JP2013189667A - 無電解めっき方法及び金属被膜形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生産性・安全性を考慮した方法によって、樹脂基材の表面に密着性が良好な金属被膜を形成することができる無電解めっき方法、及び、金属被膜形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため、樹脂基材の表面に無電解めっきにより金属層を形成する無電解めっき方法において、当該樹脂基材の表面に、平均粒径が0.1μm〜100μmのオゾンの微細気泡を含むオゾン水を接触させて、当該基材表面を改質する表面改質処理を施した上で、当該樹脂基材の表面に無電解めっきにより金属層を形成する無電解めっき方法を採用する。
【選択図】図1
【解決手段】この目的を達成するため、樹脂基材の表面に無電解めっきにより金属層を形成する無電解めっき方法において、当該樹脂基材の表面に、平均粒径が0.1μm〜100μmのオゾンの微細気泡を含むオゾン水を接触させて、当該基材表面を改質する表面改質処理を施した上で、当該樹脂基材の表面に無電解めっきにより金属層を形成する無電解めっき方法を採用する。
【選択図】図1
Description
本件出願に係る発明は樹脂の表面に対して良好な密着性を有する金属層を形成可能な無電解めっき方法に関する。
近年、携帯用電子機器等の急速な小型化・高機能化に伴い、電子信号の供給に用いるプリント配線板等のデバイススペースも狭小化する傾向にある。その中で、プリント配線板としてフレキシブルプリント配線板(FPC)が採用されている。フレキシブルプリント配線板は、可撓性を有しているので、電子部品間を撓んだ状態で接続できる点で、可動電子部品の接続や、電子機器等の小型化に適している。
フレキシブルプリント配線板の基板には、柔軟性以外にも、耐熱性、電気絶縁性、寸法安定性が要求され、これらを満たす材料としてポリイミド樹脂やエポキシ樹脂などの合成樹脂が採用されている。
このような合成樹脂からなる基材の表面に、金属被膜を形成する場合に、無電解めっきを採用する場合がある。無電解めっきは、基材の表面に溶液中の金属イオンを化学的に還元析出させることにより、電気絶縁体である合成樹脂基材の表面に金属被膜を形成する処理である。
一般に、樹脂に対して無電解めっきを施す際には前処理として、クロム酸や硫酸などを使用したエッチング処理を行い、表面を粗化していた。これにより、アンカー効果によって樹脂の表面と金属層とを物理的に密着させていた。しかし、このエッチング処理では、廃液を処理する際に環境汚染が問題となる。
また、高周波・高密度化が進むプリント配線板では、導体回路表面に凹凸があると高周波信号の遅延を生じるなどの問題が生じるため、導体回路表面の平滑化が求められている。そのため、樹脂基材の表面平滑性を維持した上で、密着性の高い導電層を無電解めっきによって形成する技術が求められていた。
例えば、特許文献1に示す無電解めっき方法は、樹脂基材の表面に、オゾンを含む第1溶液を接触させる工程1と、第1溶液を接触させた後の樹脂基材の表面に、界面活性剤を含む第2溶液を接触させる工程2と、第2溶液を接触させた後の樹脂基材の表面に、触媒を吸着させる工程3と、触媒を吸着させた後の樹脂基材の表面に、金属イオンと還元剤とを含むめっき液を接触させ、金属イオンを還元して樹脂基材の表面に、めっき被膜を析出させる工程4とを有する無電解めっき方法において、工程1における第1溶液中のオゾン濃度を、10ppm〜50ppmの範囲とし、かつ第1溶液と樹脂基材との接触時間を、4分〜25分の範囲としている。
また、特許文献2に示す樹脂めっき処理方法は、めっき前処理として合成樹脂をオゾン水溶液に接触させるオゾン水処理を施し、オゾン水処理の次に、合成樹脂の表面に残存する酸化力を取り除くためにオゾン還元処理を施し、オゾン還元処理の後に、無電解めっき処理を施し、その後電解めっき処理を施している。
一方、特許文献1に開示の前処理方法では、オゾン処理によって、樹脂表面と金属被膜との密着性の向上を行うためには、樹脂表面をオゾンと十分に接触させる必要がある。しかし、オゾン水に含まれるオゾンやヒドロキシラジカルなどの活性種は、分解しやすく水溶液中における存在時間が非常に短い。樹脂内部にオゾンが浸透する前に失活してしまうことが多い。そのため、オゾン濃度の高い水溶液を使用する必要がある。
しかし、特許文献2において指摘されているように、オゾン濃度の高い水溶液を使用すると、オゾンが樹脂表面に残存し、残存オゾンの強い酸化力によって、無電解めっきによる適切な金属析出が阻害される問題がある。
そこで、特許文献2では、残存オゾンを取り除くためのオゾン還元処理が行われているが、作業工程が増加することによる一連のめっき処理が煩雑化する問題がある。また、特許文献2の場合であっても、高いオゾン濃度の水溶液を前処理において使用することから、水溶液中にバブリングされたオゾンが、水面に上昇し、大気中に拡散する問題がある。これにより、作業環境の悪化を招き、作業者の健康被害につながる問題がある。
以上のことから、生産性・安全性を考慮した方法によって、樹脂基材の表面に密着性が良好な金属被膜を形成することができる無電解めっき方法、及び、金属被膜形成方法を提供することを目的とする。
本件発明者等は、鋭意研究の結果、新たな樹脂の表面改質方法に想到し、以下の無電解めっき方法及び金属被膜形成方法を採用することで、上記課題を解決するに到った。
