしながら、時間ΔTが遅延時間d未満であっても構わない。この場合であっても、コロナ処理機80の処理位置ApをシートSに対して搬送経路Pcの下流側に相対移動させる処理位置移動処理を、通過期間Tpの開始前に予め実行することで、表面改質処理の不足領域を少なく抑えるといった効果は一定程度奏されることとなる。
また、上記実施形態では、コロナ処理により表面改質処理を実行していた。しかしながら、コロナ処理以外の手法、例えばプラズマ処理によって表面改質処理を実行するように構成しても良い。
また、上記実施形態では、ピエゾ方式を用いたインクジェットプリンターに対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、サーマル方式を用いたインクジェットプリンターに対しても本発明を適用可能であることは言うまでもない。