本件発明にかかる無電解めっき方法は、樹脂基材の表面に無電解めっきにより金属層を形成する無電解めっき方法であって、当該樹脂基材の表面に、平均粒径が0.1μm〜100μmのオゾンの微細気泡を含むオゾン水を接触させて、当該基材表面を改質する表面改質処理を施した上で、当該樹脂基材の表面に無電解めっきにより金属層を形成することを特徴とする。
本件発明にかかる無電解めっき方法において、前記オゾン水のオゾン濃度は、15℃〜40℃の温度条件において、0.1ppm〜10ppmであることが好ましい。
本件発明にかかる無電解めっき方法において、前記オゾン水のオゾン濃度は、15℃〜40℃の温度条件において、0.3ppm〜2ppmであることがより好ましい。
本件発明にかかる無電解めっき方法において、前記樹脂基材と前記オゾン水との接触時間は、1分〜60分であることが好ましい。
また、本件発明にかかる無電解めっき方法において、前記オゾン水により処理された後の樹脂基材の表面に、アルカリ溶液を接触させた後、当該アルカリ溶液と接触した後の樹脂基材の表面に、金属触媒を吸着させることが好ましい。
更に、本件発明にかかる無電解めっき方法において、前記樹脂基材は、不飽和結合を有する樹脂基材に適用できる。
本件発明にかかる金属被膜形成方法は、上述した無電解めっき方法を用いて、当該樹脂基材の表面に下地金属層を形成し、当該下地金属層上に電解めっきによりめっきアップ被膜を形成することを特徴とする。
本発明にかかる無電解めっき方法によれば、平均粒径が0.1μm〜100μmのオゾンの微細気泡を含むオゾン水を樹脂基材の表面に接触させることにより、樹脂の表面を改質する表面改質処理を採用したため、従来のオゾン生成器から供給されたオゾンを直接、水に供給して生成されるオゾン水と接触させる場合と異なり、粒径の小さいオゾン気泡を樹脂表面全体にムラなく接触させることが容易にできる。従って、樹脂表面全体とオゾンとの接触反応により、樹脂表面全体をムラなく改質することができる。
特に、微細気泡状態のオゾンは、水に長時間にわたって滞留する。従って、低濃度のオゾン水であっても、樹脂基材の表面と十分に接触して改質処理を行うことができるため、生産効率の向上、及び、生産環境の安全性を向上させることができる。
更に、微細気泡状態のオゾンは、凹凸形状を有する樹脂基材であっても、その凹凸奥部にまで支障なく行き渡らせることができる。そのため、樹脂基材の表面形状によらずに、樹脂基材の表面全体の改質処理を効果的に行うことができる。
また、かかる微細気泡を含むオゾン水を用いた樹脂表面の改質方法では、エッチング処理と異なり、樹脂の表面の平滑性を維持することが可能である。従って、本件発明にかかる無電解めっき方法によれば、樹脂基材の表面形状によらず、簡易な方法で樹脂の表面全体を改質することができ、樹脂の表面平滑性を維持した上で、密着性の高い金属層を形成することができる。
本件発明にかかる金属被膜形成方法によれば、本件発明にかかる無電解めっき方法を用いて、樹脂基材の表面に下地金属層を形成し、当該下地金属層上に電解めっきによりめっきアップ被膜を形成するため、樹脂基材の表面平滑性を維持した上で、樹脂基材との密着性が高く、且つ、表面が平滑な下地金属層を形成することができる。このため、下地金属層上に表面が平滑なめっきアップ被膜を形成することができる。従って、本件発明にかかる金属被膜形成方法を用いることにより、導体回路表面が平滑なプリント基板の提供を実現することができる。
以下、本件発明にかかる「無電解めっき方法」及び「金属被膜形成方法」の好ましい実施の形態を説明する。
<本件発明にかかる無電解めっき方法の形態>
まず、本件発明にかかる無電解めっき方法について説明する。本件発明にかかる無電解めっき方法は、樹脂基材の表面に無電解めっきにより金属層を形成する無電解めっき方法に関するものであり、被めっき物である樹脂基材の表面に、平均粒径が0.1〜100μmのオゾンの微細気泡を含むオゾン水(以下、単に「微細オゾン気泡含有水」と称する。)を接触させて、樹脂基材の表面を改質する表面改質処理を施した上で、無電解めっきにより樹脂の表面に金属層を形成することを特徴としたものである。
まず、本件発明にかかる無電解めっき方法について説明する。本件発明にかかる無電解めっき方法は、樹脂基材の表面に無電解めっきにより金属層を形成する無電解めっき方法に関するものであり、被めっき物である樹脂基材の表面に、平均粒径が0.1〜100μmのオゾンの微細気泡を含むオゾン水(以下、単に「微細オゾン気泡含有水」と称する。)を接触させて、樹脂基材の表面を改質する表面改質処理を施した上で、無電解めっきにより樹脂の表面に金属層を形成することを特徴としたものである。
本件発明にかかる無電解めっき方法では、樹脂基材は、不飽和結合を有する樹脂を採用する。不飽和結合とは、C=O結合、C=C結合、C=N結合、C≡C結合などをいい、このような不飽和結合を有する高分子樹脂としては、ポリイミド樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、PS樹脂、AN樹脂、エポキシ樹脂、PMMA樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂などを用いることができる。
本件発明における表面改質処理は、樹脂を構成する高分子が有する各種の官能基に対して攻撃性の高い微細オゾン気泡含有水を採用しているため、微細オゾン気泡含有水中のオゾンによる酸化によって基材表面の樹脂の少なくとも一部の不飽和結合が切断され、オゾニド、メチロール基、或いは、カルボニル基などを生成することができる。これにより、樹脂の表面を化学的に改質している。
本件発明の表面改質処理では、従来のエッチング処理と異なり、樹脂の表面を溶解するのではなく、微細オゾン気泡含有水を用いて樹脂の表面を化学的に改質する手法を採用しているため、樹脂の表面の平滑性を維持することができる。そのため、表面をほとんど粗化することなく、樹脂の表面と金属層との密着性を高めることができる。
本件発明において、樹脂基材の表面に微細オゾン気泡含有水を接触させる方法は特に限定されるものではないが、例えば、樹脂基材を微細オゾン気泡含有水に浸漬することにより樹脂基材の表面に微細オゾン気泡含有水を接触させる方法を採用することができる。樹脂基材を微細オゾン気泡含有水に浸漬させることにより、簡素な方法で、上述したように樹脂基材の表面全体にムラなく微細オゾン気泡含有水を接触させることができる。
本件発明において、微細オゾン気泡含有水は、オゾンが微細気泡の状態で水溶液中に存在する水溶液をいい、微細気泡状態のオゾンが存在する水溶液であれば特に限定はない。ここで、微細気泡の状態のオゾンとは、水溶液中に存在するオゾン気泡の平均粒径が0.1μm〜100μmである微細気泡状のオゾンを指す。
オゾン気泡の平均粒径が0.1μm未満である場合には、加圧によって生成される微細気泡状態のオゾンの生成効率が著しく低下し、適正なオゾン濃度の水溶液を得るには実用に適さないという問題が生じる。一方、オゾン気泡の平均粒径が100μmを超えると、オゾン気泡の粒径が大きすぎて水溶液中にオゾン気泡が滞留しがたくなり、水面より大気中に拡散してしまう問題がある。これでは、適正な樹脂の表面改質を行うために、微細オゾン気泡含有水のオゾン濃度を高くする必要が生じ、大気中へのオゾン拡散量の増大を招き、生産環境の安全性確保が困難となる。
本件発明において、微細オゾン気泡含有水中のオゾン濃度は、15℃〜40℃の温度条件において、0.1ppm〜10ppmの範囲とすることが好ましい。オゾン濃度が0.1ppm未満である場合には、樹脂基材の表面と微細オゾン気泡含有水との接触時間を調整しても、樹脂基材の表面と微細気泡の状態のオゾンとを十分に接触させることができず、樹脂の表面を十分に改質することができない場合がある。オゾン濃度が10ppmを超える場合には、微細気泡の状態のオゾンが水溶液中に滞留しがたくなり、大気中へのオゾン拡散量の増大を招来するからである。
生産効率の向上、及び、生産環境における作業者の健康面を考慮し、微細オゾン気泡含有水のオゾン濃度は、15℃〜40℃の温度条件において、0.3ppm〜2ppmの範囲とすることがより好ましい。微細オゾン気泡含有水のオゾン濃度の範囲をかかる低濃度に設定しても、水溶液中の微細気泡状態のオゾンは、水溶液中に滞留して、効率的に樹脂基材の表面と接触して、化学反応を生じ、樹脂表面の改質を行うことができる。微細オゾン気泡含有水のオゾン濃度をかかる低濃度に設定することにより、作業者の人体への被害を著しく抑制することができる。
また、本件発明において、樹脂基材の表面と、微細オゾン気泡含有水との接触時間は、樹脂基材の表面をムラなく改質することができる時間の範囲内であればよい。上述したように、微細オゾン気泡含有水のオゾン濃度が、15℃〜40℃の温度条件において、0.1ppm〜10ppmの範囲である場合、1分〜60分とすることができる。
当該接触時間が1分未満の場合、樹脂基材の表面を均一に改質できない場合がある。一方、当該接触時間が60分以上を超える場合、微細オゾン気泡含有水中のオゾン濃度によっては、樹脂基材との反応が進行しすぎる結果、樹脂基材が劣化する恐れがあり、あまり好ましくない。また、15℃〜40℃の温度条件において、0.3ppm〜2ppmの範囲のオゾン濃度の微細オゾン気泡含有水を用いた場合、当該接触時間を1分〜10分としてもよい。このような短い接触時間であっても十分に樹脂基材の表面を改質することができる。工業的な生産効率の向上を図ることができる点で有利となる。
上述した微細オゾン気泡含有水の生成方法として、例えば、酸素ガス(O2)を、無声放電等の周知のオゾン化原理によってオゾン化して、発生したオゾンを水中に導出する方法がある。具体的には、例えば、図1に示すオゾン水生成装置1を用いて、微細オゾン気泡含有水を生成することができる。
図1には、上述した微細オゾン気泡含有水を生成するためのオゾン水生成装置1の機能的構成の一例を示したものである。図1に示すオゾン水生成装置1は、酸素ボンベや酸素濃縮装置などの外部酸素供給源3から供給される酸素ガス(O2)を用いて、水槽5内に貯留された水を微細オゾン気泡含有水2とする装置である。
このオゾン水生成装置1は、高電圧を発生する高電圧発生器と、この高電圧発生器により出力される高電圧を用いて無声放電を行う放電部と、放電部において生成されたオゾンを圧縮するオゾン加圧部と、オゾン加圧部にて圧縮オゾンガスとされたオゾンガスと水槽5内の水と混合し、微細オゾン気泡含有水を生成するフィルタ部とを備えている。
放電部は、外部酸素供給源3から酸素ガスが供給されて、当該酸素をオゾン化する。オゾン加圧部は、オゾンガス供給圧力を調整する圧力調整手段を備え、例えば0.05MPa〜0.25MPaの範囲内で調整可能とされる。また、フィルタ部は、水槽5内の水をフィルタ部に取り込む取水部6と、フィルタ部にて生成された微細気泡状態のオゾンを含んだオゾン水を水槽5に返送するオゾン水放出部7を備えた水ライン8が接続されている。
以上の構成により、高電圧発生器によって高電圧が印加された放電部に、外部酸素供給源3から所定の供給圧力で酸素ガスを供給する。また、内蔵されたポンプを運転して取水部6より水槽5内の水をフィルタ部に取り込む。放電部において生成されたオゾンは、オゾン加圧部において、所定圧力で圧縮されて、フィルタ部の多孔質フィルタに加圧供給される。当該多孔質フィルタを通過したオゾンガスは、水槽5内から取り込まれた水に供給される。これにより、平均粒径が0.1μm〜100μmである微細気泡の状態のオゾンを含んだオゾン水が生成され、水ラインを介してオゾン水放出部7より水槽5内に放出される。このようにして、水槽5内には、マイクロバブル化されたオゾンを含んだ、所定のオゾン濃度のオゾン水が生成される。
当該装置によれば、オゾンガスの供給圧力を調整することにより、オゾンガス発生量を任意に調整することができる。本オゾン水生成装置1では、装置の前面に設けられた操作パネル4にて、オゾンガス発生量を調整可能とされている。上述した図1に示すオゾン水生成装置1は、微細オゾン気泡含有水を生成するときに適用可能な装置の一例に過ぎず、本件発明において使用する微細オゾン気泡含有水を、当該オゾン水生成装置1を用いて生成した微細オゾン気泡含有水に限定する趣旨ではない。
本件発明では、樹脂基材に対して、微細オゾン気泡含有水による表面改質処理を行った後、当該樹脂基材の表面に、アルカリ溶液を接触させてアルカリ処理を行い、アルカリ処理を行った後の樹脂基材の表面に、金属触媒を吸着させてもよい。アルカリ処理を行うことにより、樹脂基材の表面へのパラジウム等の触媒の吸着性を高めて、樹脂基材の表面に金属触媒を吸着させることで、後段の無電解めっきによる金属層の形成を好適に行うことができる。
本件発明では、樹脂基材に対して、上述した表面改質処理及びアルカリ処理、金属触媒吸着処理を施した上で、樹脂基材の表面に無電解めっきにより金属層を形成する。本件発明において、当該無電解めっきにより樹脂基材の表面に金属層を形成する工程は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を含め、あらゆる無電解めっき工程を採用することができる。従って、当該無電解めっき工程においては、無電解めっきプロセスにより、樹脂基材の表面に化学的に析出することが可能な金属であれば、銅、ニッケル、コバルト、スズ等、いかなる金属を用いてもよい。また、無電解めっき浴の組成等についても特に限定はなく、従来公知の無電解めっき浴を含め、あらゆる無電解めっき浴を適用することができる。
また、本件発明では、無電解めっきを施す前後に樹脂基材に対して施す前処理及び後処理として、上述した表面改質処理を施すことが必須である点を除いては、前処理、後処理等については特に限定はなく、無電解めっき工程の前後に通常行われる各種前処理、後処理を樹脂基材に施してもよい。
以上説明した本件発明にかかる無電解めっき方法によれば、樹脂基材の表面形状によることなく、樹脂基材の表面全体と微細気泡状態のオゾンとを効果的に接触させて反応させることができ、樹脂基材の表面全体をムラなく改質することができる。従って、樹脂基材の表面平滑性を維持した上で、密着性の高い金属層を形成することができる。このため、本件発明にかかる無電解めっき方法は、複雑な形状を有する樹脂基材であっても、その凹凸奥部にまで支障なく微細気泡状態のオゾンを行き渡らせて表面改質処理を行うことができるため、支障なく樹脂基材の表面全体に無電解めっきにより金属層を形成することが可能となる。また、次に説明する金属被膜形成方法に好適に適用することができる。
また、本件発明にかかる無電解めっき方法では、表面改質処理に用いる微細気泡状態のオゾンは、水に長時間にわたって滞留する。従って、低濃度の微細オゾン気泡含有水であっても、樹脂基材の表面と十分に接触して改質処理を行うことができるため、生産効率の向上、及び、生産環境の安全性を向上させることができる。
<本件発明にかかる金属被膜形成方法の形態>
次に、本件発明にかかる金属被膜形成方法について説明する。本件発明にかかる金属被膜形成方法は、樹脂基材の表面に上述した無電解めっき方法を用いて、下地金属層を形成し、当該金属層上に電解めっきによりめっきアップ被膜を形成することを特徴とする。
次に、本件発明にかかる金属被膜形成方法について説明する。本件発明にかかる金属被膜形成方法は、樹脂基材の表面に上述した無電解めっき方法を用いて、下地金属層を形成し、当該金属層上に電解めっきによりめっきアップ被膜を形成することを特徴とする。
本件発明では、上述した本件発明にかかる無電解めっき方法を用いて、樹脂基材の表面に下地金属層を形成するという点を特徴としているが、当該無電解めっき方法は上述したとおりであるため、ここでは、説明を省略する。また、めっきアップ被膜を形成する際に用いる電解めっき方法については、特に限定されるものではなく、従来公知の電解めっき方法を含め、あらゆる電解めっき方法を採用することができる。
本件発明にかかる金属被膜形成方法によれば、上述した本件発明にかかる無電解めっき方法を用いて、樹脂基材の表面に下地金属層を形成し、当該下地金属層上に電解めっきによりめっきアップ被膜を形成するため、樹脂基材の表面平滑性を維持した上で、樹脂基材との密着性が高く、且つ、表面が平滑な下地金属層を形成することができる。このため、下地金属層上に表面が平滑なめっきアップ被膜を形成することができる。従って、本件発明にかかる金属被膜形成方法を用いることにより、導体回路表面が平滑なプリント基板の提供を実現することができる。
上述した記載において、本件発明にかかる実施の形態としての無電解めっき方法及び金属被膜形成方法について説明したが、上述した実施の形態は本件発明の一態様であり、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更することができる。また、次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明するが、本件発明は次に説明する実施例に限定されるものではない。
実施例1では、以下に説明するように、本件発明にかかる無電解めっき方法を用いた金属被膜形成方法により樹脂基材の表面にめっきアップ被膜を形成するために、まず、無電解めっきにより、下地金属層としてのCu−Ni−P層を形成し、下地金属層上に電解めっきによりめっきアップ被膜としての銅層を形成した。
まず、本実施例で採用した工程について説明する。本実施例では、(1)表面改質工程、(2)アルカリ処理工程、(3)コンディショニング工程、(4)キャタリスト工程、(5)アクセレータ工程、(6)無電解めっき工程、(7)熱処理工程、(8)電解めっき工程、(9)熱処理工程を順に行った。以下、各工程について説明する。
(1)表面改質工程
表面改質工程は、樹脂基材の表面と微細オゾン気泡含有水とを接触させ、樹脂基材の表面を改質する工程である。本実施例では、樹脂基材としてポリイミド樹脂を採用した。また、本実施例では、樹脂基材を微細オゾン気泡含有水に5分間浸漬することにより、表面改質工程を行った。このとき使用した微細オゾン気泡含有水は、上述したオゾン水生成装置1を用いて、水槽5に30Lの水道水を貯留し、オゾンガス供給圧力を0.08MPaとして、1時間程度で水槽5内の水に微細気泡状態のオゾンを充満させる。この微細オゾン気泡含有水のオゾン濃度は、25℃の温度条件で、1.2ppmであった。なお、微細オゾン気泡含有水による樹脂基材の表面改質処理後は、ドライヤー乾燥を行った。
表面改質工程は、樹脂基材の表面と微細オゾン気泡含有水とを接触させ、樹脂基材の表面を改質する工程である。本実施例では、樹脂基材としてポリイミド樹脂を採用した。また、本実施例では、樹脂基材を微細オゾン気泡含有水に5分間浸漬することにより、表面改質工程を行った。このとき使用した微細オゾン気泡含有水は、上述したオゾン水生成装置1を用いて、水槽5に30Lの水道水を貯留し、オゾンガス供給圧力を0.08MPaとして、1時間程度で水槽5内の水に微細気泡状態のオゾンを充満させる。この微細オゾン気泡含有水のオゾン濃度は、25℃の温度条件で、1.2ppmであった。なお、微細オゾン気泡含有水による樹脂基材の表面改質処理後は、ドライヤー乾燥を行った。
(2)アルカリ処理工程
次に、アルカリ処理工程において、65℃に調整した50g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に樹脂基材を2分間浸漬した後、水洗する。これにより、樹脂基材の表面を金属触媒が吸着しやすい状態に調整した。
次に、アルカリ処理工程において、65℃に調整した50g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に樹脂基材を2分間浸漬した後、水洗する。これにより、樹脂基材の表面を金属触媒が吸着しやすい状態に調整した。
(3)コンディショニング工程
そして、コンディショニング工程において、45℃に調整した市販のコンディショニング液(ロームアンドハース社製:クリーナーコンディショナー231)に樹脂基材を2分間浸漬した後、水洗する。これにより、樹脂基材の表面を清浄化した。
そして、コンディショニング工程において、45℃に調整した市販のコンディショニング液(ロームアンドハース社製:クリーナーコンディショナー231)に樹脂基材を2分間浸漬した後、水洗する。これにより、樹脂基材の表面を清浄化した。
(4)キャタリスト工程
次に、キャタリスト工程において、45℃に調整した0.3g/Lの塩化パラジウム(II)水溶液に樹脂基材を2分間浸漬した後、水洗する。これにより、樹脂基材の表面にパラジウム金属触媒を付与した。
次に、キャタリスト工程において、45℃に調整した0.3g/Lの塩化パラジウム(II)水溶液に樹脂基材を2分間浸漬した後、水洗する。これにより、樹脂基材の表面にパラジウム金属触媒を付与した。
(5)アクセレータ工程
そして、アクセレータ工程において、45℃に調整した20g/Lの次亜リン酸ナトリウム水溶液に樹脂基材を1分間浸漬する。これにより、キャタリスト工程において触媒が付与された樹脂基材の表面を活性化させる。
そして、アクセレータ工程において、45℃に調整した20g/Lの次亜リン酸ナトリウム水溶液に樹脂基材を1分間浸漬する。これにより、キャタリスト工程において触媒が付与された樹脂基材の表面を活性化させる。
(6)無電解めっき工程
無電解めっき工程では、無電解Cu−Ni−Pめっき浴に樹脂基材を7分間浸漬して、樹脂基材の表面に下地金属層としてのCu−Ni−P層を形成した。このとき、めっき浴の温度は45℃とし、pHは9.0に調整した。なお、pH調整剤として、水酸化ナトリウムを用いた。樹脂基材表面上に無電解めっきにより下地金属層としてのCu−Ni−P層を膜厚が0.2μmになるまで析出させる。当該無電解めっき後、水洗し、ドライヤー乾燥した。
無電解めっき工程では、無電解Cu−Ni−Pめっき浴に樹脂基材を7分間浸漬して、樹脂基材の表面に下地金属層としてのCu−Ni−P層を形成した。このとき、めっき浴の温度は45℃とし、pHは9.0に調整した。なお、pH調整剤として、水酸化ナトリウムを用いた。樹脂基材表面上に無電解めっきにより下地金属層としてのCu−Ni−P層を膜厚が0.2μmになるまで析出させる。当該無電解めっき後、水洗し、ドライヤー乾燥した。
本実施例では、次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする次の組成を有するCu−Ni−Pめっき浴を採用した。
クエン酸三ナトリウム無水和物: 15g/dm3
硫酸銅・五水和物: 6g/dm3
硫酸ニッケル・六水和物: 2g/dm3
ホウ酸: 10g/dm3
市販の濡れ剤(和光純薬工業株式会社製:PEG1000):100ppm
次亜リン酸ナトリウム・一水和物: 20g/dm3
水酸化ナトリウム: 5g/dm3
クエン酸三ナトリウム無水和物: 15g/dm3
硫酸銅・五水和物: 6g/dm3
硫酸ニッケル・六水和物: 2g/dm3
ホウ酸: 10g/dm3
市販の濡れ剤(和光純薬工業株式会社製:PEG1000):100ppm
次亜リン酸ナトリウム・一水和物: 20g/dm3
水酸化ナトリウム: 5g/dm3
(7)熱処理工程
無電解めっきによりCu−Ni−P層が形成された樹脂基材に対して、120℃で30分間熱処理を施した。これにより、樹脂基材表面と下地金属層との密着性を強化し、余分な水分を除去処理することができる。
無電解めっきによりCu−Ni−P層が形成された樹脂基材に対して、120℃で30分間熱処理を施した。これにより、樹脂基材表面と下地金属層との密着性を強化し、余分な水分を除去処理することができる。
(8)電解めっき工程
熱処理工程後のCu−Ni−P層上に電解めっきにより銅を膜厚が20μmになるまで析出させて、めっきアップ被膜としての銅層を形成した。本実施例では、25℃で市販の硫酸銅めっき浴(荏原ユージライト社製:キューブライト21)を用いて行った。
熱処理工程後のCu−Ni−P層上に電解めっきにより銅を膜厚が20μmになるまで析出させて、めっきアップ被膜としての銅層を形成した。本実施例では、25℃で市販の硫酸銅めっき浴(荏原ユージライト社製:キューブライト21)を用いて行った。
(9)熱処理工程
以上のように下地金属層としてのCu−Ni−P層上に、めっきアップ被膜としての銅層が積層された樹脂基材に対して、120℃で30分間熱処理を施した。これにより、樹脂基材表面と各金属層との密着性を強化し、余分な水分を除去処理することができる。
以上のように下地金属層としてのCu−Ni−P層上に、めっきアップ被膜としての銅層が積層された樹脂基材に対して、120℃で30分間熱処理を施した。これにより、樹脂基材表面と各金属層との密着性を強化し、余分な水分を除去処理することができる。
次に、実施例2について説明する。実施例2では、実施例1で説明した(1)表面改質工程において、樹脂基材を、微細オゾン気泡含有水に浸漬した時間を10分とした以外は、実施例1と同様にして樹脂基材上にめっきアップ被膜を形成した。なお、以下において、「表面改質工程において、樹脂基材を、微細オゾン気泡含有水に浸漬した時間」を「浸漬時間」と称する。
実施例3では、実施例1の(1)の表面改質工程において、上述した浸漬時間を20分とした以外は、実施例1と同様にして樹脂基材上にめっきアップ被膜を形成した。
実施例4では、実施例1の(1)の表面改質工程において、上述した浸漬時間を30分とした以外は、実施例1と同様にして樹脂基材上にめっきアップ被膜を形成した。
実施例5では、実施例1の(1)の表面改質工程において、上述した浸漬時間を60分とした以外は、実施例1と同様にして樹脂基材上にめっきアップ被膜を形成した。
比較例では、上述した実施例1〜実施例5と比較するために、実施例1の(1)表面改質工程を行わなかった以外は、即ち、浸漬時間を0分とした以外は、実施例1と同様にして樹脂基材上にめっきアップ被膜を形成した。
<評価>
実施例1と比較例について、(1)表面粗度について評価した。また、実施例1〜実施例5と比較例について、(2)樹脂基材の表面形態の観察、(3)樹脂基材表面の水濡れ拡がり性、(4)樹脂基材上に形成されためっきアップ被膜の密着強度について評価した。以下に、評価方法と評価結果の順に説明する。
実施例1と比較例について、(1)表面粗度について評価した。また、実施例1〜実施例5と比較例について、(2)樹脂基材の表面形態の観察、(3)樹脂基材表面の水濡れ拡がり性、(4)樹脂基材上に形成されためっきアップ被膜の密着強度について評価した。以下に、評価方法と評価結果の順に説明する。
1.評価方法
(1)表面粗度
樹脂基材の表面粗度の測定は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて行った。実施例1及び比較例に対して、表面改質工程後(比較例については素材そのまま)であって、アルカリ処理工程前後それぞれについての樹脂基材を、1μm×1μmの範囲を走査して、樹脂基材の表面を表すAFM画像を得た。また、走査データに基づいて、面内粗さ解析を行い、各樹脂基材の算術平均粗さ(Ra)を求めた。
(1)表面粗度
樹脂基材の表面粗度の測定は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて行った。実施例1及び比較例に対して、表面改質工程後(比較例については素材そのまま)であって、アルカリ処理工程前後それぞれについての樹脂基材を、1μm×1μmの範囲を走査して、樹脂基材の表面を表すAFM画像を得た。また、走査データに基づいて、面内粗さ解析を行い、各樹脂基材の算術平均粗さ(Ra)を求めた。
(2)樹脂基材の表面形態の観察
上述した実施例1〜実施例5と、比較例に対して、無電解めっき工程後の樹脂基材を観察対象とし、肉眼により樹脂基材の表面を観察した。
上述した実施例1〜実施例5と、比較例に対して、無電解めっき工程後の樹脂基材を観察対象とし、肉眼により樹脂基材の表面を観察した。
(3)樹脂基材表面の水濡れ拡がり性
上述した実施例1〜実施例5と、比較例に対して、表面改質工程後、アルカリ処理工程前の樹脂基材の水濡れ拡がり性について評価した。各樹脂基材の表面に、50mmの高さから水50μLを滴下し、樹脂基材の表面に濡れ拡がった水の寸法を測定した。
上述した実施例1〜実施例5と、比較例に対して、表面改質工程後、アルカリ処理工程前の樹脂基材の水濡れ拡がり性について評価した。各樹脂基材の表面に、50mmの高さから水50μLを滴下し、樹脂基材の表面に濡れ拡がった水の寸法を測定した。
(4)樹脂基材上に形成されためっきアップ被膜の密着強度
上述した実施例1〜実施例5及び比較例に対して、樹脂基材上に形成されためっきアップ被膜の密着強度の測定を、JIS C 6481に準拠してピールせん断試験により行った。具体的には、各樹脂基材上に形成されためっきアップ被膜に10mm幅の長尺な切り込みを入れてその10mm幅の短冊の端部を樹脂基材からはがした。そして、垂直引き剥がし試験機(東洋精機製作所製のストログラフE2−F)を用いて、当該短冊の端部を樹脂基材に対して垂直な方向に引き剥がし、めっきアップ被膜の密着強度を求めた。
上述した実施例1〜実施例5及び比較例に対して、樹脂基材上に形成されためっきアップ被膜の密着強度の測定を、JIS C 6481に準拠してピールせん断試験により行った。具体的には、各樹脂基材上に形成されためっきアップ被膜に10mm幅の長尺な切り込みを入れてその10mm幅の短冊の端部を樹脂基材からはがした。そして、垂直引き剥がし試験機(東洋精機製作所製のストログラフE2−F)を用いて、当該短冊の端部を樹脂基材に対して垂直な方向に引き剥がし、めっきアップ被膜の密着強度を求めた。
2.評価結果
(1)表面粗度
実施例1の表面改質工程後、アルカリ処理工程前の樹脂基材(実施例1A)、実施例1のアルカリ処理工程後の樹脂基材(実施例1B)、比較例の処理前の樹脂基材(比較例A)、比較例のアルカリ処理工程後の樹脂基材(比較例B)の表面状態を示すAFM画像を図2に示す。
(1)表面粗度
実施例1の表面改質工程後、アルカリ処理工程前の樹脂基材(実施例1A)、実施例1のアルカリ処理工程後の樹脂基材(実施例1B)、比較例の処理前の樹脂基材(比較例A)、比較例のアルカリ処理工程後の樹脂基材(比較例B)の表面状態を示すAFM画像を図2に示す。
図2に基づいて、比較例Aと、実施例1Aの樹脂基材の表面状態を比較すると、大きな相違はなかった。これにより、微細オゾン気泡含有水に浸漬する表面改質処理を行っても、表面改質処理を行う前の樹脂基材表面と比較して表面平滑性を維持することができることが確認された。
また、「比較例Aと実施例1Aとの表面」、「比較例Bと実施例1Bとの表面」は、図2に基づいて、それぞれ樹脂基材の表面状態を比較すると、樹脂基材の表面には微細な凹凸が形成されている。これは、樹脂基材を表面改質処理するか否かにかかわらず、アルカリ処理を行うことによって、樹脂基材の表面粗さが大きくなったことが確認される。
また、面内粗さ解析により求めた各樹脂基材の算術平均粗さ(Ra)を表1に示す。本件発明にかかる表面改質処理を施しても、比較例と比較して、実施例1は、算術平均粗さ(Ra)が極端に大きくなることはなく、維持していることが確認された。また、アルカリ処理を施しても、比較例と比較して実施例1は、算術平均粗さ(Ra)が同様に大きくなっていることが確認される。
(2)樹脂基材の表面形態の観察
実施例1〜実施例5及び比較例の無電解めっき工程後の樹脂基材の表面状態を示す写真を図3に示す。図3に基づいて、各樹脂基材の表面状態を比較すると、表面改質工程を行わなかった比較例は、樹脂基材の表面全体に金属層が析出されていないのに対して、表面改質工程を行った実施例1〜実施例5の樹脂基材の表面には、樹脂基材の表面全体に下地金属層が析出していることが確認された。また、実施例1〜実施例5は、各樹脂基材を微細オゾン気泡含有水に浸漬させた時間がそれぞれ異なるが、当該浸漬時間の相違によらず表面状態には大きな相違がないことが確認された。
実施例1〜実施例5及び比較例の無電解めっき工程後の樹脂基材の表面状態を示す写真を図3に示す。図3に基づいて、各樹脂基材の表面状態を比較すると、表面改質工程を行わなかった比較例は、樹脂基材の表面全体に金属層が析出されていないのに対して、表面改質工程を行った実施例1〜実施例5の樹脂基材の表面には、樹脂基材の表面全体に下地金属層が析出していることが確認された。また、実施例1〜実施例5は、各樹脂基材を微細オゾン気泡含有水に浸漬させた時間がそれぞれ異なるが、当該浸漬時間の相違によらず表面状態には大きな相違がないことが確認された。
(3)樹脂基材表面の水濡れ拡がり性
表2に、実施例1〜実施例5と、比較例に対して、表面改質工程後、アルカリ処理工程前の樹脂基材について水濡れ拡がり性を対比して示す。表2に示すように、表面改質工程において、樹脂基材の微細オゾン気泡含有水の浸漬時間が長くなるに従い、水濡れ拡がり性が高くなることが確認された。
表2に、実施例1〜実施例5と、比較例に対して、表面改質工程後、アルカリ処理工程前の樹脂基材について水濡れ拡がり性を対比して示す。表2に示すように、表面改質工程において、樹脂基材の微細オゾン気泡含有水の浸漬時間が長くなるに従い、水濡れ拡がり性が高くなることが確認された。
(4)樹脂基材上に形成されためっきアップ被膜の密着強度
次に、実施例1〜実施例5において、各樹脂基材上に形成されためっきアップ被膜の密着強度を表3に示す。表面改質工程を行わなかった比較例については、樹脂基材の表面に密着しためっきアップ被膜を形成することが不能であったため、密着強度を測定することはできなかった。これに対して、本件発明にかかる表面改質処理を施した実施例1〜実施例5については、いずれも0.8kN/m以上の密着強度を有するめっきアップ被膜が形成されたことを確認した。
(5)その他
表面改質処理を行わなかった樹脂基材(素材)をアルカリ処理した場合と、表面改質処理を行った樹脂基材をアルカリ処理した場合とでは、同様に表面粗さが大きくなる傾向がある。しかし、表面改質処理を行わなかった樹脂基材は、無電解めっき工程において下地金属層を析出させることができなかったのに対し、表面改質処理を行った樹脂基材は、無電解めっき工程において、下地金属層を析出させることができた。これは、物理的に金属層を樹脂基材の表面に密着させたのではなく、表面改質処理によって、化学的に金属層を樹脂基材の表面に密着させて析出させることができたものであると考えることができる。
表面改質処理を行わなかった樹脂基材(素材)をアルカリ処理した場合と、表面改質処理を行った樹脂基材をアルカリ処理した場合とでは、同様に表面粗さが大きくなる傾向がある。しかし、表面改質処理を行わなかった樹脂基材は、無電解めっき工程において下地金属層を析出させることができなかったのに対し、表面改質処理を行った樹脂基材は、無電解めっき工程において、下地金属層を析出させることができた。これは、物理的に金属層を樹脂基材の表面に密着させたのではなく、表面改質処理によって、化学的に金属層を樹脂基材の表面に密着させて析出させることができたものであると考えることができる。
本件発明にかかる無電解めっき方法によれば、微細オゾン気泡含有水を樹脂基材の表面に接触させることにより、樹脂の表面を改質する表面改質処理を採用したため、樹脂基材の表面形状によらず、微細オゾン気泡含有水をその表面全体にムラなく接触させることが容易であるため、複雑な表面形状を有する樹脂基材に対して無電解めっきにより金属層を形成する際に好適に適用することができる。また、エッチング処理と異なり、樹脂基材の表面の平滑性を維持することが可能であるため、本件発明の金属被膜形成方法によれば、導体回路表面が平滑で、超ファインピッチの導体パターン形成が可能になる。
1 オゾン水生成装置
2 微細オゾン気泡含有水
3 外部酸素供給源
4 操作パネル
5 水槽
6 取水部
7 オゾン水放出部
8 水ライン
2 微細オゾン気泡含有水
3 外部酸素供給源
4 操作パネル
5 水槽
6 取水部
7 オゾン水放出部
8 水ライン
Claims (7)
- 樹脂基材の表面に無電解めっきにより金属層を形成する無電解めっき方法において、
当該樹脂基材の表面に、
平均粒径が0.1μm〜100μmのオゾンの微細気泡を含むオゾン水を接触させて、当該基材表面を改質する表面改質処理を施した上で、当該樹脂基材の表面に無電解めっきにより金属層を形成することを特徴とする無電解めっき方法。 - 前記オゾン水のオゾン濃度は、15℃〜40℃の温度条件において、0.1ppm〜10ppmである請求項1に記載の無電解めっき方法。
- 前記オゾン水のオゾン濃度は、15℃〜40℃の温度条件において、0.3ppm〜2ppmである請求項2に記載の無電解めっき方法。
- 前記樹脂基材と前記オゾン水との接触時間は、1分〜60分である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の無電解めっき方法。
- 前記オゾン水により処理された後の樹脂基材の表面に、
アルカリ溶液を接触させた後、当該アルカリ溶液と接触した後の樹脂基材の表面に、金属触媒を吸着させる請求項1〜請求項4のいずれかに記載の無電解めっき方法。 - 前記樹脂基材は、不飽和結合を有する樹脂基材である請求項1〜請求項5に無電解めっき方法。
- 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の無電解めっき方法を用いて、当該樹脂基材の表面に下地金属層を形成し、当該下地金属層上に電解めっきによりめっきアップ被膜を形成することを特徴とする金属被膜形成方法。
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